2019年10月19日

紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む(第6回)

 大徳寺に近い「紫風庵」で、「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」の第6回となる勉強会を開催しました。主催は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉です。
 午後2時、ちょうど始めようとした時に、大雨となりました。紫風庵の背後に建つ建勲神社では、織田信長が上洛した日に因み、10月19日の今日は船岡大祭が行われていました。大鼓の音の合間に、物が爆発する音が何度もします。信長にゆかりがあるとのことで、火縄銃が演武されている音だそうです。来年の大河ドラマは明智光秀が主人公です。すでにこの建勲神社への参拝客は日々増えているそうです。
 そんな中で、まずは配布したA4版のプリント10枚を見ながら、今日の勉強内容の確認からです。
(1)10月26日(土)の百人一首のイベントのお誘い
(2)定家本「若紫」に関する新聞記事から。補入された2文字の説明文が、写本のことをよく知らない人が書いていることを証明する。
(3)福沢諭吉の『学問のすゝめ』の冒頭などに残されている変体仮名。
(4)山下智子さんの京ことばで読む『源氏物語』の宣伝(11月17日分)
(5)襖絵の詞書と和歌の確認
(6)ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」の今日読む箇所の確認

 今日見る、襖に貼られた三十六歌仙の絵と和歌については、座卓を囲んだ学習形式で、書かれている文字をプリントを使って確認しました。今回は、「壬生忠峯」「斎宮女御」「大中臣頼基」「藤原敏行」の四名です。

191017_left4.jpg

 目ならしのプリント学習を経て、部屋を奥の座敷に移動して、実際の作品を見ます。

 左から四領目の襖《左上》は「壬生忠峯」です。

191017_tadami1.jpg

■忠峯(有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし)
                   (古今和歌集 六二五)
  右   壬生忠峯
あ可つき    王可れ
   【斗】    よ里
     【有明】農
 うき
  【物】  つれな具
   ハ
   なし   三盈
         し


 このチラシ書きについては、ど真ん中に初句「【有明】農」がくっきりと書かれていることがわかります。

 2首目は斎宮女御です。
 ◎左から四領目の襖《右上》
191017_saigu1.jpg
■斎宮女御(琴の音にみねの松風かよふらしいづれのをよりしらべそめけむ)(拾遺和歌集 四五一)
    斎宮女御
こと能【音】耳三ねの
  【松】可せ可よふらし
  い都連の乎よ里
   志らへ所め介む


 3首目は大中臣頼基。
 ◎左から四領目の襖《右中》

191017_yorimato1.jpg

■頼基(ひとふしに千世をこめたる杖なればつくともつきじ君がよはひは)
                       (拾遺和歌集 二七六)
  右  大中臣頼基
【一】婦し尓【千世】越
   こめ多る【杖】な連
            者
  津くともつきし
  【君】可よ者飛盤


 4首目は敏行朝臣です。
 ◎左から四領目の襖《右下》 にあります。

191017_tosiyuki1.jpg

■敏行(秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる)
                      (古今和歌集 一六九)
  右   藤原敏行朝臣
【秋】きぬ登めにハ   おとろ
   さや可尓みえね    可連
         とも
               努
    【風】のをとに
                る
          そ


 参会者の中に、すでに京都国立博物館へ佐竹本三十六歌仙を見に行かれた方がいらっしゃいました。歌仙絵が切断された時には、斎宮女御が一番高い値段であったことや、平日は入館者が少なかったことなど、いろいろな話に花が咲きました。

 続いて、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」を読みました。
 「堂」が普通に読めるようになると、もう大丈夫ですと言っていると、15丁表には5例も出てきました。
 今日は、15丁表10行目の行末まで確認し終えました。来月は、15丁裏1行目から読みます。

 次回は、11月30日(土)午後2時からです。

 帰りに建勲神社前で、「京都刀剣御朱印めぐり」の大型バスが停まっていました。刀剣女子かと思いきや、結構年齢層の高い方々が乗り降りしておられました。
 
 
 
posted by genjiito at 21:03| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年10月17日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第6回)のお知らせ

 昨日16日(水)の京都新聞「まちかど」欄に、次の紹介記事を掲載していただきました。

191016_matikado.jpg

 会場はいつもの通り、平安京の北の基点となった船岡山のすぐ南にある、登録有形文化財に指定されている「紫風庵」です。その「紫風庵」で、ハーバード本「須磨」巻を読むと共に、「紫風庵」所蔵で江戸時代に描かれた三十六歌仙の絵と和歌を読んでいます。平仮名は変体仮名を再確認しながら、書かれている文字を忠実に読んでいきます。
 江戸時代に描かれた三十六歌仙の絵が貼られた襖がある部屋で、しかも間近に見ながら、一文字ずつを解読していきます。「紫風庵」に所蔵されている「三十六歌仙」の詳しいことは、「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)(http://genjiito.sblo.jp/article/185856865.html)でご確認ください。

 今回は、向かって右端にある次の襖絵(左から四領目)の四人、上から「壬生忠峯」「斎宮女御」「大中臣頼基」「藤原敏行」を見ていきます。

191017_left4.jpg

 前回の勉強会の内容は、「「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第5回)」(2019年09月28日)に詳しく報告しています。

 1年かけて、この三十六歌仙に取り組む予定です。ぜひこの機会に、生きた古典と接する得難い体験の場としてください。初心者を意識して、丁寧に変体仮名を読むコツなどを説明します。
 参加を希望される方は、このブログのコメント欄をご利用ください。折り返し、説明の返信を差し上げます。
 なお、この学習会は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催する企画です。小規模ながら、地道に気長に活動を続けています。
 『源氏物語』ともども、「三十六歌仙」という古典文学作品を生で鑑賞し、そこに書かれた文字を忠実に翻字していくことに興味をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年10月14日

NPO秋の催し「一味違う〈百人一首〉を見る聴く楽しむ」のご案内

 先月中旬の本ブログ、「京洛逍遥(576)玄想庵へNPO開催イベントの下見に行く」(2019年09月12日)の後半で紹介したように、来週末の10月26日(土)の午後、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の秋のイベントとして、「一味違う『百人一首』を見る聴く楽しむ」を以下の要領で開催します。今年は、時代祭(原則自由観覧)と連動させて行ないます。

