2026年01月10日

中之島での『百人一首』(第20回)と『源氏物語 蜻蛉』(第31回)

 今日の大阪府立中之島図書館での講座は、まずは「変体仮名で書かれた『百人一首』を読む」という〔入門講座〕からです。
 お正月ということで、『百人一首』の「坊主めくり」の話から始めました。
 『百人一首』が遊技化した江戸時代以降、明治29年の「坊主起し」を描いた絵が残っています。このことは、本ブログの「集会所で新春恒例の『百人一首』とトランプで遊ぶ」(2026年01月06日、http://genjiito.sblo.jp/article/191589343.html)で報告した通りです。その絵では、3人の子供がいずれもカルタをめくって手元に置いています。歌を読み上げる人はいません。今の競技カルタではなくて、遊びとして『百人一首』が楽しまれていることが確認できる絵です。
 こうしたことを踏まえて、あらかじめ生成AI氏には「坊主めくり」の歴史とその意義について尋ねました。いろいろとやりとりをした結果を次のように整理して、本日提示してみました。


■生成AIによる「坊主めくり」の説明(再編集)
・坊主めくり「坊主=不利・姫=有利」は、歴史的・文学的な必然性はなく絵柄による視覚的な役割分担。
・坊主めくり成立の前提条件︰瞬間識別性/坊主と姫とを一瞬で判別できる。
・坊主が多いのは『百人一首』の作者構成を反映した結果→坊主が多いと波乱が起きやすい。
  坊主30〜35枚、姫君21枚、公家44〜49枚
 (ここで坊主の人数に幅があるのは、その認定に曖昧さがあるためです。
  例えば、蝉丸の場合は、次のような事情が関係します。
  蝉丸は、官人でも女性でもなく、僧とも言い切れない。
  百人一首の中で唯一の「世俗の境界に置かれた例外的存在」。
  僧形・隠者・盲目の楽人、などとして伝えられる歌人。)
・平安〜鎌倉期の和歌の担い手に高僧・出家貴族が非常に多かった
・特に鎌倉期以降は、仏教者=知識人=歌人という構図が強まった
  剃髪:正式な僧→完全に俗世を離れた印象(清僧・遁世者)
  頭巾・被衣:入道・隠棲者→元は貴族・武士で、後に出家した「入道」的存在
  完全な無帽:俗世離脱の強調→公的役割を残す高僧イメージ
・高級百人一首 → 横顔・後ろ姿あり
 普及版・学習用 → 顔が見える向き
・中世貴族文化→ 陽明文庫系
 江戸上層文化(鑑賞・意匠)→ 光琳系
 江戸庶民文化(遊戯)→ 絵札カルタ
 近代教育文化→ 教材・競技かるた
・陽明文庫旧蔵『百人一首』は、遊ぶためのカルタ文化とは交わらず、「書と仮名の正統を体現する百人一首」であり、そのため字形が意図的に難解。
・陽明文庫系が公家内部の書の規範なら、光琳かるたは上層町人も鑑賞できる美術。
・陽明文庫旧蔵『百人一首』は、後代のカルタが切り捨てていく「仮名の多様性」を最後まで保持した基準点であり、そこから光琳的翻訳と競技的単純化が分岐した。


 なにげなく遊んでいる「坊主めくり」も、こんな意味合いを見い出すとおもしろくなってきます。あそびが、さまざまな文化を背負っていることがわかります。

 次に、廬山寺の境内にある紫式部と大弐三位の歌碑について説明しました。それも、石に刻まれた文字に関して、これまで私が読んでいた翻字の修正をすることに及びました。
 このことは、昨日の本ブログの「京洛逍遥(961)廬山寺の歌碑を確認してから京大病院へ」(2026年01月09日、http://genjiito.sblo.jp/article/191591869.html)に詳述しているので、内容についてはそれに譲ります。

 テキストである『変体仮名でよむ 百人一首』については、59番歌の赤染衛門から66番歌の大僧正行尊までを確認しました。「坊主めくり」を思い出させるお坊さんで終わったので、何となく締めのカルタになったようです。

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 30分の休憩を置いて、次は「ハーバード大学本『蜻蛉』巻の仮名文字を読む」です。
 今日でハーバード大学本「蜻蛉」巻を終わるにあたり、まずは巻末に捺されている「月明荘」と「拝土蔵書」という朱印の説明をしました。

260103_月明+拝土.jpg

 右側の「月明荘」という朱印については、次の説明文をあげました。

「月明荘」
 反町茂雄(1901〜1991)
 昭和期の書誌学者、古書籍商。弘文荘代表取締役、文庫の会会長、東京古典会会長、明治古典会会長を歴任。自身を描いた「一古書肆の思い出」(平凡社,1986-1992) や「紙魚の昔がたり」(訪書会,1934)、「定本・天理図書館の善本稀書」などを著した。

 また、左側の「拝土蔵書」という朱印については、次の説明文をあげました。

「拝土蔵書」
 ドナルド・ハイド(Donald Frizell Hyde, 1909年 - 1966年)
 アメリカ合衆国の著名な弁護士であり、世界屈指の稀覯本・写本コレクター。1966年に56歳で亡くなりましたが、彼が収集したコレクションは現在も研究者に広く活用されています。

 このことに関連して、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編著、新典社、2013年)に解説を寄せていただいた、前ハーバード大学フォッグ美術館の文子・E・クラストン先生の「ハーバード大学美術館蔵「源氏物語」二冊の古写本の来歴について」と題する文章の一部をプリントに掲げて確認しました。

 この重要文化財又は重要美術品とも成り得る「源氏物語」五十四帖のうち、「すま」の巻(第十二章)と「かげろう」の巻(第五十二章)の二冊(書写された当時は、全五十四帖であったかどうかは不明)のみが市場に出て本館所蔵に帰したのは、今から二十九年前の一九七四年の事でした。
 この記念すべき年は、フォッグ美術館(現在、大改装中)の東洋美術史部門・日本美術史科が、恐らく日本でも珍しい日本美術と日本古典文学(特に古写本、古活字本、絵巻物等等)とを合わせて大々的な「日本古典文芸展」と題する展覧会を開催し大好評を博した一年後のことでした。
 ハイドご夫人はその年を記念してこれらの貴重な古写本二冊を寄贈して下さったのでした。
(中略)
 これらの美麗な稀覯本は、以前、弘文荘〈こうぶんそう〉(東京)の反町茂雄氏(一九〇一〜一九九一年。古本・古写本などを中心に店舗を持たずに販売・買入れを本業とする古本屋で販売目録なども多く出版した)の蒐蔵でしたが、一九六二年にドナルド・ハイドご夫妻が購入され、その所蔵となりました。
(中略)
 東京の弘文荘では、反町氏がその学識と豊富な経験から古写本、絵入り版本、絵巻物など、それこそ重要文化財・重要美術品級の作品を二十種類ばかりご覧に入れたのでした。
 その時、ご夫妻は多くの量は望まれず、質が高く、意義の深い、しかも価値のある日本古典文学の古写本、古版本などを蒐集されるご主旨で、それら二十種類を殆ど購入されました。その時から、ハイドコレクションは始まりました。が、残念なことに、不幸にもドナルド・ハイド氏は一九六六年に永眠されました。(155頁)

 さらには、テキストとして使用している『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(伊藤編著、新典社、2014年)に収録しているハーバード大学のメリッサ・マコーミック先生の解説文の「古写本が伝えること」について、後半だけではあるものの確認をしました。

 最後に、付録として置いた資料編「ハーバード本と大島本との主要本文異同一覧(含・尾州家本、麦生本)」を見て、ハーバード大学本「蜻蛉」と大島本「蜻蛉」の本文の違いも見ました。鎌倉時代中期に書写された『源氏物語』の古写本であるハーバード大学本は、明らかに現在流布する大島本とは違う本文を伝える写本であることを確認するためです。

 拙稿「海を渡った古写本『源氏物語』―「蜻蛉」の場合―」という解説文も見ました。ハーバード大学本の「須磨」と「蜻蛉」を調査して撮影し、その後刊行した本を今回テキストとして使用している経緯についても、詳しくお話しました。

 なお、この拙稿の前半に、次のように記していることを、ここであらためて確認しておきます。それは、現在調査を進めている相愛大学(春曙文庫)本『源氏物語』(断簡5冊)について触れているからです。中山本はすでに刊行しています。

 本書の仲間(ツレ・僚巻)が日本に現存している。中山本(第三八巻「鈴虫」、国立歴史民俗博物館蔵、重要文化財)と、いくつかの断簡(第三三巻「藤裏葉」、第四五巻「橋姫」、第四九巻「宿木」、第五三巻「手習」)である。これら七巻分の古写本は、もとは一揃いの写本であったと思われる。(166頁)

 ここで、「帚木」のことに言及はしていないものの、今から12年前にハーバード本「須磨」「蜻蛉」と歴博本「鈴虫」のツレとなる古写本として、相愛大学(春曙文庫)に『源氏物語』(断簡)があることを明記しているのです。そのことを私が長く失念していたために、干支が一回りした昨年あらためて気付き、慌てて調査を始めました。これは、書家の宮川保子さんからいただいた情報を契機として思い出しました。また、12年前に私の科研付きの研究員(現・名古屋大学)だった淺川槙子さんには、相愛大学本の情報収集をお願いしたまま手を付けていなかったことについて、ここにお詫び申し上げます。現在、調査員の辻義孝さんの支援を得て翻字を鋭意進めていますので、成果の公表はいましばらくお待ちください。

 次の写真は、『源氏物語』の写本の調査をしたハーバード大学アーツミュージアムの入口の様子です。

2018_アーツM.jpg


 今日で最後となる本文の確認は、67丁の表6行目から裏の末尾までです。

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【前略】
を可し可里し可登・【260110_ココカラ→】堂ゝ【何事】尓/(堂堂)・川介
て毛・可乃・ひ登川ゆ可りそ・於もひいて・
【給】け累・あやし婦・川ら可里介累・ち
きりと母なり介り登・徒く/\登/(徒く徒く登)・於毛ひつゝ
け/(於毛ひつつけ)・な可め・【給】ふ・ゆく礼/〈ママ〉・可遣ろう乃・毛能者可那介尓/者〈次頁〉、(67オ)
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とひち可ふを・
「あ里登・身て・ゝ尓葉/(て尓葉)・とら礼春・三れ
者・満多・ゆくゑ毛・しら春・きゑし・可介
ろう」・ある可・なき可乃登・礼い乃・ひとりこち・
【給】と可や/可$、(67ウ)
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 次回は、この「蜻蛉」巻の「変体仮名翻字版」による索引を提示して、鎌倉時代の写本にはどのような字母が使われているのかを、丹念に確認したいと思っています。
 索引は面倒な手順を経て作るので、いろいろと苦心することかと思います。しかし、1ヶ月でなんとか字母別の語意索引を完成させるつもりです。どのようなものが出来上がるのか、自分でも楽しみです。




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2025年12月27日

キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物語 帚木(断簡)』を読む(第4回)

 今日も、キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)の入口正面には、いつものイベント案内が表示されていました。

251227_掲示板.jpg


 まず、街中の変体仮名からです。

250724_くをん.jpg

 新町通錦小路通りで見かけた暖簾に書かれていた「くをん」は、「を」の字形がおもしろいのと、朱の落款が「久遠ん」と読め、今の平仮名の字母がわかる例として紹介しました。
 平仮名の字母である漢字がわかる例として、宇治橋通の「左し治」も紹介しました。

251206_宇治の「左」.jpg

 今日は、予定通り相愛大学本「帚木(断簡)」を終えることができました。そして、この古写本は草稿本を書き写したものではないか、という視点で変体仮名で書かれた本文を確認していきました。そうした見方で本文を追いかけると、至るところにその片鱗が伺われます。
 今回「変体仮名翻字版」で本文を確認したのは、第8丁表から現存する最終丁である第10丁裏までです。
 脱字や欠脱、そしてナゾリ書きが何例も確認できました。このままでは意味が通らないので、意味などは考えずに、ただ親本を写したようです。その親本が草稿本というものであったのではないか、ということが、確認を通してその蓋然性が高くなったと言えます。これは、今後の検討で明らかにしていくつもりです。

 今日問題とした箇所で、主なものを5例あげます。「文節番号」としているのは『源氏物語別本集成 正・続 第1巻』で用いているものです。

(1)8ウ/8行目 ・文節番号4934「かゝる/寿&る〈判読〉」

251226_相愛帚木8uL8寿&る.jpg


 これは、「かゝ」に続く文字にナゾリがあり、「寿」と書いた後に「寿」の上から「る」をなぞった例としました。「る」の上に「寿」をナゾッたとはしません。ただし、「る」は微妙な字形で書かれていると判断し、〈判読〉としています。


(2)9ウ/9行目 文節番号5029「△&か」

251226_相愛帚木9uL9△&か、し.jpg


 この右のナゾリは「かの」と読み、下に書かれた文字は判読できないものの、上には「か」と書かれているものです。他本に「この」とあります。しかし、この下の文字は「こ」ではなく、「そ」として「その」と想定しても、いずれもそのような字形の文字が下に書かれているとは思えません。いまは不明としておきます。


(3)9ウ/10行目 文節番号5032「見しかゝめ里なと/し〈虫損、左傍記△、諸本みしかゝりなんと〉
 上の写真の左側の行に書かれている「し」の左横の墨の線が何かは、今はわかりません。本日の勉強会の中で最後に、これは「も」ではないか、という意見が出ました。確かに、この形の「も」が前後に見受けられます。そこで、これは「も」であろうとしました。
 しかし、帰宅してから諸本の本文異同で「みしかゝりなんと」とか「みしかからんなと」、そして「みしかし」という例もあることから、ここは「も」ではなくて、やはり「し」であるとします。そして、依然として「し」の左横の墨の線は不明とせざるをえません。今後の課題です。
 この「帚木」の断簡には、「も」の左横に意味不明な傍線が書かれていたり、不思議な字形で「そ」と書かれていたり、「の」の最後が「ぬ」のように丸く廻っていたり、「け」の最初の棒が二本引かれていたりします。踊り字の「ゝ」が「く」や、次の仮名へのつなぎの線のように見えたりもしています。

 とにかく、これまでの古写本には見られない、イレギュラーな字形や意味不明な字句やケアレスミスが散見します。今後とも、この写本の文字列は慎重に読み解いていく必要があります。そして、この写本が「草稿本」ではないか、という可能性も探っていきます。


(4)10ウ/10行目 文節番号5131「り&累〈判読〉」

251226_相愛帚木10uL10り&累.jpg

 ここは「者可累/り&累〈判読〉」と読みました。つまり、下には「り」とあり、その上に「累」がナゾられたとしたのです。「者可累」と書いた後に「累」の上から「り」を書いて「者可り」としたのではない、と判断したのです。

 これらの判断はあくまでも暫定的なものであり、来春早々に相愛大学で原本を直接調査するので、その時に実見を通して確定していきます。

(5)8ウ/10行目 ・文節番号4942堂可ふへくもあらす/〈行間上部・貼紙「△△」〉

251227_相愛帚木8uL9-10上部〈貼紙〉.jpg


 丁末の行頭に〈貼紙〉があります。ただし、千切った和紙を貼り付けた例を、これまでに私は見たことがありません。ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」「蜻蛉」に、貼紙がありました。しかし、それは四角に切られた和紙に文字を書いて貼り付けたものであり、このような間に合わせの対処は初見です。また、書かれている文字も、私には意味不明です。
 大方のご教示をお願いします。

 以下、本日確認した「変体仮名翻字版」の翻字を引きます。
 これで、相愛大学本「帚木(断簡)」は終わりです。
 次回は、多くの問題点を抱えるこの写本の課題を整理し、索引の作成に入ります。また、大島本などの現行の『源氏物語』とは大きく異なる本文を伝える写本なので、この本文の性格にまで及べるように調査を進めます。


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■相愛大学本「帚木(断簡)」(今回:第8丁表〜第10丁裏まで)
  [変体仮名翻字版] (翻字:辻 義孝/補訂:伊藤鉄也)
   ・翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
     傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
     補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
     底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
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ナシ・ナシ・きこゑ【給】・ナシ・いと者川
かし介れ八・ナシ・うちいて尓くゝ/(うちいて尓くく)・於ほさるれと・
いと・よく可多らひ堂万ひ弖【御】ふ三可き
【給】あやしと於もふ尓こま/\とみゝ尓あてゝ/(こまこまとみみ尓あてて)・
いひ志らせ・【給】・かゝる/(かかる)・こと古所八と・ナシ・いとおもひ
可けか多けれと・於さ那・【心】ち・ふ可う毛・堂と
らす・ナシ・もてき多れ八於んなむね川ふれ弖・
あさましき尓・な三多も・於ちぬ・この・古の・於も
ふらん・ことも・者つ可しうて・さす可尓・【御】ふ三を・
お可く新尓/〈ママ、諸本おもかくしに〉・ひきひろけ多り・いとこと・於ほく弖/弖〈丁末左〉、(8オ)
--------------------------------------[4900]
「みし・ゆ免を・あふ・よ・ありやと・なけく・
ま尓・めさへ・あ者てそひ/ひ$・ころ/ろ+も、(ころも)・へ尓介る」・ぬる・
よ・なけれ八なといと・め・と万りぬへき・【御】可き
さま奈れとみいれられ寿・めも・きり弖・
【心】え可多き三の・すくせ・うさそひ堂り
けるを・ナシ・於もひ川ゝけ/(於もひ川川け)・うちふし・【給】へり・【又】
乃ひ・そのき三越/そ〈判読〉・免し多れ八・まいるとて・
【御】可へり・こへ八・かゝる/寿&る〈判読〉、(かかる、かか寿)・【御】ふ三・みわくへうも
あらすと・ナシ・ナシ・きこ江よと・いへ八・うちわらひて・
堂可ふへくもあらす/〈行間上部・貼紙「△△」〉・の【給】者せし越・ナシ・い可ゝ/(い可可)、(8ウ)
--------------------------------------
さは・きこゑむと・いふお・【心】や万しくて・
のこりなう・の【給】・き可せ介ると・於もふ尓・
川らき・こと・かきりなし・いて・およすけ多る・こと
盤・い者ぬ【物】そ・さ八・な・堂万へりそと・ナシ・けしき
あし介れ八・めす尓八・い可ゝとて/(い可可とて)・まいりぬ・かの
三/〈ママ、諸本きのかみ〉・すい多る【心】ち尓・この・まゝ者ゝ能/(まま者者能)・ありさま
を・ナシ・ナシ・よ尓免て多しと於もひて/も〈判読〉・川いせう
し・よるこゝろなれ八/(こころなれ八)・こき三わ八く累
ま尓て/わ〈ママ〉・ナシ・ゐて・ありく・こきみ・めしよせて・
きのふ八・まちくらしてやみ尓き・ナシ・あひおもふましき奈免りと/ま〈次頁〉、(9オ)
--------------------------------------
ナシ・の【給】尓・か本・うちあ可め弖/△&う、ちあ可〈墨ヨゴレ〉・
ナシ・い川らと・能【給】尓・志可/\なん/(志可志可なん)・者ら多ち者へ
ると・ナシ・きこゆれ八・ナシ・ナシ・【心】のことやとて・【又】も・多万へ
り・あこ盤・ゑし羅しな・その・いよの・於きな
ともの・さきより・ナシ・み多てまつりそめし/そ〈判読〉・
ひとそ・されと・堂の毛し介なく・ゝひ/(くひ)・本
そと・ふ川徒可奈る・ナシ・こゝろてこしつき
ゑり・ナシ・ナシ・まうけ【給】へ累そかし/△&け・ナシ・ナシ・き三は
あ可・こにて・あれよ・かのをや八/△&か、かの〈ママ、諸本この〉・堂のもし
けなれと・ゆくさき・見しかゝめ里なと/し〈虫損、左傍記△、諸本みしかゝりなんと等〉、(見しかかめ里なと)、(9ウ)
--------------------------------------
の【給】へ八・さ毛・あり介ん・いみしかりける・こと
と・於もへ累も・於可しと・於も本寿・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・【又】【御】ふ三
毛・ナシ・【給】へり・されと・この・こ毛・いと・者可那し・
【心】より・本可尓・ち里毛・せは・可ろ/\しき/(可ろ可ろしき)・
奈さへ・そへむ・みの・ありさま越を/越を〈ママ〉・いと・川
き那く・おほえて・免て堂き・ひと奈り
とも・わ可・三こそと・【思】へ八・いとすきか万
しきことのふさ者しからぬうちとけ
堂る・け者ゐ毛・きこゑす・本の可那
りし・【御】けはひ・なとお・け尓・よ尓・なへてなと八/て〈次頁〉、(10オ)
--------------------------------------
於もひ・きこ江ぬにしも・あらね
と・を可しき・さま越・みえ・多て万つり弖・
奈尓ゝ/(奈尓尓)・なるへきみそと・於もひ可へ寿
なり介り・き三毛・於ほしおこ多る・ナシ・ナシ・於
り毛なく・こひしきよりも【心】く累し
う・ナシ・ナシ・於もへりしさま越・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・於ほしわ多る・
かろ/\しく/(かろかろしく)・八ひまきれて・堂ちより・
堂万者ん尓も・【人】免・し介く奈れ八/く〈ママ〉・ナシ・す
き/\志き/(すきすき志き)・ふるまひや・あら者れんと・ナシ・ナシ・ナシ・者
者可累とさまかうさま尓於ほしくらす/り&累〈判読〉、(10ウ)
--------------------------------------[文節番号025131]まで
相愛大学春曙文庫「帚木」以降 落丁
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2025年12月20日

日比谷で「須磨」(31)と『百人一首』(8)を読んだ後は息子に教えを受ける

 肌に感じないほどの霧雨の宇治を早朝に出て、新幹線で3時間かからないうちに微かに霧雨が感じられる有楽町に降り立ちました。うまく雨をすり抜けて東京に来られました。

 早めのお昼ご飯は、西銀座にある回転寿司の「くら銀座」です。開店時間を少し待って入りました。
 ここは、京都の三条通から新京極通を下ったところにあるお店と同じ店構えで、清潔感が漂うお店です。

251220_くら銀座.jpg


 ゆっくりと、お寿司とドリンクとデザートをいただいてから、日比谷公園に向かいました。

 ミッドタウン日比谷の前にいる大好きなゴジラを、今日は斜め後ろから撮りました。初めての角度です。

251220_ゴジラ.jpg

 しばらく公園を散策すると言う妻と別れて、私は先に日比谷図書文化館に入りました。妻は終日図書館で、公園の緑や皇居方面の景色を見ながら、窓辺のイスに座って好きな本を読むことを、ここに来る楽しみにしています。

 掲示板がいつものように立っています。

251220_日比谷の掲示板.jpg


 今日の最初は、「ハーバード大学本『源氏物語 須磨』の変体仮名を読む」です。
 まず、先週の大阪府立中之島図書館と同じように、版木『略解○古訓古事記巻中』と、版本『絵入源氏物語』を実際に触ることで版本の世界を体感していただきました。やはり、実物が訴える重みはズッシリと伝わったようです。

 この講座のメインとなる、ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』については、57丁表から57丁裏3行目まで[変体仮名翻字版]で確認しました。鎌倉時代の古写本の実態について、少し立ち入った話をしたこともあり、予定した範囲の四分の一もできませんでした。すべて、年明けに持ち越すことになりました。

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あさ者可尓・みいれらる・【五】・すく【六】・
堂き乃/堂±ん〈薄墨〉、き〈左濁点〉、(堂んき乃)・てうとやう乃・毛乃・ゐ【中】王さ尓・
し奈し堂る・いと・を可し・【念】寿の・くと
毛ゝ/(くと毛毛)・めつらしき・さ満尓・し徒ゝ/(し徒徒)・をこ
なひ・川と免・【給】介りと・三ゆる・毛の・万いれ
る・さ満那とこと佐ら尓/こ&こ・【所】尓・つけて・けう
あ里て・志那し堂り・あ満とも乃・あさり
して・かい川【物】・毛てまいる越・めしいてゝ/(めしいてて)・
【御】らん春・うらに・とし・ふらん・さ満なと・ゝ
者勢/(と者勢)・【給】へ八・さ満/\尓/(さ満さ満尓)・やすけ奈きみの/(57オ)
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うれを/れ±へ、う〈墨ヨゴレ〉、(うれへを)・【申】いてゝ/(【申】いてて)・そこ者可と・奈く・さ
え徒るも/え〈虫喰、ママ〉・【心】の・ゆくゑは・於奈し・こと奈
る可・こと那るあ者れ尓・[12.20 ココマデ確認]
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 1時間の休憩を置いて、次は「『百人一首』を2種類の変体仮名で読む」です。

 ここでも、まずは前列に並べた版木と版本を触ってもらいながら、写本と版本と活字本の違いなどをお話しました。

 続いて、これも中之島図書館で先週紹介した、包装紙に描かれた『百人一首』の例を確認しました。そして、俳優の伊東四朗さんが70歳を過ぎて「百人一首」の暗記にチャレンジしたという話を紹介しました。これは、脳科学の立場からいえば廃用現象を防ぐ賢明な方法だそうです。物覚えに衰えを感じ出した方は、参考になさってはと提案しました。

 次は、廬山寺の境内に建つ57番歌の紫式部と58番歌の大弐三位の歌碑の写真を見ながら、そこに刻まれた『百人一首』の歌を「変体仮名翻字版」で確認しました。
 また、同時に、有馬温泉の瑞宝寺町公園に建つ58番歌の大弐三位の歌を確認しました。これは、変体仮名は1文字もなく、すべてが現行の五十音図の範囲内での平仮名と漢字で書かれたものなので、不鮮明な写真からいかに文字の輪郭を読み取って文字として認識するかの練習になりました。

 この講座のメインである『変体仮名でよむ 百人一首』の確認は、44番歌の中納言朝忠から54番歌の儀同三司母までを終えました。特に注意をした文字は、陽明文庫のカルタに見られる「支」(ki)でした。何度も出て来るにもかかわらず、どうしても文字が仮名として認識しずらいからです。

 最後は、また来年、元気にお目にかかりましょう、という挨拶で終わりました。

 日比谷図書文化館を出てからは、息子がいる青山に直行です。
 今日は、息子から生成AIを使いこなすコツを伝授してもらいました。具体的には、『源氏物語』の鎌倉時代の写本の一覧を生成AIに作ってもらうことを通して、より時間をかけて網羅的な情報を得るための設定を教えてもらったのです。現役で生成AIを使いこなしているだけに、的確なアドバイスに感謝です。「負うた子に教えられ……」とはこのことです。いやいや、今の息子に対して「自分より劣っている」とか「未熟な者」に教えられたと言うのはお門違いです。専門家に教えてもらうことなので、親子の関係などは問題ではありません。根気強く教えてくれる子を、逞しく思いました。




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2025年12月13日

中之島での『百人一首』(第19回)と『源氏物語 蜻蛉』(第30回)

 今日も、最初の90分は「変体仮名で書かれた『百人一首』を読む」〔入門講座〕です。
 配布したプリントは、次の2枚でした。

251213_中之島100人-19_1.jpg

251213_中之島100人-19_2.jpg

 2枚目の「包装紙に描かれた『百人一首』」は、現行の五十音図の平仮名以外の文字、つまり変体仮名をサッと見分ける練習用として配布したものです。みなさん、区別は手早くできていました。これは易しかったようです。
 今日の2種類の『百人一首』の確認は、52番歌の藤原道信朝臣から58番歌の大弐三位までを終えました。
 判別しにくい文字として、「支(き)」「王(わ)」「弖(て)」「帝(て)」「希(け)」「遣(け)」「盤(は)」がありました。
 なお、テキストである『変体仮名でよむ 百人一首』(伊藤鉄也・吉村仁志 編、新典社、2025年5月)において、57番歌である紫式部の作者欄に「『源氏物語』を編纂」と記載していることに関して、私は紫式部を『源氏物語』の作者だと特定していないことの補足説明をしました。

 30分の休憩時間を挟んで、次は「ハーバード大学本『蜻蛉』巻の仮名文字を読む」になります。

 まず、次の2枚のプリントを配りました。

251213_中之島・蜻蛉-30+版本_1.jpg


2251213_中之島・蜻蛉-30+版本_2.jpg

 この講座では、いつも古写本の話ばかりしています。そこで今日は気分転換も含めて、江戸時代の版本に関する資料を持参しました。目で見ることが主体となっている現代の文化を、今日もいま一度見直しましょう、というアピールです。先月は、『探幽筆三十六歌仙』という人物画の作成に使われた模本(粉本)の実物を見て触っていただきました。
 前掲の写真は、架蔵の『略解 ○古訓古事記巻中』の版木です。版木の実物を触ることはなかなかないので、貴重な体験となったことでしょう。写真の上は現物そのものの板面。その下は、コンピュータグラフィックで左右を反転して、刷り上がった状態がわかるように加工したものです。写真をクリックしていただくと、精細な写真が表示されるので文字がよく見えると思います。
 版木の重さのみならず、文字が精細に彫られていることが、目で見るだけでなく、指で触って実感できたことは、こうした印刷物の理解が深まったはずです。

 2枚目の資料の『絵入源氏物語』の版本は、現在はNPO法人〈源氏物語電子資料館〉が所蔵しているものです。山本典子氏より寄贈されたものです。この山本春正編『絵入源氏物語』(漆山文庫旧蔵)の版本は、江戸時代・慶安三年(一六五〇年)の版であり、旧蔵者山本節氏は山本春正のご子孫です。山本典子氏によると、約五〇年以上茶箱に保管されていたものだということなので、編者である山本春正の手元にあった初版本である可能性が高いものです。宇治十帖を持参して並べ、実際に手に取って見ていただいたので、受講者のみなさまには版本の実態が体感できたかと思います。興味津々で、袋とじの本をご覧になっていました。

251213_『絵入源氏物語』.jpg

 ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』を[変体仮名翻字版]で確認することは、今日で巻末まで行く予定でした。しかし、版本の閲覧と実見で時間を取ったために、67丁表6行目までを確認して時間が来ました。あと1頁文が残りました。年明けには、最後まで終えることになります。

 今日問題となったのは、次の2例です。

 (1)65丁裏9行目 「きこ江さ勢/え【給】&江さ勢、江=え」

2251103_ハーバード「蜻蛉」65uL9え給.jpg

 「え【給】」の上から「江さ勢」とナゾリ、その「江」の右横に「え」を傍記しています。
 本行の中でのナゾリなので、書写者自身がナゾッていると思われます。

(2)67丁表5行目 「うち/△&う」

251212_ハーバード「蜻蛉」67oL5うち.jpg

 ナゾッている文字の「う」の下の文字が、私にはどうしても読めません。そこで不読文字として「△」を用いて、「うち/△&う」としました。今後の課題として残すことになりました。

 今日確認したハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』の「変体仮名翻字版」は、以下の通りです。


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■ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』65丁裏9行目〜67丁表6行目

翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部
( 「 )・末尾( 」 )、底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
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よろこひきこ江さ勢/え【給】&江さ勢、江=え、(きこえ【給】)・【給】めると・いふ・な三/\
の/(な三な三の)・【人】めきて・【心】ちなの・さ万やと・ものうけれ八/(65ウ)
--------------------------------------
もとより・於ほしす川ましき・すちよりも・いま八・
万して・さるへき・ことに・川介ても・於ほし多つ
ねんなん・うれしかるへき・うと/\しく/(うとうとしく)・【人】川
てなとに・もてなさせ・【給】八ゝ/(【給】八八)・江こそと・能【給】尓・
け尓と・いひさ者きて/=【思】〈薄墨〉、(【思】さ者きて)・【君】を・ひきゆるかすへ
介れ八/す〈虫損〉・万川も・む可しのと能三/も&能、(む可しのとも三)・な可めらるゝも/ゝ±二、(な可めらるるも、な可めらるる二も)・
もとよりなと・能【給】ふ・すちは・万めや可尓・多のも
しくこそ八と・【人】川てとも・なく・いひなし・
【給】へる・こゑ・いと・王可や可尓・あいきやうつき・
やさしき・【所】・そひ多り・堂ゝ/(堂堂)・なへ弖の・かゝる/(かかる)・す三可の/三〈次頁〉、(66オ)
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【人】と・於も八ゝ/(於も八八)・いと・於可しかるへきを・
多ゝいま/(多多いま)・い可て可八・か者可りも・【人】尓・こゑ・きか
すへき・ものと・ならひ・【給】介ん・な万うしろ
め多し・か多ちも・いといま免可しからんと・み
ま本し幾・け者いの・したる越・この・【人】そ・
【又】・れいの・【御心】・三多るへき・川万なめると・
於かしうも・阿り可多のよやとも【思】い多ま
へり・[35]これこそは・可きり・なき・【人】の・かし
つき・於ほし多て・【給】える/介&え・ひめきみ・【又】・
か者可りそ・於ほく八・あるへき・あやしかりける/(66ウ)
--------------------------------------
【事】葉・さ累・ひし里乃・【御】あ多里尓・【山】能・
ふ登古ろより・いてき堂る・【人】〻の/(【人人】の)・可多本
なる葉・な可り介累こ楚・古の/古〈虫損〉・者可奈し
や・可ろしや奈登・於もひ奈須・【人】毛・可や
うの・うち身累/△&う・介し支八・い身しう楚・
を可し可里し可登・…………途中まで(67オ)
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 帰りは、大阪駅まで歩きました。途中で、曾根崎心中でよく知られている「お初天神」の境内を通ることになり、久しぶりに「露天神社」にお参りすることになりました。

251213_お初天神.jpg

 ここに来るのは数十年ぶりになります。「恋人の聖地」となっていて、若者がたくさんいました。私が知っていた「お初天神」が明るく様変わりしていたので、とにかく驚きました。

 大阪駅前の阪神百貨店の地下には、いか焼きで有名なお店があります。小さい頃に何度か行って以来なので、懐かしさも手伝ってその場で妻と一緒に立ち食いをし、持ち帰りのお土産もいただいて帰りました。以前は、あまりにも長い行列のために諦めました。551の蓬莱といい勝負です。大阪の粉モン文化は健在です。

 大阪駅からJRで京都駅に出て、その駅前のキャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)に立ち寄りました。3月分の予約をしたままで教室の利用料金の支払いが終わっていなかったので、済ませるためです。
 今日のスケジュールは、これで無事に終わりました。
 京都駅の構内は、相変わらずの雑踏となっています。中国語が飛び交う状況は一変し、多くの東南アジアの方々と擦れ違いました。日本人の観光客は、まだ京都を敬遠しておられるようです。しかし、年末年始は京洛各地で日本古来の文化を背景にした行事が多くなるので、日本の方々が増えることでしょう。




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2025年12月06日

宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(7)

 シェア型書店HONBAKO京都宇治の入口のガラス戸越しに、通りからクリスマスツリーが見えています。

251206_本箱正面.jpg

 中も、クリスマスムードが感じられるようになりました。本箱も活発に本の入れ替わりがあります。活気が感じられるようになりました。

251206_本箱のツリー.jpg


 そんな中で、今日は「店名:モモ Handmade」が手提げバックのチャリティ販売をする日でした。クリスマスツリーのすぐ前に、手作りのバッグを並べています。妻と姉の手仕事の布小物です。この日のために、姉も遠路芦屋から駆けつけて、お手伝いをしてくれました。姉も箱主なので、立派なオーナーです。
 この催しは月に1回なので、次は新年2月7日(土)です。
 シェア型書店HONBAKO京都宇治は、地域の人々や全国各地の本好きの仲間のコミュニティの場となることを活動の柱としています。さまざまな取り組みで、この空間が人と人との出会いの場となることを願っています。

 さて、今日の勉強会は新しい参加者を得ました。それも、新婚さんお2人です。写本を読むのは初心者だとのことだったので、丁寧に進めていきました。変体仮名とは何か、古写本に関する知識、書写の道具、街中の変体仮名、などなど。
 書写された文字が訂正されている箇所については、次の例を見ました。

251203_相愛「橋姫」9uL3いり墨.jpg

 これは、「まいり/いり〈削、墨〉、=万いり」と翻字した箇所です。
 書写者はまず、「まいり」と親本の文字列を書き写しました。しかし、他の人か後の人が、「いり」の部分を墨で塗り潰し、なかったものとしました。続いて、その右横に「万いり」と正しいとする文字を書き添えています。
 ここで気になるのは、「ま」と「万」の文字表記が異なるにもかかわらずそうではない「いり」が墨で塗り潰されていることです。これは、どのような意味を持つのでしょうか。写本に残された、その意図がよくわからない例として取り上げました。写本に手を入れる、という行為が意味することには、よくわからないことが多いという例です。

 基礎的なことを確認しながら、ということもあって、1ぺージも進みませんでした。
 以下に、本日確認した「変体仮名翻字版」の翻字をあげます。

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(1)相愛大学本『源氏物語 橋姫』第九丁裏〜第九丁裏七行目 [変体仮名翻字]

翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)

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の【給】ふ毛の越・支こゑ者遣ま
して・【御心】・者けまひ・堂てま川らんと・於ほい
て・のとや可なる・ゆふくれ尓・まいり/いり〈削、墨〉、=万いり・【給】へり・れい
乃・さま那る・【御】も乃可多里・木こゑ可王し/木〈ママ〉・
【給】ふ・川い弖尓・うち乃三この・【御事】・き古
ゑい弖ゝ/(き古ゑい弖弖)・みし・可【月】の/±あ・あ里さまなと・くは
しう・ナシ・
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 新年正月は、この宇治での勉強会はお休みです。
 次は、新年2月7日(土)となります。
 みなさま、よいお歳をお迎えください。




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2025年12月04日

中之島図書館での歌舞伎と『源氏物語』の講演会

 大阪万博も終わり、一躍有名になったキャラクターのミャクミャク君は、今は大阪市役所本庁舎の正面玄関前で、向かいに建つ日本銀行大阪支店を眺めながら寝そべっています。多くの方が写真を撮っておられました。

251204_ミャクミャク.jpg


 本日の講演会の会場となっている大阪府立中之島図書館は、このミャクミャク君がいる反対側、市役所の東隣にあります。

 第8回となる平安文学リレー講座は、「歌舞伎と『源氏物語』 〜今話題の映画に思いを寄せて〜」と題して、薮下敦朗氏の歌舞伎語りでした。薮下氏は、早稲田大学や鳴門教育大学大学院で近世文学を専攻され、現在は日本演劇学会や日本音楽表現学会の会員です。

251204_会場.jpg


 歌舞伎の世界では『源氏物語』はあまり扱われなかったようです。その理由は、皇室のスキャンダラスな話となるため、敬して遠ざけられたことにあるようです。昭和26年に、11代目市川團十郎が『源氏物語』をやったことから、世の中が変わったそうです。

 映画「国宝」を観ての感想が至る所に鏤められ、みなさんの興味と関心を集めながらのお話でした。映画では、難曲の「鷺娘」や「道成寺」を踊りで見せる場面は、お見事の一言だそうです。2人の若い役者を絶賛しておられました。

 歌舞伎の歴史を概観し、俳優史から文化・文政以降の演劇界の動きを紹介し、映画「国宝」の時代背景に留まることなく、実際に薮下氏が生の舞台から得たものや、数多くの人間国宝の方々との交流史も交え、豊かな話題で歌舞伎の魅力を語ってくださいました。

 本日の話は、とにかく薮下氏自身の豊富な演劇体験に基づくものであり、書物からの知識ではない、生き生きとした内容が魅力の講演でした。終わってからも、多くの方が質問などをしておられました。

 帰りに本日の講演会場だった中之島図書館を振り返ると、満月がふくよかな顔を見せていました。

251204_満月.jpg

 淀屋橋のすぐ近くにあるカフェで、薮下氏ご夫妻と長時間にわたって話をしました。かつて高校の教員時代の同僚であり、祇園へ何度か連れていってもらったこともあり、思い出話が尽きません。気の置けない仲間との時間は、あっという間に過ぎていきました。




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2025年11月29日

日比谷で「須磨」(30)と『百人一首』(7)を読む

 東京に着くと、いつものようにまずは有楽町に出ます。お昼ご飯は、駅前のビックカメラの中にあるスシローで腹ごしらえをします。その日に合わせて食べる量を調節できるので、消化管を持たない私は重宝しています。最近は、デザートが充実してきました。

 ビルを出ると、東京国際フォーラムの広場で「大江戸骨董市」をやっていました。400もの店舗が出店しているそうです。東京駅の近くまで延びていました。大半が海外からの観光客のようです。ざっと見たところ、弘法市や天神市よりも相当高目の値札が付いていました。

251129_大骨董市.jpg


 日比谷公園に入ると、「魚ジャパンフェス 2025 in 日比谷公園」をやっていました。全国各地の新鮮な魚介を使った料理が集結する、日本最大級の魚食イベントでした。

251129_魚フェス.jpg

 最近私は、お寿司よりも海鮮ものに興味が移っているので、大いに期待して見て廻りました。しかし、その値段が我が家の予算の2倍から3倍だったので、このイベントは無縁のものだと諦め、早々に日比谷図書文化館に入りました。

 入口では、いつもの掲示があります。

251129_掲示板.jpg

 まずは、「ハーバード大学本『源氏物語 須磨』の変体仮名を読む」からです。
 今日は、先日も中之島図書館の講座で見てもらった『探幽筆三十六歌仙』を12枚ほど持参したので、テーブルに拡げ、その概略をお話しました。これは、国宝『源氏物語絵巻』の「鈴虫(1)」(五島美術館蔵)の画面を赤外線写真で調査したところ、彩色の下から文字が出て来たことに関連して、絵に書かれた指示書きというもののお話につなげるものです。
 実際に『探幽筆三十六歌仙』(架蔵粉本、一部数枚)を手に取っていただき、実感実証の体験をしていただきました。私がコンピュータグラフィックを駆使して描いた歌仙絵も見てもらいました。また、30年前に仲間と刊行した『パソコン国語国文学』(啓文社、平成7・1995年1月)を紹介し、その中に収録した「画像としての小野小町」(第4章、伊藤鉄也、添付フロッピーディスクに画像収録)についても話しました。

 次は、前回先送りにした「天」と「弖」について、その識別のポイントを説明しました。併せて、「介」と「个」の識別方法についても説明しました。

 ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』の「変体仮名翻字版」の翻字確認については、55丁表5行目から56丁裏まで、用意した資料のすべてを終えました。以下に、この部分の翻字をあげます。

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堂ゝあま尓毛/(堂堂)・なり奈ん・う三の・そこ尓
毛・いり奈んとそ・【思】ひける・ちゝ【君】/(ちち【君】)・【所】世く・
【思】ひ可し徒きて・とし尓・ふ多ゝひ/(ふ多多ひ)・す三よ
し尓・まうてさせ介り・【神】乃・【御】志る
志を・とく【見】者やとそ・於もひける・【251129_ココカラ】→[31]す満尓八・
としなと・可へりて・【日】・な可く・徒れ/\なる
尓/(徒れ徒れなる尓)・うゑし・王可き乃・さくらの・本の可尓・さ
きそめ・そらの・うらゝ可なる尓/(うらら可なる尓)・よろ川
乃・こと・於ほしいてゝ/(於ほしいてて)・うち奈き・堂満ふ・於里・
於ほ可り・【二月】・【廿】よ【日】尓・なりて・い尓し/(55オ)
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とし・【京】を・王可れし・【程】・【心】くるし介奈
里し・【人】/\乃/(【人人】乃)・【御】あ里さ満なと・いと・【恋】
しく・【南殿】乃・さくら八・さ可り尓・なり
ぬらん・ひとゝ勢乃/(ひとと勢乃)・【花】の・えむ尓・【院】能・
【御】介しき・【内】の・うへ乃・いと・きよらに・奈
満免きて・【我】可・川くれる・【句】を・春ん
しなとし・【給】ひし【御】あ里佐ま奈と・【思】い
てきこゑ・【給】・
「い徒と・那く・【大宮人】の・【恋】しき尓・
佐くら・可さしゝ/(可さしし)・介ふ毛・きに介り」・[32]いと/(55ウ)
--------------------------------------
徒れ/\なる尓・可の於ほとのゝ/(於ほとのの)・【三位中将】八
【今】八・【宰相】尓・なりて・【人】可ら乃・いと・よ介れ
八・【時】よの・於ほえ・いと・於毛くて・【物】志・【給】へと・よ
乃【中】・あ者れ尓・あちき奈く・毛のゝ/(毛のの)・を
里ことに・こひしく・於ほえ・【給】へ八・こと乃・き
こゑ・あ里て・徒三に・あ多るとも・い可ゝは/(い可可は)・
勢んと・於ほし奈して・尓は可尓・まうて・
【給】へ里・うち三るより・め川らしく・うれ
しきに毛・ひと川・奈三多なら須そ・こ本
れる・すまい・【給】へる・さ満・い者ん可多奈く/く〈次頁〉、(56オ)
--------------------------------------
可ら免い多り・【所】乃・さ満・あ多り・ゑ尓・可き
堂らん・やうなる尓・堂け・あ免る・可き・
志王多して・いしの・はし・【松】の・者しら・
をろそ可なる毛乃可ら・めつら可尓・を可し・
【山】可川めきて・ゆるしいろの・き可ちなる・
あを尓ひ乃・可里きぬ・さしぬき・うち
や徒れ弖・こと佐ら尓・ゐ【中】ひ・毛て奈
し・【給】へるし毛・い三しうみる尓・ゑ万れ・
きよらなり・とり川可ひ・【給】へる・てうとも・
堂ゝ/(堂堂)・可里そ免尓・うちして・於満し【所】なと毛/な〈次頁〉、(56ウ)
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 1時間の休憩時間を置いて、次は「『百人一首』を2種類の変体仮名で読む」という2つ目の講座になります。

 この時間は、『変体仮名でよむ 百人一首』(伊藤鉄也・吉村仁志 編、新典社、2025年5月)をテキストにして進んでいるものなので、今日はカルタの人物画がどのような性格のもので、どのようにして描かれたものであるのかということを、『探幽筆三十六歌仙』の実見を通して体験してもらいました。『探幽筆三十六歌仙』は画家の工房から出た資料なので、なかなか見られるものではありません。実際に見てもらい、その紙面などの実状をお話しました。
 直前の講座にも出席しておられた方も数人いらっしゃるので、その時よりも詳しい説明をプリントに沿ってしました。
 お話の内容は、「八人会蔵『探幽筆 三拾六哥仙』について」(『大阪明浄女子短期大学紀要 第8号』1994.3.10)(https://genjiito.sakura.ne.jp/t_ito/HTML/R2.3_ronkou/R2.3.1_MJ08kasen.html)に書いたことの要点をプリントにまとめて提示したので、相当詳しく歌仙絵の説明をしたことになります。興味を持ってくださった方が多かったようなので、またいつか、さらに具体的な歌仙絵の話をしようと思っています。

 テキストである『変体仮名でよむ 百人一首』に関しては、37文屋朝康から43権中納言敦忠までの歌仙絵と和歌の説明をしました。

 つい説明に時間をとったこともあり、配布したプリントにあった、自販機に『百人一首』の絵柄が描かれたものの紹介は、まったくできませんでした。これは次回にします。

 終わってからは、今日の宿がある日本橋馬喰町に移動しました。
 連日、慌ただしい日々が続いています。インフルエンザが流行し出した時期でもあり、しっかりとマスクをして街中を歩いています。




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2025年11月22日

キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物語 帚木(断簡)』を読む(第3回)

 入口のロビーには、いつものように勉強会の掲示が出ていました。

251122_NPOパネル.jpg

 本日の最初は、京都新聞に掲載されていた2つの情報の確認からです。

(1)今日から24日までの3日間、三十三間堂が夜間特別拝観として、お堂の東側の障子をすべて外して、庭園から堂内の1001体の千手観音菩薩像が一望できるライトアップがなされます。庭園から夜間に堂内を拝観できるのは、今回が初めてだそうです。まさに極楽浄土を体現できるのです(京都新聞、2025年11月22日)。

(2)伊藤園の自動販売機が、『百人一首』のイラストをパネルにまとったバージョンを公開しました(京都新聞、2025年11月20日)。これは、京都の観光客の分散の一環での取り組みだそうです。記事によると、京都駅には2台を設置した、とあります。キャンパスプラザ京都へ行く途中で案内所の方に聞くと、いろいろと調べてもらった結果、新幹線の改札の中に2台とも置かれていることがわかりました。一般の人は、入場券がないと見ることも利用もできない場所なのです。観光客の分散には貢献しない場所なので、何か事情があるのでしょうか。なお、新聞記事は署名入りでした。この記者は、改札内の現場に足を運ばれたのでしょうか。もし新幹線の改札内に入って自販機を確認しておられたら、設置場所が改札内であることを書き添えられたはずです。この記事の文面では、京都駅周辺を探し回る人がたくさん出て来ることが予想されるからです。想像するに、記者は情報だけでこの記事を書かれたようです。間違っていたらすみません。

 帰りに、東本願寺の境内の休憩所に設置されていた自動販売機の写真を撮りました。これは、マンガ『ちはやふる』の絵を配したものです。

251122_ちはやふる自販機.jpg


 次に、街中の変体仮名として、「鎌倉大仏裏の与謝野晶子の歌碑」「熱海の坪内逍遥の歌碑」「法隆寺前の店先の〈安来奈伊【中】〉」の3例を取り上げました。いずれも本ブログに書いた情報なので、ここでは省略します。

 本日のメインである相愛大学本「帚木(断簡)」の「変体仮名翻字版」の翻字について、今回は第5丁裏から第7丁裏までの確認をしました。
 写し間違いと思われる例がたくさん確認できました。これは、未整理の写本を手元に置き、内容の確認もなく大急ぎで書写したためだと思われます。

・堂さう/\し/〈ママ、諸本くちをし〉(5ウ L3)
・あへ可/可±め、〈ママ、諸本あへかめる〉(6オ L2)
・やさか尓/〈ママ、諸本けさやかに〉(6オ L3)
・あとや本能なり/〈ママ、諸本あけほのなり〉(6オ L4)
・ゝこの志那ゝ奈可/〈ママ、諸本なかのしなかな〉(6ウ L3)
・者む多し可らす/〈ママ、諸本よろしう〉(7オ L10)
・れい尓てなむ/〈ママ、諸本たといにて〉(7ウ L3)

 その最たるものが、次の6丁裏の4行目から7行目の箇所です。異文混入や独自異文が、文節番号[4751]から[4752]の間で確認できるのです。

251121_相愛「帚木」6uL4〜7朱入.jpg

「【人】の・いひし・ことの者ゝ/(ことの者者)・け尓と・おほ志あ者
せられて・にしおもての/以下あ介川るマデ4665〜4668混入・かうし・いそき・あ介川
る・け者ゐも/以下ゆ可しかり介りマデ独自異文・さる可多尓・ゆ可しかり介り・
この・ころ八・との尓の三・於者す・なを・可能【人】」
↑↓
「人の言ひしことは、げにと思しあはせられけり。
このほどは大殿にのみおはします。」(『新編日本古典文学全集(1)』105頁)


 このような本文が伝わっていることの意味について、私見としては、物語の本文が確定しない時の草稿の状態の写本の片鱗が、こうした形で伝わっていると思っています。この相愛大学の「帚木」は、『男源氏の物語』と『女源氏の物語』の本文が合流していく段階の、流動していた段階の姿がかいま見える状態の残存だと見ています。まだ思いつきの私見ですが。
 かつて、田中重太郎先生は、次のように言われました。

 ところで、源氏物語の本文でも定家の証本がいま定本視されているが、いわゆる別本系の本文と読みくらべると、いまの源氏物語の本文は、なんだかばかに整頓され、みがかれ過ぎた感じがする。架蔵の鎌倉初期書写の源氏物語断簡(昭和三十九年十月刊)を読みかえしていると、こんな本文の源氏物語がすくなくとも平安末期にはあって、読まれていたのだと思い、いま行われている源氏物語の本文と読みあわせると、そらおそろしい気がして来る。(清少納言と「ほのかなり」と『平安文学研究』第四十二輯、昭和四十四年六月号、『枕草子三十五年』再掲))

 なお、5丁裏から6丁表にかけて、2丁(4頁)分の落丁があります。
 現行5丁裏の最終文字は、『源氏物語別本集成』で設定した文節番号でいうと[4493]です。そして、落丁後の現行6丁表の最初の文字は、『源氏物語別本集成』で設定した文節番号でいうと[4677]です。つまり、この落丁部分は、文節数でいうと、184文節分が脱落していることになります。この文節数は、底本にしている陽明文庫本の本文を単位とするものです。つまり、5丁裏には42文節が書写されており、6丁表には57文節が書写されているので、陽明文庫本で換算しておおよそ2丁(4頁)分の本文が欠脱していることになるのです。

 相愛大学本「帚木」は、いろいろな問題を内包する本文を伝える写本です。今後とも、慎重に翻字を続けていくつもりです。
 本日確認した「変体仮名翻字版」の翻字は、次の通りです。


■相愛大学本「帚木(断簡)」(今回:第5丁裏〜第7丁裏まで)
[変体仮名翻字版] (翻字:辻 義孝/補訂:伊藤鉄也)
   ・翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
     傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
     補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
     底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)

--------------------------------------[4452]
なく・さま・いと・あ者れけ奈り・あ奈可
ち尓【心】くるしう八あらねと・ナシ・みさら
ましか者・堂さう/\しからましと/堂さう/\し〈ママ、諸本くちをし〉(堂さうさうしからましと)・於ほ寿・
なくさ免可多う・ナシ・於もへれ者/△&者・なと・可う・うとま
しき・【物】尓八・於ほすへき・於もむき・さ満なる
於こそ・ちきり・ありと八・於もひ奈い・【給】ら免・
むけ尓・よ越・志らぬ・けしきに・於ほされ
堂る・介しきなん・いと・川らきこと・うら
みられて・いと・かう・うき・三能・本との・さ
堂まらぬ・ありしな可らにて・ナシ・かゝる/(かかる)・【御】/以下落丁、(5ウ)
--------------------------------------[4493]
二丁脱落
 4677-4493=184文節
  (5ウ)1丁42文節×4丁=168文節
  (6オ)1丁57文節×4丁=228文節
--------------------------------------[4677]
ほとに/〈ママ、諸本ほのかに〉・みへ・【給】へ累・ナシ・ナシ・み尓・しむ者可り尓・於
もふ川る・すき【心】ともゝ/(すき【心】ともも)・あへ可/可±め、(あへ可め)、〈ママ、諸本あへかめる〉・【月】八・あり
あ介尓て・ナシ・ナシ・かけ・をさまれる【物】可らか本やさか
尓/(やさか尓〈ママ、諸本けさやかに〉)・【見】えて・奈可/\/(奈可奈可)・お可しき・あとや本能なり/〈ママ、諸本あけほのなり〉・奈
に【心】毛那く・そらの・けしきも・堂ゝ/(堂堂)・みる・ひと
可らとの三・ナシ・ゑん尓も・ナシ・【見】ゆるなりけり・【人】志れぬ・
【御心】尓八・いと・むねい多く・ナシ・ナシ・ナシ・かへりみ可ち尓て・いて・
【給】て・との尓・可へり・お八して毛・とみ尓・万とろま
れ・【給】者す・【又】・あひみるへき・可多・なきを・あ
者れ尓・この・【人】の・於もふらんこと八まして・ナシ・ナシ・い可ならんと/と〈丁末左〉、(6オ)
--------------------------------------
【心】く累しう・於ほしやる・ナシ・すくれ多る・ことは・
な介れと・免やすくも/△&免・・みえ川る可那・ゝ
この/こ〈ママ、諸本か〉(那この)・志那ゝ奈可/〈ママ、諸本しなかな〉、(志那那奈可)・くま那う・みあ川むる・
【人】の・いひし・ことの者ゝ/(ことの者者)・け尓と・おほ志あ者
せられて・にしおもての/以下あ介川るマデ4665〜4668混入・かうし・いそき・あ介川
る・け者ゐも/以下ゆ可しかり介りマデ独自異文・さる可多尓・ゆ可しかり介り・
この・ころ八・との尓の三・於者す・なを・可能【人】
の・うち多へて・ナシ・ナシ・於もふらん・こと・【御心】尓・かゝりて/(かかりて)・
くるしきを・おほしわひて・きの可み越・め
し多り・可能・ありし・とう【中納言】・こゝに/(ここに)、(6ウ)
--------------------------------------
ゑさせよ・らうたけ尓・みへしお・み尓・ち可う・
川可ふ・ひと二・せん・うへ尓もわれ・多てまつらん
と・乃【給】へ八・いと・可しこき・於ほせ【事】尓・者へり・
か能あねなる・【人】尓・いひ者へらんと・【申】尓も・
むね川ふれ【給】へと・ナシ・川れ那くて・そ乃・
あねき三八・あそこの・おとゝや/(あととや)・毛堂れ多
る・さ毛・者へらす・この・【二三】ねんこそ・かくて・毛の
し・者へれ・をやの・於きて尓・あらすと・ナシ・古ゝろ
ゆ可ぬ/(古古ろゆ可ぬ)・やう尓なん・きゝ/(きき)・堂まふすと・きこ
ゆれ八・あ者れの・ことや・者む多し可らす/〈ママ、諸本よろしう〉・きこゆる/こ〈次頁〉、(7オ)
--------------------------------------
【人】そかし・まことに・よしやと・の多ま者す
れ八・ことも・なく・者へるへし・いと・もて者那れ・う
と/\しう/(うとうとしう)・者へれ八・【世】・れい尓てなむ/〈ママ、諸本たといにて〉・む川ひ・
者へらぬと・きこゆ・佐てかのこきみは/△&佐・
【五六】・者可りありて・ナシ・ナシ・ゐて・まいれり・こまや
か尓・お可しきこと八・奈介れと・な万めき・
ナシ・あてなる【人】と・みえ多り・めしいれて・いと・な
川可しう・可多らひ・【給】へ八・わら八【心】ち尓・ナシ・
いとうれしと・於もふ・あねき三能・ナシ・【御】ことの・
いとく八しう・とひ・【給】へ八わら八【心】ち尓・さるへき布し/\八いくゑ/へ〈次頁〉、(布し布し八いくゑ)、(7ウ)
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2025年11月08日

中之島での『百人一首』(第18回)と『源氏物語 蜻蛉』(第29回)の講座

 淀屋橋のすぐ下を流れる土佐堀川で、狭い水路を大きな観光船が器用にUターンしていました。右端が淀屋橋です。

251108_遊覧船.jpg


 中之島図書館での「新古典塾 平安文学」は、まず「変体仮名で書かれた『百人一首』を読む」〔入門講座〕です。
 今日は、変体仮名を読む前に、『百人一首』の読み札に書かれている歌仙絵が、どのようにして描かれているのかがわかる資料を見てもらいました。
 展示したのは、架蔵の『探幽筆 三拾六哥仙』です。これは、平成5年に私がパリで見つけ、テニス仲間の八人会の協力を得て入手し、現在は私が預かっている物です。その37枚の絵をすべて拡げました。こうして36歌仙のワンセットの絵が一堂に会する展示は、今回が初めてのことです。壮観でした。これは、絵画化するための指示が書き込まれた〈粉本・模本〉なので、いわば下絵です。これで、狩野派は絵の大量生産をしていたのです。絵の工房で使われたものが、明治時代に海外に流出し、それが日本に戻ってきたのです。日本の絵画がどのようにして描かれていたのかがわかる、貴重な文化的資料です。

251108_歌仙絵.jpg


 真ん中に長く拡げたのは、私が全体像を把握するためにコピーをして復元したものです。14メートルあります。また、コンピュータを活用して彩色復元をしたものも見ていただきました。小野小町と在原業平の復元画は、この講座の案内チラシにも使っています。

20251108_チラシ.jpg

 本日配布した資料には、次の拙文を掲載しています。これを適宜読んで、説明をしました。


■『探幽筆三十六歌仙』(架蔵粉本)の実見

(1)「架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の復元」(伊藤鉄也)
 (前略)
 『探幽筆 三拾六哥仙』は、平成5年春に伊藤がパリで見つけ、八人会(大森俊憲・公子、新谷栄一・香代子、井上大治・文、伊藤清子)の理解を得て、幸運にも輸入することができたものです。
 〈『36歌仙紛本画帖』〉と仮に呼ぶ本書は 、平安時代の著名な歌人36人の人物画が、B4版の大きさの和紙に書かれています。それがA3版大の厚紙に貼ってあるので、一枚ずつ手に取って見ることができます。鑑賞できると言いたいところです。しかし、丹念に彩色を施された顔以外は、すべて墨書きとなっています。また、着衣には色付けの参考とするための、細かな色取りの指示が書き込まれています。これは、〈紛本〉とか〈模本〉といわれるものです。
 (後略)


