2019年09月22日

秋の特別企画!「京都でかるたを楽しむ会」に参加

 「大阪点字付きかるたを楽しむ会」が主催する「京都でかるたを楽しむ会」が、京都ライトハウスで開催されました。私は、午後の部からの参加です。

 まずは、四人一首のイメージトレーニングからです。参加者がみんなで、掛け声に合わせて四角い範囲で畳を叩きます。私も交じってやりました。覚えることに加えて、反射神経の鍛練が求められます。これに、上の句を聞いて下の句の札を取るのですから、頭と手がバラバラになります。さらに、見えないという条件が加わると、なおさら戸惑いしかありませんでした。ただひたすらに訓練で慣れるしかなさそうです。

 今日は、盲聾の方のカルタ取りについて、いろいろと考えました。たまたま、筑波大学4年生の全盲の学生が参加していていました。卒業論文で、盲聾の方への学習支援をテーマにした取り組みをしているとのことです。見えない、聞こえないという方とは、ブレイルメモを2台使って、通信しながらコミュニケーションをとります。この実際の場に居合わせたことにより、いい勉強になったようです。ただし、道具を使った通信による会話には時間差があるので、これは今後の課題です。

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 また、進むにつれて決まり字が変わっていくという、限られた枚数の中で競うバリアフリーかるたのためのテクニックなど、少し上級者向けの解説もありました。この集まりも、少しずつレベルが上がってきています。
 団体戦では、取った札の数を競り合うという、熱戦が繰り広げられました。札を取ったら高く持ち上げるというルールがあるので、勝つためにはこのあたりに工夫が必要です。その点でも、小学生たちがすばらしい活躍と成果を見せていました。

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 最後に、読手を務めておられた京都小倉かるた会の植山さんと、同志社大学競技かるた同好会の吉村君のエキシビションがありました。ここでの読手は、小学生のH君です。和歌を打刻した点字シートを触読しながら、堂々とした読みっぷりでした。

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 実力伯仲の真剣勝負だったので、目が見えない方々にもその気迫がじかに伝わったようです。
 1手ごとに札の並べ方や、相手に札を送るときのテクニックに関する説明には、みなさん真剣に聞き入っておられました。
 こうした実践の場に身を置くと、この競技の魅力がストレートに伝わってきます。

 最後に、参加したみなさんのコメントがありました。集中力に加えて記憶力が求められていることが、みなさんの発言から実感として聞こえてきました。こうした実戦形式の対戦で、団体戦の楽しさを体感なさった方がも多かったようです。
 この集まりも、参加者が毎回増えています。益々の広がりと発展が楽しみです。 
 
 
 
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2019年09月03日

点字付百人一首のことがよくわかるPR動画の紹介

 「点字付百人一首」といっても、その実際をご存知の方はまだ少ないと思います。
 そこで、「百星かるた会」が公開しておられるPR動画(約7分)を紹介します。

「はじめよう 点字と大きな文字のついた百人一首 −四人一首の巻−」

 これまでに本ブログの記事で登場した方が、一人でも多くの方々に「点字付百人一首」のことを知ってもらおうと大熱演です。これを観て、「点字付百人一首」がどういうものかを知っていただけると幸いです。

 さらに、「点字付百人一首」に興味を持たれた方は、精力的に普及活動をなさっている南沢創さんのホームページ「バリアフリーかるたの世界へようこそ!!」にアクセスしてみてください。

 この南沢さんのホームページのトップに、以下の案内があります。
点字・拡大文字つき バリアフリー百人一首
 2019年 全国大会 開催!
 日時:11月2日(土)13時半〜
 会場:東京ボランティア・市民活動センター
    飯田橋駅から徒歩2分

 私は、この日は池田亀鑑賞の授賞式があるために参加できません。来年のパラリンピックのためにも、一人でも多くの方々にこの取り組みの実状を体感していただけたらと思います。

 また、南沢さんのホームページの「視覚リハ大会in盛岡の発表ポスターはこちら!!」も、「点字付百人一首」のことが簡潔にまとめられていますので、ぜひご覧ください。このポスターの最下段には、写真などを提供した私のことが協力者として記されています。独自に「点字付百人一首」の広報活動をしていることもあり、このポスターも多くの方が見て読んでくださることを願っています。
 参考までに、このポスターを転載しますので、これが拡散するといいと願っています。
 大きな画像なので、この画像を一度クリックしてから、拡大してご覧ください。

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2019年08月29日

京大病院の眼科で診察を受ける

 京大病院の眼科で、白内障に関する検査を受けて来ました。
 これまで、本ブログに書いたことで振り返ると、以下のような経緯があります。
「あわてて眼科で白内障の検査を受ける」(2015年06月23日)
 今日は、視力検査に始まり、薄暗い部屋で眼底検査ともう一つ何か別の機械で目の検査がありました。瞳孔を開く目薬をさされていたので、眩しさを我慢しながらの検査です。
 診察の結果、眼の中心部分が濁っているので、全体的に見づらくなっているのではないか、とのことです。急ぐ必要はないとしても、いずれは手術をすることになるものだということなので、この段階でお任せすることにしました。多くの方が手術を待っておられる状態なので、私の順番は半年後の来年の2月以降になるそうです。10日ほどの入院だとか。
 白内障手術では、単焦点レンズと多焦点レンズの選択があります。次の診察の9月11日までに決めることになりました。今は、多焦点レンズにしようと考えています。

 夕方の賀茂川散歩では、このところの大雨で川の水嵩があがっていることがよくわかりました。鴨や鷺たちは、久しぶりの水を楽しんでいるように見受けられます。

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 夕方のニュースで、大阪大学が世界で初めてのiPS細胞を使った角膜の再生医療に成果があったことを放送していました。そして、患者の視力は確実に回復しているそうです。
 大阪大学眼科の西田幸二教授らのグループは、角膜の表面が傷つき失明状態にある患者に対して、iPS細胞から作った角膜シートを移植し、その患者が8月23日に退院したということです。
 使われた角膜シートは、京都大学から提供された他人のiPS細胞を培養して作られたものだそうです。患者に拒絶反応はなく、失明状態だった視力は移植後に回復しているということです。字も見えるようになったということなので、これは目が見えない多くの方々にとっては朗報です。見えなかった眼が見えるようになるということは、日常生活が変わることです。今、点字百人一首を通して多くの目が見えない方々と接しているので、これは新しい世界が拓けることになります。
 東京の日比谷図書文化館で開催している源氏講座には、2人の全盲の若者が受講しています。今は立体コピーで作成した、鎌倉時代の古写本『源氏物語』を読んでいます。これが、自分の眼で変体仮名が読めるようになることは、何物にも換えがたい感動的な出来事となるはずです。多くの方々に夢と希望を与えるニュースに接して、私もその余香を大いに噛みしめています。
 
 
 
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2019年08月20日

秋の特別企画!「京都でかるたを楽しむ会」のご案内

 「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の兵藤美奈子さんから、9月に京都で開催されるイベントの連絡が届いています。ちょうど1ヶ月後となりましたので、ここにお知らせします。
 私は、午後の部から参加します。

秋の特別企画!
「京都でかるたを楽しむ会」開催のご案内

 今、目が見えない人も見えにくい人も見える人も、一緒に百人一首かるたを楽しもうという機運が全国的に高まってきています。
 このたび、ご好評につき9月に「楽しむ会」を企画しました。
 百人一首には「秋」や「月」を読んだ歌が多くあり、歌を通じて秋を感じるのもいいですね。
 百人一首の歌を全く覚えていない方、点字が読めない方も大丈夫です。
 深まりゆく秋、当日は色々な遊び方を一緒に楽しみましょう。

主催:大阪点字付きかるたを楽しむ会
日時:9月22日(日)
    午前の部10時〜12時30分
    午後の部13時30分〜17時
    (いずれかのみの参加も可)
  *途中参加・途中退出の場合はあらかじめご連絡ください。
会場:京都ライトハウス 1階 和室
内容:お坊さんめくり(坊主めくり)、札を並べての個人対戦・団体戦、
   他にも楽しい企画を検討中です。
費用:無料
申込:9月18日までに以下へお願いします。
代表 兵藤 美奈子(ひょうどう みなこ)(メール:putti-castle205@key.ocn.ne.jp)
  または、事務局 野々村 好三(ののむら こうぞう)(電話 090−3841−9107)へ。
  *関心を持たれた方は、お気軽にお問い合わせください。

 
 
 
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2019年07月15日

大盛会だった「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の福岡開催

 今日は、「大阪点字付きかるたを楽しむ会」が福岡県春日市であるため、早朝より博多へ移動です。
 しかし、新幹線が1時間遅れで京都に来たため、移動の調整でバタバタしました。こんなに遅れる新幹線に出会ったのは何十年ぶりでしょうか。この前がいつだったのか、まったく思い出せないほど昔のことです。新幹線の運行システムの信頼が高いことは、その背景にある技術力が支えているのです。すごいことです。といっていたら、車内放送が65分遅れのお詫びの後に、「この先、線路の高架に自動車が衝突したため、確認のために発車を見合わせることがあります。」とのこと。もう、無事に着いてくれたらいい、と思うようになりました。海外の交通機関ではよくあることです。どうしようもないので、大きな気持ちでゆったりと座って行くことにします。そうこうするうちに、姫路駅で停車し、ひとまず様子見となりました。結局、1時間半の遅れで博多に着きました。

 今日は、目が見えない方々が『百人一首』のカルタを楽しむ日です。私は、この競技が国際的に広まり、来夏のパラリンピック関連のイベントで認知度が高まるように、国内はもとより、国際交流の立場からも広報の役割を担って参加しています。日本の古典文学の精華の一つである『百人一首』を世界的な認知へと展開するためにも、来年のオリンピック・パラリンピックは好機です。現在取り組んでいる科研の「海外における平安文学及び多言語翻訳に関する研究」(課題番号︰17H00912)でも、「百人一首」はもとより、この「点字付百人一首」も取り上げて、研究対象としているところです。

 会場となったクローバープラザは、立派な施設でした。その最上階である8階でかるた会は行なわれます。

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 参加者は30名。東京からは、百星の会の関場さん親子。大阪の事務局の兵藤さんと野々村さん。九州かるた協会のお2人には初めてお目にかかりました。

 野々村さんの開会宣言、兵藤さんの挨拶で始まりました。
 京都小倉かるた会と九州かるた会のプロの方(公認読手)の紹介。
 天智天皇の歌と菅原道真の歌が九州と関係があるとのことで、地元の方からの歌の説明がありました。
 今日取り上げる歌10首の資料と、点字付きカルタの実物も配布されました。

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 自己紹介では、福岡からはもちろんのこと、大牟田、朝倉、北九州、長崎、明石、大阪、東京と、各地から集まっておられました。

 関場さん親子の名調子で、かるた会は楽しく進みます。
 まずは「百人一首クイズ」からです。テーブルに置かれた3つの品物が、それぞれどの和歌と関係するかを答えるものでした。
 テーブルには(1)焼塩、(2)モグサ、(3)青汁、が置かれています。

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 配布された点字資料(墨字プリント)には、次の和歌が記されています。
百人一首クイズ
 テーブルに並んだ1から3番の品物と関係の深い歌はどれでしょう?

心あてに折らばや折らむ初霜の
  置きまどはせる白菊の花
    凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)

君がため春の野に出でて若菜つむ
  わが衣手に雪はふりつつ
    光孝天皇(こうこうてんのう)

来ぬ人をまつほの浦のタなぎに
  焼くや藻塩の身もこがれつつ
    権中納言定家(ごんちゆうなごんていか)

かくとだにえやはいぶきのさしも草
  さしも知らじな燃ゆる思ひを
    藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)


 テーブルの上の3品を触り、口にしたりなどして、答えを探します。見えないことから、触覚・味覚で想像を膨らませるのです。これは、なかなかいいアイディアで、五感を駆使したゲームとなっています。私は、モグサを始めて触りました。これは、若い方には難題でしょう。その意味もあって、火をつけたお灸が、ヒントとして回されました。

 今日の会場には、盲導犬と一緒の方もいらっしゃいました。盲導犬と一緒に数時間を過ごしたのは初めてです。

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 「四人一首」は、目の見えない方々のために、南沢さんが開発なさったものです。ボードの四隅にリズミカルに手を置く体操をすることで、いい準備運動になります。
 続いて、決まり字の練習。実際にかるたを4枚取り出し、ボードの四隅に置きます。
 例えば、「よを」と読まれた時、「よにあふさかの」を取ります。ここで、「あふさか」と書かれている言葉の読み方や意味がわからないとのことで、昔の書き方だと説明されます。こうした歴史的仮名遣で書かれた札を、現代の表記による音読で取ることの難しさが、今後の普及に問題となることでしょう。特に、海外からの参加者が増えるに従って、こうした日本語の文字の表記に関する疑問は多く出てくるはずです。その対策を、今以上にすべきでしょう。

 盲と聾の方もいらっしゃいます。2台のブレイルメモと指文字でのコミュニケーションで、みなさんと一緒に『百人一首』に取り組んでおられました。これは、コミュニケーションに時差が伴うものなので、読手が読み上げると同時にブレイルメモのピンが表示するシステムを開発すべきです。どなたか、提案してくださいませんでしょうか。

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 歌を詠む練習も、しっかりと丁寧に行われました。読む時に気をつけること、特に決まり字の発音をいかに明瞭に詠むかなど、わかりやすい説明が九州の読手の方からありました。最後には、初めて読み上げる体験をしたという方々が、積極的に読手となって場を盛り上げてくださいました。楽しさが会場全体を包み込む、いい雰囲気となっていました。

 実践編では、京都ライトハウスが作成されたかるたを使って行われました。

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 初めての方が何人もいらっしゃっいました。そのほとんどの方が、目が見えなくてもかるたが取れることに感動しておられました。私の街にも広めたいと。とにかく実際に体験していただくことが、一番の広報となるようです。

 嬉しいニュースもありました。
 パラリンピックを機会に、バリアフリーかるたの大会を開催する準備が進んでいます。そして、来年の5月と8月には、パラリンピックの一環として、ワークショップの形で東京と近江神宮を会場として実施するそうです。このことは、近日中にこのブログでも取り上げてお知らせします。その準備として、「百星の会」では11月2日(土)のイベントとして、次の全国大会も企画されています。ぜひ、多くの方に参加してほしいものです。

速報! 百人一首の全国大会が
11月2日(土)に東京で開催されます!
出場選手を大募集中です。
個人戦と団体戦(1チーム3人)。
会場は「サイトワールド」にも行きやすい飯田橋です。
出場選手には宿泊費の補助あり。
お申し込み・お問い合わせは、「百星の会」まで!


今後の「点字付百人一首」の展開がますます楽しみです。

 なお、『百人一首』に関して点字とデイジーの図書では、田辺聖子さんの本、阿刀田高氏の本、橋本治氏の本も、お勧め図書として関場理生さんから紹介されました。現代詩の最果タヒさんの本はデイジーだけだそうです。興味のある方は、ぜひご一読を。

 役員のみなさま5人と一緒に、今回の反省会と今後のさらなる発展のための意見交換会を、帰り際に事務所でコーヒーをいただきながら話しました。次回に向けて、いい提案がいくつも出ました。私は、盲教育史研究会との連携を提案しました。
 一緒に、博多まで移動しました。再会を約して、盛会だった会の余韻に浸りながらお別れしました。みなさま、お疲れさまでした。
 私は博多で一泊するので、夕食は筑紫女学院大学の須藤氏と博多駅前で、いろいろな話をしながら、京料理屋さんでおばんざいをいただきました。最近は食が極端に細り、この時も多くを残しました。小まめに食事をする日々を送っています。
 
 
 
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2019年06月10日

「福岡でかるたを楽しむ会」のご案内

 来月、7月15日(月・海の日で祝日)に、福岡で『百人一首』のかるたを体験する会があります。
 「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の代表者・兵藤美奈子さんから、以下の連絡が来ましたので転載してご案内とします。


「福岡でかるたを楽しむ会」開催のご案内



 今、目が見えない人も見えにくい人も見える人も、一緒に百人一首かるたを楽しもうという機運が全国的に高まってきています。
 来年、ロービジョン対応点字付きかるたを使用した大会の開催も予定されており、小学生から年齢層の高い方まで、幅広い視覚障害者が感心を寄せています。
 今回は天智天皇の歌「秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ」のゆかりの地、福岡で開催。
 百人一首の歌を全く覚えていない方、点字が読めない方も大丈夫です。
 色々な遊び方を楽しみましょう。

主催:大阪点字付きかるたを楽しむ会
日時:2019年7月15日(月・祝)
   13時〜16時30分
会場:クローバープラザ8階第3和室A・B
(〒816-0804 福岡県春日市原町3丁目1
 電話092-584-1212、JR春日駅徒歩1分)
内容:坊主めくり、百人一首クイズ、初心者向け四人一首、個人戦体験など、楽しい企画盛りだくさん!
※定員30名程度、参加費無料。
申込:7月10日(水)までに、代表 兵藤 美奈子(ひょうどう みなこ)へ
  (メール:putti-castle205@key.ocn.ne.jp)
  *関心を持たれた方は、お気軽にお問い合わせください。

 
 
 
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2019年05月01日

「京都でかるたを楽しむ会」で『百人一首』

 「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の主催で『百人一首』を楽しむ会がありました。会場は、千本北大路交差点の角にある京都ライトハウスです。

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 朝10時からと早い開始時間にもかかわらず、26人が集まりました。自己紹介から、和気藹々と楽しくスタートです。
 今日は、点字もかるたも出来ない人でも『百人一首』を楽しめるように、と宇都宮からお越しの南沢さんが考案された試みの実践からです。
 来年のオリンピックイヤーに向けて、東京大会の練習という目標も示されました。

 南沢さんの新しい遊び方は次のものです。
 まず、畳一畳の短い辺の内側に座り、かるた札を置くスペースの確保です。

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 もっとも、その時に、京都の畳は東京よりも少し大きいことがわかりました。日ごろは意識しないものなので、意外なことに気付かされたのです。しかし、カルタは16枚半分(87cm)の空間に並べるので、そんなに問題はなさそうです。今日は初心者向けのイベントでもあるので、少し内側を自陣にすることを勧めておられました。

 練習するのは四人一首の競技なので、身体の正面には四枚を四角形に置きます。
 左奥が「1」 左手前が「2」 右奥が「3」 右手前が「4」として、札を置く位置を決めます。そして、「1、2、3、4」の号令に合わせて、その位置に手を置く練習をしました。次々と読みあげられる札を、リズミカルに取る感覚を養うものです。四枚を並べて取る四人一首のためには、これはなかなかよく考えられた練習方法になります。
 さらには、南沢さんが作られた練習用のCD-ROMを、参加者全員に配ってくださいました。これを自宅で聴いて練習を、ということです。

 引き続き、実践体験となります。
 次のように、参加者の興味と関心と実力を考えて、四グループに分かれました。

(1)四人一首
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(2)個人戦
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(3)百枚取り
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(4)坊主めくり
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 それぞれ、真剣な表情で取り合いです。
 一通り慣れてからは、京都小倉かるた会の三上さんが、午後の札の解説をわかりやすく、そして楽しく語ってくださいました。

 みんなで3階の一室で昼食をとってから、また1階の和室に集まり、午後の部です。

 まず、京都小倉かるた会の植山さんが読手として指導してくださり、かるたを読む練習をみんなでしました。それが終わると、いよいよ、30枚の札を使った団体戦です。1チーム3人で、一人の前には10枚を置いて始まります。

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 読まれた歌の下の句が書いてある札を持ち上げることで、取ったことにするというルールです。
 それをやっていくうちに、どれをお手付きとするか? について相談です。札を上から押さえた時点ではお手付きとしない、となりました。こうしたルールを明確に決めて、みんなで共通理解を深めながら競技を進めることが、当面の大きな課題です。

 とにかく、みんなで大いに盛り上がった一日でした。
 みなさま、お疲れさまでした。

 その後、大阪からお越しの方で、変体仮名を触読してみたいという高校一年生との出会いがありました。東京の護国寺にある筑波大学附属視覚特別支援学校に通っているとのことなので、日比谷図書文化館で月に一回古写本を読んでいることや、尾崎さんがその講座に参加している話をすると、参加したいとのことです。ちょうど、今月11日(土)に古文書塾「てらこや」の講座があるので、それに参加をしてみたいとのこと。さっそく、資料等を渡して、今後の打ち合わせをしました。
 これからが楽しみな若者と一緒に、また新たなチャレンジをしてみます。折々に、その後のことをここに報告します。

 ■今日使った札は、以下の30首です。■
 9 はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに
15 きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ
33 ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづごころなく はなのちるらむ
35 ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける
61 いにしへの ならのみやこの やへざくら けふここのへに にほひぬるかな
73 たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ
 2 はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま
36 なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ
48 かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな
81 ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる
98 かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける
70 さびしさに やどをたちいでて ながむれば いづこもおなじ あきのゆふぐれ
18 すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
77 せをはやみ いはにせかるる たきがはの われてもすゑに あはむとぞおもふ
22 ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ
87 むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふぐれ
57 めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな
50 きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな
67 はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ
96 はなさそふ あらしのにはの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり
 1 あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ
62 よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ
83 よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる
93 よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのをぶねの つなでかなしも
97 こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに やくやもしほの みもこがれつつ
31 あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
99 ひともをし ひともうらめし あぢきなく よをおもふゆゑに ものおもふみは
64 あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ
76 わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ
11 わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね

 
 
 
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2019年04月15日

「百星の会」から栃木県の石田さんの訃報が届きました

 「点字・拡大文字付き百人一首〜百星の会」の関場理華さんから、「栃の葉かるた会」を主宰なさっていた石田えりさんの訃報がもたらされました。
 石田さんには、高田馬場の新宿区社会福祉協議会の中にある視覚障害者交流コーナーで、何度かお目にかかりました。
 広く情報を共有し、石田さんに哀悼の意を捧げたいと思います。

 栃木県で、「栃の葉かるた会」を主宰されていた石田えりさんが、お亡くなりになりました。
 今から5年前、「百星の会」が結成されたばかりで、まだ参加者も少なかった頃、応援したいと言って、往復3時間も掛けて、毎回かるた会に足を運んでくださり、楽しいおしゃべりと、暖かなハートで、いつも会を盛り上げてくださいました。
 栃木の方も、たくさん誘ってくださって、実際に体験すれば、面白さがわかる! と
普及のことを絶えず考えてくださっていました。
 そして、「栃の葉かるた会」を結成されて、定期的に百人一首を楽しめる場を音訳ボランティアの方々も巻き込んで、作ってこられて、またそこはかるたを楽しんだ後の、おいしいランチにおしゃべり…などなど楽しさが盛りだくさんの会になっていると、伺っております。
 このMLでも、情報がアップされると、いの一番に、返信をくださり、常に会にエネルギーを注ぎ込んでくださった・えりさん お会いすることができないなんて、未だに信じることが出来ないでおります。

 謹んでご冥福をお祈りいたします。

     関場理華

 
 
 
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2019年04月08日

「京都でかるたを楽しむ会」のイベントの案内

 「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の代表者である兵藤美奈子さんから、以下のイベント開催に関する連絡が届きました。
 私も参加しますので、初めてで様子のわからない方は、会場で私(伊藤)を探してください。ご説明いたします。
 

ゴールデンウィーク特別企画!
「京都でかるたを楽しむ会」開催のご案内



 今、目が見えない人も見えにくい人も見える人も、一緒に百人一首かるたを楽しもうという機運が全国的に高まってきています。
 このたび、新春に続きゴールデンウィークにも「楽しむ会」を企画しました。
 「春すぎて夏来にけらし…」という歌も聞こえてきそうな時期ですね。
 風薫る5月、一緒にかるたを楽しみませんか?
 百人一首の歌を全く覚えていない方、点字が読めない方も大丈夫です。
 当日は色々な遊び方を楽しみましょう。
主催:大阪点字付きかるたを楽しむ会
日時:5月1日(水・祝)午前の部10時〜12時30分
   午後の部13時30分〜17時(いずれかのみの参加も可)
  *途中参加・途中退出の場合はあらかじめご連絡ください。
会場:京都ライトハウス 1階 和室
  (「会場への地図」
内容:お坊さんめくり(坊主めくり)、札を並べての個人対戦・団体戦、
   他にも楽しい企画を検討中です。
費用:無料
申込:4月25日(木)までに、代表 兵藤 美奈子(ひょうどう みなこ)
  (メール:putti-castle205@key.ocn.ne.jp)
  または、事務局 野々村 好三(ののむら こうぞう、電話 090-3841-9107)へ。
  *関心を持たれた方は、お気軽にお問い合わせください。

 
 
 
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2019年02月27日

『点字毎日』で紹介された「点字付百人一首」

 「点字付百人一首〜百星の会」の関場さんから、嬉しい情報をいただきました。
 先週号の「点字毎日」(2019年2月17日号)で「点字付百人一首」に関する活動が取り上げられた、というものです。一人でも多くの方々に「点字付百人一首」のことを知っていただきたいとの思いから、以下に引用して紹介とします。