内容:「同志社大学競技かるた同好会」の協力を得て、本会らしいイベントを考えました。視覚障害者の会である「大阪点字付きかるたを楽しむ会」(大阪)と「点字付百人一首〜百星の会」(東京)のメンバーも参加して、『百人一首』のさまざまな魅力を幅広く体感していただく催しです。見える見えないは問題ではなく、『百人一首』はさまざまな楽しみ方がなされているのです。さらに今回は、本邦初となる「変体仮名カルタの立体文字版」(試作版)も触っていただきます。
 戸外で1000年にわたる時代風俗行列を気ままに観た後は、築130年の京町家の一室で『百人一首』を観戦し、一緒に楽しんでください。
 参加希望の方で、特に「玄想庵」での『百人一首』の会にお越しの方は、準備の都合がありますので、来週の10月24日(木)正午までに、本ブログ後掲のコメント欄を利用して連絡をお願いします。

【プログラム】


「一味違う〈百人一首〉を見る聴く楽しむ」


開催日時:2019年10月26日(土)午後
場所:(1)烏丸丸太町周辺、(2)東洞院仏光寺「玄想庵」

内容:(1)「時代祭」の行列を観る
     観覧場所:地下鉄丸太町駅の地上付近(原則、自由行動)
     時間:12時半から13時半まで
     (原則、自由行動。14時までに直接「玄想庵」へ)
   ■ブラブラ組の待ち合わせ場所
   「noku cafe by MAEDA'S COFFEE」の入口付近に正午
    (各自あらかじめ食事を済ませて参集願います)
    地下鉄烏丸線「烏丸丸太町」駅より徒歩1分
    https://www.maedacoffee.com/shopinfo/noku/
    〒604-0861 京都市中京区大倉町205-1 烏丸丸太町下る
    電話:075-256-1223

   (2)京町家で『百人一首』
     場所:「玄想庵」(京都市下京区東洞院通仏光寺上ル301)
       地下鉄烏丸線「四条」駅南側(京都駅寄り)5番出口から徒歩1分
       京都東洞院仏光寺郵便局すぐ北、「廣田紬株式会社」の看板が目印
       TEL 075-351-2458
     時間:14時から16時まで
     参加費:本NPO正会員 1,000円
          サポート会員 1,500円
          一般参加   2,000円
      (いずれも障害保険加入費を含む)
      (障害者手帳保持者は1,000円、その介助者は無料)

 190912_jidai-map.jpg

 
 
posted by genjiito at 20:32| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年09月28日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第5回)

 大徳寺に近い船岡山の南側に建つ「紫風庵」で、5回目となる変体仮名を読む会を開催しました。
 門を入って階段を登ると、薄桃色の酔芙蓉が迎えてくれます。

190928_sifuu1.jpg

190928_sifuu2.jpg

 今日配布した資料は、A4版で18枚です。お話したいことがたくさんあり過ぎて、回を追うごとに枚数が増えています。本日の参加者は9名でした。
 まず、配布したプリントの確認からです。

・前回第4回で一緒に学んだことの確認
  「「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第4回)」(2019年08月24日)
・今日見る三十六歌仙は、高光・公忠・僧正遍昭の3名であること

190928_36-3men-R.jpg

・各歌人の和歌を、変体仮名に注意して読む
・「三十六歌仙一覧」を元にして、これまでに見た歌仙の確認
・ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」巻は、14丁表1行目の「おもやせ・堂満へる」から読むことの確認
・谷崎潤一郎の小説で使われている変体仮名
・道路標識の平仮名表記(新聞記事)
・平安京の「羅城」と「九条大路」の発掘で範囲が確定(新聞記事)
・10月26日(土)開催の「NPO主催のイベント」の案内

 まずは、勉強会をする座敷で、3名の歌人の和歌をプリントに印刷した図版で読みました。
 谷崎潤一郎の小説の冒頭文を提示したのは、前回の課題であった、谷崎は「こと」と書く時に「 ˥ 」とする例を見ていただくためです。『鍵』(初版、棟方志功の装丁)の冒頭は、次のように書き出されています。

一月一日。……僕ハ今年カラ、今日マデ日記ニ記スコトヲ躊躇シテヰタヤウナ柄ヲモ敢テ書キ留メル ˥ ニシタ。


 そして以降、この僕の日記の部分には「 ˥ 」が用いられています。妻の日記には使われません。
 日頃はあまり見かけない文字「 ˥ 」が並んでいることに加えて、回覧した初版本(昭和31年)の棟方志功の装丁や挿画のみごとさに魅入られながら、みなさま納得しておられました。
 ついでに、谷崎潤一郎の代表作である『春琴抄』の、初版(昭和8年)と全集(昭和33年)と通行本(昭和f57年)の冒頭部分の仮名表記を見てもらいました。例えば、次のように書いてあることを見ると、仮名の表記が移り変わって来ていることがわかります。

【初版】春琴、うの名は
【全集】春琴、うの名は
【通行】春琴、うの名は


 『春琴抄』の初版本では、最初の頁の6行分だけでも、次の変体仮名が出てきます。
 「本」「連」「里」「春」「古」「能」「阿」「志」
 現在流布する本は、現代仮名で印刷されています。そうでないと、変体仮名をほとんど知らない現代人には、初めて刊行された昭和初年の小説『春琴抄』が、変体仮名につっかかって読めないということがわかります。参会者のみなさまには、あらためて平仮名といっても変体仮名が使われていた状況と、現代の平仮名のありように気付いていただけたようです。

 30分ほど見聞を広めてもらってから、「紫風庵」所蔵の襖絵「三十六歌仙」がある部屋に移動しました。

190928_fusuma1.jpg

 今日は、京都工芸繊維大学の先生で中世を中心とした美術史が専門の井戸美里さんがお出でになっているので、最初に絵の専門家にこの歌仙絵についてコメントをしていただきました。江戸中期の小振りな絵で、絹布に丹念に鮮やかな彩色が施されているものであることに驚嘆の声を上げておられました。粉本を元にして、一つのグループが手がけた作品ではないか、とのことです。今回初めて見たものでもあり、少し調べてまたコメントをしてくださることになりました。

 今日の3名の歌仙の和歌は、次のように翻字しました。

190928_takamitu2.jpg
◎左から三領目の襖《右上》
■高光(かくばかりへがたくみゆる世中にうらやましくもすめる月かな)
                      (拾遺和歌集 四三五)
   右 藤原高光
 閑く者可里へ可多
         く
 三ゆ累よのな可
      耳
 うらやましくも
   す免る【月哉】