(2)「八人会蔵『探幽筆 三拾六哥仙』について」(『大阪明浄女子短期大学紀要 第8号』1994.3.10)
   はじめに
(前略)
 ソルボンヌ大学のあるカルチェ・ラタンからノートルダム寺院周辺を、一人気侭に散策した。そして、たまたま通りかかった古書店で見かけたのが、ここに紹介する『探幽筆 三拾六哥仙』である。
 (中略)
 これは〈紛本〉とか〈模本〉といわれるものであり、一般には次のように説明されている。
  紛本画巻・紛本画帖
 「紛本」とは下書きの絵のことであるが、修行や後の研究、参考の為に模写したものも、白描の下書き風のものが殆どであるので、これも「紛本」という。江戸時代は勿論、明治期までは、画家の修行の殆どは模写を中心とした所謂紛本主義であったので、今でも時として夥しい「紛本」を見ることがあるわけである。(『日本古典書誌学総説』一二三頁、藤井隆、和泉書院)

    一、八人会本の形態

 洋装仕立ての〈八人会本〉の製本は、実に立派である。
 本の大きさは、縦三九〇mm・横五〇〇mm。背皮には金の箔押しで、"PORTRAITS DES TRENTE-SIX GRANDS POETES JAPONAIS"とある。見返しはマーブル紙。『探幽筆 三拾六哥仙 軒』と記す紙を台紙に貼り付けたものを扉としている。

 扉以外は、背綴じのところから一頁ずつ鋭利な刃物で切り取られていた。展示するための処置であろう。計三十七枚の歌仙画集なのである。
 「探幽」とは、狩野探幽(一六〇二〜一六七四)のことである。狩野派は、江戸幕府の御用絵師として栄えた。特に、探幽以降の江戸狩野派は、臨写を基本とする紛本主義をとったことで知られる一大派閥である。〈八人会本〉の原本の筆者を探幽とする根拠は、今のことろはこの第一紙に「探幽筆」とある記載のみである。探幽は、鎌倉時代の『佐竹本三十六歌仙絵巻』が欠く、凡河内躬恒と紀貫之(位署と和歌)を補写するほどの実力者であった。多くの歌仙絵や縮図を残している。しかし、今はこれ以上に〈八人会本〉の筆者を確定する資料を持ち合わせていないので、「探幽」を伝称筆者名として了解するに留めておく。
 (中略)
 一枚の絵図の大きさは、おおよそ縦二六五mm・横三八〇mmほどで、B4版より一まわり大きいサイズである。この三十六枚の歌仙絵を敷き並べると、ちょうど三畳の部屋を埋める広さとなる。一枚ずつを横に繋いだ絵巻物のスタイルを想定すると、約十四mもの長さになる。この歌仙絵が、縦三四五mm(切断後)・横四八三mmの淡いブルーの厚紙の中央に、一枚ずつ貼ってある。
 (中略)
 人物画は楮紙に書かれている。用紙は少し光沢のある薄い丈夫な紙で、筆の勢いがある時には擦れが出ている。
 人物の顔には、丹念に彩色を施してある。頭髪や眉や髭の一本一本に至るまで、丁寧に書かれている。顔のシワはもとより、瞳まで明瞭に入れてある。人麿には、一本一本の歯まで数えることができる。これに対して、首から下の体の線と衣服は、実にそっけない。原本を見ながら慎重に臨模したらしく、墨跡の滑らかさやスピード感は認められない。衣の模様は、その一部を描いているだけで、後は歌仙絵作成者が自由に仕上げることができるようになっている。図中には、色取りの指定がある。人麿には、「白」「うすきあさき」「うすきゑんしのく」などとある。色名・着色に関する指示は、詳細なものと、比較的簡略なものがある。斎宮女御における夥しい色取りの指示は圧感である。

 保存状態の良くないものが何点かある。一番破損被害の大きいものは平兼盛である。
 この平兼盛の図は、横幅が一番短い。歌仙絵が貼り付けてある台紙も、用紙の周囲がもっとも破損が激しいものとなっている。

    二、配列と巻頭部

 洋装本に仕立て直された"PORTRAITS DES TRENTE-SIX GRANDS POETES JAPONAIS"が、『探幽筆 三拾六哥仙』と呼ばれていた時の原形を考えよう。巻子本か折本か冊子本か、ということである。
 これは、虫損箇所の位置を丹念に調べればよい。もとの形式がわかれば、虫損・切り口・紙シワ・墨汚れなどから、各絵の配列順序が復元できるはずである。
 (中略)
 破損の激しい平兼盛の絵図が、実は本書の巻頭だったことになる(図4)。平兼盛像の右側四分の一が欠損しているのは、表紙が付く以前に、頻繁に本書を取り出すことがあったためであろう。平兼盛の本紙の横幅は、中央の最長部が二七四mm・下部二一〇mmである。〈八人会本〉の各本紙の平均横幅は三八三mmなので、約一一〇mm〜一七〇mm分が欠けていることになる。これはまさに、一般的な巻子本の外周に相当する長さである。
 (中略)
 平兼盛の右端の切断面が不自然なのは、表の軸巻を付ける部分が千切れたためであろう。現存の表紙と見較べると、その幅も切り口もほぼ接合部分が符合する。
 画面下部にある畳を示す線の下に、この平兼盛一枚だけは、波の模様が描かれている。平兼盛以降の歌仙絵でサッと線引きされただけの簡略化された畳とその下部は、この巻頭で指示された通りに描けばよいのである。
 (中略)
 〈八人会本〉の原画と、その紛本としての本書の性格を考えるにあたっては、右の歌仙額の可能性が多分にあるように思われる。なお、記(ママ)友則の左下には、本紙と裏打ち紙との間に、平兼盛の波文の左下端部の断片が貼り込まれている。この小紙片は、平兼盛の左下の欠落を完全に補完するものである(注3)。なぜこんな場所にあるのか、その理由は不明である。

注3 拙稿「伝『探幽筆 三拾六哥仙』の画像データベース化と原本復元」(『人文科学とコンピュータ 研究報告 No.18』平成5、情報処理学会)では、コンピュータを活用して、平兼盛の欠落部分の補完と、猿丸大夫→清原元輔→伊勢→山辺赤人→記友則という配列順の確認をした。また、表紙と平兼盛の接合に関しても、コンピュータ・グラフィックを活用した鏡像処理による左右反転画像を用いて、それらが整合することも検証した。(追記:なお、小野小町と有原業平の彩色復元図は、本〈源氏物語電子資料館〉の第3室-画像・映像・音声コーナーの画廊〈歌仙絵〉に掲載している。)

    三、表紙と表題

 (前略)
 実際に現物をコピーして、〈八人会本〉の巻子本形式の複製版を作ってみた。太さは直径四十五mmほどになった。表紙の横幅は二三〇mmなので、ほぼ一巻半の長さとなる。したがって、この『探幽筆 三拾六哥仙 軒』と書かれた紙は、〈八人会本〉の歌仙絵三十六枚の表紙であったものと見てよかろう。これは、第一番平兼盛の冒頭部の修理にともなって、全三十六枚の裏打ち補強を行なった際に取り付けられたものと推測したことは、前述の通りである。表紙左端の切断面も、平兼盛の裏打ち紙の右端の切断面と一致する。
 (前略)
 もし、探幽筆とされる歌仙絵と関連する冊子本の表紙だったものを、軸巻の表紙に転用したとすると、元の冊子本は、各歌仙の和歌などを記したものだったかもしれない。歌仙絵を描いた後に、その右か上部に和歌を書く職人のための資料だったものではないか。そんな可能性があることも、指摘しておく。

    四、制作過程と伝来形態の変遷

 (前略)
 まず、原画を模写するにあたっては、水を含ませた筆で一枚の楮紙に歌仙の姿をなぞったようである。それは、衣を描いた線の周囲にうっすらと残る輪郭線が確認できるからである。薄くなぞった後に、衣を書いたのである。現在のところ、一応私は、板絵として掲げられていた〈扁額歌仙絵〉を想定している。丁寧に書かれた彩色した顔の筆は、体を描いたものとは明らかに違っている。顔を描いた後に、体を書き、そして色名などの書き込みをしたと思われる。
 (中略)
 また、伊勢の左上端にあたる継目の下に残された墨の汚れは、次の赤人の右上端の汚れの続きが、紙継ぎ後の切断によって残存したものである(注3)。山辺赤人の歌仙名が人物画の六十mm右上にあり、歌仙名の右三十五mmに墨の汚れがある。とすると、この墨の汚れは紙の継ぎ合わせ以前においての、歌仙名を書いた時に付いたものと考えることも可能である。
(中略)
 いずれにしろ、私は次の理由から、最初は五mほどの巻紙三本の形式ではなかったかと想像している。それを、歌仙絵作画の際に、手本・紛本として作業場に置いて利用していたのではないかと。
 そう考える理由は、凡河内躬恒の左端が上から覆うようにして紙片が貼られており、その下部には厚紙が付着していること。その凡河内躬恒と次の藤原仲文の切断面を接合させると、裏打ちに大きなズレが生ずる。また、中務は左端四十五mmを裏から補強しており、その左側は縦に墨の汚れが広がっている。そして、その左端上下が極端に縮まっている。これは、左端に水がかかったためであろうか。さらに源宗于朝臣では、左端に紙継ぎの切断紙片がないのである。これらの状態から、平兼盛から凡河内躬恒までの十二人と、藤原仲文から中務までの十三人、そして紀貫之から源宗于朝臣までの十一人の、都合三巻仕立として利用・保管されていた時期が長かったことを想定してみたい。そうでないと、中務の紙面の左側が極端に黒ずんで汚れていることなどの説明がつかないのである。
 (中略)
 また、本紙の裏には、多くの墨の汚れが残っている。作業場で使用中に、巻かれていた紙の裏側に筆が当たることが、多々あったのであろうか。
 (後略)

    五、歌仙絵の切断

 さて、〈八人会本〉の原形であった〈紛本画巻〉の切断についてである。この一枚ずつの切断面は実に杜撰きわまりない。刃が二度三度と入った跡が顕著に残っている。切り口も、右へ左へとカーブしている。すべてに〈定木〉は用いなかったようである。ここからは海外で行なわれたであろうことは、ほぼ間違いない。切り直しの跡や、紙継ぎのところが捲れたままで切断したりもしている。
 (中略)
 これら一連の作業は、製本をした国(フランス?)でのできごとだと思われる。台紙に歌仙絵を貼り付けるのに、強力なボンドを使用しているところに、本と紙に対する文化的な相違を痛感する。
 このようにして完成した"PORTRAITS DES TRENTE-SIX GRANDS POETES JAPONAIS"と題する『探幽筆 三拾六哥仙』は、その後どのような手を経たかはわからない。とにかくパリの古書店に落ち着き、そして八人会が所蔵するものとなったのである。

    おわりに

 『探幽筆 三拾六哥仙』は、〈三十六歌仙絵巻〉または〈三十六歌仙扁額〉を制作するにあたって用いた、絵の手本としての〈紛本画巻〉だと思われる。狩野探幽は多くの模本を残している。しかし、これはその探幽の手になる模本の一つではなく、〈探幽筆三拾六哥仙絵〉を模写したものと考えられる。もちろん、絵巻からとは限らず、歌仙額からの可能性も高いと思っている。
 〈八人会本〉は保存・備忘・研究のための模本ではなく、実際に利用・活用された紛本である形跡が多々認められた。ただし、この〈八人会本〉をもとにして描かれた一式の歌仙絵は、現在のところは確認できていない。探幽筆とされている背景ともども、さらに検討を続けていきたい。
 本三十六歌仙の構図を子細に見ると、いろいろのことがわかる。
体と顔の向きを、藤原公任が『三十六人撰』であげた順番に並べると、二人ずつが向かい合う形となる。歌仙の配列については、他本の歌仙絵と比較するとおもしろい。各人物における「体の向き」「被り物」「持ち物」および「顔の向き」「視線」「手」「足」「耳」「髭の有無」「座り方」についても、〈佐竹本〉をはじめとする諸本との比較研究は、残された課題である。〈八人会本〉と同じ図様の三十六枚一式の絵画群が、一般に公開されているものの中には見あたらない。その点からも、本書の資料的価値は認められよう。
 探幽自筆の各種歌仙絵と〈八人会本〉との比較は、これも稿を改めたい。探幽自筆『百人一首手鑑』中の小野小町と在原業平は、〈八人会本〉における図様と類似するところがある。〈八人会本〉の小野小町と在原業平との二点を、コンピュータグラフィックを活用して着色を試みた。今は、彩色復元したカラー図版を示して(注4)、推測を重ねることに終始した私見を終えることとしたい。

注4 〈八人会本〉の着色復元の詳細については、情報処理学会 第20回・人文科学とコンピュータ研究会(平成5年11月26日・於岡山大学)で「伝『探幽筆 三拾六哥仙』の画像データベース化と原本復元」と題して研究発表した。注3にあげた拙稿は、その時のものである。また、歌仙絵の画像データベースについては、拙稿「小野小町データベース〈図像編〉私案」(『人文学と情報処理3』平成6、勉誠社)を参照願いたい。
(平成五年十月二十七日脱稿・十二月十九日補訂)


 今日の『百人一首』の確認は、45番歌の謙徳公から51番歌の藤原実方朝臣までを、変体仮名に注目して進めました。


 休憩を挟んで、次は「ハーバード大学本『蜻蛉』巻の仮名文字を読む」です。
 まず、先ほどの『百人一首』の時に見てもらった『探幽筆 三拾六哥仙』を、まだ片付けずに置いておいたので、なかなか見る機会のない物なので簡単に説明をしました。ケンブリッジ大学の故ジョン・コーツ先生が、これと同じ表紙と装丁の『源氏物語』の絵巻詞書をお持ちであったことにも触れました。

 次に、44番目となるインドネシア語訳『源氏物語』を回覧しました。

251031_インドネシア語G表紙.jpg

書名:GENJI MONOGATARI
出版元:Boston and New York. Houghton Mifflin Company.
    The Riverside Press Cambridge, 1925年版。
著作権・出版情報:Copyright コピーライトマーク CV. Shinyuu Japanindo
翻訳者:Sutrisno / 編集者:Gafna Raizha Wahyudi
※本書は2024年に出版された。(ただし、2022年と2023年にも出版)
※インドネシア語訳は、アーサー・ウェイリーの英訳(The Tale of Genji, 1925)全6巻の内の、第1巻のみをインドネシア語に訳したものです。他の言語でよくあることです。例えば、インドのサヒタヤアカデミーから出版されたインド語8種類による翻訳は、すべてがウェイリーの英訳の第1巻だけをそれぞれの言語に訳したものです。


 これによって『源氏物語』の翻訳は、次の44種類の言語でなされていることになります。
 古い情報で論文や報告書やコラムなどが書かれているので、これが最新であることを再度確認してください。

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【『源氏物語』が翻訳されている44種類の言語一覧】(2025年10月31日現在)

アッサム語(インド)・アラビア語・イタリア語・【インドネシア語】・ウクライナ語・ウズベク語・ウルドゥー語(インド)・英語・エスペラント・オランダ語・オディアー語(インド)・カタルーニャ語・クロアチア語・ジョージア語・スウェーデン語・スペイン語・スロベニア語・セルビア語・タミル語(インド)・チェコ語・中国語(簡体字)・中国語(繁体字)・テルグ語(インド)・ドイツ語・トルコ語・日本語(現代)・日本点字・ハンガリー語・ハングル・パンジャービー語(インド)・ビルマ語・ヒンディー語(インド)・フィンランド語・フランス語・ベトナム語・ヘブライ語・ペルシャ語・ポーランド語・ポルトガル語・マラヤーラム語(インド)・モンゴル語・リトアニア語・ルーマニア語・ロシア語
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 今日のメインであるハーバード本『源氏物語 蜻蛉』は、残り時間で駆け足で本文の確認をしました。確認し終えた「変体仮名翻字版」を公開します。


■ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』64丁裏〜65丁裏8行目まで
翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部
( 「 )・末尾( 」 )、底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
--------------------------------------
阿らねと/ぬ&ね・ひき者て・【給】者ぬ越・な可/\なりと【心】
いれ多る/い±ら〈薄墨〉、(な可な可なりと、【心】いられ多る)・【人】八・きえ可へり・【思】・わ可・八ゝ/(八八)・三や八・於と
り/と〈判読〉・【給】へき・【人】可八・きさい者らと/よ&さ〈薄墨〉、き$い〈薄墨〉、(きよき者らと)・きこゆる者かり
の・へ多てこそ・あれ・み可との/と〈判読〉・於ほしかしつき
多る・さ万・こと/\ならさりける越/(ことこと)・なを・こ
の・【御】あ多りは・ことなり介るこそ・阿やし介れ・
阿可しのうら八・【心】尓くかりける・【所】可なゝと/(【所】可ななと)・【思】
川ゝくる/(【思】川川くる)・ことと母尓・【我】・寿く世八・いと・やむ
ことなしかれ/れ$し〈薄墨〉、(やむことなしかし)・まして・ならへて・もち・多てま
川ら八やと【思】そ・いと可多きや・[34]【宮】のき三は/(64ウ)
--------------------------------------
この・尓しの多い尓そ・【御】可多・し多りける・王可
き・【人】/\乃/(【人人】乃)・け者い・あま多・して・【月】・めてあへり・いて・
あ者れ・これも・【又】・於なし・【人】そかしと・【思】いて・きこえて・
【御子】の・む可し・【心】よ世・【給】しものをと・いひなして・そな
多へ・於八しぬ・わら八の・於可しき・との井す可多に
て・【二】・【三人】・いてゝ/(いてて)・ありきなと・したり・三つけて・
いる・さ万ともゝ/(さ万ともも)・かゝや可し/(かかや可し)・これそ・よのつねと・
於もふ・三なみ於もての・す三の・万尓・よりて・うちこ
者つくり・【給】へ八・すこし・おとなひ多る・【人】・いてき
多り・ひとしれぬ/〈墨合点〉・【心】よせなと・きこ江させ・【侍】れ八・【中】/\/(【中中】)、(65オ)
--------------------------------------
三な【人】・きこえさせ・ふるし川【覧】・うい/\しき/+【事】を、(【事】を、ういういしき)・
さ万尓て・まねふ・やう尓・なり・【侍】り・万めや可尓
なん・ことより・本可を・もとめられ・八へると・の【給】へ八・
き三にも・いひ川多へす・さかしら多ちて・いと・
於も本し可けさ里し・【御】ありさ万尓・川け
ても・こ三やの・於もひ・きこえさせ・【給】へりし・
【事】なと・於もひ【給】へいてられてなん・かくの三・
於り/\/(於り於り)・きこ江させ【給】なる【御】しりうことも

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 帰りには辺りは薄暗くなっていました。図書館と淀屋橋駅までのみおつくしプロムナードは、光のイルミネーションで飾られていました。

251108_イルミネーション.jpg 




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2025年11月01日

宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(6)

 雨は上がったものの、寒い1日でした。
 HONBAKO京都宇治の本棚は、みなさんが小まめに本の入れ替えをなさっているので、華やかさが増しました。

 相愛大学本『源氏物語 橋姫』(断簡)の勉強会は、順調に確認を進めています。

 まず、一昨日の京都新聞に掲載された記事の紹介から。
 大田垣蓮月が茶道具に仮名文字で自作の和歌を彫った茶器が、屋敷があった京大病院の敷地内で発掘されているニュースです。仮名文字が茶道具の表面を飾っていることに、今後とも注目していくための情報提供です。

 さて今日は、8丁表から9丁表までを、変体仮名に注視しながら古写本を見ていきました。
 問題となったのは、ナゾリとミセケチが混在する箇所を、データベース化するためにはどのように記述するか、ということでした。
 9丁表7行目の「个り」という語句の扱いです。

251031_春曙「橋姫」9oL7个り.jpg

 ここは、「【給】へ〈改行〉里」と書いた後、「へ」の上から「个り」となぞったものの、何か不満だったようで、なぞった「个り」と次行行頭の「里」の3文字をミセケチにした上で、「个り」の右横に「个り」と傍記している例です。
 ここを、次のようにして、データベース化したいと思います。

 乃【給】り里/へ&り、り$り、里$

 また、一般的には「介」とする文字を「个」と表記していることも、特記すべきことだと思います。この「个」はめったに見られない文字だからです。

 なお、その前の行の「【御】とふらひ・【】能」の変体仮名「野(の)」についても、少し説明をしておきます。

251101_相愛「橋姫」9oL6野山.jpg

 ここで、変体仮名の「野」を助詞として用いているのは、書写者が「【野山】」という語句が意識下にあって書いたものだと思われます。もちろん、関戸本や元永本古今集にわずかに変体仮名の「野」の例があるとはいえ、鎌倉時代の物語の古写本にはあまりにも唐突に出て来るからです。
 参考までに、『かな字解』(関口研二、芸術新聞社、2014年12月)に次の説明があるので、こうした考えの補足として引用しておきます。

「野」は真仮名の時代には用例が多いが、かな古筆の中では僅少で、限定的である。関戸古今は草、元永本は行書。(116頁)

 なお、8丁裏と9丁表の間には、『源氏物語別本集成』の文節番号をもとにして換算すると、約1,000文節もの文章が脱落しています。これは、一括りの丁が5紙で綴じられていて、半丁(1頁)毎に約40文節が書写されているので、20頁分が欠脱していることになります。つまり、ちょうど一括り分がなくなっているのです。
 相愛大学本『源氏物語』が丁の脱落による断簡の姿で残っている現在、その元の写本の姿を想定する時に、この目安は今後の参考になるはずです。

 以下、本日の「変体仮名翻字版」で確認した本文をあげます。


■春曙文庫本『源氏物語 橋姫』第八丁表〜第九丁表[変体仮名翻字]

--------------------------------------
可多より・可く【人】・を者須登・徒け・き
こゆる・【人】や・あらん・春多れ・越ろして・
み奈・いりぬ・をとろき可越尓八・あら寸・
の登や可尓・毛て奈して・や越ら・可く
礼ぬる・介者ひ登母乃・きぬの・越登
毛・世須・いと・奈よや可尓/可〈判読〉・古ゝろく累し
うて/(古古ろく累しうて)・い三しう・あて尓・三やひや可奈
累越・あ者れと・【思】・【給】ふ・やをら・堂ち
いてゝ/(堂ちいてて)・【京】尓・【御】く累ま・いて・まいるへく・【人】/\尓/(【人人】尓)・
しら世・つ可八して・あ里川累・さふらひ尓/(8オ)
--------------------------------------
越里あしう・まいり・【侍】尓介れ登・な可/\/(な可な可)・
宇れしう・【思】・【事】・春古し・なくさ免て
なん・可く・【候】・よし・きこゑよ・い堂く・
ぬれに堂る・可とも・きこ衛さ世ん可し
登・の多まへ葉・まいり弖・きこ遊・
可く・三ゑや・しぬらんと・於ほし
毛・よらて・うち登介堂り川累・【事】
とも越・きゝや/(ききや)・し・【給】ぬら無と・ナシ・い身志
う・八川可し・あやしう・可う者しう・
尓本ふ・可勢能・ふき川累越・【思】可けぬ/以下落丁、(8ウ)
〔←452108〕--------------------------------------[→453104]
毛てなひ・【給】八ん毛・【中】/\/(【中中】)・う多て・あらむ・
れいの・王可【人】尓・ゝぬ(尓ぬ)・古ゝろ者へなんめる
を/(古古ろ者へなんめるを)・な可ら無・能ち毛奈と・ひと【事】・うち
本の免可してし可葉・さやう尓弖・【心】そ・
と免堂らんなと・の多まひ遣る・【御】三つ
可らも・佐ま/\乃・【御】とふらひ野・【山】能・
い者や尓・あま里し・【事】なと・乃【給】个り
里/へ&个り、个り$个り、里$・まうてんと・【思】弖於毛ひ弖/【思】弖$・【三宮】乃・
可やう尓・をくまり多らん・あ堂り能・三
まさり・世んこそ・越可し可り遣れ登・あらまし【事】尓/ら〈次頁〉、(9オ)
--------------------------------------


 終わってから、1階のラウンジでアロマセラピストの方が香りとマッサージの実演をなさっていました。妻も、プロの方にアロマセラピーをやってもらったことがないとのことで、しばし癒やしの時間に身を置いていました。なかなか得難い体験ができたようです。
 このシェア型書店HONBAKO京都宇治では、今日はアロマセラピーを、先月は占いをするなど、地域や来店者などとの交流を促進するコミュニティサロンとして機能することも、大いに意識して運営されています。もし宇治にお越しの際には、JR宇治駅前のこの書店に立ち寄って見てください。オープンして半年が過ぎました。ブラリといらっしゃる方が増えてきているようです。
 毎月第1土曜日の14時から16時までは、私が2階で『源氏物語』の古写本に書かれた変体仮名を読んでいますので、こちらにもご参加ください。突然の参加も大歓迎です。

 帰りに宇治橋通りで、揚げたての抹茶コロッケを店内でいただきました。狭い店内の長イスに座って、アツアツのコロッケをフーフー言いながら口に入れます。至福の時でした。




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2025年10月25日

キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物語 帚木(断簡)』を読む(第2回)

 キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)の正面ロビーの掲示板には、いつものように案内が表示されています。前回から読む写本が変わり、相愛大学本『源氏物語』(断簡)となっています。

251025_京都でG.jpg

 今日は、相愛大学本『源氏物語 「帚木」』(断簡)の本文があまりにも現在流布している大島本と違うので、脳トレのような意見交換の場となりました。そして、多くの収穫が得られました。

 例えば、次の例はどのような経緯で生まれた本文なのか、いろいろと考えました。

※「相愛本」2丁裏の最終行から3丁表の3行目まで。

251025_相愛「帚木」2u末.jpg

のうち・いれ・【給】尓・あやしく所毛ちより多れと免川る/て&所、多&毛、ちより多れと/$、八&と、(あやしくて多ちより多れ八、毛と免川る)、ち/〈次頁〉、(2ウ)
--------------------------------------
ちより多れと免川る・【中将】めく・【物】・
きたるき多る・やゝと/(ややと)・能ひ尓/ひ〈ママ、諸本【給】〉・あやし
くて・堂ちよりたれ八・ナシ・に本ゐ・きて・


 ここは、2丁末の「あやしく所毛/て&所、多&毛」と3丁表の2行目の「あやしくて・堂ちよりたれ八」の目移りにより、その間の文が脱落していることに気付いた書写者が、3丁表の冒頭の「ちより多れ八」まで書き写した所でナゾリ書きやミセケチで本文を正した、と見ました。
 詳しく説明しましょう。
 当初、2丁末行は「あやしくて多」で終わり、使用していた糸罫を左に移動して3丁表を「ちより多れ八」と書きました。しかし、ここで3丁2行目の「あやしくて堂ちよりたれ八」に目移りして1行分を書き飛ばしていることに気付いたのです。そこで、2丁末行末尾の「て多」を「所毛」となぞり、3丁行頭の「ちより多れ八」をミセケチにし、そこで「八」を「と」となぞり書きすることで、「あやしく所毛と免川る」となるように補正したのです。
 ここで、「多・堂・た」の字母に異同が見られることは、親本に書かれていた字母が頭の中で音の入れ替えが起き、こうした不統一の表記になったと思われます。なお、これは別の問題でもあるので今は置きます。
 また、3丁表2行目の「能ひ尓」の「ひ」は、諸本では「給」となっているところです。この「ひ」については、別途考える必要があります。

※さらには、「相愛本」が「いとこより八可りいて【給】こと尓そ・あらん」(3丁裏7行目・源氏物語別本集成文節番号4344)とするところについては、現在流布する校訂本文の「大島本」(『新編日本古典文学全集』小学館)では「いとほしけれとれいのいつこよりとうてたまふことのはにか・あらむ」(100頁)となっています。

※また、「相愛本」が「な可/\・い者れし堂るいと・うたてあり介る」(4丁裏1行目・源氏物語別本集成文節番号4389)とするところについては、「大島本」では「なかなか・おしなへたるつらにおもひなしたまへるなむ・うたてありける」(101頁)となっています。

 この相愛大学本『源氏物語 帚木』(断簡)の本文は、一体何を言おうとしているのか、今後の検討に俟ちたいと思います。

 相愛大学本『源氏物語 帚木』(断簡)には、現在読まれている「大島本」と多くの本文の異同が確認できます。それらはすべて今後の課題として、今は正確な「変体仮名翻字版」をまずは作成して提供することに専念したいと思います。以下に、本日の成果を掲載します。


■相愛大学本「帚木(断簡)」(今回:第2丁裏〜第5丁表まで)
[変体仮名翻字版] (翻字:辻 義孝/補訂:伊藤鉄也)
  ・翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
    傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
    補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
    底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
[4274]--------------------------------------
者へ免れと・いふもいふも・いきの・した
なり・き江まとへ累・けしき・いと・古
こ新/〈ママ、諸本こゝろくるしく〉・らうたけ奈れ八・於可しう於
ほさる・ナシ・ナシ・堂可うへうも・あらぬ・【心】の/の〈墨ヨゴレ〉・
し累へ・なる越・於も者す尓も・於ほ
免い・【給】める可那・すき可ましう八・
ナシ・ナシ・みえ・多てまつらし・於もふ・ことこゝに
て/(ことここにて)・すこし・きこゆへきとて・いと・さゝ
やか奈れ八/(ささやか奈れ八)・かきい多きて・さう新
のうち・いれ・【給】尓・あやしく所毛ちより多れと免川る/て&所、多&毛、ちより多れと/$、八&と、(あやしくて多ちより多れ八、毛と免川る)、ち/〈次頁〉、(2ウ)
--------------------------------------
【中将】めく・【物】・
きたるき多る・やゝと/(ややと)・能ひ尓/ひ〈ママ、諸本【給】〉・あやし
くて・堂ちよりたれ八・ナシ・に本ゐ・きて・
か本尓も・かゝ類/(かか類)・古ゝち/(古古ち)・すれ八・於もひ
よりぬ・あさましや・こ者・い可なる・こと
そと・於もひ・さわ可るれと・きこゆ
へき・可多毛・なし・な三/\の/(な三な三の)・【人】奈ら八
こそ・あら免羅か尓も/免$(あら羅か尓も)・ひきかなく
羅免・堂れ多尓/堂〈ママ、諸本そ〉・【人】の・あまた・志らん八/の&志、(のらん八)・
いと越し可るへき・ナシ・ナシ・【見】さわきて・したひきたれと/ひ〈次頁〉、(3オ)
--------------------------------------
と可・なくて・おくなる・越
まし尓・ふし・【給】ぬ・さうし・ひきた
てゝ/(ひきたてて)・ナシ・【御】む可へに・おものとれよと・の【給】へ八・
【女】き三・【心】あ八せて可ゝるとしもやと/も〈判読〉(可可るとしもやと)・
ひとの・於もふらんと・ナシ・ナシ・わりなく於もふ尓/尓〈行末右〉・
な可れぬ者可り尓・あせ尓・なりて・いと・
なやまし介尓さへみゆ・いとこより
とりいて【給】こと尓そ/いとこより〈ママ〉、こと&いと・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・あらん・としころ
もすこし川へうあな可ちなる
ま尓て【物】を/尓&後な・ナシ・ナシ・の多まひ川くすへか免れと/か〈次頁〉、(3ウ)
--------------------------------------
なを・いと・わ可/\新き古
こちし者へる八/(わ可わ可新き)・う川ゝとも/(う川川とも)・於もふ【給】
へられ数こそ/【給】&【給】・かすならぬ・みな可ら
かう・おほしくたしけ類/れ&類、(おほしくたしけれ)・【御心】の/八&【御】・ほと
八・い可ゝわ/(い可可わ)・あ佐ましうと・於もふ・【給】遍し
羅さらん/(【給】遍し羅さらん)、し〈行末左〉・八と/八〈ママ、諸本い〉・可うような累・き者ゝ/(き者者)・
き八とこそ・者へなれとて・於したち・
【給】へ累・なさけなさお・ナシ・うしと・於もへ
るも・け尓・いと越しう・者つ可しけな
れ八・ナシ・その・き八/\毛/(き八き八毛)・【又】・於もひ志らぬ・う井こと奈れ八/う〈次頁〉、(4オ)
--------------------------------------
な可/\/(な可な可)・い者れし堂る
いと/者〈判読〉・ナシ・ナシ・ナシ・うたてあり介る・おの川から・き・た
まう・やうも・あらむ・あな可ち尓・
すきかましき【心】と八・さらに・ならぬ
を・さるへき尓や・志ふ/〈ママ、諸本け尓〉・可く・あ者め
られ・多てま川るもいとわ里なう・
ことわりなる尓・ナシ・三川からも・あやし
きまて那んと・ま免多ちて毛・す
へくよろ川尓・の【給】へと・いと者つ可し
け尓・たくひなき・【御】介者いの・いよ/\/(いよいよ)/よ〈判読〉(4ウ)
--------------------------------------
うちとけ・きこ江んも・ナシ・者つ可し介れ八・
すくよ可尓・【心】川きなしと八・みへ・堂て
ま川るとも・さる・可多に・いふ可ひなくて
も・すくしてむと【心】川よう・於もひな
して・川れなく・もて那す・ひと本【上】の/本【上】〈ママ、諸本から〉・
堂をや可なる尓・川よい・【心】を・志ひ
て・く者へ多れ八・奈よたけの・【心】ち・して・
さす可尓・越くへくも・あらす・ふしこと
に・【心】やましうて・あやにくけなる・
【心】さまを・いふ可ひなしと・於もひて/(5オ)
--------------------------------------[4451]




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2025年10月18日

日比谷で「須磨」(29)と『百人一首』(6)を読む

 今日は、日比谷公園で「日比谷公園ガーデニングショー2025」が賑やかに開催されていました。

251018_ガーデニング板.jpg

251018_日比谷公園.jpg

 出展テント数は35店、キッチンカーが9台も出ていました。
 大の花好きである妻は大喜び。ただし、京都に帰るのは明日になるので、花を持って帰れないことを理由にして気持ちを抑えていました。

 日比谷図書文化館の入口には、いつものように本日のイベントが掲示されています。

251018_掲示板.jpg

 今日も、次の2つの講座を担当します。
 @「ハーバード大学本『源氏物語 須磨』の変体仮名を読む」 13:00〜14:30
 A「『百人一首』を2種類の変体仮名で読む」  15:30〜17:00

 まず、ハーバード大学本「須磨」です。
 今日は、[「天」と「弖」について]という資料を用意していました。しかし、前置きの話が長くなったために、来月に回すことにしました。
 本文については、、第53丁裏2行目〜55丁表5行目までを、「変体仮名翻字版」で確認しました。
 本文の画像をここに提示して説明をする例は、今回はありませんでした。また、本日から参加なさっていた方もいらっしゃったので、少しゆっくりと丁寧に進めました。


--------------------------------------
ま者ゆき満弖・志川らひ・可し
徒介り・【251018_ココカラ→】者ゝきみ/(者者きみ)・なと可・めて多くとも・
【物】の・者しめ尓・川三尓・あ多り・な可され・を
八し堂らん・【人】をし毛・於もひ可介ん・
佐ても・こゝろ/(こころ)・とゝめ/(ととめ)・【給】へくはこそ八/八〈ママ〉・
あら免・堂王ふれ尓ても・あるま
しき・こと可なと・いふを・いと・い多く・ふや
く/±つ、(つふやく)・川み尓・あたる・ことは・毛ろこし尓毛・
王可・み可と尓毛・可く・よ尓・すくれ・【人】尓・こと
なる尓・なりぬる・ひとの・可奈らす・ある/(53ウ)
--------------------------------------
【事】なり・い可尓・毛し/〈ママ、諸本ものし〉・【給】・き三そは/は〈ママ〉・かの・
者ゝ/(者者)・三やす【所】八・をの可・をち尓・毛のし・
堂満ひし・あ勢ちの【大納言】の・むす免
なり・いと・可うさら那る・な・と里て・三や徒可へ
尓・い堂し多て・堂まへりし尓・可くは・
すくれ弖・ときめ可し・【給】な可らひな可り
し・本とに・【人】の・そ祢三・於ほくて・う勢・【給】
尓し可と・この・【君】乃・とまり・【給】へる尓・いと・
免て多し可し・【女】者・【心】・多可く・徒可ふへき・
【物】なり・をのれ・可ゝる/(可可る)・ゐ【中】【人】とゝ/ゝ〈ママ〉、(ゐ【中】【人】とと)・なりき多れと/れ〈次頁〉、(54オ)
--------------------------------------
え・於ほし寿てしなと・いひ井堂
里/た&堂、(いひ井た里)・[30]こ乃・む須免・すくれて毛・あらぬ可多ち
奈れと・け奈川可しく・あて者可尓・【心】者勢・
ある・さ満奈とそ・遣尓・【宮】こ乃・やむこ
と那き・【人】尓毛・於とるまし可里ける・【身】
の・あ里佐ま越・くち越しき・毛の尓・
於毛ひし里て・堂可き・【人】尓・王れを・
な尓の可春とん・於ほさし・本と尓・徒
け堂る・【世】越・者多・さら尓・三し・いのち・
奈可くて・於もふ・ひと/\尓毛/(ひとひと尓毛)・於くれ奈八/(54ウ)
--------------------------------------
堂ゝあま尓毛/(堂堂)・なり奈ん・う三の・そこ尓
毛・いり奈んとそ・【思】ひける・ちゝ【君】/(ちち【君】)・【所】世く・
【思】ひ可し徒きて・とし尓・ふ多ゝひ/(ふ多多ひ)・す三よ
し尓・まうてさせ介り・【神】乃・【御】志る
志を・とく【見】者やとそ・於もひける・[31]す満尓八・
--------------------------------------


 1時間の休憩時間には、古写本の翻字に関する質問を受けました。その他にも、いくつか質問や確認があったので、その対応もしました。

 次は『百人一首』です。
 まず、山科の元慶寺にある 12番歌 僧正遍昭と 21番歌 素性法師の歌碑に刻まれている変体仮名を確認しました。
 続いて、過日確認した、京都の雲林院にある 12番歌 僧正遍昭の歌碑の文字も、元慶寺の文字と比べながら再確認しました。

 テキストである『変体仮名でよむ 百人一首』は、28番歌の源宗干朝臣から36番歌の清原深養父までの、カルタに書かれている文字を、変体仮名に気をつけながら確認しました。
 《陽明カルタ》の文字が独特な字体となっている例が散見します。それに比べて《鶴丸カルタ》は親しみやすい流れるような線で書かれているのが特徴でしょうか。
 この講座でも、今日から参加なさった方がいらっしゃったので、雑談を挟みながら文字に関する情報は、いつもより少なめにしました。

 終わってからは、新橋駅から鎌倉駅へJRで移動し、鎌倉駅から江ノ島電鉄に乗り換えて由比ヶ浜駅のすぐ近くにある今日の宿に入りました。
 鎌倉は、京都よりも数段寒いように感じます。




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2025年10月15日

相愛大学本『源氏物語』(断簡)の勉強会の進捗状況

 お問い合わせがあったので、相愛大学(春曙文庫)本『源氏物語』(断簡)の変体仮名を確認する勉強会の進捗状況を整理して報告します。
 現在、相愛大学本『源氏物語』(断簡)については、京都駅前と宇治駅前の2箇所で、別々の巻を読み進めています。まだスタートしたばかりであり、また断簡ということもあり、どの回からの参加でも可能です。

 古写本の影印資料は、国文学研究資料館からパブリックドメインとして公開されている以下のサイトで確認できます。

国文学研究資料館 国書データベース

 以下のリストは、各回の活動の記録です。当日問題にしたことや、確認した範囲と翻字本文を、欠席者や国内外から遠方でリモートの学習をなさっている方々のために、予習や復習用として掲載しているものです。

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【1】京都駅前のキャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)で第2巻「帚木」(断簡)を読む

※次回〈第2回〉は、11月22日(土)です

「キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物語 帚木(断簡)』を読む(第1回)」
(2025年09月27日)

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【2】宇治駅前のシェア型書店HONBAKO京都宇治で第45巻「橋姫」(断簡)を読む

※次回〈第6回〉は、11月1日(土)です。

「宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(5)」
(2025年10月04日)

「宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(4)」
(2025年09月06日)

「宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(3)」
(2025年08月02日)

「宇治で春曙本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(2)」
(2025年07月05日)

「宇治で春曙本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(1)」
(2025年05月31日)

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 今後は、大阪府立中之島図書館でのハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」が本年末に終わる予定であることを受けて、年明けからは相愛大学本『源氏物語 手習』(断簡)を資料にした講座にする予定です。

 また、来年早々には、日比谷図書文化館でのハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」が終わる予定なので、その次は相愛大学本『源氏物語 宿木』(断簡)を対象にした講座にする予定です。

 相愛大学本『源氏物語』(断簡)5帖の内、残った第33巻「藤裏葉」は、上記4会場の内で最初に終わった所で翻字を確認する対象資料にします。

 この相愛大学本『源氏物語』(断簡)とハーバード大学美術館蔵『源氏物語 須磨・蜻蛉』及び国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語 鈴虫』との関係がいまだ詳らかになっていないこともあり、根気強く変体仮名に注目して翻字の確認を通して本文の素性を考えていきたいと思います。書き写されている本文が、現在の流布本となっている江戸時代の校訂本文である「大島本」とは内容が微妙に異なる鎌倉時代の古写本なので、慎重に本文の確認を続けているところです。
 江戸時代の『源氏物語』ではなく、平安・鎌倉時代の『源氏物語』の本文の実態に興味と関心をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 『源氏物語』の本文については、わからない事だらけです。まだまだ、『源氏物語』の本文について自由に意見を交わして考える必要があると思われます。そのためにも、基礎資料となる鎌倉時代の現存本文の確認作業に関して、一人でも多くの方の参加をお待ちしています。
 一緒に、鎌倉時代の『源氏物語』の本文の森を散策しませんか。
 質問や疑問に関しては、本ブログのコメント欄を利用してお知らせください。
 電子メールであれば[genjiito@gmail.com]宛にお願いします。




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2025年10月11日

中之島での『百人一首』(第17回)と『源氏物語 蜻蛉』(第28回)

 涼しい日だったので、出がけにブレザーを羽織るかどうかで迷い、結局は着ないままに中之島図書館へ行きました。必要はなかったものの、来月は必要になることでしょう。感じとしては、1ヶ月遅れの温暖化に伴う気候だと思えばいいようです。

 さて、本日の最初は「変体仮名で書かれた『百人一首』を読む」〔入門講座〕です。
 最初に、在原行平の歌が刻まれた須磨にある歌碑の写真をもとに、変体仮名で刻まれている和歌を読みました。

■16番歌 在原行平の歌碑(須磨・松風村雨堂の境内 関守稲荷神社の近く)
【中納言 行平卿詠】 【立】ち和賀連以な波能【山】乃【嶺】尓おふる
            萬徒登し【聞】可婆【今】か遍り古舞

 「【聞】可婆」(聞かば)の「婆」はあまり見かけない仮名文字です。私は京都の三条寺町にある蕎麦屋さんの例しか思いつかない話をしました。

251011_御曽婆と甼.jpg


 なお、「寺甼」の「甼」は「町」の異体字です。
 この「甼」の例は、西洞院通の突き当たりにある茶道の武者小路千家の官休庵西館の前にある、「甼内安全」と町名の「西無車小路町」が思い出されます。街中を歩くと、さまざまな文字と出会えます。

251011_甼と無車.jpg

 次に、『百人一首』のカルタに描かれた図様で、後ろ向きの姿の比較(試案)を一覧にしたものを提示しました。これは、《陽明》《鶴丸》《光琳》の3種類のカルタを例にして整理したものです。

251011_百人-17後ろ姿_2.jpg

 結論は出ないものの、《陽明》カルタに左向きの姿が多いことや、横や後ろ向きの姿は61番歌の後に多いことなど、さらには89番歌の式子内親王だけは《鶴丸》では上半身が隠れていて見えない図様であることなどを、思いつくままにお話しました。

 『百人一首』は、35番歌の紀貫之から44番歌の中納言朝忠までを、変体仮名に注目して文字の確認をしました。


 30分の休憩をおいて、次は「ハーバード大学本『蜻蛉』巻の仮名文字を読む」です。書家の宮川保子さんが臨模を進めておられる相愛大学本『源氏物語』の「手習」巻の下書きと清書を見てもらい、平安から鎌倉時代の写本のありようや、書写の実態に及ぶ話をしました。

 その後は、変体仮名の「天」と「弖」について多くの例を示して、詳細な説明をしました。今日からは、この2文字をみなさんは識別できるようになります、ということを強調しました。
 なお、国文学研究資料館蔵「橋本本 若紫」の38丁表8行目にある、「弖」の上に「て」となぞっている例を提示し、書写にあたって最初に書き写した「弖」をわざわざ削って「て」と書き直しているのは、明確に字母の違いを意識し区別していたことの例証として紹介しました。この写真は、高精細の顕微鏡を使って撮影したものです。

251011_橋本本「若紫」弖&て.jpg

 スクリーンには、次にあげる私のブログの記事を映写し、さまざまな例を見てもらいました。そして、私がこの「天」と「弖」を明確に区別して翻字をしだしたのが「2017年12月10日」からであることも今回確認しました。
 以下に、「天」と「弖」に関する私のブログの記事のアドレスを列記して、これまでの検討を振り返る資料とします。

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(1)「変体仮名の字母─「天」と「弖」は見分けられるか」

 ※「京洛逍遥(427)高校駅伝と猿回しと終い天神と-2016」

(2)「ひらがな「て」の字母とされている「天」と「弖」の区別について」

(3)「平仮名「て(天)」と変体仮名「弖・氐」について(その2)」

(4)「平仮名「て」の字母に関する資料を検討中」

 ※「日比谷での源氏講座で香道の話を聞く」

(5)「平仮名「て」と「弖」の直前に書かれている「り」と「里」について」

 ※「日比谷図書文化館で橋本本「若紫」を読む(2017-第7回)」
 (「筆の入り方が「て」のようにはっきりとした横線ではなく、筆を突いてすぐに下に流れ、さらに「く」の線を描く仮名は、「天」ではなくて「弖」を字母とするものにしたいと思います。」)

(6)「熊取ゆうゆう大学:「若紫」を読む(その9)「天」と「弖」の対処」

(7)「熊取ゆうゆう大学:「若紫」を読む(その10)ひらがなの「天・弖・氐」」

(8)「日比谷で橋本本「若紫」を読む(2018年度-その1、触読・「弖」・糸罫)」

 ※「池田本「桐壺」を変体仮名で読む(No.1)」
 (「今後は、「介」と「弖」をこれまでの「个」や「天」と区別して、厳密に字母を明示していくことにします。」)

 ※「池田本「桐壺」を変体仮名で読む(No.2)」
 (「翻字に関する注意事項として、今後は「介」と「个」、「弖」と「て」を厳密に読み分けていくことを確認しました。これから翻字作業に参加してくださる方がいらっしゃったこともあり、この点は強調しました。」)

 ※「オンラインセミナー「デジタル時代の変体仮名」に参加して」
 (「高田智和氏(国立国語研究所)は、ユニコードに変体仮名の字形を登録するにあたり、「天」と「弖」については「天(て)」の方に無理やり決めた、とのことでした。また、「弖」は「ユミイチ」と読んでおられるようです。」)
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 次は、ハーバード大学本「蜻蛉」の本文を「変体仮名翻字版」で翻字するメインの学習となります。
 今日は、ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』の63丁表8行目から64丁表までを見ました。

 問題にしたことを、いくつか列記して記録とします。

(1)細かなことながら、次の「す」(64丁表4行目)の文字の背後には何か別の文字が書かれているようです。赤の矢印で示した突き出た線が左下に降り、それが右に折り返していることまでは確認できます。しかし、それが何という文字を書こうとしていたものなのかは、このままではわかりません。

251011_ハーバード「蜻蛉」64oL4△&す.jpg

(2)次の例も、「なる」(64丁表6行目)の下に書かれている、なぞられている文字とその理由がわかりません。

251011_ハーバード「蜻蛉」64oL6△&る.jpg

 「すそろなる・なけきの」の「る」の下に書かれている赤矢印で明示した線は何という仮名文字なのか、今は見当もつきません。

(3)「あふ【時】と/【時】$、(あふと)・きこゆ累/△&累」(64丁表10行目)では、「あふ【時】と」の「【時】」にミセケチ記号があるので、後にこの文字はなかったことにする意味を示しています。なぜ「【時】」という漢字を書いてしまったのかを考えました。

251011_ハーバード「蜻蛉」64oL10時・累.jpg

 ここは丁の最終行であり、書写の道具として使っている糸罫は料紙の上からは外し、次のページの書写に移るために親本のページも捲る動作が伴っているところです。ということは、書き写す行為の気持ちの集中が途切れるところです。そして、書写している文字列は「あふときこゆ累」であり、気持ちの緩みから「と」と「き」が潜在意識に残ったままだったために、「【時】」という漢字をつい書いたのではないでしょうか。行末や丁末ではよくある、集中力が途切れるときに起きる現象の一つだと思われます。
 また。この文字列の最後の「きこゆ累」の「累」の下には、何か文字があります。ハーバード大学では原本を3回調査をしています。高精細の顕微鏡などを用いて現場で実見しても、その時から読めなかった文字です。残念な思いが、今も残っています。

 こうした判読に困難が伴う箇所については、再度ハーバード大学で原本を閲覧する機会が得られたなら、正確を期するためにもこうした点などを、他の多くの疑問点も含めてじっくりと確認したいと思っていることをお話しました。

 以下、本日確認した「変体仮名翻字版」の翻字の確定版です。

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翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部
( 「 )・末尾( 」 )、底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
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と/(すきものなら八八やと)・【思】尓・いま八な越・川きなし・【251011_ココカラ→】[33]れいの尓しの・
わ多【殿】を・阿りしに・ならひて・わさと於八し多るも・
あやし・ひめ三や・よる八・あな多に・わ多らせ・【給】介れ八/(63オ)
--------------------------------------
【人】尓/尓$/\〈薄墨〉、(【人人】)・川き・三るとて・この・わた【殿】尓・うちとけ・
【物】可多り・する・本となり介り・志やうのこと・いとを可
しう・ひきすふる・川ま於と/こと&於と、(川まこと)・きこゆ・於もひ可介ぬ二・
より於者して・なと・可く・ね多まし可本尓・川ま
ならし・【給】と・の多万う尓・三な・於とろ可るへ
可めれと・すこし・あけ多る・す多れを・うちをろ
しなとも・せ須・於き阿可りて・尓るへき・この可
三や八・ゝへるへきと/(八へるへきと)・いらふる・こゑ・【中将】の【御】もと
ゝ可や/(と可や)・いひしなり介り・まろこそ・【御】八ゝ可多の/(【御】八八可多の)・
於ちなと・者可なき・こと越・の多万ひて・れいの/(63ウ)
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あな多に・於八し万すへ可りめり/け&め、(於八し万すへ可りけり)・なに王さ
を可・この・【御】さとす三の・本と尓八・せさせ・【給】
なと・あちきなく・とひ・【給】・い川く尓ても・【何事】
を可者・多ゝ可やう尓てこそ八/(多多)・すくさせ/△&す・【給】
めれと・いふ尓・於可しの・【御身】の・本とやと・於もふ尓・
すそろなる/△&る・なけきの・うちわすれてし川
るも・あやしと・於もひよる・【人】もこそと・万きら
八し尓/+八つら八しき〈ママ、薄墨〉・さしいて多る・【和琴】を/△&【琴】・多ゝさな可ら/(多多)・
可きなら志・【給】・里ちの・しらへ八・あやしう・於
里に・あふ【時】と/【時】$、(あふと)・きこゆ累/△&累・こゑなれ八・きゝ尓くゝも/も〈丁末左〉、(きき尓くくも)、(64オ)
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 図書館を出た中之島公園の中央公会堂前では、「北浜蚤の市」が開催されていました。アンティークやアクセサリーや雑貨など、若者向けのお店が130店ほど出店しています。

251011_蚤の市.jpg


251011_公会堂.jpg

 若者向けの品物ばかりだったので、残念ながら手に取って見るものはありませんでした。もう少し時代と興味をずらしてもらえると、楽しく参加できたのですが。
 今日から3日間、この3連休中の開催です。興味のある方は、足を運んで見られたらいかがでしょうか。多くの若者が各出店に集まり、さまざまな小物を買っておられました。




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2025年10月04日

宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(5)

 今日はまず、シェア型書店HONBAKO京都宇治に行くと早速、私が箱主となっている2つの本箱の本の入れ替えをしました。

251004_本箱.jpg

 「特集:小野小町」は終了とし、次は「特集:辞典-事典-小百科」に入れ替えました。隣の本箱の「特集:『源氏物語』」は数冊の本を差し替えました。いずれも、私が読んでほしいと思う本を選んでいます。この書店にお出でになる方々の好みが摑み切れないので、試行錯誤の選書です。一カ月毎に特集を組み直して行くつもりです。
 ここは、本好きの方々が集うコミュニティです。楽しい本が並んでいます。私が書店で行かないコーナーにある本がたくさんあるので、今日も2冊いただいてきました。すばらしい、本との出会いの場所であり、人との出会いの場所でもあります。末長く、多くの方々との交流の場になるように、願っています

 今日の勉強会は、相愛大学春曙文庫本『源氏物語 橋姫』の第五丁表から第七丁裏までを、変体仮名に正確に翻字しながら確認を進めました。いろいろな問題点が見え出したので、列記して整理しておきます。

(1)変体仮名「支」(き)、「春」(す)、「身」(み)、「免」(め)、「累」(る)が頻出します。これらは、ハーバード大学本「須磨・蜻蛉」や歴博本「鈴虫」とは異なる現象です。ハーバード本の親本や書写者が、この相愛大学本のグループとは異なることに起因すると思われます。

(2)助詞「登」(と)の多用が見られます。これも、ハーバード大学本「須磨・蜻蛉」や歴博本「鈴虫」とは異なる現象です。

(3)撥音便「ん」(「八んへらん/5ウ」、「へ可んめ累/6オ」)と変体仮名「ん・毛・无」(「とんの/6オ」)の表記が気になります。これもまた、ハーバード大学本「須磨・蜻蛉」や歴博本「鈴虫」とは異なる現象です。

 次に、相愛大学本の写本に書き写された文字の特徴に関して。

(4)相愛大本の「帚木」(キャンパスプラザ京都で読んでいる写本)と「橋姫」の「お」は、ハーバード大本「須磨・蜻蛉」や歴博本「鈴虫」とは字形が異なるものがあります。
 ※相愛「橋姫」5丁表10行目の「お」の字形

250902_春曙橋姫5oL10おき.jpg

 ※相愛「帚木」1丁表2行目の「お」
250926_相愛「帚木」1oL2お.jpg


(5)次の例は、ナゾリ書きの実態から、書写に用いた親本の本文の素性が推測できるものです。
 ここでは、保阪本(重要文化財、文化庁蔵)の独自異文である本文を書写していることがわかります。つまり、保坂本だけが「なへてならす」という本文を伝えている箇所です(『源氏物語別本集成』451869)。相愛本がその保阪本の独自異文と同じ本文を書写している箇所に、後の人が校合結果として「ならす」の上に「おほえ」をなぞって上書きしているのです。これ以外にも、保阪本と相愛大本の近似性が見られる箇所は枚挙に暇がありません。相愛大本「橋姫」は、保阪本のグループに属する本文を伝えていると考えていいと思われます。
 ※相愛「橋姫」5丁裏6行目のナゾリ 「於ほえ/ならす&於ほえ」

250903_春曙「橋姫」5uL6ナゾリ.jpg

(6)次の例は、誤読や誤写が生ずる原因となることの例証に好例となるものです。
 相愛本「橋姫」6丁表9行目の字形は、「を可く」ではなくて「本そく」と読む箇所です。その左横の「をなし」の「を」とよく似ているのでわかりやすいでしょう。「そ」の第一画の横線が「を」のシンニョウと勘違いさせることから、誤読や誤写が生じかねない字形となっているものです。

251004_相愛「橋姫」6oL9本そく.jpg


(7)次の相愛大本の「ゐ」の下に書かれている文字について、今日は検討に時間を割きました。
 何という文字がなぞられたのか、ということです。可能性としては、以下の3点が考えられます。

 @「心△」と書いた上に「ゐ」を書いている
 A直後の「雲」に目移りして「雲」を書きさした状態で、途中から「ゐ」を上書きした
 B左下の「登」の書き始めの文字に似た文字を書いている途中から「ゐ」を上書きした

 これらのうち、「橋姫」6丁裏4行目のなぞられた文字は何か(ゐ堂る尓/△&ゐ)は、今はどれだと確定ができません。今後の課題とします。

251004_相愛「橋姫」6uL4△&ゐ.jpg

(8)用紙に裏写りが激しいことから、紙を砧などで叩く加工の工程が粗く、墨が吸収しやすい状態のものであったようです。ハーバード大学本等はこうした裏写りは少ないので、これは料紙のグループが異なるものだった可能性が高いと思われます。専門家の鑑定を待ちたいところです。

 本日確認した第五丁表から第七丁裏までの[変体仮名翻字版]は、以下の通りです。
 国文学研究資料館から公開されている相愛大学春曙文庫本「橋姫」の写本の画像は、以下のアドレスで確認することができます。

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於本ゆれ者・【人】・き可ぬ・と支は・
あ遣くれ・可くなん・あそ者勢登・志
毛【人】尓て毛・身や古の・可多より・まいり・
堂ちまし累・悲と・【侍】・ときは・
をと母・世さ世・【給】者春・於ほ可多・可く
て・【女】堂ち・越八しま春・【事】越者・
可くさ勢・【給】ふ・奈へ弖の・【人】尓・志
ら世・堂てま川らし登・於ほし・の多
ま葉するなり登・【申】世は・うち王らひ
て・ありきおき・【御物】可くしなり・し可/(5オ)
--------------------------------------
しのひ・【給】奈礼登・み奈【人】・あ里
可多き・【世】乃・堂免し尓・きこゑい
徒免る越登・の多まひ弖・な越・し累へ
世よ・王可れ者/可$、(王れ者)・春き/\しき/(春き春きしき)・心なと・奈支・
【人】そ・可くて・越者しま春ら無・【御】あり
さま能・あやしう・介尓・なへ弖/弖±二・於ほえ/ならす&於ほえ、(ならす)・
堂ま者ぬなり登・万免や可尓・乃多ま
へ葉・あ奈・可しこ・古ゝろ奈き/(古古ろ奈き)・やう尓・
のち能・きこゑや・八んへらん登て・あ奈
堂の・越まへ八・【竹】の・春い可き・し古免弖/古〈次頁〉、(5ウ)
--------------------------------------
み奈・へ堂弖・【事】奈免る越・ゝ
しへよ世/(越しへよ世)・堂弖ま川礼里・【御】とんの・
【人】八・尓し乃・らう尓・よひ春ゑ弖・こ能・
【殿】井【人】・あひしらふ・あ奈多尓・可よふへ可
んめ累・春い可/〈ママ〉・と越・春こし・越しあ介弖・
身・【給】へ八・ナシ/+月・を可し支・【程】尓・きり王多れ累越・
な可免弖・春多れ越・三し可く・まきあ遣て・
【人】〻/(【人人】)・井堂り・すのこ尓・いと・佐むけ尓・【身】・
本そく・な衛者免累・王ら八・【一人】・
を奈し・さまなる・於と那毛・井堂り/堂〈次頁〉、(6オ)
--------------------------------------
うち那累・【人】・ひとり者・ゝし
ら尓/(者しら尓)・すこし・ゐ可くれ弖・ひ者越・
まへ尓・越きて・者ちを・てまさくり尓・
し川ゝ/(し川川)・ゐ堂る尓/△&ゐ・【雲】・可くれ堂りつる・
【月】乃・【俄】・い登・あ可く・さしいて
堂れ者・あふきならて・古礼して
毛・徒き葉・ま祢き川へ可り介り登
て・佐し能そき堂累・可を・い身
しう・らう堂け尓・尓本ひや
可なるへし・そひふし堂累/堂〈次頁〉、(6ウ)
--------------------------------------
【人】八・【事】能・うゑ尓・可多ふ支
可ゝ里弖/(可多ふ支可可里弖)・い累・ひを・可へ春・八ち
古そ・あ里け礼・佐ま・【事】尓毛・【思】
越よひ・【給】・【御心】可奈登て・うち王ら
ひ堂る・け者ひ・い満・すこし・
を毛里可尓・よし徒き堂里・越よ
者春とん・古れ毛・【月】尓・者那累ゝ/(者那累累)・【物】
可葉なと・者可奈き・【事】・うちと
遣・の堂まひ可八し堂累・介者い
登母・さら尓・よそ尓・【思】や里し尓八・尓す/(7オ)
--------------------------------------
い登・あ者れ尓・な川可しう・越可し・
む可し毛の可多里奈と尓・可多里川堂
へ・わ可き・【女房】なと乃・よむ越毛・
きく尓・可奈ら春・可やう能・【事】越・
いひ堂累・佐し毛・あらしと・尓くゝ/(尓くく)・
をし八可るゝ越/(をし八可るる越)・介尓・あ者れな累/り&累、(あ者れなり)・
【物】ゝ具ま毛/(【物】の)・あ里ぬへ可り介りい/い〈ママ、諸本と〉・古ゝろ/(古古ろ)・
う川里ぬへし・幾里・ふ可介れ八・
さや可尓・身ゆへく毛・あら春・ま多・
【月】・さしいてなと/(ぬと&なと)、(さしいてぬと)・於ほ春・【程】尓・越く能/(7ウ)←【251004_ここまで】
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 天気予報は雨でした。しかし、宇治駅前までの往復で濡れることなく帰れました。
 相変わらず、駅前には多くの観光客がおられます。宇治橋通り商店街は大混雑です。
 今日も、抹茶コロッケをいただいて帰りました。




posted by genjiito at 22:29| Comment(0) | ■講座学習

2025年09月27日

キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物語 帚木(断簡)』を読む(第1回)