「ルポ 最前線を行く
〜点字付きかるた じわじわ人気上昇
各地で同好会結成 世代を超えて楽しむ〜」



 点字付きの小倉百人一首かるたを使ったかるた取りが、じわじわと人気を集めている。主には東京や大阪、福島に同好会があり、それぞれの地で体験会が開かれている。点字付きの取り札は東京の日本点字図書館や京都の京都ライトハウスなどで買えるようになり、これまでなじみの薄かった人にもかるた遊びは身近なものになりそうだ。【平井俊行】

  「火付け役は 東京『百星の会』」

 このブームの火付け役とされているのが、東京の「百星の会」。2011年ごろから活動を続けている。それまでにも点字付きのかるたはあったが、個人で楽しむ程度がせいぜいで広く視覚障害者に知られるものではなかったという。
 そんな状況の中で、同会は定期的に体験会を開催して点字付き百人一首を紹介するとともに、参加者の意見をもとに用具とルールづくりも進めてきた。
 試行錯誤を重ねて生まれた一つがアーチ状に加工された取り札。めくりやすく、その形から「八つ橋型」とも「瓦型」とも呼ばれる。点字表示は札を挟んで向かい合う競技者のどちらからも読める。弱視者用に黒色の札に白色の文字の札も作った。手作りのため非売品だが、同会事務局の関場理華さん(52)は「多くの人にこのかるたに親しんでほしい」と話し、希望者に提供している。また初心者向けに代表的な10首を取り上げて解説書付きで紹介した点字と墨字の冊子もある。
 練習会は毎月第1、第3水曜日の午後6時から、新宿区の社会福祉協議会1回の視覚障害者交流コーナーで開催。ほかに月1回、都内で「1日かるた会」も開いている。
 関場さんは「世代を超えて意気投合できるところがかるたの魅力」と参加を勧めている。問い合わせは平日の午前10時から午後5時までに関場さんへ。

  「関西で体験会 広がりに期待」

 「百星の会」に続けと、関西で体験会の開催を続けているのが「大阪点字付きかるたを楽しむ会」。17年11月の結成で、2か月に1度、日本ライトハウス情報文化センター(大阪市西区)にメンバーが集まっている。体験会は今月1日、初めて神戸でも開かれ、参加者が4枚の札を使って、2人が競う「四人一首」などを楽しんだ。
 会場になったのは眼科専門の病院などがある神戸アイセンター(神戸市中央区)2階の「ビジョンパーク」。全日本かるた協会のA級資格を持つ現役選手が読み手を務めた。「四人一首」では、札を四角い敷物の四隅に1枚ずつ置く。4枚なので覚えやすく、点字を詠むのが苦手な人も一緒に遊べる。札は1枚減ったら足していく。10枚中何枚取れるかを競った。
 現場では、次の句が読まれるのをじっと待つ参加者から漂う緊張感が伝わってきた。イメージトレーニングの続きだろうか、時折、指を動かしている人もいた。
 読み始めても、まだ手は伸びない。迷っているようだ。少し間を置いてテーブルを挟んで腕が交差した。「あった」「また間違った」。取った札の点字を確かめる参加者の歓声が響いた。新しい札が足されると、また腕がテーブルの上を交差した。「点字を習って日が浅い」と話していた川田ゆみ子さん(64、全盲)は「こっちが『わ』で、こっちが『よ』」とつぶやきながら、札を触っていた。視力を失って家にとじこもりがちだったという川田さん。点字を覚えて、同会の交流会に参加するようになって表情が明るくなったと人から言われることが増えたという。「点字をスラスラとは読めないけれど、かるたは楽しい」と笑顔だった。
 同会の兵藤美奈子代表(46、全盲)は「いろいろな場所で体験会を開きたい。会場を提供してくれる人も募集しています」と話していた。問い合わせは兵藤さんへ。

  「福島に新たなグループ誕生」

 東京や大阪以外でも同好会結成の動きが出てきた。福島県では昨年7月、視覚障害者向けの文学講座の受講者らが「福島県点字・拡大文字付きかるたサークル」を結成。講座で教えてきた県立視覚支援学校高等部国語科教諭の渡邊寛子さん(50、全盲)を中心に20〜80代のメンバーが集まる。講座で百人一首を取り上げたとき、中途失明で点字も墨字も読むことが困難という人が「昔口ずさんだことがある」と喜んでくれた。以来、8年半かけて百首を取り上げた。そして「百星の会」などの取り組みを知り、サークルを結成。渡邊さんは「かるたを通じた交流の輪が広がってほしい」と話している。同サークルへの問い合わせは県立視覚支援学校の渡邊さんへ。

 
 
 
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2019年02月21日

「第6回 大阪点字付きかるたを楽しむ会」のご案内

 「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の代表をなさっている兵藤さんから、お知らせが届きました。来月、3月9日(土)の午後、大阪の肥後橋にある「日本ライトハウス情報文化センター」を会場にして、『点字付き百人一首』を楽しむ催しです。この会も、スタートから1年が過ぎ、着実に回を重ねています。
 実は、私はまだ一度もこの会に参加できていません。週末は何かと予定が入るためです。今回の3月9日(土)も、ちょうど私がルーマニアのブカレストを発つ日に当たりました。またいつか、ということで、今回も開催のご案内だけですみません。
 

第6回 「大阪 点字付きかるたを楽しむ会」ご案内



厳しい寒さが続いておりますが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか。

さて、「点字の百人一首を楽しめる場を大阪で作りたい!」という思いから始めたこの集まりも、皆様に支えられ、1年を超えることができました。
この間、点字毎日や日本ライトハウスさんの情報誌などに取り上げていただき、大変嬉しく思っております。
これまでのご縁を大切にしつつ、ますます多くの方々と、かるたの魅力・楽しみに触れられればと思っております。

毎回、坊主捲りや4人一首、文字通り100枚使っての百人一首で盛り上がっています!
点字の付いたカルタ(百人一首)のお持ち込みも大歓迎です。
ご持参いただける方は、お申し込み時にお知らせください。
「点字は苦手」という方もお子さんも、一緒に楽しめる場にしたいと思います。
皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2019年3月9日(土)13時30分〜16時30分
場所:日本ライトハウス情報文化センター 4階 会議室3
(大阪市西区江戸堀1-13-2 電話  06-6441-0015)
交通:大阪市営地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」北改札から2番出口を出てすぐ左。
   もしくは地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋駅」4番出口から西へ400m
  (肥後橋交差点の南西角)
費用:大人−500円 高校生以下−無料
定員:先着20名(定員になり次第締め切ります)
申込:事前に、下記へメールでお願いします。
putti-castle205@key.ocn.ne.jp
(楽しむ会代表・兵藤美奈子)
※いただいたメールにすぐにご返信できない場合もありますが、ご容赦ください。
※メールは前日までにお願いします。
お問い合わせ先:野々村好三(電話090−3841−9107)

<持参予定の点字付きの札について>
@「点字付き お坊さんめくり」(発売元:京都ライトハウス)
A 4人一首セット(製作:「百星の会」=非売品)
B 競技用百人一首、白黒反転(発売元:京都ライトハウス)
C 百人一首(製作:点訳ボランティアの方)
※Cは荷物が多い場合には、Bで代用いたします。

<参考1>
坊主捲りには、上記「点字付き お坊さんめくり」を使用しています。
札を横長に置いた時の左上の角が丸くカットされ、上下に札の記号があります。
札は姫は「メメ」(姫のメ)、
坊主は「こた」(お坊さんの頭?)、殿は1本線のほか、皇族を表す台座も点字で表されていて、手で触って区別しやすくなっています。

<参考2>
2016年公開映画『ちはやふる』[上の句][下の句]は、シネマデイジーでお楽しみいただけます。
手に汗握る、競技かるたの世界をご堪能ください。

兵藤 美奈子

 
 
 

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2019年01月14日

近江神宮で全国競技かるた大会を観る

 「新春!東西でかるたを楽しむ会」の第2日(13日 日曜日)は、カルタ取りの実践訓練と、『百人一首』の聖地と言われる近江神宮への旅となります。
 前日に京都ライトハウスから「宇多野」の宿泊所に移った25人は、宿舎で団体戦のかるた会をしてから、午後は琵琶湖へと移動です。
 私と妻は、みなさんをJR山陰本線(嵯峨野線)太秦駅でお待ちしました。
 宿泊所から太秦駅までの道案内は、私の姉が担当しました。すぐ近くに住む義姉も、このあたりは詳しいということで協力参加してもらえました。
 太秦駅でみなさんと会ってからは、電車で一路京都駅まで出ます。そして、京都駅ビル東ゾーン2階の京都劇場の前にある「徳兵衛」というお店で、みんなで昼食会です。年末にそのお店の2階全面(40名席)が予約できたので、我々27人の一団は旬のおばんざい6種を盛り込んだ「おばんざい御前」を、ゆったりといただくことができました。
 さて、いよいよみなさん憧れの近江神宮への旅の始まりです。
 京都駅からJR湖西線大津京駅までは11分とすぐです。JR大津京駅からは、京阪石山坂本線の京阪大津京駅から一駅先の近江神宮前駅へ行く予定でした。このことは、すでに「『百人一首』の近江神宮で吹雪にあう」(2018年12月28日)に書いた通りです。
 しかし、みなさんの様子を拝見していて、タクシーを使って近江神宮に直接行くことになりました。

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 この近江神宮は、映画「ちはやふる」でよく知られています。今回の参加者は全員といってもいいほど、この映画のことをよくご存知です。この階段を歩くことはもちろんのこと、さらに下の長い階段も、白状を突いて登られるグループもあります。映画の世界にご自身を投影してのことのようです。元気です。
 本殿下の境内では、ジャンボかるた大会が開催中でした。みなさんは、ジャンボかるたには点字が付ていないのと、広い境内に札が散っているので参加はできません。しかし、境内に響き渡る読み手の声に耳を傾けながら、聖地に来たことを実感しておられました。この読み手の方は、今回同道の京都小倉かるた会の方々のお仲間だとか。世間は狭いものです。

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 かるたの競技会場となる近江勧学館へ行く途中にある「天智天皇御製」の石碑の前では、刻まれた和歌を手で触っておられました。

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 近江勧学館では、「高松宮記念杯 近江神宮全国競技かるた大会」が行なわれていました。裏手から、競技会場を拝見しました。

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 若者たちの熱気が、窓越しにも十分に伝わってきます。『百人一首』が広く親しまれ、競技としても頼もしく展開していることがわかります。
 『百人一首』のかるた大会を堪能した後は、入口にあるお土産を手にしておられました。いい記念になることでしょう。
 近江神宮からは、来たときの逆コースでタクシーを使うことになりました。
 充実した時間の中に身を置き、京都と滋賀の旅は無事に終わりました。
 京都駅では、お別れが惜しくて、なかなか離れられません。
 元気な方は夜行バスにしておられ、これから市内に出かけるとのことです。みなさん、有効に時間を使っておられます。
 なお、今回も参加なさっていたドラネコさんが、すばらしいホームページを立ち上げておられます。
「バリアフリーかるたの世界へようこそ!!」
 この中の「○バリアフリーかるたに挑戦しよう!」をクリックして、「百人一首」ならぬ「四人一首」を体験してみてください。

 2日間の楽しかった時間を共にしたみなさんとお別れしてから、私は、一昨日の頭部手術後の経過観察のために、京大病院に向かいました。今日の皇后杯全国女子駅伝の後の影響もあってか、市内は大渋滞です。京都駅から病院まで1時間もかかりました。途中で駅伝の結果を確認したら、1位が愛知、2位京都、3位大阪とのことでした。都大路も熱気に包まれていたようです。
 やっと病院に到着したと思いきや、急患が入ったとのことで、さらに待つことになりました。のんびりと、一昨日妻が私を待ってくれていたソファーで、電気ストーブに当たりながら呼び出しを待ちました。
 診察の結果、順調に傷口が回復しているので、5日後には抜糸となりました。顔の腫れも酷くなく、少し黒ずんでいるだけです。それでも、右目はやはりだるさが残っていて、目を瞑るとフッと寝てしまいそうになります。しばらくは、こんな調子で過ごすことになりそうです。私が気怠そうにしていたら、まだ完全に直っていないと察して、構わないでください。10日もすれば、今まで通りの生活に戻れると思います。
 
 
 
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2019年01月13日

京都ライトハウスで「新春! 東西でかるたを楽しむ会」

 東京の「点字・拡大文字付き百人一首〜百星の会」と、大阪の「大阪点字付きかるたを楽しむ会」との合同企画である、「新春!東西でかるたを楽しむ会」の初日(12日土曜日)は、京都ライトハウスが会場です。
 東京方面から参加の、目が見えない方6名と見える方5名の11名を、新幹線中央口でお出迎えしました。そこへ、さらに大阪組2名が合流。出迎え組は、私の関係者5名です。
 到着のみなさまには中央口改札前でいくつかのグループに分かれていただき、お昼のお弁当を買うために「The CUBE 京名菓・名菜処 亰(みやこ)」へご案内しました。ここは駅弁とは違う、京都の名店が提供するお弁当が手に入るのです。お弁当選びのお手伝いを、まずは出迎え組がします。

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 そのお弁当を持って、地下鉄で北大路駅まで移動。そこからは予定していたバスではなくてタクシーになりました。いつもお世話になっている京都ライトハウスの野々村さんが、玄関まで出迎えに来てくださっていました。
 早速、駅で手に入れたお弁当を「ふれあいカフェ きらきら」でいただきます。お弁当とはいえ老舗の味なので、豪華な御菜の昼食会です。
 開会前に、野々村さんに館内を案内してもらいました。幅広い活動を展開しておられる施設なので、見所がたくさんです。私は、点字ブロックで突起の低いものに注意が向きました。

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 現在、街中に張り巡らされている点字ブロックは、不必要な箇所が多過ぎるという私見を持っています。このことは、「点字ブロックは本当に視覚障害者のための物でしょうか」(2018年10月22日)という記事で問題提起をしました。あの突起でつまずく障害者や高齢者が多いことや、車イスが困ることを考慮した設置をすべきだ、と思っています。もし、補助金や既得権の関係でどうしても敷き詰めたいのであれば、この低突起の点字ブロックにすべきでしょう。また、細い線で誘導する方式も、つまずきや車椅子には効果的です。
 いろいろと問題はあるにしても、多くの方が気持ちよく安全に歩ける対策を検討してほしいものです。そのためにも、不自由な移動を強いられている方々の幅広い意見を聴取すべきです。私の周辺には、現在のバリアフリー対策に異見を持つ方が多いことを明記しておきます。
 さて、この日の参加者は30数名(関係者を入れると50名弱?)と大盛況です。かるた会は、世話役である関場さんの名調子で進行します。名札を付けて、楽しい自己紹介から始まりました。今回は、和歌山、兵庫、大阪、京都、愛知、東京、千葉、埼玉、福島と、本州の各地から駆けつけて来ておられます。
 開会の挨拶の後はすぐに、渡邊寛子先生(福島県立盲学校)がご自身で選ばれた恋の歌10首を、一首ずつ恋心を読み解きながらの解説がありました。わかりやすい、ユーモアたっぷりの話ぶりです。平安時代の文化的な背景も盛り込んだ名解説でした。
 最後の「きりぎりす」の歌については、全員に人形(ひとがた)が配られ、「ころもかたしき」の説明がありました。実際に着物姿の人形を触りながら説明を聞くと、実感としてよくわかりました。
 京都小倉かるた会のみなさんも、読み手や審判として大活躍です。点字毎日の新聞記者さんも取材に余念がありません。
 初心者用のグループや、体験者のためのワークショップもあります。
 実戦形式の対戦は、ギャラリーを釘付けにします。

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 盲聾の方も練習をしておられます。見えない、聞こえない方は、どのようにしてカルタを取られるのか、じっくりと拝見しました。ブレイルメモを2台使っての、思いもしなかった方法が導入されていました。次の写真をご覧ください。

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 まず、読み上げられている歌の読みを、写真右手の人がブレイルメモに点字データとして入力します。そして、そのデータをWi-Fi機能を活用して、写真左手の盲聾の方のブレイルメモに送るのです。盲聾の方は、自分のブレイルメモに表示される点字をリアルタイムに触読し、その歌が書かれたかるたがあらかじめ覚えたどの位置にあったものであるかを思い出して取る、ということになるのです。

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 まさにこれは、文明の利器を最大限に活用した、ハイテク技術を駆使した新時代のかるた取り、といえるでしょう。
 部屋を2つに仕切ってのワークショップは大盛り上がりの内に終わり、最後に表彰式がありました。
 閉会後は、宿泊場所となっている宇多野の宿泊場所に移動します。ただし私は、十数時間前に頭部を手術して間もないため、一旦我が家に帰り明日の英気を養うことにしました。幸い、手術を受けた右目も問題がなく、頭痛も吐き気も起きませんでした。一日中フル回転したにもかかわらず、何もなかったのですから、深夜の救急診療と緊急手術は大成功だった、ということです。まずは一安心というところで、1日目が無事に終わりました。
 参加者のみなさま、お疲れさまでした。そして、ご案内で至らなかった点はご寛恕のほどを。
 
 
 
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2018年12月28日

『百人一首』の近江神宮で吹雪にあう

 強い冬型の気圧配置が影響して、今日は京都も小雪がちらつきました。
 そんな中を、琵琶湖畔近江大津宮(大津京)にある近江神宮に行ってきました。
 最寄り駅である京阪近江神宮前駅は、無人の小さな駅です。どこから出たらいいのか迷いました。黄色で「出場」と書いてある機械のパネルにICカードをタッチしてから、白いパイプの柵の隙間から出ます。このような改札口は初めてです。

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 狭い道路を北へ一直線に行き、突き当たりを左に折れ、すぐの角を右に曲がって進みます。

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 また突き当たると、左に折れて、すぐに右へ曲がると、信号に出ます。信号を渡ったら左手に曲がり、ガードレールの内側の歩行者用の道を直進すると、近江神宮の境内に入ります。

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 境内に入ると、有名なそば屋さんがあります。今日はお休みでした。

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 ここまでの経路と次の回廊を歩くと、階段をまったく使うことなく、駅から近江神宮の本殿まで行けます。

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 私はここまで、ゆっくりと道を選びながら、徒歩7分くらいで行けました。

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 境内に張り出してあるポスターには、「新春のかるた祭り」のことが書いてあります。

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 今日ここに足を運んだのは、新年のイベントである「目が見えない方との「新春! 東西でかるたを楽しむ会」のご案内」(2018年11月26日)で紹介した、近江神宮見学会の下見を兼ねています。13日には近江勧学館で「第68回 高松宮記念杯 近江神宮 全国競技かるた大会(CDE級)」の大会があり、さらには、「ジャンボ 巨大かるた大会」もあります。境内は大混雑することでしょう。引率方法を再検討します。
 このイベントにおいて、目の不自由な方々を近江神宮に同行する、お手伝いをしてくださる方を探しています。京都駅からスタートし、近江神宮を散策してから京都駅に帰ってくるコースです。今のところ、25人から30人の参加者があります。現在、晴眼者は5人ほどなので、あと数人は何とかしたいと思っています。謝金が出ないボランティアなので、なかなかお手伝いさんを探すのが難しいことは承知しています。手を上げてくださる方は、本ブログのコメント欄を通して連絡をお願いします。

 近江勧学館へも立ち寄りました。ここへも、階段を使わずに行けます。このころになると、小雪が舞い出しました。

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 途中で、天智天皇の歌碑を見かけました。もう、横殴りの雪となっています。

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 勧学館の前では、合宿中の生徒たちが突然の雪に飛び出して来て、大はしゃぎをしていました。天智天皇の「我が衣手は 露にぬれつつ」ではなくて、光孝天皇の「我が衣手に 雪はふりつつ」の光景となったのです。

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 勧学館の中は、『百人一首』の花盛りです。
 玄関横のホールは、カルタ取りの気持ちを刺激します。

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 かるた取りのメイン会場は、すでに有名になっています。

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 受け付けには、さまざまな『百人一首』に関連するグッズが並んでいます。私は、煎餅とサブレをいただきました。

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 帰りは、踏み切りを渡って、来た時とは反対側のホームに移動しました。
 写真で見ると、かわいい佇まいの駅です。新年は、このホームに人があふれ返ることでしょう。

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2018年11月30日

最近見た視覚障害者に関する映画2本

 映画『光』(2017年公開、河瀬直美監督)を観ました。
 視覚障害者のために、映画の音声ガイドを制作する尾崎美佐子は、視力を失いつつある天才カメラマン中森雅哉に出会います。音声ガイドをする女性の苦悩を描く映画です。
 「砂像」のナレーションに対して、意味は何かというクレームが雅哉から付き、最後は、「砂の女性像」となるなど、言葉による表現の問題が扱われています。音声でガイドをたくさん入れてもらうと、主観が入っているようで押し付けがましい、という討論などもあります。
 「生きる希望に満ちている。」というガイドに対して雅哉は、年寄りはいつ死ぬかわからないと思っているのでそのガイドは何か、と言い、言われた美佐子は考え込みます。削り過ぎていて、空間を再現できない、という意見が出たりもします。あるいは、作品の重厚感を壊したガイドになっている、とも言われたりします。スクリーンを観ているというよりも、その中にいるとか、大きな世界を言葉が小さくしているとも。
 ガイドの文章を作成した美佐子は、見える、見えないの問題ではなくて、想像力の問題だと反論。それはどちらなのか、とのアドバイスもあり、音声ガイドの難しさが浮き彫りになっていきます。
 目が見えなくなっていくカメラマン雅哉が、かつて父に連れて行ってもらった夕陽に照らされた山に美佐子を連れて行くシーンが印象的です。


 次に、映画『ブランカとギター弾き』(2015年イタリア製作、2017年に日本公開、長谷井宏紀監督)も観ました。
 フィリピンのマニラで路上生活をする孤児の少女ブランカと、目が見えないギター弾きの老人ピーターの2人が織り成す物語です。ブランカは、「3万ペソで母親を買います」というビラを撒き、お金を集めることに奔走します。そして、買えるものと、買えないものがあることを知るのでした。大人は子供を買うのに、という理屈はショッキングです。お金持ちと貧乏人はなぜいるのか、という問いもあります。
 最後のシーンでの、感動的な笑顔が忘れられません。
 そしてエンディングで、盲目のギター弾きピーターは本作品完成後、ヴェネツィア音楽祭の後に突然の病により亡くなった、との字幕が流れます。それを見て、また感激が増幅しました。
 
 
 
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2018年11月26日

目が見えない方との「新春! 東西でかるたを楽しむ会」のご案内

 「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の代表者である兵藤美奈子さんから、新春企画としての嬉しい催しの案内が届きました。

 これは、東京の「点字・拡大文字付き百人一首〜百星の会」と、大阪の「大阪点字付きかるたを楽しむ会」との合同企画です。

 今年の初夏に開催された東西合同企画の様子は、「大阪で開催された「東西でかるたを楽しむ会」に参加」(2018年05月04日)に報告しています。どのような集まりかを知りたい方は、掲載した写真などをご覧ください。
 「1日だけの参加も OK」とのことです。
 私は、両日参加する予定です。
 参加して見ようと思われる方は、下記の兵藤美奈子さんか関場理華さんにメールで連絡をお願いします。


☆「新春!東西でかるたを楽しむ会」開催のご案内



今、目が見えない人も見えにくい人も見える人も、一緒に百人一首かるたを楽しもうという機運が、全国的に高まってきています。そんなな中、今年の5月に引き続き、東京の百星の会と、大阪点字付きかるたを楽しむ会の合同企画「東西でかるたを楽しむ会」が、1月12日・13日の両日、京都で開催されます。
また、12日の午後には幅広い方が体験できる「体験会」も行います。
平成最期の新春、一緒にかるたを楽しみませんか?
初心者の方・点字が読めない方も、大歓迎です。
さあ皆さんご一緒に、レッツちはやふる!