190928_kintada2.jpg
◎左から三領目の襖《右中》
■源公忠(行きやらで山路くらしつほととぎす今ひと声のきかまほしさに)(拾遺和歌集 一〇六)
右 源公忠朝臣
【行】やら帝【山路】
   具らしつ【郭公】
  今一こゑの
    き可まほしさ
          尓


190928_henjyo2.jpg
◎左から三領目の襖《右下》
■僧正遍昭(たらちねはかかれとてしもむばたまの我が黒髪をなでずやありけむ)
                 (後撰和歌集 一二四〇)
 右 僧正遍昭
 堂らちね八可ゝれ
   とてしもう者【玉】
           能    
 【我】可くろ【髪】越
      なて須やあ里け
           舞


 これで、確認した歌仙は次の赤字の歌人となりました。

■三十六歌仙一覧(赤字は確認済)
(第2回)柿本人麿 紀貫之 凡河内躬恒 (第1回)伊勢 大伴家持 山辺赤人 在原業平 (僧正遍昭) 素性法師緑 (第4回)紀友則 猿丸大夫 小野小町 (第3回)藤原兼輔 藤原朝忠 藤原敦忠 (第5回)藤原高光 源公忠 ※僧正遍昭 壬生忠岑 斎宮女御 大中臣頼基 藤原敏行 源重之 源宗于 源信明 藤原清正 源順 藤原興風 清原元輔 坂上是則 藤原元真 小大君 藤原仲文 大中臣能宣 壬生忠見 平兼盛 中務


 歌人の並び方から見ると、今日の僧正遍昭だけが別のグループ(在原業平 素性法師)に属する人です。このことは、回を追って問題点を明らかにしていくつもりです。

 ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」の写本の確認は、14丁表1行目から14丁裏3行目までできました。
 紛らわしい字形としては、「を・せ」「れ・那」「尓・支」がありました。
 今日も、時間いっぱいまで、目と脳をフルに活用しての勉強会となりました。
 次回は、10月19日(土)の午後2時からです。
 
 
 
posted by genjiito at 22:42| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年09月24日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第5回)のお知らせ

 一昨日の9月22日(日)京都新聞「まちかど」欄に、いつものように次の紹介記事を掲載していただきました。

190922_sifuan.jpg

 会場は、平安京の北の基点となった船岡山のすぐ南にある、登録有形文化財に指定されている「紫風庵」です。その「紫風庵」で、ハーバード本「須磨」巻を読むと共に、「紫風庵」所蔵で江戸時代に描かれた三十六歌仙の絵と和歌を読んでいます。平仮名は変体仮名を再確認しながら、書かれた文字を忠実に読んでいきます。
 江戸時代に描かれた三十六歌仙については、その絵が貼られた襖がある部屋で、しかも間近に見ながら、一文字ずつを解読していきます。「紫風庵」に所蔵されている「三十六歌仙」の詳しいことは、「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)(http://genjiito.sblo.jp/article/185856865.html)をご覧ください。

 前回の活動内容は、「「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第4回)」(2019年08月24日)に詳しく報告しています。

 今回は、次の襖絵を読みます。

190928_36-3men-R.jpg

 1年かけて、この三十六歌仙に取り組む予定です。ぜひこの機会に、生きた古典と接する得難い体験の場としてください。初心者を意識して、丁寧に変体仮名を読むコツなどを説明します。
 参加を希望される方は、このブログのコメント欄をご利用ください。折り返し、説明の返信を差し上げます。
 なお、この学習会は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催する企画です。小規模ながら、地道に気長に活動を続けています。
 『源氏物語』ともども、「三十六歌仙」という古典文学作品を生で鑑賞し、そこに書かれた文字を忠実に翻字していくことに興味をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 会場である「紫風庵」への道順などは、上記ブログ(2019年04月13日)に詳しく掲載していますので、参考になさってください。
 
 
 
posted by genjiito at 20:00| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年09月07日

2019年度NPO法人〈源氏物語電子資料館〉臨時総会開催

 特定非営利活動法人促進法が平成28(2016)年6月に改正され、平成29(2017)年から施行されました。それに伴い、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の定款の一部の変更が必要となりました。
 当法人の活動には大きな変更も支障もない、事務的な手続きに関するものです。ただし、総会での決議が必須の事案なので、下記のとおり臨時総会を京都で開催することになりました。これまでの総会は、すべて東京でした。京都でNPOの総会を開催するのは初めてです。

190907_souka1.jpg

○総会開催場所・日時○

・場所:CreativeLabo京都駅前 多目的スペース
・日時:令和元(2019)年9月7日(土)午前11時〜13時
・住所:京都府京都市下京区小稲荷町85−10
・アクセス:
【京都駅から】
 (1)京都線・近鉄京都線京都駅から徒歩7分
 (2)京都市営地下鉄烏丸線京都駅から徒歩4分
 (3)京都駅地下街PortaA5出口から徒歩3分
・内容:
 1 開会の言葉
 2 代表理事挨拶
 3 議長、議事録署名人選出
 4 議事
  (1) 第一号議案 特定非営利活動法人促進法改正を受けての定款の変更について
  (2) 第二号議案 学部学生の年会費について
  (3) 第三号議案 その他運営に関する重要事項の決定の件
 5 閉会の言葉


190907_soukai2.jpg

 和やかな内に、無事予定していた内容のすべてが了承されました。また、さまざまな意見が出たことを受けて、それらは今後の活動に活かしていきたいと思います。
 6月2日の通常総会と、本日の臨時総会の議事録などについては、後日ホームページで公開しますので、しばらくお待ちください。

 終了後は、京都駅前のメルパルク京都で食事をしました。会議室が狭かったこともあり、ゆったりと落ち着いた雰囲気のレストランで、楽しく語り合うことができました。参加者は、京都・大阪・兵庫・東京の会員で、数人が初対面です。幅広い年齢層と興味や関心が多彩なメンバーが、思い思いに話すのですから、話題が途切れることがありません。
 当面の活動内容としては、今年の秋の文学散策が具体的になったことでしょうか。時代祭が開催される10月26日(土)の午後に、行列を見た後で、目が見える人も見えない人も、一緒に百人一首を楽しもう、というものです。会場は、京都の中心部でと考えています。
 決まり次第にお知らせします。秋の行楽シーズンの真っ只中に、時代祭と絡めての企画です。楽しみに、お待ちください。
 
 
 
posted by genjiito at 18:58| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年08月24日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第4回)

 今日の資料は、A4版で13枚です。これまでは、両面コピー版を配布していました。しかし、使い勝手がよくないとのことなので、片面コピーを綴じて資料集にしました。本日の参加者は8名です。
 まず、配布したプリントの確認からです。