 1階正面入口にある掲示板には、いつものように案内が出ています。
 ただし、タイトルが「河内本源氏物語を変体仮名で読む」とあるのは間違いです。正しくは、「相愛大学蔵源氏物語「帚木(断簡)」を変体仮名で読む会」です。3ヶ月前に予約を取った時の、申請書類に書いたままで掲示されました。訂正を忘れていました。次回からは気をつけます。

250927_掲示板.jpg

 今日はまず、扱う資料が新しくなったために、これからの内容について確認しました。配布資料には、次のように2つの項目に分けて説明文を記しました。
 最初に、扱う資料の概要についての説明です。

(1)勉強会の内容
 ここでは、『源氏物語』の第2帖「帚木」に書かれた、鎌倉時代の古写本の断簡の仮名文字を読みます。
 テキストとする古写本は、鎌倉時代中期に書写された現存最古の古写本の一つであり、美麗な美術品です。具体的には、相愛大学の春曙文庫が現蔵する断簡五冊の内、「帚木」巻に書写されている文字を変体仮名に注目して確認していきます。
 今回使用する資料は、国文学研究資料館から公開されているパブリックドメインの画像です。
 かつてこれは、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』(「須磨」「蜻蛉」)と、国立歴史民俗博物館蔵「鈴虫」(重要文化財)と一緒に伝えられていた古写本でした。春曙文庫に伝わる他の四冊は、第三三帖「藤裏葉」・第四五帖「橋姫」・第四九帖「宿木」・第五三帖「手習」で、すべて現在は断簡としての本文しか残っていません。
 この古写本に書かれている文字が、とにかく読めるようになることを、当面は第一の目的とします。一人でも多くの方が、日本の文化資産である変体仮名が読めるようになることを願って開催する勉強会です。そして、これはデータベースの構築へと展開し、生成AIで分析していきます。
 [参考資料]
『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編著、新典社、2013年)
『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(伊藤編著、新典社、2014年)
『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』(伊藤・阿部・淺川 共編、新典社、2015年)
『現代の図書館』(vol.62 no.3、通巻251号、日本図書館協会現代の図書館編集委員会編、2024年)
  相愛大学図書館「春曙文庫」の蔵書とその最新研究/阿尾あすか
  春曙庵主田中重太郎−その人となりと蔵書形成/山本和明
  天理図書館と「源氏物語」古典籍資料−蒐集の経緯・名品の紹介/岡嶌偉久子
  日本古典文学作品とAI・機械翻訳について/淺川槙子

 次に、相愛大学本の本文についての説明です。
 ここで、田中重太郎先生が「いま行われている源氏物語の本文と読みあわせると、そらおそろしい気がして来る。」とおっしゃっていることに関連して、この相愛大学の本文が通行の流布本である大島本といかに違うものであるかを、私見をもとに補足説明をしました。鎌倉時代に読まれていた『源氏物語』の本文の内容が、今とは違うものがあることを体感しましょう、という主旨での話をしたのです。大島本は、あくまでも室町時代の写本に江戸時代の書き込みがなされたものを取り込んだ本文です。私は、鎌倉時代の本文が読める環境作りを心がけて、まずは正確な鎌倉時代の『源氏物語』の本文の実態を書かれている文字に忠実な表記で確認しているところです。

(2)春曙文庫の『源氏物語』に関する説明
 リーフレット「春曙庵主田中重太郎その人とことのは」(2024.03_ver.01)
  国文研共同研究「相愛大学「春曙文庫」に関する研究−書物と人」の成果として製作

■源氏物語本文について(田中重太郎)
 ところで、源氏物語の本文でも定家の証本がいま定本視されているが、いわゆる別本系の本文と読みくらべると、いまの源氏物語の本文は、なんだかばかに整頓され、みがかれ過ぎた感じがする。架蔵の鎌倉初期書写の源氏物語断簡(昭和三十九年十月刊)を読みかえしていると、こんな本文の源氏物語がすくなくとも平安末期にはあって、読まれていたのだと思い、いま行われている源氏物語の本文と読みあわせると、そらおそろしい気がして来る。(下略)  (清少納言と「ほのかなり」と『平安文学研究』第四十二輯、昭和四十四年六月号、『枕草子三十五年』再掲)
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リーフレット『春曙文庫の名品2 知られざる名品 古筆切・断簡・清少納言の肖像』(2023.03_ver.01)
  国文研共同研究「相愛大学「春曙文庫」に関する研究−書物と人」の成果として製作

『源氏物語』の断簡(完全な形ではなく、切れ切れとなって不完全な状態で残ったもの)。正方形に近い形の桝形本で、本文は十行書き、列帖装(れっちょうそう)であったと推測される。鎌倉時代中後期の書写と考えられ、筆者は不明だが、五人以上による寄り合い書きである。雁皮紙が使用され、花・鳥・紅葉・月などのぼかし絵が入っている部分がある。
 断簡の本文は、広く読まれている青表紙本(藤原定家が書写や校合に関与した本)系統の『源氏物語』とは異なる部分が多く、別本に分類される陽明文庫本(鎌倉中期書写とされる写本)との一致が見られる。田中重太郎による解説と帚木巻の一部の翻刻を付けて、東風社からコロタイプ印刷による複製が刊行された(一九六四年)。藤裏葉巻と橋姫巻の前半は相愛国文 九・一〇に、柿谷雄三が翻刻を掲載している。
(以下略)(川渕紗佳・飯田実花)


 なお、相愛大学本『源氏物語』(断簡)の全画像は、国文学研究資料館からパブリックドメイン(https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100386667/1?ln=ja)として公開されているので、全丁が自宅で自由に確認できます。

250927_NIJL相愛『源氏物語』表紙.jpg


250927_NIJL相愛『源氏物語』木箱.jpg

250927_NIJL相愛『源氏物語』1表.jpg


 さて、本日は「帚木(断簡)」の第1丁表から第2丁表までの3ページ分の本文を[変体仮名翻字版]で確認しました。『新編日本古典文学全集(1)』(小学館)では98〜99頁にあたり、光源氏が空蝉の部屋に忍び入る場面です。

 本日、問題にしたのは以下の事例です。8項目に整理して列記します。
 本文異同の例示に当たっては、次の順に記します。
 ※丁数と表裏/行・源氏物語別本集成文節番号「相愛本」 「大島本」
 なお、本文の表示は諸本のほとんどが「変体仮名翻字版」になっていない現状を鑑みて、ここに限っては現行の平仮名で対校しています。

(1)1オ/1・4119 「ねたる」 「ふしたる」

(2)1オ/1・4121 「いとこにそ」 「いつこにそ」

(3)1オ/2・4123 「とおかき」 「とをき」

(4)1オ/4・4132 「いとふなり」 「いらへすなり」

(5)1オ/9・4158 「からかつ」 「からひつ」

(6)1ウ/5・4179 「おんなは たゝ よひつる」 「もとめつる」

(7)2オ/1・4203 「そてのさはりておともきこえす」 「きぬのさはりてをとにもたてす」

(8)2オ/9・4234 「あさましうこゝにはさへき人もはへらすなととかへにこそ」  
「こゝに人ともえのゝしらす心ちはたわひしくあるましきことゝ思へはあさましう人たかへにこそ」

 (2)〜(5)は、単純な異同のように見えても、いろいろな事情や背景が見え隠れしているものです。
 (1)(6)(7)は、用語や表現が異なるものです。(6)に関して、私は当初「ただよひつる」で「漂ひつる」の意味で異同を理解しようとしていました。しかし、本日の参会者から「ただ、呼びつる」の意味ではないか、との指摘を受け、自分の勘違いを知らされました。いつもながら、教えられることの多い集まりです。
 (8)は、あまりにも異なる本文異同の行文なので、丁寧に読み解いて行かなくてはなりません。大島本の方が、長い文章になっているところです。(1)(6)(7)は、相愛大本の方が大島本よりもわかりやすい本文になっているのではないか、という指摘がありました。しかし、この(8)は大島本の方が長文なので、相愛大本の解釈しだいでは、大島本がわかりやすくなっているということになる可能性があります。いずれにしても、詳細な検討は後日に、とします。

 また、「心見尓」(1オ7行目)は「【心見】尓」としたことを、特記しておきます。

 本日確認した「変体仮名翻字版」は、以下のようになります。

■相愛大学本「帚木(断簡)」(今回:第1丁表〜第2丁表まで)
[変体仮名翻字版]

・翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
  傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
  補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
  底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
※〈朱点〉の有無から、複合語を認めていない場合を集めるとおもしろい。

[024119]--------------------------------------
て・ね堂るへき/〈ママ〉・【中将】のき三八・いとこに
/と〈ママ、諸本つ〉、そ&に、(いとこそそ)・【人】け・とお可き/可〈ママ〉・【心】ち・して・【物】むつ可し
きひと・いふなれ八・なけしの・し毛に・
【人】/\/(【人人】)・ふして・いとふ/と〈ママ、諸本ら〉・なり・志も尓なん・ゆき・
をりて・堂ゝいまなん/(堂堂いまなん)・まうのほらん
と者へり川と・いふ・三那・し川まりぬる・け
者ゐ奈れ八・ナシ・かけかねお・者那ちて・【心見】
尓・ひきみれ八・ナシ・あなたより八・さゝさり介
り/(さささり介り)・き【丁】越・さうしくち尓/う〈ママ〉・さして・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・から
可川堂つ/可〈ママ、諸本ひ〉・【物】・をきて・み多りか者しきお/お〈次頁〉、者&者、き〈丁末左〉、(1オ)
--------------------------------------
ナシ・わけいり・【給】て・け者ゐ・する・本とに・
より・【給】へれ八・ナシ・ナシ・いと・さゝや可尓て/(ささや可尓て)・ふし
堂りひ八本のくらきに・なまわ川
ら八し介れと・うへなる・きぬを・お
しやり【給】尓於んな八堂ゝ/(堂堂)・よひ川
・【人】と・於もひ介り・いと・しのひて・【中将】・
免し川れ八・【人】志れぬ・於もひの・志るし・
ある・【心】ち・してと・いふ越・と可う毛・
於もひ・わ可れす・もの尓・おそ者るゝ/(おそ者るる)・
古ゝち/(古古ち)・して・やゝと/(ややと)・おひゆれ八と・可本尓/(1ウ)
--------------------------------------
そて能・さ者りて・於とも・きこ江寿
うち川けに・布可ゝらぬ/(布可可らぬ)・【心】と・ナシ・ナシ・於ほさん
も・こと者りなれと/八&後と・としころ・於もひわ
多る・【心】の・うちも・きこ江志らせんとて・
かゝる/(かかる)・於りを・まちいて堂る毛・さらに・
あさう八・あらしと・於もひなし・【給】へ
と・いと・や者らか尓て・お尓か三も・あら
堂ゝすましき/(あら堂堂すましき)・け者ゐなれ八・者し
たなう・あさましうこゝに八さへき/八さへき〈ママ〉、(あさましうここに八さへき)・
【人】毛者へらすなと/△&毛・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・堂可へ尓こそ/(2オ)
[4246]--------------------------------------


 終了後は、駅前を散策しました。
 最近は抹茶が海外の方も含めて大人気で、なかなか手に入らなくなっているとのことなので、帰りに、京都駅前の伊藤久右衛門でお徳用の「宇治抹茶」をいただきました。これは、3ヶ月毎に買っている抹茶です。
 品物を渡してくださった店員の方に、宇治のお店によく行くことと、私の父の名前は伊藤忠右衛門というんですよ、と言うと、ご縁があってうれしいです、とおっしゃってくださいました。そして、価格が高くなっていますね、と聞くと、最近は抹茶ブームのため、量も減り値段も上がり、私たちもびっくりしています、とのことでした。
 そうなんです。今日の抹茶は「70g \3,121」でした。手元に4月6日に宇治駅前店で購入した時のレシートがあり、それを確認すると、同じ商品が「100g \1,836」とあります。7月のレシートが見つからないものの、同じ値段だったか少し高かったかも知れません。
 つまり、4月初めにグラムあたり「18.4円」だった抹茶が、9月末には「44.6円」に高騰したのです。なんと「2.4倍」です。
 おりおりに自宅では、食後にお気に入りの茶碗を出して、シャカシャカと茶筅を振っています。私は黒い楽、妻は金継ぎをした赤い楽。しかし、こんなに抹茶が高くなってのでは、気楽に飲むことがためらわれます。抹茶の製造過程を知っているだけに、急に増産というわけにもいかないでしょう。いやはや、困ったことです。

 京都駅の中央口改札前に、新たなモニュメントができました。一昨日、除幕式があったものなので、早速行って来ました。京都ロータリークラブが創立100周年記念として造られたものです。私は、造形物よりも先月102歳でお亡くなりになった裏千家の前家元の千玄室さんが揮毫した「未来 今から一歩」という言葉を見たかったのです。モニュメントのデザインは、現代彫刻家の吉田和央さんだそうです。

250927_モニュメント.jpg


 この新設された場所は、希望の広場と名付けられ、待ち合わせの場所となって行くことが期待されています。しかし、すぐ前がバス停のターミナルなので、ここに人々が集まると、改札前からバス停への、人の行き来に差し障りが起きそうです。待ち合わせの場所と言わずに、モニュメントと書を見て楽しむ、ということでいいと思っています。




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2025年09月20日

日比谷で「須磨」(28)と『百人一首』(5)を読む

 日比谷図書文化館での講座は、次の2つです。
@「ハーバード大学本『源氏物語 須磨』の変体仮名を読む」 13:00〜14:30
A「『百人一首』を2種類の変体仮名で読む」  15:30〜17:00

 いつも朝早く宇治を発ち、最寄り駅の有楽町にはお昼前に着くようにしています。
 今日はいつもより早く着いたので、駅前のビックカメラの中のスシローで早めの食事をし、近くの馬場先門前にある静嘉堂文庫美術館へ立ち寄りました。玄関のガラス戸の向こうが皇居です。

250920_静嘉堂.jpg

 今回のテーマは「絵画よくわかる神仏と人物のフシギ」でした。
 重要文化財である明治生命館の1階は、格調の高さと清潔感に満ちた会場でした。初めて入った美術館なので、少し圧倒される雰囲気を感じます。展示には、イラストを配したかわいいフリップが効果を発揮していて、観覧者に語りかける口調で問いかけて来ます。よく考えられた配慮です。レベルの高い美術館でした。
 なお、期待した国宝の曜変天目茶碗は出品されていませんでした。

 日比谷公園の芝生を、一人黙々と芝刈りをするロボットと出会いました。暑い中を、と言おうとして、今日の東京は肌寒い程に涼しいことに気づきました。

250920_芝刈り機.jpg


 日比谷図書文化館の入口には、いつものように本日のイベントが掲示されています。

250920_掲示板.jpg


 まず、ハーバード本「須磨」です。
 今日は、51丁裏から53丁裏2行目までを確認しました。

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あはれ尓て・
「ともちと里・もろこゑ尓・奈く・あ可【月】八・
ひと里・祢さ免乃・とこ毛・多の毛し」・【又】・越き
堂る・【人】毛・奈介れ八・【返】〻/(【返返】)・ひとりこち
弖・ふし・【給】へ里・【夜】・ふ可く・【御】てう川・まい
り弖・【念】すなと・し・堂満ふ毛・めつ
らしき・ことの・やう尓よろ川のこと・
めて多くの三・みえ・多満へ八・え・み・多てま川
里・すてゝ/(すてて)・【人】や里那らす・【亰(京)】へ・あ可ら佐万
尓毛・えいてさり介り・[29]あ可し乃うら八/(51ウ)
--------------------------------------
堂ゝ/(堂堂)・者ひ王多る・本と奈り遣れ八・
よしきよは・可乃・【入道】乃・む須免越・
於もひいてゝ/(於もひいてて)・ふ三なと・や里けれと・【返
事】毛・勢す・ちゝの【入道】そ/(ちちの【入道】そ)・きこゆへき・
こと那ん・ある・あ可ら佐ま尓・多いめんも
可那と・いひ堂り介れと・うけひ可さら
む尓・と可くゆき可ゝ里て/い&ゆ、(いき可可里て、ゆき可可里て)・む奈しく・可へ
らん・うしろ毛・をこなるへしと・くし
い多くて・於もひ川ゝむ/(於もひ川川む)・よ尓・しらす・【心】
堂可く・於もへる尓・くに乃・うちは・可三乃/(52オ)
--------------------------------------
ゆ可りの三こそは・可しこき・もの尓八・
寿免れと・ひ可免る・【心】は・さら尓毛・【思】八て
とし【月】を・へ介る尓・こ乃・【君】・かく弖・
をはすと・きゝて/(ききて)・者ゝのき三に/(者者のき三に)・可多らふ・
やう・き里徒本乃可うい乃・【御】者ら
乃・【源氏】・ひ可るきみこそ・於ほやけ二・
可しこまりて・す満乃うらに・毛のし・
堂まふ奈れ・あこ乃・【御】寿く勢
尓て・於ほえぬ・ことの・あるなり・い可て・可
かる・川いて尓・こ乃・【君】尓・多てま川里てむと/む〈次頁〉、(52ウ)
--------------------------------------
いふ・者ゝ【君】/(者者【君】)・いて・あ奈・可多王や・【宮】こ
乃・【人】こと尓・可多る越・き介は・やむこと奈
き・【御】めを/=ミ、(みめを)・いと・於ほく・毛・多満ひての・あま
里尓・み可との・【御】めをさへ・志のひ/\尓/(志のひ志のひ尓)・あや
まち・【給】て・可く毛・さは可れ・【給】なる・【人】八・ま
さ尓・可ゝる/(可可る)・【山】可川を・【心】・とゝ免/(とと免)・【給】てんや
と・いふ・者ら多ちて・いて・え・し里・堂満者
し・於もふ・【心】・こと那里・さる・【心】を・し・【給】へ・
古ゝ尓/(古古尓)・於者しませむと/ま±さ、(於者しまさせむと)・王可・【心】を・やり
て・いふ毛・可多く奈者しく・三ゆ・け尓・あ里さま八/さ〈次頁〉、(53オ)
--------------------------------------
ま者ゆき満弖・志川らひ・可し
徒介り・          (53ウ)

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 今日も、翻字の不備を指摘していただきました。凡例が詳細になってきて、当の私が時々新しい方針を失念するために、ポツリポツリとミスが出ます。大変失礼しました。

 また、「京」(51丁裏9行目)という漢字について、京都駅の南北通路に出る改札口の前に掲示されている「亰」を例にして、ここの「京」は「亰」と翻字した方がいいのではないか、という話題になりました。さらには、東京が「京」なので京都は「亰都」にしては、ということも提示しました。これには、興味をもっていただけたようです。

 終わってから、いくつかの質問を受けてから、地下のラウンジへ移動して、現在5巻の相愛大学蔵春曙文庫本の臨模本を作成中の宮川保子さんと、作業手順を含めた今後の方針などを打ち合わせました。装飾料紙の作成や、判読しにくい文字などについての、意見交換が中心です。
 私からは、最近かかりきりの「橋姫」巻の本文を確認する中で気付いたことを、何点かお伝えしました。今回の相愛大学本は、ハーバード本よりも判読に時間がかかる変体仮名が多いのです。写し手が、平安時代の仮名文字の多様な字形を、よく理解していないままに書き写しているのではないか、と思える箇所が散見します。ハーバード本「須磨」「蜻蛉」や、歴博本「鈴虫」を書写した人たちとは違う写し手集団が関わったのではないか、と今は勝手に思っています。いずれ、こうした違和感の原因を整理します。

 今日は、「手習」の下書きと清書をお預かりしたので、これまでの「帚木」「藤裏葉」「宿木」と共に、文字から受ける印象の違いを含めて、複眼的に写本の様態と本文の実相を考えて行きたいと思います。
 少しでもいい臨模本ができるように、宮川さんの書写活動のお手伝いをしているところです。

 時間になったので、大急ぎで4階のセミナールームに戻りました。

 次は、『百人一首』です。
 まず、変体仮名の「愛(あ)」について、江戸時代以前の用例を私はまだ見かけていないことをお話しました。
 また、雲林院にある僧正遍昭の歌碑と、宮道神社にある藤原定方の歌碑について取り上げました。

 歌は、21番歌の素性法師から、27番歌の中納言兼輔までを確認しました。

 終わってから、前の『源氏物語』の時に話題にした「京」と「亰」について、さらに詳しい情報を受講者の方からいただきました。「亰」という文字は、中国でも多くの用例があるようです。明治時代には、東京で「東亰」としていた時があったとか。しかし、次第に立ち消えになったようです。このことは、さらに詳しく調べると、いろいろとおもしろいことが見つかりそうです。

 今日は息子が出張中のため、私は妻と共に蔵前に泊まることにしました。かつて、モンゴルのことから白鵬さんの関係者に会うために、息子に連れられて蔵前に来たことがあります。しかし、泊まったことはありません。明日はどこを散策しようかと、地図を見ながら計画を練っています。




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2025年09月13日

中之島での『百人一首』(第16回)と『源氏物語 蜻蛉』(第27回)の講座

 今日の大阪府立中之島図書館は、どんよりとした雲を背後にして佇んでいました。暑くなかったので、快適な1日でした。

250913_図書館.jpg


 まず、入門講座としての「変体仮名で書かれた『百人一首』を読む」からです。
 変体仮名の「愛(あ)」がなかなか見当たらないことをお話ししました。特に、平安と鎌倉時代の例が手元にありません。江戸時代と現代の3例をあげます。この文字は、今後とも気をつけて集めたいものです。どなたか、ご教示をお願いします。

(1)「愛遊割烹」朝日新聞2025.8.23
250909_朝日「愛遊」.jpg

(2)「愛しろ【木】」 光琳カルタ 64番歌の「愛」
250913_光琳「愛」.jpg


(3)シャープの携帯電話(アンドロイド15)の「愛」
250702_シャープあ赤入り.jpg


 次は、12番歌の僧正遍昭の歌碑が、大徳寺の近くの雲林院にあることを紹介しました。特に「餘」が読みにくいことを確認しました。

250911_雲林院の遍昭の歌碑-切抜.jpg

 僧正遍昭
 【天】つ【風雲】のかよ比
千ふき登ぢ餘

 をと免の【姿】しば
  しとゝめ無


 『百人一首』は、22番の文屋康秀から34番の藤原興風までを確認しました。陽明文庫カルタと国文研の鶴丸カルタで、使われている字母の違いを確認しながら進めました。
 わかりやすい違いとしては、陽明カルタが「あ」とするところを、鶴丸カルタは「阿」と表記することがほとんどでした。
 人物画については、陽明カルタの春道列樹が後ろ向きに描かれていることを指摘しました。
 収録した2種類のカルタで、横向きではなく後ろ向きは次の人々です。しかも、陽明カルタが圧倒的に多いのです。

僧正遍昭、大中臣能宣朝臣、藤原実方朝臣、清少納言、大納言経信(2種共)、権中納言匡房、法勝寺入道前関白太政大臣、皇嘉門院別当(2種共)、式子内親王(鶴丸は姿も見せず)、前大僧正慈円、

 こうした図様の違いは、他のカルタと比較するとおもしろいかと思います。今後の課題です。

 30分の休憩を置いて、次はハーバード本『源氏物語 蜻蛉』です。
 まず、書家の宮川保子さんが進めておられる相愛大学所蔵の春曙本『源氏物語』の臨模試作写本3冊(帚木 ・藤裏葉・宿木)を見てもらいました。平安鎌倉時代の『源氏物語』の写本の実態を知る上で、原本に近い姿の写本を見ることは、臨模本であっても貴重な勉強になります。今日は、写本の扱い方もお話ししました。こうした講座では、実感することを大事にしています。

 「蜻蛉」の本文については、61丁裏から63丁表8行目までを確認しました。
 〈貼紙〉やなぞった文字の箇所を、時間をかけて説明しました。
 次の画像は、61丁裏7行目に、【心】の上に【思】の貼紙をしている例です。この「蜻蛉」には4箇所に貼り紙があります。詳しくは、拙著『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(新典社、2014年)の「凡例(15)」(9頁)に書いていますので、確認をなさりたい方は参照願います。

250912_ハーバード「蜻蛉」61uL7〈貼紙〉.jpg

 また、ハーバード本の書写者は、「者」の崩し方に特徴があることの確認もしました。

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者川可しめさせ・【給】・於ほ可多の・ゝへ者/者〈判読〉、(のへ者)・さ可しら
ぬそ/ぬ〈ママ、諸本「をこ」〉・きこえさすれと・いふ・八可なき・こと越・多ゝ/(多多)・
すこし・能多万ふも・【人】八・能こり・き可万本しう
の三・【思】・きこえ多り・【心】ちなし・三ち・阿け・【侍】奈
んや・王きても・かの・【御】もの八ち能・ゆへ・阿りぬへき・
於り尓そ/も&そ、(於り尓も)・あんめるとて・多ちいて・【給】へ八・をし
なへて・かく・能こり・な可らんと・【思】ひやり/〈【心】ニ【思】ノ貼紙〉・【給】つるこそ・
【心】う介れと・於もへる・【人】も・阿り・[32]ひん可し能・かうらん
尓・於しかゝりて/(於しかかりて)・ゆふ可け尓・なる・まゝ尓/(まま尓)・【花】の・ひ
もとて/て〈ママ〉、諸本ひもとく・【御前】の・【草】むら越・三王多し・【給】・ものゝみ/み〈次頁〉、(もののみ)、(61ウ)
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あ者れなる尓・な可尓川いて・八らわ多・ゝゆる八/八〈行末左〉、(多ゆる八)・
これ・【秋】のと/の〈墨削〉=のてん、(【秋】のてんと)・いふ・こと越・しの日や可尓・しゆし
川ゝ/(しゆし川川)・井・多万へり・阿りつる・きぬの・をとなひ・
志るき・け者い・して・もやの・【御】しやうしより・と
越りて・あ那多に・いるなり・【宮】の・あゆ三於者
して・これより・あな多に・万いり川る八・多そと・ゝ
ひ/(とひ)・【給】へ八・かの・【御方】の・【中将】の【君】と・きこゆ奈り・なを・
阿やしの・王さや・多れ尓可とかりそめ尓も・うち
【思】・【人】尓・や可て可く・ゆ可しけ那くきこゆる尓/ゆる&ゆる・【名】さ
しよと・いと越しう・この・【宮】尓八・三な・免なれて/三&免、(62オ)
--------------------------------------
於ほえ・【給】つるへ可免るも・くちをし・あ奈
かちなる・【御】もてなしに・【女】・さもこそ/し&こ、(さもしそ)・万け/万$ま、(まけ)・多て
万川ら免・【我】・さま・くちをしく・この・【御】ゆ可り
尓八・ね多く・【心】うく能三・ある可な・い可て・この・わ多り
尓も・め川らしからん・れいの/±【人】の、(【人】のれいの)・【心】いれて・さ者
き・【給】八ん者・可多らひとりて・王可・於もひしや
う尓・や春可らすと多に・於も者せ・多て万つらん・
万ことに・【心】者せ・阿らん・【人】八・わ可・ゝ多にそ/(可多にそ)・よる
へきやと・されと・可多いもの可な・【人】の・【心】八と・【思】尓
川介て・多いの【御】可多の・かの/$・【御】ありさ万越八/(62ウ)
--------------------------------------
ふさ者しからぬ・もの尓・於もひ・きこゑて・いと・ひな
き・む川ひ尓・なりゆき・於ほ可多の・於ほえ越八・
くるしと・於もひな可ら・な越・さし八なち可多き・も
の尓・於ほしゝ里多るそ/(於ほしし里多るそ)・あ里可たく・あ者れな
累/し&累、累=さやうなる〈薄墨〉、(あ者れなし)・【心】者せ/【心】&【心】・阿る・【人】八・【心】ちの/【心】$こゝ〈薄墨〉、(こゝちの)・な可尓・阿らんや・いり
多ちて・ふ可く・三ね八・しらぬそかし・ねさめ
かち尓/れ&ね、(れさめかち尓)・つれ/\なる越/(つれつれなる越)・すこし八・すきものなら八ゝや
と/(すきものなら八八やと)・【思】尓・いま八な越・川きなし・←[250913_ココマデ][33]れいの尓しの・
わ多【殿】を・阿りしに・ならひて・わさと於八し多るも・
あやし・ひめ三や・よる八・あな多に・わ多らせ・【給】介れ八/(63オ)
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 終わってからは、いつもの淀屋橋駅ではなくて、大阪駅に向かって帰りました。阪神タイガースが早々と優勝し、阪神百貨店で優勝記念セールをしているので、賑わいを求めての散策です。数十年来の阪神ファンなので、何か楽しいことはないかと思って行ったのです。

250913_阪神記念セール.jpg

 しかし、優勝記念セールの会場である阪神タイガースショップは大盛況で、入場制限がかかっていて長蛇の列です。オリジナルグッズは来週の17日からです。肩透かしだったので、阪神名物のイカ焼きを買いに行くと、ここも大行列です。小学生の頃には、母に連れられて阪神のイカ焼きを食べに来たものです。大人になってからも、何度かいただきました。十枚くらい抱え込んで、口一杯に頬張っているおじさんがいました。相変わらずの人気です。
 またいつか、ということにして、近くにあった海鮮丼のお店で腹ごしらえをしました。3時間以上しゃべり詰めだったので、腹ぺこだったのです。私には珍しく、丼1杯を時間はかかったものの完食しました。

 大阪駅から京都駅に行くためにJRに向かっていると、街頭演説をして訴えておられる方が目に留まりました。主旨は、以下のことでした。

面倒でやっかいなマイナ保険証は 使う必要も つくる必要も ありません! 期限が来ても ほっておいて大丈夫です!


250913_マイナ保険証廃止.jpg

 マイナンバー制の廃止には、私も賛同します。時間がなかったのでじっくりは聞けませんでした。チラシだけは受け取りました。反対しておられる主旨が政治的だったので、少し違うな、とは思うものの、廃止すべきものであるというところは一致します。
 私は、ブログにマイナカードの無意味さを2度ほど書きました。行動は起こしていません。こうして街頭に立って訴えておられる方がおられることを知り、新鮮な思いを抱きました。私とは視点が異なる論調だったので、機会があれば私の考えを質問してみたいと思いながら、帰途につきました。





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2025年09月06日

宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(4)

 猛暑の中、宇治も多くの人で賑わっていました。8割方は海外からの観光客のようです。

 今日のシェア型書店HONBAKO京都宇治での勉強会は、写本の画像を映写して確認しながら進めました。
 まず、この相愛大学の「橋姫」はハーバード大学の「須磨」「蜻蛉」、国立歴史民俗博物の「鈴虫」とは感触が異なる写本のように思われる、という個人的な感想から始めました。

 文字が書き写された料紙は、古筆家の宮川保子さんがおっしゃるように鎌倉時代のものだと思われます。しかし、そこに書かれている文字は、ハーバード本などとは違うグループが作成した写本のように思われるのです。そして、書写に当たって用いた『源氏物語』の親本も、ハーバード本の時とは違うように思われます。まだ確証を得るまでに至っていないので、問題点を少しずつ提示しながら考えていきたいと思います。

 例えば、今日見た3丁表から4丁裏までの3ページ半の範囲で言えば、絃楽器の「琴」を「事」と表記するものが四例あります。「きん」と書くのが一例だけありますが。どのような事情からこのような表記になったのかはともかくとして、他の写本ではほとんど見かけない、相愛大学本特有の例です。ただし、相愛大学の他の4巻は未確認です。
 また、「祢とん」(音ども、二例)、「八んへらん」(侍らん)の撥音便の表記も注意したいところです。

 「奈ま多く奈しき」(3丁裏10行目)は諸本が「なまかたくなしき」とするところです。「ま」と「多」の間にあるはずの「か」が脱落しています。
 同じ例として、「な尓」(4丁表3行目)は諸本が「なにか」とあり、ここでも「か」が脱落しています。
 もう一例。「免堂く」(4丁裏10行目)は諸本が「めてたく」とするところであり、「て」が脱落しています。
 さらに注意したいのは、「奈ま多く奈しき」と「免堂く」は、共に料紙の裏丁の丁末行にあたります。
 糸罫という道具を料紙の上に載せて書写していて、最終行になるところで糸罫を次の丁に移動するため、紙と手と目と筆が動くことで、書写の緊張感が解ける時です。本書の書写者には、集中力が緩むと注意力が落ちる習性か性癖があるのかもしれません。

 「み」と読む仮名文字に「三」(三例)と「身」(三例)があり、特に「身」を使うのはこの写本の特徴です。

 こうした書写者の特徴を追って行くと、ハーバード本と同じような料紙を使っていながらも、書写を担当しているグループはハーバード本のグループとは異なるように感じます。また、この相愛大学本の書写時の親本は、ハーバード本を書写した時の親本と違うセットの写本群だったのではないか、という思いを強くしました。

 なお、二例のなぞった箇所について紹介します。

250905_春曙「橋姫」3uL6-7&.jpg

 これは、3丁裏6行目にある「奈」と、そのすぐ左の7行目の「遊」の例です。
 右側の「奈」の下に書かれている文字は判別できませんでした。しかし、左側の「遊」の下には「ゑ」と書かれていることがわかりました。後日、相愛大学へ原本を熟覧するために行くので、その時にこうしたなぞった文字についても詳しく確認してきます。

 以上のことは、今後とも相愛大学本が持つ本文を「変体仮名翻字版」で翻字をして行くことで、問題点が明らかになる中で解明されていくはずです。今は、とにかく翻字を進めて行くことに専念したいと思います。

 本日確認した「変体仮名翻字版」は、以下の通りです。


相愛大学春曙文庫本『源氏物語 橋姫』第三丁表六行目〜第四丁裏
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可く・なる・【程】尓・【250906_ココカラ→】その・【事】ゝ毛/(【事】と毛)・きゝ王可
礼ぬ/(きき王可礼ぬ)・毛のゝ祢とん/(毛のの祢とん)・い登・春こ遣尓・支
こ遊・徒祢尓・可く・あそひ・【給】と・きく越・
ついて・奈くて・古乃・【御】きんの・祢の・奈多可き越毛・ナシ・
き可ぬそ可し・よき・越里那累へし登/(3オ)
--------------------------------------
於毛ひ川ゝ/(於毛ひ川川)・い里・【給】へ八・ひ者能・こゑ乃・ひゝ
きなり遣り/(ひひきなり遣り)・王うしきてう尓・
しらへ弖・よの川祢乃・可きあ者世奈ら
祢登・ところ可ら尓や・ゝな礼ぬ/(三三な礼ぬ)・古ゝち/(古古ち)・志て・
可き【返】・者ち乃・越と・毛のきよけ尓・越毛
新ろし・さう乃【事】・あ者れ尓・ま免き
堂る/△&奈・こゑ・して・堂ゑ/\/(堂ゑ堂ゑ)・きこゑ&遊・志八し・
き可ま本しき尓・しのひ・【給】へと・【御】け八ひ・
し累く・きゝ徒け弖/(きき徒け弖)・と乃ひ【人】めく・をのこ・
奈ま多く奈しき/ま多(〈ママ〉諸本なまかたくなしき)・いてき堂り/(3ウ)
--------------------------------------
し可/\し奈無/(し可し可し奈無)・古毛り越八しま春・
【御】勢う登越こそ・きこゑさ世免
と・【申】春・な尓/諸本なにか・し可・ゝ幾里/(可幾里)・ある・【御】をこ奈
ひ乃・本とゝ/(本とと)・まきら八し・きこゑさせん
尓・あい奈し・可く・ぬ礼/\/(ぬ礼ぬ礼)・まいりきて・
い堂川ら尓・可へらん・うれ越・ひ免
きみ乃・【御】可多尓・きこゑ弖・あ者
礼登・の多ま者世は奈ん・奈くさむ
へきと・の多まへ八・尓くき・可本越・
うち江弖・【申】させ・八んへらんとて/と〈次頁〉、(4オ)
--------------------------------------
堂川を・し八しや登・めしよせて・
とし古ろ・い登徒弖尓乃/い〈ママ〉・きゝて/(ききて)・
ゆ可しう・於毛ふ・【御事】乃・祢とんを・
う礼し幾・をり可奈・春こし・ち可く・
堂ち可くれ弖・きくへき・毛のゝ/(毛のの)・く万
者・あ里や・こち奈く/諸本こゝちなく・さ新すきて・
まいりよらぬ・本と・那・【事】・や免・堂満
ひ弖八・いと・本ひ奈可らん登・乃堂まふ・
遣者ひ・可本可多ち能・さ累・な越/\し
き/(な越な越しき)・古ゝち尓母/(古古ち尓母)・い登・免堂く/諸本めてたく・可多し遣奈く/遣〈次頁〉、(4ウ)←【250906_ここまで】
--------------------------------------

 次回の宇治での勉強会は、10月4日(土)です。
 興味と関心をお持ちの方の参加をお待ちしています。




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2025年08月25日

平安文学リレー講座の第7回は「谷崎潤一郎と『源氏物語』」

 本日は、大阪府立中之島図書館の重要文化財となっている大広間で、同志社女子大学の大津直子さんの「谷崎潤一郎と『源氏物語』」と題する講演会が開催されました。
 その概要は、「中之島図書館での谷崎潤一郎と『源氏物語』に関するご案内2件」(2025年07月16日、http://genjiito.sblo.jp/article/191420655.html)に記した通りです。

 本日の講演者については、私の後輩に当たることや、谷崎潤一郎の書き込み原稿の鬱蒼とした森に分け入り、余人が知らなかったことを次々と明らかにしている、新進気鋭の研究者であることを中心にして紹介しました。

 大津さんの講演は、2回目の現代語訳となる新版谷崎源氏の書き込み原稿を中心とした調査報告がなされました。興味深い問題点の指摘と、謎解きに似たたのしい話が展開しました。
 谷崎訳に関する原稿は膨大なもので、しかも夥しい書き込みがあります。「ウィキペディア」(https://ja.wikipedia.org/wiki/谷崎潤一郎訳源氏物語)から摘記します。

・玉上による書き入れのある旧訳本
・山田による書き入れのある旧訳本
・谷崎による書き入れのある旧訳本
・山田書き入れタイプ原稿
・玉上書き入れタイプ原稿
・谷崎書き入れタイプ原稿

 この6種類の原稿を管理する國學院大學の出身である大津さんは、紆余曲折があった中で、恵まれた環境下で調査を進め、途中報告とでも言うべき成果を『谷崎源氏の基礎的研究』(武蔵野書院、2024年)にまとめて刊行しました。

 その成果をもとにして今日は、歯切れのいい口調で、わかりやすく谷崎訳の背景と谷崎の訳出にあたっての問題点を浮き彫りにしました。
 どのように訳すかに注力し、文学的翻訳を目指す姿勢を提示していました。
 難しい問題を抱えるテーマを、きれいに整理して語ってくれました。わからないことがまだまだあるので、今後の展開が自身でも楽しみなようです。聞き手の我々も、この先の報告が聞きたくなります。

 発表の後半で、「旧訳は原文よりも一文が長い」という指摘は、谷崎の文体を考える上でも、私には新鮮だったので、しっかりとメモをしました。

 参考までに、私が持っている愛蔵本・特製桐箱入りの『潤一郎訳 源氏物語』を展示し、講演会が始まる前と後で参会者に自由に触っていただきました。これは、触って実感することの大切さを感得していただくために、私が心がけていることです。

250825_愛蔵本谷崎G.jpg


 そして、この愛蔵本に関する資料をA4判で2枚のプリントにまとめて配布しました。
 講演の中で、大津さんは何度かこの旧版の訳文となる愛蔵本の本文の意義に触れていました。

250820_谷崎g見本巻頭.jpg

250820_谷崎g見本巻末.jpg

 本日の講演は、若さ溢れるエネルギッシュな話で、参会者はみなさん満足してお帰りになったようです。好評で、続きをまた聞かせてほしい、という声を何人もから聞くことができました。大盛会となりました。

 次回は、本年12月の初旬に、「歌舞伎と『源氏物語』」と題して開催する予定です。
 また、多くの方のお越しをお待ちしています。

 大津直子さん、本日は有意義で楽しい話を、ありがとうございました。




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2025年08月23日

キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第33回)

 キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)の1階正面入口にある掲示板には、いつものように案内が出ています。

250823_掲示板.jpg

 今日はまず、中国から来日中の庄婕淳(恵州学院大学)さんに参加してもらえたので、自己紹介から始まりました。
 庄さんは、NPO法人を設立してまもなく、同窓生のKさんの紹介でワックジャパンでの源氏講座に早速参加していただいた方です。当時は立命館大学大学院生で、学位(博士・文学)を取得してからは中国で大学の教員をしておられます。2019年12月20〜22日に中国広東省にある広東外語外貿大学でのシンポジウムでは、私が所属していた大阪大学との共催で国際研究集会が開催されました。そこに参加した折には、日本側の代表者である私と共同研究者の仲間たちを、庄さんは丁重にもてなしてくれました。その時の報告書が『海外平安文学研究ジャーナル《中国編2019》』(伊藤編、大阪大学国際教育交流センター、2021年2月)です。その広東から帰国直後には、日本をはじめとして世界中でコロナウイルスが蔓延したことは、記憶に新しいことです。
 大阪観光大学と恵州学院大学との学術交流協定の締結では、庄婕淳さんがネット会議を取り仕切り親睦を深めたりました。コロナ以後は直接の交流ができなかったこともあり、6年ぶりの今日は久しぶりに話ができました。

 さて、本文の確認を進めている尾州家河内本「桐壺」は、今日が最終となります。
 その前に、「変体仮名翻字版」の意義をあらためて確認しました。鎌倉時代の『源氏物語』の原本の本文を、変体仮名のレベルでデータベース化することにより、本文研究を深めて行くための基礎資料の作成に取り組んでいることです。特に、生成AIによる新しい研究に対応するために作成したデータは、他に例を見ないデータ群であり、気長に取り組む意義のあるものであることを、みんなで確認しました。

 今日の活動内容としては、第25丁表から第26丁裏までを確認し終えました。
 以下の通りです。

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わ可く・於可しきを・【右】乃於とゝの/±〈朱点〉(【右】乃於ととの)・【御】な可八・よ可ら
ねと・江【見】すくし/△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉、±〈朱点〉・多ま八て・いと/±〈朱点〉・可なしく/±〈朱点〉・志・【給】・
【四】乃【君】尓/±〈朱点〉・あ八せ/±〈朱点〉・多てまつり・【給】て・於とら春/±〈朱点〉・もて
かしつき/±〈朱点〉・堂まへ八・あらま本しき/±〈朱点〉・【御】あ者ひ尓
なん/±〈朱点〉・【源氏】のき三は/±〈朱点右〉・うへの/へ&へ、±〈朱点〉・徒ね尓・於ほつ
可な可り/±〈朱点〉・めしま川八勢八/±〈朱点〉・【心】やすく/±〈朱点〉・さとす三
も/±〈朱点〉・江/±〈朱点〉・し・堂ま八春・【心】の/±〈朱点右〉・うち尓八・堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・ふち川
本乃/±〈朱点〉・【御】可多ち・あ里さまを・多くひなしと/±〈朱点〉・
【思】・起こ江・【給】て・さやう那らん/±〈朱点〉・【人】をこそ・みめ
古ゝら/古±〈朱点〉、(古古ら)・ナシ・【見】る・よ尓・阿り可たく/可&り、±〈朱点〉・於八し遣類可な/ま&遣、、±〈朱点〉、(於八しま類可な)・ナシ・ナシ・於ほ
いとのゝ飛めきみ/△〈削〉み、±〈朱点右〉、(於ほいとのの飛めきみ)・いと/±〈朱点〉・於可し遣尓/り$〈削〉尓、±〈朱点〉、(於可し遣り)・かしつ可礼堂流/堂〈次頁〉、±〈朱点〉、(25オ)
--------------------------------------
ナシ・【人】と・【見】ゆ礼と/△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・い可なる尓可/±〈朱点〉・【心】尓も/±〈朱点〉・つ可春・於
本江・堂まひ弖・於さ那き/±〈朱点〉・本との・こゝろ日とつ尓/(こころ日とつ尓)・
をきところ/±〈朱点〉・那く・ゝるしきまて/±〈朱点〉、(くるしきまて)・【思】ありき【給】/±〈朱点〉・
於と那耳なり/±〈朱点右〉・【給】て・能ち八・ありし/±〈朱点〉・やう尓も・み
すの/±〈朱点〉・うち尓も・い礼・多ま八春・【御】あそひなとの/±〈朱点〉・
於里/\尓//\=〈朱傍点〉、尓$〈墨朱〉、(於里於里尓、於里於里)・こと・ふ江の・ね尓・起ゝかよひ、(起起かよひ)・本乃可
なる/±〈朱点〉・ナシ・【御】遣八ひ八可里を・ナシ・那くさめ尓て・【内】す三
乃三/±〈朱点〉・古乃ましう/古+ん〈ママ〉・於本江・【給】へ八・【五六日】/±〈朱点〉・さふらひ/±〈朱点〉・
【給】て八・於本いとの尓/±〈朱点〉・【二三日】なと・多江/\尓/(多江多江尓)、±〈朱点〉・ま可て・
【給】へと・多ゝいま八/±〈朱点〉、(多多いま八)・於さ那き/±〈朱点〉・【御】本と尓・よろ川/±〈朱点〉・
つ三・那く・於ほしなして・ナシ・いと那三/±〈朱点〉・かしつき・多て万川り/万〈次頁〉、(25ウ)
--------------------------------------
【給】【御】可多の/【御】±〈朱点右〉・【人】/\、(【人人】)・ナシ・ナシ・ナシ・よに/±〈朱点〉・をしなへ多らぬ
を・江里とゝのへ/(江里ととのへ)・すくりて・さふら八せ/±〈朱点〉・【給】・【御心】尓/±〈朱点右〉・
徒くへき・あそひを・し・於本那/\/±〈朱点〉、(於本那於本那)・於本しい
堂川く/±〈朱点〉・さま・をろ可なら須/±〈朱点〉・【内】尓八/±〈朱点右〉・もとの/±〈朱点〉・し
遣いさを/=【淑景舎】、±〈朱点〉・【御】さうし尓て/±〈朱点〉・こみやすむところ能/±〈朱点〉・
【御方】乃・【人】〻/(【人人】)・ま可てちら春/±〈朱点〉・さふら八せ/±〈朱点〉・【給】・さとの/±〈朱点右〉・
と乃八もく/も±〈朱点〉、も=【木工】・すり/=【修理】、±〈朱点〉・堂く三つ可さなと尓/【見】$〈削〉三、三=三〈削〉、±〈朱点〉・せんし/±〈朱点〉・く多
里て・尓那く/±〈朱点〉・あら多め/±〈朱点〉・川くら勢・【給】・もとの/±〈朱点右〉・こたち・
【山】乃/±〈朱点〉・堂ゝすま井/(堂堂すま井)・於もしろき/±〈朱点〉・ところなり遣る
を・ナシ・いとゝ/±〈朱点〉、(いとと)・い遣乃【心】/±〈朱点〉・日ろう/±〈朱点〉・しなし・めて多う/±〈朱点〉・つくり
のゝしる/(つくりののしる)・かゝ流/±〈朱点右〉、(かか流)・ところ尓・於もふ/±〈朱点〉・やうならん・【人】を/±〈朱点〉、(26オ)
--------------------------------------
すゑて・すま者やとな遣可しう/±〈朱点〉、な±〈朱点〉・於ほしわ多る・
飛可るきみといふな八/±〈朱点右〉・こまうと能/±〈朱点〉・めて起こ江
て・徒遣/±〈朱点〉・堂て万つりけるとそ・いひ徒多へ多
流となん/±〈朱点〉、(26ウ)
--------------------------------------

 次に、文字の使い分けに関する見通しを考える上で、一例となるものを私から提示しました。それは、「乃」「能」「の」の直前に書かれている語句の漢字の表記です。あくまでも叩き台です。
 [ ]は何例あるかを示します。


■尾州本の「の」「乃」「能」の直前に書かれている漢字
--------------------------------------
なに【事】の
くるしき【事】の三
【人】の
なき【人】の
【時】の
【御時】の
【心】の
【物】の三
【物】ゝふあ多
【源氏】のき三[2]
【源氏】の【君】
【蔵人】の【少将】尓て
--------------------------------------
【人】乃[16]
【事】乃[2]
【世】乃[4]
【山】乃
【物】乃ねを
【大床子】乃
【心】乃と可尓
【草】乃
【身】乃
【風】乃
【月】乃
【女御】乃
【内侍】乃すけ乃
【内侍】乃す遣[2]
【一】乃三やの【女御】八
【一】乃三や能
【一】乃【宮】を
【宮】乃[2]
わ可【宮】乃
【故大納言】乃
【右近】乃
【右大弁】乃
【春宮】乃
【兵部卿】乃【宮】なとも
【源氏】乃
【大臣】乃
【右】乃於とゝ能[3]
【御方】乃
【四】乃【君】尓
--------------------------------------
い尓しへ【人】能
【右大臣】能
【御方】能
【人】能
【物】能[2]
【事】能八も
わ可【宮】能
【長恨歌】能
【亭子院】能
とし【月】能
との井【申】能
【事】能
【親王】能
【先帝】能
【四】能【宮】
【更衣】能
【三代】能
きさい乃【宮】能
【宮】能
【君】能[2]
【春】【東宮】能
【日】能
【春宮】能[2]
【所】能
【源氏】能【君】
--------------------------------------


 そして、参考までに、すでに変体仮名による本文の翻字を終えている池田本の例を提示しました。


■池田本の「の」「乃」「能」の直前に書かれている漢字
--------------------------------------
【右近】の
【御方】の
【北】の【方】[2]
「【雲】の
【心】の[3]
【子】の
【五六日】の
【三代】の
【三位】の
【先帝】の
【亭子院】の
【春宮】の[2]
【春宮】の【女御】の
【時】の
【年】の[2]
【殿】の
【女御】の
【人】の[5]
【宮】の
【物】の
【楊貴妃】の
【世】の[2]
【一】乃【宮】の
【一】の【宮】を
【右】の於とゝ乃
於佐免【殿】の
【更衣】の
きさい乃【宮】の
くら【人所】の
【外尺】の
【源氏】のき三
【源氏】の【君】は
【心】のと可尓
【事】の【葉】も
【四】の【宮】能
【内侍】のす遣乃
【内侍】のすけ八
【右】の於とゝ乃
--------------------------------------
【秋】乃
【池】乃
【一】乃みこの【女御】は
【一】乃み古盤
【一】乃【宮】の
【右大臣】乃
【右大弁】乃
【宇多】乃み可と乃
【内】能【内】乃
【大臣】乃[2]
【御方】乃
【御元服】乃
【御時】乃
かゝやく【日】乃【宮】と
【風】乃
【北】乃【方】
【雲】乃
【源氏】乃きみ八
【故大納言】乃
【四】乃【君】尓
【先帝】乃
【長恨歌】乃
【月】乃
【帝王】乃
【春宮】乃
【年月】乃
と乃ゐ【申】乃
【内侍】乃す遣の
【女房】乃
八ゝみやす【所】乃
【人】乃[17]
【兵部卿】乃みこなと
【松】乃
【親王】乃
【道】乃
みやす【所】乃[3]
【宮】乃
【虫】乃
【物】乃
【物】乃ねを
【物】乃婦
【楊貴妃】乃
【山】乃
【世】乃[4]
【世中】乃
わ可【宮】乃[2]
--------------------------------------
【内】能【内】乃
【風】能
【草】能
【四】の【宮】能
【春宮】能
【人】能
【日】能
【身】能
【宮】能
--------------------------------------


 まだ未整理のデータです。しかし、河内尾州家本と池田本の文字使いが違うことは明らかです。
 その際、「の」と「乃」は、使う者にとっては区別をせずに無意識に流れの中で書いた文字が、たまたま「の」となり「乃」ではないのか、という意見がでました。ここでの出現例を見ていると、そのような見方も可能であることを示しているようです。ただし、その「の」と「乃」とは異なる「能」は、明らかに使い方に違う意味合いがありそうです。今日は、その点は詰められませんでした。しかし、こうした例の検討を重ねることで、平安時代から鎌倉時代にかけての仮名文字の使い分けや、文字列の組み合わせのパターンを明らかにしていきたいと思います。
 次は、生成AIを活用した検討結果を提示できるようにしたいと思っています。

 今日から、昨日購入したプロジェクターを使用して映写しました。大きく、はっきりと映し出せたので、これからも大いに活用して行くことにします。

 終わってからは、すぐ近くのホテルの中にあるバイカルという洋菓子屋さんのカフェで、庄婕淳を交えて四方山話に花を咲かせました。




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2025年08月16日

【写真追補】日比谷で「須磨」(27)と『百人一首』(4)の講座の後は神宮外苑で花火大会を観る

 日比谷図書文化館の正面入口には、いつものように講座の案内が出ていました。

250816_掲示板.jpg


 まずは、ハーバード本「須磨」を変体仮名に注目して読む講座からです。

 回覧した本は、『あさきゆめみし』の豪華愛蔵版と中国語訳版です。これは、先週の大阪府立中之島図書館での報告に記したことと同じなので、ここでは省略します。

 私の手違いから、受講者の木村さんから先月指摘を受けていた翻字の修正が、どうしたことか配布したプリントには反映されていませんでした。私がコピーを間違えたようです。確認しながら、該当箇所の修正をしました。また、和歌の終わりに閉じるカギカッコを付けることも忘れていました。
 いろいろと不備のある資料を配布し、申し訳ないことです。

 今日確認した「変体仮名翻字版」は、次の通りです。

--------------------------------------
ナシ/+【世中】尓・めてられ・【給】へ八・きさき乃
【宮】/後き$い、(きさい乃【宮】)・きこし免して・いみしう・の多まひ
け里・於ほやけの・可う志なる・【人】は【心】尓満
可勢て・こ乃【世】の・あち者ひを多尓・しる・
こと・那くこそ・あむ奈れ・(→以下250816より確認)を毛しろき・い
ゑ井・して・勢うよう新川ゝ/(新川川)・ナシ・ナシ・ゐ・【給】へる・こと・
【世中】を・毛ときて・可の・し可を・むまと・いひ
けん・やう尓・毛てひ可める・ひとの・可く・徒いそう
するなりなと・あしき・ことゝ毛/(ことと毛)・きこゑ
介れ者・王つら者しうて・堂えて・せうそく/そ〈次頁〉、(48ウ)
--------------------------------------
きこゑ・【給】・【人】毛・那し・[27]【二条院】乃
ひめ【君】八・【程】・ふる・満ゝ尓/(満満尓)・なくさむ・可多・
奈し・ひ可んしの堂い尓/可ん〈ママ〉・【候】し・【人】〻毛/(【人人】毛)・三奈・
王多り・まいりし・八しめ八・奈尓可・佐し毛・
あらてと・於もひし可と・み・多てま川里・奈
るゝ/(奈るる)・満ゝ尓/(満満尓)・奈川可しき・ナシ・【御】あ里佐ま尓て・
ま免や可なる・可多の・【御】こゝろ者へ毛/(【御】こころ者へ毛)・【思】や里・ふ
可く・あ者れ奈れ者・ま可てちる毛・那し・
をしなへ堂らぬ・ナシ・き者の・【人】/\尓八/(【人人】尓八)・本の三
えなと毛・し・【給】・そこらの・【御中】尓・すくれ堂る/堂〈次頁〉、(49オ)
--------------------------------------
【御心】さし毛・こと者りなり介り
と・み・多てま川る・[28]可の・やまさと尓八・ひさし
く・なる・満ゝ尓/(満満尓)・え・祢んすくし【給】
ましく/んす〈ママ、諸本んしす〉・於ほえ・【給】へと・王可・三多尓・あさま
しき・すく勢と・於ほゆる・すま井奈る尓・
い可て可・うちくして八・毛のし・【給】者んと・
徒き那可らむ・【御】あ里佐ま越・【思】可へし・
【給】・【所】尓・徒介て八・よろ川の・こと・佐ま・可者
里・み・【給】へ・しらぬ・しも【人】の・こゑを毛さま
を毛・み【給】日なら八ぬ・【御心】ち・めさましく/(49ウ)
--------------------------------------
可多しけ奈く・【身】つ可ら毛・於ほさる・けふりの/の〈行末左〉・
いと・ち可う/ゝ&ち、(ゝ可う、と可う)・とき/\/(ときとき)・堂ちくるを・これ
や・し本・やくと・於ほし王多る八・を八し
ま春・うしろの・【山】尓・志はと・いふ・毛乃・
ふ春ふるなり介り・めつら可尓て・
「やまか川乃・い本り尓・堂ける・志八/\毛/(志八志八毛)・
ことゝひこ奈ん/(こととひこ奈ん)・こふる・さとひと」・【冬】尓・なり
て・ゆき・ふ里あれ多る・ころ・そら能・介し
き毛・ことすこく・奈可免・【給】て・きむ越・
ひきすさひ/前ひ$〈ママ〉・【給】弖・よしきよ尓・う多・/\は勢【給】/は〈次頁〉、(う多は勢)、(50オ)
--------------------------------------
【大輔】尓・ふえ・ふ可勢て・あそ
ひ・多まふ・【心】・とゝ免弖/(とと免弖)・あは礼
なる・て奈と・ひき・堂満へる尓・こと【物】
乃・祢八・三那・や免弖・奈三多越・のこひ
あへ里王う勢うくむ可・【胡】乃く尓へ・
ゆき介ん・於も本四や里弖・ま
して・い可那里介ん・こ乃よ尓・
王可・於もひ・きこゆる・【人】奈とを・さやう
尓・者那ちや里多らむ・ときなと・於も
ふ毛・あらん・こと乃・やう尓・ゆゝし/(ゆゆし)、(50ウ)
--------------------------------------
【胡角一声】/【角】=カク・志毛の・ゝち乃/(のち乃)・ゆめと・いとい多くす
ましてすんし・【給】・【月】・いと・あ可く・さしいりて・
者可那き・堂ひの・をまし【所】は・いく万
て/い=於、(於く万て)・くま那し・ゆ可の・うへ尓・【夜】ふ可き・
そらも・三ゆ・いり可多乃・【月】可け・すこく・三
ゆる尓・堂ゝ/(堂堂)・これ・尓しに・ゆくなりと・ひ
とりこち・【給】弖・
「い川可多乃・【雲】ち尓・王礼毛・まとひ
奈ん・【月】の・三るらん・こと毛・者川可し」・れ
いの・万とろ万ぬ・あ可【月】のそら尓・うらちとり/ら&ら・(51オ)
--------------------------------------

 1時間の休憩時間に、翻字に関する質問を5件ほど受けたので、翻字方針をお伝えしてデータの補訂をしました。

 次は、『百人一首』の講座です。
 最初に、在原行平と藤原定方の歌が刻まれた歌碑の変体仮名を読みました。

250816_100人日比谷4回_1.jpg

250816_100人日比谷4回_2.jpg

 そして、《陽明》と《鶴丸》の2つのカルタに書かれた文字列を見比べながら、それぞれの変体仮名の特徴を確認しました。

 今日は、17番歌の在原業平から20番歌の元良親王までを確認し終えました。
 脇道にそれた話について、反応があったので意見を聞きながらも、「答えは一つではない」という持論を展開しました。