日時:2019年1月12日(土)14時〜13日(日)12時
会場:12日午後…京都ライトハウス
   (〒603-8302 京都市北区紫野花ノ坊町11 電話:075-462-4400)
宿泊&13日…宇多野ユースホステル
   (〒616-8191 京都市右京区太秦中山町29 電話:075-462-2288)
費用:19歳以上 6,000円
   18歳以下 5,000円
   ※一泊二食と施設使用料等含む
   1日目のみ参加他の方…100円
定員:宿泊される方=20名程度

<プログラム(予定)>


1月12日(土)
13:30 受付開始(京都ライトハウス1階和室)
14:00 開会、かるた体験会(自己紹介、初心者向けワークショップ・個人戦)
17:00 体験会終了、宿泊される方はバスで移動
18:00 宇多野ユースホステル着、夕食・入浴・交流

1月13日(日)
09:00 かるた団体戦開始
11:30 後片付け・出発準備
12:00 宇多野ユースホステルにて閉会
※以下はオプショナルツアー(予定)です。
12:30 昼食(場所は未定)
14:00 JR乗車
15:00 近江神宮見学
16:00 近江神宮発
17:00 京都駅解散


申込〆切 12月5日(水)
※ただし、1日目のみ参加の場合は12月26日(水)まで。

お問い合わせ・お申し込みは、
下記いずれかまで、メールでご連絡ください。

○「点字・拡大文字付き百人一首〜百星の会」
 代表アドレス・100boshi.hyakuboshi@gmail.com
 事務局 関場理華

○大阪点字付きかるたを楽しむ会
 代表 兵藤美奈子・putti-castle205@key.ocn.ne.jp・
 事務局 野々村好三

※ご不明な点はご遠慮なくお問い合わせください。

 
 
 
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2018年10月22日

点字ブロックは本当に視覚障害者のための物でしょうか

 先週の「第7回 日本盲教育史研究会」では、多くの方々とお話ができました。その中の一つの話題として、点字ブロックについて盛り上がりました。点字ブロックはいらない、という意見が目の見えない方々からいくつも出たのです。
 私も、あの点字ブロックに理解はできても、内心では邪魔だと思っていることを素直に語りました。同感だと言う方からは、批判されることを覚悟でも、そのことをブログに書いて問題提起をしたらいい、とかえって励まされました。視覚障害者の中にも、いろいろな考え方があるので、その意味でも大事な検討課題の提供になるはずだ、ということでした。

 なお、この日本盲教育史研究会では、本年6月30日に「第6回ミニ研修会 in 岡山」が開催されました。その時のテーマとその案内文は、以下のものでした。

岡山市内でのフィールドワークを中心に
―― 点字ブロック発祥の地を訪ねる ――

 岡山でミニ研修会を開催する運びとなりました。第6回となる今回は、点字ブロック開発から半世紀を経た今、市内にある発祥の地記念碑を訪ねて開発者三宅精一氏の思いに触れます。講師はともに岡山盲学校で教鞭をとられ、現在は盲教育史の研究、点字ブロックの普及活動に携わっているお二人です。
 点字ブロックから岡山における視覚障害教育に視野を広げて、現地だからこそ聞ける講話をお願いしました。皆様のご参加をお待ちしています。


 そして、その研究会の内容は、次のような興味深いものでした。

 第1部 講話
  「50年を迎えた点字ブロックと、岡山における視覚障害教育」
     講師 河田 正興 氏(元県立岡山盲学校校長)
        竹内 昌彦 氏(岡山ライトハウス理事長)
第2部 フィールドワークとレクチャー
  原尾島交差点 点字ブロック発祥の地記念碑 周辺


 しかし、当日はちょうど鳥取県で「第7回 池田亀鑑賞」の授賞式があり、近くにいながらも、私はこの賞の選考委員長をしていた関係で、この岡山での研究会には欠席しました。
 その研究会でのプログラムは、まさに点字ブロックのことがテーマとなっていたのです。

 この時の内容については、『視覚障害 bR63』(視覚障害者支援総合センター、2018年8月号)に、「岡山から世界へ 点字ブロック発祥の地でミニ研修会」と題して報告が掲載されています。

 今日のこの記事は、このような背景のもとでの点字ブロックに関する問題提起なので、専門外という立場からは発言しにくいのは事実です。しかし、先週いただいた参加者からのアドバイスを頼りに、あえてこの場に問題点を提示し、批判に晒されようと思います。
 暴論だと一笑に付さずに、ご意見をお寄せいただけると幸いです。

 なお、最近の私のブログでは、「読書雑記(240)伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』」(2018年10月04日)の最初に、点字ブロックのことに少し触れています。

 また、点字ブロックについては、これまでにも何度も話題にしてきました。海外での街中での様子も折々に記しています。

 今夏、ボストンに行った時には、ハーバード大学周辺で見かけた点字ブロックについて、「ハーバードでの初日に日本と同じ月を見る」(2018年08月27日)で取り上げました。日本のように、これでもかと敷き詰めるのではなく、信号のある交差点のそばだけに、ほんの一部に部分的にありました。

 このことは、同じ8月に行ったペルーのリマでも同じでした。
 感想としては、日本のように障害のある方々に至れり尽くせりを心がけてはいないようです。どこまで目が見えない方のことを思って設置したのかが、疑問に思える数々も記録しています。

「2冊のスペイン語訳『枕草子』と出会う」(2018年08月09日)

「リマの旧市街セントロで視覚障害者の歌を聞く」(2018年08月11日)

 もちろん、リマにもメインストリートには点字ブロックが敷き詰められた道が1箇所だけありました。

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 さらに遡ると、こんなにも何度もこの点字ブロックのことを書いて来ていました。

「空を飛ぶ4輪のキャリーバッグ」(2017年04月25日)

「最適な4輪式キャリーバッグとの出会いと点字ブロックの今後」(2016年10月16日)

「駅のホームドア設置と「ホーム縁端警告ブロック」」(2016年08月20日)

「インド・デリーの点字ブロックなどには要注意」(2016年02月25日)

「デリーの盲学校で立体コピーに挑戦してもらう」(2016年02月18日)

 すでに何度も書いてきたように、私はこの点字ブロックは正直言って邪魔に思う時がよくあります。もちろん、目が見えない方々の道しるべの役割を果たすべく敷き詰められていることは充分に承知しています。しかし、キャリーバッグを引いている時には、そのブロックを避けながら前進するのが大変です。また、つまずきそうになるので、ブロックを避けながら歩きます。上記の記事にも、足の裏は予想外に敏感で、地面の凸凹を感じ取っているわけです。しかし、それだけに、点字ブロックが至るところに敷き詰められていると歩きにくいのも事実です。

 先週、研究会が終わってから点字ブロックについて話をしていた時、目の見えない方から次のような不要論とでもいうべき意見を伺いました。

(1)あらかじめ敷き詰められたブロックの上を歩けと、強制的に指示されることが嫌だ。
(2)道の状況に応じて、自分の判断を信じて自由に歩きたい。
(3)見えないので足を高く上げて歩けない。自ずと摺り足に近い状態で歩いていると、点字ブロックの凹凸でつまずいて転びそうになる。そのため、わざと点字ブロックを避けて歩いている。白杖を器用に操作して、折角の好意の産物を申し訳ないと思いながらも、避けながら歩いている。
(4)近所の交差点に信号機をお願いしたら、頼みもしないのに点字ブロックを長々と敷き詰められていたのには驚いた。補助金行政における役所の点数稼ぎに利用された思いがしたのは、思い過ごしか。
(5)キャリーバッグを引いていると、ガタガタと揺れて、キャスターの向きをコントロールできなくなることがよくある。凸凹の点字ブロックが障害物になっている。
(6)点字ブロックの周辺に放置されている自転車によくぶつかる。
(7)点字ブロックが敷かれた一列の狭い一本道は、前方から来る白杖の方と正面衝突せざるをえない事態をも引き起こすことがある。実際にぶつかることが何度もあった。
(8)点字ブロックの上に荷物が置かれていてぶつかった経験は、最近はあまりない。それでも、ブロックの上に物が置かれていて、ぶつかって転んだことはある。駅のホームの端が一番怖い。

 こうした話を聞いていて、私は良かれと思っての好意からとは言え、善意の押し付けの状況になっていることも事実ではないのか、との思いを強くしました。

 現在、毎週大阪市内に出かけます。地下鉄谷町線「文の里」駅の改札口に向かうところには、こんな状態で点字ブロックが敷き詰められています。

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 完璧をよしとする日本的な発想のもとで、美的なセンスも盛り込んでの設置のようです。ただし、微妙に曲がったラインは、どのような意味でなされたものなのか、今の私には理解が届きません。

 日本の現状は、とにかく網羅的に敷設することで徹底しています。日本では、補助金や仕事を発生させる意味からも、むやみやたらと点字ブロックを置いているのではないか、と思えるほどです。私は、点字ブロックは通行人に対しては迷惑なシロモノなのではないか、と思っています。これまでに、このブログで何度か書いてきた通りです。また、至る所に貼られている点字も、果たして街中に必要なのか、はなはだ疑問に思っています。点字が読めるのは、視覚障害者の一割である、という事実を知ってからは、その疑問が増幅しています。

 行政側は、いかにも障害者対策をしていますよ、というポーズを住民に効果的に示す意味で、積極的に障害者のためというお題目の下に、点字ブロックの敷設や点字の添付活動を導入しています。しかし、これには、効果的な税金の使われ方ではなくて、かえって無駄遣いの部分も大きいのではないか、と思っています。もっと有効な税金の使い方があるはずなのに、お役所は理解を示しているふりをするために、無意味な支出がなされているように思えてなりません。

 善良ぶっておられる方からは、上記の発言は許しがたいものだとお叱りを受けるでしょう。しかし、点字ブロックや点字シールに感謝しておられる方がいらっしゃることを知りつつも、そうではない方もいらっしゃることを考えるべき時期にある、ということが言いたいのです。

 あえて街中に障害物競争をさせるようなものを置いて、言葉を変えれば視覚障害者いじめをすることはないと思います。多分に挑発的な発言を、意識して書いています。

 目が見える私は、あの点字ブロックにつまずきそうになったことがあると共に、キャスター付きのバッグを引いている時に、一々あのブロックの凹凸でキャスターをガタガタさせないために、ヨイショと持ち上げるのが面倒に思っています。キャスターも早く壊れますし。

 最近は、駅はもとより、街中の至る所に点字ブロックが敷き詰められるようになりました。旅行者の多くが、あの凸凹に難渋させれているように思います。京都の街中では、日々実感しています。多くの方に我慢を強いるあの点字ブロックが、目が見えない方々との円滑なコミュニケーションを阻害するものになりつつあるのではないのか、と思います。多くの方々が疎ましく思っていてもなかなかそれを言いづらい現代日本の社会の中で、私はあえて取り去る勇気を持ってほしいと願い、この記事を書きました。
 
 
 
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2018年10月20日

日本大学であった第7回盲史研究会に出席

 早朝より新幹線で上京しました。秋晴れです。しかし、富士山は雲をかぶっていて不機嫌でした。

 地下鉄丸の内線「御茶ノ水」駅の改札口で、立教大学の尾崎さんと10時に待ち合わせです。尾崎さんは現在修士論文を執筆中なので、そのことや今後の進路について話をしながら、本日の会場である日本大学歯学部(4号館3階第3講堂)に向かいました。

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 会場の受付横の窓からは、ニコライ堂がすぐそばに見えます。

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 「日本盲教育史研究会」は今回で7回目。会員数が200名に届こうとしていることからわかるように、着実に発展しています。
 総会では、これまでの引田会長から伊藤新会長へとバトンタッチがあり、役員の改選もありました。あらためての新しいスタートです。

 今回の研究会は、以下のテーマが設定されています。

研究会テーマ

「視覚障害者の職業問題を考察する」



 視覚障害者にとって古くて新しい課題が職業問題です。鍼灸按摩などの現状も大きく変わってきています。記念講演は、第5回研究会での警女さんに続き、今回は男性盲人の職業の原点「琵琶法師」を取り上げます。近現代の職業問題も、原点まで遡った大きな歴史的パースペクティブの中で考えていきたいものです。


■講演と演奏 平家を語る琵琶法師
  鈴木孝庸(たかつね)氏(新潟大学名誉教授 前田流平家琵琶奏者)

 琵琶と語りが一緒になることはないそうです。「祇園精舎のかねのこゑ〜」を語ってくださってから、会場のみんなで『平家物語』の冒頭を一緒に声を出しての体験です。声は出せても節回しに付いて行くのが大変でした。
 現在、平曲を語るのは20人しかいらっしゃらないそうです。その内、盲人の伝承者は名古屋の今井勉検校お一人だけだとのこと。意外でした。
 引き続き、「祇王」を語ってくださいました。
 最後に「那須与市」で扇の的を射抜く場面を、参会のみんなが一緒に声を出し、語りの体験をしました。楽しいひと時となりました。

 昼食後は、琵琶の演奏と講演に関する質疑応答からです。
・なぜ平家が琵琶語りの芸能になったか等、3人からの質問がありました。
・後の質問討議では、2つの流派についての質問もありました。テキストの違いではなくて語りの違いだ、と師匠は言っておられたとのことです。

■問題提起
  大橋由昌(筑波大学附属盲学校同窓会長、日本盲教育史研究会副会長)
「近代盲教育における鍼按教育を中心に 明治期を中心に」

 昭和22年の「あはき法」(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律)の問題は、医療全体の視点で見ていくべきだ、という観点からの発表でした。
・後の質問討議では、障害者の高齢化と生徒減少に関しての質問。
・障害者に社会性がなくなっている、との指摘も。
・障害を持つ就業者の年収128万円の根拠は何か。
・盲学校の治療室を変えていかなければならない。
・盲学校の先生は、学者派と職人派にわかれる。
・食える職人を育てる必要性があると。

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  指田忠司(高齢・障害・求職者雇用支援機構、障害者職業総合センター特別研究員)
「新職業開拓をめぐる我が国の取り組みと欧米諸国の相互交流」

 視覚障害者について明治以降の職業教育を振り返り、「新職業開拓」についての問題点を整理した発表でした。就業支援として適職を探すことよりも、やりたいことをサポートすべきであるとの持論を展開なさいました。
・後の質問討議で、失明軍人杖は昭和16年からあるのでは、とのこと。
・本会の事務局長をなさっている岸先生によると、日露戦争の頃から握りの部分に飾りのない杖はあったと。
・日本は海外から研究し尽くされ、経営面で遅れている。
・日韓台の鍼灸の実態と、鍼の禁止について。
・今は、日本だけの視覚障害者が鍼をできる。韓国は補助的なことに留まる。
・海外の状況。就業資格所有者はあまりいない。

 以下、大橋先生と指田先生にさまざまな質問と意見が寄せられました。とりまぜて列記しておきます。
・盲学校の生徒について。魅力のある理療科を作ることが課題だと指摘。
・自立活動と共に、いろんな経験をさせて社会性を大切にしたい。
・自立活動の中でのコミュニケーション能力の向上を。
・他者の視点で物事を見ることが重要。
・現場の先生から、主語が「私」だけにならないようにしているとの報告。
・盲学校出身であることを隠す生徒のことと自立のこと。
・支援学校の教員として、手助けと失敗経験をさせることも大事だと。
・無免許の同業者の存在。ブレーキの効かない過剰養成の問題につながる。
・生徒の現状は、努力ではなく最初から見える結果で満足し、先生方もそうなっている。
・保護者が社会のせいにしていないか。
・現役の盲学校の先生とコラボして語り合える場がほしい。

 とにかく、会場からは多くの質問や意見が出ました。上記のメモは、あくまでも私が聞き、理解できたと思われることだけを記したものです。勘違いをして聞いたこともあることでしょう。雑駁なメモであることは、ご寛恕のほどを願います。
 この質疑応答は、予定の時間をオーバーするほどでした。
 「日本盲教育史研究会」が果たす役割は重要です。今後とも、こうした篤い意見交換を通して、理想と現実を埋め合わせながら、視覚障害者をめぐる教育の問題は展開していくのです。この会は、その意味では貴重な旗振り役を担うことになると思われます。この会の活動には、ますます目がはなせません。

 懇親会は、すぐ近くの神保町でありました。約30名もが集まる盛会でした。私は、指田先生の横に陣取り、多くのことを教えていただきました。北海道での研修会の時以来です。福島県立盲学校の渡邊先生と引き合わせてくださったのは指田先生でした。この研究会を通して、多くの方々と情報交換ができています。
 指田先生と私の席の前に、全国特別支援学校校長会会長の桑山先生がお出でになりました。全国に盲学校は67校あるそうです。そして、尾崎さんが小さい頃、桑山先生は盲学校で指導をしたとのことです。大きくなって今は私がその役目を、ということで、意気投合して楽しい話に発展しました。不思議な出会いがあるものです。

 懇親会では、私にも少しだけ自己紹介をする時間をいただきました。私は、2020年の東京オリンピックで『百人一首』のイベントが計画されているので、盲史研の後援をお願いしました。そして、『百人一首』に挑戦しようという方も、一人は確保しました。この『点字 百人一首』についても、さらに盛り上がるようにお手伝いしたいと思っています。

 お開きになって帰る頃には、外は大雨になっていました。指田先生に腕をお貸しして、お茶の水駅まで傘をさして濡れながら急ぎました。お見送りした後、私は聖橋を渡ったところの東京医科歯科大学の後ろにあるホテルに入りました。そういえば、昨年3月までの9年間は、越中島にある東京医科歯科大学の官舎に住んでいました。そこは、伊井春樹先生が国文学研究資料館が開館した時からずっとお住まいだった所です。伊井先生がお住まいだったので、私も希望してそこに入居したという経緯のある官舎だったのです。人のつながりはおもしろく、そして楽しいものです。
 
 
 
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2018年10月07日

「第5回 大阪点字付きかるたを楽しむ会」のご案内

 「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の兵藤美奈子代表から、第5回となる点字かるたの会の連絡をいただきました。

 この会は、昨年11月にスタートして1年。順調に活動が展開しています。
 私は土曜日には何かとイベントが入る関係で、まだ1度も参加できていません。
 そして、今回も11月10日(土)は、東京の日比谷図書文化館で源氏の講座があり、残念ながら参加できません。
 以下、その案内をすることで、自称広報担当の責任を果たしたいと思います。


第5回 「大阪 点字付きかるたを楽しむ会」ご案内

金木犀の香りに秋の訪れを感じる頃となりました。
皆さんお元気でお過ごしでしょうか。

さて、「点字の百人一首を楽しめる場を大阪で作りたい!」という思いから、日本点字制定記念日の直後、昨年の11月4日に初めて集りを持ちました。
このたび、おかげさまで1周年を迎えることとなりました。
これまでのご縁を大切にしつつ、ますます多くの方々と、かるたの魅力・楽しみに触れられればと思っております。

毎回、坊主捲りや4人一首、
文字通り100枚使っての百人一首で盛り上がっています!
点字の付いたカルタ(百人一首)のお持ち込みも大歓迎です。
ご持参いただける方は、お申し込み時にお知らせください。
「点字は苦手」という方もお子さんも、一緒に楽しめる場にしたいと思います。
皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2018年11月10日(土)14時30分〜17時
場所  日本ライトハウス情報文化センター 4階 会議室3
(大阪市西区江戸堀1-13-2 電話  06-6441-0015)
交通:大阪市営地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」北改札から2番出口を出てすぐ左。
 もしくは地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋駅」4番出口から西へ400m
 (肥後橋交差点の南西角)
費用:大人−500円 高校生以下−無料
定員:先着20名(定員になり次第締め切ります)
申込:事前に、下記へメールでお願いします。
 putti-castle205@key.ocn.ne.jp (楽しむ会代表・兵藤美奈子)
※いただいたメールにすぐにご返信できない場合もありますが、ご容赦ください。
※メールは前日までにお願いします。
お問い合わせ先:野々村好三(電話090−3841−9107)

<持参予定の点字付きの札について>
⑴「点字付き お坊さんめくり」(発売元:京都ライトハウス)
⑵ 4人一種セット(製作:「百星の会」=非売品)
⑶ 百人一首(製作:点訳ボランティアの方)
⑷ 競技用百人一首、白黒反転(発売元:京都ライトハウス)

<参考1>
坊主捲りには、上記「点字付き お坊さんめくり」を使用しています。
札を横長に置いた時の左上の角が丸くカットされ、上下に札の記号があります。
札は姫は「メメ」(姫のメ)、坊主は「こた」(お坊さんの頭?)、殿は1本線のほか、皇族を表す台座も点字で表されていて、手で触って区別しやすくなっています。

<参考2>
2016年公開映画『ちはやふる』[上の句][下の句]は、シネマデイジーでお楽しみいただけます。手に汗握る、競技かるたの世界をご堪能ください。

 
 
 
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2018年09月26日

[ロービジョン対応点字付き百人一首かるた取り札]が届きました

 京都ライトハウス情報製作センターが新たに作成し発売に漕ぎ着けられた、「ロービジョン対応点字付き百人一首かるた取り札」が届きました。

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 写真左下にあるカルタの山のうち、上が「古文表記」で、下が「現代仮名づかい」です。これは、点字がどちらの表記で貼付されているか、という違いがあります。この札は、京都の老舗である大石天狗堂製の本物の札で、しっかりとした贅沢な仕上がりです。このカルタを八ッ橋型に丸く反ったものにすると、もっと実践的なカルタになりそうです。私が勝手に言っている「八ッ橋型」については、「点字付百人一首〜百星の会で見た八つ橋型の新開発カルタ」(2017年03月19日)で説明しています。ご笑覧いただけると、その姿形に納得していただけるとかと思います。

 右下の「視覚障がい児・者競技用かるた台」に、カルタを2枚置いてみました。

 左上にある、緑色の表紙にスパイラルで綴じたものは、「全日本かるた協会」と「百星の会」が監修した、「遊び方・ルールブック」です。関場理華さんが事務局を引き受けて精力的に活動なさっている「百星の会」については、本ブログでも機会がある毎に紹介してきました。最近では、「大阪で開催された「東西でかるたを楽しむ会」に参加」(2018年05月04日)をご覧ください。
 本ブログでこうした『百人一首』を取り上げた記事の一覧は、「おかきで楽しむ『百人一首』」(2018年05月21日)を参照願います。

 上の写真の右上は、「点字リーフ 百人一首かるた読み札(点墨併記)」です。

 これらについてのさらに詳しいことは、京都ライトハウスの花田和枝さんからいただいた案内メールの一部を引いておきます。

【視覚障がい児・者競技用百人一首かるたセット】((1)〜(3)は単品での購入も可)

 (1)「ロービジョン対応点字付き百人一首かるた取り札」 3000円
  白黒反転拡大文字の百人一首かるたの取り札に、タックシールで点字をつけまし
た。
  点字は古文表記と現代仮名づかいのどちらかをお選びいただけます。
  全日本かるた協会・百星の会監修の遊び方・ルールブック付き。
  京都のかるたの老舗・大石天狗堂製の本物の札の手触りを感じてください。

 (2)「視覚障がい児・者競技用かるた台」 1000円
  横に5枚を2列、計10枚の札を並べることができるA4サイズの台です。

 (3)「点字リーフ 百人一首かるた読み札(点墨併記)」 1000円
  点字用紙の約3分の1の大きさの用紙に、
  歌と詠み人を点字と墨字で記しています(序歌も入っています)。
  1穴用のリングで綴じられており、シャッフル可能です。

 ※かるたセットをご購入希望の方には9月12日(水)から注文予約を開始させて
いただきます。

また、11月1日〜3日に、東京錦糸町で行われる「サイトワールド2018」に出展し、11月2日には「ロービジョン対応点字付き百人一首を使用した「バリアフリーかるた競技体験会」のイベントをします。
是非お越しください。


 私は、「点字は古文表記と現代仮名づかいのどちらかをお選びいただけます。」とあるので、両方を注文しました。これは、混ざってしまうと後で仕分けるのが大変なので、早めにカルタの裏に何か印を付けようと思っています。

 これまでは、「百星の会」が中心となって手作りなさった札が使われていました。今、私にも、この点字付きのカルタが使えるようになったのです。これによって、「点字付百人一首」に興味を持つ方が1人でも多くなることを願っています。
 
 
 
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2018年09月18日

第7回 日本盲教育史研究会(於・東京)のご案内

 10月20日(土)に、東京・水道橋の日本大学で日本盲教育史研究会第7回総会・研究会が開催されます。参加申し込みの〆切りは今月末(9月30日)です(参加費千円)。
 今回は、平家琵琶の演奏が聴けるようなので楽しみです。
 ブログラムは次の通りです。

日時 2018(平成30)年10月20日(土)10時30分〜16時30分
会場 日本大学歯学部4号館3階第3講堂 
テーマ 視覚障害者の職業問題を考察する(仮題)
講演と演奏 平家を語る琵琶法師
  鈴木孝庸(たかつね)氏(新潟大学名誉教授 前田流平家琵琶奏者)  
問題提起 
  大橋由昌 近代盲教育における鍼按教育を中心に
  指田忠司 新職業開拓をめぐる我が国の取り組みと欧米諸国の相互交流


 参加の申し込みなどの詳細は、日本盲教育史研究会のホームページ「第7回総会・研究会ご案内」を参照なさってください。
 私は、いつものように懇親会にも参加します。

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2018年08月11日

リマの旧市街セントロで視覚障害者の歌を聞く

 今回滞在しているのは、太平洋に面したミラフローレスという若者たちに人気の街中です。
 車で少し移動して、世界遺産にも登録されている歴史的建物群が多い旧市街地(セントロ)に行きました。きれいな街並みです。インドのニューデリーとオールドデリーのイメージで行ったこともあってか、拍子抜けするほどきれいに整備されていたので意外でした。ゴミが落ちていないのは、こまめにゴミを拾う方々がいらっしゃるからでした。