・前回第3回で一緒に学んだことの確認
  (本ブログの記事に書いた報告文を参照)
・敦忠の絵の特徴の確認
・今日見る三十六歌仙は、友則・猿丸・小町の3名
・ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」巻は、13丁表1行目下の「む可〈改行〉へ堂てまつ里てん」から
・字母について、「个」か「介」の認定の難しさ


 「紫風庵」所蔵の襖絵「三十六歌仙」について、これまで私はその図様のパターンの点から狩野派の絵に近いと言って来ました。しかし、展示図録『みんなでつくろう展覧会 描き出された歌人たちー三十六歌仙ー』(みんなでつくろう展覧会スタッフ編、斎宮歴史博物館、平成十五年二月二十三日)に掲載されている例を見ながら、土佐派の方が近いのではないか、と私見を変えることにしました。このことは、敦忠の絵がいい例です。
 すでに、「「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第3回)」(2019年07月20日)で示したように、「紫風庵」の絵は次の通りです。

190824_atsutada1.jpg

 これに対して、架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の敦忠はこうです。

190824_tanyu36-atsutada.jpg

 過日のブログにも書いたように、左手の扱い、そして装束の違いから、「紫風庵」の絵は土佐派の流れを汲んでいます。今、絵に関してよくはわからないので、これは専門家の方のご教示に待ちたいと思います。
 なお、この「紫風庵」の敦忠の衣装に関して、そのきめ細やかな筆遣いや色使いに注目して、再度みんなで見直しました。なかなか凝った、画家の絵筆の技が浮かび上がります。

190824_atsutada2.jpg

 今日の三十六歌仙の和歌は友則・猿丸・小町です。
 歌仙絵に添えられた和歌は、「変体仮名翻字版」で表記すると次のようになります。
 最初の友則だけは散らし書きなので、これは特に注意して読みましょう。

190821_36-3men.jpg

190824_tomonori-uta.jpg
■友則
 (秋風にはつかりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらむ)
                      (古今和歌集 二〇七)
   右 紀友則
 多可   【秋】可勢暁
  【玉】      丹
 つさを    者津【雁】
   か遣て   可ねそ
  きつら   きこ遊
    舞     なる


190824_saru-uta.jpg
◎左から三領目の襖《左中》
■猿丸大夫
 (奥山にもみぢ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋はかなしき)
                 (古今和歌集 二一五)
   左 猿丸大夫
  【奥山】尓もみち婦三
    王けなく【鹿】の
   こゑきく【時】楚
     【秋】盤かなし起


190824_komati-uta.jpg
◎左から三領目の襖《左下》
■小野小町
 (色見えでうつろふものは世の中の人の心の花にぞありける)
                  (古今和歌集 七九七)
  右 小野小町
【色見】盈傳(伝)う徒ろふ
  も能盤よの那可農
【人】能こゝろの
   者な尓所あ里介類


 藤原公任撰「三十六人撰」の内、次の赤字をすでに見ました。これで、3分の1です。
(第2回)柿本人麿 紀貫之 凡河内躬恒 (第1回)伊勢 大伴家持 山辺赤人 在原業平 僧正遍昭 素性法師 (第4回)紀友則 猿丸大夫 小野小町 (第3回)藤原兼輔 藤原朝忠 藤原敦忠 藤原高光 源公忠 壬生忠岑 斎宮女御 大中臣頼基 藤原敏行 源重之 源宗于 源信明 藤原清正 源順 藤原興風 清原元輔 坂上是則 藤原元真 小大君 藤原仲文 大中臣能宣 壬生忠見 平兼盛 中務


190824_fusumae.jpg

 休憩を挟んで、後半はハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」巻を読みました。
 「堂」が何度も出てくるので、目を馴らすことを強調しました。「ま」は今の字形(フォント)と違っているので、一つずつ確認しました。
 13丁裏の最終行に、「鏡臺(台)」という語が出てきました。鎌倉時代と同じ文字を今も使って表記していることに、新鮮な驚きがありました。

 こうした勉強会場として特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉がお借りしている「紫風庵」の門柱も、昭和初期のままなのです。門灯もそうです。これらも建物同様に文化財の指定を受けるように奨められているとのことでした。大切に守っていきたいものです。

190824_mon.jpg

 次回は、9月28日(土)の午後2時からです。
 江戸時代に描かれた三十六歌仙の絵と和歌を直に見ながら勉強できるという、贅沢な時間に身を置き、そして鎌倉時代に書写された『源氏物語』の古写本も読んでいます。
 興味のある方の参加を、お待ちしています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:55| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年08月21日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第4回)のお知らせ

 本日21日(水)の京都新聞「まちかど」欄に、次の紹介記事を掲載していただきました。

190821_sifu-G.jpg

 会場は、平安京の北の基点となった船岡山のすぐ南にある、登録有形文化財に指定されている「紫風庵」です。その「紫風庵」で、ハーバード本「須磨」巻を読むと共に、「紫風庵」所蔵で江戸時代に描かれた三十六歌仙の絵と和歌を読んでいます。変体仮名を再確認しながら、書かれた文字を忠実に読んでいきます。
 三十六歌仙については、その絵が貼られた襖を間近に見ながら、一文字ずつを解読していきます。「紫風庵」に所蔵されている「三十六歌仙」の詳しいことは、「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)(http://genjiito.sblo.jp/article/185856865.html)をご覧ください。

 今回は、次の写真中央縦列の、友則・猿丸・小町を見ます。

190821_36-3men.jpg

 1年かけて、この三十六歌仙に取り組む予定です。ぜひこの機会に、生きた古典と接する得難い体験の場としてください。初心者を意識して、丁寧に変体仮名を読むコツなどを説明します。
 参加を希望される方は、このブログのコメント欄をご利用ください。折り返し、説明の返信を差し上げます。
 なお、この学習会は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催する企画です。小規模ながら、地道に気長に活動を続けています。
 『源氏物語』ともども、「三十六歌仙」という古典文学作品を原典で鑑賞し、そこに書かれた文字を忠実に翻字していくことに興味をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 会場である「紫風庵」への道順などは、上記ブログに詳しく掲載しています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:16| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年07月20日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第3回)