 終了後も質問があったので、いろいろなパターンの仮名文字についてお答えしました。

 息子の所へ移動しようとしたら、今夜は神宮外苑で花火大会が開催されるので、少し時間をずらさないと大変だとのことだったので、新橋駅で時間調整をしてから向かいました。

 東京メトロ銀座線の青山1丁目駅を出ると、とにかく人で埋め尽くされています。何度か紹介しているイチョウ並木の上に、大輪の花火が打ち上げられていました。
 今日はちょうど、京都では五山の送り火があります。東京の神宮外苑で花火大会を見ながら大文字の賑わいを思い、両親をお見送りしました。

250816_花火1.jpg


250816_並木と花火.jpg


250816_花火2.jpg





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2025年08月09日

中之島での『百人一首』(第15回)と『源氏物語 蜻蛉』(第26回)の講座

 今日は、昨日までの暑さが嘘だったかのような、気持ちのいい爽やかな風を感じながら、涼しい公園の散策路を歩いて近くの駅に向かいました。まさに秋です。

250809_木立.jpg


 京阪で淀屋橋に着くと、大阪も連日の熱暑とは違う優しい風に包まれながら、中之島図書館の別館へ行きました。今日の講座は、本館ではなくて別館での開催です。

 まず、「変体仮名で書かれた『百人一首』をよむ」の15回目から。

 「平仮名で脳活」と「宝塚の役者名のこと」は、すでに日比谷図書文化館の報告に書いたので、今ここでは省略します。

 『百人一首』は、12番歌の僧正遍昭の歌から、2種類のカルタに書かれている変体仮名の確認を進めました。
 「あまつかぜ〜」の歌の説明で、宝塚の伝説的なトップスターだつた「天津乙女」に触れました。また、大徳寺の近くにある雲林院の境内に、この歌を刻んだ歌碑があることも話題にしました。そして、「ふきとぢよ」の「よ」がわからずに、後で「餘」であることが調べてわかった話をしました。ただし、その時にはすぐにその写真をスクリーンに映すことができなかったので、今ここにそのことを書いた記事をあげます。失礼しました。

「京洛逍遙(79)雲林院の歌碑」

 今日は、2種類のカルタに書かれている変体仮名の字母の違いなどを中心にして、21番歌の素性法師まで確認しました。

 のんびりとではあっても、少しずつ書かれている文字を中心に進めています。

 30分の休憩をしてから、次は「ハーバード大学本『蜻蛉』巻の仮名文字を読む」の26回目です。
 最初に、2冊のマンガ本を回覧しました。次の写真の上は和装本、下は中国語版です。
 内容はまったく一緒です。和装本の手触りとその製本の妙を、中国語版の吹き出しなどが翻訳されていることなどを、手に取って見ていただきました。私の講座では、可能な限り触って実見し感得していただくことを大切にしています。

250807_あさきゆめみし和本.jpg


『源氏物語 あさきゆめみし 豪華愛蔵版 三 炎の章』
  (大和和紀、講談社、1988年12月13日第1刷、1989年8月23日第2刷)
『源氏物语 あさきゆめみし 3 炎之章』
  (大和和紀、文字翻译:章吾一・ 章世菁、山东文艺出版社、2000年10月第1版)

 ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』の「変体仮名翻字版」の確認は、59丁表2行目〜61丁表までを見ました。

 次の3箇所については、プリントに拡大した画像を掲載して、なぞられた文字や訂正の方法について説明しました。

(1)60丁裏2行目_「ゐ多累/ゐ$ゐ、る&累、累=る」

250808_「蜻蛉」60uL2_る&累.jpg

 ここでは、「ゐ」という文字をミセケチにして、その横に同じ「ゐ」を書いていることの意味がわからないことを指摘しました。これまでにも何箇所にもあったことなので、書いた文字が気に入らなかったとして片づけられない例です。書家の方に伺って解決したいものです。
 次の文字の「累」の下には「る」が書かれており、その横に「る」が傍記されたものと判断しました。

(2)61丁表1行目_「堂た/り&た」

250808_「蜻蛉」61oL1可&た_.jpg

 ここは、「堂」の次に「り」と書き、その「り」の上に「累」をなぞった例としました。下に書かれている「り」の字形については、他の箇所での文字を参照して確定したことも付け加えました。

(3)61丁表10行目〈貼紙〉「△なに/〈△ニ貼紙、「△なに」ヲ隠ス〉」

250808_「蜻蛉」61oL10〈貼紙〉.jpg

 ここに貼り紙があるのは、その下に書かれた「△なに」が前の行の末尾の「花二」を二度書きしたため、後の方の「はなに」に貼紙をしてこの語句がなかったものとして隠すものです。実は、今日は進めなかった次の丁に、もう一例、貼り紙の例があります。〈貼紙〉という方法で文字の訂正がなされていることを確認しました。
 すでに見終わった所にも、二例あります。
 ・30丁表2行目「よろつに・つかひ」の「に」と「つ」の右横に小紙片「あ」を貼る。
 ・45丁表2行目「心けれは」の「け」の右横に小紙片「う」を貼る。
 今日の講座では、このことを説明することを失念しました。次回に、補足の説明をすることにします。これまた、大変しつれいしました。

 さらに、「お」という平仮名と、その字母とされる「於」について貴重な例を指摘しました。
 これは、61丁表4行目に「おもと」と書かれている例です。

250808_「蜻蛉」61oL4お.jpg

 私は、「お」の字母は「於」ではないのではないか、という疑念をずっと抱え持っています。こうした例を少しずつ集めているので、いつか整理します。とにかく、この例は明らかに「お」であり、その他のほとんどで確認できる「於」ではないことを、あらためて指摘しておきます。


 以下に、本日確認し終えた「変体仮名翻字版」の翻字を掲載します。
 講座に参加できないために自学自習しておられる方のためにも、これまでと同じルールによるデータをあげます。参考になさってください。

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■ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』59丁表2行目〜61丁裏
翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部
( 「 )・末尾( 」 )、底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
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い川可多尓も/\/(い川可多尓もい川可多尓も)・よりて・めて多き・【御】すく
せ・みえ多る・さ万尓てそよに・於八せまし
かし・あさ満しく・八可なく・【心】うかりける・【御心】可
奈なと・【人】尓八・その・王多りの・こと・かけても・し
里可本尓・い者ぬ・ことなれ八・【心】日と川二・あ可春・
むね・い多く・【思】・【宮】八・うちの・【御】もの可多りなと・
こ万や可尓・きこえ・【給】へ八・いま・【一所】八・多ちいて/ち&ち・
【給】・みつけられ/△&み・多て万川らし・【御】者てをも・すく
さ春・【心】あさしと・みえ・多て万つらしと・【思】へ八・
かくれぬ・[31]ひん可しの・わ多【殿】尓・あきあい多る/(59オ)
--------------------------------------
とくち尓・【人】/\/(【人人】)・ゐて・もの可多りなと・する・【所】尓・
於者して・なにかし越そ・【女房】八・む川可し
う/可=ま、(む川ましう)・於ほすへきや・【女房】多に・かく・【心】や春き八・
あらし可し・さるへ可らん/±さす可尓・こと八・於しへ・きこ
えぬへくも・阿り・やう/\/(やうやう)・三し里・【給】へ可免れ八・
いとなん・うれしきと・の多万へ八・いといらへ尓くゝ/(いらへ尓くく)・
於もふ・【中】尓・【弁】のをもとゝて/(【弁】のをもととて)・なれ多る・於と
なそ・む川可しう・於もひ・きこゆへき・ゆへ
なき・【人】の・八ち・きこえ・八へらぬ尓や・もの八・
さこそは・【中】/\/(【中中】)・八へり介れ・可ならす・その・ゆへ・多つねて/つ〈次頁〉、(59ウ)
--------------------------------------
うちとけ・【御】らんせらるゝにしも/(【御】らんせらるるにしも)・【侍】ら
ねと・か者可り尓・於もなく・川くりそめてける・
【身】尓・於者さらんも・可多八らい多くてなんなと・
きこゆれ八・ゝ川へき/ゝ&へ、(八川へき、八川川き)・あえ/あ$ゆ、(ゆえ)・【侍】らしと・【思】さ多
めて/て$、・多万ひてけるこそ・くちをし介れ
なと・能【給】川ゝ/(能【給】川川)・三れ八・からきぬ八・ぬきすへし・
於しや里・うちと介て・ゝならひしけるなるへし/(てならひ)・
すゝりの/(すすりの)・ふ多川尓/川$、(ふ多尓)・すへて・【心】もとなき・八なの・す
江/\/(す江す江)・於里て・もてあそひけ里と/ひ&そ、(もてあひひけ里と)・三ゆ・可多へ八・
きちやうの・あな多に・春へり可くれ・あるい八(60オ)
--------------------------------------
うちそむき・於し阿介多る・との・可多尓・
万きゝ八し川ゝ/前ゝ$ら、(万きき八し川川、万きら八し川川)・ゐ多累/ゐ$ゐ、る&累、累=る・可しらつきともゝ/(可しらつきともも)・を可
しと・三王多し・【給】て・すゝり/(すすり)・ひきよせ弖・
「於三なへし・三多るゝ/(三多るる)・【野】へ尓・ましると母・
川ゆの・あたなを・王れ尓・可介免や」・【心】や春く
者・於ほさてと・多ゝ/(多多)・この・しやうしに・うしろ・
志多る・【人】尓・三せ・【給】へ八・うちみしろきなと
も・せ須・のとや可なるもの可ら・いと・ゝく/(とく)・
「いなと/い$八、(八なと)・いへ八・なこそ・あ多なれ・於三なへし・
なへての・川ゆ尓・三多れや八・する」と・可き多る/多〈次頁〉、(60ウ)
--------------------------------------
て・堂た/り&た・可多そ八なれと・よしつきて・
於ほ可多・めや春介れ八・多れならんと・三・【給】・いま・ゝ
うの本り介る/(まうの本り介る)・三ちに・ふ多遣られて・とゝこ本り
い多るなるへしと/(ととこ本り)・三ゆ・【弁】のおもと八・いと・けさ
や可なる・於きな【事】尓て・八へりとて・
「たひね・して・な越・【心】三よ・【女】へし・さ可り能
さ可りの/さ可りの〈ママ〉・いろ尓・う川り・うつら春」・さて・のち・さ
多め・きこえさせんと・いへは・
「やと・可さ八・【一夜】八・ねなん・於ほ可多の・【花】二
△なに/〈△ニ貼紙、「△なに」ヲ隠ス〉・うつらぬ・【心】なりと母」と/【心】&【心】・阿れ八・な尓可は(61オ)
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2025年08月02日

宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(3)

 『源氏物語 橋姫』を読む勉強会の会場である「シェア型書店HONBAKO京都宇治」は、「GOLDEN GATE」の看板の下にあります。

250802_本箱入口.jpg


 入ると、ギッシリと本が並んでいます。

250802_本箱.jpg

 私がお借りしている本箱は2つ。その2つ共に、今日は本の総入れ替えをしました。これまでの「『源氏物語』その@」と「『源氏物語』そのA」を、「特集『源氏物語』」と「特集《小野小町》」に変更し、並べる本を刷新しました。大学の卒業論文が、私は『源氏物語』、妻が『小野小町』だったので、遊び心から並べてみました。
 店主の山本さんが、小野小町の1冊をパラパラの見て、これはエロ本ですね、私にはとても読めなくて、と仰っていました。実は前回の『源氏物語』でも、その手の本を紛れ込ませていました。どなたも手にされなかったようです。

 今日も、多くの方が出入りしておられ、賑わっていました。まだ、どのような本が求められているのかわかりません。もうしばらくは、様子見です。

 本の入れ替えの整理をしていたら、某放送局の方がカメラを回し、いろいろと聞いてこられました。店主の山本さんからは、今日の取材の確認が事前にあったので、丁寧に対応したつもりです。

 2階のフリースペースでの勉強会も、取材対象になりました。後日、放送日などを本ブログでお知らせしますので、楽しみにしてください。
 もっとも、昨夏の日比谷図書文化館での講座を取材してニュースの形で放映された内容は、切り取られた場面がインパクトのない内容だったせいもあり、みなさまから不評でした。さて、今回はどのようにまとめてくださるのでしょうか。

 今日は、次の2枚の資料を配布して、前回の資料と合わせて進めました。

250802_橋姫-03_1.jpg

250802_橋姫-03_2.jpg

 「(1)スマホ(Android15)に表示される変体仮名」では、現在販売されているスマホに表示される変体仮名の確認をし、どのような文字が変体仮名としてユニコードに登録されているかということについて、少し問題点の指摘をしました。これは、またあらためて報告します。

 「(2)回覧:春曙文庫本『源氏物語 橋姫』(宮川保子氏作断簡の臨模試作)
       ハーバード大学本『源氏物語 須磨』(宮川保子氏作成の臨模本)
       糸罫(NPO法人〈源氏物語電子資料館〉理事の石田弥寿子氏作製)
         宮川氏お手製の糸罫」は、今日から参加なさった方のために、古写本がどのようなもので、どのようにして書写されているかを、実物を見て、触ってもらい、わかりやすく説明しました。

 「(3)ハーバード大学本の兄弟本(淺川槙子氏の報告)」は、ここで読むのが相愛大学本の「橋姫」なので、それがどのような本であり、他にどのようなものがあるかということを説明しました。これも、今回初めて参加された方のための、基礎的な情報を共有するための確認事項です。

 そして、「(4)春曙文庫本『源氏物語 橋姫』現存第二丁表〜第三丁表[変体仮名翻字]」です。
 ここでは、前回(七月五日・第二回)配布したプリントを元にして、書写されている本文の1文字ずつを確認しました。

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於毛ひいて・きこゑ・堂まふ・
遣累まゝ尓/(まま尓)・あ里あ遣乃・【月】ま多・よ
ふ可く・さ志い川累・【程】二・いて堂ちて・いと・志
のひ弖・【御】と母尓・【人】奈と毛・なくて楚・や川
礼弖・を八し介り・可は乃・こな多奈れ八・
布祢なと母・わ川ら八て・【御】むま尓て・
奈り遣り・いり・もていく・まゝに/(ままに)・き里ふ多可
里て・みち毛・三ゑぬ・し遣き・【野中】越・
わ遣・【給】尓・い登・あらましき・可勢乃・き
をひ尓・本ろ/\登/(本ろ本ろ登)・をちみ多累ゝ/(をちみ多累累)・こ能者乃/者〈丁末左〉、乃〈次頁〉、(2オ)
--------------------------------------
【露】乃・越ち可ゝ累毛/(越ち可可累毛)・い登・ひやゝ可尓/(ひやや可尓)・【人】
や里奈ら春・い堂く・ぬ礼・堂まひぬ・
可ゝ累/(可可累)・あ里き奈ん登母・於さ/\/(於さ於さ)・なら
ひ・【給】者ぬ・古ゝち尓/(古古ち尓)・【心】本そく・を可
しう・於ほえ【給】・
「【山】をろし尓・堂えぬ・【木】春ゑ能・
【露】より毛・あや奈く・毛ろき・【我】・奈み多【哉】」・
やま可川乃・越とろく毛・うるさし
と弖・ゆいしむの/ゆ〈ママ〉諸本「す」・をと母・世さ世・
【給】者春・し葉能・ま可き越・王けつゝ/(王けつつ)(2ウ)
--------------------------------------
そこ者可登なき・【水】・奈可礼とも越・ふ三し多く・
こま乃・あし越登母・【猶】・しのひ弖・よ
う井志・【給】へ累尓・可くれ奈き・【御】尓本ひ八・
可勢尓・し堂可ひ弖・ぬ志・ゝらぬ/(志らぬ)・可と・
をとろく・祢さ免乃・いゑ・あ里け累・ち
可く・なる・【程】尓・←(20250803_ココマデ)(以下次回)
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 帰りに宇治橋通りに行くと、ビール祭りということで、大賑わいでした。この通りがこれだけの人で埋め尽くされるのは、初めてみました。みなさん、楽しそうです。7割方は海外の方々のようでした。

250802_祭り.jpg


 平等院表参道で食事をしてから帰りました。熱暑のせいか、帰りの足取りは気怠さを引き摺りながらのウォーキングとなりました。




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2025年07月26日

キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第32回)

 キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)の1階正面入口にある掲示板には、いつものように本日の会合の案内が出ています。NPO法人〈源氏物語電子資料館〉では、基本的には5階の第5演習室をお借りするようにしています。

250726_掲示板.jpg

 今日はまず、吉村氏から問題提起された前回の課題に関して、私が追跡調査した報告から始めました。
 Android 15を搭載した OS では、変体仮名が基本的にサポートされていることを、さらに量販店の店頭で確認した話です。
 また、「白舟書体「教育漢字版」フォント」と「NINJAL変体仮名フォント」についても説明しました。
 こうしたことが、今後とも日本国内でどのように認知されて行くのか、というところで話は終えています。まずは、店頭に並んでいる変体仮名が表示できるスマホがこのまま販売され続けるのか、興味深いところです。ある日突然、店頭から消えるのではないか、と個人的には想像しています。

 さて、尾州家河内本「桐壺」の本文を「変体仮名翻字版」で作成した資料で確認する勉強は、今日は第22丁表から第24丁裏までを行いました。
 特定の単語にどのような変体仮名を用いて表記するのか、ということについて、相変わらず疑問符をつけながら進めています。

 今日の範囲で言えば、「【源氏】の【君】」(23丁表10行目)と「【源氏】能【君】」(24丁表9行目)の場合に、「の」と「能」のにはどんな使い分けがあるのか、などなど、これまでにも問題となったことを思い合わせました。
 本日確認した「変体仮名翻字版」の本文は次の通りです。


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【春】【東宮】能・【御】遣んふく能・【南殿】尓/±〈朱点〉・ありし・き志
き・よそ本し可里し【御】ひゝき尓/±〈朱点〉、(【御】ひひき尓)・於とさせ・多ま
八寸・ナシ・ナシ・ところ/\能/±〈朱点右〉、(ところところ能)・きやう/=△〈削〉饗・くら川可さ/±〈朱点〉、=内蔵寮・こくさうゐなと/±〈朱点〉、=穀倉院・
ナシ・於本や遣【事】尓/±〈朱点〉・ナシ・ナシ・つ可う万つ礼るれいの於ろそ可なる/れ±〈朱点〉・
【事】も・と里王き多流/±〈朱点〉・於本世【事】/±〈朱点〉・あ里て・ナシ・をの/\/±〈朱点〉、(をのをの)・
きよらを・つくして徒可うまつ礼り/徒±〈朱点〉・於八しま春/±〈朱点右〉・
てん乃・日ん可し能・飛さし尓・日ん可しむき尓/±〈朱点〉・【御】
いし/±〈朱点〉、い=倚子・堂てゝ火さ能【御座】/±〈朱点〉、火±〈朱点〉、(堂てて)、火=冠者・飛きいれの/±〈朱点〉・【大臣】乃・
【御】さ・【御前】尓/±〈朱点〉・阿り・【時】なりて/±〈朱点右〉・【源氏】/±〈朱点〉・まいり・多まふ・
三つら/±〈朱点右〉・ゆひ・多まへる・つらつき/±〈朱点〉・可本の/±〈朱点〉・尓本ひ・さま/±〈朱点〉・
可へ・堂まはむ/へる&はむ・【事】・於し遣なり/±〈朱点〉・【大蔵卿】/±〈朱点右〉・三蔵人/三$〈墨〉、±〈朱点〉(22オ)
--------------------------------------
つ可う万川る/±〈朱点〉・いと/±〈朱点右〉・きよらなる/±〈朱点〉・【御】くしを/±〈朱点〉・そく/±〈朱点〉・本と・
【心】くるし遣なり/±〈朱点〉・うへ者/±〈朱点右〉・三やすところ能/±〈朱点〉・【見】多万
八まし可八と/み〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・於本しいつる尓/±〈朱点〉・いと多へ可多き越/±〈朱点〉、江〈削〉へ・
【心】徒よく/±〈朱点〉・於本し可へ春・かうふりし/±〈朱点右〉・【給】て・【御】や春三
ところ尓/±〈朱点〉・ま可て/±〈朱点〉・堂まて・【御】そ/±〈朱点〉・多てまつり可へ弖・
於里弖/±〈朱点〉・八いし/±〈朱点〉、=拝・多て万つり・【給】・さま尓そ・三那【人】/±〈朱点〉・
な三多・於とし/±〈朱点〉・多まふ・み可と八/±〈朱点右〉・まし弖/±〈朱点〉・江/±〈朱点〉・多へさせ・
堂ま八春・於本しま起るゝ/±〈朱点右〉、(於本しま起るる)・於里も・阿り遣類/±〈朱点〉・
む可しの/±〈朱点〉・【事】・と里可へし・ナシ・可奈しう/±〈朱点〉・於も本さる・
いと/±〈朱点右〉・可う/±〈朱点〉・き飛わなる/±〈朱点〉、き=〈朱傍点〉、飛=〈朱傍点2〉、わ=〈朱傍点〉・本と八・あけをとりもやと/±〈朱点〉・う
多可八しく/±〈朱点〉・於ほされつるを/±〈朱点〉・ナシ・ナシ・あさましう/±〈朱点〉・ゝ川くし遣さ/く〈次頁〉、(う川くし遣さ)、(22ウ)
--------------------------------------
そひ・多まへり・飛きいれの/±〈朱点右〉・【左大臣】・
みこ八ら尓/±〈朱点〉・堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・日とり・可し川き/±〈朱点〉・【給】・【御】むすめ/±〈朱点〉・【春
宮】よりも/±〈朱点〉・【御】遣しき/±〈朱点〉・あるを/±〈朱点〉・於本し王つらふ/±〈朱点〉・【事】・
ありける・こ乃/±〈朱点〉・【君】尓・多て万つらん能・【心】・ふ可きなり
遣り・うへ尓/±〈朱点右〉・【御】遣しき・堂ま八らせ・【給】遣れ八・
【御】とき/±〈朱点〉・よくて・さら八/±〈朱点〉・や可て・こ乃・おり能・うしろ
三・な可めるを・そひふしにもと/±〈朱点〉・毛よ本させ/±〈朱点〉・【給】
遣れ八・さ/±〈朱点〉・於ほし多り・さふらひ尓/±〈朱点右〉・ま可て・【給】て・
ナシ・【御】みきなと/±〈朱点〉・まいる・本と・みこ多ちの/±〈朱点〉・【御】さの・すゑ
耳・【源氏】の【君】/±〈朱点〉・つき・【給】へり・於とゝ/±〈朱点右〉、(おとと)・遣しき八三・
【給】・【事】・あれと・八つ可しくて/±〈朱点〉・と可くも/±〈朱点〉・あへしらひ起こ江/±〈朱点〉、起〈次頁〉、(23オ)
--------------------------------------
堂ま八春・【御前】より/±〈朱点右〉・【内侍】/±〈朱点〉・世んし/=宣旨・うけ
堂ま八り・徒多へ弖・於とゝ/±〈朱点〉、(於とと)・まいり・【給】へき・め志・
阿れ八・万いり/±〈朱点〉・【給】・ろく乃/±〈朱点〉・【物】・うへの命婦/±〈朱点〉・と里て/±〈朱点〉・
多まふ・しろき/±〈朱点右〉・於ほうちき尓・【御】そ/±〈朱点〉・日とく
堂り・連いの/±〈朱点〉・【事】なり・【御】さ可川きの/±〈朱点右〉・ついて尓・
「いときな起・八つもと遊ひ尓・な可き・よ越・
ちきる・【心】八・む春ひこめつや」と・【御心】八へ/±〈朱点〉・阿りて・
於とろ可さ勢/±〈朱点〉・【給】・
「む春ひつる・【心】も・ふ可き・もとゆひ耳・
古き・むらさきの・いろし・あせす八」と・そうして/±〈朱点〉、=奏、=して〈左傍記〉・
ナシ・な可八しより/±〈朱点〉、=長階・於りて・ふ多うし/=舞踏・【給】・飛多り能つ可さの/±〈朱点右〉、能〈次頁〉、(23ウ)
--------------------------------------
【御馬】・くら【人】ところ能/±〈朱点〉・堂可・すゑて・
たま八り/±〈朱点〉・【給】・み八しの/±〈朱点右〉・もと尓・みこ多ち/±〈朱点〉・可む多ち
め/±〈朱点〉・徒らねて/±〈朱点〉・ろくとも/±〈朱点〉・新那/\/±〈朱点〉、(新那新那)・堂ま八り/±〈朱点〉・【給】・
そ乃/±〈朱点右〉・【日】能・於まへ能・ナシ・於りひ川【物】こものなと/こ±〈朱点〉、こ=籠物・
【右大弁】なん/±〈朱点〉・う遣堂ま八りて/±〈朱点〉・つ可う万徒ら勢
遣る/±〈朱点〉・としき/±〈朱点右〉、=屯食・ろく能/±〈朱点〉、=禄・可らひ川ともなと・ゝ古ろせ
きまて/±〈朱点〉、(と古ろせきまて)・【春宮】能/±〈朱点〉・【御元服】尓・可寸・まさり弖・な可/\/±〈朱点〉、(な可な可)・
かきり・なく・い可めしくなん/±〈朱点〉・あり遣る・や可て/±〈朱点右〉・【所】能・
【夜】・於とゝ能/(於とと能)・【御】さと尓・【源氏】能【君】/±〈朱点〉・ま可てさせ・多て
万川り・【給】・さ本う/±〈朱点右〉・よ尓/±〈朱点〉・めつらしきまて/±〈朱点〉・もて可し
つき/±〈朱点〉・ナシ・多まへり・いと/±〈朱点右〉・き飛わ尓て/±〈朱点〉・於八し多流を/±〈朱点〉、(24オ)
--------------------------------------
ゆゝしう/±〈朱点〉・ゝ川くしと/±〈朱点〉、(う川くしと)・於本春/±〈朱点〉・ナシ・ナシ・をん那【君】八/±〈朱点右〉・すこ
し/±〈朱点〉・すくし/±〈朱点〉・堂まへる本と尓・いと/±〈朱点〉・わ可う/±〈朱点〉・於八春連
八・尓けなう/±〈朱点〉・八つ可しと/±〈朱点〉・於本し多り/±〈朱点〉・こ乃/±〈朱点右〉・おとゝ乃/(おとと乃)・
【御】於ほ江・いと/±〈朱点〉・やむ【事】なく/±〈朱点〉・於八する尓/±〈朱点〉・者ゝ【宮】八/±〈朱点〉、【宮】±〈朱点〉、(者者【宮】八)・
み可との/±〈朱点〉・日と川きさい八ら尓なん・ナシ・ナシ・ナシ・於八し遣礼八/±〈朱点〉・
いつ可多尓/±〈朱点〉・つ遣ても・いと/±〈朱点〉・八那や可なる尓/±〈朱点〉・こ乃/±〈朱点〉・
【君】さへ/へ〈削〉へ・かく於八しそひぬれ八/±〈朱点〉、於±〈朱点〉・【春宮】能/±〈朱点〉・【御】於ほ
ち尓て・つ井尓/±〈朱点〉・【世】乃な可を・しり・【給】へき・【右】乃
於とゝ能/±〈朱点〉、(【右】乃於とと能)・【御】いきをひ者・ナシ・【物】尓も/±〈朱点〉・あら寸・をさ
れ/±〈朱点〉・堂まへり・【御】ことも/±〈朱点右〉・八ら/\尓/±〈朱点〉、(八ら八ら尓)・あま多/±〈朱点〉、多&多・ナシ・【物】し・
【給】・ナシ・【宮】乃/±〈朱点右〉・【御】八ら尓八・【蔵人】の【少将】尓て/±〈朱点〉・またいと/±〈朱点〉、い±〈朱点〉、(24ウ)
--------------------------------------


 尾州家河内本「桐壺」は、次回で終わる予定です。これまでの資料で索引をつくることで、どのような字母で言葉が構成されているのかが、明らかになることも多いかと思います。
 さらには、このキャンパスプラザ京都では池田本「桐壺」の本文を変体仮名で確認し終えているので、あわせて写本における字母の使い分けのおおよその傾向がわかるはずです。
 いずれも、詳しくは次回に、ということで終わりました。

 帰りに、変体仮名が表示されるスマホを買いに、駅前のヨドバシカメラに寄りました。吉村氏が購入したものと同じ機種にする前に、店員の方にこの Android 15を搭載したスマホ同士で、変体仮名を交えた言葉をメールでやりとりができるのか、ということと、その言葉を印刷できるのか、ということを質問しました。
 今日は違う方に聞いたにもかかわらず、前回同様、話にならない対応でした。とにかく、スマホに表示される文字に関する知識がないし、ピンボケの対応です。機械を売ることにしか関心はなく、機能に関する説明は仕事ではないと思っておられるようです。お店の方で、Android 15のスマホを持っている方2人にやりとりをしてもらえないか、と聞くと、他の方と相談するために出たり入ったりした揚げ句に、いろいろな理由を付けて、できないとのことでした。別のコーナーの方にも同じようなことを聞いても、とにかく社員の勉強不足で話になりません。何人もの社員がおられるのにまともな対応ができない日本の若者に、とにかく失望しました。みなさん、機械を作った会社に聞いてくれ止まりです。ここまでが、今の京都での現状です。ちょうど1週間前の、東京の有楽町駅前にあるビックカメラでの対応と変わりません。

 店員の意識の根底には、日本語がどのようにして表示されるのか、などにはまったく興味がないのです。まあ、問題意識がないので仕方のないこととはいえ、いつかどこかで説明してくださる方との出会いを楽しみにしています。
 こうした現実を、マスコミも興味がないのでしょう。ネットのニュースなどにもみかけません。日本語の中でも、仮名文字が無責任に放置されています。もうすこし待ってから、こうしたことを専門とする方に聞いてみようと思っています。




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2025年07月19日

日比谷で「須磨」(26)と『百人一首』(新3)を読み、スマホと変体仮名のことに及ぶ

 午前中に東京駅に着くと、有楽町駅前のビックカメラに行きました。京都で確認した、スマホに変体仮名が表示されることを、東京ではどうなのかを調べるためです。
 当然のことながら、売り場の方はそんなことはまったくご存知ありません。社員の方も含めて皆無です。そこで、通信のことは切り離して、機器だけの担当の方に話を聞きました。いろいろなスマホをテストしてもらう内に、Android15 だけが変体仮名が出ることがわかりました。Android14 では変体仮名が出ないのです。担当者の方は、変体仮名が表示されることの意味は理解できないし、正直なところわからないことだらけだ、とのことでした。

 上の階で食事をしながら生成AIにいろいろと質問をして、以下の情報を得ました。

 「Gemini」の回答から。以下の緑字の引用文の中の赤字の部分に注目したいと思います。特に「Noto Hentaigana」については、「NO more TO-fu」から来ているそうです。フォントが正常に描画されない時に、代わりに四角い記号が表示されることがあります。それを「豆腐」と言っています。「Noto」は、豆腐がない、と言う意味をもっているのです。このことは、この後の講座の中で私がこの話をしている時に、受講生の方が教えてくださいました。ありがとうございました。私も、こうして時代に変化に何とか着いて行けています。

スマホで変体仮名が表示される機種とされない機種があるのは、主に以下の理由によります。
 * OSの対応状況とフォントの搭載:
   * 変体仮名のUnicode対応: 変体仮名は、現代の平仮名とは異なる字形を持つため、Unicodeという文字コード規格で個別の文字として定義される必要があります。Unicodeに対応していなければ、そもそも文字として認識されません。
   * OSのフォント搭載: スマートフォンのOS(iOSやAndroid)が、変体仮名を表示するためのフォントを標準で搭載しているかどうかが重要です。古いOSや、変体仮名に対応していないフォントしか搭載していない機種では、表示することができません。
   * 最近の動き:
     * Googleは、あらゆる文字を表示できるようにする「Noto」プロジェクトの一環として、**「Noto Hentaigana」**という変体仮名フォントをリリースしています。
     * Android 15からは、標準の日本語フォント(NotoSansCJK)がバリアブルフォントになり、変体仮名がデフォルトでサポートされることが発表されています。これにより、Android 15以降を搭載する機種では、変体仮名が表示されるようになるでしょう。
     * iOSでも、変体仮名アプリなどが提供されており、フォントのアップデートによっては表示が改善されている可能性があります。
 * アプリ側の対応:
   * OSが変体仮名に対応していても、使用しているアプリがそのフォントを呼び出して表示する仕組みになっていなければ、表示されないことがあります。例えば、特定のWebサイトや電子書籍アプリなどが、独自のフォント設定をしている場合などです。
 * Webフォントの利用:
   * 一部のWebサイトでは、変体仮名を表示するために「Webフォント」という仕組みを利用している場合があります。Webフォントは、サイトを閲覧する際に一時的にフォントをダウンロードして表示するため、端末のOSが直接フォントを搭載していなくても表示されることがあります。
要するに、変体仮名の表示には「OSが変体仮名を文字として認識し、それを表示できるフォントを持っているか」が最も大きな要因となります。新しいOSバージョンや、変体仮名対応のフォントを搭載した機種では表示され、そうでない機種では表示されないという状況になっています。

 続いて、チャットGPT の回答の一部を紹介します。

以下は、変体仮名フォントを提供している代表的な2つのフォントと、その入手方法です

1. 白舟書体「教育漢字版」フォント(無料版)

教育漢字1026字対応のOpenTypeフォントで、変体仮名にも一部対応しています。無料でダウンロードできますが、J‑Font.comへの会員登録が必要です。

2. NINJAL変体仮名フォント(特化型)

国立国語研究所(NINJAL)が学術目的で提供している、変体仮名専用フォントです。

 国立国語研究所の変体仮名専用フォントについては、その選定の段階から知っていました。しかし、こうした流れの中での理解はしていませんでした。私が付いて行けていなかったことになります。
 白舟書体「教育漢字版」フォントについては、京都の自宅に帰ってから確認します。
 こうした件については、今後もさらに追究していきます。

 日比谷では、今日も私が大好きなゴジラが吠えています。

250719_ゴジラ.jpg

 身体の火照りを覚ますため、帝国ホテルに立ち寄りました。ロビーの中央には、ヒマワリが咲き誇っています。

250719_ヒマワリ.jpg

 日比谷図書文化館の入口には、いつものように本日の講座の掲示があります。

250719_掲示板.jpg

 今日の最初は、「ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』を読む(二六)」です。
 本題に入る前に、過日のブログで取り上げた、「変体仮名が今のスマホ社会で認知されていることを知って」(2025年07月02日、http://genjiito.sblo.jp/article/191406349.html)をもとにして、現在スマホで変体仮名が表示されることの意味についてお話しました。先ほど言ったビックカメラでの話しもしました。すると、2人の方から自分が使っているスマホに変体仮名が表示されるとの報告を受けました。ただし、変体仮名が表示されることがどのような意味を持つのかは、これまで考えても見なかった、とのことです。お話してよかったと思いました。

 ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」に関しては、48丁表と48丁裏の5行目までしか進めませんでした。スマホと変体仮名の話しが長くなったことと、今日から参加なさっていた方が6名もいらっしゃったので、ゆっくりと丁寧な説明を心がけたこともあります。
 この講座の主旨は、変体仮名が読めるようになることにあるので、ゆっくりと進んだことはお許しいただくことにしましょう。
 今日確認した箇所は、以下の通りです。

【入道宮】八・【春宮】の・【御】こと越・ゆゝし
うの三/(ゆゆしうの三)・於も本す尓・【大将】も・可く・佐すらへ・【給】
を・い三しう・於毛ほ世登・い可ゝは/(い可可は)・勢ん・多いら可
尓堂尓・越八しすくして・こと毛・よろしう・
奈ら八なと・於もす・いと・毛乃者可那き・【程】尓・を
八しま須そ・多の毛しけ奈き・【心】ち・志・
多満ひける・【御】八ら可ら能・みこ多ち・む川
ましう・きこゑ可多らひ・【給】ひし・【上達部】・
者し免徒可多八・さふらひ・きこゑ奈と・ナシ・あ
里き・ナシ・ナシ・あ者れ奈る・ふ三越・徒くり可しそれ尓徒け弖/れ〈次頁〉、可し〈ママ、諸本かはし〉、(48オ)
--------------------------------------
ナシ/+【世中】尓・めてられ・【給】へ八・きさき乃
【宮】/後き$い、(きさい乃【宮】)・きこし免して・いみしう・の多まひ
け里・於ほやけの・可う志なる・【人】は【心】尓満
可勢て・こ乃【世】の・あち者ひを多尓・しる・
こと・那くこそ・あむ奈れ

 ここでは、48丁表の最終行にある「徒くり可しそれ尓徒け弖/れ〈次頁〉、可し〈ママ、諸本かはし〉」について、凡例に新たに追加することになる、ということを説明しました。それは、「徒くり可し」とある箇所は脱字があると思われ、諸本を見比べると本来は「徒くり可はし」とあるべきだと思われるからです。そのため、付加情報に「〈ママ、諸本かはし〉」という記述を加え、これを凡例に追記することにしたのです。
 凡例が次第に増えて来て、その整理が大変になりました。しかし、しっかりとした方針で「変体仮名翻字版」を作るためにも、この凡例は厳密なものを作成する必要があります。そうした思いで「変体仮名翻字版」を作りつつ、凡例も更新をしているところです。

 1時間の休憩時間には幾つかの質問を受け、軽食を食べて『百人一首』の講座に臨みました。

 最初に話題にしたスマホに変体仮名が表示できる話は、『源氏物語』の「須磨」の時よりも詳しくしました。反応が良かったので、つい長話になりました。
 『百人一首』に関しては、まず「宝塚の方の芸名が『百人一首』と関係あること」と「落語と『百人一首』」の2つの資料で、『百人一首』への興味と関心を深めてもらうことにしました。これは、新たに受講される方が多かったために、こうした内容にしました。
 なお、このことは機会をあらためて報告しますので、ここでは省略します。

 『百人一首』については、11番歌の参議篁から16番歌の中納言行平までを、変体仮名に注意しながら和歌の文字を丹念に追いました。

 終了後も、何人かの質問があり、その対応をしてから終わりました。




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2025年07月12日

中之島での『百人一首』(第14回)と『源氏物語 蜻蛉』(第25回)の講座

 淀屋橋から大阪府立中之島図書館を望んでシャッターを切ると、左手上空を伊丹空港に向かう飛行機が写っていました。今日は、万博会場を中心にして、ブルーインパルスが大阪上空を編隊飛行する日です。午後3時前後の予定とのことなので、ちょうど講座のまっ最中になります。見られなくて残念です。

250712_図書館.jpg

 本日の『百人一首』の講座で使用したプリントは5枚です。その内の4枚を、画像として引きます。

250712_中之島・百人-14_1.jpg


250712_中之島・百人-14_2.jpg

250712_中之島・百人-14_3.jpg

250712_中之島・百人-14_4.jpg

 まず最初の3枚の資料は、すでにブログで報告したことを取り上げて、現在問題があると思っていることをお話しました。ブログでは、「■スマホで変体仮名が送受信できる時代に突入していること(2025年06月30日、「http://genjiito.sblo.jp/article/191404255.html」)と題して書いたことです。

 次の1枚は、これもブログで報告した記事の「■変体仮名が今のスマホ社会で認知されていることを知って
(2025年07月02日、「http://genjiito.sblo.jp/article/191406349.html」)の要約です。
 私の講座は、変体仮名が読めるようになることを主眼とするものです。そこへ、変体仮名が表示できるスマートフォンが販売されている現実がわかりました。これは、相容れない状況が起きているので、どうしても無視できないために、実状の報告とそれに対するコメントをしました。いずれは、どこからか圧力がかかって、変体仮名が表示できるスマホは市場から姿を消すと思っていますが。

 メインの『変体仮名でよむ 百人一首』をテキストとする勉強は、7番歌(安倍仲麻呂)から11番歌(参議篁)までの5首を扱いました。陽明文庫と国文研の二種類のカルタに書かれている変体仮名の和歌を、その字母の違いに留意しながら確認しました。


 30分の休憩時間に、ブルーインパルスの編隊飛行が大阪城の上を飛んでいるところを、図書館の窓から撮影した方がいらっしゃいました。見せてくださった写真には、はっきりとブルーインパルスが白煙を引いて飛んで行く姿が写っていました。なかなか見られないものなので、思い出の写真となることでしょう。


 次は、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」の変体仮名を読む時間です。
 ここでも、スマホで変体仮名が表示される現在の状況を、簡単にお話しました。
 そして、すぐに宮川保子さんが相愛大学の写本の臨模本を手がけておられることに触れ、実際に試作版の資料を見てもらいました。800年前の古写本の実態がわかる資料なので、紙質や文字や装飾料紙をじっくりと見てもらいました。まさに、実感実証の体験を伴った勉強会となっています。

 ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』は、57丁表から59丁表の1行目までを確認しました。
 今日は、同じ文字をなぞっている箇所がいくつもあったので、その理由がよくわからないことを伝えました。また、変体仮名の「者(は)」や「王(わ)」そして「を」が認識しにくい字形であることの確認もしました。
 現在使っているテキストは白黒写真であり、よくわからない箇所に関して、カラー画像を拡大したものを提示して、詳しく見ました。次の例がそれです。
 まず、58丁表9行目の「万いら△給」とあるところです。11年前に刊行したテキストでは、「まいらせ給」として「せ」の横に「(判読)」と付記しました。しかし、次の写真を見てもわかる通り、赤く囲った箇所を「せ」と読むには大いに疑問があります。そこで、「万いら△給」として無理に読まないで不読文字の△で翻字することにしました。

250711_「蜻蛉」58oL9_万いら△.jpg

 もう1例。上記の次の行である58丁表10行目「さ可り/$ころ」とした箇所には、ミセケチの点があることです。カラー写真で見るとわかるように、本行の文字の左横に点が打たれていることが確認できます。その右横に書かれた「ころ」は、墨の色からも後に傍記として書き込まれた文字のようです。

250711_「蜻蛉」58oL10_$.jpg

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■ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』57丁表〜59丁裏
翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部
( 「 )・末尾( 」 )、底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
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【御】く尓て・いと・こよな可らぬ・【御程】の【人】なれ八・や
むことなくて・佐ふらひ・【給】・可きり・あれ八・三や
のきみなと・うちいひて・も者可り・ひき可け・
【給】そ・いと・あ者れなり介る・【兵部卿】の三や/【式】&【兵】、(【式部卿】の三や)・
この・きみ者可りや・こひしき・【人】尓・於もひ・よ
そへ徒へき・さま・し多らん・ちゝ/(ちち)・みこ八・者ら
からそ可しなと・れいの・【御心】八・【人】を・こひ・【給】尓・
川けても・【人】の・ゆ可しき・【御心】・やまて・い川し可と・
【御心】可け・【給】て介り・【大将】も・もとかしき万て・
ある王さ可な・【昨日】・介ふと・いふ者可り・【春宮】尓やなと/や〈次頁〉、(57オ)
--------------------------------------
於ほし・王れ尓も・けしき八万せ・【給】
きかし・かく・者可奈き・よの・於とろ江・【思】尓八/八〈行末左〉・
【水】の・そこ尓・【身】を・し川めても・ゝと可し可らぬ/(もと可し可らぬ)・
王さにこそなと/な&な・【思】川ゝ/(【思】川川)・【人】より八・【心】よせ・きをゑ/を〈ママ、諸本こ〉・
【給】へり・この・【院】尓/尓&尓・於八し万春を八・【内】よりも・
ひろく・於もしろく・す三よき・もの尓して・つね
尓・【候】八ぬ・【人】ともゝ/(【人】ともも)・三な・うちと介・春三川ゝ/(春三川川)・
八る/\と/(八る八ると)・於ほ可る・多いとも・らう・王た【殿】尓・み
ち多り・【右】の於ほ【殿】ゝ/(【右】の於ほ【殿】の)・む可しの・【御】け者い尓も・
於とらす・すへて・可きり・なく・いとな三・川かく万川里・/く$う、万〈次頁〉、(川かう万川里)、(57ウ)
--------------------------------------
【給】・い可めしう・なり尓多る・【御】そうな
れ八・な可/\/(な可な可)・い尓しへよりも・い可めしき・こと八・まさ
里てさへなん・阿りける・この・【宮】・れいの・【御心】な
羅八/れ&羅、(【御心】なれ八)・【月】ころの・本とに・い可なる・すきことと母を・
しいて・【給】八まし・こよなう・し川まり・【給】弖・
【人】め尓八・をいな本りし・【給】可なと・三ゆる越・こ
のころは・【又】・三やのきみ尓/多&き、(三やの多み尓)・【本上】・あら八れて・
かゝ川らひ阿りき/(かか川らひ阿りき)・【給】介る・[30]すゝしう/(すすしう)・なりぬと
て・三や・うち尓・万いら△・【給】なと・すれと・あきの・さ可り・も
みちの・さ可りなと越/さ可り$ころ、(ころなと越)・みさらんこそと具ちをしかりて/△&具、か〈次頁〉、(58オ)
--------------------------------------
王可き・【人】/\なと/(【人人】なと)・三な・川とひまいり
多る・ころなり・【水】尓・なれ・【月】を・三てゝ/三〈ママ、諸本め〉、(三てて)、(めてて)・【御】
あそひ・多へ須・つねよりも・いまめ可しけれ八・この・
三や八・かゝる/(かかる)・すち八・いとこよなう・もて八やし・
【給】・あさゆふ尓/い&ゆ、(あさいふ尓)・三ても・な越・つね尓/尓&尓・三ん・八
川八奈の・さま・し・【侍】多る尓・【大将】のきみ八・いと・さ
しも・いり多ちいり多ちなら八・し・【給】八ぬ本とにて・
者川可しう・【心】ゆるひ・なき・もの尓・三な・【思】多り・
れいの・布多【所】母・いり・【給】へり・【御前】尓・於八する・
本とに/本&本・【侍従】八/±可の・ものより・のそきて・三・多て万つる尓/尓〈次頁〉、(58ウ)
--------------------------------------
い川可多尓も/\/(い川可多尓もい川可多尓も)・よりて・めて多き・【御】すく
(2025/07/13 ココマデ)


 今日も、鎌倉時代に書き写された『源氏物語』の本文を、字母に注意しながら丹念に見ました。みなさん、800年前の仮名文字に少しずつ慣れてこられたようで、文字を追っておられる姿を拝見していて、スキルがアップしてきていることを実感する場面が何度かありました。和歌と違い、物語の文字列は読みにくいものが多いと思われます。それでも、コツコツと読み続けていくと、自然に読めるようになります。確実に変体仮名が読めるようになっていることを自覚して、さらにさまざまな字形の文字を読む訓練をし、挑戦してほしいものです。終わってから、いろいろと質問もあるので、折々にお手伝いをしています。




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2025年07月05日

宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(2)

 シェア型書店HONBAKO京都宇治の中には、本がギッシリと並んでいます。本好きの方が集まるコミュニケーションの場として、本格的に稼働しだしています。

250705_本箱.jpg

 2階のシェアスペースをお借りしての勉強会は、今回が2回目です。前回、京都新聞の「まちかど」欄に掲載された案内の記事を見てお出でになった方は、2回目の今日も参加してくださいました。ありがたいことです。

 今日はまず、書家の宮川保子さんが進めておられる春曙文庫蔵『源氏物語』(断簡)5帖の内、「橋姫」の臨模本の試作版が2折分届いているので、そこで宮川さんが書かれている文字に疑問符をつけておられる箇所の確認から始めました。
 疑問とされている箇所は、次の1例を除いてすべて解決しました。その問題の箇所は、次のように書かれている場所です。16丁裏2行目行末「可多□□」(『源氏物語別本集成』の文節番号で「453726」)とあるところです。

250705_春曙「橋姫」16ウL2「かたし」.jpg

 今日、宇治の会場での検討では保留となったこの箇所を、自宅に帰ってから大きなモニタや各種資料を見比べていると、次のように書かれているはずだ、ということに思い至りました。

 可多可り/し&可り
(「可多し」と書いた後、「し」の上から「可り」とナゾルことで「可多可り」と読ます)

 これには、保坂本が「かたし」となっていたことがヒントになっています。『源氏物語別本集成 正・続』(22巻)は、五十音に置き換えた不正確な翻字であったことから、書物もデータもお蔵入りにしたはずなのに、今回たまたま当たりをつけるのに出番が巡ってきたのです。せっかく多くの方々の協力を得て刊行した資料集なので、今後は参考情報として折々に再利用してもいいか、と思うようになりました。

 これで、宮川さんから質問されていた問題箇所は、すべて解消しました。

 その後宇治では、あらためて現存「橋姫」の最初(『源氏物語別本集成』の文節番号で「451496」の「して」)から確認していきました。

 まず、「としころ」(1丁裏4行目)・「い身しう」(1丁裏6行目)・「ま川」(1丁裏9行目)の本文異同から、春曙本は「麦生本」「阿里莫本」「中京大本」とは明らかに異なる本文を伝えていることが確認できました。
 また、全体的に「保阪本」に近似する傾向があるものの、明らかに異なる本文も伝えています。これらは今後の検討課題です。


春曙文庫本『源氏物語 橋姫』現存第一丁表・裏[変体仮名翻字]
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〔『源氏物語別本集成 第15巻』の文節番号[451496]〕
して・本と・ふる・【時】者・古ひしく・
於ほえ・【給】・古乃・きみの・可く・堂う登可
里・きこゑ・堂まえ八・れん世い【院】より八・
徒祢尓・【御】世うそく・あ里弖・としこ
ろ・をと尓母・をさ/\/(をさをさ)・きこゑ・堂ま者寸・
い身しう・さひし介那里志・【御】
す三可尓・やう/\/(やうやう)・ひと免・身累・【時】尓・あ里・←0531_ココマデ
をりふし尓・とふらひ・きこゑ・【給】・【事】・い
可めしうて・こ乃・きみ毛・ま川・さ累
へき・【事】尓・徒け川ゝ/(徒け川川)・を可しき・やう尓も/(1オ)
--------------------------------------
ま免や可尓毛・ナシ・古ゝろよせ/(古古ろよせ)・徒可うまつり・
堂まふ・【事】・【三年】者可り尓・なりぬ・【秋】能・
春え川可多・【四】き尓・あてゝ/(あてて)・し・堂まふ・
【御念仏】を・古乃・可は徒ら葉・あしろの・奈
身毛・古乃古ろ八・い登ゝ/(い登登)・みゝ可ましう/(みみ可ましう)、可ま〈ママ〉・志つ可
奈らぬ越と弖・可乃・あ佐里能・春無・てら能・
堂う尓・う川ろひ・堂まひ弖・【七日】の・
【程】・越こなひ・【給】・ひめきみ堂ちは・い登・
古ゝろ本そく/(古古ろ本そく)・徒礼/\//\〈薄墨〉、(徒礼徒礼)・まさりて・な可め・【給】
け累・ナシ・【中将】乃き身・ひさしく毛・満いらぬ【哉】登/ぬ〈次頁〉、(1ウ)
--------------------------------------

 まだ「橋姫」の確認は始まったばかりなので、さまざまな角度で本文を見ています。密林の中をさまようように、本文の森を探検する旅に出立した、という感触の中で今日も時間となりました。「あっ! もう?」という思いを抱きながら、散会となりました。

 下の本箱の前では、七夕飾りが置かれていました。短冊に、求められるままに各自が言葉を書いて、笹に結びつけました。

250705_七夕.jpg

 結びつけるのに、紙縒り(こより)を使いました。高校の教員をしていた頃、試験の後のザラ半紙の回答用紙の束は、角に小さな穴をあけて紙縒りを差し込んで綴じていました。懐かしい文房具です。

 目の前の百個の本棚を見ていると、ほしい本が2冊みつかりました。早速いただきました。このシェア型書店HONBAKO京都宇治では、書店や図書館ではなかなか見かけない本との出会いがあります。




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2025年06月28日

キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第31回)−変体仮名が扱えるスマホのこと−

 今日の京都の気温は、36度との予報が出ていました。
 日差しを避けるようにして、会場に入りました。

 今日は、勉強会の後は、同じ部屋でNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の理事会と総会が開催されます。1階正面入口にある掲示板には、この2つの集まりの案内が出ています。

250628_パネル.jpg

 今日は、先日届いた、宮川保子さんが書かれた相愛大学蔵春曙本「橋姫」の臨模本作成のための下書きを、参会のみなさんに見てもらいました。断簡とはいえ、ハーバード本の面影を彷彿とさせる、鎌倉時代の『源氏物語』が偲ばれるものです。あと4巻あるので、清書版の臨模本の完成が待たれます。近日中に相愛大学へ原本調査に行く予定なので、この試作品を持参して、詳細に見比べて来るつもりです。

250628_春曙「橋姫」.jpg

 次に、いつものような前置きなしに、尾州家河内本「桐壺」に書き写された『源氏物語』の本文の確認に入りました。これまでの2回分の本文が順送りで積み残しとなっているので、とにかく今日の資料に追いつくのを最優先したのです。
 今日は、尾州家河内本「桐壺」の第20丁表〜第21丁裏までです。
 ただし、進めて行く中で興味深いことが話題となったので、まずはそのことから記します。

 それは、モトローラのスマートフォンに機種変更したところ、変体仮名が表示できるようになった、ということです。確かに、「あ」と入力すると、変換候補の文字の中にユニコード(UTF8)に登録された「あ 阿 愛 惡」の4文字が選択対象の文字として出て来ます。それを私の方にメールで送ってもらうと、私のスマートフォンには六本線の四角の記号が4つ並んで表示されます。つまり、モトローラのスマホで表示できた変体仮名は、アイフォンには正しく送れないようです。他社のスマホとの間では、どのような表示になるのでしょうか。その前に、モトローラ以外の海外のメーカーのスマホでも、変体仮名は表示できるのでしょうか。そして、変体仮名で書いたメールは、どのメーカー同士であればやりとりできるのでしょうか。

 文部科学省は、学校教育への変体仮名の導入は、教育現場を混乱させる、ということで認めていません。経済産業省は、コミュニケーションツールとしての変体仮名は容認しており、この両省のスタンスの違いには興味があります。
 いずれにしても、今日現在、日本で使用可能となっているスマホの一部に、変体仮名が利用、活用できる状況にあることは事実です。この事態を、文部科学省は承知・承認しているのでしょうか。正式な説明がほしいところです。

 私は、変体仮名が読めるようになるための社会人講座で、一日も早く変体仮名が日本で暮らす人が自由に読み書きとまでは行かなくても、少なくとも読める環境を提供すべきであることを力説しています。1900年(明治33年)に文部省は、300近くあった仮名文字を一音一字にするという、愚行でしかない文字改革をしました。学校で教える五十音図がそれです。日本語の教育を受けた人の100%は、平仮名は約50個だと信じて疑いません。しかし、それは、たかだか125年前に文部省が国字政策の一環で押し通したことであり、その時の審議内容は、ほとんどわかっていません。

 そして今、変体仮名が表示でき、メールでその変体仮名をやりとりできる環境が生まれているのです。
 先月刊行した『変体仮名でよむ 百人一首』(伊藤鉄也・吉村仁志 編、新典社、2025年5月)の巻頭の解説で、私は[変体仮名翻字版について]との見出しで以下の文章を掲載しました。

 平仮名は、平安時代から一つの音に対して複数の字体があった。それが、一九〇〇年(明治33年)に一音一字となり、そこから外された仮名文字は変体仮名(異体仮名)と呼ばれるようになる。
 二〇一七年六月に、国立国語研究所の成果として、世界中の文字を国際的に統一する標準規格であるユニコード(Unicode)に二八五字の変体仮名が登録された。しかし、依然として変体仮名は、読めない書けない表示できない文字として、放置されたままである。
 そこで、一人でも多くの方に日本の文化資産である変体仮名がスラスラと読めるようになってほしいとの願いから、東京・京都・大阪の三都三箇所で「変体仮名をよむ」ことをテーマとする社会人講座を開講することになった。(4頁)

 ここで、「しかし、依然として変体仮名は、読めない書けない表示できない文字として、放置されたままである。」としたことは正しくないことになり、補訂すべきであることがわかりました。つまり、現在、一部のスマホでは変体仮名が誰にでも自由に表示できるのです。そして、真面目に五十音図で仮名文字を覚えた多くの方が、その変体仮名が読めないのです。海外から日本に持ち込まれ、現在販売されているスマホを手にした人だけが、自由に変体仮名が扱えることに、私は国民の一人として違和感を覚えます。私が使っているアップルのスマホでは、表示も送信もできないからです。日本国内では扱えない変体仮名が、海外で入手したパソコンやスマホでは扱える問題点を、社会人講座で話題にしてきました。日本語の中でも、仮名文字がこのような状況に置かれていることは、日本語のコントロールが効いていないことになります。海外の方と一部のスマホを手にした人だけが変体仮名を操れる今、このままにして置いていいはずがありません。Tシャツの背中に漢字を書いていた人たちが、明日にでも変体仮名を印刷して歩くことが想像されます。その前に、街中には変体仮名が氾濫していることは、このブログでも、講座でも例示してきました。飲み屋さん街の暖簾や看板やメニューはもとより、和菓子屋さんや和雑貨屋さんでも、変体仮名は目にします。
 国語や国字について、日本という国が今後はどうするのか、変体仮名の扱いを通してしっかりと注視していきたいと思います。

 この変体仮名が自由に扱えるスマホは、河原町四条の家電量販店で手に入るとのことなので、足を運んで実状などを調べてみます。このことは、またあらためて報告します。

 さて、今日の尾州家河内本「桐壺」の「変体仮名翻字版」の確認は、以下のようになりました。
 問題点としては、今日の4頁分の範囲では、「江」が多くて「衣」が一例だけだったこと、2つ打たれた朱は濁音を示すだけか、そして、「ふち川本」と「源氏」の用字は、出て来た2回とも同じであることなどです。持ち越しとなったことは、「多まへと/ま=マ」(20丁裏6行目)と「【御】尓くさも/尓=ニ」(21丁表1行目)の、フリガナとしての片仮名です。これは、今後とも用例を集めて傾向を考えていきます。戸籍謄本の名前の表記に読みがなを片仮名でつけることについても話題が及び、活発な意見交換をしました。