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 セグウェイに乗ったお巡りさんもいます。

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 この街を歩きたかったのは、視覚障害者と点字ブロックのことを確認したかったからです。
 点字ブロックは、1箇所だけ見かけました。ミラフローレスと同じように、ここでも本格的な対策はなされていないようです。段差のある箇所の工夫は、ミラフローレスと同じです。

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 アルマス広場から一番賑やかな通りに出ると、視覚障害者の方が点在して、4組もカラオケのパフォーマンスをしておられました。こうした光景は、日本で見かけたことがありません。同じような道具を使っておられることを見ると、同じ仲間なのでしょうか。これから、これがどのような方々によって、どのような考えによるものなのか、また通行人の反応などについて情報を集めてみたいと思っています。

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 ミラフローレスに戻ると、夕靄の中に光の十字架がくっきりと見えました。

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 今日の万歩計は、12,600歩を数えていました。午後から活動を始めたことを考えると、よく歩いたことになります。
 
 
 
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2018年07月31日

立命館大学の戦争展で視覚障害者の資料を見る

 今日から始まった「第38回 平和のための京都の戦争展」(於:立命館大学国際平和ミュージアム、中野記念ホール)に行ってきました。8月5日(日)までの短期間なので、興味と関心をお持ちの方はお急ぎください。入場は無料です。

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 中に入ると、関連書籍の販売コーナーがあります。街中の書店には並んでいない本が多数あった中から、視覚障害者の本、アンデス文化の解説書、ミャンマーのガイドブックなど数冊をいただきました。
 こうしたイベント会場に入手困難な本が並ぶのは、情報収集においてもありがたいことです。

 本を買い終わった頃、そこで、日本盲教育史研究会の事務局長をなさっている岸博実先生と出会いました。先月、岡山であった日本盲教育史研究会には、ちょうど同じ日に池田亀鑑賞の授賞式がすぐ隣の日南町であったために参加できませんでした。そのお詫びを申し上げた時でした。今回のメインテーマである「障害者と戦争」のコーナーが入口正面のパネルの裏なので、と言いながらそのコーナーに連れて行ってくださいました。そして、いろいろな説明を伺うことができました。

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 このコーナーは、すべて岸先生がお持ちの品々で構成されています。人の顔さえ写っていなければ大丈夫だとのことなので、ありがたく貴重な資料をカメラに収めさせていただきました。見られる機会に撮影しておかないと、この次いつ出合えるかわからないのです。特に興味をもったものを、いくつか紹介します。

 まずは、パネルをみながら全体の構成を確認します。
 大きく「障害者と戦争 −戦争は戦力にならざる者の排除−」と書いてあります。
 障害者は戦力にならないとして差別された反面、さまざまな形で駆り出されていたことがわかる展示です。

 ゼロ戦の翼下に「日本盲人号」とあります。

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 次の左下の写真は、「防空監視哨員」として動員された近江谷勤さんです。障害者が敵機の音を聞き分ける練習をした後、その聴覚で敵の戦闘機の来襲を察知するという仕事に当たったのです(練習用の飛行機の音を吹き込んだレコード盤は後出)。もっとも、実際にはあまり成果はあがらなかったようですが。
 岸先生の話では、この近江谷さんを探すのに使用した資料(写真左上の赤丸部分)に「おおみや」とあったので、「大宮」さんとばかり思い込んでいたとのことでした。実際には「近江谷」なので、点字で書くと「おうみ」となるはずなのです。点字は実際の発音に近い表記をします。仮名遣いの問題は、こんな形で時々問題点を見せます。こうしたこともあって、岸先生は近江谷さんと出会うまでに、10年もかかったのだそうです。
 右下のマッサージをしている写真には、「按摩さんたちが奉仕に乗出す」とあります。

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 次の左下には、戦傷によって失明した人に渡された「失明軍人杖」の記事があります。

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 こうしたパネルの前のガラスケースには、パネルに関連した品物が展示されています。
 次の写真の左下には、「徴兵検査手引書」として以下の説明文が記されています。

検査を担当する医師用につくられた手引き書
この中に”失明詐称者””難聴詐称者”看破法
がかなりの頁をさいて書かれている。
 徴兵のがれを図る国民がいたことを示している。
      資料:岸 博実氏


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 同じケースの右側にはレコード盤があり、次の説明文があります。すでに説明したものです。

敵機爆音集 レコードと副読本
アメリカ軍の飛行機の音を聞きわけることを目的に
ニッチク(レコード会社)が制作したレコード。副読本には
「ボーイングB−17」「カーチスP−40」などの説明もある。
      資料:岸 博実氏


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 次の杖は「失明軍人杖」です。すでに上で説明したものです。
 ここの説明文は次の通りです。
 
「失明軍人杖」
 戦争で失明した軍人に、陸軍大臣 海軍大臣
から支給された「軍人杖」陸軍は星と鷲、海軍は
桜と錨がデザインされている。
      資料:岸 博実氏


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 こうした展示品について、岸先生からはその収集にあたっての驚くべき裏話を伺いました。これについては、また先生ご自身がお書きになることでしょうから、ここでは差し控えておきます。実は、今日も見つけたとのことでした。探せばまだ見つかる、ということのようです。そして、どうしても真っ直ぐな、装飾としての把っ手のない杖が、なかなか見つからないとのことです。ご存知の方がいらっしゃいましたら、お知らせください。

 この他には、「沖縄戦発掘資料」などなど、興味深い展示コーナーがホールいっぱいに展開しています。
 書けば際限がないので、じっと我慢をします。
 ぜひとも、実際にご覧になることをお勧めします。

 なお、会場でいただいたパンフレットに掲載されていないもので、「故 中野信夫さんスケッチ画 & 戦後の平和友好活動紹介」というコーナーがありました。
 これは、ミャンマーにおけるインパール作戦に参戦して、奇跡的に帰還した中野信夫軍医の手になる絵だそうです。これもお見逃しなく。

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 DVDの上映や体験談や講演などが、連日盛りだくさんです。しかし、私は来週のペルー行きを控え、会議や前期試験などなど、8月5日までに再度行く余裕はありません。残念ながら、また来年の楽しみとします。
 
 
 
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2018年06月10日

第4回「大阪 点字付きかるたを楽しむ会」のご案内

 最新情報が届きましたので、さらに広く行き渡るようにお知らせします。

 「大阪 点字付きかるたを楽しむ会」で今回から代表をなさる兵藤美奈子さんと、それを支えておられる野々村好三さんから、
クチナシの香りが漂う季節となりました。
皆さんお元気でお過ごしでしょうか。

という前書きと共に、以下の内容の開催に関する連絡をいただきました。
 また、「点字・拡大文字付き百人一首〜百星の会」の事務局長である関場理華さんからも、メーリングリストを通して会員のみなさまへの告知がなされました。

 この「大阪 点字付きかるたを楽しむ会」は、「点字の百人一首を楽しめる場を大阪で作りたい!」という思いから、日本点字制定記念日の直後の2017年11月4日に、第1回が開催されました。
 第2回は本年1月、第3回は3月に行なわれました。
 そして東京の「百星の会」との合同企画「東西でかるたを楽しむ会」が、5月4日にありました。この時のことは、「大阪で開催された「東西でかるたを楽しむ会」に参加」(2018年05月04日)で報告した通りです。

 今回も、
坊主捲りや4人一首、文字通り100枚使っての百人一首で盛り上がっています!
点字の付いたカルタ(百人一首)のお持ち込みも大歓迎です。
ご持参いただける方は、お申し込み時にお知らせください。
「点字は苦手」という方もお子さんも、一緒に楽しめる場にしたいと思います。
皆様のご参加をお待ちしております。

とある通り、大阪での「点字付きかるた」を使った『百人一首』も、着実に歩んでいます。

 こうした取り組みがあることを、お知り合いの方々にお伝えいただけると幸いです。

 なお、当日私は、東京の日比谷図書文化館で『源氏物語』の講座があるために、残念ながら参加できません。
 次回を楽しみにして、盛会をお祈りしています。
 
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■日時:2018年7月7日(土)14時30分〜17時
■場所:日本ライトハウス情報文化センター 4階 会議室3
 (大阪市西区江戸堀1-13-2 電話 06-6441-0015)
■交通:大阪市営地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」北改札から2番出口を出てすぐ左。
 もしくは地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋駅」4番出口から西へ400m
 (肥後橋交差点の南西角)
■参加費:大人―500円 高校生以下―無料
■定員:先着20名(定員になり次第締め切ります)
■申込:事前に、下記へメールでお願いします。
 putti-castle205@key.ocn.ne.jp
 (楽しむ会代表・兵藤美奈子)

※いただいたメールにすぐにご返信できない場合もありますが、ご容赦ください。

<参考1>
坊主捲りには、「点字付き お坊さんめくり」(発売元:京都ライトハウス)を使用しています。
札を横長に置いた時の左上の角が丸くカットされ、上下に札の記号があります。
札は、姫は「メメ」(姫のメ)、坊主は「こた」(お坊さんの頭?)、殿は1本線のほか、皇族を表す台座も点字で表されていて、手で触って区別しやすくなっています。

<参考2>
2016年公開映画『ちはやふる』[上の句][下の句]は、シネマデイジーでお楽しみいただけます。
手に汗握る、競技かるたの世界をご堪能ください。

 
 
 
posted by genjiito at 20:15| Comment(0) | ■視覚障害

2018年05月11日

大学の授業で『百人一首』を扱う

 大学では、授業の一つに「日本の文学」を担当しています。
 今年のシラバスには、次のように書きました。

【概要】
 日本の文学の中でも和歌は、美しい言葉で歌い上げられ、書き写され、詠み継がれて来ました。
 その背景には、日本の伝統的な文化や歴史が横たわっています。
 特に『百人一首』は、カルタ遊びとしても親しまれて、今に至っているものです。
 この授業では、『百人一首』を通して各時代に言葉で紡ぎ出された、人々の生活・文化・思想・感覚・知恵・知識・虚構・伝説・信仰、そして恋愛の諸相をかき分けながら、日本文学の歴史を和歌でたどることで、理解と知識を深めていきます。

【教科書】
『原色 小倉百人一首』(鈴木日出男・山口慎一・依田泰、文英堂、\550+税)


 新年度となり、これまでに2回あった授業では、小野小町の「花の色は〜」を「変体仮名版」で表記した資料を使ったり、『百人一首』をテーマとしたお菓子「カルタ百人一首」を配布して、自分が担当する歌を決めたりしました。

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「京都せんべい おかき専門店 小倉山」

 このお菓子は、今年の3月1日にインド・ネルー大学へ行った時にも、お土産の一つとして学生たちに配布しました。その日のブログ「ネルー大学でアニタ先生や学生と懇談」(2018年03月01日)には、以下のように書いています。このお菓子は、非常に重宝するものです。

 私からの学生さんたちへのお土産は、小倉山荘の『百人一首』のおかきです。20人ほどの学生さんに一人一袋をとってもらい、自分の包装紙に書いてある和歌一首を覚えて調べるように、私からの宿題を課しました。早速、荒手の指導です。これが通用するのが、世界に冠たるネルー大学の学生さんたちなのです。今夜はきっと、家で自分が取った『百人一首』の歌一首の意味や作者について、必死になって調べていることでしょう。


 昨日、5月10日の授業では、まず5月4日に行われた「東西でかるたを楽しむ会」の写真をスクリーンに映写しました。目の見えない人たちが『百人一首』を楽しんでいる姿を見てもらったのです。半数が留学生だったので、見たこともないカードゲームに複雑な視線を送っていました。

「大阪で開催された「東西でかるたを楽しむ会」に参加」(2018年05月04日)

 さらに、当日使っていた点字付きカルタの実物を見てもらい、回覧しました。これは、「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」の関場さんから教材として使用することでいただいたものです。
 また、点字による説明資料と立体コピー版『百人一首』も回覧しました。

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 盛りだくさんの授業で、学生たちはいろいろな思いを抱いたことでしょう。これが、『百人一首』への興味づけになればと思っています。
 
 
 
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2018年05月04日

大阪で開催された「東西でかるたを楽しむ会」に参加

 東京の「点字・拡大文字付き百人一首〜百星の会」と大阪の「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の合同企画による「東西でかるたを楽しむ会」に参加してきました。

 会場は、JR桜島駅からシャトルバスで10分の所にある、「アミティ舞洲」(大阪市舞洲障がい者スポーツセンター)の3階にある、研修室2と3です。

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 午前中は初心者のためのイベント。
 お子様中心の、簡単な平安クイズや、ゆかりの品物としての衣装にゆっくりと触れる時間です。目が見えない方々にとっては、この手で触った感覚がイメージを豊かにし、世界が広がるのです。

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 午後は、初心者と中上級者のかるた会。
 まずは目が見える方の模範試合からです。畳ではなくてフロアだったので、やりにくそうでしたが。

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 今日のために用意された10枚のカルタは、渡邊寛子先生(福島県立盲学校高等部国語科教諭)が選んでくださった歌十首です。選定にあたっては、親子関係、女性、決まり字、歴史の勉強もできる、などなどが考慮されていました。

「教育現場用 十首 バリアフリーかるた」

秋の田の〜/春過ぎて〜/花の色は〜/めぐりあひて〜/よをこめて〜/瀬をはやみ〜/世の中よ〜/世の中は〜/来ぬ人を〜/人もをし〜


 カルタは、私が「八つ橋型」と呼ぶ、丸く反った形をしたものです。紙製とトランプ製があります。トランプ製は、お湯につけて曲げるのだそうです。関場さんをはじめとする、ボランティアのみなさんの苦労の産物です。

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 昨日の記事に取り上げた、私の思い出の歌も選ばれていました。

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 今日のカルタ会では、この会のまとめ役である関場さんから、新しいルールが披露されました。

(1)利き手で取ることを原則とし、手はカルタ台の手前で重ねた状態で読まれるのを待つ。
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(2)お手付きは、自分が取った札一枚を相手に渡す。

(3)札は手前に引いて取る。
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(4)目が見える人は、下の句を読み出したらアイマスクを着けて勝負に臨む。


 このルールでやったところ、いろいろとこれまでとは違う問題が出ました。

・空札が入ると途端にお手付きが増えた。

・これまでの癖で、つい両手で取る。
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・札を上から叩いて押さえ込む。
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 しかし、これらは回を重ねるごとに改善されていくものなので、大した問題ではありません。

 やがて2試合目、3試合目となると、鬼気迫る緊迫感がありました。

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 隣の部屋では、南澤さんの指導のもとに、初心者のための取り方教室も進行中です。
 人差指を抜くゲームは、なかなかむつかしそうでした。これは、耳と手の感覚を養えます。

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 勝負が終わった頃には、坊主めくりのお菓子が配られました。

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 関場さん、兵藤さん、野々村さん、南澤さん、そして多くのボランティアでお越しになっていたみなさま、ありがとうございました。
 楽しいひと時を、皆さんと一緒に過ごせました。
 関場さん、背中の和泉式部はオシャレでしたよ。

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2018年04月10日

視覚障害者が「点字付 百人一首」を楽しむ会を2つご案内

 初夏に、東京と大阪でそれぞれ「点字付百人一首」のイベントがあります。
 2018年度も、目の見えない・見えにくいみなさんが、元気に活動をスタートなさいます。
 私は、後半の大阪開催の「東西でかるたを楽しむ会」に参加する予定です。

 まずは、早い方から、「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」のご案内です。
 これは、事務局の関場理華さんからの情報をもとにしたものです。
 待ち合わせ場所やお弁当のことがありますので、詳しくは関場さんにお問い合わせください。

■馬場部 かるた会■


☆日時 4月21日(土)
 午前の部 10時半〜
 午後の部 「かるた会」13時〜

☆会場 新宿区立障害者生活支援センター・多目的室
 (新宿区百人町4-4-2)shinjuku-ssc.jp/

☆プログラム
 春爛漫の今、桜の花を歌に織り込んだ百人一首の札を使って、かるたとりをします。
 午前中のワークショップでは、桜は残念ながら散ってしまいましたが、実際に外の公園に出て花々に触れ、感じたことを、三十一文字の形にして、永久保存してみましょう。
 13時からのかるた会は、「桜の歌のかるた会」になります。

★馬場部かるた会で使用する15枚の歌
※歌の末尾にある( )内の数字は、小倉百人一首の通し番号

☆青
8 きみがため をしからざりし いのちさへ
    ながくもがなと おもひけるかな(50)
14 いにしへの ならの みやこの やへざくら
    けふ ここのへに にほひぬるかな(61)

☆桃
3 もろともに あはれとおもへ やまざくら
   はなよりほかに しるひとも なし(66)
5 たかさごの をのへのさくら さきにけり
   とやまのかすみ たたずもあらなむ(73)
11 しのぶれど いろにいでにけり わがこひは
   ものや おもふと ひとの とふまで(40)
18 つくばねの みねよりおつる みなのがは
   こひぞつもりて ふちとなりぬる(13)

☆黄
1 はるすぎて なつきにけらし しろたへの
   ころもほすてふ あまの かぐやま(2)
4 すみのえの きしに よるなみ よるさへや
   ゆめの かよひじ ひとめよくらむ(18)
6 ひさかたの ひかりのどけき はるの ひに
   しづごころなく はなの ちるらむ(33)
15 ほととぎす なきつるかたを ながむれば
   ただ ありあけの つきぞ のこれる(81)
18 はなさそふ あらしの にはの ゆきならで
   ふりゆくものは わがみなりけり(96)

☆緑
2 はなのいろは うつりにけりな いたづらに
   わがみ よにふる ながめせし まに(9)

☆橙
8 いまはただ おもひたえなむとばかりを
  ひとづてならで いふ よしもがな(63)
9 せをはやみ いはに せかるる たきがはの
   われてもすゑに あはむとぞ おもふ(77)
14 はるのよの ゆめばかりなる たまくらに
   かひなくたたむ なこそ をしけれ(67)


☆お問い合わせ・お申し込み
■「点字・拡大文字付き百人一首〜百星の会」
  関場理華、08077261634



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 続いて、東京の「百星の会」と大阪の「大阪点字付きかるたを楽しむ会」の合同企画のご案内です。
 こちらは、兵藤美奈子さんからの情報をもとにしています。

■東西でかるたを楽しむ会■


☆日時 5月4日(祝・金)
☆会場 アミティ舞洲(大阪市此花区北港白津二丁目1番46号)
 研修室2と3

 午前の部 10時から〜
  「百人一首と仲良くなろうワークショップ」

 午後の部 13時から〜16時半
  「目の見えない・見えにくいあなたもレッツ”ちはやふる”体験!」
  百人一首に、点字と拡大文字を付けて、バリアも世代も越えて、皆でかるたに挑戦してみませんか?
  「でも百人一首って、ちょっと敷居が高い」と、ためらってしまう方は、午前中のワークショップからご参加ください。
  千年前の歌人と、仲良くなれること請け合いです。

☆参加費 500円(全日)
☆申込〆切 4月27日(金)

☆お問い合わせ・お申し込み
■「大阪点字付きかるたを楽しむ会」
 兵藤美奈子・putti-castle205@key.ocn.ne.jp
 野々村好三・090-3841-9107

 
 
 
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2018年01月31日

第3回「大阪 点字付きかるたを楽しむ会」のご案内

 昨冬からスタートした「大阪 点字付きかるたを楽しむ会」の第3回が、以下の通り開催されます。
 今回も私は、ちょうどインドへの海外出張中のために、残念ながら参加できません。
 興味と関心をお持ちの方は、事前に兵藤さんにメールでお尋ねください。

 厳しい寒さが続いておりますが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか。
 「点字の百人一首を楽しめる場を大阪で作りたい!」という思いから、日本点字制定記念日の直後、昨年の11月4日に集りを持ったのが第1回目。
 第2回目の1月には、子どもさんから大人まで18名の方が参加してくださり、坊主捲りや4人一首、文字通り100枚使っての百人一首で盛り上がりました。

 春風そよぐ3月には、第3回「かるたを楽しむ会」を開催したいと思います。
 点字の付いたカルタ(百人一首)のお持ち込みも大歓迎です。
 ご持参いただける方は、お申し込み時にお知らせください。
 「点字は苦手」という方もお子さんも、一緒に楽しめる場にしたいと思います。
 そして、もしよろしければお好きな一首を考えておいていただけると嬉しいです。
 皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2018年3月3日(土)14時30分〜17時
場所  日本ライトハウス情報文化センター 4階 会議室3
(大阪市西区江戸堀1-13-2 電話  06-6441-0015)
交通:大阪市営地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」北改札から2番出口を出てすぐ左。
もしくは地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋駅」4番出口から西へ400m
(肥後橋交差点の南西角)
参加費:大人―500円 高校生以下―無料
定員:先着20名(定員になり次第締め切ります)
申込:事前に、下記へメールでお願いします。
putti-castle205@key.ocn.ne.jp (兵藤美奈子)
※いただいたメールにすぐにご返信できない場合もありますが、ご容赦ください。
お問い合わせ先:野々村好三(電話090−3841−9107)

<参考1>
 坊主捲りには、「点字付き お坊さんめくり」(発売元:京都ライトハウス)
を使用しています。
 札を横長に置いた時の左上の角が丸くカットされ、上下に札の記号があります。
 札は、姫は「メメ」(姫のメ)、坊主は「こた」(お坊さんの頭?)、殿は1本線のほ
か、皇族を表す台座も点字で表されていて、手で触って区別しやすくなっています。

<参考2>
 3月17日公開『ちはやふる -結び-』がバリアフリー上映されます。
 2016年公開の[上の句][下の句]に続く、[結び]です。
 手に汗握る、競技かるたの世界をご堪能ください。
 音声ガイドは、公開初日からUDCast(ユーディーキャスト)アプリにて、全ての上映劇場でお楽しみいただけます。
 [上の句][下の句]はシネマデイジーでお楽しみください。

 
 
 
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2018年01月22日

日本文学の名作に関する個人的な雑感

 先週、各種メディアに「聞いて楽しむ日本の名作」(ユーキャン)の宣伝広告が流れました。
 内容は、朗読CD全16巻と付録で構成されるものです。
 長時間の通勤をしている者として、耳で聞くものは英会話を含めて興味があります。
 そんな関心から、選ばれている作品を眺めながらの、思いつくままのメモを記しておきます。

■原文を全文朗読しているのは、『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)・『どんぐりと山猫』(宮沢賢治)・『檸檬』(梶井基次郎)・『山椒魚』(井伏鱒二)・『ごん狐』(新美南吉)の5作品です。いずれも市原悦子さんが朗読なさっています。これ以外は、原文朗読とあらすじで構成したとあります。

■谷崎潤一郎は、『春琴抄』(中村俊介)と『細雪』(紺野美沙子)の2作品が選定されています。共に聞いてみたいものです。特に『細雪』は長いので、どの部分を切り取って読んでいるのでしょうか。

■川端康成は、『伊豆の踊子』(草刈正雄)と『雪国』(林隆三)です。『古都』を入れてほしいところです。

■井上靖が入っていません。大衆的すぎるのでしょうか。個人的な好みからは、『星と祭』を待ち望んでいます。

 目が不自由な方々は、点字になったものと、朗読によるもので作品を読み聴きしておられます。朗読ボランティアによる膨大な成果があるので、今後はこうしたものも含めた企画があるといいと思います。
 もっとも、著作権をどのように処理なさっているのか、今まだ調べていません。
 こうしたことに関しては、「立川市中央図書館で聞いた視覚障害者への対応」(2014年10月29日)も参照していただけると、さらに幅広い情報が得られると思います。
 
 
 
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2017年12月19日

第2回「大阪点字付きかるたを楽しむ会」のご案内

 今秋11月4日(土)に、【第1回 大阪点字付きカルタを楽しむ会(仮称) 「手探りで始めてみます」の巻】がスタートしました。
 これまでは、畑中ご夫妻が大阪で点字百人一首を楽しむ会を、長年なさっていました。しかし、ご夫妻が東京へ転居なさることとなり、5月27日(土)をもって活動を停止し、残念ながら閉会となっていました。
 畑中さんとは何度も会っています。本ブログで紹介した記事では、「【追記】高田馬場で「百星の会」の新年会と点字百人一首のカルタ会」(2017年01月14日)があります。そこでは、畑中さんのことを、次のよう紹介しています。

 大阪のカルタ会では「まゆみさんの和歌講座」をしているとのことです。そこで、専門書に書かれている解説を、畑中さんが読みあげてくださいました。詳細な光孝天皇の歌の解釈に、うなずいたり感心したりと、これも中身の濃い時間をみんなで共有することとなりました。
 この「百星の会」では、行くたびに新しい点字かるたの台が開発されています。
 今回も、まだ東京と大阪に1セットずつしかないという、畑中さんの開発による、5列5行に札を並べる新台で、上級者の試合が行なわれました。1人が25枚なので、50枚を取る競技です。こうなると、目が見えるとか見えないということは、まったく問題ではなくなります。
 新しく考えられたルールでは、15分で札を並べ、覚えるのに5分というのが原則なのだそうです。ただし、まだ出来たばかりなので、今後ともさらなる改良がなされるようです。