 今日の資料は、A4版で12枚です。
 まず、配布したプリントの確認から。
 前回、6月29日の勉強会の内容を、当日のブログの記事を元にして確認しました。
 架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の粉本の絵と、この「紫風庵」の襖絵がよく似ていたことに始まり、人丸・貫之・躬恒の和歌の「変体仮名翻字版」の確認です。
 そして、今日の歌人とその和歌が襖のどこに配置されているかから。

190717_kasene3.jpg

 今日は、向かって左から二領目の襖の真ん中と右側に配された、兼輔・朝忠・敦忠の3名です。
■兼輔
 (人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな)
                 (後撰和歌集 一一〇二)
■朝忠
 (逢ふことのたえてしなくは中々に人をも身をも恨みざらまし)
                   (拾遺和歌集 六七八)
■敦忠
 (逢ひ見ての後の心にくらぶれば昔は物も思はざりけり)
                 (拾遺和歌集 七一〇)
 上から順に、以下の表記で書かれています。今回は、チラシ書きはありません。


   左 中納言兼輔
  【人】のおやのこゝろ
   は屋三尓阿ら年とも
   【子】越【思】ふ【道】尓
    まと飛ぬる可な


    右 中納言朝忠
  【逢事】能【絶】てし
    なく盤な可/\尓
  【人】をも【身】越も
     うらみさら満し


   左 権中納言敦忠
  あ飛【見】帝の
   【後】農古ゝろ尓
       くらふ連盤
   むかしは【物】も
      おも盤佐り
          介梨


190720_No3-kasen.jpg

 目の前の歌仙絵を架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』と比べると、兼輔と朝忠はほとんど図様はよく似ています。しかし、敦忠は大きく異なります。
 まず、「紫風庵」の敦忠。

190720_sifu-atutada.jpg

 そして、架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の敦忠。

15_190720_36tanyu-atsutada.jpg

 表情は、全体的に架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の方がリアルで厳しいものが多いようです。そのこと以外に、左手の扱いが、まったく異なるのです。「紫風庵」の敦忠のように左手をかざしている図像は、和泉市久保惣記念美術館画帖、斎宮歴史博物館/情報データベース/三十六歌仙図画帖、狩野尚信『三十六歌仙額』、医王寺蔵三十六歌仙図(狩野派)などで確認できます。しかし、笏を立てて持っている図が大半のようです。もし、「紫風庵」と架蔵の三十六歌仙絵が共に狩野派と関係があるものであれば、この違いは何に由来するものなのでしょうか。
 また、架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の敦忠の袖には、「くろ」と色の指定が書き込まれています。つまり、ここは黒で塗りつぶせということです。しかし、「紫風庵」の敦忠の着衣は白が基調のものであり、柄も花鳥を織り込んだ派手なものです。
 さらには、ほとんどが肌色で顔が描かれているのに、ここでは下の2人の顔は白いことに意味を見いだす意見が、参加者から出されました。しかも、頬に赤く朱が入っているので、恋の歌と関係があるのではないか、という楽しい説明です。後方の襖に貼られた業平では、そのような傾向が見られないので、これも今後の課題となりました。
 これらの問題は、専門家の意見を仰がなくてはならないようです。

 なお、参考資料として、7月9日の京都新聞に掲載された「二条城・重文障壁画 松鷹図 探幽でなく山楽筆」という記事を配布しました。これは、これまでの説が最近の研究によって、同じ狩野派でも探幽から山楽の絵だと修正がなされたのです。これだけ有名な所が所蔵する著名な作品でも、京狩野と江戸狩野の違いがあらためて再確認されたことになります。さて、この「紫風庵」の襖絵は、狩野派が描いたものでいいのか、もしそうであれば誰が想定できるのか、興味と関心をお持ちの方の参加をお待ちしています。

 後半は部屋を移り、手前の座敷でハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」巻を読みました。12丁裏4行目の「ゆゝしや」からです。
 今日は、書写の道具としての糸罫が、この丁の6行目以降では使われていないのではないか、ズレているのではないか、という意見が出されました。9行目の「人」などは、両端の線が左右の行に割り込むように伸びているので、ありうることです。これでは、糸罫に張られた糸が邪魔になって、この横に広がる大きな「人」は書けません。

190720_12u-hito.jpg

 後半の30分で、13丁表1行目の「な可尓ても」まで進みました。8行分の変体仮名を確認したことになります。こんなのんびりとした調子で進んでいます。

 今日は、先日の京都新聞に掲載された記事をご覧になったお二人が、体験的に参加なさいました。今回も10人が寄り集まり、頭をフル回転の2時間でした。
 前回は、説明が少し早かったとのことなので、ペースを落として確認しながら進めました。

 最後に、昨夜がんばって作成した、この勉強会のことを紹介する三つ折りのチラシを見てもらいました。
 少し時間を置いて再度確認してから、いろいろな所に配布しようと思っています。

190720_NPO-panf1.jpg
190720_NPO-panf2.jpg

 次の第4回「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」は、8月24日(土)午後2時からです。多くの方々の参加をお待ちしています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年07月19日

「紫風庵」のホームページの紹介とNPO活動の報告

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉主催の勉強会の会場としてお借りしている、「紫風庵」のホームページが充実してきています。

「登録有形文化財指定〈紫風庵〉のホームページ」

 この「紫風庵」のホームページの中にある「過去のイベント」のコーナーでは、本会のNPO活動の一端が写真とコメント付きでわかりやすく紹介されています。

「「紫風庵」の過去のイベント」

 明日も午後2時から、三十六歌仙の襖絵があるお部屋をお借りして、第3回となる「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」を開催します。
 前回の内容は、
「紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む(第2回)」(2019年06月29日)にまとめています。
 京都新聞に掲載された明日の勉強会のことをご覧になったお2方が、体験参加をなさいます。
 明日の参加についても、明朝、午前中でしたら、本ブログのコメント欄から連絡をしていただければ参加していただけるように資料の用意をいたします。
 次の第4回は、8月24日(土)午後2時から、となる予定です。

 一人でも多くの方々に変体仮名に親しんでいただきたいことと、日本の文化体験の一つとして写本を読む集いに参加してくださる方を、広く募っています。
 まずは、体験参加をしてみてはいかがでしょうか。
 ほぼ同じ趣旨で、東京の日比谷図書文化館では古文書塾「てらこや」で、鎌倉時代に書写された『源氏物語』の「若紫」巻を読んでいます。今秋から、『源氏物語』の異文を読んで楽しむ講座も新設されます。これについては、また後日、詳細を報告します。
 
 
 
posted by genjiito at 20:04| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年07月17日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第3回)のお知らせ