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■尾州家河内本「桐壺」(今回:第20丁表〜第22丁裏まで)
[変体仮名翻字版]
・翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
  傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
  補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
  底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
※〈朱点〉の有無から、複合語を認めていない場合を集めるとおもしろい。
■翻字に関する佐藤さんからのメモ (要・第1回と第5回の〈朱点〉の再点検)
〈朱点〉を使って、原文をいかに正確に読み取るかという工夫が、尾州家河内本などでは随所に見受けられる。
  ※本行の文字間に打たれた読点としての朱点は、補入記号のない補入として、[/±〈朱点〉)]を原則とする。
ただし、朱点が削除されいてる場合は[±〈朱点削〉]又は[±〈朱点削?〉]とする。朱点が文字の左右に打
たれている場合は[/■±〈朱点右〉]又は[/■±〈朱点左〉]とする。特に朱点が右上に打たれている場合
は、文章の切れ目を示す句点の意味を持っている。
濁点やミセケチなどで朱点が2個あれば、[■=〈朱傍点2〉]とする。なお、ミセケチはおおむね左上に打
たれる傾向がある。
(1)句読点代わりに用いている場合
   @読点・・「/±〈朱点〉」とし、文節の途中にある場合は「■±〈朱点〉」とする。
   A句点・・文の最後につくもので、「±〈朱点右〉」「±〈朱点左〉」とする。
ただし、行末にある句点は、便宜上、次の文節の末尾に「±〈朱点〉」として明示したので要注意。
   B朱点が複数個ある場合は、「ち=〈朱傍点〉」「飛=〈朱傍点2〉」「飛=〈朱傍点3〉」とする。
     例 【野】王起堂ち弖/±〈朱点右〉、堂=〈朱傍点2〉、ち=〈朱傍点〉 (7ウL2)
(画像省略)
(2)傍点を用いて後の解釈に利用したと思われる例
   @強調・・文字の左側につくので傍書にならい、「いとと=〈朱傍点〉」
   A不明・・・右につく場合で「と=〈朱傍点右〉」としたがミセケチの可能性も?
 (3)「見」はなぞり書きされることが多い。次の表記を付加情報の基本とする。
今は、【見】の左横にはミセケチ記号はないものとする。
      例 △〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉 (6オL6)
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新・【給】て・於ほん【心】なとも/±〈朱点〉・なくさむへくと/±〈朱点〉・於毛
本しなりて/±〈朱点〉・ナシ・万いら勢/±〈朱点〉・多てまつり・堂まへり・ナシ・
ふち川本と起こゆ/±〈朱点右〉、起±〈朱点〉・遣尓【御】可多ち/±〈朱点右〉、【御】±〈朱点〉・ありさま/±〈朱点〉・
ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・あやしき万てそ/±〈朱点〉・於ほ江/±〈朱点〉・堂まへる・これ者/±〈朱点右〉・
【人】乃/±〈朱点〉・【御】き八・まさり/±〈朱点〉・於もひや里/±〈朱点〉・めてたくて/±〈朱点〉・多れも/±〈朱点〉・
江/±〈朱点〉・於もひ於としめ・起こ江・堂ま八ね八・う遣八り
て/±〈朱点〉、う遣=〈朱傍点〉、八=〈朱傍点2〉、りて=〈朱傍点〉・あ可ぬ/±〈朱点〉・【事】・なし・可礼八/±〈朱点右〉・【人】も/±〈朱点〉・ゆるし/±〈朱点〉・起こ江さ里
し尓いとゝ/い±〈朱点〉、(いとと)・於本ん【心】さし能/±〈朱点〉・あやにくなりしそ
かし・於本しま起ると八/±〈朱点右〉・な遣れと・をのつ可ら/±〈朱点〉・【御
心】う川ろひて/±〈朱点〉・ナシ・ナシ・こよ那う/±〈朱点〉・於ほしなくさむ/±〈朱点〉・やうなるも/も〈行末左〉・
あ八れなる/±〈朱点〉・わさなり遣り・【源氏】のき三八/±〈朱点右〉、【見】$〈削〉三、三=△〈削〉・【御】あ多り/±〈朱点〉、り〈丁末左〉、(20オ)
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さ遣さ勢/±〈朱点〉、=不遠也、さ遣=〈朱傍点〉・多ま八ぬ本と尓・し遣う/±〈朱点〉・わ多ら勢/±〈朱点〉・【給】・
可多八・まして/±〈朱点〉・江・かく礼あへさせ・多ま者須・いつ
れの/±〈朱点右〉・【御方】も・わ礼/±〈朱点〉・【人】尓/±〈朱点〉・於とらんと・於本し多流や八/±〈朱点〉・
ナシ・ある・と里/\尓/±〈朱点〉、(と里と里尓)・いと/±〈朱点〉・めて多うこそ八・於八寿礼と・みな/±〈朱点〉・
うちをと那飛/±〈朱点〉、をと那=〈朱傍点〉、飛〈朱傍点2〉・ナシ・多まへる尓・ナシ・いと/±〈朱点〉・王可う/±〈朱点〉・ゝ徒くし
け尓て/±〈朱点〉、(う徒くしけ尓て)・せち尓/±〈朱点〉・かく礼/±〈朱点〉・多まへと/ま=マ・あさ遊ふ尓/±〈朱点〉・さふら
ひ・多まへ八・をのつ可ら/±〈朱点〉・ナシ・【見】/±〈朱点〉、み$〈削〉【見】、【見】=△〈削〉・多てまつり・【給】尓・八ゝ/±〈朱点〉、(八八)・
みや春ところ・可遣多に/±〈朱点〉・於ほ江/±〈朱点〉・堂ま八ぬを・ナシ・
いと/±〈朱点〉・よう/±〈朱点〉・に/±〈朱点〉・ナシ・多まへりと・【内侍】乃す遣の/±〈朱点〉・起こ江
遣るを・於さ那き/±〈朱点〉・於ほむ【心地】尓/±〈朱点〉・いと/±〈朱点〉・あ八礼と/±〈朱点〉・
於もひ/±〈朱点〉・きこ江【給】て・つね尓/±〈朱点〉・【見】/±〈朱点〉、△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・多てまつらま本しく/く〈次頁〉、(20ウ)
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なつさひち可う/±〈朱点〉、ち±〈朱点〉・まいら八やと/±〈朱点〉・於ほえ/±〈朱点〉・多まふ・
うへも/±〈朱点右〉・可きり那幾/±〈朱点〉、く&幾、(可きり那く)・【御】於もひとちにて/±〈朱点〉・な/±〈朱点〉・う
と三・【給】そ・あやしう/±〈朱点〉・よそへ/±〈朱点〉・きこ江徒へき【心地】
なん/【心地】±〈朱点〉・する・なめしと/±〈朱点〉・於本さて/±〈朱点〉・らうたう/±〈朱点〉・し・【給】へ・つら
つき/±〈朱点〉・まみなと能/±〈朱点〉・いと/±〈朱点〉・よう/±〈朱点〉・に多里し/±〈朱点〉・ナシ・ゆへ・可よひ/±〈朱点〉・き
こ江多めるも・に遣那可ら春/±〈朱点〉、春+と、傍とノ下ニ〈朱点〉(に遣那可ら春と)・つね尓・きこ江さ勢/±〈朱点〉・
【給】を・於さ那きこゝち尓も/±〈朱点〉、こ±〈朱点〉、(ここち)・う礼しく/±〈朱点〉・於もひて・
八可那き/±〈朱点〉・【花】/±〈朱点〉・もみち尓・つ遣ても/±〈朱点〉・於可しき/±〈朱点〉・さま尓・
【心】さしを【見】江堂て万つり/±〈朱点〉、【見】±〈朱点〉、△〈削〉【見】、【見】=△〈削〉・こよ那う/±〈朱点〉・【心】よ世/±〈朱点〉、△〈削〉よ、△〈削〉せ・
起こ江・堂まへれ八・こきてんの【女御】八/±〈朱点〉・【又】/±〈朱点〉・こ能/±〈朱点〉・【宮】を・
【心】/±〈朱点〉・よ可ら須・於もひきこ江【給】/±〈朱点〉・ゆへ尓うちそへ弖/う±〈朱点〉、(21オ)
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もとよりの/±〈朱点〉・【御】尓くさも/尓=ニ、(【御】二くさも)・堂ちいてゝ/±〈朱点〉、(堂ちいてて)・ナシ・【物】しと/±〈朱点〉・
於ほし多り/±〈朱点〉・よ尓なう/±〈朱点〉・堂くひなしと/±〈朱点〉・ナシ・【見】/±〈朱点〉、△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・多て
まつり・ナシ・な多可う/±〈朱点〉・於八春流/±〈朱点〉、し&春、(於八し)・【宮】能/±〈朱点〉・【御】可多ち尓も・
なを/±〈朱点〉・この/±〈朱点〉・【君】能・尓本八しさ八・まさりて/±〈朱点〉・ナシ・ナシ・多とへん/±〈朱点〉・
可多・那くう川くし遣那るを/う±〈朱点〉・よの/±〈朱点〉・【人】・飛可る
【君】と/±〈朱点〉・きこゆ/±〈朱点〉・ふち川本の/±〈朱点右〉・ナシ・ナシ・【御】於ほ江・と里/\
なりと尓や/(と里と里なりと尓や)・かゝやく飛能【宮】と/±〈朱点〉、飛±〈朱点〉、(かかやく)・きこゆめ里し/し〈左傍記〉・
【源氏】乃/±〈朱点〉・【君】能・【御】王ら八す可多・いと/±〈朱点〉・可へまうく/±〈朱点〉・
於ほ世と/±〈朱点〉・【十二】尓て/±〈朱点〉・ナシ・ナシ・ナシ・【御元服】・ナシ・し多まふ・み可登/±〈朱点右〉・
よろ川尓/±〈朱点〉・井多ち弖/±〈朱点〉、=居起〈付箋〉・於本しい多川き・かきり/±〈朱点〉・
ある・【事】尓・【事】を/±〈朱点〉・く八へさ勢・ナシ・ナシ・ナシ・多まふ・飛とゝ世能/±〈朱点右〉、(飛とと世能)、能〈次頁〉、(21ウ)
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 この勉強会が終わってからは、少し休憩を置いて、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の理事会と総会となりました。このことは、議事録の整理が出来てから、追って報告します。




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2025年06月21日

日比谷で『源氏物語』と『百人一首』の体験講座

 今日21日は二十四節気の「夏至」。1年で最も昼が長いとか。と言うことは、今日は非常に暑い1日になることでもあります。完全に夏モードの覚悟で東京に降り立ちました。京都に負けず劣らず、東京も人ひとヒト。

 有楽町駅前のビックカメラで回転寿司を昼食とし、東京ミッドタウン日比谷の前のゴジラスクエア日比谷で雄姿を見せているゴジラにご機嫌伺いの挨拶をしました。

250621_ゴジラ.jpg

 そして、帝国ホテルのラウンジで身体の火照りを覚ましてから、日比谷公園の日陰を選って日比谷図書文化館に入りました。

 入り口には、いつものように講座の掲示があります。

250621_掲示板.jpg

 今日の講座は体験講座です。これから勉強してみようかな、と思っておられる方々を対象としたものなので、4ヶ月毎の体験講座の内容は基本的にはいつも同じようにしています。季節や時世に合うように、少し味付けを変えるくらいです。

 「ハーバード大学美術館蔵『源氏物語 須磨』を読む」では、2年前に放映されたドラマ「相棒 コイノイタミ」(2022.12.7 -ABCで放映)の問題点(変体仮名への理解がまったくないドラマ)を、画像を映写しながら説明しました。
 劇中での変体仮名の説明と内容が、馬鹿らしくて呆然とするほど⽭盾だらけなのです。「⾐川」は現⾏平仮名の「え」と「つ」の字⺟であって、変体仮名ではないのです。それなのに、変体仮名だとして何度も強調されるのです。この台本を書いた方は、日本語をよくご存知ない方のようです。
 また、映し出された資料の「変体いろは歌」が、これまたデタラメであり意味不明のものです。どうして、こんなものが放映されたのでしょうか。制作スタッフが、ことごとく仮名文字に関して無知であることをさらけ出したドラマでした。
 こんな恥ずかしい思いをしないようにしましょう、変体仮名を正しく学びましょう、と話を進めました。

 続いて、ハーバード大学の『源氏物語』の来歴など、写本についての話の後に、「須磨」の冒頭部分を「変体仮名翻字版」で確認し、この資料を横に置いて学習すると、確実に変体仮名が読めるようになることを強調しました。

 終了後に何人かの方の質問などにお答えし、少し休憩してから『百人一首』に移りました。

 2種類のカルタの話をし、映画「ちはやふる」をスクリーンに映写して、歌合わせと40番歌・41番歌のカルタに書かれている仮名文字を確認しました。
 また、三島由紀夫の『春の雪』の映画のことにも及び、『百人一首』がさまざまな媒体で活用されていることを説明しました。

 この講座でも、終了してからいろいろな質問を受けました。みなさん、知的好奇心が旺盛な方なので、本講座に参加してくださることが楽しみです。

 日比谷図書文化館を出てから、今日はかつて住んでいた門前仲町に宿を取っているので、すぐそばの地下鉄丸ノ内線の霞が関駅から大手町駅経由で東西線で門前仲町駅に行こうとしていた時です。運が悪いことに、東西線でトラブルがあり、運転見合わせとのことです。こうしたトラブルに、私はよく出くわします。
 しかたがないので、大手町駅から半蔵門線で清澄白河駅に出て、そこから大江戸線に乗り換えて門前仲町駅に行きました。このあたりは、以前9年間も住んでいたことがあり、熟知したエリアだったので、臨機応変に乗り継いで移動できました。それにしても、日比谷図書文化館を出てから電車のトラブルに遭うことが何と多いことか。また一つエピソードが増えました。




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2025年06月14日

中之島での『百人一首』(第13回)と『源氏物語 蜻蛉』(第24回)の講座

 あいにくの雨の1日でした。
 今日の大阪府立中之島図書館での「新古典塾 平安文学」は、まず「変体仮名で書かれた『百人一首』をよむ」からです。

 新しいテキストである『変体仮名でよむ 百人一首』は、今日から使うことになります。
 最初の4首は先月プリントで確認はしていたので、さっと見た後、5番歌の猿丸大夫と6番歌の中納言家持の変体仮名に注目して見ました。

 その前に、生成AIによる陽明文庫カルタと国文学研究資料館カルタの文字の分析結果を、プリントをもとにして通覧しました。これは、ブログ「たつみのいほり より」に2025年06月09日に公開した記事「人工知能の支援により国文学者の研究環境が激変することを実感」(http://genjiito.sblo.jp/article/191380601.html)を見ながら、人工知能が『変体仮名でよむ 百人一首』を解析した結果を示し、今回扱うカルタに書かれている文字の傾向を見ておこうとしたものです。
 まだ私自身が詳細に傾向の分析をしていないので、あくまでも生成AIはこんな結果を瞬時にだしました、という現在の人工知能の働きぶりを紹介したものです。当たっているとおもわれるものもあり、勘違いしていると思われる所などをコメントとしてお話しました。私が気になったのは、生成AIは漢字と平仮名と変体仮名の区別がついていないと思われることです。これは、さらに人工知能に指示をして、より正確な理解で推論を展開するように仕向ける必要があります。今日のところは、まずはこんな意見を生成AIが出していますよ、という紹介に留めておきました。

 30分の休憩を置いて、次はハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」の仮名文字を読むことに移りました。あと5回ほどでこの「蜻蛉」を見終わる予定なので、今年中には終われるかと思います。

 今日は、55丁表から56丁裏までを確認しました。なぞって修正した箇所が多かったので、写本の拡大写真を使ってナゾリの説明しました。

 まず、55丁裏9行目の「於も本しつ可八んせ【給】八んと/と&せ、(於も本しつ可八んと)」とある箇所です。

250613_蜻蛉55uL9と&せ.jpg


 この箇所をどう読み解くかということで、私は「つかはんと」と書き写した後、「と」の上から「せ」をナゾリ書きしたのもだと判断しました。文字で記述すると「八んと/と&せ」となります。
 その傍証として、『源氏物語別本集成 第十五巻 蜻蛉−夢浮橋』(伊井・伊藤・小林編、おうふう、2002(平成14)年、227頁にハーバード本を追記)を引いて、その書写状況が説明できることを話しました。ハーバード本がまず書き写した「於も本しつ可八んと」は高松宮本と国冬本が持つ文字列です。それが、大島本などの諸本の「おほしつかはせ」に補訂されたということです。
 次に、ハーバード本の「【給】八んとの多万者せ介り」は、保阪本が伝える「給はんとのたまはせけり」と同じように「給はんと」が追補された本文となっているので、独自異文ではなく指示される本文があったということです。いずれも、鎌倉時代の写本であり、今は重要文化財となっている古写本です。つまり、ハーバード本の本文は、より古い本文に支えられている本文である、ということになります。

底本 陽 源氏物語(陽明文庫蔵)
校異 大 源氏物語 大島本(古代学協会蔵)
高 源氏物語 高松宮本(国立歴史民俗博物館蔵)
保 源氏物語 保坂本(東京国立博物館蔵)
国 源氏物語 国冬本(天理図書館蔵)
麦 源氏物語 麦生本(天理図書館蔵)
阿 源氏物語 阿里真本(天理図書館蔵)
尾 源氏物語 尾州家河内本(名古屋市蓬左文庫蔵)
    ハ 源氏物語 ハーバード本(ハーバード大学美術館蔵)
おほしつかはせー(陽保)・・・・・・・・525364
おもほしつかはんと[高国]
めしつかはせんと[麦阿]
おほしつかはんと[大尾]
→於も本しつ可八んせ/と&せ[ハ]
給けりー(陽)・・・・・・・・・・・・・・・・525365
の給はせけり[大高麦阿尾]
給はんとのたまはせけり[保]
の給けり[国]
→【給】八んとの多万者せ介り[ハ]

 2つ目は、ハーバード本の56丁表3行目の「そしろ八春/万&そ〈薄墨〉、ろ八〈ママ〉、(万しろ八春)」とした箇所です。

250509_ハーバード「蜻蛉」56oL3そ.png


 ここは、「万しろ八春」と書き写した後に「万」の上に少し横向きの「そ」が薄墨で書かれています。「そしろ八春」にしたいようです。次の諸本の本文異同からわかるように、ここは諸本が「そしらす」とする所なので、ここでのハーバード本の本文は「ましらはす」とする陽明文庫本と保坂本の仲間となるものです。ここでも、ハーバード本は現在流布本となっている本文とは異なる、平安・鎌倉時代の本文を伝えているのです。

底本 陽 源氏物語(陽明文庫蔵)
校異 大 源氏物語 大島本(古代学協会蔵)
高 源氏物語 高松宮本(国立歴史民俗博物館蔵)
保 源氏物語 保坂本(東京国立博物館蔵)
国 源氏物語 国冬本(天理図書館蔵)
麦 源氏物語 麦生本(天理図書館蔵)
阿 源氏物語 阿里真本(天理図書館蔵)
尾 源氏物語 尾州家河内本(名古屋市蓬左文庫蔵)
    ハ 源氏物語 ハーバード本(ハーバード大学美術館蔵)

ましらはすー(陽保)・・・・・・・・525379
そしらす[大高国麦阿尾]
→そしろ八春/万&そ〈薄墨〉、ろ八〈ママ〉、(万しろ八春)[ハ]
『源氏物語別本集成 第十五巻 蜻蛉−夢浮橋』(伊井・伊藤・小林編、おうふう、、2002(平成14)年、229頁にハーバード本を追記)


 3つ目は、「なけき」の「け」という仮名を〈判読〉にしたことです。

250614_「蜻蛉」56uけ〈判読〉.jpg

 この文字は、今は「け」としておき、今後の課題の1つにします。

 本日確認した範囲の「変体仮名翻字版」は、以下の通りです。

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■ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』55丁表〜56丁裏
翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
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かの可多【身】尓/【身】〈ママ〉、(可多身尓)・阿可ぬ・可なしさ越も・の多万
ひい川ゝき/(の多万ひい川川き)、ゝ$へ、(の多万ひい川へき)・【人】さへ・なき越・多いの【御】可多八可りこそ
八・あ者れなと・能【給】へと・ふ可く・三・【給】八さりける・うちつけ
の・む川ひなり介れ八・いと・ふ可くしも・い可て可八・あら
む・【又】・於ほ須・万ゝに/(万万に)・こひしや・い三しやなと・の【給】
者ん尓八・可多八らい多介れ八・かしこ尓・あ里し・
志ゝうをそ/(志志うをそ)・れいの・む可へさせ・【給】介る・三な【人】とも
を者・いちりて/いち〈ママ〉・めのとゝ/(めのとと)・この・【人】・ふ多りなん・とり
わきて・於ほし多りしも・わ春れ可多くて・
阿りふる尓/くて〈行間〉、しゝう八〈行間〉(ししう八)、よそ【人】なれと〈行間〉、なを〈行間〉、可多らい弖、弖マデ行間・よ川可ぬ・可はの・をとも・うれしき世もや阿ると/世〈次頁〉、さ&世〈薄墨〉、(さもや)、(55オ)
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多のみし・本とこそ・なくさみ介
れ・【心】うく・い三しう・もの於そろしくの三・おほえ
て・きやう尓・阿やしき・【所】尓・このころ・きて・
ゐ多りける・多つねいて・【給】て・さふらへと・の多万へと・
【御心】八・さる・もの尓て・【人】/\の/(【人人】の)・い者ん・ことも・さる・す
ちの・こと・万し里ぬる・阿多り八・きゝくへき/(ききくへき)、ゝくへ$き尓く、(きき尓くき)・【事】も・
あらんと・【思】へ八・うけひき・ゝこえす/(きこえす)・きさいの三や二・
万いらんとなん・於もむ介多れ八・いと・よ可んなり・
さて・【人】しれ春・於も本しつ可八んせ【給】八ん
せ/と&せ、(於も本しつ可八んと)・の多万者せ介り・【心】本そく・よるへ・なきも/き〈次頁〉、(55ウ)
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なくさむやとて・しる/多&る、(し多)・たより・もとめ
て・万いりぬ・き多な介なくて・よろしき・【下】らう
なりと・ゆるして・【人】も・そしろ八春/万&そ〈薄墨〉、ろ八〈ママ〉、(万しろ八春)・【大将殿】も・
川年尓・万いり・【給】ふ越・三る・多ひ尓・ものゝみ/(もののみ)・
あ者れなり・いと・やむことなき・ものゝ/(ものの)・ひめ【宮】
の三・於ほく/△&於・万いり川とひ多る・三やと・【人】も・いふ
を・やう/\/(やうやう)・めとゝめて/(ととめて)、めて&めて・三れと/こ&三、(これと)・な越・三・多て万つり
し/く&て、(多く万つりし)・【人】尓・尓る八・な可り介りと・【思】あ里く・[29]この・
者る・うせ・【給】ぬる・【式部卿】能【宮】の・【御】む春免を/を&を・ま
ま八ゝの/(まま八八の)・き多の可多・ことに・あいをも者て/て&て・せうとの/と〈次頁〉、(56オ)
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む万の可み尓て【人】可らも・ことなる・こと・
なき・【心】・可け多る越・いとをしうなとも・【思】多
えて・さるへき・さ万尓なんと・ちきると・きこ
しめ春・多より・ありて・いとをしう・ちゝ/(ちち)・【宮】
の・い三しう・かしつき・【給】介る・飛免【宮】を・い多川
らなる・やう尓・もてなさん・ことなと・の多万者
せ介れ八・いと・【心】本そう能三/△&三・於もひなけき/け〈判読〉・【給】・
ありさまにて・な川可しう・かく・多つね/し&つね、(多し)・
【給】八する越なと・【御】せうとの・【侍従】も・いひ弖・
このころ・む可へさせ・【給】てける・飛め三やの/(56ウ)
--------------------------------------(250614_ココマデ)




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2025年05月31日

宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(1)

 宇治で『源氏物語』の古写本を読む勉強会の、今日は記念すべき第1回でした。
 会場は、JR宇治駅から徒歩3分という至便の場所にある、「シェア型書店HONBAKO京都宇治」の2階です。真新しい内装のきれいな部屋で、しかも設置されたばかりの白木の机を並べて勉強会をしました。

 京都での『源氏物語』の変体仮名を読む会は、京都駅前のキャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)で毎月第4土曜日に開催しています。そして今日からは、宇治十帖を読む場所として念願だった、宇治駅前の地で静かにスタートすることになりました。少なくとも十年は続けたいと思っています。

 本日配布した資料(12頁)の最初に、次の文章を掲げました。


■勉強会の内容
ここ宇治の地では、『源氏物語』の宇治十帖の初発の巻である第45帖「橋姫」に書かれた、鎌倉時代の古写本の仮名文字を読みます。
テキストとする古写本は、鎌倉時代中期に書写された現存最古の古写本の一つであり、美麗な美術品です。具体的には、相愛大学の春曙文庫が現蔵する断簡五冊の内、「橋姫」巻に書写されている文字を変体仮名に注目して確認していきます。
今回使用する資料は、国文学研究資料館から公開されているパブリックドメインの画像です。
かつてこれは、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』(「須磨」「蜻蛉」)と、国立歴史民俗博物館蔵「鈴虫」(重要文化財)と一緒に伝えられていた古写本でした。春曙文庫に伝わる他の四冊は、第二帖「帚木」・第三三帖「藤裏葉」・第四九帖「宿木」・第五三帖「手習」で、すべて現在は断簡としての本文しか残っていません。
この古写本に書かれている文字が、とにかく読めるようになることを、当面は第一の目的とします。一人でも多くの方が、日本の文化資産である変体仮名が読めるようになることを願って開催する勉強会です。そして、これはデータベースの構築へと展開し、生成AIで分析していきます。

[参考資料]
『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編著、新典社、2013年)
『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(伊藤編著、新典社、2014年)
『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』(伊藤・阿部・淺川 共編、新典社、2015年)
『現代の図書館』(vol.62 no.3、通巻251号、日本図書館協会現代の図書館編集委員会編、2024年)
  相愛大学図書館「春曙文庫」の蔵書とその最新研究/阿尾あすか
  春曙庵主田中重太郎−その人となりと蔵書形成/山本和明
  天理図書館と「源氏物語」古典籍資料−蒐集の経緯・名品の紹介/岡嶌偉久子
  日本古典文学作品とAI・機械翻訳について/淺川槙子


 この勉強会を開催する趣旨と展望は、上に書いた通りです。
 続いて、ハーバード本『源氏物語』「須磨」「蜻蛉」と歴博本『源氏物語』「鈴虫」』について刊行した本を見てもらいながら簡単に説明しました。『源氏物語大成』や『源氏物語別本集成 正・続』についてもその位置づけを解説し、今回の春曙文庫の「橋姫」の意義に及びました。
 配布したプリントには、次の説明文を掲載しました。


■春曙文庫の『源氏物語』に関する説明
リーフレット「春曙庵主田中重太郎その人とことのは」(2024.03_ver.01)
国文研共同研究「相愛大学「春曙文庫」に関する研究−書物と人」の成果として製作

 ◎源氏物語本文について(田中重太郎)
 ところで、源氏物語の本文でも定家の証本がいま定本視されているが、いわゆる別本系の本文と読みくらべると、いまの源氏物語の本文は、なんだかばかに整頓され、みがかれ過ぎた感じがする。架蔵の鎌倉初期書写の源氏物語断簡(昭和三十九年十月刊)を読みかえしていると、こんな本文の源氏物語がすくなくとも平安末期にはあって、読まれていたのだと思い、いま行われている源氏物語の本文と読みあわせると、そらおそろしい気がして来る。(下略)  (清少納言と「ほのかなり」と『平安文学研究』第四十二輯、昭和四十四年六月号、『枕草子三十五年』再掲)
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リーフレット『春曙文庫の名品2 知られざる名品 古筆切・断簡・清少納言の肖像』(2023.03_ver.01)
国文研共同研究「相愛大学「春曙文庫」に関する研究−書物と人」の成果として製作

『源氏物語』の断簡(完全な形ではなく、切れ切れとなって不完全な状態で残ったもの)。正方形に近い形の桝形本で、本文は十行書き、列帖装(れっちょうそう)であったと推測される。鎌倉時代中後期の書写と考えられ、筆者は不明だが、五人以上による寄り合い書きである。雁皮紙が使用され、花・鳥・紅葉・月などのぼかし絵が入っている部分がある。
 断簡の本文は、広く読まれている青表紙本(藤原定家が書写や校合に関与した本)系統の『源氏物語』とは異なる部分が多く、別本に分類される陽明文庫本(鎌倉中期書写とされる写本)との一致が見られる。田中重太郎による解説と帚木巻の一部の翻刻を付けて、東風社からコロタイプ印刷による複製が刊行された(一九六四年)。藤裏葉巻と橋姫巻の前半は相愛国文 九・一〇に、柿谷雄三が翻刻を掲載している。
 断簡は、帚木巻・藤裏葉巻・橋姫巻・宿木巻・手習巻の一部からなっている。
(中略)
 橋姫巻・宿木巻・手習巻は、光源氏死後の人々の動向が語られる巻々である。物語の中心人物として匂宮(光源氏の孫)と薫(表向きは光源氏の次男だが、実際は柏木の息子)が据えられる。
 橋姫巻では、薫が宇治に住む八宮の元を訪ね、八宮の娘である大君と中の君を垣間見る場面や、薫が出生の秘密を知る場面が残っている。(後略)             (川渕紗佳・飯田実花)


 こうした説明を踏まえて、まずはハーバード本『源氏物語 須磨』第一丁表の影印画像を見て、[変体仮名翻字版]の実際を通覧しました。これは、これから見る春曙本「橋姫」がハーバード本とツレの写本であるかどうかを考える上で、写本が持つ雰囲気に慣れることでもあります。

 引き続き、春曙本『源氏物語 橋姫』の現存第一丁表・裏の画像を見ながら、そこに書写されている本文を[変体仮名翻字]にした資料で丹念に文字を追いました。その際、『源氏物語別本集成 第12巻』(おうふう、2000年)の校異編の該当頁を参照し、諸本の本文との違いを確認しながら進めました。これは、今まではやってこなかった手法です。

 今日は、京都新聞の案内記事を見てお出でになった方がいらっしゃいました。初めて変体仮名を勉強するとのことだったので、仮名文字の字母を確認し、みんなで一緒に教えあいながら、ゆっくりと丁寧に進めました。

 今日配布した資料としては、第1丁の表裏2頁分を用意していました。しかし、慌てて進むことでもないので、今日は1丁表の7行目までを、時間をかけて進みました。

 今日の特記事項としては、私が「す」としたところを、最近みんなで取り決めたルールに則り、字母の「寸」にしようということになりました。次の画像は、第1丁表5行目の行末にある「堂ま者寸」となる所の「寸」です。最後の線が下に延びず、上向きで点を打つように書かれているので、「す」とせずに「寸」とします。

250531_春曙「橋姫」1oL5「寸」.jpg

 また、春曙本が「としころ(年比)」(4行目)とする所で諸本のほとんどが一致しているのに、麦生本・阿里莫本・中京大本は「としつき(年月)」としていました。また春曙本をはじめとして諸本が「いみしく」(6行目)とする所を、麦生本・阿里莫本・中京大本は欠脱していることから、麦生本・阿里莫本・中京大本は春曙本とは大きく異なる本文を伝えていることがわかります。
 今後とも春曙本がどのような本文を書承しているのかを考える参考とするためにも、こうした諸本との本文異同も確認事項の中に入れたいと思います。

 今日は、変体仮名を読む時間よりも、さまざまな文字の話が多くなりました。みなさん、積極的に発言しておられたので、楽しい勉強会となりました。

 次回は、7月5日(土)です。
 こうしたことに興味と関心をお持ちの方は、一度参加して仮名文字の世界の多様さを楽しんでください。
 その際には、本ブログのコメント欄をご活用ください。

 帰りには、1階に並ぶ100個近い小さな本箱の壁面の前で、さまざまな本を手に取って気ままにお話をしました。本好きが集まる空間として、すばらしいコミュニティの場となっています。ますます人が集まる場となることを願っています。




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2025年05月24日

キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第30回)

 キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)の入口正面のロビーには、いつものように『源氏物語』の講座の案内が大画面に表示されていました。

250524_掲示板.jpg

 今日は最初に、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉がこれから夏にかけて予定・協力している3つのイベントの確認をしました。詳細は、随時このブログで告知します。

(1)【シェア型書店HONBAKO京都宇治】 (JR宇治駅より徒歩3分)
   第1土曜日 5/31、7/5、8/2、9/6、10/4、11/1、12/6、
  「宇治で古写本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会」 14:00〜16:00

(2)6月15日(日)NPO主催の宇治散策

(3)8月25日(月)「新古典塾 平安文学リレー講座」大阪府立中之島図書館
   同志社女子大学 大津直子
   「谷崎潤一郎と『源氏物語』」+谷崎潤一郎記念館のパネル展

 次に、[■街中の変体仮名「お可毛登」or「お可无登」]として、次の表札の変体仮名をどう読むか、という問いかけをしました。

250524_お可毛登.jpg

 この、左から3文字めの仮名文字を「Mo」と読むことは、その横にあった表札からわかっています。それでは、この仮名文字の字母は何だろうか、と考えた時に、「毛」なのか「无」なのか迷います。
 参考までに、『携帯かな字典』(角川書店)の「も」の例示から、その一部を引きます。

250524_かな毛无.jpg

 これを見ても、その字母を特定するのに戸惑います。一応、私は「毛」としておくことにしました。専門家のご教示をお願いします。

 さらには、写真と資料をあげて、『源氏物語別本集成 正・続』(全二十二巻、桜楓社・おうふう、1989(平成元)年〜2010(平成22)年)を第七巻で中断した説明と、今後は変体仮名で翻字したデータを生成AIで分析するプロジェクトに移行する意義と、今後の展望と課題についてお話しました。

■『源氏物語別本集成 正・続』の刊行の経緯今後の問題点
 15年前まで、『源氏物語別本集成 正・続』(全二十二巻、桜楓社・おうふう、1989年〜2010年)という本文資料集を刊行していました。しかし、嘘の翻字を後世に残したくないので、刊行を中断しました。その時の弁明は「『源氏物語別本集成』中断の弁」(2010年06月24日、http://genjiito.sblo.jp/article/178934604.html)に書きました。
 正編15巻については、総勢80人が376帖の写本を読み、各帖を3人が読んで確認したので、約10億字を読んだことになります。続編は3倍の分量の写本を対象としていたので、約30億字を読む計画でした。しかし、上記の理由で道半ばの続編の第7巻で打ち切りました。『源氏物語別本集成 正・続』のプロジェクトで得られた約20億字以上の翻字データは、現行の平仮名に置き換えた翻字であったために、今回の「変体仮名翻字版」には、参考にはなってもデータとしては使えません。。
 『源氏物語別本集成 正・続』では、お手伝いしていただいた方々のお名前を各巻の冒頭に掲載し、感謝の気持ちに代えました。それが、最近は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉を介したプロジェクトになっているため、薄謝をお支払いして、「変体仮名翻字版」の翻字作業を進めてきました。しかし、今後も増え続ける翻字データの対処について、NPO活動に限界を感じています。資金が足りないからです。官民からの活動支援を得て、対処すべきでしょう。しかし、100年計画のどこまでをどのように進めるのか、という展望を整理する必要が直近の課題となっています。「生成AIを意識したデータベース構築のために」(2025年05月06日、http://genjiito.sblo.jp/article/191343538.html

 このことは、折々に話題にしていきます。

 本日のメインである尾州家河内本「桐壺」の本文の確認は、第19丁表2行目から19丁裏までを扱いました。尾州家本特有の、朱による句読点の扱いについて、今日は傍記に打たれた朱の読点をどう扱うかで、予想外に時間を取りました。そのために、2頁分しか進みませんでした。

 問題となったのは、「・いふ可う/±〈朱点〉、い+と、傍とノ下ニ〈朱点〉・」(19丁裏9行目)とした箇所です。

250524_尾州「桐壺」19裏L9+と.jpg


 「い」と「ふ」の間に補入記号の「◦」を付して書かれた、傍記の「と」の下に打たれた朱点について、本文のデータベース化にあたってどう記述するか、という問題です。
 これについては、ありのままに「い+と、傍とノ下ニ〈朱点〉」としました。
 これと同じ例は、この後、21丁表6行目に「と」が補入されてその下に朱点が打たれているので、来月また取り上げます。

 以下、本日確認した「変体仮名翻字版」の翻字結果をあげます。

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於ほしめ志む春本ゝれ多里/±〈朱点〉、流〈削〉里、(む春本本れ多流)・【先帝】
能/±〈朱点右〉・【四】能【宮】・ナシ/+【御】可多ちよに、よ±〈朱点〉・ナシ/+春くれ弖・ナシ/+きこえ・ナシ/+堂可う・ナシ/+於八しま須(「須」ノ右下ニ朱点)・八ゝきさ起、(八八)・よ尓なう/±〈朱点〉・かしつき/±〈朱点〉・ゝ古江/(き古江)・
【給】を・うへ尓/±〈朱点〉・さ布ら婦・【内侍】乃す遣/±〈朱点〉・せん多い乃/±〈朱点〉・
【御時】の・【人】尓て・可能/±〈朱点〉・【宮】尓も・新多しく・万いり気
礼八/±〈朱点〉・い盤けなく/±〈朱点〉・於八しましける/±〈朱点〉・【時】より・【見】/±〈朱点〉、△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・多て
まつり遣り・いまも/±〈朱点右〉・本乃【見】・多てまつりて・う勢/±〈朱点〉・
【給】尓し・【更衣】能/±〈朱点〉・【御】可多ち尓・ゝ/±〈朱点〉、(尓)・多まへる・【人】を・【三代】
能/±〈朱点〉・三や徒可へ尓・ナシ・江/±〈朱点〉・【見】/△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・多てまつり・つ遣ぬ尓・きさい
乃【宮】能/±〈朱点〉・飛め【宮】こそ・いと/±〈朱点〉・よう・於本江弖/±〈朱点〉・於ひい
てさ勢/±〈朱点〉・多まへれ・ナシ・あり可多き/±〈朱点右〉・【御】可たち尓なんと/±〈朱点〉・
そうし遣る尓/±〈朱点〉・ナシ・まこと尓やと/±〈朱点〉・【御心】/±〈朱点〉・とまりて・ナシ・まいら勢/±〈朱点〉、ら〈次頁〉、(19オ)
--------------------------------------
堂てまつり/へ〈削〉つ・【給】へき・よし・ねんころ尓/±〈朱点〉・きこ
江・堂まひ遣るを・八ゝきさ起/±〈朱点〉、(八八)・あ那/±〈朱点〉・於そろし
や・とうく乃女御の/±〈朱点〉・み【心】・いと・さ可那くて・起りつ本能
かういの/±〈朱点〉・あら八尓・八可那う/±〈朱点〉、く〈削〉う、う=う〈削〉・もてなされ尓し・多
めし毛/±〈朱点〉・ゆゝしうと/(ゆゆしうと)・於本しつゝ三弖/±〈朱点〉、(つつ三弖)、【見】$〈削〉三、三=△〈削〉・す可/\しうも/±〈朱点〉、=速ゝ(速速)、も〈行末左〉、(す可す可しうも)・
於本し多ゝ佐り遣る/±〈朱点〉、(多多佐り遣る)・本と尓・起さき/±〈朱点〉・うせ・【給】
ぬ・【心】本そくて/±〈朱点〉・於八しま春らんを・多ゝ/±〈朱点〉、(多多)・王可をん
那みこ多ち能/±〈朱点〉、=我・於なし・つら尓・於もひ/±〈朱点〉・起こ江ん
なと・いふ可う/±〈朱点〉、い+と、傍とノ下ニ〈朱点〉・起こ江/±〈朱点〉・たまふ・さふら婦/±〈朱点右〉・【人】/\/±〈朱点〉、(【人人】)・【御】うし
ろ三多ち/し〈行末左〉、±〈朱点〉・【御】せうと能/±〈朱点〉・【兵部卿】乃【宮】なとも・遣尓/±〈朱点〉・
かう/±〈朱点〉・【心】本そくて/±〈朱点〉・於八しまさむより八/±〈朱点〉・【内】す三も/±〈朱点〉、も〈次頁〉、(19ウ)
--------------------------------------

 本日も、慌ただしく終わりました。大急ぎでテーブルを片づけて退室しました。時間に厳しい管理がなされているので、終盤は駆け足になることが多いように思います。90分ではなくて、あと30分、120分の講座にしたいところです。今後の課題とします。




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2025年05月17日

日比谷で「須磨」(24)と『百人一首』(新1)を読む

 京都で降っていた雨は、新幹線と共に東京へも付いて来たようで、日比谷図書文化館に着いた時にもかなり降っていました。
 入口には、いつものように本日のイベントの掲示がありました。

250517_掲示板.jpg

 まず、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」巻の写本を読む講座からです。
 今日は、『源氏物語別本集成 正・続』(全二十二巻、桜楓社・おうふう、1989(平成元)年〜2010(平成22)年)を刊行してきたことと、それを中断した経緯について説明しました。今この講座で取り組んでいる変体仮名に拘った翻字の確認をしているのが、どのような意味を持つのかをわかっていただくためです。

 その後、ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』の45丁裏から46丁表までを確認しました。2頁分しかできなかったのは、いつもより丁寧に字母の説明をし、翻字の意味を詳しく確認したためです。
 以下が、本日の確認分です。

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き多の可多は・ふ祢尓て・の本る・うら徒多ひ
尓・勢うえう・し川ゝ/(し川川)・くる尓・ほ可より毛・
於もしろき・王多里奈れ八・いとゝ
【心】/(いとと)・と満る尓・【大将】・可くて・於者寿と・き
く尓・あいなく・すい多る・む春免とも八・ふ祢
乃・うちさへ・者川可しく・【心】けさうせらる・まし
て・可乃・【五】勢ち乃き三八・徒奈弖・ひきすく
る毛・くち越しき尓・きむの・こゑ・【風】尓・
川きて者る可尓・きこゑ多り・【所】・さ満・【人】の・
【御程】・毛のゝ/(毛のの)・祢乃・【心】本そさ・とりあ徒免て/て〈次頁〉、(45ウ)
--------------------------------------
【心】・ある・可き里は・三那・ゝきに介り/(那きに介り)・そ
ちは/=帥〈左傍記〉・【御】勢そく/勢±う、(【御】勢うそく)・きこゑ堂り・者る可
奈る・本とよ里・ま可里の本らん尓は・いつ
し可毛・満川・まいり【候】ひて/て&【候】、(まいりて)・【宮】こ乃・
【御物】可多り毛とこそ・【思】・【給】徒れ・於もひ
の・本可尓・かくてを八しま新ける・【御】やとり
を・可く万可里すくる・可多し介奈く・可奈
しう毛・【侍】る可那・あひし里て・【侍】る・【人】
と毛・ナシ・かれこれ・万て・きむ可ひて・あま多・る
いして・【侍】れ八・【所】勢佐尓・於もふ・堂満へ/(46オ)
--------------------------------------

 また、6月15日(日)にNPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催して宇治の散策をする予定を連絡しました。この件は、来月さらに詳しくお誘いのチラシを配ってお知らせする予定です。

 1時間の休憩時間に、ハーバード大学本「須磨」・「蜻蛉」と歴博本「鈴虫」の臨模本作製された宮川さんがお越しになったので、控え室で相愛大学所蔵の写本について、詳細な打ち合わせをしました。相愛大学本はハーバード大学本などのツレなので、この臨模本も作製するためです。6月下旬に相愛大学へ調査に行くことになりました。

 引き続き、『百人一首』の仮名文字を読む時間となりました。
 今回から、できあがったばかりの『変体仮名でよむ 百人一首』(伊藤鉄也・吉村仁志 編、新典社、2025年5月)を使って、確認を進めました。
 ここでも、変体仮名による翻字が持つ意義をお話ししました。
 今日は、第4番歌の山辺赤人まで見たので、次回は第5番歌の猿丸大夫からです。テキストが新しくなると、気分も新鮮に取り組めます。最後にいくつか質問が出たので、詳しいお話をしました。日比谷図書文化館での講座は質問が多いので、前に進めることよりも、その時々の疑問点にお答えすることを優先しています。
 終わってからも、狂歌との関連の質問があったので、私の課題として次回にお答えすることにしました。みなさん熱心に取り組んでおられるので、こちらも緊張感をもって対応しています。

 終わってから外に出ると、雨は上がっていました。内幸町の交差点から北を見ると、国会議事堂の尖塔が雨上がりのスッキリとした空気の中で臨めました。今までで一番きれいに見えたので、写真に収めました。日比谷公園の中の野外音楽堂の横に建つ日比谷図書文化館が、国会議事堂のすぐ近くにあることを、あらためて気付かされました。

250517_議事堂.jpg

 今日は、上野公園のそばに泊まります。息子が海外出張のためにいないので、都内で探したところ、やっと見つかったのが上野だったのです。
 晩ご飯は、すぐ近くのアメ横でいただきました。京都の錦市場や、大阪の黒門市場とは違う、多くの海外からの若者が集う渾沌極まりない地域でした。東京に長くいた私も、ここに来るのは初めてです。とにかく、活気とは異なる、お祭り騒ぎに近い賑わいでした。これも、東京の一つの姿なのでしょう。楽しい街であることは確かです。みなさん、大盛り上がりで、食べたり飲んだりしておられました。

250517_アメや横丁.jpg 



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2025年05月10日

中之島での『百人一首』(第12回)と『源氏物語 蜻蛉』(第23回)の講座

 京阪淀屋橋駅から地上に出ると、ちょうど淀屋橋の南詰の橋に立つことになります。そこには、きれいな花々を植えた鉢が並んでいました。

250510_花.jpg


 初夏を迎え、整備されたようです。
 ところが、市役所の横に来ると、いつもの鉢植えがありません。

250510_花ポットなし.jpg

 先月の記事の冒頭に掲げた写真を見ると、そこにあった鉢は先ほどの駅の上に並んでいた鉢の一つであることがわかります。

「中之島での『百人一首』(第11回)と『源氏物語 蜻蛉』(第22回)の講座」


 花たちの大移動があったようです。

 今日の講座は、まずは『百人一首』です。
 残念ながら、新しく作成したテキストが間に合わなかったので、表紙の写真を見てもらいました。

250509_100表紙.jpg


 「はじめに」を引いて内容を少し紹介した後、版下より1番歌から4番歌までを抜き出したプリントで進めました。
 陽明文庫旧蔵『百人一首』の複製歌刈田の副本(有吉保著『陽明文庫旧蔵 百人一首』おうふう刊、昭和57年12月初版、平成7年4月重版、架蔵)と、国文学研究資料館所蔵『鶴丸紋ち□し/哥かるた』(請求記号・ヤ8−331、国書データベース、https://doi.org/10.20730/200020349、パブリックドメイン)の、江戸時代に作製された二種類のカルタの文字を比べながら進めました。字母に拘って見ていくと、それぞれのカルタの文字を書いた人の違いがよくわかります。
 今年度の最初であり、新たに参加なさった方が多くなったので、変体仮名の特性の話などを詳しくしました。これは、これまでにもこのブログで頻繁に取り上げていることなので、今は省略します。

 30分の休憩を置いて、次は『源氏物語』のハーバード大学本「蜻蛉」巻を読む講座です。
 ここも、今年度最初となるので、これまでの『源氏物語』の本文をどのようにしてデータベース化してきたのかをお話しました。
 ポイントは、『源氏物語別本集成 正・続』(全二十二巻、桜楓社・おうふう、1989(平成元)年〜2010(平成22)年)をなぜ中断したのか、ということに尽きます。嘘の翻字を続けることが苦痛になったことに尽きます。『源氏物語別本集成 正・続』の第1巻2冊を回覧しました。
 配布したプリントには、以下の文章を元にして説明しました。

 15年前まで、『源氏物語別本集成 正・続』(全二十二巻、桜楓社・おうふう、1989年〜2010年)という本文資料集を刊行していました。しかし、嘘の翻字を後世に残したくないので、刊行を中断しました。その時の弁明は「『源氏物語別本集成』中断の弁」(2010年06月24日、http://genjiito.sblo.jp/article/178934604.html)に書きました。
 正編15巻については、総勢80人が376帖の写本を読み、各帖を3人が読んで確認したので、約10億字を読んだことになります。続編は3倍の分量の写本を対象としていたので、約30億字を読む計画でした。しかし、上記の理由で道半ばの続編の第7巻で打ち切りました。『源氏物語別本集成 正・続』のプロジェクトで得られた約20億字以上の翻字データは、現行の平仮名に置き換えた翻字であったために、今回の「変体仮名翻字版」には、参考にはなってもデータとしては使えません。。

 『源氏物語別本集成 正・続』では、お手伝いしていただいた方々のお名前を各巻の冒頭に掲載し、感謝の気持ちに代えました。それが、最近は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉を介したプロジェクトになっているため、薄謝をお支払いして、「変体仮名翻字版」の翻字作業を進めてきました。しかし、今後も増え続ける翻字データの対処について、NPO活動に限界を感じています。資金が足りないからです。官民からの活動支援を得て、対処すべきでしょう。しかし、100年計画のどこまでをどのように進めるのか、と言う展望を整理する必要が直近の課題となっています。
「生成AIを意識したデータベース構築のために」(2025年05月06日、http://genjiito.sblo.jp/article/191343538.html

 こうしたことを前置きとして、実際にハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』の第53丁裏3行目から55丁表1行目までを見ました。ここでも、今回から参加なさっている方が何人かいらっしゃったので、少し丁寧に詳しく変体仮名についてお話しました。併せて、変体仮名が読める方が一人でも多くなってほしいことも、縷々語りました。NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の役割と活動状況もお話しました。
 今回確認を終えた本文を以下に掲載します。

■ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』53丁裏3行目〜55丁表1行目
翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
--------------------------------------
於ほしなひく/い&ひ、(於ほしないく)・【人】の・阿らまし可八と・於もふ【身】そ・
くちをしき・(250308_ここまで)
「於きの・者尓・川ゆ・ふきむ春ふ・【秋風】も・
ゆふへそ・わきて・み尓者・し三介る」と・可きて
も・そへ満本しう・於ほ世こと・さやうなる・川ゆ
者可りの・けしき尓てもゝ里多ら八いとわつら八
しけなるよなれ八者可奈きことをも/(も里多ら八)・江本のめ
かしい川まし・かく・よろ川尓/△&よ・な尓・可やと・
【思】越・於もひ/\て八/(於もひ於もひて八)・む可しの・【人】・ものし・【給】八まし可八・
い可尓も/\/(い可尓もい可尓も)・本可さ万尓・【心】を・わけましや・【時】の三於の/於$かと、(三かとの)、三〈次頁〉、(53ウ)
--------------------------------------
【御】む春免を・多万ふとん・江・多て万つらさ
らまし・【又】・さ・於もふ・【人】・阿りと・きこしめしな可ら八・
かゝる/(かかる)・【事】も・な可ら万し越・な越/\【心】うく/(な越な越)・【我】・【心】・三
堂里・多まひける/まひ&まひ・者しめ可なと・【思】ひあ万り
て八・【又】三やのうへ尓・とりかゝりてそ/(とりかかりてそ)・こひしう・
川らくも・王りなき・ことを・於こ可ましき万て・
くやしき・これ可・さしつきにそ・あさましく
て・うせにし・【人】の・いと・【心】をさなう・とゝこ本る/(ととこ本る)・
【所】・な可り介る・可ろ/\しさ越八/(可ろ可ろしさ越八)・於もひな可ら・さ春
か尓・いみしと・ものを・於もひいり介ん・本と【我】・介しき・/八&介、し〈次頁〉、(54オ)
--------------------------------------
れいならすと・な介きし三て・ゐ多りけん・
阿りさ万越・きゝ/(きき)・【給】しも・於もひいてられ川ゝ/(於もひいてられ川川)・
於もり可なる・可多なくて・多ゝ/(多多)・【心】や春く・らう
多き・可多らひ【人】尓て・阿らんと・【思】日し二・いと・らう
多かりし/多&多・もの越・【思】ひ・もてゆけ八・三やをも・【思】ひ・
きこえし・【女】をも・うしと・於も者し・多ゝ/(多多)・王可・阿
里さ万能・よ川可ぬ・於こ多りそなと・な可めい・多
万ふ・とき/\/(ときとき)・於ほかり・[28]【心】能と可尓・さ万・よく・於八
する・【人】多尓・かゝる/(かかる)・すち尓八・【身】も・くるしき・ことを
の川可ら・万しる越・三や八・万して・なくさめか年【給】川ゝ/(【給】川川)【給】〈次頁〉、(54ウ)
--------------------------------------
かの可多み尓/【身】〈ママ〉・


 なお、最後が中途半端な箇所で終わったのは、「かの形見に」(亡き浮舟を思い出すよすがとなるもの)『国文学解釈と鑑賞別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.28 蜻蛉』(伊藤編著、至文堂、184頁、2003年)となる本文に自分なりの拘りがあり、そのことを詳しく取り上げたからです。
 ここを「片身」とするかか「形見」とするかで、写本に書き写されている「身」を漢字とするか変体仮名とするかの違いが出るからです。
 小学館 精選版『日本国語大辞典』から説明を引いて、個人的には漢字の「身」が捨て切れないことをお話しました。翻字ではこの心残りを「かの可多み尓/【身】〈ママ〉」とすることで、今後の課題として残しておくことにしました。

 今日も、みなさん熱心に聴き入ってくださいました。ありがたいことです。文部科学省が学校教育の中でとりあげないことにしている変体仮名が、こうした機会に多くの方が読めるようになっていただけるように、さらに根気強く講座の形式で語り続けて行きたいと思います。




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2025年04月26日

キャンパスプラザ京都で『源氏物語』の本文データベースのあり方について討論

 キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)のロビーには、いつものようにイベント一覧が掲示されています。

250426_掲示板.jpg


 今日は、「変体仮名翻字版」の方針に関する話題が中心となりました。以下、主なものを記録として残します。

(1)尾州家河内本には、朱で句読点が打たれています。それをどのように再現するか、ということで再検討しました。
 朱で打たれた句点は「/±〈朱点右〉」、読点は「/±〈朱点〉」としていました。しかし、これではイメージしにくくて、データを作成する時にもその記述が煩雑だ、ということで、「/±〈朱句点〉」と「/±〈朱読点〉」に変更しては、という案を私が出しました。しかし、とにかく「桐壺」が終わるまではこのままで行こう、ということで落ち着きました。

250426_尾州01-18uL6朱点.jpg


け連八・【源氏】尓/±〈朱点〉・なし・
をきて多り・とし【月】尓/±〈朱点右〉・

 上の表記が、今進めている「変体仮名翻字版」の翻字方式での完成型ということです。

(2)上記の例で、行末の「とし【月】尓」の直下の朱点が、今回のデータベースでは、これに続く文節の「そへ弖」の付加情報として「そへ弖/±〈朱点〉」と記述されています。しかし、これでは朱点が行末にあるのに行頭にあるようでわかりにくい、ということで、その解消についても討議しました。しかし、公開するデータベースでは写本の行末であることは明示されないので、これまでの法則に特例を作らず、今までの方針で翻字本文を記述しよう、ということで収まりました。

(3)傍記・補入本文に朱点がある場合には、付加情報として丸カッコの中に説明文として明記する。
 19丁表2行目の「【四】能【宮】」とある箇所で、「宮」の下に補入の中黒丸があります。そして、その右横に小さな文字で21文字ほどが、一行で書き写されています。尾州家河内本は、一行20字前後の文字で書写されており、この文字列は諸本にはあるものなので、尾州家河内本が目移りによって脱文となった字句だといえます。その傍記された補入文の末尾に、朱点が右寄りに打たれています。

250426_尾州19oL1-行間.jpg


 ここは、「ナシ/+於八しま須(「須」ノ右下ニ朱点)」と翻字しました。付加情報として、丸カッコの中に説明文で書写状況を説明する文言を「(「須」ノ右下ニ朱点)」として明記することにしました。


 今日は、写本の文字を追いながらの変体仮名の確認は、第17丁裏4行目から第19丁表2行目までが終わりました。翻字のルールの確認に手間取ったために、あまり進めませんでした。以下に、今日確認した範囲を「変体仮名翻字版」であげます。

--------------------------------------
可ためと・なりて・【天下】を/±〈朱点〉・堂すくへき・可多尓弖・
【見】れ八/み〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・【又】そ乃/±〈朱点〉・さう・多可ふへしと・いふ・【弁】も/±〈朱点右〉・いと
さ江/さ±〈朱点〉、さ=〈朱傍点2〉、江=〈朱傍点〉・かしこき/±〈朱点〉・八可勢尓て・いひか八し多流/±〈朱点〉・【事】とも
なん・いとけう/±〈朱点〉・阿り遣る・ふ三那と/±〈朱点右〉・つくりか八して・
遣ふ/±〈朱点〉・阿春・かへりなんと・する尓・かく/±〈朱点〉・めつらしく/±〈朱点〉・
阿里可多き/き±〈朱点削〉・【人】尓・あひ/±〈朱点〉・多てまつり多流・よろこ
飛乃/±〈朱点〉・可へりて八・可なし可るへき/±〈朱点〉・【事】能・【心】八へを・
於もしろう/±〈朱点〉・徒くり堂る尓・みこも/±〈朱点〉・いとあ八れ
なる・くを/=句・つくり・堂まへるを・か起りなく/±〈朱点〉・めて・
多て万つりて・いみしき/±〈朱点〉・をくり【物】ともを・さゝ
け/(ささけ)・多て万つる・於ほや介毛/±〈朱点右〉・於ほく能・毛乃・多ま者勢那としけるを/ま〈次頁〉、(17ウ)
--------------------------------------
もらさ勢/±〈朱点〉・多ま八ねと・
を乃つ可ら/±〈朱点〉・【事】/±〈朱点〉・日ろこ里て・【春宮】乃/±〈朱点〉・【御】於ほち
於とゝ那とも/(於とと)・起ゝ/(起起)・【給】て・い可なる/±〈朱点〉・【事】尓可と・於ほし
う多可ひてなん/±〈朱点〉・あ里ける/±〈朱点〉・み可と/±〈朱点右〉・かしこき・【御心】
尓・やまとさうを/±〈朱点〉・於本し於ほ世弖/±〈朱点〉・お本しよれる/±〈朱点〉・
【事】・なれ八・いまゝて/±〈朱点〉、(いままて)・こ乃・【君】を・みこ尓も・那さ勢・
多ま八さり遣る越・さう【人】者/±〈朱点〉・まこと尓・かしこか里遣
里と/±〈朱点〉・於も本しあ八せて/±〈朱点〉・む本んの/±〈朱点〉、=無品・【親王】能・遣さく
乃/=外戚・よ勢・那き尓て八・堂ゝよ八さし/(堂堂よ八さし)・わ可/±〈朱点〉・よも・いと・さ
堂め可多き越・ナシ・多ゝ【人】尓て/±〈朱点〉、(多多【人】尓て)・於本や遣能・【御】うし
ろ三・するなん・ゆくさきも/±〈朱点〉・堂のもし遣那めると/(18オ)
--------------------------------------
お本しさ多めて/±〈朱点〉・いよ/\/±〈朱点〉、(いよいよ)・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・みち/\の/(みちみちの)・さ江を・なら八さ
勢・【給】尓・起八/±〈朱点〉・こと尓かしこくて/か±〈朱点〉・堂ゝ【人】尓八/±〈朱点〉、(堂堂【人】尓八)・いと・
あ多らし遣れと/±〈朱点〉・みこと/±〈朱点〉・なり【給】な八・【世】乃/±〈朱点〉・う多可ひ・
於飛多まひぬへく/±〈朱点〉・【物】し・【給】へ八・すく江う乃/±〈朱点〉、=宿曜・かし
こき・三ち乃【人】尓/△〈削〉尓・かう可へさ勢/±〈朱点〉・【給】尓も・多ゝ/±〈朱点〉、(多多)・於な
し・さま尓なん・ナシ・【申】多りけ連八・【源氏】尓/±〈朱点〉・なし・
堂てまつるへく・ナシ・於本しをきて多り・とし【月】尓/±〈朱点右〉・
そへ弖/±〈朱点〉・三やすところ能/±〈朱点〉・【御事】を・於ほし王す
るゝ/(於ほし王するる)・【時】・な新/く〈削〉新、(なく)・なくさむやと/±〈朱点右〉・さるへき・【人】ゝを/(【人人】を)・まい
ら勢て・【御覧】する尓も・なすらひ耳/±〈朱点〉・於本さる
へきも・那く・阿り可多き/±〈朱点〉・よ那りけ礼八・【物】うく乃三よろ川/±〈朱点〉、乃〈次頁〉、(18ウ)
--------------------------------------
於ほしめ志む春本ゝれ多里/±〈朱点〉、流〈削〉里、(む春本本れ多流)・【先帝】
能/±〈朱点右〉・【四】能【宮】・ナシ/+【御】可多ちよに、よ±〈朱点〉・ナシ/+春くれ弖・ナシ/+きこえ・ナシ/+堂可う・ナシ/+於八しま須(「須」ノ右下ニ朱点)・八ゝきさ起、(八八)・(250426_ここまで)


 キャンパスプラザ京都は部屋の利用時間に厳しい施設なので、大急ぎで事務所に終了したことの報告に行きました。ぎりぎりセーフでした。何度も遅いと言われており、今日も慌ただしく閉会となりました。

 帰りに、入口のホールで、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が催行する春の文学散策について、関係者で話し合いをしました。今回は、関さんと石田さんが世話役です。
 結論から言うと、6月15日(日)に宇治を散策することになりました。
 暑くなる時期なので、朝10時に「シェア型書店HONBAKO京都宇治」(宇治市宇治宇文字2-38/JR宇治駅より徒歩3分)で待ち合わせて出発し、12時頃に宇治市源氏物語ミュージアムで散会、ということまでを決めました。
 早めに告知しましたので、予定に入れていただくと幸いです。詳細は、後日お知らせします。

 キャンパスプラザ京都を出たすぐ前にあった家電量販店「ビックカメラJR京都駅店」は、2023年5月に閉店しました。その建物が、新しい姿を見せています。

250426_ビックカメラ.jpg


 ネットで調べたところ、最近の情報に関しては要領を得ません。そこで、ChatGPT に聞いてみたところ、以下の回答を得ました。

「京都駅前の旧ビックカメラの跡地について、現在のところ、具体的な再開発計画は公表されていません。」
「旧ビックカメラ跡地の今後については、引き続き注目されるところです。」

 ということで、今はよくわかりません。何かわかりましたら、報告します。




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2025年04月19日

日比谷で「須磨」(23)と『百人一首』(12)を読む

 東京駅では、山手線の上野〜東京〜大崎間と、京浜東北線の品川〜東十条間が、羽田空港アクセス線の整備と工事のために、終日運休でした。ホームには、ロープが張られていて上がれません。

250419_運休.jpg

 幸いなことに、日比谷図書文化館へは東京駅から歩いて25分。皇居のお濠端を日比谷公園に向かってお散歩です。新緑がきれいでした。
 途中で丸の内の木立に囲まれた通りでは、イベントの準備中でした。