 その大阪の灯を絶やさないようにと、兵藤さんが「百人一首を楽しむ場を、大阪で!」という旗印の下、「大阪点字付きかるたを楽しむ会」を新しく立ち上げられたのです。京都ライトハウスの野々村さんも協力なさっています。

 日本語による点字は、1890年(明治23年)11月1日に制定されました。それにちなんで、特定非営利活動法人 日本点字普及協会が11月1日を「点字の日・日本点字制定記念日」と制定したのです。奇しくも、「古典の日」と一緒になっています。私の関心事では、この11月1日は「すしの日」「いい医療の日」「本の日」でもあります。ちなみに、「キティちゃん」の誕生日もこの日だそうです。

 それはともかく、東京で関場さんが精力的に展開なさっている「点字百人一首〜百星の会」と響き合う形で、東西の『点字百人一首』の会がますます発展することを楽しみにしています。
 私は点字も『百人一首』も素人なので、この東西の活動を広報する立場で協力していきます。

 なお、前回の第1回目は、私が東京の日比谷図書文化館で『源氏物語』の講座を開講する日でした。
 そして今回の第2回目も、あろうことか、またもや日比谷図書文化館での講座の日と重なってしまいました。
 今回も私は欠席です。しかし、興味と関心のある方は、下記の兵藤さん宛に連絡を取られたらいいと思います。大阪中之島の肥後橋が会場なので、交通の便がいいところです。

 新年早々、盛会となることをお祈りしています。

第2回「大阪点字付きかるたを楽しむ会」ご案内



師走の気忙しい時期を迎えておりますが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか。
「点字の百人一首を楽しめる場を大阪で作りたい!」という思いから、日本点字制定記念日の直後、今年の11月4日に集まりを持ちました。
当日は9名の方が参加してくださり、坊主捲りや4人一首などで盛り上がりました。

さて、いよいよお正月です。お正月と言えば、何といってもかるたです。
そこで、第2回「かるたを楽しむ会」を開催し、色々な方法で百人一首を楽しみたいと思います。
点字の付いたカルタ(百人一首)をお持ちの方は、ご持参いただけるとありがたいです。
「点字は苦手」という方も一緒に楽しめる場にしたいと思います。
皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2018年1月13日(土)14時30分〜17時
場所 日本ライトハウス情報文化センター 4階 会議室3
(大阪市西区江戸堀1-13-2 電話  06-6441-0015)
交通:大阪市営地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」北改札から2番出口を出てすぐ左。
もしくは地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋駅」4番出口から西へ400m
(肥後橋交差点の南西角)
参加費:大人―500円 高校生以下―無料
定員:先着20名
申込:事前に、下記へメールでお願いします。
putti-castle205@key.ocn.ne.jp(兵藤美奈子)
お問い合わせ先:野々村好三(電話090−3841−9107)


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2017年10月21日

第6回日本盲教育史研究会は京都府立盲学校で開催

 日本盲教育史研究会は、設立6年目となった現在、186名の会員で構成されています。盲学校等の教員及び関係者が多数を占めているそうです。今日の参会者は60名にもなっています。この研究会への期待と、情報交換の場としての質の高さが評価されてきています。

 その第6回目となる日本盲教育史研究会が、京都府立盲学校高等部(花ノ坊校地)で開催されました。颱風がやってくる中、幸いにも小雨だったので安堵しました。

 今回も、普通文字、拡大文字、点字の資料が準備してあり、手話通訳も配置されています。きめ細かな配慮が、随所に感じられます。これも、事務局長である岸博実先生とお手伝いのみなさまの、心優しい気遣いが結実したものです。

 午前中は、新装なった資料室見学がありました。これまでの点字印刷室を第2資料室として改装されていました。
 京都府の文化財になっているものなど、スチールのスライド式書架にきれいに収納してあります。古文書を中性紙の袋に入れ、箱に詰めてありました。これらは、デジタル化も終わっており、今後は普通の閲覧はパソコンで、さらに詳細な調査にはこの書架の原本を、ということになります。ただし、防災に関してはまだまだ手が届いていないとのことでした。

 新装なった資料室も拝見しました。

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 6メートル、8メートルの部屋です。これまでの資料室は、雑然と貴重な資料が押し込まれた部屋、という印象でした。それが、明るくてゆったりと資料が展示されており、手に取って見ることも容易になっていました。展示品に添えてある説明板も見やすく整理されています。部屋の一画では、パソコンでデジタル化された資料を閲覧することもできます。多くの方々が、こうした資料を直接見て、日本盲教育の現場とその歴史の一端を知ることで、幅広い知識と関心を深めて行かれる場所になればいいと思いました。ただし、まだ、音声対応にはなっていないとのことです。まだまだ、この資料室の整備は続くようです。

 展示品の中では、「盲生遊戯図」に注意が向きました。これは、杭と竹で作った迷路の「直行練習場」、カタツムリの迷路の「方向感覚渦線場」、太鼓・ドラ・琴に向かって球を投げる「打毬聴音場」の絵が描かれています。遊びの中から距離感や方向感覚を学ぶために、いろいろなことが盲学校で行われていたことを知り、私が知らなかった教育の役割などについて考えるいい機会となりました。

 とにかく、さまざまな工夫を凝らした教具から、先人の創意工夫が実感を伴って伝わってきました。

 私が展示の中で特に注意が向いたのは、展示ケースの中の「投票用紙展示板」でした。これには、次の説明文が添えてあります。
投票用紙展示板
大正14年4月、選挙法改正により点字投票の有効が確認された。木製点字板は全国投票所に常時備えてある。

 折しも明日は、衆議院選挙の投票日です。点字投票が大正14年から今に至るまで実施されていることは知っていました。しかし、点字で投票する時の道具を見るのは初めてです。以前、岸先生からは、この資料室の説明を一通り伺いました。しかし、問題意識が希薄だったこともあり、この道具については目が向いていませんでした。いい機会に見られて幸でした。

 総会では、さまざまな報告がありました。着実に活動が進展していることがわかります。
 来年は東京で開催するとのこと。
 その後、盲教育と点字資料の発掘と収集に関する討議がなされました。
 その中で、資料の保存方法について話題となりました。私も、前の職場である国文学研究資料館が資料保存を専門とする機関であることを紹介しました。可能であれば、全国の支援・盲学校などに眠ったままの明治大正期の資料や、どんどん処分されているという日本盲教育関係の文献などの保存について、調査の手を着ける時期かと思います。まずは手持ち資料のリストを作成することでしょう。そして、貴重なものの保存へと進みます。このことについては、私も何かお手伝いすることができるかもしれません。昔の仲間に連絡をしてみようと思います。

 午後は、講演と研究発表会です。
 事前に公開されているプログラムは以下の通りです。
日本盲教育史研究会第6回総会・研究会

 日本盲教育史研究会は創立から6年目を迎え、お陰様で会員数およそ190名の研究会へと育ちました。フィールドワーク中心の小規模なものに改善した春のミニ研修会は、金沢で5月21日に開催し、多くのご参加もあり、内容も好評でした。
 秋の第6回研究会は京都府立盲学校のご好意により同校を会場に開催させていただきます。現在、資料室の増改修を行い、展示や閲覧の方式を充実させる事業が進んでいると伺っております。研究会は協議の時間の確保など研究交流が深まるよう運営の改善も進めています。新しい資料室の見学も含め、日本の盲教育発祥の地での研究会に多くの皆様の参加をお待ちしています。
       日本盲教育史研究会会長 引田秋生
 
日時 2017(平成29)年10月21日(土)10時〜16時30分
会場 京都府立盲学校高等部(花ノ坊校地)2階・多目的教室、1階・資料室 
主催 日本盲教育史研究会 
後援 全国盲学校長会(予定)・日本盲人福祉委員会・毎日新聞社点字毎日
 
開場・受付:9時30分〜 資料室見学(10時〜12時 2交代) 
第6回総会:11時〜12時(会員のみ)
第6回研究会:13時〜16時30分


 以下、私のメモを備忘録として引きます。拙いものながら、思い起こしたり確認する時には、何かの役にたつと思ってまとめたものです。

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■記念講演
「石川県の盲教育史研究
 −「人」にスポットを当てた石川県立盲学校の史実に関する一考察」
    金沢星稜大学・元石川県立盲学校 松井繁 氏

 石川県立盲学校 の歴史的背景について、キーパーソンに注目しながら、詳細な研究成果を語ってくださいました。多くの方々が心血を注いで叡智を提供された歴史とその成果を知り、充実した時間をいただきました。

 最後に、以下のようにまとめられました。

ア、改革・刷新される時は、必ずそれをリードする情熱的パワフルなキーパーソンがいた。
イ、該当者が転退職するや改革は、一見止まって元の状態に戻ってしまうかのように見える。
ウ、しかし、キーパーソンは、多かれ少なかれ後ずっと影響を与え、確実に足跡を残している。


また、盲教育を継承発展させるための今日的課題を、以下のようにまとめて、締め括られました。

ア、大学の教員養成課程に、盲教育史を必須科目として位置づける。また、盲学校においても視覚障害者の歴史を必須として教える。イ、ー人のキーパーソンの働きだけでは限界がある。教員集団の底上げの方策が望まれる。各学校における断片的な講習会や、見よう見まね的な伝承では不十分で、文部科学省による本格的系統的な視覚障害教育の講習会が望まれる。


 なお、松井先生とは、今春のミニ研修会 in 金沢でお目にかかり、親しくいろいろなお話をしていただきました。今日は、ご著書『道を開拓した21人〜不滅の足跡を残した石川の視覚障害者達、関係者達〜』(橋本確文堂、2015年3月)を頂戴しました。ありがとうございます。

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■研究発表
「1951年に知ったルイ・ブライユ点字とコンピュータ時代以後の点字の展開」
 (点字情報処理の経緯)   長谷川貞夫(ルイ・ブライユSYSTEMプロジェクト代表)

 これまでの体験談を通して、情報処理の視点から展示のこれまでと今後について語ってくださいました。
 ただし、今日は時間がなかったために、会場のみなさんが知りたかったことにまでは及びませんでした。今回語られなかったことで、配布された資料から「全人類が体表で読む"第3の文字"」に関する箇所を、長文ながら引用しておきます。
 詳細は、以下の報告書に記されています。
 「光る点字(体表点字)開発の現状と未来
  −音声言語、視覚文字言語と並ぶ第3の文字言語”体表点字”」
 (『情報処理学会研究報告』Vol.2017-AAC-4 No.10 2017/8/27)

5.体表点字
 いまは、コンピューター時代である。ルイ・ブライユから178年を経た2003年1月に、点字の1点を振動体で表現し、全身で点字を読める6点式体表点字を共同研究者と開発した。
 点字の6点の形と6bitの情報交換用符号と比較すると、点字における「1の点」・=「あ」と、情報交換用符号の最初の信号とが同じ位置である。また、点が6点ある「め」は、全部が点の信号である。つまり、dotとbitが完全に一致している。言い替えると、点字を文字として見た場合、最も簡略化された文字なのである。ルイ・ブライユが、指先の触覚で6点を読み分けたように、体表点字の振動を強くすれば、触覚が最も鈍い足の裏でも点字が読める。それは簡略化された文字だからである。
 6点の体表点字を、頭部の周囲、背部の6点、両上肢の三角筋部・肘関節部・手関節部など、全身で読めることを確認した。
 このように、最初の体表点字は、指先で読む点字と同じように6点であった。しかし、これを・上段、中段、下段とほぼ0.3〜0.5秒の時間差で順に振動を送ることにより6点として読める2点式体表点字を開発した。
 この段間時間は、今後の研究で、より短縮されるであろう。つまり、読み速度が、一般の人が通常の文字を読むぐらいに、速くなる可能性があるということである。

6.光る点字(ピカブル)
 2017年の今年、2点式体表点字に同期して発光する振動体を「ピカブル」と名づけ、開発を進めている。(共同研究者は、本発表者6名)
 ピカブルの1点を表わす振動体の大きさは、現在のプロトタイプではワイシャツのボタンほどの大きさであり、両耳たぶにつけて、2点式体表点字の点字の振動を確認できるようにしている。このとき同時にピカブルを装着している当事者以外の人もLEDの発光によって、それが動作していることを確認できる。光の色は、点宇の左列1・2・3の点を赤色のLED・右列4・5・6の点を青色のLEDとし分けることによるわかりやすさの検証を行っている。
 体表点字データは、専用のスマートフォンアプリケーション(現在はこのアプリケーションの名称も「ピカブル」としている)から B1uetoothで送信されるため、ピカブルを装着した盲ろう者に対して、支援者がスマートフォンで点字データを送信し、少し離れた揚所から体表点字によるコミュニケーションをするような使い方も想定している。
 例えばiPhoneでピカブルを起動し、通常の文字で「こんにちは」と入力して送信すると、ピカブルは2点式体表点字でコンニチハと振動し、振動と同期してLEDも光る。
 開発中の専用アプリケーションは、現在はピカブルの使いやすさを検証するため、振動時間を数値で調整したり、それを複数のプリセットデータとして保存したり、練習用の定型文を保存し、ワンタッチで呼び出せる機能をもつプロトタイプであるが、複数の当事者による実証実験を通して、より最適な振動時間の初期値の設定や、必要とされる操作系ユーザインタフェース(「一時停止」や「1マスもどる」などの操作ボタンの必要性は実証実験により確認された)の検討を進めた上でリリースする予定である。
 ピカブルは点字を読むための出力装置だが、点字の形を利用した入力装置としては「イッピツ」を開発しており、次にこれを説明する。

7.イッピツ
 イッピツ(一筆)は、スマートフォンの画面上で点字の6点を一筆書きの要領でなぞることにより、点字を入力できるアプリケーションである。これについては第2回研究会で「音声言語、文字言語に並ぶ誰もが全身で使えるルイ・ブライユ点字」として既に発表しているが、ここで改めてその概要と、その後の経過を含めたこれまでの経緯を紹介する。
 イッピツは2013年に「点字一筆式入力 IPPITSU IME」というAndroidスマートフォン用のアプリケーションとして既に公開している。
 スマートフォン画面の四隅の位置を点字の4点、1(左上)、3(左下)、4(右上)、6(右下)の点に見立て、1と3、4と6の辺の中間に2の点および5の点を置いて、これら6つの点全体を点字の1マスと見立て、入力したい点字の点をなぞることで文字を入力できるという基本仕様は、当時から現在まで変わっていない。
 たとえば、左上1の点は点字の「あ」である。この点に指が触れるとブルッと振動し、そこで指を画面から離すと「あ」が入力される。点字の「い」は1の点と2の点である。1の点の振動を感じてから、そのまま指をずらして2の点まで移動し、振動を感じてから指を離すと「い」が入力される。6点すべてをなぞってから指を離すと点字の「め」が入力される。画面に触れてから離すまでに通過した点情報を文字に変換する。通る経路は自由で、何回同じ点を通ってもかまわない。これがイッピツの基本原理である。
 画面の点に指が触れると振動するため、視覚障害者、盲ろう者も入力することができる。つまり、健常者、視覚障害者、ヘレンケラーのような盲ろう者が相互に通信を行えるのである。
 2015年、AppleWatchの登場を受けて、このイッピツの仕組みを腕時計型端末の上で動作させれば、最も小さいウェアラブルな点字入力端末になるのではないかと考え、2016年に発表されたWatchOS3を使い、イッピツの仕様に基づくプロトタイプを開発した。しかしながら限られた画面サイズ上での文字入力以外の機能を組み込む負荷や、iPhoneとの通信時のタイムラグの課題などにより、AppleWatch上での開発は現在一旦保留している。
 現在は、iPhoneで稼働するiOSアプリケーションとしての「イッピツ」の開発を行っており、AppleWatchとの連携は、今後のハードウェア性能の向上やWatchOSのバージョンアップの動向を見ながら、再開する計画である。AppleWatch版にこだわる理由は、単に小型の点字入力端末としての期待ではなく、スマートフォンの画面サイズを使ったイッピツよりも使い勝手がよくなることが期待されるからである。端末の画面の四隅を使うことで、視覚に頼らない入力ができるというコンセプトは共通でも、画面が大型化しているスマートフォンでは、点から点になぞる移動は必ずしも思い通りにならないことが多い。しかし端末が小さければ、四隅の位置の把握がしやすく、安定した入力ができる上、移動距離が短くなるため、入力にかかる時間も節約でき、結果的により速くかつ正確に文字を入力できると考えているからである。
 iPhoneアプリケーションとしてのイッピツには、画面上の点の位置を利用者が任意に変更できる機能を実装している。これを使って6つの点の位置は自由に決められるが、一方で視覚障害者にとって重要な情報である画面上の点の位置についての手がかりがなくなってしまう。そこでイッピツの開発に使用しているiPhoneの画面には、変更した点の位置を触覚で知覚できるようにシールを貼っている。これにより端末の四隅に縛られずに画面上の点を把握しやすくしている。そして入力エリアを小さくすることにより、簡単に点字が入力できるようになることを検証できた。
 入力した文字が意図したものであるかを把握するための方法として、現在のイッピツでは1文字入力する度に音声と振動で入力した文字を確認できるようにしている。また、ある程度まとまった文章を入力した後、それをまとめて読み上げたり、振動で連続した文章を確認する機能も実装している。このときに使っている振動データは、点字の6点を1から6(または1-4-2-5-3-6)の点の順で振動させるもので、これを1点式体表点字という。1点式体表点字は振動する端末が1つしかなくても、つまりスマートフォン本体のみで利用できるのがメリットだが、1っの文字を確認するためにそれなりの時間がかかるという問題がある。そこで、イッピツの中にピカブルの2点式体表点字システムを導入することで、より高速な確認が行えるようになる。ピカブルはBluetoothを使った外部装置なので、これを別途導入してもらう必要があるが、このような形でこれらの装置が将来的に統合システムになることで、健常者、視覚障害者、盲ろう者を問わず同じアプリケーションを使ってコミュニケーションができるようになると考えている。

8.2020年東京オリンピック・パラリンピックを盲ろう者にヘレンケラー放送で中継放送
 ちょうど、この学会発表日から2年11か月後の、2020年7月24日から東京オリンピック・パラリンピックが開催される。この開催に間に合うように、開発の目標を決めた。ここでいうヘレンケラー放送だけで、オリンピック・パラリンピックの実況放送を楽しめるようになるのは、完全に視覚・聴覚がない最重度の情報障害者である「重度盲ろう者」だ。
 現在、「重度盲ろう者」に対する放送に相当するものは、まったくない。つまり、メールも情報検索もまったくできない環境である。このコンピューター時代における「通信の真空スポット」なのである。これを、何とか解消してさしあげる必要がある。それで、イッピツ入力による送信と、ピカブル受信で、競技の実況放送を行うことを目標としている。ここで大事なことは、放送が可能ということは、個人のメールや情報検索も可能になるということだ。
 たとえば、一般の人でYouTubeを送信と受信で利用している人は、もちろん、メールや情報検索を行っている。つまり、盲ろう者が、これと同じ通信環境に初めて住めるということなのである。現在、日本に、盲ろう者が約1万3000人いると言われている。もし、このうち、10%の盲ろう者が重度情報障害者であれば、1300人の盲ろう者が通信可能になるということなのである。

9.体表点字が人類の新しい文字言語として加わる
 体表点字を、幼小児期から学習した事例はまだないので、一般の人が言語を習得するのと同様に、幼小児期から20歳ぐらいまで学習すれば、音声や通常の文字のように理解できるようになるであろう。
 言語に、話し言葉の音声言語、視覚で読み書きする文字言語がある。また、1825年にルイ・ブライユが発明した指先で読む点字は、触覚文字言語と言える。
 この三種類の言語について述べる。
 音声言語は、数万年以前と言われる人類の誕生とともにあると考える。言葉を使えるようになっての人間である。その起源を確定することはできない。
 文字言語の起源については、約6千年前のメソポタミアの粘土板などに書かれた楔形文字とも言われる。文字の起源については、別の説もある。
 音声言語や文字言語を構成する要素は、あまりにも複雑である。ところが、点字は、6点でマスアケを含めての64パターンである。
 また、世界の多くの言語に対応した点字体系がある。そして、各言語の点字について、幼児期からの学習者は、言語を問わず、20歳ぐらいまでに指での触読が、相当に熟練しているものと考える。
 ところが、体表点字については、その発明と普及の日が浅いので、幼児期から成人期までの学習の経験がない。今後、幼児期から計画的に学習すれば、音声の言葉や視覚の文字を反射的に理解できるように、頭部、体幹部、四肢に与えられた体表点字を、反射的に理解できるようになるかもしれない。
 ルイ・ブライユ点字の真価は、人間の言語能力の新しい開発である。

10.おわりに
 障害者である私が、ボランティア、あるいはボランティア的な立場の方々に、これまでいろいろとご協力をいただきました。本稿でご紹介できなかった方々におわびいたします。
 体表点字の未来の姿は、少なくとも、今後、幼児の頃から学習を始めるとして、成人して社会活動をするまでの年数がかかります。人の誰もが用いる第三の言語になることを願ってやみません。(後注番号は省略)



■研究発表
「鳥居篤治郎先生と京都ライトハウス」
    田尻彰(京都府視覚障害者協会会長)

 師に対する篤い敬愛の情に溢れた語り口でした。京都ライトハウスに、私は何度も足を運んでいます。しかし、鳥居先生について、今日まで何も知りませんでした。溢れんばかりに豊かな発案と企画を実現させようとする姿を、熱っぽく語っていただき、啓発されることの多い時間を持つことができました。
 今日の内容は、以下の項目の通りです。

■京郁の視覚障害児の歴史に流れる鳥居スピリット
1鳥居スピリットの原点
2「ライトハウスビジョン検討会」(上村元館長の思いと私達への語りかけから)
3京都の鳥居→日本の鳥居→世界の鳥居の存在感と広い見識
4『「盲目は不自由なれど、盲目は不幸にあらず」としみじみ思ふ』の言葉に突き動かされた中途視覚障害者の声
5白杖安全デーの産みの親
6鳥居寮力涼都ライトハウスに占める存在感

■鳥居先生の生き方から問いかけられる現代的な課題
1幼小児期の恵まれた家族関係の中で芽生えた豊かな情操
2三療以外の進学に対する強い思い?
3東京での文化人との出会いと世界観の広がり
4伊都夫人との出会い
5京都府立盲学校副校長としての誇りある校風作り
6京都ライトハウス創設とその後の発展に向けた鳥居構想7日本点字の発展に貢献された実績



 研究発表の後は、質疑応答や討議となりました。これは、これまで短時間に終わっていたものです。今回から、たっぷりと時間が設定されました。この会の運営メンバーの英断だったと思います。
 とにかく、質問したい方々の挙手が続き、非常に盛り上がりました。その中でも、弘田会長と日本点字図書館の田中徹二理事長のエスペラントに関するやりとりを、私はもっと伺いたいと思いました。
 なお、質問を受けた発表者から、発表の意図が伝わらなかったことや誤解に対する補足説明がありました。この、コミュニケーションの行き違いについては、今後の質疑応答のあり方への貴重な事例かと思いました。専門用語や漢語が飛び交うと、その言葉の理解に一般聴衆としては困難が伴うからです。やはり、平易な言葉で発表や報告をしてもらうことを、発表者に重ねてお願いするしかないようです。聴衆が専門家ではないことが前提だからです。内容が濃い発表ほど、聞く側としては理解に至らないままに話が展開していき、追いつけないことから内容が正しく受け取れない、ということはえてしてあります。どうしようもないことではありますが。

 閉会挨拶の後は、会場の後片付けをしてから、京都駅近くの懇親会会場へ急ぎました。依然として小雨が降っています。4、5人のグループに別れて、タクシーを使って移動しました。私は、兵庫県の盲学校の先生方と同乗し、懇親会場でも四人で同じ席を占めました。お話をするうちに、札幌のミニ研修会でご一緒していたことや、宇治でのイベントで一緒だったりと、不思議な縁を感じました。
 お集まりのみなさんは、とにかくお元気です。私の疑問についても、いろいろな情報で答えてくださいました。
 現在抱えている、観光とユニバーサルやアクセシブルの問題については、事務局長の岸博実先生から、貴重な情報を教えていただきました。大至急確認します。ありがとうございました。


 最近の、この研究会の活動報告については、私の個人的なものながら、本ブログでは以下の記事にまとめています。おついでの折にでもご笑覧いただければと思い、列記しておきます。

「日本盲教育史研究会の第5回ミニ研修会 in 金沢に参加して」(2017年05月22日)

「第5回・日本盲教育史研究会に参加して」(2016年10月22日)

「日本盲教育史研究会第4回ミニ研修会 in 九州」(2016年06月04日)

「日本盲教育史研究会第4回研究会に関する報告」(2015年10月24日)

「日本点字図書館創設者・本間一夫生誕の地へ」(2015年06月01日)

「盲教育史研究会で多くの方々と歓談」(2015年05月31日)

「日本盲教育史研究会 第3回ミニ研修会(in札幌)」(2015年05月30日)

「日本盲教育史研究会に参加して(その3/3)」(2014年10月13日)

「日本盲教育史研究会に参加して(その2/3)」(2014年10月12日)

「日本盲教育史研究会に参加して(その1/3)」(2014年10月11日)
 
 
 
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2017年09月30日

金沢でお茶をいただいた後、音認識の新視覚体験をする

 昨夜から望んでいる、柴山潟の湖面に映発する朝日に起こされました。

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 宿を発つ前には浮御堂を散歩。

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 加賀温泉駅前では、大きな観音立像が飛び込んで来ました。

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 金沢では、ひがし茶屋街の「森八」で抹茶をいただき、少し歩いて浅野川の対岸にある主計町茶屋街に足を向けます。
 「茶舎 觀壽」では、さまざまな煎茶や鉄観音茶をいただきました。

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 このお店は、婿殿の同僚だった方のご夫妻が金沢で開店なさった、本格的なお茶屋さんです。ご主人が台湾で沈先生の下で1年にわたってお茶を学び、満を持して開業なさったのです。お茶道具も、沈先生の作だそうです。

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 日本茶を中国茶のようにして飲むのは初めてのことです。一煎二煎と、変わりゆく香りと味を楽しみました。この飲み方で、おいしくいただけました。上質の鉄観音では、香りと味を贅沢に味わうこともできました。
 棚の左下に奈良の鹿の人形があることで、話も弾みました。

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 とにかく、淹れてくださるお茶の多彩な香りと味を堪能しました。長時間、お話を聞きながら、心落ち着く贅沢な刻を過ごしました。このような場所は、どこにでもあるものではありません。金沢に得難いところがあることを知りました。懇切丁寧な説明とご教示を、ありがとうございました。
 今、職場で王静先生に中国茶や紅茶のことを教えていただいています。今日のことを話し、今後の共同研究に活かしたいと思います。
 バスで、金沢21世紀美術館に移動しました。ここは、私が10年前に博物館の学芸員の資格を取得する時、講座の中で注目すべき美術館の代表的な例として紹介されたところです。いつか見たいと思っていたところです。そのコンセプトは、今も変わっていないと思いました。
 そのロビーの一角で、「Sight」という企画が開催中でした。視覚に頼らずに音で物を認識しようとする実験が、自由に体験できるものです。

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 入口には、次の説明文が掲示されていました。

ヒトは普段、"目で見る"ことに慣れ親しんでいますが、
"見える"という体験に目は必要なのでしょうか。

例えば、コウモリやイルカは音を使って障害物を避け、獲物を捕まえることができます。
彼らは目を使わずとも、"見える"という体験をしているのではないでしょうか。

私たち Sight Project は、"見える"ということの本質を探るため
目の前にある光景を音に変換するデバイスを開発し、耳という器官を通じた
新しい視覚体験をつくることを試みています。

さあ、あなたも"耳で見る"知覚世界を体験してみませんか?