 本日17日(水)の京都新聞「まちかど」欄に、次の紹介記事を掲載していただきました。

190717_matikado.jpg

 会場は、平安京の北の基点となった船岡山のすぐ南にある、登録有形文化財に指定されている「紫風庵」です。その「紫風庵」で、ハーバード本「須磨」巻を読むと共に、「紫風庵」所蔵で江戸時代に描かれた三十六歌仙の絵と和歌を読んでいます。平仮名は変体仮名を再確認しながら、書かれた文字を忠実に読んでいきます。
 三十六歌仙については、その絵が貼られた襖を間近に見ながら、一文字ずつを解読していきます。「紫風庵」に所蔵されている「三十六歌仙」の詳しいことは、「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)(http://genjiito.sblo.jp/article/185856865.html)をご覧ください。

 今回は、次の写真右側の、兼輔・朝忠・敦忠を見ます。

190717_kasene3.jpg

 1年かけて、この三十六歌仙に取り組む予定です。ぜひこの機会に、生きた古典と接する得難い体験の場としてください。初心者を意識して、丁寧に変体仮名を読むコツなどを説明します。
 参加を希望される方は、このブログのコメント欄をご利用ください。折り返し、説明の返信を差し上げます。
 なお、この学習会は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催する企画です。小規模ながら、地道に気長に活動を続けています。
 『源氏物語』ともども、「三十六歌仙」という古典文学作品を原典で鑑賞し、そこに書かれた文字を忠実に翻字していくことに興味をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 会場である「紫風庵」への道順などは、上記ブログに詳しく掲載していますので、参考になさってください。
 
 
 
posted by genjiito at 19:00| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年06月29日

紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む(第2回)

 大徳寺に近い「紫風庵」で、「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」の第2回となる学習会を開催しました。主催はNPO法人〈源氏物語電子資料館〉で、参加者は10名でした。

190629_sifuuan.jpg

 今日は、襖に貼られた三十六歌仙の絵と和歌を見る前に、架蔵の粉本(模本)『探幽筆 三拾六哥仙』を見てもらいました。「紫風庵」の三十六歌仙の絵と図様が近いことを、実物を前にして確認するためです。

190629_tanyu.jpg

 歌仙の姿は言うまでもなく、表情までもが「紫風庵」の歌仙絵とよく似ていることがわかります。架蔵本については、「架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の復元」に詳しく紹介しています。
 ということで、この「紫風庵」の絵は狩野派の絵に近いと考えていいかと思います。もちろん、すべての絵が一致するとは限りません。このことは、今後ともおいおい確認していきます。

 先月から始まった第1回の勉強会の成果は、「紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む」(2019年05月25日)にまとめて報告した通りです。ただし、そこでの翻字は漢字の表記を特定していないなど、正確な「変体仮名翻字版」ではありませんでした。ここにあらためて補訂したものを掲載します。

◎《1左上》
■伊勢
(三輪の山 いかに待ち見む 年ふとも 尋ぬる人も あらじと思へば)
                      (古今和歌集 恋歌5)
   右 伊勢
  見わの【山】
     い可尓 【待】三む
       【年】婦とも
  阿羅し     多つぬ類【人】
    登         も
    おもへ者
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◎《1左中》
■大伴家持
(春の野に あさる雉の 妻恋ひに 己がありかを 人に知れつつ)
                      (拾遺和歌集・21)
   左 中納言家持
  【春】能【野】尓あさる
     きゝ須の【妻恋】
  【人】       尓
    耳 をの可【有】
   志れ      可を
     筒
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◎《1中下》
■山辺赤人
(和歌の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 芦辺をさして 鶴鳴き渡る)
                        (万葉集・919)
   右 山部赤人
  【和歌】能うら尓【塩】
    三ちくれ八か多お
   多つ【鳴】  な三
      わ多 あしへ
        流  を
          佐し
            帝


 今日は、前回の復習を兼ねて、この3首の仮名文字の確認から始めました。

190629_kasene.jpg

 続いて、本日確認する、人丸・貫之・躬恒の和歌を字母に気をつけて読みました。

 ◎《1右上》
■柿本人麿
(ほのぼのと 明石の浦の 朝霧に 島がくれ行く 舟をしぞ思ふ)
                     (古今和歌集 羇旅)
  左  柿本人丸
 本の/\登【明石】の
 【浦】農【朝霧】尓志満
 かく連【行】【舟】越し所
 おも婦

 ◎《2左中》
■紀貫之
(桜ちる このした風は 寒からで 空にしられぬ 雪ぞふりける)
                      (拾遺和歌集・64)
  右 紀貫之
【桜】ちる【木】能し堂
 閑勢盤【寒】可ら帝
 【空】尓し羅れ怒
 【雪】所ふり介る

 ◎《1右下》
■凡河内躬恒
(いづくとも 春の光は 分かなくに まだみ吉野の 山は雪降る)
                      (後撰和歌集・19)
  左 凡河内躬恒
 い徒くとも【春】能ひ可り八
   王可なくにま多
遊起     三よしのゝ
 婦る       やま
           八


 歌仙絵と和歌が2つの襖に分かれている意味が、まだよくわかりません。さらには、公任の『三十六人撰』は人丸から中務までの配列になっており、今回見た「人丸・貫之・躬恒」、そして前回の「伊勢・家持・赤人」の6人は、公任の配列と同じです。つまり、縦の列は一致するのです。それが、右から左に並んでいるのはいいとして、その最初の歌人である人丸が襖の中途半端なところから貼られていることには、どのような意味があるのかが、今後の課題です。最初は画帖に貼られていたものが、屏風から襖に貼り直されたのではないか、と個人的には思っています。その際、貼る順番が混乱したために、最初の人丸がこのような所に置かれたのではないでしょうか。これは、これから1枚ずつ確認していく中で、いろいろとわかってくることでしょう。

 続いて、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」を読みました。今日は、11丁裏の8行目「をの徒可ら・」からです。今日は、初めてこの勉強会に参加なさる方が3人いらっしゃったので、ポイントと興味深い例をピックアップして、字母の説明をしながら進めました。そのせいもあってか、話が飛び飛びになり、いつもより早く進んでしまいました。12丁裏に入ってからも、「堂」「者」「王」に加えて「ミセケチ」や「ナゾリ」のことも説明したので、盛りだくさんになりました。すみません。わかりやすいようにと意識しすぎて、かえって混乱させてしまったようです。次回では復習しながら、再確認をしていきます。
 結局、12丁裏の3行目「【心】あ者多ゝ新き・あな・」まで進みました。「あな」の「な」という文字がひしゃげた形をしているのは、糸罫を使っているためであるという説明も、この次に詳しくとりあげます。
 次回は、7月20日(土)午後2時から、今日と同じ「紫風庵」で行ないます。
 あらかじめ連絡をいただければ、資料を用意してお待ちしています。旅行中の方が立ち寄ってくださっても構いません。お気軽にどうぞ。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年06月28日