250419_丸ノ内.jpg

 日比谷図書文化館の入口には、いつものようにイベントの掲示があります。

250419_掲示板.jpg

 今日も、まずは『源氏物語』の「須磨」巻を変体仮名に注視して読みました。
 現在の五十音図の平仮名の字母で、いくつかの文字が漢字になっていました。一括置換をして資料を作成したためのミスです。受講生の方からの指摘を受けて、修正しました。本日ここに公開した[変体仮名翻字版]は、訂正後のものを挙げています。
 また、次の例は、凡例に追加しようと思っていたものです。しかし、これも指摘を受けて、シンプルな翻字に留めることにしました。

250314_「須磨」43丁表L8給て.jpg

 ここでは、「うちな可免て」と書き写してすぐに間違いに気付き、「て」の上から「給」をなぞり書きし、続けて「て」と書いた例です。
 私は、翻字にあたって次の記述を考えました。「→」がその試行錯誤の結果であることを示しています。

  ・うちな可免/(うちな可免て→)・【給】て/て&【給】・

 しかし、ここは文節をまたがる例でもあり、データベース化した後もここだけを切り取るとかえって紛らわしくなる、とのアドバイスを受けて、この付加情報「(うちな可免て→)」は削除することにしました。

 本日翻字を確認したのは、42丁裏〜45丁表までで、以下のとおりです。

--------------------------------------
■ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』42丁裏〜45丁表

翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
--------------------------------------
うれしき・【事】尓於もひ弖
そ・【五六人】八可り乃ひと八・徒と・さふらひける・
勢んさい乃・【花】・いろ/\/(いろいろ)・さき王多り・於毛新
ろき・ゆふくれ尓・う三・みらるゝ/(みらるる)・らう尓/う&ら、(うう尓)・
いて・【給】て・堂ゝ寿み/(堂堂寿み)・堂満ふ・さ万乃・
ゆゝしく/(ゆゆしく)・きよらなる・こと・ゝころ可ら/(ところ可ら)・万
して/八&万、(八して)・こ乃【世】の・も乃とも・みえ・【給】者須・志ろ
きあや乃・なよゝ可那る/(なよよ可那る)・ナシ・志越んいろなと・多
てま川里て・こ満や可奈る・【御】奈越し尓・
於もひ・しとけ奈く・うち三多れ多る・【御】さ満尓弖/尓〈次頁〉、(42ウ)
--------------------------------------
【尺迦牟尼仏】/=シヤカムニ・【弟子】と・奈の里て・ゆる
る可尓・よ三・【給】へる・めて多佐・ま多・よ尓・しら
す・きこゆ・於きより・ふ祢とん・ナシ・う多ひのゝ志里て/(のの志里て)・
古きゆくなと毛・きこゑて・本の可尓・多ゝち
井さき/(多多)・とりとんの・う可へると・【見】やらるゝ毛/(【見】やらるる毛)・
佐ま/\尓/(佐ま佐ま尓)・【心】本そ遣なる尓・可里・つら祢
て・くる尓・こゑ・可ち乃・をと尓・ま可へり登・
うちな可免・【給】て/て&【給】・奈三多乃・う可へる越・可き
八らひ・【給】へる・【御】て川きの・くろき・春ゝ尓/(春春尓)・
者ゑ・【給】へる八・ふるさとの・【女】なとの・【恋】志き/(43オ)
--------------------------------------
王可【人】と毛乃【心】ち・三那・ゝくさ三尓介り/(那くさ三尓介り)・
「者徒可り八・こひしき・【人】の・徒らなれや・
堂ひの・そら・とふ・こゑ乃・可なしき」と・の
多まへ八・よしきよ・
「かき川ら祢・む可しの・ことそ・於も本ゆる・
か里は・その・よの・と毛奈ら祢とん」・【民部大輔】/=ミムフタユフ・
「【心】可ら・とこよ越・寿てゝ/(寿てて)・なく・可りを・【雲】
乃・よそとも・於もひける可那」・さきの【左近】
能勢う・
「とこよ・いてゝ/ゝ=〈墨ヨゴレ〉、(いてて)・堂ひの・そら・なる・可りなれと/と〈丁末左〉、(43ウ)
--------------------------------------
徒ら尓・於くれぬ・【程】そ・なく佐ん」・と毛・ま
と八し弖八・い可尓・者へらましと・いふは・
於やの・ひ多ちの可三尓・な里て・く多る尓も・
さそ者れ弖・と満里て・まいれるなり介り・
新多尓八・於もひく多くへ可免れと・本こり可
尓・毛て奈して・川れ奈く・佐ましあ里
く・[24]【月】の・いと・者那や可尓・佐しいて多る尓・こよ
ひ八・【十五夜】なり介りと・於ほしいてゝ/(於ほしいてて)・【殿上】乃・
【御】あそひも・こひしく・【所】〻/〻〈ママ〉、(【所所】)・な可免・堂まふ
らむ可しと・於毛ひや里・多満ふ尓・ナシ・【月】の・可本のみ/み〈次頁〉、(44オ)
--------------------------------------
ま毛られ・多満ふ・【二千里】能・本可乃・【故人】
乃・【心】と・すし・堂満へる尓・れいの・奈三多毛・
とゝまらす/(ととまらす)・【入道宮】の・き里や・へ堂川ると・
の多まひし・【程】・い者ん可多奈く・こひしく・
を里/\の/(を里を里の)・ことゝ毛/(ことと毛)・於もひいて・堂満ふ尓・よゝ
と/(よよと)・な可れ弖・【夜】・ふけ・【侍】ぬと・きこゆれと・な
本・いり・多満者寿・
「三る・本とそ・し者新・奈く佐ん・めく里阿
者む・【月】野・【宮】こは・者る可那礼とも」・その・【夜】・
うへの・いと那つ可志く・む可しの【御物】可多りなと・し・【給】ひし/ひ〈次頁〉、【給】〈丁末左〉、(44ウ)
--------------------------------------
於ほむさ満乃・【故院】尓・に・堂てま
徒里・【給】へりし毛・こひしく・於もひいて・
きこゑ・多満ひて・【恩賜】能・【御衣】者・
いま・こゝ尓/(ここ尓)・あ里と・すんし川ゝ/(すんし川川)・ナシ・い里・多ま
ひぬ・まこと尓・【御】そは・【御身】・者那多寿・於い・
多満へ里・
「うしとの三・ひとつ尓・【物】八・於毛本えて・
ひ多り/り〈ママ〉・み支り毛/り〈ママ〉・ぬるゝ/(ぬるる)・そて可奈」・[25]そ乃こ
ろそ・【又】【大弐】八・の本り介る・い可免しく・
るい・ひろく・む須免可ち尓て・【所】勢可り介れ/(45オ)
--------------------------------------

 1時間の休憩を置いて、次は『百人一首』です。
 今日は始めて参加なさる方が多かったので、変体仮名の基本的なことからお話ししました。
 回覧したのは、変体仮名が取り込まれた『百人一首』の本2冊です。

  ・『書道 小倉百人一首』小野鵞堂 著 1985年12月 マール社
  ・『光琳歌留多で読む小倉百人一首 百人一首の手帖』久保田淳 監修 1989年12月 小学館

250415_100人の本.jpg


 講座の内容については、今回使うテキストがまだ出来上がっていないので、その作成中の本の中から「まえがき」などを抜粋して確認を進めました。
 歌については、天智天皇の一番歌と、持統天皇の二番歌を取り上げました。
 一首につき2つの〈カルタ〉の絵と文字が掲出されています。同じ歌でも違う変体仮名が使われていたりするので、楽しく文字を追っていけます。
 索引についても、工夫したことなどを説明しました。

 後半は、学校教育における平仮名など、文字の教育に関する話題になりました。國語問題協議會の常任理事の方が受講されていたので、話は仮名文字に留まらず日本語が抱える具体的なことにまで発展しました。この議論が盛り上がることによって、文部科学省に対して変体仮名を学校教育に取り入れることなどの提案書に発展すればいいな、と思っています。100字ほどの変体仮名を小学生の段階から教えることは、文部科学省が言うほどには生徒の負担にならないと思います。それよりも、日本の誇るべき伝統的な文化資産としての変体仮名が、文字の学習に取り入れられることの意義の方が大きいのです。
 また、あの膨大な量の漢字を、しかも横書き文化となった今ではほとんど意味のない筆順まで教えていることの整理をすべきです。つまり、横書きに適した筆順を教えるべき時期になっているのです。
 とにかく、今は文字の教育が優先すべき検討事項であることを、正式に提言する時期に至っていると思います。その機運が、この小さな講座から生まれたらいいなと、現実のこととして思うようになりました。この話題は、今後につながるので、また取り上げます。
 人工知能の今後についても、話題にあがりました。
 こうした自由な意見交換ができる場があり、日本語の今後を楽しく語れる参加者がおられるのは、さまざまな問題を考える上でも、これからが大いに楽しみになりました。

 今日はテキストがない状態での話に終始しました。次回は出版されたばかりの『百人一首』のテキストを手にしての変体仮名の学習となります。出来上がった本に対する、みなさまの反応が今から楽しみです。

 帰りに、ミッドタウン日比谷の前にいる、私が大好きなゴジラに挨拶をしてきました。夕方のゴジラの写真を撮るのは初めてです。

250419_ゴジラ.jpg

 帰りの新幹線の車体は、ディズニーランドの宣伝一色でした。車内もそうでした。多くの方が撮影なさっていたので、やじ馬根性で私もパチリと撮りました。

250419_車体の絵.jpg

 私は、ディズニーランドにはまったく興味がないので、行ったことがありません。ただし、娘が小学6年生の時に一緒にヨーロッパの旅をし、その時、パリにあるユーロディズニーには、12月のクリスマスの時に行きました。寒くて震え上がったことしか思い出せません。今日も、みなさんがあまりにも興奮しておられたので、思わず知らず撮りました。




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2025年04月12日

中之島で『百人一首』の講座の体験会

 中之島公園のみおつくしプロムナードにある寄せ植えは、植え替えのために寂しい姿を見せていました。これも記録の一つと、写真に撮っておきます。

250412_寄せ植え.jpg

 今日は、入門講座である「変体仮名で書かれた『百人一首』をよむ」の体験会がありました。受講をためらわれている方への呼びかけとしての体験講座です。予想外に多くの方がお集まりでした。変体仮名に興味と関心があるようで、ありがたいことです。

 配布したプリントの冒頭には、次の案内文を掲げました。

[講座内容]
『百人一首』のカルタには、優雅な歌人の絵姿と美麗な書体で和歌が書かれています。今回使う2種類のカルタを収めたテキストは、江戸時代に書かれた変体仮名の気品あふれるものです。日本の伝統的な文化資産である変体仮名が、自由に読めるようになります。なお、和歌の解釈や鑑賞はしません。

[講師からひとこと]
テキストには、講師が編集したテキストを使います。陽明文庫旧蔵『百人一首』と国文研蔵『鶴丸紋/哥かるた』を収録しています。現代の活字を読むこととの違いを、実感してください。崩し字を一字ずつ確認しながら読み進めるので、古写本を読む技術も身につきます。テキストは、五月に刊行予定です。
『(仮)変体仮名でよむ百人一首かるた』(伊藤鉄也・吉村仁志 編、新典社、2025年5月刊、124頁、本体価格 2,400円+税)

 とにかく、このテキストを手元に置いて変体仮名の文字を追って行くと、確実に変体仮名が読めるようになるのです。その実績を強調しました。
 活字の平仮名で印刷されたカルタではなく、変体仮名で書かれたカルタの文字を読むことの意義を強調したのです。それも、字母を意識した仮名文字を読むことに特化した講座なので、お話の内容には気を配りました。和歌の解釈や鑑賞はしないことも、最初のうちにしっかりと伝えました。

 少しだけ内容を、と言うことで、映画「ちはやふる」の一場面を映写しました。
 それと関連させて、現在作成中のテキストの40番歌と41番歌のページを見ながら、陽明文庫旧蔵かるたと、国文研蔵かるたの仮名文字を確認していきました。

250412_40-41番歌.png


 初めての方々ということだったので、いつもよりもゆっくりと丁寧に解説しました。

 映画『春の雪』(妻夫木聡+竹内結子[2020年40歳没]/原作:三島由紀夫)に出てくる『百人一首』の77番歌(崇徳院)の場面と、その三島の小説の中に出てくる48番歌(源重之)と49番歌(大中臣能宣)の紹介もしました。『百人一首』の受容史と言えるものです

 最後は、変体仮名の一覧表を見ながら、とりあえず覚えておくといいと思われる文字を選んで確認していきました。五十音図の仮名に加えて、約50文字ほどの仮名文字なので、百数十字であれば負担にならない字数だと言えるでしょう。文部科学省は、変体仮名は学習の負担になるので学校では教えない方針です。しかし、日本の文化資産である変体仮名という仮名文字を知ることで、読み継がれ書き継がれてきた文字への理解が深まるのです。日本を理解する上で意義深い変体仮名は、ぜひ若い時に読めるようになってほしいものです。そのような問題意識を持って、社会人講座を開講しています。

 本日参加なさった方々で、一人でも多くの方が次回からの講座に参加してくださることを願っています。




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2025年03月29日

日比谷で『源氏物語 須磨』と『百人一首』を読む(体験講座 2025年4月期)

 日比谷公園は、小雨に包まれる中で冬から春への移ろいを見せていました。

250329_図書館前.jpg

 会場となる日比谷図書文化館の入口には、いつものようにイベントの告知板が掲示されています。今日は、「古文書塾 てらこや」の体験講座の日です。

250329_掲示板.jpg

 最初の『源氏物語』の講座は、「ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』を読む(体験講座)」です。
 この講座でやることを簡単に説明し、テレビドラマ「相棒 コイノイタミ」(2022.12.7 -ABCで放映)の問題点を指摘しながら、今も日本の社会から誤解されたままの「変体仮名」についてお話しました。とにかく、変体仮名への理解がないことが浮き彫りになったドラマでした。
 具体的には、劇中での変体仮名の説明と内容が矛盾することをあげました。犯人を特定する「衣川」という名前の「衣」も「川」も、共に現行平仮名の「え」と「つ」の字母であり、変体仮名ではないのです。
 また、映し出された資料としての「変体いろは歌」が、これまた杜撰でデタラメな小道具であり、なぜこのようなとんでもない図表を映し出したのか意味不明です。日本人をバカにしている、としか言えない愚かさ100パーセントのドラマでした。
 こんな顔から火が出るようなとんでもない内容のドラマが、本当に2022年12月7日のABC で放映されたのです。そのことから、変体仮名というものが今でも一般には理解されていないことを、ドラマを使って実証しました。

 後は、街中の変体仮名やこの講座で使用するテキストであるハーバード大学本について、詳しく説明しました。
 最後に、ハーバード大学本『源氏物語 須磨』の第一丁表のカラー写真を提示し、その[現行翻字]と[変体仮名翻字]の違いをお話しました。

250329_Harvard「須磨」1丁表.png

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[現行翻字]
よの中・いと・わつらしくはしたな
き・ことのみ・まされは・せめて・しらすか
ほにて・ありへむも・これより・はしたなき・
こともやと・おほしなりて・かの・すまは・
むかしこそ・人の・すみかとも・ありけれ
と・いまは・いと・さとはなれ・心すこくて・あ
まの・いゑたに・まれになむなりにたると・
きゝ・給へは・人・しけく・をしなへたら
む・すまゐは・ほいなかるへし・さりとて・
みやこを・とほさからんも・ふるさと・おほつ/(1オ)
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[変体仮名翻字版]
よ乃【中】・いと・わ徒らしく/らし〈ママ〉・は新堂奈
き・ことの三・ま佐れ八・せ免て・志ら須可
本尓て・あ里へむ毛・これよ里・八志多那支/支〈行末左〉・
こと毛やと・於ほしな里て・可乃・春ま八・
む可しこそ・【人】の・す三可とも・あ里介れ
と・いまは・いと・佐と者那れ・【心】寿こくて・あ
まの・いゑ堂に・万れ尓なむ奈り尓堂ると/と〈行末左〉・
きゝ(きき)・【給】へ八・【人】・しけく・をしなへ堂ら
む・す満井八・本い那可るへし・さ里とて・
三やこを・と本さ可らん毛・ふるさと・於ほつ可那可るへき越・/可〈前、次頁〉、(1オ)
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 特に、私が提唱する[変体仮名翻字版]で学習すると、おのずと変体仮名が読めた気になり、ひいては読めるようになることを、2014年秋以来の日比谷図書文化館での講座を通して実践実証していることを力説しました。

 1時間の休憩を挟んで、次は「『百人一首』を2種類の変体仮名で読む(体験講座)」です。
 枕としては、「2002年3月に実施したインドで『百人一首』」と、『百人一首』のお菓子の紹介、そしてスマホ用『百人一首』のアプリのほんの一部を紹介しました。
 変体仮名の詳細な説明もしました。この話では、1900年(明治33年)に帝国教育会国語改良部が「同音ノ仮名ニ数種アルヲ各一様ニ限ルコト(即チ変体仮名ヲ廃スルコト)」を議決した、歴史的事実に触れました。変体仮名は、「ウィキペディア」が言うところの「平仮名の字体が人為的、権力的に選一された結果」であることの意味も確認しました。日本の文字、それも平仮名の歴史には、こんな文字の一大変革があったのです。そして、そこに現代の日本人が変体仮名が読めない一因があるのです。

 本日のメインは、次の2首の和歌です。陽明カルタの和歌を、[変体仮名翻字版]であげます。

 ㊵〈原文〉【忍】ふ連と 【色】耳【出】尓介り 【我】こひ八毛のやおもふ登 ひとのとふま弖
 ㊶〈原文〉【恋】春てふ 【我名】八ま多幾 【立】尓介里【人】志礼春こそ おもひそめし可

 この歌にまつわる話として、映画「ちはやふる」の一場面をスクリーンに映写して、2首の背景の理解を深めるようにしました。
 映画『春の雪』に出て来る『百人一首』については、時間の関係でプリントに掲載したことには触れませんでした。

 配布した資料がやや盛りだくさんで詳し過ぎたかも知れません。しかし、興味をもっていただけたようで、終了後にいくつかの質問を受けました。

 今日は、息子の所に泊まります。絵画館前のイチョウ並木の通りは、樹木の伐採でニュースになりました。

250329_絵画館前.jpg

 坂本龍一さんが亡くなる直前に、東京都に抗議文を寄せたことは有名です。今も反対運動が展開しています。実際の様子は、明日の朝に確認しようと思います。




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2025年03月22日

キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第28回)〈凡例の検討〉

 キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)の入口のロビーには、いつものように勉強会の案内が掲示されていました。

250322_掲示板.jpg


 今回は、まず「ひらがな駅名表示」で阪急が独自路線を取っている話題から始めました。
 今日の京都新聞によると、阪急は小林一三の厳命で、駅名はすべて漢字を使うこととなっており、平仮名や片仮名は一切使うな、とのことだったようです。それが、1987年から平仮名主体の案内表示に切り替わったそうです。ちなみに、JRは国鉄時代は平仮名主体だったものが、1987年の民営化以後は漢字がメインになったそうです。近鉄や京阪は、平仮名だったものが1980年代後半から漢字をメインに表示するようになったようです。また、京都市営地下鉄の烏丸線は、開業当時の1981年から平仮名がメインでありながら、1997年に開業した東西線は漢字主体の表示です。平仮名と漢字でどちらをメインの表示にするのかでは、いろいろと変遷があるようです。おもしろいものです。
 この講座では変体仮名を扱っているので、文字の役割分担を考える上で平仮名が置かれている理解が深まります。

 次に、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の理事である石田さんが作ってくださった糸罫を回覧しました。写本を考えて行く上では、糸罫の役割を知っておく必要があります。この集まりでも、数年前に回覧しました。実物の感触を大切にして書写の実態を体感するために、再度の回覧をしました。

180422_itokei-omote.jpg

 尾州家河内本「桐壺」の本文を[変体仮名翻字版]で翻字する確認作業は、第16丁表から第17丁裏3行目までを見ました。
 今日は、尾州家河内本において特徴となっている朱点に関する凡例について、時間をかけてみんなで討議しました。『源氏物語』の本文をデータベース化して公開するためには、翻字の方針がしっかりしていないと、多くの方に信頼して利用してもらえません。
 今回は、これまで少し曖昧だった以下のルールを、次世代に引き継ぐ形で確定しました。その結果をあげます。
 これまで、次のようなルールを設定していました。

250322_朱点のルール旧.png


 しかし、今日の検討の結果、以下のように変更してより正確な凡例にしました。赤字で表記した箇所が、今回変更した部分に該当します。

250322_朱点のルール新.png

 具体的に今日検討した例では、次の17丁裏3行目の「さ江」が該当します。

250322_尾州「桐壺」17uL3さ江朱点.jpg

 ここでは、「さ江/さ±〈朱点〉、さ=〈朱傍点2〉、江=〈朱傍点〉」と翻字しました。付加情報が写本の書写状況に忠実な記述となっています。

 この方針によって、以下の[変体仮名翻字版]の付加情報がより正確なものになりました。

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し累し尓や/±〈朱点〉・つ井尓/±〈朱点〉・う勢・【給】ぬ礼八・【又】/±〈朱点〉・これを/±〈朱点〉・
於本しな遣く/±〈朱点〉・【事】・可起里なし・みこ/±〈朱点右〉・む川尓/±〈朱点〉・なり・
【給】・としな礼八/±〈朱点〉・古乃/±〈朱点〉・多ひ八・於本しゝ里弖/±〈朱点〉、(於本しし里弖)・いみし
う/±〈朱点〉・こひなき/±〈朱点〉・【給】・としころ/±〈朱点右〉・なれむつひ/±〈朱点〉、む±〈朱点〉・ナシ・堂まへる
を/±〈朱点〉・【見】/±〈朱点〉、△〈削〉【見】、【見】=△〈削〉・多てまつり・をく・可なしひをの三なん/±〈朱点〉・乃
【給】遣る/±〈朱点〉・いまは/±〈朱点右〉・【内】尓の三/±〈朱点〉・さ布らひ・【給】・なゝつ尓/±〈朱点右〉、(ななつ尓)・
なり・【給】へ八・【御】ふ三八しめ那と/±〈朱点〉・勢させ・【給】て・よに/±〈朱点〉・しら
す・さとく/±〈朱点〉・かしこく/±〈朱点〉・於八しまし遣礼八/±〈朱点〉・あまり/±〈朱点〉、ま=マ〈判読〉・おそ
ろしきまて/±〈朱点削〉・【御覧】寸・いまは/±〈朱点右〉・堂礼も/\/±〈朱点〉、△〈削〉も、(堂礼も堂礼も)・ナシ・くみ/±〈朱点〉、±尓、(尓くみ)・ナシ・【給】八し・
八ゝ【君】/±〈朱点〉、(八八【君】)・なくて多に・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・らうたうし/±〈朱点〉・ナシ・ナシ・【給】へとて・こきてん
なと尓/±〈朱点〉・わ多ら勢/±〈朱点〉・【給】・【御】とも尓も/±〈朱点〉・や可て/±〈朱点〉・三寿能/±〈朱点〉・うち尓/(16オ)
--------------------------------------
い礼/±〈朱点〉・多て万川里・【給】・い三しき/±〈朱点右〉・【物】ゝふあ多/±〈朱点〉、あ±〈朱点〉、(【物】のふ)・可多き
なりとも・ナシ・ナシ・【見】て八/±〈朱点〉、み$〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・うちゑま礼【心】や八らきぬへき/【心】±〈朱点〉・
【御】さま能/±〈朱点〉・し・多まへれ八・江/±〈朱点〉・さし八那ち・きこ江・多ま
八す・をん那みこ堂ちも/±〈朱点右〉・ふたところ/±〈朱点〉・こ能【御】八ら尓/±〈朱点〉、尓〈行末左〉・
於八しま勢と・なすらひ/±〈朱点〉・【給】へきそ・ナシ・ナシ・ナシ・な可里ける・い川
礼乃/±〈朱点右〉・【御】可多/\毛/(【御】可多可多毛)・江/±〈朱点〉・可く礼あへ・多ま八須・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・いまより/±〈朱点右〉・ナシ・
なまめ可しう/±〈朱点〉・八つ可志け尓/±〈朱点〉・於八春礼八/±〈朱点〉・いと/±〈朱点〉・於可し
う/±〈朱点〉・ゝちと遣ぬ/±〈朱点〉、(うちと遣ぬ)・あそひくさ尓/±〈朱点〉・堂れも/\/±〈朱点〉、(堂れも堂れも)・於もひ/±〈朱点〉・
起こ江・多まへり・王さと乃/±〈朱点右〉・【御】かくもんを八・
さる/±〈朱点〉・もの尓て・八可那き/±〈朱点〉・こと/±〈朱点〉・ふ江乃・ね尓も・【雲】井
を/±〈朱点〉・飛ゝかし/(飛飛かし)・すへ弖/±〈朱点〉・いひつゝ遣八/±〈朱点〉、(いひつつ遣八)・ナシ・【事】/\しう/±〈朱点〉、(【事事】しう)、(16ウ)
--------------------------------------
そら【事】尓そ/±〈朱点〉・ナシ・なりぬへき【人】乃/【人】±〈朱点〉・【御】さまなる・ナシ・そ能
ころ/±〈朱点右〉・こまうと能/±〈朱点〉、の〈削〉う、(こまの)・まいれ里遣る・な可尓・かし古幾/±〈朱点〉・
さう【人】/=相・あり遣る越・き古しめして/±〈朱点〉・【宮】乃/±〈朱点〉・うち尓・
めさん【事】八・うた乃三可と能/±〈朱点〉、=宇多・【御】いましめ・あれ者・
いみしう/±〈朱点〉・しのひ・やつし弖・古乃/±〈朱点〉・みこを・古うろ
くわん尓/±〈朱点〉、=鴻臚館・つ可八し多り・【御】うしろ三多ちて/±〈朱点右〉・つ可うまつ
類・【右大弁】乃/±〈朱点〉・こ能・やう尓・於も者勢て・井て/±〈朱点〉・多てまつ
里多流尓・さう【人】/±〈朱点〉・於とろきて/±〈朱点〉・あま多ゝひ/±〈朱点〉、ひ±〈朱点右〉、(あま多多ひ)・可たふき・
あやしふ・く尓の/±〈朱点右〉・於やと・那りて/て$〈墨朱〉・ていわう能/±〈朱点〉、=帝皇・ナシ・可三・那き・
くら井尓・能本るへき・さう・【物】し【給】・【人】乃・その/±〈朱点〉・可多尓
て・【見】れ八/△〈削〉【見】、【見】=△〈削〉・三多れ/±〈朱点〉・う礼ふる・【事】や・あらん・於ほや遣能/±〈朱点右〉、(17オ)
--------------------------------------
可ためと・なりて・【天下】を/±〈朱点〉・堂すくへき・可多尓弖・
【見】れ八/み〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・【又】そ乃/±〈朱点〉・さう・多可ふへしと・いふ・【弁】も/±〈朱点右〉・いと
さ江/さ±〈朱点〉、さ=〈朱傍点2〉、江=〈朱傍点〉・かしこき/±〈朱点〉・八可勢尓て・いひか八し多流/±〈朱点〉・【事】とも
なん・(250322_ここまで、17ウ3行目)
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 尾州家河内本には、句読点や濁点に関する膨大な朱点が打たれています。書写後のものだとしても、鎌倉時代以来の『源氏物語』の読み方に関する貴重な資料となるものなので、[変体仮名翻字版]に加えて正確な再現を行なっているところです。本文を翻字する手続きとしては、非常に面倒なことになっています。しかし、より原本に寄り添った翻字として再現性の高い情報を盛り込んだデータベースとするために、煩を厭わず丁寧なデータ作りに取り組んでいるところです。

 キャンパスプラザ京都での尾州家河内本『源氏物語 桐壺』の勉強会は、次は来月4月26日(土)に開催します。マニアックな取り組みをしています。しかし、初めての方には変体仮名が読めるようになる方法を、丁寧にアドバイスをしながら取り組んでいます。興味と関心をお持ちの方の参加をお待ちしています。連絡は、本ブログのコメント欄を活用してください。




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2025年03月15日

日比谷で「須磨」(22)と『百人一首』(11)を読む

 ミッドタウン日比谷の前のゴジラは、私の大好きなオブシェです。今日も、元気に気炎を吐いています。

250315_gozira.jpg

 東京宝塚劇場の前の花は、ビニールで作ったケバケバシイ造花だったのには幻滅しました。なぜこんなものを散策路に並べるのか、その意図を測りかねます。

250315造花.jpg

 日比谷図書文化館の入口には、いつものように講座の案内が掲示されていました。

250315_掲示板.jpg

 まず、ハーバード本「須磨」の本文を変体仮名に注目して確認する講座からです。
 最初に、糸罫の試作品を回覧しました。実物を見てもらうことで、書写の実態を体感してもらうためです。
 この糸罫は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の理事である石田弥寿子さんが作ってくださったものです。

250315_糸罫.png

 今回の「須磨」の本文の確認は、40丁表〜42丁表まででした。

 今回問題としたのは、まずは新しく凡例に加えるものです。

※41丁表1行目「佐満し/(佐満して→)・【給】て/て&【給】、て&て」

250314_「須磨」41oL1佐満し給て.jpg

 「給」は「て」の上になぞり書きされています。そのため、その前の文節とのつながりで最初は「佐満して」と書いて、その後「て」を「給」に変えたため、その訂正前の語句も検索できるようにすることにしました。「→」という記号で文節を跨がることを付加情報として記す表記法を作り、こうした例に対処するようにしました。

 次の例は、ナゾリと傍記に関して、「もと那くき」という語句も検索できるようにしたものです。

※42丁表9行目「もと那可里あへり/くき&可里、可=可里、(もと那くき)」

250314_「須磨」42丁表L9もと那くき.jpg

 現在は、大島本という室町時代に書かれた写本をもとにして、江戸時代に改訂補訂された本文を『源氏物語』の本文として読んでいます。しかし、ここでは平安から鎌倉時代の本文を扱っています。現在の大島本の語句で作成された古語辞典にない語句も、あるいはあったかもしれないし、鎌倉時代の語句の実相を知るのに参考になるかと思い、こうした例も検索が可能な本文データベースにしようと思っています。

 3例目は、最初の例と同じく、ナゾリが文節を跨がっている場合に、用例として検索できる形で語句を残すことの意義を認めて、記号としての「→」を使用するものです。

※43丁表8行目 「うちな可免/(うちな可免て→)・【給】て/て&【給】・」

250314_「須磨」43丁表L8給て.jpg

 そんな確認をしてから、本日の範囲の翻字を[変体仮名翻字版]で進めました。


■ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』40丁表〜42丁表

翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
--------------------------------------
於ほえぬ・さ毛・な里那む尓・い可ゝ/(い可可)・於ほえ・
【給】へき・ち可き・【程】乃・王可れ尓・【思】於とされん
こそ・祢多可るへ遣れ・伊ける/と&伊、(とける)・よ尓とは・むへ・
よ可らぬ・【人】能・いひをき介んと・いと・那川可し
き・佐ま尓て・満こと尓・【物】を・於も本しいりて・
の多ま者する尓・こと徒けて・本ろ/\と/(本ろ本ろと)・こ
本るれ八・佐里や・い川れ尓・於徒るならんと・
の多ま者す・いまゝて/(いままて)・みこ多ち多尓・なき
こそ・さう/\し介れ/(さうさうし介れ)・【東宮】を・【院】の・ゝ多
満者勢し/(の多満者勢し)・佐ま尓・於もへと・よ可らぬ・ことゝもの/(ことともの)、の〈丁末左〉、(40オ)
--------------------------------------
いてくめるこそ・【心】くるしくなと・【世】を・【御心】
の・本可尓・ま川里こち那し・【給】・【人】/\の/(【人人】の)・ある尓・
王可き・【御心】の・徒よき・【所】・なきほと尓て・いと
をしく・於ほし堂る・【事】・於ほ可里・[23]春満尓八・
いとゝ/(いとと)・【心】川くしの・【秋風】尓・う見八・すこし・とほ介
れと・ゆきひらの【中納言】の・せき・ふきこゆると・
いひ介ん・うらな三・よる/\は/(よるよるは)・介尓・いと・ち可く・き
こゑて・【又】なく・あ八れなる・毛のは・可ゝる/(可可る)・【所】乃・
【秋】なり介り・【御】まへ尓・いとひとすく那尓て・
三那【人】・うちやす三王多ゝれる尓/ゝ〈ママ〉、(王多多れる尓)・ひとり・めを/を〈丁末左〉、(40ウ)
--------------------------------------
・佐満し/(佐満して→)・【給】て/て&【給】、て&て・まくら越・そ八たてゝ/(そ八たてて)・よ毛乃・あら
しを・きゝ/(きき)・【給】尓・な三八多ゝ古ゝもとに/(多多古古もとに)・多
ちくる・【心】ち・して・奈三多・越徒とも・於もえぬ尓・
満くら・うく八可り尓・な里尓介り・きむを・
寿こし・可きならし【給】へる可・王れ奈可ら・
いと・ナシ・すこく・きこゆれ八・ひきさし・【給】て・
「【恋】王ひ弖・なく・祢尓・ま可ふ・うら那三は・
於もふ・可多よ里・【風】や・ふくらん」と・う多ひ・
堂満へる尓・【人】/\/(【人人】)・をきて・め弖多く・於ほゆる
尓・えしの者れて・あいなう・於き井弖・者那を/を〈次頁〉、(41オ)
--------------------------------------
しのひや可尓・可三王多す・け尓・い可尓・【思】らん・
王可・【身】・ひと川尓・よ里・於や・者ら可ら越も・王可れ・
【程】尓・川けつゝ/(川けつつ)・か多とき堂尓・多ちさり可多く・【思】
らん/ら〈判読〉・いゑちを・者那れ弖・かく・なけきあへる・
【事】を・於も本す尓・いとをしう・王可・ゝく/(可く)・【思】し
徒む・佐ま越毛・こゝろ本そ志と/(こころ本そ志と)・於もふらんと・
於ほ世は・ひるは・な尓くれと・多者ふれこと・
うちの多まひまきらはし・つれ/\なる/(つれつれなる)・
まゝ尓/(まま尓)・いろ/\の/(いろいろの)・可三を・徒き川ゝ/(徒き川川)・て奈らひ・し
堂満ひ・めつらしき・さまなる・からの・あや奈と尓/奈〈次頁〉、(41ウ)
--------------------------------------
さ満/\の/(さ満さ満の)・ゑとも那と・すさひ可き・【給】へ
る・【屏風】の・於もてなと・いと・めて多く・み【所】・於ほ可
里・い川そや・ゝまてら尓て/(やまてら尓て)・【人】/\の/(【人人】の)・可多り・きこ
ゑし・う三・【山】の・あ里さまを・者る可尓・於毛本
新や里し越・【御】め・ち可くて八・介尓をよ者ぬ・いそ
の・多ゝすまひ/(多多すまひ)・なく・かきあら者し・堂まへれ八・
この・ころ乃・【上】す尓・すめる・【千】え多・川祢の里
なとを・め志弖・つく里ゑ・徒可う万つらせ者やと・【心】
もと那可里あへり/くき&可里、可=可里、(もと那くき)・めて多く・なつ可しき・【御】あ里
さ満尓・ナシ・ナシ・ナシ・よ/=よろ川イ・毛の於もひ・王須れつゝち可くなれつ可うま川るを/う〈次頁〉、を&を、(王須れつつ)、(42オ)
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 つい説明に熱中していたために、予定の時間を30分も超過しました。受講生のみなさんも、集中しておられたようで、ついオーバーしてしまったのです。先月は、大阪府立中之島図書館での源氏講座でも、30分オーバーしました。今後は、時間をもっと意識することにします。


 1時間の休憩を挟み、後半は『百人一首』の変体仮名を読む講座です。
 吉村試訳で確認し終えた現代語訳は、以下の通りです。訳し方のメモは省略しています。


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■吉村仁志『百人一首』八九〜一〇〇・試訳 (付・仮名文字に関するメモ:伊藤鉃也)
・吉海直人『百人一首で読み解く平安時代』(角川学芸出版、二〇一二年)の訳(以下、底本の訳)を参考にした。
・高校生を意識して、また耳で聞くだけでもわかりやすく、イメージしやすい訳を心がけた。

【八九】
[現代語訳]私の命よ、絶えるならば絶えてしまえ。生きながらえていると、我慢することができなくなって、恋心を他の人に知られてしまうから。

[仮名文字の注意点]「毛そ春る」の字形に注意。


【九○】
[現代語訳]あなたに見せたいものだ。血の涙のせいで、色が変わってしまった私の袖を。雄島の漁師の袖でさえ、どんなに濡れていても、色は変わらないだろうに。

[仮名文字の注意点]「勢」「満」「礼(禮)」「須」の字形に注意。


【九一】
[現代語訳]こおろぎが鳴いている。霜が置くほど寒い夜、私はむしろの上に、自分の衣だけを敷いて、一人寂しく寝るのだろうか。

[仮名文字の注意点]「ころも」「幾」「飛」「年」の字形に注意。


【九二】
[現代語訳]私の袖は、まるで引き潮の時にも見えない、沖にある石のようだ。人は知らないだろうが、涙に濡れて乾くひまもない。

[仮名文字の注意点]「王可」「幾」「こ楚」「満」の字形に注意。


【九三】
[現代語訳]世の中は常に変わらずにあってほしいものだ。渚を漕いでいく漁師が、小舟に繋いだ綱を引く。そんななんでもないような光景を見ると、面白くも、また悲しくも思われる。

[仮名文字の注意点]「可も」「ふ年」「可那」の字形に注意。


【九四】
[現代語訳]吉野山から秋風が吹いてくる。夜も更けた頃、かつての都には、寒い中で衣を打つ砧の音が聞こえてくるようだ。

[仮名文字の注意点]「古ろも」「川」の字形に注意。


【九五】
[現代語訳]恐れ多くも、このつらい世に生きる人々を、私の袖で覆いかけることだ。比叡山に住む私の、墨染めの袖で。

[仮名文字の注意点]「希」「支」「多川」の字形に注意。


【九六】
[現代語訳]花を散らす激しい風が吹く庭で、雪が降るように散りゆく花、だが本当に古びてゆくものは、我が身だったのだなあ。

[仮名文字の注意点]「布」「盤」「王」「遣」の字形に注意。


【九七】
[現代語訳]いくら待っても来ない人を待つ時は、あの松帆の浦の夕凪に焼く藻塩のように、身も心も焦がれながら待っている。

[仮名文字の注意点]「農」「な幾耳」「屋具」の字形に注意。


【九八】
[現代語訳]風がそよそよと楢の葉を揺らす、ならの小川の夕暮れは、もう秋のような涼しさだが、禊が行われていることが、まだ夏であることの証だなあ。

[仮名文字の注意点]「楚」「川」「遣る」の字形に注意。


【九九】
[現代語訳]人が愛しくも、また恨めしくも思われる。世の中をどうしようもないと思うがゆえに、物思いをしている私には。

[仮名文字の注意点]「毛」と「も」の区別と、「免」「幾」「おも」「盤」の字形に注意。


【一〇〇】
[現代語訳]宮中の古い軒端に、忍ぶ草が生えている。それを見て偲ぶにつけても、思いが溢れ出てしまう昔であることだなあ。

[仮名文字の注意点]「婦る幾」「無可し」の字形に注意。

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 100番歌の現代語訳で、「忍ぶ草」と「偲ぶにつけても」という「しのぶ」が漢字で書き分けている箇所があります。しかし、目が見えないなどで耳でこの歌の現代語訳を聞く時に、目に頼った「忍」と「偲」の違いは、音で聞くと区別がつきません。このことに対する配慮は、あらためて考えなければならない問題です。

 昨秋から、尾形光琳のカルタを変体仮名の目慣らしの一つとして提示しています。
 今日は、前回の続きである82番歌から100番歌までを見ました。

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■光琳かるた[変体仮名翻字版-2023] 八二〜一〇〇番歌
(『別冊太陽愛蔵版「百人一首」』、平凡社、一九七四年十一月九日発行 より)

八二 道因法師
おもひ【侘】 さても【命】盤 あるものを
う起耳多え怒は な三多【成】けり

八三 皇太后宮大夫俊成
【世】の【中】は 【道】こ楚な介連 おも日【入】  ([陽明]は「【世中】よ」)
【山】の於く尓も 志可楚【鳴】な類

八四 藤原清輔朝臣
な可らへは 【又】このころや 志の者連ん
うしとみしよ所 【今】盤【恋】し起

八五 俊恵法師
よもす可ら 【物】【思】ふころ八 【明】やら怒   ([陽明]は「やら弖」)
ねやの日万さへ 徒連な可里けり

八六 西行法師
なけゝとて 【月】や盤【物】を おも者する
かこち可本なる わ可【涙】可な

八七 寂蓮法師
【村雨】の つゆも万多日怒 【槙】乃者尓
きり【立】の本類 【秋】乃【夕】くれ

八八 皇嘉門院別当
【難波江】の 阿し能可里ね乃 【一】よゆへ
【身】を徒くしてや こひ王多るへき

八九 式子内親王
【玉】の【緒】よ 多えな盤【絶】ね な可らへは
志のふることの 余は里も楚す類

九〇 殷富門院大輔
みせ者やな をし万のあ満乃 そて多尓も
ぬ連尓楚ぬ礼し 【色】は可盤らし

九一 後京極摂政前太政大臣
き里/\寸 【鳴】や【霜】よの さむしろ尓
ころも可多し起 日と里可もね無

九二 二条院讃岐
わ可そ弖は 【塩干】尓みえ怒 【沖】の【石】能
【人】こ楚志らね かはく【間】もなし          ([陽明]は「しら年」)

九三 鎌倉右大臣
【世中】盤 徒年尓もか毛な ゝきさこく
あ万のを【舟】乃 徒な弖可なしも

九四 参議雅経
みよしのゝ 【山】の【秋】可せ さよ【更】て
ふる【郷】さ無く ころもう津なり

九五 前大僧正慈円
於ほ希なく うき【世】の【民】耳 お本ふ可な
わ可多徒そ万尓 すみ所めの【袖】

九六 入道前太政大臣
【花】さ所ふ あらしの【庭】乃 【雪】ならて
婦りゆくもの盤 わ可【身】な里けり

九七 権中納言定家
こぬ【人】を 万川本のうら能 【夕】なき尓
屋くや毛しほの 【身】もこ可連川ゝ

九八 従二位家隆
【風】そよく ならのを【川】乃 【夕】くれ八
みそ起所【夏】の 志るし【成】けり     ([陽明]は「【成】ける」)

九九 後鳥羽院
【人】もおし 日と毛うら免し あち支なく
よ越【思】ふゆへ耳 もの【思】婦【身】は

一〇〇 順徳院
もゝしきや 布る起【軒】者の 志能ふ尓も
な越あ万里阿類 【昔】な梨気り

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 無事に、予定していた100首の確認を終えました。
 来月は、また別のカルタの文字を加えて、あらたにスタートです。
 少しずつ、変体仮名のスキルが上がるようにしています。




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2025年03月08日

中之島での『百人一首』(第11回)と『源氏物語 蜻蛉』(第22回)の講座

 土佐堀川沿いのみおつくしプロムナードの花壇は、市役所の真横ということもあってか、いつも手入れがなされています。

250308_花壇.jpg

 今日の講座は、いつもの重要文化財の本館ではなくて、新しい別館です。本館の東側(裏手)には新館ができました。しかし、そこから別館へは行けないので、別館へお越しの際にはお気をつけください。

250308_別館.jpg


 今日は、まず『百人一首』からです。陽明文庫旧蔵カルタの89番歌から100番歌までの、現代語訳と仮名文字の注意点を確認しました。

 98番歌の現代語訳で、「証だなあ。」の「証」を「あかし」と読むのは、高校生には難しいと思われます。今、新しく2種類のカルタを収録した『百人一首』の本を刊行する準備をすすめているところなので、適当な言葉に言い換えることにします。
 また、99番歌の「人が愛しく」も、高校生には読めないと思われます。平仮名で「いとおしく」とするか、別の言葉を考えることにします。


■吉村仁志『百人一首』八九〜一〇〇・試訳 (付・仮名文字に関するメモ:伊藤鉃也)
・吉海直人『百人一首で読み解く平安時代』(角川学芸出版、二〇一二年)の訳(以下、底本の訳)を参考にした。
・高校生を意識して、また耳で聞くだけでもわかりやすく、イメージしやすい訳を心がけた。

【八九】
[現代語訳]私の命よ、絶えるならば絶えてしまえ。生きながらえていると、我慢することができなくなって、恋心を他の人に知られてしまうから。
[仮名文字の注意点]「毛そ春る」の字形に注意。

【九○】
[現代語訳]あなたに見せたいものだ。血の涙のせいで、色が変わってしまった私の袖を。雄島の漁師の袖でさえ、どんなに濡れていても、色は変わらないだろうに。
[仮名文字の注意点]「勢」「満」「礼(禮)」「須」の字形に注意。

【九一】
[現代語訳]こおろぎが鳴いている。霜が置くほど寒い夜、私はむしろの上に、自分の衣だけを敷いて、一人寂しく寝るのだろうか。
[仮名文字の注意点]「ころも」「幾」「飛」「年」の字形に注意。

【九二】
[現代語訳]私の袖は、まるで引き潮の時にも見えない、沖にある石のようだ。人は知らないだろうが、涙に濡れて乾くひまもない。
[仮名文字の注意点]「王可」「幾」「こ楚」「満」の字形に注意。

【九三】
[現代語訳]世の中は常に変わらずにあってほしいものだ。渚を漕いでいく漁師が、小舟に繋いだ綱を引く。そんななんでもないような光景を見ると、面白くも、また悲しくも思われる。
[仮名文字の注意点]「可も」「ふ年」「可那」の字形に注意。

【九四】
[現代語訳]吉野山から秋風が吹いてくる。夜も更けた頃、かつての都には、寒い中で衣を打つ砧の音が聞こえてくるようだ。
[仮名文字の注意点]「古ろも」「川」の字形に注意。

【九五】
[現代語訳]恐れ多くも、このつらい世に生きる人々を、私の袖で覆いかけることだ。比叡山に住む私の、墨染めの袖で。
[仮名文字の注意点]「希」「支」「多川」の字形に注意。

【九六】
[現代語訳]花を散らす激しい風が吹く庭で、雪が降るように散りゆく花、だが本当に古びてゆくものは、我が身だったのだなあ。
[仮名文字の注意点]「布」「盤」「王」「遣」の字形に注意。

【九七】
[現代語訳]いくら待っても来ない人を待つ時は、あの松帆の浦の夕凪に焼く藻塩のように、身も心も焦がれながら待っている。
[仮名文字の注意点]「農」「な幾耳」「屋具」の字形に注意。

【九八】
[現代語訳]風がそよそよと楢の葉を揺らす、ならの小川の夕暮れは、もう秋のような涼しさだが、禊が行われていることが、まだ夏であることの証だなあ。
[仮名文字の注意点]「楚」「川」「遣る」の字形に注意。

【九九】
[現代語訳]人が愛しくも、また恨めしくも思われる。世の中をどうしようもないと思うがゆえに、物思いをしている私には。
[仮名文字の注意点]「毛」と「も」の区別と、「免」「幾」「おも」「盤」の字形に注意。

【一〇〇】
[現代語訳]宮中の古い軒端に、忍ぶ草が生えている。それを見て偲ぶにつけても、思いが溢れ出てしまう昔であることだなあ。
[仮名文字の注意点]「婦る幾」「無可し」の字形に注意。


 続いて、光琳カルタの55番歌から100番歌までの、読み札と取り札に書かれている変体仮名を確認しました。

 まず、64番歌に「愛しろ【木】」とある「愛」の文字に注目しました。この「愛」は「あ」と読む変体仮名です。これまでに多くの『源氏物語』の写本を読んできました。特に鎌倉時代のもので、この「愛」が仮名文字として使われている例に出会っていません。初めての出会いとなります。

250308_64番歌「愛」.jpg


 また、92番歌の二条院讃岐の歌の下の句で、「【人】こ楚志らね」とある「ね」は次のような字形で書かれています。

250308_光琳「しらね」.jpg


 一見「志らぬ」かと思います。しかし、ここは「こそ+已然形」の係り結びの文脈なので、「こそ〜ね」となるべきところなので、「ね」でいいと思われます。なお、陽明文庫旧蔵カルタでは「しら年」となっています。


■光琳かるた[変体仮名翻字版-2023] 五五〜一〇〇番歌
(『別冊太陽愛蔵版「百人一首」』、平凡社、一九七四年十一月九日発行 より)
五五 大納言公任
【瀧】の【音】盤 堂え弖ひさしく 【成】ぬ連と
【名】こ楚な可れ帝 なを支こ盈希礼

五六 和泉式部
あらさ羅無 【此】よの【外】乃 【思出】耳
い満【一】堂飛の 阿ふことも可な

五七 紫式部
免く里阿ひ弖 三しやそ連とも 【分】ぬ万に
【雲】かくれ尓し よはの【月】か希  (陽明本は「【哉】」)

五八 大弐三位
【有馬山】 いな農さゝ【原】 【風】ふけ盤
い弖そよ【人】を わすれやは春る

五九 赤染衛門
やすらはて ねな万しものを さよ【更】帝
閑た布く満弖乃 【月】をみし可那

六〇 小式部内侍
【大江山】 いくのゝ【道】乃 登をけ連八
満多ふみも三寸 【天】能者し【立】

六一 伊勢大輔
い尓しへの なら能【都】乃 【八重】さ九ら
けふこゝのへ耳 【匂】ひぬる【哉】

六二 清少納言
よ越こめ弖 【鳥】のそらね者 は可るとも
よ耳【逢坂】乃 せき盤ゆるさし

六三 左京大夫道雅
【今】は多ゝ おも飛堂え【南】 登者可りを
【人】徒弖ならて い婦よしも可な

六四 権中納言定頼
あさ本ら希 う【治】の【川霧】 多え/\耳
阿ら者連わ多る 【瀬】ゝの愛しろ【木】

六五 相模
うらみ【侘】 ほさ怒【袖】堂に【有】毛のを
こひ耳くちなむ 【名】こ楚おしけ連

六六 前大僧正行尊
もろともに 【哀】登【思】へ 屋満さく良
者なよりほか尓 志類【人】母なし

六七 周防内侍
【春】のよ能 【夢】者可りな留 【手枕】耳
かひな具堂ゝ無 【名】こ所於し遣れ

六八 三条院
こゝろ尓も あら弖【此】よ耳 な可らへは  ([陽明]は「う支よ耳」)
【恋】し可類遍き よ者乃【月】か那

六九 能因法師
あらし布具 【三】むろの【山】乃 もみち者ゝ
堂徒多の【川】濃 尓し支【成】け里

七〇 良暹法師
佐ひしさ尓 【宿】を【立】【出】て な可む連八
い徒具も【同】し 【秋】の【夕暮】

七一 大納言経信
【夕】さ礼盤 【門田】乃いな【葉】 【音】つ連て
あし乃まろ屋に 【秋】可勢そ【吹】

七二 祐子内親王家紀伊
をと尓き具 堂可しの者満乃 あた【波】八
かけしや【袖】の ぬ連もこ楚すれ

七三 権中納言匡房
堂可【砂】の 【尾上】のさくら 佐支にけり
とや満の可すみ 多ゝすも阿ら【南】

七四 源俊頼朝臣
う可里ける 【人】をはつせの 【山】おろしよ  ([陽明]は「おろし」)
は遣し可れとは いのらぬも能を

七五 藤原基俊
地支里【置】し させも可徒ゆを 【命】尓て
あ者れことしの 【秋】毛意ぬめ里

七六 法性寺入道前関白太政大臣
わ多のはら 【漕】【出】弖三れ盤 【久】可多の
くも井尓満可ふ 【奥】徒しらなみ

七七 崇徳院
【瀬】を者やみ い者尓せ可留ゝ 【滝川】の
わ連てもす衛耳 あ者むと曽【思】

七八 源兼昌
あ者【路】し満 可よふ【千鳥】の なく【声】に
いくよねさ免怒 【須】満の【関守】

七九 左京大夫顕輔
【秋】可せ耳 【棚引】くもの 【絶間】より
も連【出】類【月】の 可け能さや気散

八〇 待賢門院堀川      ([陽明]は「堀河」)
な可ゝらむ 【心】もしら春 くろかみの
見堂れ帝けさは ものをこ楚【思】へ

八一 後徳大寺左大臣
ほとゝ支数 【鳴】つる【方】を な可む連八
多ゝ【有】あけの 【月】楚のこ連累

八二 道因法師
おもひ【侘】 さても【命】盤 あるものを
う起耳多え怒は な三多【成】けり

八三 皇太后宮大夫俊成
【世】の【中】は 【道】こ楚な介連 おも日【入】  ([陽明]は「【世中】よ」)
【山】の於く尓も 志可楚【鳴】な類

八四 藤原清輔朝臣
な可らへは 【又】このころや 志の者連ん
うしとみしよ所 【今】盤【恋】し起

八五 俊恵法師
よもす可ら 【物】【思】ふころ八 【明】やら怒   ([陽明]は「やら弖」)
ねやの日万さへ 徒連な可里けり

八六 西行法師
なけゝとて 【月】や盤【物】を おも者する
かこち可本なる わ可【涙】可な

八七 寂蓮法師
【村雨】の つゆも万多日怒 【槙】乃者尓
きり【立】の本類 【秋】乃【夕】くれ

八八 皇嘉門院別当
【難波江】の 阿し能可里ね乃 【一】よゆへ
【身】を徒くしてや こひ王多るへき

八九 式子内親王
【玉】の【緒】よ 多えな盤【絶】ね な可らへは
志のふることの 余は里も楚す類

九〇 殷富門院大輔
みせ者やな をし万のあ満乃 そて多尓も
ぬ連尓楚ぬ礼し 【色】は可盤らし

九一 後京極摂政前太政大臣
き里/\寸 【鳴】や【霜】よの さむしろ尓
ころも可多し起 日と里可もね無

九二 二条院讃岐
わ可そ弖は 【塩干】尓みえ怒 【沖】の【石】能
【人】こ楚志らね かはく【間】もなし          ([陽明]は「しら年」)

九三 鎌倉右大臣
【世中】盤 徒年尓もか毛な ゝきさこく
あ万のを【舟】乃 徒な弖可なしも

九四 参議雅経
みよしのゝ 【山】の【秋】可せ さよ【更】て
ふる【郷】さ無く ころもう津なり

九五 前大僧正慈円
於ほ希なく うき【世】の【民】耳 お本ふ可な
わ可多徒そ万尓 すみ所めの【袖】

九六 入道前太政大臣
【花】さ所ふ あらしの【庭】乃 【雪】ならて
婦りゆくもの盤 わ可【身】な里けり

九七 権中納言定家
こぬ【人】を 万川本のうら能 【夕】なき尓
屋くや毛しほの 【身】もこ可連川ゝ

九八 従二位家隆
【風】そよく ならのを【川】乃 【夕】くれ八
みそ起所【夏】の 志るし【成】けり     ([陽明]は「【成】ける」)

九九 後鳥羽院
【人】もおし 日と毛うら免し あち支なく
よ越【思】ふゆへ耳 もの【思】婦【身】は

一〇〇 順徳院
もゝしきや 布る起【軒】者の 志能ふ尓も
な越あ万里阿類 【昔】な里気り


 光琳カルタは55番歌から確認したので、45首の確認をしたことになります。慌ただしいことでした。5分だけ超過して無事に終えることができました。昨年春からの『百人一首』の講座は、これで前期と後期が終了です。みなさま、お疲れさまでした。四月からは、テキストを変えて、2種類の『百人一首』のカルタの変体仮名を読みます。

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 30分の休憩を置いて、次は『源氏物語』の「蜻蛉」巻の仮名文字を読み進めました。

 今日の回覧本は、朴光華先生のハングル訳『韓国語訳注「浮舟」』を回しました。朴光華先生のお仕事が、『源氏物語』を韓国語で読む上では唯一の信頼できる成果です。一日も早い完成を心待ちにしています。

 ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」は、51丁表から53丁裏2行目までを確認しました。
 紛らわしい文字としては、50丁裏10行目の後の方の「な」を指摘しました。

250308_「蜻蛉」50uなくなし.jpg


 これは、どう見ても「なくふし」で「ふ」です。しかし、「な」のさまざまな字形をみていると、「ふ」に近いものがあるので、「なくなし」としました。


■ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』51丁表〜53丁裏2行目
翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
--------------------------------------
【給】へし・ものか多りこ万や可に・し・た万ひて・
よふけて・いてなと・し・【給】・於り/\も/(於り於りも)・【侍】れと・れい
の・めなれ多る・すち尓・【侍】らぬ尓や・【宮】をそ・いと・
なさけなう・於八し万すと・【思】て・【御】いらへを多に・
きこえ春・八へめれ・可多し介なき・ことを・
いひて・王らへ八・【宮】も・王ら者せ・【給】て・いと・三くる
志き・【御】ありさ万越・ゝもひしるこそ/(越もひしるこそ)・を可し介れ・
い可て可・かゝる/(かかる)・【御】くせ・やめ・多て万つらん・八つ可しや
と・この・【人】/\をも/(【人人】をも)・能【給】ふ・[26]いと・あやしき・【事】をこそ・
きゝ/(きき)・【侍】里し可・この・【大将】の・なくなし/後な〈判読〉・【給】てし/(51オ)
--------------------------------------
【人】八・【宮】の・【御二条】のき多のか多の・【御】をとゝなり
介り/(【御】をととなり介り)・こと八らなるへし・ひ多ちのさきの可見
な尓かし可め者・者ゝとも/(者者とも)・を八とも・いひ・八へるなる
者・い可なる尓可・その・【女君】尓・【宮】こそ・いと・しのひ
て・於八しまし介れ・【大将殿】や・きゝ川介【給】多り介ん/(きき川介)・
尓八可尓/△&前尓・む可へ・【給】八んとて・万本りめ・そへなと・こと
ことしう・し・【給】介る・本とに・三やも・いと・しのひ
て・於者し万し奈可ら・江・いらせ・【給】八春・あやしき・さ
万尓・【御】う万な可ら/う$む、(【御】む万な可ら)・多ゝせ/(多多せ)・【給】てそ・かへらせ・【給】介る・
【女】も・【宮】を・於もひ・きこえさせける尓や/(51ウ)
--------------------------------------
尓者可尓・きへう世にける越・【身】・なけ多るなん
めりとてこそ・め能となとやうの・【人】と母八・なき
万とい・者んへり介れと・きこゆ・三やも・いと・あさ満
志と/△&さ・於ほして・多れ可・さる・こと八・いふそとよ・いと/\
於しう/(いと於しう)・【心】うき・こと可な・さ者可り・めつら可ならん・
ことは・於の川可ら・きこえ・阿りぬへき越・【大将】も・
さやう尓八・い者て・【世中】の・八可奈く・い三しき・【事】・
かの・うちの三や能/△り&うち・そうの・い能ち/り&ち、ち±の、(い能り、い能ちの)・三しかゝり介る/三し&三し、(三しかかり介る)・
ことをこそ/を&を・いと・可なしと・【思】日て・能【給】し可と・能
【給】ふ・いさや/さ=〈墨ヨゴレ〉・介春は・多し可ならぬ・ことをも・いひ【侍】る【物】をと/【侍】〈次頁〉、(52オ)
--------------------------------------
於毛ひ・【給】ふれと・かしこ尓・【侍】介
累・し毛王ら八の・このころ・【宰相】の・さとに・万
うてきて・多し可なる・さまにそ・いひ・【侍】り
ける・かう/う&う・あやしうて・う世・【給】へりける・こと・【人】
尓・き可せし・於とろ/\しう/(於とろ於とろしう)・於そきやうなりと
て・いみしう・かくし介る/くし&かくし、(くし介る)・こともや・さて・く八しう八/八〈行末左〉・
き可せ・多て万つらぬ尓や・あ里介んと・きこ
ゆれ八・さらに・かゝる/(かかる)・こと・ま多・万ねふなと・い者せ
よ・かゝる/(かかる)・すち尓・【御身】をも・ゝてそこなひ/(もてそこなひ)・【人】尓・
かろく・【心】川きなき・【物】尓・於も者れ・【給】へきな免里と/な〈次頁〉、(52ウ)
--------------------------------------
い三しう・於ほい多り・[27]その・ゝち/(のち)・【女宮】の・
【御】可多より・【二宮】尓・【御】せうそこ・ありけり・【御】て
なとの・い三しう・ゝ川くし介なる越/(う川くし介なる越・)三る尓も・いと・
うれしう・かくてそ・とく三るへ可り介ると・於ほ須・
あ万多・於かしき・ゑとも/とも&とも・於ほ【宮】も於ほく・たて
万川らせ・多万へり・【大将殿】ゝ/ゝ$、(【大将殿】の)・うちまさりて/さ±く、(うちまさくりて)・於可
しきとも・あ川めて・万いらせ・【給】・せり可八の【大将】・と
越き見の・【女一宮】・於もひ可遣多る・【秋】の・ゆふくれ
尓・於もひ王ひて・いてゝ/(いてて)・ゆき多る・か多・於可しく・
かき多るも・いと・よう・【思】ひよそ江らる可し/らる&らる、らる$らる、可し&可し・可八可り(53オ)
--------------------------------------
於ほしなひく/い&ひ、(於ほしないく)・【人】の・阿らまし可八と・於もふ【身】そ・
くちをしき・(250308_ここまで)