 これは、私が取り組んでいる視覚障害者と共に古写本『源氏物語』を触読するテーマを、さらに発展させるものとなる可能性がありそうです。この「Sight」の取り組みとの接点や、共同研究の可能性を探ろうと思っています。今後の情報交換をお願いして来ました。

 短い時間ながらも、稔り多い充実した2日間でした。今後につながる収穫がいくつもあったので、明日からの日々の中で、さまざまな取り組みに活かしていくつもりです。
 
 
 
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2017年07月23日

(補訂版)神戸で百人一首の合宿の後はお楽しみの食事とスイーツツアー

 神戸市北区にある総合福祉ゾーンの「しあわせの村」で開催された「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」の夏期合宿は、今日が2日目です。

 昨夜は、不可思議なことがありました。夜、何度かエアコンが切れました。暑くて目が覚めると、エアコンが作動していないことに気付いたのです。そのために、3回もリモコンのスイッチを押し直しました。T時間のタイマーが設定されていたようです。同室の3人は、みなさん目が見えない方々なので、エアコンのリモコンを操作しようにも難しいのです。自ずと、私の役割です。なぜT時間にセットされていたのか不明です。タイマーのボタンなどは見当たりません。朝、他の部屋の方に伺うと、みなさん一晩中快適だったとのこと。少し寝不足で2日目を迎えました。

 午前中はカルタ取りの錬成会、午後は神戸三宮元町のスイーッツァーとなりました。

 まず朝9時半からは、リーダーの関場さんから依頼を受けた、『源氏物語』に関係する『百人一首』の歌10首の解説をしました。
 この内容は、一昨日の本ブログ「『百人一首』から選んだ『源氏物語』関係の歌10首の簡単な説明」(2017年07月21日)に記した通りです。ただし、30分という時間しかないこともあり、ブログの内容をわかりやすく手短にまとめました。説明不足ですみませんでした。
 『百人一首』の和歌の字句が揺れていたことや、歌から五感に訴えてくる部分の指摘には、興味を持ってもらえました。特に、紫式部の歌の最後のことばである「夜半の月かな」と「夜半の月影」については、みなさん意外だったこともあり、『百人一首』の言葉にも注意が向いたようです。自分なりの解釈を持っていると、『百人一首』のカルタ取りがもっともっとおもしろくなることも、少しは伝えることができました。カルタ取りという性格上、早く札を取ることだけに関心が向きがちです。しかし、この和歌の言葉に違った言い伝えがあることは、意表を突くものだったようです。

 拙いながらも私の話によって、物の見方を大きくし、ゆったりと構えていただいた後は、実践形式のカルタ取り会です。
 「点字・拡大文字付 百人一首」は、まだ完成していません。ルールはもとより、カルタ台やカルタの形と、そこに書く和歌の中から抜き出す文字についても、日々進化しています。
 今回も、八橋型と名付けたカルタで、さまざまな試行錯誤がなされました。
 特に、黒白反転したカルタを使った実践競技がそれです。これは、弱視者も文字の識別がしやすいので好評でした。

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 男女の名人級が対戦するエキシビションもありました。
 とにかく、カルタが上下左右に飛び交います。
 持っていたデジタルカメラで連写しながら、どちらが先にカルタを取ったのかをその場で判定しました。
 「写真判定だ!」とみなさんから大受けでした。

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 しかし、目が見えないために、複数枚の札に指がかかってカルタが飛びます。どの札を飛ばしたのかが、写真判定では確認できないことが多いのです。目が見える方同士の試合では、ピンポイントでカルタを飛ばせます。しかし、見えない者同士ではそこまではできないのです。この判定方法については、今後の課題と言えます。

 続いて、発想をまったく変えた、南沢さんの新方式も紹介されました。4枚だけを一枚のシートの四隅に置くことで、確実に札が取れ、どの一枚を飛ばしたかがわかりやすくなります。そして、取られた札が置いてあった場所に、別の札が置かれるというものです。

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 対戦した名人(?)2人は、頭の切り替えが楽しめたとのこと。これは、晴眼者と一緒にカルタ取りができることにもつながります。ただし、これには、私が担当したカルタを補充する役の動きとタイミングが、勝敗を分ける大きなポイントともなりかねません。
 今回は初めての挑戦でした。今後の展望が開ける、楽しい未来が見えてきました。
 進化する「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」に、今後とも大いに期待していただきたいと思います。

 午後は神戸三宮と元町に繰り出し、「ステーキランド つるうし館」で楽しみにしていた食事タイムです。これは、姉が何度も下見をし、ステーキ屋さんには5回も足を運んで試食をしたのだそうです。メニューの品定めをして、シェフとの交渉もしてくれました。その苦労の甲斐があってか、みなさまには満足していただけたようで安心しました。目の前で展開する包丁捌きのパフォーマンスは見えないとしても、ステーキと野菜を焼く音と、包丁が鉄板とぶつかり滑る軽快な金属音、さらには食欲をそそる香りは格別のものが有りました。まさに音と香りのショーに参加したのです。

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 次は、5軒のスイーツ巡りです。洋菓子の「ケーネヒスクローネ」、チーズケーキの「観音屋」、ケーキの「パティスリー」「トゥーストゥース」、きんつばの「高砂堂」。このお店と巡回コースも、姉が決めてくれました。みなさん、お土産が増え、リュックが一杯になっていました。

 新神戸駅でのお別れでは、あまりにも感動的な2日間だったこともあったためか、思わず涙する方々と再会を約してのお見送りとなりました。
 ガイドヘルパーのみなさまにも、お礼申し上げます。楽しい旅にするためのお手伝いを、ありがとうございました。おかげさまで、すばらしい成果があったと思います。関場さん、お疲れさまでした。広島大学からお手伝いで参加した2人にも感謝します。
 
 
 

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2017年07月22日

目が見えない方々と須磨で『源氏物語』の散策をしました

 今日はお昼前に、新神戸駅に23人が集合。目が見えない方は13名。目が見えるガイドが10名です。
 参加者は、福島・栃木・群馬・埼玉・東京・神奈川・京都・和歌山・大阪・広島・島根と、全国からの参加です。
 お一人だけ列車の事故に巻き込まれたとのことで、遅れての到着です。まずはみなさにはバスの中で待っていただきました。それでも、定刻に旅は無事に始まりました。

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 バスの中では、参加者各自が自己紹介。リーダーの関場さんの名調子で、楽しくスタートです。

 お昼は、神戸市立国民宿舎「須磨荘 シーパル須磨」内の和食処「漁(すなど)」で、おいしい海鮮丼をいただきました。
 食後は、近くに建つ行平の歌碑まで、須磨浦の海風と波音と塩の香りを肌身に感じてもらいながら散策をしました。これは、予告していませんでした。現地に着く前に、海岸に歌碑があることを知り、急遽コースに入れました。みなさん、歌碑をさわり、書かれた行平の和歌2首を触読しておられました。

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 チャーターしたバスには電話で連絡をとりながら近くまで来てもらい、サッと乗り込みました。
 次は関守稲荷神社(須磨の関跡)です。ここの入口には、俊成の歌碑があります。

     俊成
  聞き渡る
   関の中にも
   須磨の関
   名をとゞめける
   波の音かな


 境内には、『百人一首』の源兼昌の歌碑があります。

      源兼昌
  あはちし満
    閑よふちとりの
   那くこゑ耳
    いくよねさめぬ
     す万のせきもり


 『源氏物語』で、光源氏が須磨に退居していた時、巳の日祓いをしたところをここになぞらえ「巳の日稲荷」ともいわれています。

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 さらに3分ほど歩いて現光寺へ。「光源氏旧居跡」の石柱を触って、「源氏寺」と刻まれた石碑のところから、坂を上って本堂に向かいました。
 住職がお茶を出してくださったので、それをいただいて少し休憩しました。
 本堂には、国宝『源氏物語絵巻』10枚をふすま絵に模写したものがありました。
 ここは、光源氏が住んでいたところだとされています。

 この現光寺からバスで須磨寺に移動。

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 須磨琴保存会の小池みほさんのご好意により、須磨琴の演奏をたっぷり堪能しました。

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 その後、みなさんに須磨琴を体験していただきました。須磨琴を7台も出していただけたので、みなさん一絃琴をひくことができました、これは、想像していなかったサプライズとなりました。

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 その後は、バスで今日の宿泊地である「しあわせの村」に行きました。
 みなさんと楽しい食事をし、温泉に入り、それから集会となりました。
 3人の全盲の方の活動報告を聞きました。
 松江で『百人一首』の勉強をなさっている伊藤さんからは、『百人一首』との出会いや現在の活動の報告を伺いました。独学です。
 続いて、福島県からお出での渡邊さんから、これまでの高校の教員生活と『百人一首』の楽しい話を聞きました。一緒に科研に取り組んだ仲間なので、また新しい一面を発見しました。
 栃木からお越しの南沢さんは、小学校で『百人一首』のクラブを立ち上げた話や、カルタ台の今後について、さまざまな構想も語られました。アイデアマンです。

 みなさん、それぞれに人を惹きつける秘訣を体得しておられます。そうであるからこそ、周りに少しずつ『百人一首』に興味を持つ人たちを、それも目が見えない方々を巻き込んで来られたので。そのパワーには驚くばかりです。

 最後に、この会を取り仕切っておられる関場さんから、カルタ台の普及がこれからの『百人一首』の全国展開のカギとなるという話がありました。

 さらに夜の部は、みんなが一部屋に集まり、日付が替わるまで大賑わいでした。
 とにかく、パワフルな1日でした。
 明日は、『百人一首』のカルタ会です。今日以上に盛り上がることでしょう。
 今晩は、全盲の男性3人と一緒の部屋で休みます。いろいろな話をしながら、学生時代を思い出しています。
 
 
 
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2017年07月21日

『百人一首』から選んだ『源氏物語』関係の歌10首の簡単な説明文

 明日、「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」のみなさまを須磨に案内し、明後日は宿泊研修のお手伝いをします。
 研修の時、今回選び出した和歌について、少し説明することになっています。
 その場の説明だけではよくわからないことが多いと思われますので、以下に予習と復習を兼ねて、用意している文章を引用しておきます。

 この文章は、印刷したものを当日お配りします。
 今回は、福島・栃木・群馬・埼玉・東京・京都・大阪・和歌山・島根と、広範囲からお集まりのようです。
 それでは、道中お気を付けてお越し下さい。
 みなさまとの再会を楽しみにしています。


【11】参議篁
「わたのはらやそしまかけてこきいてぬと ひとにはつけよあまのつりふね」
《大海原の島々を目指して漕ぎ出したと、都の人には告げてくれ、漁師の釣り船よ。》
 →小野篁は、光源氏と同じく官位を剥奪されて流罪。遣唐大使の船が壊れた時、副使だった篁は船の交換が不満で乗船を拒否。嵯峨上皇の怒りをかい、隠岐島に流された。出雲の地で詠まれた歌。「人」は家族か恋人か友人か? 背景に船を漕ぐ艪の音が寂しく響いている。墓は京都にある紫式部の横。

【14】河原左大臣
「みちのくのしのふもちすりたれゆゑに みたれそめにしわれならなくに」
《福島県信夫のしのぶずりの乱れ模様のように私の心が乱れているのは、他ならぬあなたのせいなのです。》
 →源融は光源氏のモデル。「夕顔」巻の「某院」は、塩釜の景色を写した河原院が舞台。融の宇治の別荘は後に平等院になる。「誰」は「たれ」と清音。伝わる本文に違いがあり、「乱れ初めにし」は『伊勢物語』、「乱れんと思ふ」は『古今和歌集』。『百人一首』の前に出来ていた、勅撰集から選んだ歌集「百人秀歌」から独立して「乱れ初めにし」になった。

【16】中納言行平
「たちわかれいなはのやまのみねにおふる まつとしきかはいまかへりこむ」
《貴方と別れて因幡の国(鳥取県)へ行っても、いなば山の峰に生える松のように、あなたが待つと言うのを聞いたならすぐに帰ってきましょう。》
 →在原行平は須磨を漂流した。松風村雨堂に歌碑。『古今集』には「わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に藻塩たれつつわぶとこたへよ」とある。一絃の須磨琴を行平が作ったという伝説あり。赴任にあたって左遷のような気持ちを、妻か母か友に贈った歌。

【24】菅家
「このたひはぬさもとりあへすたむけやま もみちのにしきかみのまにまに」
《今回の旅は急なことなのでお供えの幣の用意もできませんでした。手向山の紅葉を神のお心のままにお受け取り下さい。》
 →光源氏のモデルの一人とされる菅原道真。九州の太宰府に左遷されたまま没し、その霊が雷神となって都に現れた。天神信仰を背景に持ち、神へ奉納する紅葉から、この歌は竜田山で詠まれたとも考えられる。

【27】中納言兼輔
「みかのはらわきてなかるるいつみかは いつみきとてかこひしかるらむ」
《みかの原を分けて湧き出てくる泉川ではないが、あなたをいつ見たというので、このように恋しいのだろうか。》
 →「み」と「か」の音が流れるように響く。水が湧き、川が流れる音が背景で聞こえる。この歌は、「逢わざる恋」か「隔離された恋」のどちらか? 藤原兼輔は紫式部の曽祖父で「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」は『源氏物語』に26回も出てくる。

【55】大納言公任
「たきのおとはたえてひさしくなりぬれと なこそなかれてなほきこえけれ」
《滝の音は聞こえなくなってから長い年月が経ったけれど、その名声は今でも世間に伝わり聞こえてくることだ。》
 →藤原公任は、紫式部に「若紫はおられませんか」と声をかけた。「た」と「な」の音の繰り返しが心地よい。本によってこの歌は、「音」と「糸」の違いがある。聴覚の「聞こえ」が「音」の縁語になるか、視覚の「糸」が「滝殿の実景」と結び付くか。

【57】紫式部
「めくりあひてみしやそれともわかぬまに くもかくれにしよはのつきかけ」
《久しぶりにめぐり逢い、見分けのつかないうちに雲間に隠れた夜半の月のように、あなたはあわただしく去って行き残念です。》
 →『源氏物語』の総編集者。『源氏物語』の「雲隠」巻は巻名だけで文章はない。「月影」は『百人秀歌』や競技用かるたでは「月かな」と、いろいろな言葉で伝わっている。七夕を意識した歌であり、「月影」の方が人の別れる情景は深まる。

【78】源兼昌
「あはちしまかよふちとりのなくこゑに いくよねさめぬすまのせきもり」
《淡路島から通う千鳥の悲しい鳴声に、いく夜目を覚ましたことだろうか、須磨の関の番人は。》
 →関守稲荷神社に歌碑。この歌は、千鳥の鳴き声が耳をかすめる。「須磨」巻に「まどろまれぬ暁の空に、千鳥いとあはれに鳴く」。同じく「友千鳥もろ声に鳴く暁は一人寝覚の床も頼もし」を本歌取り。『源氏物語』をヒントにして詠んでいる。

【83】皇太后宮大夫俊成
「よのなかよみちこそなけれおもひいる やまのおくにもしかそなくなる」
《世の中というものは逃れる道はないものなのだ。深く思いこんで入ったこの山奥にも、鹿が悲しげに鳴いている。》
 →関守稲荷神社に藤原俊成の歌碑あり。「聞き渡る関の中にも須磨の関名をとゞめける波の音かな」。鹿が悲しげに鳴く声が背景から聞こえる。俊成は後に「歌詠みが源氏物語を知らないとは何たることか」と言った。

【97】権中納言定家
「こぬひとをまつほのうらのゆふなきに やくやもしほのみもこかれつつ」
《待っても来ない人を待つ、その松帆の浦の夕なぎの時に焼く藻塩のように、わが身は恋心に焦がれている。》
 →藤原定家は『百人一首』の撰者。『源氏物語』の本文を整理した。この歌は、女が恋人の訪れを待つ趣向。無風の「夕凪」や「焦がれ」に皮膚感覚がある。

〔参考文献︰『百人一首の新考察』吉海直人、世界思想社、1993年〕

 
 
 
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2017年07月16日

『百人一首』から『源氏物語』と関係のある10首を選ぶ

 今週末の22日(土)に、「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」のみなさまを須磨に案内します。
 この計画は、過日の「目が見えない方々と須磨を散歩をするための下見」(2017年07月03日)で報告したように、ほぼ確定しました。食事もデザートも、何とか確保できました。みなさまに満足していただけるように準備を進めています。
 その後、宿泊研修場所となる「しあわせの村」でのイベントの検討が進む中で、翌23日(日)の午前中に、『百人一首』の中から『源氏物語』に関係のある歌を10首選び出し、その説明をすることになりました。そして、その歌を取り合うのです。
 実際に『百人一首』の中から『源氏物語』と関連する歌を抜き出してみようとすると、なかなか選べません。しかも、今回散策する須磨との関連も必要です。
 そこで、以下の10首を選んでみました。
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■『百人一首』の中で『源氏物語』と関係のある10首



【11】小野篁「わたの原八十島かけて〜」
  →光源氏と同じく官位剥奪の上で流罪。墓は紫式部の隣。

【14】源融「陸奥のしのぶもぢづり〜」
  →光源氏のモデルで、河原院が「夕顔」巻に関連。

【16】在原行平「立ち別れいなばの山の〜」
  →須磨を漂流し松風村雨堂に歌碑。須磨琴を製作したとか。

【24】菅家「このたびは幣もとりあへず〜」
  →光源氏のモデルとされる一人で、九州に左遷された。

【27】藤原兼輔「みかの原わきて流るる〜」
  →紫式部の曽祖父で「人の親の心は闇にあらねども〜」は『源氏物語』に26回も出る。

【55】藤原公任「滝の音は絶えて久しく〜」
  →酔った公任が紫式部に「若紫はおられませんか」と声をかけた。

【57】紫式部「めぐりあひて見しやそれとも〜」
  →『源氏物語』の編集者。

【78】源兼昌「淡路島かよふ千鳥の〜」
  →関守稲荷神社に歌碑。「須磨」巻に「まどろまれぬ暁の空に、千鳥いとあはれに鳴く」。

【83】藤原俊成「世の中よ道こそなけれ〜」
  →関守稲荷神社に俊成の歌碑。「歌人が源氏物語を知らないとは何たることか」と言った。

【97】藤原定家「来ぬ人をまつほの浦の〜」
  →『百人一首』の撰者で、『源氏物語』の本文を整理した。

 当日までに、みなさまが少しでも予習して参加できるように、これら10首について、簡単な説明を付けたいと思っています。ただし、目が見えない方々への説明文は、いろいろと配慮すべきことがあり、苦心惨憺しているところです。
 
 
 

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2017年07月11日

ユニバーサル・ツーリズムに関する思いつき

 広瀬浩二郎氏(国立民族学博物館)の「『ユニバーサル・ツーリズム』とは何か 共同研究●「障害」概念の再検討―触文化論に基づく「合理的配慮」の提案に向けて」(『民博通信』2017、No.157)を読みました。

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 これを読みながら、それをなぞるようにして、以下のことを考えてみました。
 まだ、ほんの思いつきです。
 しかし、これはさらに大きく膨らむような気がします。
 忘れないうちにと思い、ここに書き残しておきます。
 このことに関して、問題意識をお持ちの方からご教示をいただけると幸いです。


「ユニバーサル・ツーリズムの理論と実践に関する研究(メモ)」


 昨春の障害者差別解消法の施行により、さまざまな分野で「合理的配慮」の模索が始まっています。
 これは、観光においても、意義深い検討課題となるはずです。
 以下のメモは、私自身の問題意識がまだ不安定なので、思いつくままに列記したものです。

■障害者や外国人を対象とした観光のユニバーサル化
・事例を、現状から未来を見通しながら調査する。
・ユニバーサル・ツーリズムの具体例について、世界各国を広く見渡して収集し、分析し、検討する。
・石塚裕子氏(大阪大学)の「被災地ツーリズムのユニバーサル化」プロジェクトから学べるものを整理することからスタートする。

■誰もが楽しめる観光を模索■
・社会的な不利益について、観光における能動的な状況で健常者と共有し、互いに楽しめる旅とするためにはどのような環境が必要かを検討する。
・観光を通して、お互いの感覚の違いを知る、異文化間コミュニケーションを学ぶ場としたい。
・違う立場で、違う観点で物を見たり触ったりして、お互いの感じ方の違いを確認する意義を再確認したい。
・視覚、聴覚、身体に障害がある者が、不自由な感覚を補い助け合う関係と配慮のもとで、観光を楽しむことを実現する意義を確認する。
・「見る」ことだけに頼らない観光を、視覚障害者と共に考えていく。その中で、多視点からの複眼的なものの見方や考え方を、共に学ぶ場を構築していきたい。

■マイノリティーの立場からのバリアフリーについて再確認■
・障害者に寄り添うことから、障害者と共に楽しむ観光へと、発想の転換をはかる。
・自分が不得手とする感覚に気付くところから、気付かなかった潜在能力を発見する喜びと達成感を体験する観光は可能かを考える。
・ユニバーサル・ミュージアムは、障害者が主体的に「触る」ことで楽しむものである。その楽しみは、健常者も共有できることが実証されてきていることを追認する。
・広瀬浩二郎氏が提唱する「障害者発」の観光プランの可能性を、理論と実践を通して模索したいものである。
 
 
 

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2017年07月03日

目が見えない方々と須磨を散歩をするための下見

 夏の神戸合宿「触れて・聴いて・味わう『源氏物語』ゆかりの地めぐり」に関する報告の第2弾です。第1弾については、次の2つの記事で報告した通りです。

「視覚障害者と共に須磨を散策する計画に関してご教示を」(2017年06月09日)

「「百星の会」の宿泊研修で須磨探訪の計画を練っています」(2017年06月12日)

 本日、妻と共に須磨の地の下見をして来ました。そこで以下のように、行程を組み直してみました。これでどうか、この地域をご存知の方からのご教示をいただけると幸いです。

 次の現地地図に、本日歩いた場所を赤丸で記しました。

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 今回の特徴は、新幹線の中で早めの食事をしないことと、新幹線以外は電車を使わずに、現地の行程のすべてをチャーターしたバスで移動することです。
 ご意見を伺いながら、少しずつ微調整していきたいと思います。