市役所にNPO法人の事業報告書を無事に提出

 NPO法人の事業報告書は、来週の7月1日(月)が締め切りです。
 今週は、その作成にかかりきりでした。書類作成などの事務的な仕事が大の苦手な私は、毎年のことながら年に一度ということもあって、悪戦苦闘の日々となります。今回も、総会に引き続き事務的なことで手助けをしてもらっている運営メンバーの理解を得て、なんとか無事に報告書を提出し、受理してもらいました。
 今回も、ここまでにはいろいろと手違いなどがあり、今日のお昼過ぎの時点では今週中の提出を諦めていました。しかし、東京の淺川さんとの連携が信じられないほどにうまく行き、大得意の電光石火の早業がものの見事に功を奏した結果、予定通りに事が運びました。毎度のことながら、市役所の担当者の方をはじめとして、みなさまに感謝感謝の1日でした。
 無事に提出したとはいえ、次の3つの課題が指摘されました。これらは、今回の報告書の期限とは別だとはいえ、できる限り早く対処すべきものです。これから大至急取り組みます。

(その1)2人の役員に住所変更があったので、「役員変更等届出書」(1通)と「年間役員名簿」(2通)を提出すること。

(その2)「活動計算書」に1箇所だけ前年度と矛盾する金額の記載があるので、後日修正をすること。

(その3)平成28年に、「特定非営利活動促進法」(NPO法)が改正されました。それに伴い、特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉でも、現行定款の公告の方法とは別に「貸借対照表」の公告方法を変更する方が利点の多いことを、京都市文化市民局地域自治推進室市民活動支援担当の方から教えていただきました。そして、現行の定款を変更する方法等のアドバイスを受けました。お話を伺い、現行定款の「第9章 公告の方法」にある「第 53 条 この法人の公告は、この法人の掲示場に掲示するとともに、官報に掲載して行う。」に関して次の文言を追記することにより、定款の変更とすることにします。

ただし、法第28条の2第1項に規定する貸借対照表の公告については、ホームページに掲載して行う。


 その新しい定款を総会に諮り、決議を経ることになります。今月初旬に「第7回 通常総会」を開催したすぐ後で恐縮ながら、今秋にでも臨時総会を開催することにします。
 そして、「定款変更届出書」の次の項目には、それぞれ次の文言を記入することになります。

「変更年月日」=総会で承認された日
「変更の理由」=「特定非営利活動法人法の改正により、貸借対照表の公告方法を変更したため。


 この届出にあたっては、総会の議事録の謄本1部と、変更後の定款2部を提出することになっているそうです。
 特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉の運営に関わっておられるみなさま、及び会員のみなさまの、これまでと変わらぬご理解とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
 この場をお借りして、活動報告と今後の予定をお知らせしました。

 今回も、市役所内にある京都市文化市民局地域自治推進室市民活動支援担当の部署の方には、丁寧でわかりやすい対応をしていただきました。おかげさまで法律に疎い私にも、今すべきことがよくわかりました。この法人を設立する時から、市役所のこの窓口の担当者の方々は、とにかく親切に接してくださいました。以来、毎年ギリギリになって書類を持ち込み、細かなミスの多い紙面であっても丹念に点検していただき、問題のない報告書にしていただいています。本来なら、○○書士と言われる方々の助けを借りるところかと思われます。しかし、普通の会社とは違い、こうしたことにも経済的な負担が大きいNPO法人の実態をよくご存知ということもあり、こうして懇切丁寧な対応をしていただけるのです。
 今回の公告の方法についても、いただいたプリントには、以下のように気遣いがなされた文章が記されています。法律の文言と実態を、柔軟な姿勢で整合性をとろうとしておられるように思います。

現在、公告の方法については「この法人の公告は、この法人の掲示場に掲示するとともに、官報に掲載して行う。」と定款で定めている法人が多いですが、官報で貸借対照表を公告することは、掲載費用や手続き面で法人の負担が大きいため、定款変更により別の方法を定めることをおすすめしております。


 市役所に足を運ぶたびにこの窓口の職員の方々には、NPO活動を支援して文化の活性化を手助けする、という心意気が感じられます。それが、今回もアドバイスという形で助けられました。ありがたいことです。お堅い市役所の窓口ではなかったことに、感謝しています。
 それに引き替えすぐそばの法務局は、とは言わないでおきます。次の記事が、その最たるものです。
 「法務局のミスで市役所への登記完了届出書が不受理になりました」(2013年02月19日)
 これまでに、法務局の対応ぶりについてはさんざん不平不満を記しているので、ここでは市役所と較べる対象にはしないでおきます。気持ちよく日々を送ることを最優先とします。幸い、今回はこの後に法務局へ出向く必要はなさそうです。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年06月25日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第2回)のお知らせ

 本日、6月25日(火)の京都新聞「まちかど」欄に、次の案内記事が掲載されました。

190625_npo2.jpg

 読む会の会場は、今回も前回同様に登録有形文化財の「紫風庵」です。

 今回は、先月の初回を受けて、まず「三十六歌仙」の和歌を確認します。
 前回は、部屋の左奥にある襖の中央と左側に書かれた「伊勢」「家持」「赤人」の和歌を、字母に注意しながら丹念に読みました。その詳細な報告は、「紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む」(2019年05月25日)を参照願います。

 今回は、その襖の右側と奥から2つ目の襖の左側に書かれている「人丸」「貫之」「躬恒」の3首を、変体仮名に気をつけながら読みます。絵と和歌が2つの襖に跨がって貼られているので、閉めてしまうと2首が見えなくなります。

190625_36-2.jpg

 寛弘6年(1009)頃に藤原公任が選出して結番した『三十六人撰』は、人丸→貫之→躬恒→伊勢→家持→赤人と続くので、この「紫風庵」の襖の貼り方ではその順番がおかしいことになります。作者の配列は、上から下へ、右から左へと流れているので、今回の「人丸」に始まり、前回の「赤人」までの6人分が一塊になっていたものと思われます。しかも、一番右端の襖がその定位置だと思われます。現在の順番とは逆です。