 なお、本日見た「蜻蛉」の最後の、53丁裏と54丁表の見開きの装飾料紙のデザインは、先日相愛大学で拝見した写本の「手習」の65丁裏と66丁表の見開きとそっくりです。

■ハーバード大本「蜻蛉」五三丁裏(拙編『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』新典社、2014年)122頁

250307_Harvard52蜻蛉53裏.jpg


■相愛大本「手習」六五丁裏(国文学研究資料館より公開されている画像)

250307_相愛53手習65裏.jpg


 ここに提示した2枚の影印画像は、文字の類似はもちろんのこと、同じような手法で丁子油を振り掛けて型抜きされた料紙に書写されていることは明らかです。ハーバード大学本『源氏物語 蜻蛉』と、相愛大学本『源氏物語 手習』は、ツレの写本であると言っていいと思われます。
 このことは、後日また整理して報告します。




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2025年02月22日

キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第27回)

 キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)の入口のロビーには、いつものように勉強会の案内がありました。

250222_掲示板.jpg

 今日の回覧本は、朴光華先生のハングル訳『源氏物語』です。このことはすでに今月の日比谷の報告で記したので省略します。

 尾州家河内本「桐壺」の本文を[変体仮名翻字版]で翻字する確認作業を継続しています。
 今日は、第13丁表から第15丁裏までを見ました。

 まず問題となった箇所からの報告です。
 13丁8行目で、「いと・可奈し/±〈朱点右(ママ)〉」と翻字して、「可」の右上に句点を示す〈朱点〉があるものの確定できないので「(ママ)」とした箇所についてです。
 参会者のSさんから、裏面の朱点が裏写りとして見える例ではないか、との意見をいただきました。その該当箇所の拡大写真(左)と、裏写りと思われる箇所(右)とその反転写真(中)を示します。

250222_反転合成矢印.jpg


 確かに、左側の写真と真裏にあたる右側の写真が重なることは、右側を反転した真ん中の写真を置くことで明らかになります。これで、ここの翻字は「いと・可奈し」と、付加情報のないものとなります。

 次に、15丁裏6行目の「【事】なり遣礼八/礼八〈削〉り遣」では、ナゾリの背景を明らかにしました。

250221_尾州「桐壺」15裏L6礼八&り遣.jpg

 ここで書写者は、まず「【事】な禮八」と書き、「禮八」がその直後の文字であり、写し間違いであることにすぐに気付き、「禮八」を削り取ってからその上に「り遣禮八」と書き直した例です。なお、[変体仮名翻字版]の翻字では「禮」は新漢字の「礼」で最終的には表記します。この訂正の過程がよくわかるので、例としてあげました。

 こうしたことを説明しながら、以下のようにここでの[変体仮名翻字版]を確定しました。

--------------------------------------
さま耳とこそ・於本しわ多り徒れ/±〈朱点〉・い布可ひ
なしやと/±〈朱点右〉・乃多ま者勢て・いと/±〈朱点〉・阿八連尓・於ほし
やる/±〈朱点〉・かくても/±〈朱点右〉・をのつ可ら/±〈朱点〉・王可【宮】那と/±〈朱点〉・於ひいて
【給】八ゝ/±〈朱点〉、(【給】八八)・さるへき/±〈朱点〉・徒いても/±〈朱点〉・あ里なん/±〈朱点〉・いのち/±〈朱点右〉・な可
くとこそ・於もひねん世めなと・乃多ま八須/±〈朱点〉・
か乃/±〈朱点右〉・をくり【物】/±〈朱点〉・【御覧】世さ春/±〈朱点〉・なき【人】の/±〈朱点右〉・す三可・
多つねいて多り気ん/±〈朱点〉・新累しの/±〈朱点〉・可ん佐しなら
まし可八と/な±〈朱点〉・於ほすも/±〈朱点〉・いと・可奈し
「堂徒ね遊く・ま本ろし毛可那・つ弖尓ても・
たまの・あり可を・そこと・しるへく」・ゑ尓/±〈朱点右〉・可け類・
やうきひの可多ちは・いみしき/±〈朱点〉・ゑしと/±〈朱点〉・いへとも/も〈丁末左〉、(13オ)
--------------------------------------
ふて/±〈朱点〉・可きり・あ里け連八・いと/±〈朱点〉・尓本ひ/±〈朱点〉・すく那し
堂い江きのふようもけ尓可よひ多里しか多
ちいろあひ可らめい多り遣んよそひ八う累
王しう遣ふら尓こそ八あり遣め/±〈朱点右〉、=大液芙蓉、け±〈朱点〉、か±〈朱点〉、前2い±〈朱点〉、前2可±〈朱点〉、前2よ±〈朱点〉、前2う±〈朱点〉、前2遣±〈朱点〉、前2あ±〈朱点〉・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・なつ可しう
らう多けなりしありさま八を三那へしの
【風】尓なひき多流よりもなよひなてしこ能
つゆ尓ぬれ多流より毛らう多くなつ可し可り
志/±〈朱点右〉、を±〈朱点〉、前5な±〈朱点〉、前2ら±〈朱点〉、前6な±〈朱点〉・可多ち/±〈朱点〉・け八ひを・於本しいつる尓/±〈朱点〉・【花】とり乃/±〈朱点〉、〈朱合点〉・
色尓も・ね尓も/±〈朱点〉・よそふへき/±〈朱点〉・可たそ/±〈朱点〉・那き・あさゆ
ふ乃/±〈朱点右〉・ことくさに八・八ねを/±〈朱点〉、〈朱合点〉・ならへ・江多を/±〈朱点〉・可八さ
むと・ちきら勢/±〈朱点〉・【給】し尓・多れも/±〈朱点〉・可な八佐り遣る/±〈朱点〉遣〈次頁〉、(13ウ)
--------------------------------------
いのち能/±〈朱点〉・本とそ・つきせ春/±〈朱点〉・うらめしき/±〈朱点〉・
【風】乃/±〈朱点右〉・をと・むしの/±〈朱点〉・ね尓・つ遣ても・【物】の三/±〈朱点〉・可なしう・
於ほさるゝ尓/±〈朱点〉、(於ほさるる尓)・こきてん尓八/±〈朱点〉・よのな可/±〈朱点〉・【物】むつ可しう/±〈朱点〉・
お本されて/±〈朱点〉・うへの/±〈朱点〉・【御】つ本ね尓も・まう乃本り/±〈朱点〉・
多ま八寸・【月】乃/±〈朱点右〉・於もしろき尓よふくるまて/よ±〈朱点〉・あそ
ひをそ/±〈朱点〉・し・多まふなる・み可と/±〈朱点右〉・いと/±〈朱点〉・すさましう
【物】しと/±〈朱点〉・起こしめ寸/±〈朱点〉・ナシ・こ乃/±〈朱点右〉・ころ能・【御】遣しきを・
【見】/み〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉、±〈朱点〉・多てまつる・うへ【人】/±〈朱点〉・【女房】なと八/±〈朱点〉・可た八らい多
しと/±〈朱点〉・起ゝ介り/±〈朱点〉、(起起介り)・いと/±〈朱点右〉、=〈朱点左〉・をし多ち/±〈朱点〉、〈朱点左〉・可と/\しう/±〈朱点〉、(可と可としう)・【物】し/±〈朱点〉・
【給】・【御】可多耳て/±〈朱点〉・【事】尓も/±〈朱点〉・あら春/±〈朱点(削)〉・於本し遣川
なるへし/±〈朱点〉、な±〈朱点〉・ナシ・ナシ・【月】も/±〈朱点右〉・いりぬ/(14オ)
--------------------------------------
「く毛乃・うへも・なみ多尓・くるゝ/(くるる)・あきの・つき・
い可て/±〈朱点右〉〈削〉・すむらん・あさちふ乃・やと」・お本しやり
つゝ/±〈朱点右〉、(やりつつ)・ともし【火】を/±〈朱点〉、〈朱合点〉・可ゝけつくして/±〈朱点〉、(可可けつくして)・於き/±〈朱点〉・お八しま寸・
【右近】乃/±〈朱点右〉・つ可さ乃・との井【申】能・こゑ・きこゆる八/±〈朱点〉・
うし尓/±〈朱点〉・なりぬるなるへし・【人】めを/±〈朱点右〉・於本して/±〈朱点〉・よる
乃おとゝ尓/±〈朱点〉、(おとと尓)・いら勢/±〈朱点〉・【給】ても・まとろま勢/±〈朱点〉・【給】・【事】・
いと/±〈朱点〉・可多新/±〈朱点〉・あし多尓/±〈朱点右〉、〈朱合点〉・於きさせ/±〈朱点〉・【給】ても・あくる
も/±〈朱点〉・しらてと/±〈朱点〉・於も本しいつる尓も/±〈朱点〉、い±〈朱点〉・な本/±〈朱点〉・あさまつ
り【事】八/±〈朱点〉・をこ多り堂まひぬへ可めり/±〈朱点〉・【物】なとも/±〈朱点右〉、も〈左傍記〉・
起こしめさ春/±〈朱点〉・あさ可礼井能/±〈朱点右〉、=朝餉・遣しき八可里・
ふれさせ/±〈朱点〉・【給】て・【大床子】乃/±〈朱点〉・於ものなと八た/八±〈朱点〉・いと/±〈朱点〉、(14ウ)
--------------------------------------
八類遣う/±〈朱点〉・於本し多れ八/±〈朱点〉・はいせん尓/±〈朱点〉、=陪膳・さふら婦・可き
里八・ナシ・【心】くるしき【御】遣しきを/±〈朱点〉、【御】±〈朱点〉・【見】/±〈朱点〉・多てまつ里・
なやむ・すへ弖/±〈朱点右〉・ち可う/±〈朱点〉・さふら婦/±〈朱点〉・可き里八/±〈朱点〉・於と
こ/±〈朱点〉・をん那/±〈朱点〉・いと王りなき/±〈朱点〉、王±〈朱点〉・王さ可那と/±〈朱点〉・いひあ者勢
つゝ/±〈朱点〉、(あ者勢つつ)・な遣く/±〈朱点〉・さるへきちきりこそ八/±〈朱点右〉・於八しまし
遣め/±〈朱点〉・そこら能/±〈朱点〉・【人】乃・所し里・うら三をも/±〈朱点〉、見〈削〉三、三=三〈削〉・八ゝ
可ら勢/±〈朱点〉、(八八可ら勢)・多ま者春・こ乃/±〈朱点〉・【御事】尓・ふれ多流・【事】を八・
堂う里をも/±〈朱点〉、=道理・まけさ勢/±〈朱点〉、け=〈朱点2左〉・【給】し尓・いま/±〈朱点〉・八多かく/±〈朱点〉、か±〈朱点〉・
【世】乃/±〈朱点〉・ま川里ことをも/と〈朱点右(ママ)〉・於本し寿て多流/±〈朱点〉・やう尓・なり
ゆく八・いと/±〈朱点〉・堂い/\しき/±〈朱点〉、=退〻、(堂い堂いしき)・わさなりと/な±〈墨ヨゴレ〉・飛と乃/±〈朱点〉、=他・み可と
乃・多めしまて/△〈削〉ま・日きいて/±〈朱点〉・さゝめき/±〈朱点〉、(ささめき)・な遣起けり/±〈朱点〉、(15オ)
--------------------------------------
月日/±〈朱点右〉・へ弖・王可【宮】/±〈朱点〉・まい里/±〈朱点〉・【給】ぬ・いとゝ/±〈朱点右〉、(いとと)・こ乃よの/±〈朱点〉・
【物】なら須・ナシ・きよら尓/±〈朱点〉・於よすけ/±〈朱点〉・多まへ八・いとゆゝしう/±〈朱点〉、ゆ±〈朱点〉、(ゆゆしう)、う〈左傍記〉・
於本し多里/±〈朱点〉・あくる/±〈朱点右〉・としの・八類・【坊】/±〈朱点〉・さ多まり・
【給】尓も・いと/±〈朱点〉・日きこさま本しう/±〈朱点〉・於ほ世と/±〈朱点〉・【御】う
しろ三/±〈朱点〉・すへき/±〈朱点〉・【人】も・なく【又】/【又】±〈朱点〉・よの/±〈朱点〉・うけひくましき・
【事】なり遣礼八/礼八〈削〉り遣・【中】/\/±〈朱点〉、(【中中】)・あやうく/±〈朱点〉・於ほし八ゝかりて
いろ尓もい多さ勢多ま者春なりぬるを/±〈朱点〉、い±〈朱点〉、(八八かりて)・さ八可里/±〈朱点〉・
於本し多れと/±〈朱点〉・可きりこそ/±〈朱点〉・あり遣れと【世人】毛き
こ江/【世】±〈朱点〉・【女御】も/±〈朱点〉・於本ん【心】・於ち井/±〈朱点〉・多まひぬ・ナシ・ナシ・可乃/±〈朱点右〉・於八/八=〈朱点3左〉・
起多の可多・なくさむ/±〈朱点〉・よ・那く・於本しゝつみ弖/±〈朱点〉、(於本ししつみ弖)・
於八春らん/±〈朱点〉・ところへ多に/±〈朱点〉・ゆ可むと/±〈朱点〉・ね可ひ/±〈朱点〉・【給】遣類/遣〈次頁〉、(15ウ)
--------------------------------------

 次回の勉強会は、来月の3月22日(土)の午後2時半から、同じ演習室で行ないます。




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posted by genjiito at 21:59| Comment(0) | ■講座学習

2025年02月15日

日比谷で「須磨」(21)と『百人一首』(10)を読む

 今日も、日比谷図書文化館の入口には講座の案内が掲示されていました。

250215_掲示板.jpg


 入ってすぐの特別展示室では、「実録 桜田門外の変」を開催しています。会期は、先週から3月24日(月)までです。
 すぐ近くの皇居での事変なので、興味深く見て回りました。
 1つの出来事に対して、情報が広く伝播し、言葉や絵画などで多くの記録が残されています。

250216_桜田門.jpg


 ところが、それぞれが微妙な温度差をもって語り伝えられているために、事実はどうだったのか、真相はどうだったのかが、なかなかわかりません。情報の伝達について考えさせられました。

 さて、ハーバード本「須磨」の本文を変体仮名に注目して確認する講座です。
 最初に、朴光華先生のハングル訳『源氏物語』を回覧し、韓国における『源氏物語』の翻訳状況をお話しました。朴先生のハングル訳は、これから先10年では終わらない、壮大な計画のものです。

 今回は「街中の変体仮名」は例示するものがなかったので、すぐに「須磨」の本文の確認をしました。
 ハーバード本『須磨』の今日の範囲では、字形の判断に迷うものが少なかったので、予定通り6頁分の確認ができました。いくつか説明を要したのは、ミセケチとナゾリと補入のことです。

 今回の範囲では、「佐(さ)」をなぞった例が3例もあり、この書写者は旁の「左」の字形にこだわっているように見受けられました。
 「あはれ」という単語については、共に「あ者れ」と表記するものが3例も確認できました。この用字については、今後とも注視していきたいと思っています。他の巻や他の写本などでは、さまざまな表記で書写されています。この用字についても、あらためて抽出していくと、おもしろい傾向がわかることでしょう。

 この他には、ナゾリや補入やミセケチについて、わかりやすい例がいくつか出てきたので、出てくるたびに詳しく説明しました。

 以下に、今日確認した翻字をあげます。

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■ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』37丁表〜39丁裏
翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
--------------------------------------
【思】いて・きこゑ・【給】・をり可ら乃・【御】ふ三毛・いとあ
者れ奈れ八・【御】つ可ひさへ・い川可しくて・【二三日】・
すゑ・多満ふて・可志こ乃・【物】可多里なと・せさせ・
【給】て・きこしめ寿・王可や可尓・遣しきめる/き±者、(遣しき者める)・
佐ふらひの・【人】奈り・けち可く・あ者れなる・【御】す万
井奈れ者・かやうの・【人】毛・をのつ可ら・毛のとを可
らて・ほ乃三・堂てま川る/て&堂、(ててま川る)・【御】あ里佐ま/佐&佐・可多ち
を・い三しく・め多堂しと・な三多・越としをり
け里・【御返】・可き・多満ふ・ことの者・於もひやるへ
し・かう・よ越・者なるへき・【身】と・【思】・【給】へまし可八/(37オ)
--------------------------------------
於那しく八・志多ひ・きこゑ佐せまし【物】
をとなん・徒れ/\と/(徒れ徒れと)・【心】本そき・満ゝ尓/(満満尓)・
「【伊勢】ひと乃・奈みの・うへ・こく・をふ祢尓毛・
うきめは・可らて・のら満し毛の越」ま多・
「あま可・徒む・那遣乃/遣+き、(那遣き乃)・【中】尓・し本多れ弖・
い徒まて・寿満乃うら尓・な可めん」・きこゑ
させん・こと能・い川と毛・【思】・【給】へられぬこそ・徒き
勢ぬ・【心】ち・し・者へれ奈んとそ・あ里ける・可や
う尓・い川こ尓毛・於ほ川可奈可ら須・きこゑ・【給】・[21]【花】
ちる佐とも/佐&佐・可那しと・於ほしける万ゝに/(万万に)・可きあ川め/あ〈次頁〉、(37ウ)
--------------------------------------
【給】へる・【御】ふ三とんの・【心】/\を/(【心心】を)・【見】・【給】尓八・を
可しさ毛・あはれ毛・めなれぬ・【心】ち・して・いつれ
毛・うち三・【給】川ゝ/(【給】川川)・奈くさ免・か川八・【物】於もひの・
もよ越し奈り・
「あれまさる・のき乃・しのふを・な可め
徒ゝ/(な可め徒徒)・志けく毛・つゆ乃・可ゝる/(可可る)・そて可奈」と・ある
を・介尓・い可尓・むくらよ里・本可乃・うしろ三
も・なき・佐ま尓て・於者すらんと・於ほし
や里て・な可あ免尓・【所】〻の/(【所所】の)・川い可き毛・く
徒れてなんと・きゝ/(きき)・【給】へ八・【京】の・介いし能・もと尓/尓〈次頁〉、(38オ)
--------------------------------------
於ほ世つ可者して・ち可きく尓/\乃/(く尓く尓乃)・【御
庄】乃/=三しやう・【物】なと・毛よをさ勢て・【修理】の【事】
なと/=す里・徒可うま徒る・ナシ・[22]かんのみは/の±き、(かんのきみは)・【人】
王ら八れ尓・い三しく・於ほしいら
るゝ越/(於ほしいらるる越)・於とゝ/(於とと)・いと・か那しく・し・【給】・【君】尓て・
勢ち尓・【宮】尓毛・【申】・【内】尓毛・【奏】し/=ソウ・【給】
介れ者・な尓可八・可き里・ある・【女御】・三や
す【所】尓毛・を者せ須・於ほやけさまの・【宮】つ
かへなと・於ほしな越里・【又】・かの・【人】の・尓く
可里し・ゆへこそ・い可めしき・と可免毛・いて古し可/古〈次頁〉、(38ウ)
--------------------------------------
・ゆるされ・【給】て・まいり・【給】へき尓・徒介
て毛・【猶】・【心】尓・し三尓し・か多の・ことの三そ・
あ者れ尓・於ほえ・【給】介る・【七月】尓/=ふ、(ふ【月】尓)・な里弖・
万いり・【給】・い三し可里し・【御思】の・奈こり奈
れ者・ひとの・そし里を毛・しろし免さす・
れいの・川と・うへ尓・さふら者勢・【給】弖・よろ
徒尓・うらみ・可川八・あ者れ尓・ちき里・可多
ら者せ・【給】・さ満・【御】可多ち毛・いと那ま免可しく・
きよらなれとも・於もひい川可/可〈ママ〉・ことの三・於ほ
かる・【御心】の・うちそ・いと・可多しけ奈き・於ほんあそひの/あ〈次頁〉、(39オ)
--------------------------------------
川いて尓・その・【人】の・なきこそ・いと・
さう/\し介れ/(さうさうし介れ)・い可尓・満し弖・志可・【思】・【人】・
於ほ可らん・【何事】尓毛・ひ可り・なき・【心】ちも・
寿る可那なと・の堂満者勢て・【院】の・於ほし・
の多ま者勢し・【御心】を・多可へ・きこゑ徒る
可那・川三・うらむ可しと弖・な三多くみ・多
まへる尓・え・ねむし・【給】まし・【世中】こそ・
ある尓・徒遣て毛なきに川遣ても・川年
なら須・あちきなき・毛のなり介れと・ナシ・【思】し
る・満ゝ尓ひさしう/(満満尓)・【世】尓・あるへき・ものと・さら尓/ら〈次頁〉、(39ウ)
--------------------------------------


 1時間の休憩中に、地下のラウンジで書家の宮川さんと、今後の写本の調査について打ち合わせをしました。ハーバード本のツレと思われる五冊の写本の存在が確認できたからです。
 宮川さんはハーバード本のときのように臨模本を作成し、私は「変体仮名翻字版」のデータを作る計画を始めることにしたのです。この件では、進展に伴って報告します。
 また新たなプロジェクトのスタートです。

 後半は、『百人一首』の変体仮名を読む講座です。
 吉村試訳で確認し終えた現代語訳などは、以下の通りです。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
■吉村仁志『百人一首』七六〜八八・試訳 (付・仮名文字に関するメモ:伊藤鉃也)
・吉海直人『百人一首で読み解く平安時代』(角川学芸出版、二〇一二年)の訳(以下、底本の訳)を参考にした。
・高校生を意識して、また耳で聞くだけでもわかりやすく、イメージしやすい訳を心がけた。

【七六】
〈原文〉【和田】の【原】 こ幾【出】弖三れ者 【久方】能【雲井】耳満可ふ おきつしら【波】
〈底本の訳〉大海原に漕ぎ出して見渡すと、はるか向こうに雲かと見間違うばかりに沖の白波が立っています。
〈試訳〉大海原に漕ぎ出して見渡すと、はるか向こうに見えるのは、雲と見間違えそうになるほど白い波。
・下の句の訳し方
→音で聞いた時に順番に情景がイメージできるように、「はるか向こうに見えるのは」と訳した。
※仮名文字
【原】【方】【井】【波】の漢字に注意。
「幾」「弖」「つ」の仮名に注意。

【七七】
〈原文〉【瀬】を者や三 【岩】耳世可るゝ 多き【川】の王礼弖も春ゑ尓 あ八んとそおもふ
〈底本の訳〉川の流れが速いので、岩にせき止められる急流が二つに分かれてもいずれはひとつになるように、今は引き離されて逢えなくても、後にまた逢おうと思っています。
〈試訳〉川の流れが速いので、岩にせき止められた急流は、二つに分かれてもいずれ一つに戻る。それと同じように、今はあなたと一度引き離されてしまっても、いずれまた逢おう、と思っている。
・序詞の訳し方
→川の情景と自分の思いを重ねているのを表現するにあたって、原文と同じ順序で訳すと煩雑になってしまうので、比喩の方を先に訳した後、一度文を切って改めて心情を訳した。
※仮名文字
【瀬】【岩】の漢字に注意。
「世」「王」「礼」「弖」「そ」の仮名に注意。

【七八】
〈原文〉あ八ち【島】 かよふ【千鳥】の 【鳴】こゑ耳【幾夜】祢さ免努 須万能せ幾毛里
〈底本の訳〉淡路島から須磨に渡ってくる千鳥のもの悲しい鳴き声に、幾晩目を覚ましたことでしょうか、須磨の関守は。
〈試訳〉淡路島から渡ってくる千鳥の、もの悲しい鳴き声に、幾晩目を覚ましたことだろうか、須磨の関守は。
・上の句の訳し方
→音で聞いた時にわかりやすくするため、底本にある「須磨に」を省略し、「千鳥の」の後に読点を置いた。
※仮名文字
【島】【鳥】【鳴】の漢字に注意。
「こ」「努」「幾」の仮名に注意。

【七九】
〈原文〉【秋風】耳 【棚引】【雲】の 多え万よ里毛礼いつ類【月】能 可け乃さや希佐
〈底本の訳〉秋風にたなびいている雲のとぎれから漏れる月光の、なんと澄みきっていることでしょう。
〈試訳〉秋風にたなびいている雲の、切れ間から漏れてくる、月の光の清らかさ。
・結句の訳し方
→この歌の中心である月光の清らかさを強調するために、あえて体言止めで訳した。
※仮名文字
【棚】【雲】の漢字に注意。
「え」「礼」「類」「希」「佐」の仮名に注意。

【八○】
〈原文〉【長】可らん 【心】もしら須 くろ【髮】能み多連弖【今朝】八 ものをこそ【思】へ
〈底本の訳〉末長く変わらないあなたのお心かもしれませんが、今朝の私の心はこの黒髪と同じように乱れてもの思いに沈んでいます。
〈試訳〉末長く変わらないというあなたの心も、どうなってしまうかはわからない。私はこの乱れた黒髪と同じように、今朝は乱れた心で物思いをしているけれど。
・上の句の訳し方
→二句目までは相手の心、三句目以降は自分の心情について詠んでいるので、途中で文を一度切った。
・下の句の訳し方
→二句目までの相手の心と対比する形で、自分の心情を逆説を用いて訳した。
※仮名文字
【心】【髪】【今朝】【思】の漢字に注意。
「須」「連」「弖」の仮名に注意。

【八一】
〈原文〉本とゝ支須 【鳴】つる【方】越 【眺】無れ者【唯】【有明】能 【月】楚のこ連類
〈底本の訳〉時鳥が鳴いた方を見ると、時鳥の姿は見えずただ有明の月が見えていることです。
〈試訳〉時鳥の鳴き声。聞こえた方を見てみると、既に時鳥の姿はない。ただ有明の月だけが残っている。
・上の句の訳し方
→下の句で詠まれる「残っている月」と対比して、残っていない時鳥を表現するため、鳴き声が聞こえる→そちらを見る→姿が見えないという短い時間の流れを表現するために、それぞれを一つずつ順番に訳した。
※仮名文字
【方】【眺】【唯】の漢字に注意。
「本」「支」「楚」「類」の仮名に注意。

【八二】
〈原文〉【思】日王ひ さてもいのち八 【有】ものをう幾耳【堪】ぬ八 な三多【成】希李
〈底本の訳〉つれない人のことを思い悩んで、この身は絶え果ててしまうかと思いましたが、それでも命だけはなんとかつないでいるのに、そのつらさにたえられないのは涙で、とめどなくこぼれ落ちています。
〈試訳〉つれない人のことをどれほど思い悩んでも、命はこの身に宿ったままなくならない。だが、涙はつらさに耐えられず、この身からどんどんこぼれ落ちていく。
・上の句の訳し方
→「命」と「涙」が対比されているため、つらさに耐えかねてどんどん身からこぼれ落ちる涙と、つらくとも自身を離れない命というイメージであると考え、「命はこの身に宿ったままなくならないけれど」と訳した。
※仮名文字
【思】【有】【堪】の漢字に注意。
「日」「幾」「多」「李」の仮名に注意。

【八三】
〈原文〉【世中】よ 【道】こそな遣連 おもひ【入】【山】能於く耳毛 【鹿】楚【鳴】な流
〈底本の訳〉世の中というのは逃れる道はないのですね。深く分け入った山の奥でも憂きことがあるらしく、鹿がもの悲しく鳴いているようです。
〈試訳〉世の中というのは、苦しみから逃れる道がないのだなあ。俗世を離れるために入った山の奥でも、鹿がもの悲しく鳴いているようだ。
・「思い入る」の訳し方
→悲しみという煩悩から解放されるために入った山奥で、鹿の鳴き声を聞いてここにも悲しみがあることを知り、逃れる道がないことを諦めている、という歌なので、「俗世を離れるために入った」と訳した。
※仮名文字
【道】【鹿】の漢字に注意。
「遣」「楚」「流」の仮名に注意。

【八四】
〈原文〉な可らへ八 ま多この【比】や 【忍】者れん宇しと【見】しよ楚 い万盤古ひしき
〈底本の訳〉この世に長らえたら、つらい今のことがなつかしく思い出されることでしょう。つらかった昔が今では恋しく思われることからして。
〈試訳〉この世に長く生きていたら、いつか今のつらい日々のことも懐かしく思い出されるようになるのだろうか。つらかった昔のことも、今では恋しく思われるのだから。
・上の句の訳し方
→二句目の「や」を疑問の意に取って訳出することで、今のつらさを強調した。
※仮名文字
【比】【忍】の漢字に注意。
「多」「宇」「盤」「古」の仮名に注意。

【八五】
〈原文〉よも春可ら 【物】【思】ふころ八 【明】やら弖【閨】能【隙】さへ つ連那可里遣利
〈底本の訳〉夜通しつれないあなたのために物思いしているこのごろは、早く白んでくれればよいと思いますが、なかなか夜は明けてくれず、つれない人ばかりか寝室の隙間さえもがつれなく思われることです。
〈試訳〉一晩中、つれないあなたのことを思って、この頃はなかなか眠れない。早く朝になってほしいのに、なかなか夜は明けてくれない。明るくならないので、寝室の戸の隙間さえもつれなく思えてくることだ。
※仮名文字
【物】【思】【閨】【隙】の漢字に注意。
「春」「弖」「那」「利」の仮名に注意。

【八六】
〈原文〉【歎】けとて 【月】や八ものを 【思】八須るかこち【顔】な流 王可な三多可那
〈底本の訳〉嘆けといって月が私に物思いをさせるのでしょうか、いやそうではありません。それなのにそれを月のせいにして、恨めしくもこぼれ落ちる私の涙ですよ。
〈試訳〉嘆けといって、月が私に物思いをさせるのだろうか、いやそうではない。そうではないのに、月のせいにして、私の涙は零れ落ちる。
・下の句の訳し方
→音で聞いた時のわかりやすさを考慮して、簡潔に訳した。
※仮名文字
【歎】【顔】の漢字に注意。
「王」「那」の仮名に注意。

【八七】
〈原文〉【村雨】の 【露】もま多ひぬ 【槙】の者尓【霧】多ち能本累 あ幾能ゆふ【暮】
〈底本の訳〉村雨がひとしきり降った後、その露もまだ乾かない槇の葉に、霧が白く立ちのぼっている秋の夕暮れであることよ。
〈試訳〉村雨が降った後、槙の葉に置く露。その露がまだ乾かないうちに、霧が白く立ちのぼってくる、秋の夕暮れ。
※仮名文字
【雨】【露】【暮】の漢字に注意。
「ま」「幾」の仮名に注意。

【八八】
〈原文〉【難波江】能 あしの可りね乃 【一夜】ゆへ【身】越つ具してや こひ【渡】るへき
〈底本の訳〉難波江の葦の刈り根の一節のように短い一夜の仮寝のために、身を捧げてあなたを恋い続けるのでしょうか。
〈試訳〉澪標で有名な難波江にある葦の、刈り取った根の一節のように、短い一夜の仮寝のために、この身を尽くしてあなたを恋い続けるのだろうか。
※仮名文字
【難波江】【身】【渡】の漢字に注意。
「可り」「具」の仮名に注意。
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 『百人一首』を通してバラエティに富んだ変体仮名に親しむため、昨秋から尾形光琳のカルタも参考資料として提示しています。今日は、64番歌から81番歌までを見ました。

 なお、地名に関する凡例を新たに定めました。
 現今の漢字表記と同じ文字が書かれていたら、それは【 】で括って表記する、ということにしたのです。これまでは不統一だったので、これから溯って補正していきます。
 以下にあげる今日の成果では、この地名の処置をしています。
 例えば、次の例がそれです。
  ・う【治】
  ・あ者【路】し満
  ・【須】満 

 また「愛」が「あ」の変体仮名として出てきました。鎌倉時代の物語ではめったに出会えないものなので、ここに例示します。

六四 権中納言定頼 「愛しろ【木】」(あじろぎ)


250216_愛しろ木.jpg

 以下、光琳カルタの64〜81番歌の[変体仮名翻字版]をあげます。

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■光琳かるた[変体仮名翻字版-2023] 六四〜九〇番歌
(『別冊太陽愛蔵版「百人一首」』、平凡社、一九七四年十一月九日発行 より)

六四 権中納言定頼
あさ本ら希 う治の【川霧(雰)】 多え/\尓
阿ら者連わ多る 【瀬】ゝの愛しろ【木】

六五 相模
うらみ【侘】 ほさぬ【袖】堂に 【有】毛のを
こひ耳くちなむ 【名】こ楚おしけ連

六六 大僧正行尊
もろと毛に 【哀】登【思】へ 屋満さく良
者なよ里ほ可尓 志類【人】母なし

六七 周防内侍
【春】のよ能 【夢】者可りな留 【手枕】耳
かひな具堂ゝ無 【名】こ所於し介れ

六八 三条院
こゝろ尓も あら弖う此よ尓 な可らへは (陽明本は「う支よ」)
【恋】し可類遍き よ者乃【月】可那

六九 能因法師
あらし布具 【三】むろの【山】乃 もみち者ゝ
堂徒多の【川】濃 尓し支【成】け里

七〇 良暹法師
佐ひしさ尓 【宿】を【立出】て な可む連八
い徒具も【同】し 【秋】の【夕暮】

七一 大納言経信
【夕】さ礼盤 【門田】乃いな【葉】 【音】つ連て
あし乃まろ【屋】に 【秋】可勢そ【吹】

七二 祐子内親王家紀伊
をと尓き具 堂可しの者満乃 あ多【波】八
かけしや【袖】の ぬ連もこ楚すれ

七三 権中納言匡房
堂可【砂】の 【尾上】のさくら 佐支にけり
とや満の可すみ 多ゝすも阿ら【南】

七四 源俊頼朝臣
う可里ける 【人】を者つせの 【山】おろしよ (陽明本は「おろし」)
は遣し可れとは いのらぬも能を

七五 藤原基俊
地支里【置】し させも可徒ゆを 【命】尓て
あ者れことしの 【秋】毛意ぬめ里

七六 法性寺入道前関白太政大臣
わ多の者ら 【漕】【出】弖三れ盤 【久】可多の
くも井尓満可ふ 【奥】徒しらなみ

七七 崇徳院
【瀬】を者やみ い者尓せ可留ゝ 【瀧川】の
わ連てもす衛耳 あ者むと曽【思】
七八 源兼昌
あ者路し満 可よふ【千鳥】の なく【声】に
いくよねさ免ぬ 須満の【関守】

七九 左京大夫顕輔
【秋】可せ耳 【棚引】くもの 【絶間】より
も連【出】類【月】の 可け能さや気散

八〇 待賢門院堀河
な可ゝらむ 【心】もしら春 くろ可みの
見堂れ帝けさは ものをこ楚【思】へ

八一 後徳大寺左大臣
ほとゝ支数 【鳴】つる【方】を な可む連八
多ゝ【有】あけの 【月】楚のこ連累
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 今回は、息子が生成AIの仕事で繁忙を極める時期だとのことで、講座が終わるとそのまま京都に向かいました。
 私が講座を担当している間、いつものように妻は銀座探訪です。東京駅で待ち合わせると、何と今日一日で24,000歩も歩いたようです。楽しくて、つい、と言っていました。それにしても2日分も歩いたのですから、足が重たいとのことです。リバティプリントの布が大好きなので、端切れを見て歩いていたそうです。いつものように日暮里へ行くこともなく、銀座だけでたっぷりと時間を使ったのです。まさに、勝手知ったる銀座となっているようです。ご満悦でした。




posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ■講座学習

2025年02月08日

中之島での『百人一首』(第10回)と『源氏物語 蜻蛉』(第21回)の講座

 淀屋橋北詰から中之島図書館の間の散策路を「みおつくしプロムナード」といいます。大阪市役所の南側に沿う、土佐堀川沿いの道です。いつもきれいに整備されています。今日も、冬から春へと移り行く草花が、植え込みに盛られていました。

250208_川沿いの花.jpg


 現在、大阪府立中之島図書館では、中之島図書館120周年 新館完成記念特別展として、「貴重書のみどころ」を本館3階展示室で開催中です。期間は、本日、令和7年2月8日(土曜日)から2月22日(土曜日)までで、入場無料です。
 詳細は、「https://www.library.pref.osaka.jp/93787」をご覧ください。

 展示されていた資料の内、私は定家の『明月記』〔断簡〕に目が止まりました。展示担当の方が撮影しても構わないし、ブログに掲載しても大丈夫だとのことだったので、宣伝を兼ねて紹介します。

250208_中之島『明月記』断簡.jpg

 添えてあった説明文を引きます。

明月記(断簡) 1軸
  藤原定家 (1162-1241) 自筆   川田文庫 170
『明月記』は藤原定家の10代の頃から約60年にわたり書かれた日記で、その多くは京都の冷泉家に保管されている。この断簡(古筆切)は、年中行事の「射場始」(天皇が弓場殿で、公卿などの弓の競技を見る儀式。通例、10月5日に行われたが、11月・12月の場合もある)を記述した記事の一部。年月日が明らかでないが、記載の人名等から建久4年か5年(1193か1194)の10~12月頃のものと考えられる。
『新古今和歌集』などでのちに和歌の神様のような存在となった定家は、その個性的な筆跡も「定家様」と呼ばれ、愛された。
 本断簡は、歌人・川田順の旧蔵資料で当館に寄贈された「川田文庫」の中の一つ。

 この資料は、図書館のホームページの中の「おおさかeコレクション」(https://da.library.pref.osaka.jp/content/detail/01-0028003)で、鮮明な画像が見られます。

 この展示室の隣の部屋が、私が担当している講座の会場である多目的室2です。今日も、この部屋で、『百人一首』と『源氏物語』の講座がありました。

 まずは『百人一首』から。
 今日は、陽明文庫旧蔵カルタの、76番歌から88番歌までの確認をしました。以下の通りです。


■吉村仁志『百人一首』七六〜八八・試訳 (付・仮名文字に関するメモ:伊藤鉃也)
・吉海直人『百人一首で読み解く平安時代』(角川学芸出版、二〇一二年)の訳(以下、底本の訳)を参考にした。
・高校生を意識して、また耳で聞くだけでもわかりやすく、イメージしやすい訳を心がけた。

【七六】
〈原文〉【和田】の【原】 こ幾【出】弖三れ者 【久方】能【雲井】耳満可ふ おきつしら【波】
〈底本の訳〉大海原に漕ぎ出して見渡すと、はるか向こうに雲かと見間違うばかりに沖の白波が立っています。
〈試訳〉大海原に漕ぎ出して見渡すと、はるか向こうに見えるのは、雲と見間違えそうになるほど白い波。
・下の句の訳し方
→音で聞いた時に順番に情景がイメージできるように、「はるか向こうに見えるのは」と訳した。
※仮名文字
【原】【方】【井】【波】の漢字に注意。
「幾」「弖」「つ」の仮名に注意。

【七七】
〈原文〉【瀬】を者や三 【岩】耳世可るゝ 多き【川】の王礼弖も春ゑ尓 あ八んとそおもふ
〈底本の訳〉川の流れが速いので、岩にせき止められる急流が二つに分かれてもいずれはひとつになるように、今は引き離されて逢えなくても、後にまた逢おうと思っています。
〈試訳〉川の流れが速いので、岩にせき止められた急流は、二つに分かれてもいずれ一つに戻る。それと同じように、今はあなたと一度引き離されてしまっても、いずれまた逢おう、と思っている。
・序詞の訳し方
→川の情景と自分の思いを重ねているのを表現するにあたって、原文と同じ順序で訳すと煩雑になってしまうので、比喩の方を先に訳した後、一度文を切って改めて心情を訳した。
※仮名文字
【瀬】【岩】の漢字に注意。
「世」「王」「礼」「弖」「そ」の仮名に注意。

【七八】
〈原文〉あ八ち【島】 かよふ【千鳥】の 【鳴】こゑ耳【幾夜】祢さ免努 須万能せ幾毛里
〈底本の訳〉淡路島から須磨に渡ってくる千鳥のもの悲しい鳴き声に、幾晩目を覚ましたことでしょうか、須磨の関守は。
〈試訳〉淡路島から渡ってくる千鳥の、もの悲しい鳴き声に、幾晩目を覚ましたことだろうか、須磨の関守は。
・上の句の訳し方
→音で聞いた時にわかりやすくするため、底本にある「須磨に」を省略し、「千鳥の」の後に読点を置いた。
※仮名文字
【島】【鳥】【鳴】の漢字に注意。
「こ」「努」「幾」の仮名に注意。

【七九】
〈原文〉【秋風】耳 【棚引】【雲】の 多え万よ里毛礼いつ類【月】能 可け乃さや希佐
〈底本の訳〉秋風にたなびいている雲のとぎれから漏れる月光の、なんと澄みきっていることでしょう。
〈試訳〉秋風にたなびいている雲の、切れ間から漏れてくる、月の光の清らかさ。
・結句の訳し方
→この歌の中心である月光の清らかさを強調するために、あえて体言止めで訳した。
※仮名文字
【棚】【雲】の漢字に注意。
「え」「礼」「類」「希」「佐」の仮名に注意。

【八○】
〈原文〉【長】可らん 【心】もしら須 くろ【髮】能み多連弖【今朝】八 ものをこそ【思】へ
〈底本の訳〉末長く変わらないあなたのお心かもしれませんが、今朝の私の心はこの黒髪と同じように乱れてもの思いに沈んでいます。
〈試訳〉末長く変わらないというあなたの心も、どうなってしまうかはわからない。私はこの乱れた黒髪と同じように、今朝は乱れた心で物思いをしているけれど。
・上の句の訳し方
→二句目までは相手の心、三句目以降は自分の心情について詠んでいるので、途中で文を一度切った。
・下の句の訳し方
→二句目までの相手の心と対比する形で、自分の心情を逆説を用いて訳した。
※仮名文字
【心】【髪】【今朝】【思】の漢字に注意。
「須」「連」「弖」の仮名に注意。

【八一】
〈原文〉本とゝ支須 【鳴】つる【方】越 【眺】無れ者【唯】【有明】能 【月】楚のこ連類
〈底本の訳〉時鳥が鳴いた方を見ると、時鳥の姿は見えずただ有明の月が見えていることです。
〈試訳〉時鳥の鳴き声。聞こえた方を見てみると、既に時鳥の姿はない。ただ有明の月だけが残っている。
・上の句の訳し方
→下の句で詠まれる「残っている月」と対比して、残っていない時鳥を表現するため、鳴き声が聞こえる→そちらを見る→姿が見えないという短い時間の流れを表現するために、それぞれを一つずつ順番に訳した。
※仮名文字
【方】【眺】【唯】の漢字に注意。
「本」「支」「楚」「類」の仮名に注意。

【八二】
〈原文〉【思】日王ひ さてもいのち八 【有】ものをう幾耳【堪】ぬ八 な三多【成】希李
〈底本の訳〉つれない人のことを思い悩んで、この身は絶え果ててしまうかと思いましたが、それでも命だけはなんとかつないでいるのに、そのつらさにたえられないのは涙で、とめどなくこぼれ落ちています。
〈試訳〉つれない人のことをどれほど思い悩んでも、命はこの身に宿ったままなくならない。だが、涙はつらさに耐えられず、この身からどんどんこぼれ落ちていく。
・上の句の訳し方
→「命」と「涙」が対比されているため、つらさに耐えかねてどんどん身からこぼれ落ちる涙と、つらくとも自身を離れない命というイメージであると考え、「命はこの身に宿ったままなくならないけれど」と訳した。
※仮名文字
【思】【有】【堪】の漢字に注意。
「日」「幾」「多」「李」の仮名に注意。

【八三】
〈原文〉【世中】よ 【道】こそな遣連 おもひ【入】【山】能於く耳毛 【鹿】楚【鳴】な流
〈底本の訳〉世の中というのは逃れる道はないのですね。深く分け入った山の奥でも憂きことがあるらしく、鹿がもの悲しく鳴いているようです。
〈試訳〉世の中というのは、苦しみから逃れる道がないのだなあ。俗世を離れるために入った山の奥でも、鹿がもの悲しく鳴いているようだ。
・「思い入る」の訳し方
→悲しみという煩悩から解放されるために入った山奥で、鹿の鳴き声を聞いてここにも悲しみがあることを知り、逃れる道がないことを諦めている、という歌なので、「俗世を離れるために入った」と訳した。
※仮名文字
【道】【鹿】の漢字に注意。
「遣」「楚」「流」の仮名に注意。

【八四】
〈原文〉な可らへ八 ま多この【比】や 【忍】者れん宇しと【見】しよ楚 い万盤古ひしき
〈底本の訳〉この世に長らえたら、つらい今のことがなつかしく思い出されることでしょう。つらかった昔が今では恋しく思われることからして。
〈試訳〉この世に長く生きていたら、いつか今のつらい日々のことも懐かしく思い出されるようになるのだろうか。つらかった昔のことも、今では恋しく思われるのだから。
・上の句の訳し方
→二句目の「や」を疑問の意に取って訳出することで、今のつらさを強調した。
※仮名文字
【比】【忍】の漢字に注意。
「多」「宇」「盤」「古」の仮名に注意。

【八五】
〈原文〉よも春可ら 【物】【思】ふころ八 【明】やら弖【閨】能【隙】さへ つ連那可里遣利
〈底本の訳〉夜通しつれないあなたのために物思いしているこのごろは、早く白んでくれればよいと思いますが、なかなか夜は明けてくれず、つれない人ばかりか寝室の隙間さえもがつれなく思われることです。
〈試訳〉一晩中、つれないあなたのことを思って、この頃はなかなか眠れない。早く朝になってほしいのに、なかなか夜は明けてくれない。明るくならないので、寝室の戸の隙間さえもつれなく思えてくることだ。
※仮名文字
【物】【思】【閨】【隙】の漢字に注意。
「春」「弖」「那」「利」の仮名に注意。

【八六】
〈原文〉【歎】けとて 【月】や八ものを 【思】八須るかこち【顔】な流 王可な三多可那
〈底本の訳〉嘆けといって月が私に物思いをさせるのでしょうか、いやそうではありません。それなのにそれを月のせいにして、恨めしくもこぼれ落ちる私の涙ですよ。
〈試訳〉嘆けといって、月が私に物思いをさせるのだろうか、いやそうではない。そうではないのに、月のせいにして、私の涙は零れ落ちる。
・下の句の訳し方
→音で聞いた時のわかりやすさを考慮して、簡潔に訳した。
※仮名文字
【歎】【顔】の漢字に注意。
「王」「那」の仮名に注意。

【八七】
〈原文〉【村雨】の 【露】もま多ひぬ 【槙】の者尓【霧】多ち能本累 あ幾能ゆふ【暮】
〈底本の訳〉村雨がひとしきり降った後、その露もまだ乾かない槇の葉に、霧が白く立ちのぼっている秋の夕暮れであることよ。
〈試訳〉村雨が降った後、槙の葉に置く露。その露がまだ乾かないうちに、霧が白く立ちのぼってくる、秋の夕暮れ。
※仮名文字
【雨】【露】【暮】の漢字に注意。
「ま」「幾」の仮名に注意。

【八八】
〈原文〉【難波江】能 あしの可りね乃 【一夜】ゆへ【身】越つ具してや こひ【渡】るへき
〈底本の訳〉難波江の葦の刈り根の一節のように短い一夜の仮寝のために、身を捧げてあなたを恋い続けるのでしょうか。
〈試訳〉澪標で有名な難波江にある葦の、刈り取った根の一節のように、短い一夜の仮寝のために、この身を尽くしてあなたを恋い続けるのだろうか。
※仮名文字
【難波江】【身】【渡】の漢字に注意。
「可り」「具」の仮名に注意。


 続いて、絵姿も文字も趣がまったく違う光琳カルタの確認もしました。28番歌から54番歌までです。これも、以下に引きます。


■光琳かるた[変体仮名翻字版-2023] 二八〜六三番歌
(『別冊太陽愛蔵版「百人一首」』、平凡社、一九七四年十一月九日発行 より)
二八 源宗于朝臣
【山里】は 【冬】そ【寂】しさ 満さ里ける
【人】めも【草】毛 か連ぬと【思】へ者

二九 凡河内躬恒
【心】あ弖尓 おら者や【折】ん 【初】しもの
【置】まと者世類 志ら【菊】の【花】

三〇 壬生忠岑
【有明】の つ連なくみえし わ可連よ里
  あ可つき者可り う起もの盤なし

三一 坂上是則
【朝】本らけ 【有明】の【月】と 三る万弖に
よしのゝ【里】耳 ふ連類【白雪】

三二 春道列樹
【山川】尓 可せの可け多る 志可らみ盤
な可れもあへぬ 毛三ちな里けり

三三 紀友則
【久方】の 日可り能とけき はる乃【日】耳
志徒【心】なく 者那のちるらむ

三四 藤原興風
【誰】を可も 志る【人】にせん 【高砂】の
満川もむ可しの 【友】ならな具尓

三五 紀貫之
【人】盤いさ 【心】も志らす 布る【郷】盤
【花】楚む可しの 【香】尓ゝほ日ける

三六 清原深養父
【夏】のよ盤 万多【宵】な可ら あけぬるを
くものい徒こ尓 【月】や登るらん

三七 文屋朝康
志ら徒ゆ耳 可せの【吹】し具 【秋】能ゝは
つらぬ起とめ怒 【玉】楚ち里ける

三八 右近
わすら留ゝ 【身】を盤おも者寸 ち可日てし
【人】乃いのち濃 おしくも【有】可那

三九 参議等
あさちふの を能ゝし濃【原】 志のふ連と
阿万里てなと可 【人】の【恋】しき

四〇 平兼盛
志のふ礼と 【色】尓【出】にけり わ可こひ八
ものやお毛婦と 【人】乃登ふ万弖

四一 壬生忠見
【恋】すて婦 わ可【名】盤万多き 【立】尓けり
日とし連すこ楚 於毛ひ所めし閑

四二 清原元輔
ちき里支な 可多み尓そてを し本里徒ゝ
すゑの万川【山】 【波】こさしとは

四三 権中納言敦忠
あ日三弖の 【後】乃【心】尓 くらふ連は
む可し盤ものを 【思】者さ里けり

四四 中納言朝忠
【逢】【事】の 多えてしなく八 【中】/\に
【人】をも【身】乎毛 うらみさら満し

四五 謙徳公
あ者連とも 意婦へき【人】八 おも本えて
【身】のい多つらに な里ぬへ支可な

四六 曽祢好忠
ゆらの【戸】を わ多る【舟人】 可ち越多え
【行衛】も志らぬ 【恋】の【道】可な


四七 恵慶法師
【八重葎】 志希連るやとの さひし支尓
【人】こ楚みえね 【秋】盤き尓ける (陽明本は「遣礼」)

四八 源重之
【風】をい多み 【岩】うつ【波】の 【己】乃三
く多け弖ものを 【思】ふころ【哉】

四九 大中臣能宣朝臣
み可き【守】 【衛士】の堂く【火】能 よる盤もえて
日るは【消】徒ゝ 【物】をこ楚【思】へ

五〇 藤原義孝
きみ可【為】 おし可らさりし いのちさへ
な可くも可那と お毛日ける【哉】

五一 藤原実方朝臣
かくと多尓 衣や盤いふきの さしもくさ
佐しも志らしな 毛ゆる【思】日を

五二 藤原道信朝臣
【明】ぬ連盤 くるゝものと八 【知】な可ら
な越うら免しき 阿さほら希可な

五三 右大将道綱母
な希支川ゝ 【独】ぬるよの あく類【間】盤
 い可耳【久】しき ものと可はし留

五四 儀同三司母
【忘】連しの ゆく【末】まて八 か多け連と  (陽明本は「遣連者」)
気ふをか支里乃 い能ちとも可な



 30分の間をおいて、次はハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』の書写本文を、[変体仮名翻字版]にしたプリントを見ながら確認をしました。

 今日、詳細に文字を見比べて説明したのは、以下の3例です。

(1)9丁表9行目 「个」と「介」を見分ける
 これは、下に伸びる線が一旦右に折曲がる形の場合は「介」、下に伸びる線が真っ直ぐに次の文字に続く場合は「个」とする、という私見に基づく読み分けです。次の写真を見ていただければ、その微妙な線の流れがわかると思います。「个」めったに見かけないので、ここでの例は貴重です。

250207_蜻蛉49oL9个介.jpg


(2)50丁表2行目「より八と」の「よ」
 この巻では、「より」という文字の多くが、特に「よ」の字形が傾いています。その中でも、この例は極端に寝た姿となっているので、取り上げて確認しました。

250207_蜻蛉50oL2より.jpg

(3)50丁表10行目「女宮」の「女」をミセケチにして「ひめ」を傍記する
 「女」という文字の右にある縦長の傍線の意味することが、私にはわかりません。その「女」の右上にある短い傍線や少し長めの斜めの線を、私はミセケチ記号だと判断しました。ただし、「ひめ」という文字の字形や墨の色から見て、本行が書写された時から相当後の別人による校合の跡だと思われます。

250207_蜻蛉50oL10女宮.jpg


 なお、こうした3例は、今後の生成AIを活用して古写本を[変体仮名翻字版]で翻字できるようにするために、サーバーに送るデータとしてプールしておくものです。その準備をしているところです。

 生成AIは、中国の「ディープシーク」の参入でおもしろくなりました。オープンAI社の ChatGPT と違い、まったく違う手法で開発されたとされているからです。いろいろと問題はあるものの、この中国の生成AIが、日本版の生成AIの開発に勢いをつけようとしています。日本人が得意技とする手法で開発できる可能性が生まれたからです。
 ということは、人工知能が日本版として身近になる日が近いとすると、古写本の研究に役立つ研究手法や、基礎データを作り上げながら、新しい生成AIの活用の道を探りだす好機が到来したことになります。
 文学研究と称する読書感想文は、もう生成AIが書く時代になっています。資料さえ揃えれば、勝手にまとめてくれるのですから。人間は、それを推敲し、校正することで、論文らしきものに仕上げていくことになりました。
 となると、人間にしか出来ないこととしては、まずは基礎データの作成です。いま進めている「変体仮名翻字版」のデータの公開によって、このデータを活用した生成AIを共同研究者とする研究成果というものは、量産態勢に入ることでしょう。本格的に考えなければならない課題だといえましょう。そして、これは確認や検証ができるので、思いつきが説得力をもってきます。
 その意味からも、これからの文学研究は、原本を扱うことの重要性が再認識される時代になっていくはずです。私が、東京、京都、大阪の源氏講座で、『源氏物語』の鎌倉時代の古写本を[変体仮名翻字版]でデータベースを作成している仕事は、新たに生きる世界が見つかった、といえます。
 このことは、また詳細に実例を踏まえて書くつもりです。

 以下、本日のハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』の書写本文で、第48丁表〜50丁裏の箇所を[変体仮名翻字版]で確定したものを、まとめて公開します。


■ハーバード大学本「蜻蛉」[変体仮名翻字版-2023]第48丁表〜50丁裏

※翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)

--------------------------------------
そ免多る・うすものゝ/(うすものの)・ひとへ越・こ万や可なる・
な越し尓・き・多万へる・いと・この万しけなり・
【女】乃・【御身】なりの・めて多かりしにも・於とら春・
しろく・きよら尓て・な越・阿りしより八・於毛
やせ・【給】へる・いと・三る・かひ・阿りて・於ほえ・【給】へり
と・三る尓も・万川・こひしき・【事】・いと・あるも
しき/も$万、(ある万しき)・【事】と・し川むるそ・多ゝなりしよりは/(多多なりしよりは)・
くるしき・於もひを/於もひ$、ひ+ゑ、(ゑを)・いと・於ほく・も多せて・ま
いり・【給】へり介る・【女房】して・あな多に・万いらせ・【給】て・
王れも・王多らせ・【給】ぬ・【大将】も・ち可く・万いりより/(48オ)
--------------------------------------
【給】て・【御】者可う乃・多うとく・【侍】りし・【事】・い尓
しへの・【御】ことなとすこし・きこえ川ゝ/(きこえ川川)・能こ
里多る・ゑとも・三・多まふ・川い弖尓・かの・さと
に・ものし・たまふ・三古の・くもの・うへ・八なれ弖・
【思】ひくし・【給】へるこそ・いと越しう・三・多万うれ・
ひめ三やの・【御】可多より・【御】せうそこも・【侍】らぬを・
かく・しな・さ多万りたる尓/て&た、(さ多万りてる尓)・於も本しすてさせ・
【給】へる・やう尓・【思】日て・【心】ゆ可ぬ・介しきの三・【侍】るを・
かうやうの・【物】・とき/\/(ときとき)・【物】せさせ・【給】八んなん・なにか
し可・於ろして・毛て万からん・八多三る・かひも【侍】らしかしと/【侍】〈次頁〉、(48ウ)
--------------------------------------
きこえ・【給】へ八・あやしう・なとて
可・すて・きこえ・【給】八ん・うち尓て八ち可ゝりしに
川介て/(八ち可可りしに)・とき/\/(ときとき)・きこえ・【給】めりし越・ところ/\二/二〈行末右〉・
なり・【給】し・於り尓・と多へそめ【給】へる尓こそ・
いま・そゝ能可し/(そそ能可し)・きこえん・所れよりも・なと可八と/八と〈行末左〉・
きこえ【給】・かれより八・い可て可八・もとより・可す万
へさせ・【給】八さらん越・かう・したしうて・佐ふら
婦へき・ゆ可里尓・よせて・於ほし可す万へさせ・【給】
者んこそ・うれしく八・【侍】るへれ・万して・さも・
きこえなれ・【給】日尓んを・いま・すてさせ(49オ)
--------------------------------------
【給】八ん者・からき・こと尓・【侍】りと・介いし・【給】越・
須き者みたる・介しき・阿りと者・於ほしかけ
さり介り・[25]たちいてゝ/(たちいてて)・ひとよの・【心】さしの・【人】尓も・
あ者む・あ里し・王多【殿】も・なくさめ尓・三ん
かしと・於ほして・【御】万へを・あゆ三わ多りて・にし
さ万尓・於者須る越/せし&須る、(於者せし越)・三すの・うちの・【人】八・【心】ことに・
よう井・す・け尓・いと・さ万・よく・かきり・なき・もて
なし尓て・王た【殿】ゝ/(王た【殿】の)・可多は・うちの於ほ【殿】ゝ/(うちの於ほ【殿】の)・
き三多ちなと・ゐ弖・もの・いふ・介者い・すれ八・川万との・
万へ二・ゐ・【給】て・於ほ可多に八・万いりな可ら・この・【御】可多能けんさん尓/け〈次頁〉、(49ウ)
--------------------------------------
いる・ことの・【侍】らね八・いと於ほえなく・
於きなひ八て尓多る・【心地】・し・【侍】る越・いまより八と・
於もひ於こし【侍】りてなん・阿り川可春と・王可き・
【人】/\そ/(【人人】そ)・於も者んかしと・をいの・き三多ちの・【方】
を・三やり・【給】・いまより・なら者せ・【給】八んこそ・け尓・王
可く・ならせ・【給】なら免なと・者可なき・ことを・いふ・
【人】/\の/(【人人】の)・介者いも・あやしう・三やひ可尓・を可し
き・【御】可多の・阿りさまにそ・ある・その・ことゝ/(ことと)・な介
れと・よの【中】能・もの可多りなと・し川ゝ/(し川川)・し免
や可にれいより八・ゐ・【給】へり・【女宮】八/【女】〈【女】ノ右ニ傍線〉$ひめ、(ひめ【宮】)・あな多に・わ多らせ/ら〈次頁〉、(50オ)
--------------------------------------
【給】尓介り・【大宮】・【大将】の・そな多に・万いり
川累八と・ゝひ/(とひ)・【給】ふ・【御】とも尓・万いり川る・於ほさ
いしやうのき三/於ほさいしやう$【大納言】、き三$、(【大納言】の)・【小宰相君】尓/=こ、(こ【小宰相君】尓)・もの・ゝ【給】八んとにこそ/(の【給】八んとにこそ)・
八へ免りつれと・きこゆれ八・万め【人】の・さ春可尓・
【人】尓・【心】とゝめて/こゝら&【心】とゝ、(ここらめて)、(【心】ととめて)・もの可多りするこそ・【心】ち・をく
れ多らん・【人】八・くるし介れ・【心】の・本とん・三ゆらん
かし/らん&らん・こ【宰相】なと八・いと・【心】や春しと・の多万ひて・
【御】者らからなれと・この・き三越八・なを・八川
可しう・【人】も・よう井・なくて・みえさらなんと・於ほ
い多り・【人】より八・【心】よせ・【給】て・つ本ねなとに/つ&つ・多ちよ里/里〈次頁〉、(50ウ)
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2025年01月25日

キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第26回)

 キャンパスプラザ京都のホールには、いつものように本日の源氏講座の案内が表示されていました。

250125_NPO.jpg

 まず、『NHK2024年大河ドラマ 光る君へ ART BOOK』(東京ニュース通信社、2024年11月29日)の本を回覧し、ドラマの舞台裏にまつわる写真と記事が、平安文学の研究に有益であることをお話しました。ただし、『源氏物語』の物語本文について「物語の進行に合わせて該当の話が正確に書かれている。」という説明文には大いに疑問が残ることを、日比谷図書文化館での説明と同じように、問題点として指摘しました。

 本題となる尾州家河内本「桐壺」については、最初に凡例の確認をしました。尾州家河内本には、膨大な朱点があり、その読み取りに関して正式な翻字方針を確認しておくためです。

■翻字に関する佐藤さんからのメモの整理 (要・第1回と第5回の〈朱点〉の再点検)
〈朱点〉を使って、原文をいかに正確に読み取るかという工夫が、尾州家河内本などでは随所に見受けられる。
 ※本行の文字間に打たれた読点としての朱点は、補入記号のない補入として、[/±〈朱点〉)]を原則とする。
 ただし、朱点が削除されいてる場合は[±〈朱点削〉]又は[±〈朱点削?〉]とする。
 朱点が文字の左右に打たれている場合は[/■±〈朱点右〉]又は[/■±〈朱点左〉]とする。特に朱点が右上に打たれている場合は、文章の切れ目を示す句点の意味を持っている。
 濁点やミセケチなどで朱点が2個あれば、[■$〈朱2〉]とする。なお、ミセケチはおおむね左上に打たれる傾向がある。

 今日の[変体仮名翻字版]の確認をしていく中で、問題として時間をかけたことを3例あげます。

(A)「【御】可多身」か「【御】可多【身】」か
  11丁表8行目に、次のような例があります。

250124_尾州桐壺11oL8身.jpg


 この翻字をどうするか、ということで話し合いをしました。
 私は、最初は「【御】可多身」として、「身」を変体仮名としました。しかし、いろいろと話をしていく内に、「身」は漢字の「【身】」とした方がいいのではないかと思い、「【御】可多【身】」と翻字することにしました。
 辞書などを見ると、すべてが「形見」と表記するので、漢字の「身」の意味はないとしているようです。しかし、平安時代には「形身」の意味でも使われていたかも知れない、ということで、今は一応漢字の「身」として扱おう、ということになったのです。ここで漢字として扱っておいた方が、後で漢字として認定するよりもデータを管理する上では楽なのです。一括で【 】を外す方が、再確認して【 】を付ける作業よりも楽だからです。

(B)濁点を翻字する方法
 12丁表6行目に、次のような「まくらこと尓」という例があります。

250125_尾州桐壺12oL6ご.jpg


 これを[変体仮名翻字版]で翻字すると、次の表記となります。

まくらこと尓/±〈朱点〉、まくらこと=〈朱点左〉、こ〈朱点左2〉

 ここでは、凡例に定めた記号を用いて、本文と朱点の状況がわかるようになっています。

(1)「ま」の上に読点としての〈朱点〉がある。(/±〈朱点〉)
(2)続く「まくらこと」の左側に〈朱点〉がある。(=〈朱点左〉)
(3)「こ」の左側に〈朱点〉が2つある(こ〈朱点左2〉、ただし1つは(2)の〈朱点〉)。
(4)「尓」の下には読点の〈朱点〉がある。

 この「こ」に2つの〈朱点〉があるのは、ここは「枕言(まくらごと)」という言葉なので、これを「ご」と読ませたいからのようです。ただし、「まくらことに」の文字の左側に〈朱点〉がある理由は、他の用例と共に今後とも確認していくものとなります。

(C)書き間違った文字を削除してなぞり書きによって訂正している箇所
 12丁裏5行目では、まず「於ほしつゝ」と書写し、「つゝ」が間違いだったことに気付いたためにその2文字を削り、その上から「ゝ徒」とナゾリ書きしている例です。

250125_尾州桐壺12uL5つゝ.jpg

 この場合は、[変体仮名翻字版]では次のように表記します。

於ほしゝ徒むれと/±〈朱点〉、つゝ〈削〉ゝ徒=△△〈削〉、(於ほしつゝむれと、おほしし徒むれと)

 今日は、いろいろと書写上の問題点の整理で時間をとったので、11丁表から12丁裏までの4ページ分しか進めませんでした。
 以下に、本日確認した[変体仮名翻字版]での翻字を引きます。

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「すゝむし乃/(すすむし乃)・こゑ乃・可起里を・つくしても・
な可き・よ・阿可春・ふる・なみ多可な」・江毛/±〈朱点右〉・乃里
やら寸・
「いとゝしく/(いととしく)・むしの・ね・新遣き・あさちふ尓・
つ遊・をきそふる・くも乃うへ【人】」・可ことも/±〈朱点右〉・きこ
江つ遍くなんと・い者勢/±〈朱点〉・たまふ・於可しき/±〈朱点右〉・さま
那る・をくり【物】なと/±〈朱点〉・あるへき/±〈朱点〉・於り尓も・あらね八・
堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・か乃/±〈朱点〉・【御】可多【身】とて・ナシ・ナシ・可ゝ類/±〈朱点〉、(可可類)・ようもやと/±〈朱点〉・乃こ
しをき/±〈朱点〉・多まへり遣る【御】さうそくひとく多
里/【御】±〈朱点〉、ひ±〈朱点〉・【御】くしあ遣の/±〈朱点〉・てうとめく・【物】・そへ/±〈朱点〉・堂まふ・
王可き/±〈朱点右〉・【人】ゝ/(【人人】)・可なしき/±〈朱点〉・【事】八・さら尓も/±〈朱点〉・い者す・【内】わ多りを/±〈朱点〉、わ〈次頁〉、(11オ)
--------------------------------------
あさゆふ尓/±〈朱点〉・ならひて・いと/±〈朱点〉・さう/\しう/±〈朱点〉、(さうさうしう)・
うへ乃/±〈朱点〉・【御】ありさま那と・於もひいて/±〈朱点〉・起こゆれ八・
とく/±〈朱点〉・まいり/±〈朱点〉・堂ま八ん・【事】を・そゝの可し/±〈朱点〉、(そその可し)・きこ
ゆ礼と・かく/±〈朱点〉・いま/\しき/±〈朱点〉、(いまいましき)・【身】乃/±〈朱点〉・そひ・多てまつらん
も・ナシ・【人】ゝきゝ/±〈朱点〉、前ゝ$〈墨朱〉・う可るへし・【又】/±〈朱点〉・【見】/△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・多てまつらて・志八し
毛/±〈朱点〉・あらん八・いと/±〈朱点〉・う志ろめたく・於もひきこ江/±〈朱点〉・【給】
て・す可/\とも/±〈朱点〉、(す可す可とも)・江/±〈朱点〉・まいら勢多てまつり・多ま八ぬな
り遣里/な±〈朱点〉・【命婦】八/±〈朱点右〉・まいりて/±〈朱点〉・また/±〈朱点〉・於本と乃ゝこも
ら寸/ゝ$〈墨朱?〉・まち/±〈朱点〉・於八しましけるを・いと/±〈朱点〉・あ八れ尓・【見】/±〈朱点〉、△〈削〉【見】・多
て万川る・於万へ乃/±〈朱点右〉・徒本世んさい乃・ナシ・於もしろき・
さ可りなるを/±〈朱点〉・【御覧】する/±〈朱点〉・やう尓弖・新のひや可耳/±〈朱点〉、や〈次頁〉、(11ウ)
--------------------------------------
【心】尓くき/±〈朱点〉・可き里能・【女房】・【四】/±〈朱点〉・【五人】・さぶら八世/±〈朱点〉・
【給】て・【御物】可多り/±〈朱点〉・せ佐世/±〈朱点〉・【給】なり遣り・古乃ころ/±〈朱点右〉・
あ遣く礼/±〈朱点〉・【御覧】する/±〈朱点〉・【長恨歌】能/±〈朱点〉・ゑ・【亭子院】能/±〈朱点〉・
かゝ世/(かか世)・【給】て・【伊勢】/±〈朱点〉・【貫之】尓/±〈朱点〉・よま勢・【給】へる・やまと/±〈朱点〉・
ことの八をも・ゝ路古しの/±〈朱点〉、(も路古しの)・う多をも・堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・そ能/±〈朱点〉・
すちをそ・まくらこと尓/±〈朱点〉、まくらこと=〈朱点左〉、こ〈朱点左2〉・せさ勢/±〈朱点〉・多まふ・いと/±〈朱点右〉・こ
まや可尓/±〈朱点〉・ありさま/±〈朱点〉・と八勢/±〈朱点〉・堂まへ八・あ八れなり
徒る/±〈朱点〉・【事】とも・新のひや可尓/±〈朱点〉・そう春/±〈朱点〉・【御】可へり/±〈朱点右〉・
【御覧】す礼八/±〈朱点〉・いとも/±〈朱点〉・かしこき八/±〈朱点〉・をきところも・
八へら春・可ゝる/±〈朱点右〉、(可可る)・於ほ世【事】尓・つ希ても・かきくら
す/±〈朱点〉・み多り【心地】尓なん/±〈朱点〉、(12オ)
--------------------------------------
「あらき・【風】・ふ勢きし・可けの・可礼しより・
こ八き可・うへそ・志川【心】・なき」なと/な±〈朱点〉・やう耳・
み多り可八しきを/±〈朱点〉・【心】/±〈朱点〉・於さめさりける/±〈朱点〉・本とゝ/(本とと)・
【御覧】しゆる春/±〈朱点〉・いと/±〈朱点右〉・可うし毛/±〈朱点〉・【人】尓/±〈朱点〉・【見】江し
と・於ほしゝ徒むれと/±〈朱点〉、つゝ〈削〉ゝ徒=△△〈削〉、(於ほしつゝむれと、おほしし徒むれと)・さら尓/±〈朱点〉・江・しの飛あ江
さ勢・堂ま八寸・【御覧】し八しめし/±〈朱点右〉・とし【月】能/±〈朱点〉・
【事】さへ・可きあつめよろ川尓/±〈朱点〉、よ±〈朱点〉・お本しつゝ遣
ら礼弖/±〈朱点〉、弖=〈墨ヨゴレ〉、(お本しつつ遣ら礼弖)・【時】の/±〈朱点〉・まも・於ほつ可な可里しを・かく
ても/±〈朱点〉・【月日】八/±〈朱点〉・へ介りと/±〈朱点〉・あさましう/±〈朱点〉・於ほさる・
【故大納言】乃/±〈朱点右〉・ゆいこん・堂可へ春/±〈朱点〉・三や川可へ能/±〈朱点〉・
本い・ふ可く・【物】し多りし/±〈朱点〉・よろ古ひ尓八/±〈朱点〉・可ひ/±〈朱点〉・阿類/類〈次頁〉、(12ウ)
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2025年01月18日

日比谷で「須磨」(20)と『百人一首』(9)を読む

 今日は、1時間ほど早めに日比谷図書文化館へ行き、図書館のサービス部門のマネージャーの方々と打ち合わせをしました。架蔵の『源氏物語』の翻訳本すべてを寄贈したい意向を伝えてあったので、今度はどのようにその話を進めるかという話し合いです。「古文書塾 てらこや」の責任者のお2人も同席してくださっての会合となりました。
 43種類の言語で翻訳されている『源氏物語』を、日比谷図書文化館側でどう整理し、管理し、閲覧に供するかという諸問題の解決の道を、今はまだ探っているところです。すでに[海外へいあんふんかく情報](http://genjiito.org)で世界中の翻訳本の情報は公開しているので、これは今後とも増え続ける翻訳本のライブラリーの展開を見据えての課題に挑むことでもあります。日本文化と文学の新たな研究領域を切り拓くものであり、スケールの大きなプロジェクトでもあるので、慎重に検討を重ねていくことで前向きに検討していくこととなりました。
 多言語による翻訳本を対象とした研究に興味と関心をお持ちの方は、一緒にプロジェクトを起ち上げませんか。本ブログのコメント欄を通して、問い合わせを含めての連絡をお待ちしています。

 本日の講座については、日比谷図書文化館の正面入口にいつものように案内が掲出されていました。

250118_日比谷パネル.jpg


 13時からは、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」の[変体仮名翻字版-2023]のデータの確認をする講座となります。
 最初に、『NHK2024年大河ドラマ 光る君へ ART BOOK』(東京ニュース通信社、2024年11月29日)の本を回覧し、ドラマの舞台裏にまつわる写真と記事が、平安文学の研究に有益であることをお話しました。特に、越前和紙、硯の横の小刀、平安巻筆、文鎮や文具に関しては、丁寧に解説しました。
 なお、『源氏物語』の物語本文が執筆されている原稿に付けられた次の説明文には大いに疑問が残ることを問題点として指摘しました。

「源氏物語」は、物語の進行に合わせて該当の話が正確に書かれている。

 ここで言う、「該当の話が正確に書かれている。」と言うのは、どういう意味なのでしょうか。「正確」の意味するところが、私にはまったく理解できません。写本の話であれば、「正確に書き写されている。」と言えます。しかし、ここでは物語作者が書いた原稿の話だと思われるので、「正確に」とは何を「正確に」書いたと言いたいのでしょうか。そもそも『源氏物語』の作者が紫式部であるというのは正確ではなく、物語の編集者だと考えている私には、なおさら意味不明の説明文となっています。

 本題となる、ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』については、36丁表3行目から36丁裏までを丹念に[変体仮名翻字版]で表記を確認しました。
 中でも、36丁裏7行目の「【人柄】を/を&【柄】、【柄】$、(【人】を)」とした部分には、多くの時間を割きました。

241206_須磨36ウL7柄.jpg

 「を」と「【柄】」がどのような経緯で書写され、修正されているかということです。私は「を」を「【柄】」でなぞったとしました。しかし、「【柄】」を「を」でなぞっているのではないか、という意見が出て、それも再検討すべきことなので、ひとまず保留としました。
 ハーバード大学美術館へ行き原本が確認できる機会が得られたら、その他の疑問箇所も含めてこうした点を慎重に点検して来たいと思います。
 本日確認を終えた本文は、以下のとおりとなります。

--------------------------------------
・ナシ・ナシ・ひとよりは・こと尓奈ま免可し
う・いうなる・ひと尓・みえ堂り・奈本・
う川ゝと八/(う川川と八)・【思】・【給】へられぬ・【御】多ひ井を・(2024年12月07日はココマデ確認)・う
け多満八る毛・あ介ぬ・よの・【心】万とひとの三なん・
佐里とん・とし【月】八・へ・【給】者しと・【思】や里・きこゑ
さ寿る尓毛・徒三・ふ可き・【身】の三こそ・【又】き
こゑさせん・こと毛・八る可なるへ介れ・
「うき免・可る・い世乃/〈ママ〉・あま越・於もひやれ・
毛し本・多るてふ・寿満乃・うら尓て」・よろつ・
【思】・【給】へ・三多るゝ/(三多るる)・【世】乃・あ里佐まを・なをい可尓か奈と/か〈次頁〉、(36オ)
--------------------------------------
ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・於ほ可里・
「【伊勢】志まや・し本ひ乃・可多尓・あさりて
毛・いふ可ひ奈き八・わ可・【身】なり介り」・毛乃
を・あ者れと・於ほし介る・満ゝ尓/(満満尓)・うちをき/\/(うちをきうちをき)・
かい・多まへる・しろき・可ら乃・可三・【四五枚】
者可りを・まき川ゝ介て/(まき川川介て)・寿み徒き奈と・三
【所】・あ里・あ者れと・於もひ・きこゑ新・【人柄】を/を&【柄】、【柄】$、(【人】を)・ひ
とふし・うしと・【思】し・【心】あやま里尓・【又】・三や須
【所】毛・【思】日うむして・王可れ・【給】尓しと・於ほ世八・
いま八・いとをしく・か多し介那き・すち尓も/も〈丁末左〉、(36ウ)
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 1時間の休憩を挟み、3時半からは『百人一首』の時間です。
 今日は、陽明文庫旧蔵の『百人一首』は七二番歌から七五番歌までの4首に留め、昨秋より教材の一つとして取り上げた尾形光琳の『百人一首』の確認を急ぎました。光琳の『百人一首』については、今日は以下の二八番歌から六三番歌までの確認をしました。陽明文庫旧蔵カルタの確認と、光琳カルタの確認を、同時並行で進めたいために急いで追いつこうとしているのです。


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■光琳かるた[変体仮名翻字版-2023] 二八番歌〜六三番歌
(『別冊太陽愛蔵版「百人一首」』、平凡社、一九七四年十一月九日発行 より)

二八 源宗于朝臣
【山里】は 【冬】そ【寂】しさ 満さ里ける
【人】めも【草】毛 か連ぬと【思】へ者

二九 凡河内躬恒
【心】あ弖尓 おら者や【折】ん 【初】しもの
【置】まと者世類 志ら【菊】の【花】

三〇 壬生忠岑
【有明】の つ連なくみえし わ可連よ里
  あ可つき者可り う起もの盤なし

三一 坂上是則
【朝】本らけ 【有明】の【月】と 三る万弖に
よしのゝ【里】耳 ふ連類【白雪】

三二 春道列樹
【山川】尓 可せの可け多る 志可らみ盤
な可れもあへぬ 毛三ちな里けり

三三 紀友則
【久方】の 日可り能とけき はる乃【日】耳
志徒【心】なく 者那のちるらむ

三四 藤原興風
【誰】を可も 志る【人】にせん 【高砂】の
満川もむ可しの 【友】ならな具尓

三五 紀貫之
【人】盤いさ 【心】も志らす 布る【郷】盤
【花】楚む可しの 【香】尓ゝほ日ける

三六 清原深養父
【夏】のよ盤 万多【宵】な可ら あけぬるを
くものい徒こ尓 【月】や登るらん

三七 文屋朝康
志ら徒ゆ耳 可せの【吹】し具 【秋】能ゝは
つらぬ起とめ怒 【玉】楚ち里ける

三八 右近
わすら留ゝ 【身】を盤おも者寸 ち可日てし
【人】乃いのち濃 おしくも【有】可那

三九 参議等
あさちふの を能ゝし濃【原】 志のふ連と
阿万里てなと可 【人】の【恋】しき

四〇 平兼盛
志のふ礼と 【色】尓【出】にけり わ可こひ八
ものやお毛婦と 【人】乃登ふ万弖

四一 壬生忠見
【恋】すて婦 わ可【名】盤万多き 【立】尓けり
日とし連すこ楚 於毛ひ所めし閑

四二 清原元輔
ちき里支な 可多み尓そてを し本里徒ゝ
すゑの万川【山】 【波】こさしとは

四三 権中納言敦忠
あ日三弖の 【後】乃【心】尓 くらふ連は
む可し盤ものを 【思】者さ里けり

四四 中納言朝忠
【逢】【事】の 多えてしなく八 【中】/\に
【人】をも【身】乎毛 うらみさら満し

四五 謙徳公
あ者連とも 意婦へき【人】八 おも本えて
【身】のい多つらに な里ぬへ支可な

四六 曽祢好忠
ゆらの【戸】を わ多る【舟人】 可ち越多え
【行衛】も志らぬ 【恋】の【道】可な


四七 恵慶法師
【八重葎】 志希連るやとの さひし支尓
【人】こ楚みえね 【秋】盤き尓ける (陽明本は「遣礼」)

四八 源重之
【風】をい多み 【岩】うつ【波】の 【己】乃三
く多け弖ものを 【思】ふころ【哉】

四九 大中臣能宣朝臣
み可き【守】 【衛士】の堂く【火】能 よる盤もえて
日るは【消】徒ゝ 【物】をこ楚【思】へ

五〇 藤原義孝
きみ可【為】 おし可らさりし いのちさへ
な可くも可那と お毛日ける【哉】

五一 藤原実方朝臣
かくと多尓 衣や盤いふきの さしもくさ
佐しも志らしな 毛ゆる【思】日を

五二 藤原道信朝臣
【明】ぬ連盤 くるゝものと八 【知】な可ら
な越うら免しき 阿さほら希可な

五三 右大将道綱母
な希支川ゝ 【独】ぬるよの あく類【間】盤
 い可耳【久】しき ものと可はし留

五四 儀同三司母
【忘】連しの ゆく【末】まて八 か多け連と  (陽明本は「遣連者」)
気ふをか支里乃 い能ちとも可な

五五 大納言公任
【瀧】の【音】盤 堂え弖ひさしく 【成】ぬ連と
【名】こ楚な可れ帝 なを支こ盈希礼

五六 和泉式部
あらさ羅無 【此】よの【外】乃 【思出】耳
い満【一】堂飛の 阿ふことも可な

五七 紫式部
免く里阿ひ弖 三しやそ連とも 【分】ぬ万に
【雲】かくれ尓し よはの【月】か希  (陽明本は「【哉】」)

五八 大弐三位
【有馬山】 いな農さゝ【原】 【風】ふけ盤
い弖そよ【人】を わすれやは春る

五九 赤染衛門
やすらはて ねな万しものを さよ【更】帝
閑た布く満弖乃 【月】をみし可那

六〇 小式部内侍
【大江山】 いくのゝ【道】乃 登をけ連八
満多ふみも三寸 【天】能者し【立】

六一 伊勢大輔
い尓しへの なら能三【都】乃 【八重】さ九ら
けふこゝのへ耳 【匂】ひぬる【哉】

六二 清少納言
よ越こめ弖 【鳥】のそらね者 は可るとも
よ耳【逢坂】乃 せき盤ゆるさし

六三 左京大夫道雅
【今】は多ゝ おも飛堂え【南】 登者可りを
【人】徒弖ならて い婦よしも可な
--------------------------------------

 一気に光琳カルタに書かれている文字を36首も[変体仮名翻字版]で確認したので、受講生のみなさまはパニックだったかもしれません。しかし、終了後にいろいろと質問が出たので、結構楽しかったのではないか、と思った次第です。

 来月からは、2種類の『百人一首』の進度が同期することになるので、また楽しい文字の読み比べができておもしろくなることでしょう。

 今日は息子が出張で都内にいないので、急遽かつて私が学生時代に住んでいた大森の駅前に宿をとりました。今日と明日は、大学入学共通テストがあるため、都内のホテルは受験生などに確保されていて、どこも空きがありません。しかし、私は強運を背負っていることもあってか、うまくキャンセルに巡り合え、しかも私が学生時代に住んでいた大森という、懐かしい所に宿を確保できました。しかも、住んでいた場所の至近の所です。ここで十二指腸潰瘍穿孔性腹膜炎となり大手術をして命拾いをし、毎朝新聞を配り、火事に遇って焼け出され、成人式の日は近くの神社の会館で支給された毛布にくるまっていました。明日は、そんな55年前の思い出の地を再訪しようと思っています。




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2024年12月21日

キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(通算第25回)

 キャンパスプラザ京都の入口のホールには、本日の源氏講座の案内が表示されていました。

241221_掲示板.jpg

 今日の講座では、西宮神社の説明版が変体仮名混じりの表記になっていたことと、街中の変体仮名の諸相を確認しました。
 『源氏物語』の翻訳本は、パキスタンで刊行されたウルドゥー語訳を回覧しました。

 今日勉強するのは、尾州家河内本「桐壺」巻の第8丁表〜第10丁裏までです。以下の資料を配布しました。
 最初に提示した凡例は、基礎資料を作成してくださった佐藤さんからいただいたメモを整理したものであり、これでほぼ確定です。
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241221_凡例4頁.jpg
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 なお、尾州家河内本「桐壺」の第1回と第5回の公開資料は、〈朱点〉の箇所の表記が統一されていませんでした。再点検をして、後日正しい[変体仮名翻字版-2023]の表記にした補訂版をアップします。国内外で、このブログで公開している[変体仮名翻字版-2023]の資料で変体仮名の勉強をしておられる方には、大変失礼しました。しばらくお待ちください。

 本日確認した本文は、[変体仮名翻字版-2023]で表記すると以下のようになります。
 この内、判断に迷った末に暫定的に対処した箇所は、以下の1例です。

・10丁表5行目の「於もひ」は「も」にミセケチの朱点を打ち、その朱点を後に削除したと判断し、「於もひ/±〈朱点〉、も$〈朱点削〉」と翻字しています。

241221_尾州桐壺10oL5於もひ.jpg


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あ者礼なり/±〈朱点〉・やもめす三なれと/±〈朱点右〉・【人】/±〈朱点〉・日とり能・【御】
かしつき尓/つ±〈朱点削〉・と可くつくろひ多てゝ/±〈朱点〉、つ±〈朱点〉、(多てて)・めやすき/±〈朱点〉・
本と尓てすくし多まへるを/す±〈朱点〉・く礼や三尓て/±〈朱点〉・
ナシ・ふしゝつみ/(ふししつみ)・多まへる・本と尓/±〈朱点〉・具さも/±〈朱点〉・堂可く/±〈朱点〉・なり・乃王
起尓/±〈朱点〉、△&王・いとゝ/±〈朱点〉、(いとと)・あれ多流/±〈朱点〉・【心地】・して・【月】可遣八可りそ/±〈朱点〉・やへ
むくら尓も/±〈朱点〉・さ八ら春/±〈朱点〉・佐しいり多流/±〈朱点〉・三那三をもて尓/±〈朱点右〉・
於ろして/±〈朱点〉・八ゝ【君】毛/±〈朱点〉、(八八【君】毛)・ナシ・ナシ・とみ尓/±〈朱点〉・ナシ・【物】も/±〈朱点〉・江いひやり多ま
八春/±〈朱点〉〈241123_ここまで確認〉・いまゝて/±〈朱点右〉、(いままて)・とゝまり/±〈朱点〉、(ととまり)・【侍】可・いと/±〈朱点〉・うきを・可ゝ類/±〈朱点〉、(可可類)・【御】
つ可ひ乃/±〈朱点〉・よもき乃・徒ゆ・王遣いり・【給】尓・つ希ても/±〈朱点〉・
いと/±〈朱点〉・八つ可しうなんとて/±〈朱点〉・遣尓/±〈朱点〉・江・堂ふましう・ない/±〈朱点〉・多
まふ・まいりて八/±〈朱点右〉・いとゝ/±〈朱点〉、(いとと)・【心】くるしう/±〈朱点〉・【心】起もゝ/±〈朱点〉、(【心】起もも)・つくるやう尓なんと/±〈朱点〉、や〈次頁〉、(8オ)
--------------------------------------
【内侍】乃すけ乃/±〈朱点〉・そうし/=【奏】・【給】しを・ナシ・【物】/±〈朱点〉・於も
ふ・堂まへ・しらぬ・【心地】尓も/±〈朱点〉・け尓こそ/±〈朱点〉・いとしのひ可た
う/±〈朱点〉、し±〈朱点〉・八へり遣れとて・やゝ/±〈朱点〉、(やや)・堂めらひて/±〈朱点〉・於ほせこと/±〈朱点〉・つ多
辺・起こゆ・し八し八/±〈朱点右〉・ゆめ可と乃三/±〈朱点〉・多とられしを/±〈朱点〉・やう/\/±〈朱点〉、(やうやう)・
【思】し徒まる尓し毛/±〈朱点〉・さむへき/±〈朱点〉・よ・那く・堂へ可多き八・
い可尓/±〈朱点〉・すへき・わさ尓可とも・とひあ者春へき/±〈朱点〉・【人】多尓・那
起を・ナシ・新のひて/±〈朱点〉・まいり・【給】て・可ひなき/±〈朱点〉・【御物】可多りを
多尓と那ん・わ可【宮】能/±〈朱点〉・いと・於ほつ可なく/±〈朱点〉・徒ゆ遣き・
な可尓・春くし・多まふらんも・【心】くるしう/±〈朱点〉・於本さ
類ゝを/±〈朱点〉、(於本さ類類を)・とく/±〈朱点〉・まいり・ナシ・堂まへなと・八可/\しう毛/±〈朱点〉、(八可八可しう毛)・乃
堂ま者勢やら春/±〈朱点〉・む世可へら勢/±〈朱点〉・【給】川ゝ/(【給】川川)・かつ八/(8ウ)
--------------------------------------
一丁落丁(『源氏物語大成』一二頁11行〜一三頁10行の左記本文に該当)
「人も心よはくみたてまつるらむ……(中略)……おほしいそくめくれはことはり」
--------------------------------------
尓/(落丁部語尾)・可那しう/±〈朱点〉・【見】・多てまつり・八へる那と・ナシ・うち/\尓/±〈朱点〉、(うちうち尓)・おも
ひ・堂まふる・佐まを・そうし/±〈朱点〉・【給】へ・ゆゝしき/±〈朱点右〉、(ゆゆしき)・【身】
尓も・者へれ八・かくて/±〈朱点〉・於八しま春も/±〈朱点〉・いま/\しう/±〈朱点〉、(いまいましう)・
か堂し遣那くなんと/±〈朱点〉・乃多まふ/±〈朱点〉・【宮】八/±〈朱点右〉、=源・於ほと乃
こもり尓介り・【見】/±〈朱点右〉、△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・多て万つりて・【御】ありさまも/±〈朱点〉・く
八しく/±〈朱点〉・そうし/±〈朱点〉・八へら万本しきを・まち/±〈朱点〉・於八し
ますらん尓・【夜】/±〈朱点〉・ふけ・【侍】ぬへしと・いそく/±〈朱点〉・ゝれま
とふ/±〈朱点右〉、(くれまとふ)・【心】乃/±〈朱点〉、〈朱合点〉・や三も可多へ/へ=△〈削〉エ、可±〈朱点〉・ナシ・八るく八可りなん・いときこ
江万本しう/±〈朱点〉、き±〈朱点〉・【侍】を/±〈朱点〉・【御】わ多くし尓も/±〈朱点〉・【心】乃と可尓/±〈朱点〉・
万可て/±〈朱点〉・【給】へ・としころう礼しく/±〈朱点右〉、う±〈朱点〉・於も多ゝしき/±〈朱点〉、(於も多多しき)・
ナシ・徒いて尓ての三/±〈朱点〉・多ちより/±〈朱点〉・多まひし【物】を・かゝる/±〈朱点〉、(かかる)、(9オ)
--------------------------------------
御つ可ひ尓て・【見】/±〈朱点〉、み〈削〉【見】・多てまつる可・かへ春/\/±〈朱点〉、(かへ春かへ春)・徒れな
き/±〈朱点〉・いのち尓も・【侍】可那・むまれし/±〈朱点右〉・【時】より・於もふ/±〈朱点〉・
【心】・ありし・【人】尓て・【故大納言】/±〈朱点〉、=更衣父〈付箋〉・いま八と/±〈朱点〉・那るまて・
堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・古乃/±〈朱点〉・【人】の・三やつ可へ能・本い/±〈朱点〉・可なら須・と遣
さ勢/±〈朱点〉・多てまつ礼・王れ/±〈朱点〉・なくなりぬとも・くち
於しう/±〈朱点〉・ナシ・於もひく徒をるなと/±〈朱点〉、く=〈朱点〉・返ゝ/±〈朱点〉、(返返)・いさめを可
礼し可八/±〈朱点〉・ナシ・は可/\しく/±〈朱点〉、(は可は可しく)、く〈削〉く・う新ろ三於もふ/±〈朱点〉、も〈削〉う、(も新ろ三於もふ)・【人】・なき・万
しらひ八・な可/\なるへき/±〈朱点〉、(な可な可なるへき)・【事】と・【思】・【給】へ那可ら・
堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・か乃/±〈朱点〉・ゆい古んを/=遺言・多可へしと八可里尓/±〈朱点〉・い多し
多て/±〈朱点〉、し〈行末左〉・【侍】しを・み尓/±〈朱点〉・阿まるまて乃・【御心】さし能
よ路つ尓・可たし希なき尓/±〈朱点〉、た=〈朱点右〉・【人】遣那き八ちを/±〈朱点〉、き=〈朱点〉、(9ウ)
--------------------------------------
かくしつゝ/±〈朱点〉、(かくしつつ)・ましらひ多まふめりしを【人】乃そね
三ふ可く徒もりやす可らぬ【事】於本くなりそひ弖/±〈朱点〉、【人】±〈朱点〉、乃+【御】、徒±〈朱点〉、や±〈朱点〉、於±〈朱点〉、な±〈朱点〉・
ナシ・ナシ・よこさまなる/±〈朱点〉・やう尓てつ井尓/つ±〈朱点〉・かく・なり・
【侍】ぬ礼八・かへりて八/±〈朱点〉・つらくなん・かし古き/±〈朱点〉・【御心】八
へ越も・於もひ/±〈朱点〉、も$〈朱点削〉・堂万へら礼・【侍】と・いひも/±〈朱点〉・やら春・む
世可へり/±〈朱点〉・【給】・本と尓・い多う/±〈朱点〉・ふ遣ぬ・うへも/±〈朱点右〉・志可なん/±〈朱点〉・
わ可/±〈朱点〉・【御心】な可ら/±〈朱点〉・あやしくあや尓く尓/±〈朱点〉、後あ±〈朱点〉・【人】め/±〈朱点〉・於とろ
く八可り・於本さ礼し毛/±〈朱点〉・かく/±〈朱点〉・な可ゝるましきな
里遣りと/±〈朱点〉、(な可可るましき)・ナシ・いま八/±〈朱点〉・徒ら可里ける/±〈朱点〉・【人】乃・ちきりに
なん・【世】尓/±〈朱点右〉・いさゝ可も/(いささ可も)・【人】乃・【心】・ま遣多流/±〈朱点〉、遣=〈朱点2左下〉・【事】八・とゝ
めしと/±〈朱点〉、し=〈朱点左〉、と=〈朱点左〉、(ととめしと)・於もひしを/+〈朱点〉・堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・古乃/±〈朱点〉・【人】乃・ゆへ尓て・あま堂乃/±〈朱点〉、堂〈次頁〉、(10オ)
--------------------------------------
さ累ましき・【人】乃・うら三を・於ひし/±〈朱点〉・
八て/\八/±〈朱点〉、(八て八て八)・かう/±〈朱点〉・ゝちすてら礼弖/±〈朱点〉、(うちすてら礼弖)・【心】/±〈朱点〉・於さめん/な〈判読〉&さ、(於なめん)・可多
乃・那き・まゝ尓いとゝ【人】王ろく可たく那尓/い±〈朱点〉、可±〈朱点〉、(まま尓)、(いとと)・なり
【侍】も・ナシ・ナシ・さきのよ/±〈朱点〉・ゆ可しうなんと・うち可へしつゝ/±〈朱点〉、(うち可へしつつ)・
志本多れ可ち尓の三/±〈朱点〉・於八しますと可多里て/±〈朱点〉、可±〈朱点〉・
つきせ寸/±〈朱点〉・なく/\/±〈朱点〉、(なくなく)・【夜】/±〈朱点〉・い多う・ふ遣ぬ礼八・こよひ/±〈朱点〉・
すくさ春・【御】可へり/±〈朱点〉・そう世むと/±〈朱点〉、=奏・いそき/±〈朱点〉・まいる・
【月】八/±〈朱点右〉・いり可多の・ナシ・ナシ・そら・起よう・す三わ多れる尓/±〈朱点〉・
【風】/±〈朱点〉・いとすゝしう/す±〈朱点〉、(すすしう)・ふきて・くさむら乃/±〈朱点〉・むしの・
ナシ・こゑ/\/(こゑこゑ)・もよ本し可本なるも/±〈朱点〉・ナシ・いと/±〈朱点〉・多ち八那連可多
き・【草】乃/±〈朱点〉・もとなり/(10ウ)
--------------------------------------

 帰りには、京都駅前から四条の家電量販店へ行き、欠陥だらけだった商品の修理を依頼しました。恐らく、メーカーは直すなど面倒なことをするはずがないので、現品と取り替えての交換となることでしょう。

 人出の多い河原町通りを三条まで歩き、私が一番気に入っている、くら寿司へ行きました。白い暖簾で仕切られた、清潔感に満ちあふれた旗艦店とでもいうべき回転寿司屋さんです。デザートも豊富です。しかし、店内は順番待ちの人で一杯です。諦めて、これも行きつけとなっている、三条河原町の交差点角の寿司のむさしに行きました。ここは、いつものことながら、海外からの人で満員です。しかし、お客さんの回転が早いので、少し待つと座れました。
 最近は、にぎり寿司よりも、海鮮丼や押し寿司などに私の好みが変わりました。軍艦巻や巻き鮨などをいただくようになったのです。むさしでは、おじさんに注文すると、目の前で言ったものが作ってもらえるので楽しいのです。また、ダメ元で鯛の皮のにぎりを頼むと、今日も品切れでした。午後3時前後が狙い目なので、また次にします。

 ブラブラと三条大橋を渡ると、橋の東詰から四条大橋を望む景色がきれいでした。今日は冬至です。冬至祭りがクリスマスに読み替えられて日本でもお祝いするようになってしまったので、日本のかつての風物詩が目の前に展開しているようでした。

241221_三条の紅葉.jpg


 さて、明日から年末までは、家の整理と掃除に取りかかることにします。




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2024年12月14日

中之島の平安文学講座『百人一首』(第9回)と『源氏物語 蜻蛉』(第20回)

 淀屋橋駅の上のカフェから土佐堀川を見ながら、軽くお昼をいただきました。景色が良かったので、写真に収めました。
 右側の赤レンガの建物が中央公会堂、真ん中の緑の屋根の建物が中之島図書館、左側が市役所です。

241214_中之島図書館.jpg

 左に目を移すと、淀屋橋越しに日本銀行大阪支店が見えます。ここは、政治と経済と文化の中心地でもあります。

241214_日銀.jpg

 まずは『百人一首』からです。
 今日は、尾形光琳の『百人一首』18首分を確認してから、旧陽明文庫蔵『百人一首』の確認をしました。その内容は、今月初旬の日比谷図書文化館での報告と重なるので以下の記事に譲ることにします。

「日比谷で「須磨」(19)と『百人一首』(8)を読む」

 ただし、旧陽明文庫蔵『百人一首』に関しては、日比谷では七一番歌までしか確認できなかったので、それ以降、つまり七二番歌から七五番歌までの説明文を、ここにアップします。


【七二】
〈原文〉【音】耳きく た可し能者万乃 【化波】八可遣しや楚弖能 ぬ連もこそ春れ
〈底本の訳〉有名な高師の浜のいたずらに寄せる波にはかかりませんよ。袖が濡れるといやですから。同じように浮気で名高いあなたのお言葉も心にかけませんよ。涙で袖を濡らすことになるといやですから。
〈試訳〉有名な高師の浜の波をかけるつもりはない、袖が濡れるのが嫌なので。それと同じように、浮気で名高いあなたの言葉も心にかけるつもりはない、涙で袖が濡れるのが嫌なので。
・掛詞の訳し方
→波が寄せる情景と男に応酬する意味を両方逐語訳すると複雑になってわかりづらくなると思い、前者をできるだけ簡潔に訳した。また、「かけるつもりはない、(涙で)袖が濡れるのが嫌なので」という訳をあえて両方に使うことで比喩であることをわかりやすく表現した。
※仮名文字
【音】【化波】の漢字に注意。
「き」「遣」「こそ」の仮名に注意。

【七三】
〈原文〉【高砂】の おのへ能さくら 【咲】尓介里とや万乃【霞】三 堂ゝ須もあらなん
〈底本の訳〉高い山の峰の桜が咲いたことです。その花が見えなくなっては残念ですから、里に近い山の霞よ、どうか立たないで下さい。
〈試訳〉高い山の峰の桜が咲いたことだなあ。里に近い山の霞よ、どうか立たないでおくれ。花が見えなくなってしまうから。
・下の句の訳し方
→霞が立たないでほしいのは、花が見えなくなってしまうからだ。しかし、その心情を先に訳すと、音だけで聞いた時に情景のイメージが一度途切れてしまうのではないかと思い、倒置法を用いて後ろに入れた。
※仮名文字
【高砂】【霞】の漢字に注意。
「お」「介里」の仮名に注意。

【七四】
〈原文〉う可り遣る 【人】を【初瀬】能 【山】おろし 者希し可礼登八 いのらぬものを
〈底本の訳〉つれないあの人が私に靡くように初瀬の観音様にお祈りしたはずです。山おろしの風のように、あの人が私につらく当たるようにとはお祈りしませんでしたよね。
〈試訳〉つれないあの人が私に靡くように、初瀬山の観音様にお祈りした。しかし、山おろしの風のように、いっそうつらく当たるようにとはお祈りしていないのに。
・下の句の訳し方
→「祈らぬものを」を「お祈りしていないのに」と逆接で訳すことで、より恨めしく思う気持ちを強調して訳した。
※仮名文字
【初瀬】の漢字に注意。
「遣」「お」「希」「禮」「登」の仮名に注意。

【七五】
〈原文〉【契】里を起し させも可つゆを いのち尓て【哀】ことし能 【秋】もいぬめ里
〈底本の訳〉お約束してくださった「させも草」というお言葉を当てにしておりましたが、その望みもかなわず、今年の秋もむなしく過ぎ去ってしまいそうです。
〈試訳〉あなたがお約束してくださった「させも草」という言葉に、一縷の望みをかけて過ごしていた。しかし、結局その望みは叶わないまま、今年の秋も過ぎ去ってしまうようだ。
・上の句の訳し方
→「させも草」が古歌から「なほ頼め」を意味することは訳出すると訳が煩雑になりすぎてしまうため、省略しなかった。また、「露」「命」という言葉から緊迫感を読み取り、「一縷の望みをかけて」と訳した。
※仮名文字
【契】【哀】【秋】の漢字に注意。
「里」「起」の仮名に注意。

 30分の休憩を挟んで、後半は『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』の変体仮名を確認しました。
 「街中の変体仮名」と「回覧 ウルドゥ語訳『源氏物語』」は、過日千代田区立日比谷図書文化館での源氏講座で説明したことと重なるので、過去の報告に譲ります。
 ハーバード本「蜻蛉」は、45丁裏から第47丁裏までを確認しました。
 今日特に問題にしたのは、次の3例です。

(1)蜻蛉46丁裏1行目 「【御前】なる/を&なる」

241213_蜻蛉46uL1御前なるナゾリ.jpg


 これは、「御前」の次に「を」と書き、その「を」の上に「なる」となぞることで、「御前なる」とする例です。テキストとしている『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(伊藤著、新典社、2014年)では、「と」の上に「なる」をなぞっている、としました。しかし、この一文字が縦長であり、筆の入り方から見ても「と」とするよりも「を」の方がいいと思うようになりました。ハーバード大学で原本を見ながら「と」と判断したものの、今よく見ると訂正すべきだと思うようになったのです。

(2)蜻蛉46丁裏8行目 「多いま八/多±ゝ〈ママ〉、(多多いま八)」

241213_蜻蛉46uL8多ゝいま.jpg


 ここで「い」の右上にある「ゝ」は、補入記号がない補入文字としての「ゝ」です。「多ゝいま八」と読ませようとするものです。しかし、その「ゝ」の右上と左下にある細くて短い線が何を意味するのかわかりません。〈ママ〉としておきました。

(3)蜻蛉47丁表9行目 「【給】や登/な&登、登$と」

241213_蜻蛉47oL9な$登.jpg


 ここは、「給やな」と書き写した後、「な」の上から「登」をなぞり書きし、さらにその「登」の左にミセケチ記号を付けて「と」を右横に傍記した例です。また、なぞられた文字が「登」だと認定するにあたっては、いろいろな文字を検討した結果であることも説明しました。

 以下に、確認し終えた本文を[変体仮名翻字版-2023]で掲載します。

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あらは・多れ可・しやうし八・あけ多りしと・可なら春・
いてきなん・日とへも・八可まも・すゝしなめりと/(すすし)・
みえ川る・【人】の・【御】す可多なれ八・【人】も・きゝ川け/(きき川け)・
【給】八ぬならん可しと・【思】こうして・於里・かの・【人】八・
やう/\/(やうやう)・ひし里に・奈りし・【心】を・ひとふし・多可へ
そ免て・さ万/\なる/(さ万さ万なる)・もの・於もふ・【身】とも・なる
かな・その可み・よ越・そむきなまし可八・ふ可き・
や万に・す三八てゝ/(す三八てて)・かう・【心】/【心】&【心】・三多らましや八と・於
も本し川ゝくるも/(於も本し川ゝくるも)・や春可ら須なとて・とし
ころ・三・多て万川ら八やと・於もひ川らん・【中】/\/(【中中】)、(45ウ)
--------------------------------------
くるしう・かひな可るへき・わさにこそ・於もふ・
川と免て・於き・多万へる・【女宮】の・可多ち/可〈判読〉・いと・を
かし遣な免る八・これより・可ならす・万さる
へき・こと可者と・みえな可ら・さらに・尓・多万八春
こそ・阿り介れ・あさ満しき万て・あて尓・か本り・
江も・い者さりし・【御】さま可なと・於ほして・いと/〈墨合点〉・阿
川しや・これより・う春き・【御】そ・多て万つれ・【女】八・
れいならぬ・もの・き多るこそ・とき/\八/(ときとき八)・於可し介れ
とて於ものも・阿な多尓・まいりて・多い尓・う春
ものゝ/(う春ものの)・日とへの【御】そ・ぬ日て・万いれと・の【給】ふ(46オ)
--------------------------------------
【御前】なる/を&なる・【人】八・この・【御】可多ちの・い三しき・さかり
尓・於者し万春越・もて者やし・きこえ・【給】と・なか
しう/な$を、(をかしう)・於もへり・[23]れいの・ねん須・し・【給】て・【我】・【御】可多
に・於者しなと・して・ひる川可多・王多り・【給】川
れ八・の多万い川る・【御】そ・三き【丁】二・うちかけ多り・
なそこ八・多て万川らぬ・【人】・於ほく・三る・越里
なん・すき多るものきるは・八うそく尓・於ほゆ
る・多いま八/多±ゝ〈ママ〉、(多多いま八)・あへ・八へりなんとて・ゝ川可ら/(て川可ら)・きせ・多
て万つり・【給】・【御】八可満も・きのふの・於なし・く
れないなり【御】くしの・於ほさすそなと八/そ〈判読〉(46ウ)
--------------------------------------
於とり・【給】八ねと・な越・さ万/\なる尓や/(さ万さ万なる尓や)・尓
るへくも・阿ら春・ひ・めして・【人】/\尓/(【人人】尓)・わ多らせ・
【給】て・日と川/+とりて・多て万つり・【給】・【心】の/【心】&【心】・【中】も・を
かし・ゑ尓・かきて・こひしき・【人】・三る・【人】八・な
くや八・阿り介る万して・これ八・なくさ免ん・
尓け奈らぬ/なら〈ママ〉諸本「なから」・【御】本とそ可しと・於ほゆれと・【昨日】・
可やう尓て・【我】・万し里・三・多て万川らまし
か八と・於ほゆる尓・【心】尓も/尓&尓・あら春・うちな
介可れぬ/ち$ち・【一品】の三や尓・【御文】八・多て万つり・【給】や登/な&登、登$と
きこえ・【給】へ八・うち尓・阿里し・於八し/八し〈ママ〉諸本「とき」・うへの・さ・の多万者せし可八/多〈次頁〉、(47オ)
--------------------------------------
きこえし可と/八&と、(きこえし可八)・ひさしく・
さも・阿ら春と・能多まふ・多ゝ【人】尓/(多多【人】尓)・ならせ・【給】尓多
るとて・かれよりも・きこえ・【給】八ぬ尓こそ八・【心】う
かんなれ・いま・【大】三やの・【御前】尓て・うら三・き
こえ・【給】と・けいせんと・能【給】いかゝうらみきこえん
う多てと乃【給】へ八/(いかか)・け春尓・なり尓多りとて・
於ほし於と春なんめりと・三れ八・おとろ可し・
きこえぬとこそ八・きこ江めと・能【給】ふ・[24]その・
【日】・くらして・万多の・あし多尓・【大宮】尓・万いり・
【給】ふ・れいの・三やも・於八し介り・【丁子】二・ふ可く/可〈ママ〉(47ウ)
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 今日は、私がうっかりと終了時間を勘違いしていたために、30分も長く説明してしまいました。90分の講座なのに、120分もお話したのです。大変失礼しました。つい熱中していたために、東京と同じ時間の午後5時に終わるものと錯覚してしまったのです。以後気を付けます。

 帰りには、今日から中之島公園で始まった「OSAKA光のルネサンス2024 中之島の水辺に広がる光のアート」が展開していました。
 土佐堀川から、遊覧船を入れて市役所前のイルミネーションを写すことができました。冬の夜の光の祭典は、華やぎがあって気持ちが温かくなります。

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posted by genjiito at 21:43| Comment(0) | ■講座学習

2024年12月07日

日比谷で「須磨」(19)と『百人一首』(8)を読む

 東京ミッドタウン日比谷の向かいにある日比谷ゴジラスクエアには、全長3メートルのゴジラがいます。見上げると迫力があります。このゴジラからは、いつも元気がもらえます。

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 日比谷図書文化館の入口には、本日の講座が掲示されています。
 画像をクリックすると精細表示となり、文字が読みやすくなります。

241207_掲示.jpg


 今日はまず、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」からです。
 前置きとして、街中の変体仮名とウルドゥ語訳『源氏物語』のことをお話しました。

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241207_はじめに2.jpg

 街中の変体仮名では、「ち於んゐん」と「ぎおん」の「於」と「お」がなぜ書き分けられているのか、という問題提起をしました。別の文字を書くのには、それなりの理由があったはずです。私は答えを持っていないので、こうした例を列挙することで考えるヒントを得たいと思っています。

 ウルドゥ語訳については、パキスタンで刊行された意味と、その本の大きさと、翻訳者はこの本を見ることなく亡くなられたことをお話しました。

 ハーバード本「須磨」については、第35丁裏〜36丁表3行目までを確認しました。予定では6頁分を見るはずでした。しかし、1行分の目移りによる脱落に関してその理由を考えたり、「御多ひ井を」とあるところが諸本では「御すまひを」とあることから、元の物語本文はどのような経緯で伝わってきたのかを考えたので、多くの時間を費やしてしまいました。

241206_須磨36oL3多ひ井.jpg


 以下に、確認を終えた翻字本文をあげます。

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して・を者須・【大殿】乃・わ可き三
乃・【御事】奈と・ある尓毛・いと・あ者れなれと・を
の川可ら・あひ三る・やう毛・あ里那んと・多の毛
しき・【人】/\/(【人人】)・毛のし・【給】へ八・うしろ免多く
八/う&う・ナシ・ナシ/+あらすと、(す&す)・ナシ/+於ほしなさるゝ八、(於ほしなさるる八)・ナシ/+【中】/\、(【中中】)・ナシ/+この・ナシ/+みち八・まと八れ・【給】者ぬ尓やあらん・[20]まことや・さ八
可しか里し・本と尓・可き毛らしてけり・
ナシ・【斎宮】尓毛・【御】ふ三・多てま川里・【給】介り・
かれより毛・布里者へ・【御】つ可ひ・堂川祢万い
れ里・あさ可らぬ・ことゝ毛/(ことと毛)・可き・堂万
へ里・こと乃八・ふて徒可ひ奈と毛/(35ウ)
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・ナシ・ナシ・ひとよりは・こと尓奈ま免可し
う・いうなる・ひと尓・みえ堂り・奈本・
う川ゝと八/(う川川と八)・【思】・【給】へられぬ・【御】多ひ井を・う
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 1時間の休憩時間を挟んで、後半は『百人一首』です。
 今日は、尾形光琳の『百人一首』18首分を確認してから、旧陽明文庫蔵『百人一首』の確認をしました。もう変体仮名が読めるようになった方が多くなったので、ポイントを押さえるようにして進めました。

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■光琳かるた[変体仮名翻字版-2023] 一〇〜二七番歌
(『別冊太陽愛蔵版「百人一首」』、平凡社、一九七四年十一月九日発行 より)

蝉丸
【是】やこの 【行】も【帰】る毛 わ可れては
【知】もしらぬ母 あふ【坂】の【関】

参議篁
【和田】の者ら 【八十島】可け弖 こき【出】ぬと
【人】尓は徒気よ あ万能つ里【舟】

僧正遍昭
【天】津可せ 【雲】の可よひち 【吹】登地よ
おと免の須か多 志はし登ゝめむ

陽成院
徒く者ねの 【峯】より【落】類 三なの【川】
こひそつも里弖 【淵】となりけ(諸本「ぬ」)る

河原左大臣
みちのく乃 【忍】ふもちす里 【誰】ゆへ耳
見堂連所め尓し 【我】ならな九児

光孝天皇(左から右へ)
きみ可【為】 【春】の【野】耳【出】弖 わ可な川む
【我】ころも【手】耳 ゆき盤ふり徒ゝ (右から左へ)

中納言行平
【立】王可れ いな者の【山】濃 三ね尓【生】類
満つとし支可は 【今】【帰】里【来】無

在原業平朝臣
【千早振】 【神代】も支可春 【龍田川】
からくれなゐ尓 【水】具ゝ類と盤

藤原敏行朝臣
す見の【江】乃 きしによるなみ よ留さへや
ゆ免乃か余飛【路】 【人】めよ具ら牟

伊勢
【難波】可多 みし可き【蘆】の ふし乃【間】も
あ者弖【此】よ越 須くしてよとや

元良親王
【侘】ぬ連は 【今】者多【同】し な丹は【成】
【身】を徒くしても あ者むと楚【思】婦

素性法師
【今】こむと いひし【斗】尓 な可【月】の
あ里【明】乃【月】を 【待出】つる可な

文屋康秀
【吹】可らに 【秋】の【草木】能 し本る連八
むへや万可せを 阿らしといふらん

大江千里
【月】三れ八 【千】ゝにものこ楚 かなしけ連
わ可三悲と徒の 【秋】尓はあらねと

菅家
【此】堂ひ八 ぬさも【取】阿へ寸 【手】む希【山】
もみちの尓しき 【神】能まに/\

三条右大臣
【名】尓しお者ゝ 【相坂山】の さねかつら
【人】尓志られ弖 く類よしも可な

貞信公
おくら【山】 三年の【紅葉】ゝ こゝろあらは
い満悲登堂飛乃(左側) 【行幸】ま多【南】(右側)

中納言兼輔
み可の者ら 王き弖な可るゝ 【泉河】
い徒三きと弖閑 【恋】しか留ら舞
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 陽明文庫旧蔵『百人一首』は、少し堅苦しい印象の文字で書かれています。丁寧に字形を確認しながら、吉村仁志氏の試訳を読んで進めました。

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■吉村仁志『百人一首』六六〜七一・試訳 (付・仮名文字に関するメモ:伊藤鉃也)
・吉海直人『百人一首で読み解く平安時代』(角川学芸出版、二〇一二年)の訳(以下、底本の訳)を参考に。
・高校生を意識して、また耳で聞くだけでもわかりやすく、イメージしやすい訳を心がけた。

【六六】
〈原文〉毛ろ【共】尓 【哀】とおもへ 【山】さくら者那より【外】尓 志累【人】もなし
〈底本の訳〉私がお前をなつかしく思うように、お前も私をなつかしいと思っておくれ、山桜よ。こんな山奥では、お前(花)以外に心を知る人もいないのだから。
〈試訳〉私がお前をなつかしく思うように、お前も私をなつかしいと思っておくれ、山桜よ。こんな山奥では、花の他に私の心を知ってくれる人もいないのだから。
・「花より他に」
→底本の訳では、擬人法を用いて花に呼びかけるような訳になっている。あえて「花」と直接訳すことで、人がいない孤独を強調した。
・「知る人もなし」の訳し方
→「知ってくれる人もいない」とすることで孤独を強調した
※仮名文字
【共】【哀】【外】の漢字に注意。
「おもへ」「那」「もな」の仮名に注意。


【六七】
〈原文〉【春】の【夜】能 【夢】者可りなる 【手枕】耳【甲斐】なく多ゝん 【名】こそ於し遣れ
〈底本の訳〉短い春の夜の夢のように、はかないあなたの手枕をお借りしたら、何のかいもなく浮き名が立つでしょうから、それが惜しいのです。
〈試訳〉春の夜の夢のようにはかない、あなたの腕を借りて枕にしてしまったら、何の甲斐もなく浮き名だけが立ってしまうだろう。そんな評判が立つことは惜しまれるので、あなたに逢うつもりはない。
・上の句の訳し方
→「手枕」という言葉は音だけで聞くとわかりづらいと思い、「腕を借りて枕にしてしまったら」と説明的に訳した。
・下の句の訳し方
→「浮き名が立つことが惜しい」と詠むのは、腕を貸そうとした男の提案を断る意図を持っているので、そのことが伝わるように「あなたに逢うつもりはない」という語を補って訳した。
※仮名文字
【春】【夜】【夢】【枕】【甲斐】の漢字に注意。
「なる」「耳」「こそ」「於」「遣」の仮名に注意。


【六八】
〈原文〉【心】尓も あらてう支よ耳 な可らへ者こひし可るへ支 【夜半】乃【月】【哉】
〈底本の訳〉思いのほかに、この世に生きながらえるならば、その時はきっと恋しく思うに違いありません。この美しい夜半の月が。
〈試訳〉そんなつもりもないままに、もしこの世に長く生きたなら、その時はきっと恋しく思うに違いない、この美しい夜半の月を。
・上の句の訳し方
→上の句は「長生きするつもりはないけれど、もし長生きしたら」というニュアンスが伝わるように訳した。
※仮名文字
【夜半】【哉】の漢字に注意。
「支」の仮名に注意。


【六九】
〈原文〉あらし婦く 【三室】の【山】能 毛みち八ゝ多川【田】の【川】能 尓し支【成】遣里
〈底本の訳〉嵐が吹き散らす三室山の紅葉は、やがて龍田川一面に流れ散ります。それはさながら龍田川を織りなす錦だったのですね。
〈試訳〉嵐が吹き散らす三室山の紅葉は、やがて龍田川に流れて川一面を彩る。三室山の紅葉は龍田川を織りなす錦だったのだなあ。
・下の句の訳し方
→紅葉を錦織に例えることをよりわかりやすくするために、「龍田川に流れて川一面を彩る」という表現で、色彩を強調した。
※仮名文字
【成】の漢字に注意。
「婦」「毛みち」「支」の仮名に注意。


【七○】
〈原文〉さひしさ尓 【宿】を多ち【出】弖 な可むれ者いつ具もお那し 【秋】能【夕暮】
〈底本の訳〉さびしさにたえかねて、庵室を出てあたりを眺めてみたところ、どこもかしこも同じさびしい秋の夕暮れでした。
〈試訳〉寂しさに耐えられず、庵を出てあたりを眺めてみると、どこもかしこも同じように寂しい秋の夕暮れだった。
・上の句の訳し方
→「たえかねて」「庵室」という底本の訳は音で聞いた時にわかりづらいかと思い、「耐えられず」「庵」という語に改めた。
※仮名文字
【宿】【出】【秋】【暮】の漢字に注意。
「具」の仮名に注意。


【七一】
〈原文〉【夕】され八 【門田】能いな者 【音】つ連て【芦】農まろや尓 あ幾【風】そ婦く
〈底本の訳〉夕方になると、門田の稲の葉がそよそよと音を立て、この葦葺きの田舎家に秋風が吹くことです。
〈試訳〉夕方になると、門田の稲の葉がそよそよと音を立てて、この葦葺きの家に秋風が吹くことだ。
※仮名文字
【門】【音】の漢字に注意。
「農」「幾」の仮名に注意。
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 七五番歌まで、配布したプリントでは用意していました。しかし、光琳の『百人一首』の説明に手間取ったことと、六八番歌の「ながらへば」の訳が「もしこの世に長く生きたなら」となっていたことから話が予想外に発展したために、今日は七一番歌までしか確認できませんでした。七二番歌からは次回回しです。




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