 まず、誘導ボランティアについて。
 今回は、私と妻と姉、さらに広島大学の学生さん(以前、2月25日に高田馬場で開催された「百星の会」のカルタ会に来た学生さん)とその友達1人が加勢します。この5人が助っ人となるので、須磨区ボランティアセンターにはお願いしないことにします。

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【須磨散策の行程(第2案)】

■08:50 東京発 のぞみ103号
 (※車中での昼食は《不要》)

■11:37 新神戸着
(駅の改札口に、伊藤・妻・姉・学生・友人の5人が出迎えに出ます。改札口は1ヶ所のみ)
 新神戸駅前で待機しているマイクロバスに乗り込む

↓(バスで25分)

■12:30-13:30
須磨浦海岸で食事
 候補︰神戸市立国民宿舎「須磨荘 シーパル須磨」内
  和食処「漁(すなど)」
  http://www.qkamura-s.com/suma/restaurant
  海鮮丼(1,080円)、お手軽弁当(1,630円)
  (共に、お刺身と天麩羅の定食)

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※駐車場あり。
※食後は、目の前の須磨浦海岸で風を感じ、波の音を聞く。

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※海水浴シーズンのため、駐車場の確保と、食事場所の確保と、人混みを避けて海に出られるところからの選定。問題点は、メニューが2つしかないので、お刺身と天麩羅が苦手な方には他の食べ物がないこと。これは、何か手立てがないか思案中です。
 本日、上記メニューの2つを食べました。お魚が美味しいと思いました。
 もし、他に何か問題があるようであるなら、バスで移動して別の場所にすることも可能です。

↓バスで移動(5分)

■13:50-14:20
関守稲荷神社(須磨の関跡)

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※境内は狭い。無人(?)
※すぐ横に駐車場あり。
 ☆俊成の歌碑
「    俊成
  聞き渡る
   関の中にも
   須磨の関
   名をとゞめける
   波の音かな
       嘉苑?かく」

 ☆『百人一首』の歌碑
 「      源兼昌
  あはちし満
    閑よふちとりの
   那くこゑ耳
    いくよねさめぬ
     す万のせきもり」
※「源氏物語」で光源氏が須磨に退居していた時、巳の日祓いをしたところをここになぞらえ「巳の日稲荷」ともいわれています。
http://kakitutei.web.fc2.com/yukari/suma-akashi/s-sekimori.html

↓バスで移動(5分)

■14:40-15:10
現光寺(源氏寺)(関守稲荷神社から250m、徒歩なら3分強)

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※広い駐車場あり。
※お寺の奥様にお目にかかり訪問の主旨を伝えたところ、歓迎するとのことでした。
 「源氏寺碑」と、謡曲「須磨源氏」の駒札がある。
 「須磨源氏」に関係する「光源氏 月見の松」がある。
 『源氏物語』に関連した松尾芭蕉と正岡子規の句碑もある。
 http://kakitutei.web.fc2.com/yukari/suma-akashi/s-genkouji.html

★【立ち寄らない】松風村雨堂
 (現光寺からバスで5分、駐車スペースがない、石碑が高く触れない)

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 入口の『百人一首』の石碑
 「中納言行平卿詠
  立ちわ賀連いな波野能山の峯尓おふる
  萬徒登し聞可婆今かへり古舞」

↓バスで移動(10分)

■15:30-17:00
須磨寺(チャーターしたマイクロバスはここまで)

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 本堂(会場変更あり)で須磨琴を聞く。
 http://www.sumadera.or.jp/itigenkin/index.html
 一絃須磨琴保存会の責任者小池さんに、今日ご挨拶して来ました。視覚障害の方にお琴を聞いてもらったことがあるそうで、大歓迎とのことです。

↓「しあわせの村」から来る送迎バスで移動(30分)

■17:30〜翌23日
「神戸・しあわせの村」に宿泊し『百人一首』の研修会
 
 
 

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2017年06月18日

3日連続でお茶のお手前を楽しんでいます

 一昨日は、我が家でNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の打ち合わせ会がありました。その時、お出でいただいた理事には、無理やり誘って、私のお茶のお稽古につき合っていただきました。ご協力ありがとうございます。

 昨日は、姉夫妻が立ち寄ってくれたので、またまた、お点前のお稽古につき合ってもらいました。
 いずれも、丸卓を使っての入子点です。入子点については、「歳末に大和平群でお茶のお稽古」(2015年12月26日)で書いた通りです。

 お手前はすぐに忘れるので、「あれ、あれ」と言いながら、気安い間柄ということで許してもらっています。人の迷惑も顧みず、好きなことを好きなときに、我が道を勝手に突き進んでいます。

 そして、今日は大和平群へ。
 花月というお稽古を、お弟子さんたち5人でやりました。花を活けたり、お香を聞いたり、薄茶を点てたりと、たくさんのことを見よう見まねでやりました。この前に花月のお稽古をしたときのことは、「お茶のお稽古の後に視覚障害者のことを想う」(2014年12月23日)に書きました。

 近鉄電車で帰る道々、今日のことを思い出しながらこうして記しています。見て、聞いて、やってと、大忙しでした。今振り返っても、頭の中は大混乱です。こうしたお稽古事は、若い時にやっておくべきです。
 今はもたもたしていても、何度も繰り返し練習しているうちに、いつかは自然な動きでお茶が点てられるようになると思って、懲りもせずに続けています。
 これまでは、3ヶ月に1回行けたらいい方でした。それを、今年の4月以降は、月に2回は大和平群へお稽古に行くことを自分に課しています。今のところは、何とか守っています。とにかく、続けることです。

 なお昨日、お茶を点てながら姉との話では、お茶のことよりも、おもしろい話で盛り上がりました。姉が、ガイドヘルパーの資格を持っていて、視覚障害者の外出のお手伝いをしたことがある、というのです。これは初耳でした。今もずっと介護施設のボランティアをしているので、姉がガイドヘルパーもできることは意外ではありません。ただ、ゆっくりとそんな話をしたことがなかったのです。お茶を点てながら、飲みながら、こんな話ができるのはいいことです。

 来月22日に「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」のみなさまを須磨に案内する話をしたところ、私がプランを練っているコースを先日歩いてきたとのことです。姉は芦屋に住んでいるので、たしかに神戸から須磨は生活圏です。そして、22日も喜んでお手伝いに来てくれるとのことです。頼りになる助っ人が一人増えました。
 「百星の会」のみなさま。今後とも、いつでも安心して関西にお越しください。
 
 
 
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2017年06月12日

「百星の会」の宿泊研修で須磨探訪の計画を練っています

 先週、「視覚障害者と共に須磨を散策する計画に関してご教示を」(2017年06月09日)という記事を書いたところ、すぐに上記記事のコメント欄にあるように、適切なご教示をいただきました。泉さん、ありがとうございました。
 私がこの「さくらブログ」のコメント欄の設定をよく確認していなかったために、連絡先を必須事項にしていなかったことに昨日気づきました。泉さん、すみません、この記事でお礼に代えさせてください。

 さて、本日、須磨観光協会(須磨区役所まちづくり課内)にお電話をして、対応してくださった前田さんに電話でいろいろと教えてもらいました。私からのいくつかの質問に対して、よく調べた上で的確に対処策をアドバイスしていただきました。
 ご教示のままに、須磨寺に電話をし、さらに案内のままに一絃須磨琴保存会の小池さんに親切な対応をしていただけました。

 私からは、須磨寺で須磨琴を聞くことと、源光寺(源氏寺)と関守稲荷神社(須磨の関跡)で歌碑を触ることを考えていることを伝えました。すると、その実現のためには、今回の宿泊先に出張して演奏してくださることも含めて、さまざまな実現方法を考えてくださいました。今日中にはまとまらなかったので、また調べて連絡をくださることになりました。小池さんのご親切に、ただただ感謝しているところです。

 さらには、須磨区ボランティアセンターの福井さんも、相談にのってくださいました。そこで紹介された須磨歴史倶楽部は、ちょうどその日に別の予約が入っているということで叶いませんでした。しかし、もっと具体的にプランがまとまったら、視覚障害者のためのボランティアの方の派遣も含めて、稔りある研修になるように検討してくださることになりました。

 さまざまなネットワークがつながる中で、少しずつ実現の道が見えだしています。
 みなさまのご親切に接し、ありがたいことだと感謝しています。
 「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」のみなさま、もう少しお待ちください。
 また、この記事をご覧になった方で、触る聞くということを中心とする須磨行きに関して、おもしろい訪問地や楽しいアイデアなどをお持ちでしたら、本ブログのコメント欄などを利用してご教示いただけると幸いです。
 
 
 

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2017年06月09日

視覚障害者と共に須磨を散策する計画に関してご教示を

 現在、「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」のみなさまと一緒に、須磨周辺を散策する計画を練っています。
 日時は、今夏7月22日(土)の午後です。参加者は20名〜30名で、実際に目が不自由な方は15名ほどです。
 この日はその後、「神戸・しあわせの村」で「点字・拡大文字付 百人一首〜百星の会」の合宿が計画されています。

 2年前の嵯峨野での宿泊研修の様子は、次の記事で紹介した通りです。
「京洛逍遥(375)嵯峨野で「点字付百人一首」を楽しんだ後は時雨殿へ」(2015年08月31日)

 「百星の会」の方からは、
須磨を観光し、『源氏物語』の舞台とされる場所を、肌で感じ・触れたい!

という希望があり、その実現のためにいろいろとプランを考えているところです。
 事務局では、「源光寺〜須磨の海岸」の散策を考えておられます。それをさらに充実したものにしたいと思い、情報を収集しているところです。

 今は、須磨琴(一弦琴)をみなさんと聞けないか、ということで調べています。
 保存会などがあるようです。しかし、その方面に知人がいないこともあり、今回のような目的に対応していただくことが可能なのかも含めて、どなたかご教示いただけませんでしょうか。保存会に直接お電話で相談を、とも考えました。しかし、もう少し情報を集めてから、と思っているところです。

 また、今回は単なる須磨散歩ではなく、手で触るものがあったり、音も楽しめることが重要です。そのためにも、現地を下見するつもりです。そうであっても、触ることによって、聞くことによって、『源氏物語』や『百人一首』や日本の古典文化が感じられるものについて、事前に調べておこうと思っています。

 例えば、関守稲荷神社には、百人一首にも採録されている源兼昌の「淡路島かよふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚めぬ須磨の関守」の歌碑があるようです。これは、目の見えない方が触れるのか、また触ることができたとして、その感触はどのようなものなのか等々。

 こうした視点で須磨を散策する上で、ご存知の範囲でアドバイスをいただけると幸いです。

 関西にお越しのみなさまに、触る楽しさを通して日本の古典文化に接し、楽しんでいただける旅の演出をしたいと思っているところです。これも、観光学の実践的なテーマとなるものなのでしょう。
 大阪観光大学という新しい職場に身を置き、私自身の物の見方が変わったように思います。大きな収穫です。
 今回の観光のための計画立案に、いろいろな分野の方からのご協力やご教示をいただけると幸いです。
 
 
 
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2017年05月22日

日本盲教育史研究会の第5回ミニ研修会 in 金沢に参加して

 石川県は、点字毎日文化賞を3名も出しているところです。その風土を感じる好機と思い、金沢で開催された第5回日本盲教育史研究会のミニ研修会に参加しました。

 JR金沢駅前の鼓門は、印象的なデザインでした。

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 今回の会場であるルキーナ金沢(金沢福祉用具情報プラザ)は、駅前から徒歩で3分の至便の地です。

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 まず、開催の案内文を引きます。

第5回ミニ研修会 in 金沢 ご案内


金沢市内でのフィールドワークを中心に

―― 先人の足跡を訪ねる ――
 第5回ミニ研修会を金沢で開催します。今年は、石川県の出身で、新たな道の開拓者となった視覚障害者達の足跡を訪ねます。近代鍼灸教育の父と言うべき奥村三策は、元治元年金沢三社町に生まれました。岐阜盲学校の創始者となった森巻耳も金沢の生まれです。
 そして紹介したいのが、竹川リンと彼女に関わる人々です。リンは幼時に失明しますが母と二人の生活を支えて働きます。しかし、重篤な病に罹ると死後自らを解剖に付すことを遺言して、明治16年に43歳で亡くなりました。翌年建立された顕彰碑に往時を偲ぶことができます。
 短い時間ではありますが、ともに語りながら先人の足跡をたどることができますよう、お待ちしています。

主催 日本盲教育史研究会


 今回は、お弁当を食べながら、お2人の講演を伺いました。

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 これは、1日だけの研修会を充実させるため、食事時間を確保できない苦肉の策だとのことです。さらには、今後はフィールドワークを大切にした運営をするとのことです。今回は、それがうまく機能した研修会となっていました。運営関係者のご苦労が偲ばれます。
 参加者は60名という盛会でした。会場を設営なさった方にお聞きすると、49席の準備だったのが急遽イスを増やすことになり、嬉しいことだとおっしゃっていました。この会の会員数も、180名にもなるそうです。ますます大きくなっていきます。一人でも多くの方が会員として参加なさることを願っています。

 以下、今回伺ったお話を、自分勝手に整理しておきます。

第1部 11時00分から12時45分

ランチョンセミナー レクチャーと昼食交流

* 「竹川リンと支えた人々」
・・・講師 庄田 望 氏(元金沢部落史研究会)


 講師ご自身が執筆中の、天保11年(1841)に金沢で生まれた竹川リンを主人公にした小説の内容を語りながら、熱の籠もったお話でした。
 「浄土真宗の王国加賀で、(竹川リンが)献体する決意はどうして生まれたのか。」
 「盲目の女性リンに献体ということを教えたのは誰か」
ということがテーマです。
 結論は、ヨーロッパ啓蒙思想の流入と、金沢医学館の役割を明らかにすることでした。
 執筆中の小説は、今秋頃には自費出版なさるようです。

 お2人目の松井先生が、今回金沢での開催にあたって、現地側としてとりまとめをなさいました。
 また、お話の中心となった奥村三策のお孫さんも、遠路会場にお越しになっていました。

「道を開拓した石川県の視覚障害者達」
・・・講師 松井 繁 氏(金沢星陵大学)


 金沢生まれの近代鍼灸教育の父と言うべき、奥村三策の偉業を語ってくださいました。明治18年頃まで、差別的な扱いを受けていた鍼治教育の道を拓いた人です。
 針治療と西洋医学との葛藤があったことを知りました。また、1900年にパリ万国博覧会で「万国盲人状態改良会議」があり、そこで日本の盲学校鍼按科の状況が報告されています。これは意外な事実でした。
 戦後、GHQが鍼治療は危険で医療ではないということで、これを禁止しようとしたマッカーサー旋風のことにも触れておられました。私も少し調べてみたいと思うようになりました。
 奥村三策は、1907年に点字略字12字を公表しています。平成直前まで、この略字は教科書などに使われていたそうです。講師の松井先生は、読み書きが早くできるので、今でも点字の略字を使ってもいいと思う、とのことです。コミュニケーションツールに興味を持っている私は、いいヒントをいただきました。

 配布されたレジメには、「あえのこと」が輪島、珠洲、能登に伝承されていることに関する囲み記事がありました。これも、今回のレジメから引きます。

「あえのこと」

輪島市(白米)、珠洲市、能登町等では、「あえのこと」が伝承されている。毎年12月5日、全盲夫婦の田の神様を家に迎え入れて冬を過ごし、翌年2月9日、田にお送りする農耕儀式。1977年重要無形民俗文化財に指定、2009年ユネスコの世界無形遺産に登録。昔、偉大な盲人の活躍が示唆されるが不明である。


 午後は、今回のメインとなる外に出かけました。

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第2部 13時00分から16時30分
フィールドワーク(貸切バス)

* 竹川リン顕彰碑(金沢市上荒屋3丁目260番地)

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* 松江老医有道碑(白山市徳丸町207番地)
(松江安見は、竹川の解剖に深く関わり、顕彰碑を建立した医師。)

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* 金沢医学校(現金沢城・兼六園管理事務所分室、兼六園隋身坂口料金所手前)

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* 故奥村三策先生頌徳碑(金沢市卯辰山公園玉兎ケ丘)

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 兼六園では、個人的にありがたいものと出会えました。昨日もお茶のお稽古で難儀をした右足の疣に関するものです。
 「いぼとり石」は、今も金沢の人は、ゴシゴシと擦りに来るそうです。

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 さて、私の疣は今後どうなるでしょうか。とにかく、午前中は特にビリビリするのです。おまけに、左足首の骨折が、昨日のお茶のお稽古で少し無理をしたせいか、今日は終日熱をもっていました。庇って歩くと、どこかの筋肉が痛むようになります。両足がなかなか完治しません。困ったことです。

 金沢駅前で開催された懇親会も、多くの方が参加なさいました。
 私の周りには、ボランティアグループの「金沢視覚障害者外出支援サークル(KBOS)」のみなさまがいらっしゃいました。15名のうち今回は13名の方々が手助けに駆けつけてくださっていたのです。このご支援は心強いものでした。自宅からの交通費と食費しか出ないにもかかわらず、みなさまは目の見えない方々のために熱心にサポートをしておられました。ご苦労様でした。そして、ありがとうございました。
 ただし、活動の実態を伺う内に、ボランティア活動を地方自治体がうまく利用していることが、ここでも見ることとなりました。こうした活動を、行政側がうまく無償の勤労奉仕で掠め取っていることは、すでに社会活動におけるボランティアという面で問題が表面化しています。個人の善意と、公的機関の予算節約がうまくすり替えられています。実際に手助けとして参加なさっている方々の気持ちが純粋なだけに、これは、1日も早くボランティア団体の運営者側にも意識の変革が求められている、と思っています。無償の献身的な活動は、ボランティアではありません。営利ではない程度の、最低限の報酬は支払わなければ、これは続きません。このことを、私はインドで学びました。そして、私が代表理事をしているNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の運営でも、一番気をつけていることでもあります。もっとも、なかなか難しい問題であることは承知しています。

 懇親会の終盤で、戦時中に視覚障害者はどのような分野で、どのような形で参加していたのか、させられていたのか、ということが話題になりました。マッサージに駆り出されたことはわかるにしても、見えないからこそ夜間にも働かされたり、火花が飛び散る旋盤工の仕事などなど、まだ掘り起こすことは多いようです。いつもこの懇親会は、いろいろと考えさせられることの多い貴重な話題が交わされます。

 今の風潮として、事務手続きとしての出張において、懇親会は単なる飲み会だと位置付けています。しかし、そうではなく、こうして胸襟を開いて語り合い、実質的に障害者が直面する問題をぶつけ合い、話し合うことで問題点を日常レベルに立ち返って炙り出す会もあるのです。事務的な書類処理においては、懇親会は無為な徒食の懇談の場であるとされがちです。しかし、こうして濃厚な時間を共有することで貴重な場となっていることが多いはずです。このことは、さまざまな研究会などの懇親会で見られることではないでしょうか。放談の場だけではない、ということで、こうした懇親会の位置づけが、有意義な情報交換の場として認められるようになってほしいと思います。

 なお、配布資料の中には、CD-ROMがありました。その内容は、次の貴重なものです。自宅に帰ってから、じっくりと拝聴しようと思います。

CD・「音資料」
1NHKラジオ第2放送『盲人の時間』「人と行跡 奥村三策」1980年8月3日放送
2.「杉山検校を讃える歌」作詩奥村三策、作曲鈴木米次郎、1909年、歌林薫夫
3.「不滅の足跡を残した石川の視覚障害者達・関係者達の声」2014年11月製作
4.「石川県立盲学校創立100周年記念、音で辿る盲学校の歩み」(抜粋、編集)
5.「石川県音紀行」石川県製作

 
 
 

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2017年03月31日

『変体仮名触読字典』と『触読例文集』が完成しました

 科学研究費補助金による「挑戦的萌芽研究」として、「視覚障害者と共に古写本の仮名文字を読み日本古典文化を共有するための挑戦的調査研究」というテーマで研究に取り組んで来ました。
 当初から研究成果の中心となるように作成を進めていた『変体仮名触読字典』と『触読例文集』が、私の定年退職の日である今日3月31日に無事に完成しました。とにかく、膨大な手間と時間がかかる作業を伴うものでした。そのため、関係者だけに配布する数十部の限定版となりました。この科研のメンバーや、実験に協力してくださった方及び盲学校の先生にお渡しすることに留まります。この「触読字典」と「例文集」を実際に活用していただき、さらに改訂の手を加えたいと思います。次回は、もう少し作成部数を増やすつもりです。

 中扉は、こんな感じです。

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 『変体仮名触読字典』の最初のページは、このようになっいます。
 「安」の上には、点字で「あ」と打ったシールを貼っています。

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 その「あ」を触読しているところです。

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 『触読例文集』には、各例文の右横に点字で変体仮名の読みを貼り付けています。

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 例文を触読する練習をしているところです。
 文字の右横にその読みを示す点字が貼ってあるところが、今回の研究の成果を盛り込めた特徴です。

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 奥付もしっかりと付けました。

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 とにかく、気の遠くなる作業が、連日展開しました。
 関係者のみなさま、ご苦労さまでした。

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 この科研は今日で終了します。しかし、このテーマは、今後とも気長に取り組みますので、変わらぬご理解とご協力を、よろしくお願いいたします。
 なお、本書2冊は、科研運用補助員として本研究活動を支えてきた、関口祐未さんの献身的な労苦の産物です。また、最終段階で点字を補助情報として貼り付ける作業を担当した阿部江美子さん、ご苦労さまでした。さらには、その点字を1文字ずつ打ってくださった渡邊寛子先生にも、あらためてお礼を申し上げます。
 こうして、たくさんの方々の協力により、『変体仮名触読字典』と『触読例文集』ができあがりました。コラボレーションとチームプレイの産物です。これを活用しての成果は、また後日報告いたします。
 
 
 

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2017年03月29日

電子版「古写本『源氏物語』触読研究ジャーナル2」を公開中

 科研で取り組んでいる「視覚障害者と共に古写本の仮名文字を読み日本古典文化を共有するための挑戦的調査研究」のホームページから、「古写本『源氏物語』触読研究ジャーナル」(ISSN:2189−597X)の第2号を公開しています。

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 オンラインジャーナルなので、ご自由にダウンロードしていただき、ご教示や情報提供をしていただけると幸いです。

 この電子ジャーナルは、昨年度から取り組んでいる科学研究費補助金による研究成果を、ウェブ上に公開しているものです。本年度が最終年度となり、この第2号でひとまず完結となります。
 その研究テーマと趣旨については、「まえがき」に記した通りなので、それを引用します。


 科学研究費補助金の研究分野において、「挑戦的萌芽研究」に応募して採択された本テーマ「古写本『源氏物語』の触読研究」は、平成29年3月でひとまず終了となります。
 2年という短かい期間での研究にもかかわらず、多彩な成果が得られました。その一端は、本ジャーナル2冊をご覧になれば明らかでしょう。また、2年間の活動の全容は、ホームページ「古写本『源氏物語』の触読研究」(http://genjiito.sakura.ne.jp/touchread/)に、あますところなく報告しています。まさに、情報を共有しながら、コラボレーションという手法で共同研究を展開したことになります。
 ここに至までの経緯は、本誌に「古写本の触読研究に着手した経緯(1)−科研採択まで−」として拙文を掲載しましたので、ご笑覧いただければ幸いです。
 本科研のテーマは、これから一年をかけて情報や成果を整理した後、新たな外部資金の申請などを検討して再開する予定です。また、貴重な情報満載のホームページ「古写本『源氏物語』の触読研究」と「古写本『源氏物語』の触読研究ジャーナル」は、平成29年度からNPO法人〈源氏物語電子資料館〉に運用を移管します。場所を変えて、さらなる展開を図ろうと思っているところです。
 研究分担者と研究協力者のみなさまには、研究会などの機会を通して、さまざまなご教示をいただきました。あらためてお礼を申し上げます。
 また、さまざまな資料や情報の整理を担当してもらった科研運用補助員の関口祐未さんの奮闘も、大きな力となりました。ここに特記しておきます。
 本テーマに関しては、また機会をあらためて再開することになると思います。
 変わらぬご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。

平成29年3月31日

日本学術振興会科学研究費補助金
2015~2016年度「挑戦的萌芽研究」
課題番号:15K13257
「視覚障害者と共に古写本の仮名文字を読み日本古典文化を共有するための挑戦的調査研究」
研究代表者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構
国立大学法人総合研究大学院大学
国文学研究資料館 伊藤鉄也


 全278頁という、ボリューム豊かな本号の目次は、以下の通りです。


はじめに 伊藤鉄也
原稿執筆要綱

【研究論文】
薫物文化の実相に照らした『源氏物語』の薫物の特徴
  −古典籍の触読時における参考として−(1)「えひの香」及び「えひの香の香」について
    田中圭子 11
足柄山にひびく笙の音
  −「指」・「耳」・「変体仮名」から考える群書類従本『時秋物語』の世界−
    淺川槙子 35

【実践報告】
『群書類従』所収「竹取物語」冒頭触読レポート
  −弱視生徒の目をかりて−
    渡邊寛子 79

【研究の最前線】
国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」の仮名字体記述
  −ISO/IEC 10646 提案文字による翻字シミュレーション−
    高田智和 91
文字の歴史と凸字・点字の意義
  −そして、<見えない人>による挑戦−
    岸博実 103
厚紙凸字と『立体<ひらがな>字典』作成の試み
    関口祐未 109

【触読研究ジャーナルに寄せて】
触読研究ジャーナルに寄せて 中野真樹 215
「古写本『源氏物語』の触読研究」の活動についての感想 大橋由昌 218
これまでの取り組みにみる「触読研究」の意味と、今後の展望 中村真規 223
古写本触読研究ジャーナルに寄せて 冨田晋作 232
古写本『源氏物語』の触読研究と月刊『視覚障害』 星野敏康 235

【研究活動報告】
古写本の触読研究に着手した経緯(1)−科研採択まで− 伊藤鉄也 243
2016年度「古写本『源氏物語』の触読研究会」活動報告 関口祐未 255

【資料】
明治三十三年八月文部省令第十四号 小学校令施行規則中教授用新定字音仮名遣いに関する規定 271

執筆者一覧 274
編集後記 276
研究組織 278


 「研究論文」「実践報告」「研究の最前線」などでは、鋭い切り口による非常に興味深いものが並んでいます。これが少し重たいとお思いの方は、ぜひとも「触読研究ジャーナルに寄せて」という5本の寄稿文をお読みください。本科研で取り組んでいるテーマの本質が、賛否両論にわたって語られています。特に、批判的なご教示には、本テーマが抱え持つ本質的な問題が横たわっています。今後の展開において、貴重なご意見として受け止め、さらなる挑戦に資するものにしたいと思っています。
 最後に、この科研のテーマに関わってくださったみなさまに、この場を借りてお礼申し上げます。
 一年の充電期間を経て、また新たなスタートを切りたいと思っているところです。これまでと変わらぬご理解とご支援をいただけると幸いです。
 
 
 

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2017年03月22日

全盲のOさんが大学院で古写本『源氏物語』の研究を続けます

 今月で終了する科研「古写本『源氏物語』の触読研究」(http://genjiito.sakura.ne.jp/touchread/)で、この2年間にわたって一緒に果敢に触読に挑戦していた共立女子大学のOさんが、めでたく立教大学大学院に合格し、来月から博士前期課程で研究を深めることになりました。
 先週末に開催された、百星の会の『点字百人一首』の集まりで会った時、Oさんからこの朗報を聴きました。一緒に高田馬場の駅まで送りながら、今後のことなどを楽しく話しました。
 嬉しい知らせは、一人でも多くの方々と喜びを共にしたいものです。

 全盲であっても、変体仮名を自在に触読しているOさんです。大学院では、『源氏物語』の研究に取り組むとのことです。私も、学外からではあっても、これまで通りにいろいろと支援していくつもりです。

 以下、本人から届いた、古写本『源氏物語』の触読研究会のみなさまへの報告と決意を認めた文章を紹介します。
 力強い決意表明となっています。古写本の触読で日々研鑽を積んで来たOさんのことです。ますますの活躍が楽しみです。


4月からの進路につきまして、ご報告させていただきます。

立教大学文学研究科 日本文学専攻に進学する運びとなりました。
「竹取物語絵巻」の研究はできませんが、これまでよりも専門的に古典文学を研究してまいります。
けして平坦な道ではございませんが、変体仮名の触読という新たな手法を手に、より一層研究に励みます。

私のように全盲で、古典文学を研究している学生を知りません。先行研究の読み込みや、変体仮名の触読が壁となっているのでしょう。これらは、目が見えなければ不可能だと考えられてきたと思います。私もこの二つが原因で、ある大学の文学部から受け入れを断られた事があります。

しかし、変体仮名の触読に関しては、共立女子大学の先生方のご配慮により、克服する事ができました。変体仮名を立体化して、それを触読するという方法があったのです。
簡単に変体仮名が読めるようにはなりませんでしたが、あきらめずに練習した事で、読めるようになりました。

この事で、私の学問は豊かになりました。何しろ、目が見えていても読めない文字が読めるようになったのです。
変体仮名が読めるようになった事で、一次資料作りに従事できました。卒業論文では、翻刻や解題資料のない、共立女子大学図書館に所蔵されている「竹取物語絵巻」の詞書の翻刻と絵の分析を行う事ができました。
努力の甲斐あって、学部の優秀卒業論文集に掲載していただける事になりました。

目が見えない事で、努力してもどうにもならない事があります。紙の資料と一晩寝ずに向き合ったところで、その資料が読めるようにならないといったように、晴眼の人と同じような努力では、成果が実らない事もあるでしょう。
しかし、変体仮名の触読のように、努力が確実に実る事もあります。
私は努力して何とかなる事であれば、精いっぱい努力すべきだと考えています。途中で投げ出す事なくやりぬく事こそ、最も重要なのです。この事を、大学の4年間で学んだ気がいたします。いつも応援してくださる先生方や助手の方々に応えたかった、という気持ちも強かったとは思いますが、自分のための努力こそが、生涯にわたって自分を支えとなるのです。

そこで私は、大学院に進学し、自分の研究をさらに発展させたいと考えました。目の見えない人が誰も挑戦した事のない分野だからこそ、やりがいがあります。
そして、次の世代の若者たちに、見えなくても古典文学の研究ができる事を伝えていきたいと思っています。そのために、修士論文の執筆と言う責務を果たします。

来年度も楽しみながら、新しい事にどんどん挑戦していきたいと思っております。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

 
 
 

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2017年03月19日

点字付百人一首〜百星の会で見た八つ橋型の新開発カルタ

 京橋であったNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の打ち合わせを正午に終えるとすぐに、高田馬場へと急ぎました。1時から開催される、百星の会の『点字百人一首』の集まりに参加するためです。

 高田馬場の駅から、会場となっている新宿区社会福祉協議会へは、お好み焼き屋さんの前にある道案内が目印です。

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 先月の集まりの折には、施設の周りは工事中でした。「「点字付百人一首」の全国大会ができないか」(2017年02月25日)
 それも、すっかりときれいになっていました。

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 今日は初心者のために、一字決まりの札「むすめふさほせ」の7枚について、お世話をしてくださっている北村さんから、札の取り方に関する説明がありました。
 それに続いてその歌の解説が、りおさんからありました。りおさんの説明は、わかりやすいので、みなさん聞き入っておられました。質問も飛び出したりするので、非常に和やかに進んでいきます。
 その次には、2字決まりの札である「うつしもゆ」の10枚についての説明がありました。さらには、「押さえ手」「突き手」「払い手」という、カルタの取り方の具体的な指導もありました。次第に、実践モードでのテクニックが伝授されていきます。

 しばらくは練習時間です。みなさん、自分の力に応じたカルタで、練習を繰り返しておられます。

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 サポートとしておいでの方が、目隠しをして一緒に加わっておられました。
 不織布のマスクを目隠しにするなど、この会ではさまざまなアイデアのもとに臨機応変に対処しておられます。

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 決まり字だけが書かれた札もあります。

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 この「点字付百人一首」においては、常に新しい工夫がなされています。
 今回新たに開発された、札の短辺が丸く反った札は、すばらしい発明です。

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 発泡スチロールに窪みを付けたカルタ台は、作るのが大変です。そのため、台を量産できません。そこで、カルタに工夫を加えることで、目が見えなくても取りやすくしようということです。
 カルタを指で摘んで持ち上げるのが難しいので、丸く反っているのはいいと思いました。この八つ橋みたいなカードは、カルタを取る様子を見るギャラリー側から言っても、ごく自然なカルタ取りに見えます。また、取る方も、これまでのように指でカルタを摘まむのではなくて、上から押さえて指の第一関節を軽く曲げることで、楽にカルタが取れます。カルタ台の溝にしっかりとはめ込まれているのではなくて、隙間がポイントなのです。この活用をさらに競技に取り入れてルールを見直すことで、観客であるギャラリーも楽しめる「点字付百人一首」にすることを考えてもいいと思いました。。

 この形でいこうということが決まると、次の改良点に進めます。こうして、さまざまな方が参加できる対応ができるようになります。
 この八つ橋型のカルタは、厚紙にスプレーで水を含ませ、手で押し曲げて丸みを付けたとのことでした。常に工夫を積み重ねておられる関場さんの、面目躍如たるものがあります。

 さらに、レベルアップをはかりたい方には、こんなカルタもあります。

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 その裏面は、こうなっています。
 真ん中には、歌の番号も点字で貼られています。

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 その後、相対の勝負形式でカルタの取り合いです。

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 そして今回からは、勝った方には名札に星を1つ付けてもらえることになりました。

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 この星の数で、その実力のほどがわかるようになります。このアイデアで、ますます「点字付百人一首」が楽しく取り組めるものとなることでしょう。
 
 
 
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2017年02月25日

「点字付百人一首」の全国大会ができないか

 前回の「高田馬場で「百星の会」の新年会と点字百人一首のカルタ会」(2017年01月14日)に続き、今月の集まりにも参加してきました。

 高田馬場の社会福祉協議会は、今日は外壁の工事中でした。

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 今日は、広島大学3年生のAさんと一緒に行きました。Aさんは午前中に国文学研究資料館で調べ物をしてから、高田馬場へ来てくれたのです。自己紹介で日本文学の勉強をしていると言った時には、参加者から励ましのことばが飛び交いました。

 今回は、これまでとは少し違って、カルタ取りに集中する会でした。これもまた楽しい体験を共にできました。視覚障害者交流コーナーでは、熱気に包まれた3時間があっという間に過ぎていきました。

 今回は、初めてのカルタ台で対戦した方が多かったので、ルールについてさまざまな意見や感想が寄せられました。この「点字付百人一首〜百星の会」の活動は、まだまだ揺籃期です。そして、大きく発展する可能性を包み込んでいます。

 「点字付百人一首」といっても、さまざまなカルタが開発されています。上の句だけで取れるカルタもあります。初心者が参加しやすいことへの配慮が行き届いています。

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 いつもは読み手としてカルタ取りの指導にあたっておられる方は、自分で初めて真剣にカルタ取りをやった後で、日頃子どもたちにこんなむちゃなことをやらせていたのか、ということを実感した、とおっしゃっていました。どっと疲れたとのことで、こんなにハードなことをやらせていたんだ、としみじみと語っておられたのが印象的でした。

 新しい遊び方の提案がなされ、いろいろなことが試されました。
 「五色百人一首」の緑と橙の札を使ってグループで取り合うやり方は、私にはまだよく理解できていません。

 緑の札の20枚を10枚ずつに分け、お互いが並べたセットを相手側に置くというのは、少し手を加えただけでおもしろさが増したようです。自分が並べたものを相手側に置き、相手が並べたものを手前に置いて5分間で覚えてスタートする、というものも楽しそうです。

 ルールを少し変えるだけでまったく違うゲームになるので、さらに検討を進めると、多くの方が参加できるようになることでしょう。日々創意工夫がなされている百星の会の「点字付百人一首」です。これからがますます楽しみです。

 今日は、さまざまな札の取り方やテクニックを見ることができました。
 以下、バリエーションに富んだ手の動きがわかる写真を並べます。

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 広島から来たAさんが、この「点字付百人一首」の楽しさをすぐに理解したようです。そこで、「点字付百人一首」ではクイーンとでも言うべき理生さんと対戦してみないかと勧めたところ、快く引き受けてくれました。古典文学好きな心を刺激するものがあったのでしょう。
 このようなことになるとは思わず、何も準備をしていない上に、上の句に関する情報が何もないので、目が見えるという一点以外は不利な条件の中で、対戦に臨みました。

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 前半から中盤にかけては、見えない理生さんが有利に試合を進めていました。しかし、後半になると、見えるAさんが挽回してきました。札が少なくなってくると、限られた札の位置を目で追えるので有利になるようです。


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 結果は10対8という、わずかの差でした。
 どちらが勝ったのかは、ご想像にお任せします。
 すばらしい試合を見せてもらいました。

 福島県立盲学校の渡邊さんと話しているうちに、全国大会をしたらいいと思うようになりました。それも、個人戦だけではなくて、晴眼者との対戦や、全盲・弱視・晴眼者の組み合わせによるダブルスなども考えました。組み方によってはいろいろな対戦が可能です。しかも、全国から参加者を募るのです。初心者や上級者などのクラス別けも楽しいことでしょう。

 私の流儀である「とにかくやってみる」、ということでこの提案をしたいと思います。

 東京の関場さん、大阪の畑中さんたちによって、いろいろな趣向で楽しい「点字付百人一首〜百星の会」の運営がなされています。その中に、「点字付百人一首」の全国大会をスタートすることを検討していただけないか、と思うようになりました。いろいろと検討すべきルールや実施要領などを詰める必要があるかと思います。その検討も、楽しく取り組めば、さらに活動への理解は拡がることでしょう。
 今日の思いつきながら、ご検討のほどをよろしくお願いします。

 そんな全国大会のことを、最後の挨拶の中で言いました。今回の進行役であった理生さんからは、いつも夢のある話をありがとうございます、と言ってもらえたので、これは実現に向けて動いていくように思いました。
 この件でのご意見を、本ブログのコメント欄などを通してお寄せいただけると幸いです。

 なお、次回の「点字付百人一首〜百星の会」は、来月3月18日(土)午後1時より、今日と同じ高田馬場の社会福祉協議会の中にある視覚障害者交流コーナーで開催されます。
 
 
 

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2017年02月07日

科研の触読サイトから『立体〈ひらがな〉字典(第2版)』を公開

 科研費「挑戦的萌芽研究」による研究成果を公開している「古写本『源氏物語』の触読研究」のホームページで、「触読通信」のコーナーから、「『立体〈ひらがな〉字典』の第2版」をアップしました。

 これは、2016年2月7日の初版から、大幅にバージョンアップしたものです。
 前回同様に、科研運用補助員の関口祐未さんの労作です。
 内容は、「凡例」「索引」「ひらがな文字の説明文・五十音順」で構成しています。
 その「凡例」の冒頭を引用します。


 ひらがな文字の形を、触常者が触って学習することができるように、画用紙を用いて、ひらがなの形に切りとった凸文字を作成しました。「厚紙凸字」と呼ぶことにします。

 「厚紙凸字」を触りながら、ひらがなの形が、より明確にイメージできるように、文字の形を説明した『立体〈ひらがな〉字典』を作成しました。2016年2月7日に、初版を公開しました。その後、凡例と説明文を見直し、表現を改め、第2版として2017年2月4日に更新しました。
 
2.厚紙凸字とは
 
 厚紙凸字は、ひらがな五十音を、一文字ずつその文字の形に画用紙から切りとり、文字の線が凸型に突き出た形に作った道具です。
 厚紙凸字の字体は、丸ゴシック体です。一文字の大きさは約5センチ、線の幅(太さ)は3ミリから4ミリです。
 ひらがなの凸文字は、正方形の台紙に貼りつけ固定しました。台紙は、一辺が6センチの正方形です。文字の正しい向きが触ってわかるように、台紙の右上角を1センチ切り落としています。
 ひらがなの凸文字には、筆順に従って線に段差をつけました。1画目の線を一番高くし、一画進むごとに、線の高さが一枚(一段)ずつ低くなる仕組みです。段差をつけることによって、筆順を示すとともに、書き始めとなる1画目の線や、線同士の区別がしやすいようにしました。


 実際の厚紙凸字は、つぎのような形をしています。

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 この字典の「あ」の項目では、次のような説明文があります。

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 これは、目が見えない人に言葉で説明することを想定した文章です。

 説明文を作成するにあたったは、伊藤の科研の研究協力者である福島県立盲学校の渡邊寛子先生に、説明文を一つ一つ確認していただき、ご教示いただきました。ありがとうございました。

 関口さんの話では、懸案だったひらがな「つ」「ち」「わ」などの大きな曲線部分が、渡邊先生のご指導のおかげでうまく表現できたので、それが一番うれしかった、ということです。

 これはまだまだ試作段階です。今後とも、弛まぬ調査・研究を続けることで、よりよいものに仕上げていきたいと思います。

 この字典を通してお気付きの点がございましたら、いつでもお知らせいただけると幸いです。
 
 
 
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2017年02月04日

奈良で始まった「さわって楽しむ体感展示」

 今日から12日(日)までの9日間、「第32回国民文化祭・なら2017」と「第17回全国障害者芸術・文化祭なら大会」の一体開催という試みのプレイベントである、「奈良県障害者芸術祭 HAPPY SPOT NARA」が始まったので行ってきました。

 近鉄奈良駅前の行基菩薩像が建つ「行基広場」には、横断幕があります。
 ちょうど、2人の托鉢僧がいらっしゃいました。


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 会場となっている奈良県文化会館は奈良県庁の裏手にあり、右手に若草山がかすかに望めます。


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 奈良で子育てをした20年間に、この周辺はしばしば子供たちを遊ばせるために訪れました。秘密の駐車場に車を停めて、子供を奈良公園や東大寺や春日大社などの境内に放し飼いにしました。奈良公園・平城京跡地・唐招提寺と薬師寺・法隆寺・三室山と竜田川・馬見丘陵公園・石上神宮から山野辺の道・信貴山は、子供たちの遊び場にしていました。30年前のことです。

 奈良県文化会館は、母を連れて都はるみのコンサートに一度だけ来たことがあります。

 さて、今回のイベントでは、2階E展示室で行なわれている「さわって楽しむ体感展示」を見るために来ました。これは、“見る”鑑賞ではなく、“さわる”鑑賞を中心とした展覧会です。国立民族学博物館の広瀬浩二郎先生が関わっているとのことだったので来ました。

 この展覧会の紹介は、「奈良で開催される「さわって楽しむ体感展示」のお知らせ」(2017年01月24日)に、広瀬先生の文章を引いて詳しく書きましたので、ご参照ください。

 2階の会場へ行くまでに、道案内がないので戸惑います。館内の方に聞きながら行った方がいいと思います。奥まったところが会場なので、けっこう辿り着くまでに不安になります。

 キャッチフレーズに「カタチをさわって、奈良をさわって、新たな発見をしてみませんか」とあるように、触るということがコンセプトとしてあります。

 カーテンを押し開いて中に入ると、右のモニタに広瀬先生のビデオ解説が流れていました。展示物を触る上でのマナーなどが語られています。まずは、手を消毒してから触りましょう、などなど。


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 今回の展示概要として、次のことが謳われています。


・触ることで再発見を楽しめる「触る絵画」や立体作品
・歴史を肌で感じられる、奈良にまつわる品など


 私は、「さわった本物をあててみよう!」がおもしろいと思いました。3問とも当たりました。手触りの微妙さを、今回初めて体感しました。


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 展示されていた彫刻や絵画には、あまり新鮮さを感じませんでした。ただし、興福寺銅像仏頭(旧東金堂本尊、模造)は、日頃触ることのない仏様なので、心ときめくものがありました。
 その点から言えば、「奈良」というテーマがうまく活かされていません。歴史と地理をどのようにして感じてもらうかは、さらなる検討が必要だと思います。

 また、今回の展示は、緊張感に欠けるようにも思えました。もっと意外性を体感できる仕掛けがほしいところです。ごめんなさい。私は学芸員の一人として、展示のプロの役割という視点で見た感想でもあります。

 関係者の方お2人にお話を伺ったところ、今回のイベントを担当した県庁の担当部署には、障害者のことを専門とする方はいらっしゃらないとのことでした。触読について伺いたかったことがたくさんあったので残念でした。
 広瀬先生や奈良県立盲学校の美術の先生のアドバイスやアイデアや機材に助けられて開催に漕ぎつけられたようです。専門家に任せた生温い安心感が、この部屋には満ちています。それが、今回の展覧会における、思い遣りと思い入れと情熱と感じてほしいという熱意が欠けていた原因のように思われます。

 展示室の各所に、詰め切れないままに漠然と置かれた物や、導線から伝わるストーリーの不整合性を感じたのは、親身になっての取り組みにならなかったことがあるのではないでしょうか。
 中盤から私は、展示物を触る楽しみを感じなくなっていました。仏頭以外は。
 2周しました。しかし、もう1周してみようとは思いませんでした。もう1回、と思わせる味付けがあれば、楽しさが倍増することでしょう。

 出口でアンケートを書きました。そのテーブルに、展示物の配置を立体コピーにした会場案内図があります。A4版のカプセルベーパーに立体コピーしたものです。
 お尋ねしたところ、私が使っているビアフの機器と同じものを奈良県立盲学校から借りて来て、県庁内で作成したとのことです。そうであれば、この立体コピーは、展示を見て触って楽しんでもらうために、もっと有効利用ができるはずです。これでは、あまりにももったいない、立体コピーによる略図の資料に留まっています。
 「触読の研究をしている私たちの成果」を、いつかこうした展覧会とタイアップして盛り上げたいと思うようにりなりました。

 視覚障害者に関する慣れないイベントのため、担当なさったみなさまがご苦労なさったことは理解できます。そのことを忖度しながらも、非礼を承知で思いつくままに記しました。勝手な偉そうな無責任な放言は、ご寛恕のほどをお願いいたします。

 これは秋のためのプレイベントだとのことです。秋の本番では、展示内容の吟味と説明の工夫、そして来場者がもっと楽しめるものにしてくださることでしょう。
 さらなる発展と展開を楽しみにしています。
posted by genjiito at 23:37| Comment(0) | ■視覚障害

2017年01月24日

奈良で開催される「さわって楽しむ体感展示」のお知らせ

 国立民族学博物館の広瀬浩二郎先生より、2月4日(土)〜12日(日)に奈良県文化会館で行われるイベント、「さわって楽しむ体感展示」の案内をいただきました。
 〔6日(月)は休館、開館時間は9時〜18時〕

 得難い体験ができそうなので、いただいた連絡を転記します。


 今年最初のお知らせ(宣伝)は、奈良で開かれる「さわって楽しむ体感展示」についてです。

 毎年、国民文化祭、障害者芸術・文化祭が各都道府県の回り持ちで開催されています。
 これまではオリンピックとパラリンピックのように、国民文化祭が行われた後、障害者芸術・文化祭が開かれてきました。
 この形だと、どうしても障害者芸術・文化祭は「後の祭」という印象で、あまり盛り上がりませんでした。
 今年から国民文化祭と障害者芸術・文化祭は同時開催されることになり、その初回担当が奈良県です。

 国民文化祭、障害者芸術・文化祭の一体開催という試みがうまくいけば、来年度以降、各県でこのイベントが続くことになります。
 障害の有無に関係なく、誰もが楽しめるユニバーサル・ミュージアムをめざす僕にとって、国民文化祭、障害者芸術・文化祭の同時開催はたいへん嬉しい企画です。

 このイベントは9月〜11月に大々的に実施されます。
 本番を前に、プレイベントとして2月4日〜12日に奈良県文化会館で「さわって楽しむ体感展示」が行われることになりました。
 プレイベントなので期間は短いし、小規模な展示です。
 しかし、このプレイベントが成功すれば、秋の本番でも「さわって楽しむ体感展示」が拡大実施されることになります。

 プレイベントの展示について、僕はアドバイザーという形で昨年から関わっています。
 昨年の夏から断続的に奈良県庁の担当者と打ち合わせを重ねてきました。
 いろいろとクリアすべき課題もありましたが、展示準備は順調に進んでいます。

 先日、会場入口で流すビデオを作りました。
 興福寺仏頭(国宝)のレプリカに僕がじっくりさわっている場面を「手」のアップを中心に撮影しました(顔のアップではありません、念のため)。
 さわる展示なのに、観客を集めるためにビデオを使うということに少し矛盾を感じますが、おもしろいビデオができたのではないかと自己満足しています。
 レプリカとはいえ、国宝にじっくりさわっているシーンはかなりインパクトがあります。

 このビデオを見た後、もちろん来場者は実際に仏頭のレプリカにさわることができます。
 来場者の反応が楽しみです。

 その他、奈良から出土した土器などの考古遺物、天平衣装、アート作品などにも触れることができます。

 また、「平城京のさわる地図を作ろう!」というコーナーでは、川、道路、山などを表す素材を手触りで選んでいただき、投票してもらいます。
 この結果を元に、秋の本番では「さわる平城京地図」を制作・展示する予定です。

 僕も会期中に、何度か会場に行くつもりです。
 奈良県文化会館は近鉄の奈良駅から徒歩で行けます。
 ぜひ多くのみなさんに「さわって楽しむ体感展示」を味わっていただき、いい形で秋の本番につなげたいと願っております。
 本メールの転送・転載を歓迎します。
 ご支援・ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

                    広瀬浩二郎
posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | ■視覚障害