 この江戸時代に描かれた三十六歌仙については、その絵が貼られた襖がある部屋で、しかも間近に見ながら、一文字ずつを解読していきます。「紫風庵」に所蔵されている「三十六歌仙」の詳しいことは、「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)(http://genjiito.sblo.jp/article/185856865.html)をご覧ください。

 1年かけて、この三十六歌仙に取り組む予定です。
 歌仙の歌を確認した後に、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」を読みます。
 ぜひこの機会に、生きた古典と接する得難い体験の場としてください。初心者を意識して、丁寧に変体仮名を読むコツなどを説明します。
 参加を希望される方は、このブログのコメント欄をご利用ください。折り返し、説明の返信を差し上げます。
 なお、この学習会は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催する企画です。小規模ながら、地道に気長に活動を続けています。
 『源氏物語』ともども、「三十六歌仙」という古典文学作品を生で鑑賞し、そこに書かれた文字を忠実に翻字していくことに興味をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 会場である「紫風庵」への道順などは、上記ブログに詳しく掲載していますので、参考になさってください。
 
 
 
posted by genjiito at 23:46| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年06月02日

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の第7回総会の報告

 8年前に産声を挙げた、この特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉は、さまざまな活動を通して貴重な経験を積み重ねて今に至っています。ただし、会員の皆様には、年会費を支払ったことに見合うだけの、十分な成果や手応えのある見返りを、まだお渡しできていません。
 しかし、こうして牛歩であっても、90年をかけて『源氏物語』の本文の整備をすることを目標にして、着実に前を見据えて進んでいることは確かです。駅伝のバトンよろしく、若い世代に文化資源を引き継ぎながら、気長な活動と堅実な成果を継承しています。今しばらくの支援をいただく中で、稔り多い非営利活動を展開していきます。

 今日現在、会員数はちょうど30名です。そのうち、『源氏物語』を研究の中心に据える研究者は1割ほどです。『源氏物語』の写本に書写された文字を、忠実な本文データベースとして構築することの重要性は、研究者にも十分には説明できていないことは、本会の今後の課題でもあります。
 そうであっても、こうした地道に活動を続ける意義をご理解いただき、変わらぬお力添えをいただけていることは幸いです。

 本日の総会は、朝9時半からの開始です。今朝の富士山は少し霞んでいました。

190602_fuji.jpg

 総会の開催場所は、東京駅の近くにある、京橋プラザ区民館です。

190602_plaza1.jpg

190602_plaza2.jpg

 これまでに何度もお世話になった京橋区民館ではなくて、その少し先にある区の施設です。9:30から12:00までを予定し、時間ちょうどに無事終わりました。

190602_plaza3.jpg

 集まったのは、正会員9名と8名の委任状による出席者です。議長、書記、議事録署名人を選出・確認してから始まりました。
 総会資料に記載された通り、議事は順番に進みました。
 事業報告などの中で、適宜以下の資料が参照されました。

・(別紙1)変体仮名翻字版進捗表
・(別紙2)平成30年度活動計算書
・(別紙3)平成30年度財産目録
・(別紙4)平成30年度貸借対照表
・(別紙5)令和元年度活動予算書


 詳細は、本法人のホームページに後日掲載する総会及び活動実績報告をご覧ください。

 本年度、令和元年度の事業計画案のうち、特記すべきことは次の5点です。

(1)文化庁の京都移転を視野に入れて、京都市内に本法人の事務所を開設したいことを明言しました。

(2)そのためにも、関西の理事の補強と正会員の増加につとめたいと思います。

(3)翻訳本を持って全国を巡回し、展示等を通して実際に触って海外における平安文学の受容を実感していただこう、という計画を実行します。これは、伊藤科研で計画されていることの実現に向けて、後方支援するものです。研究と支援活動を、目に見える形で展開していきます。

(4)伊藤科研で発行している電子版『海外平安文学研究ジャーナル』(ISSN番号 2188ー8035)を、科研が終了する2年後に円滑に引き継げるよう、今から準備を始めます。

(5)目が不自由な学生等を対象とした「日比谷図書文化館古文書塾てらこや受講生向け奨学金制度」を設立します。これは、障害者手帳と日比谷図書文化館での翻字者育成講座領収書の提出を受けて、受講料の約6割の1万円を本法人が支給することで、勉学の支援をする制度です。本年度から実施します。内規を適用しながらの運用となります。


 特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉は、多くの夢を抱えて歩むNPO法人です。
 今後ともご支援のほどを、よろしくお願いします。
 
 
 
posted by genjiito at 20:40| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年05月25日

紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む

 大徳寺に近い船岡山の南にある「紫風庵」で、装いも新たに「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」と題して第1回学習会を開催しました。主催は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉です。

 この「紫風庵」と三十六歌仙については、「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)に詳しく書いています。『源氏物語』については、これまで通りハーバード本「須磨」巻を読み進めます。

 今日は最初ということもあり、「紫風庵」を運営なさっている宮本さまに、建物の説明をしていただきました。昭和8年に、当時の所有者がお嬢さまのために建てた家だとのことです。随所に丸みを帯びた造作がなされており、優しさが溢れる和洋折衷の建物です。

 その一階の応接間の三面の襖に、三十六歌仙の絵と和歌を書いた色紙が貼り廻らされています。

190526_fusumae.jpg

 先ずは、歌仙絵に囲まれたこの部屋の使い方について、私の方から提案しました。すべて、襖絵および書を守るためのものです。

(1)カバンなどの荷物はこの部屋には持ち込まず、南の廊下側に出す。
(2)襖の絵と書を見るときは、持参か備え付けのマスクを着ける。
(3)記録のための筆記具は、鉛筆(シャープペンは可)のみとする。
(4)歌仙絵の部屋での飲食は厳禁とし、隣の居間では可能とする。
(5)一木の座卓での筆記などは、表面が傷付かないような配慮をする。
(6)写真は、記録程度なら自由。ただし、Web 公開は広報目的以外は原則不可。
(7)撮影にはフラッシュを使わず、接写には十分な距離を保ちズームで。
(8)襖に貼られた歌仙絵および和歌色紙には、絶対に触らない。
(9)歌仙絵の部屋では、手に何も持たず、小走りにならないようゆっくりと歩く。
(10)懐中電灯による、色彩や輪郭線の確認のための照射は、許可を得てから。


 以上の確認をしてから、早速、襖に貼られた和歌を確認しました。今日は、左端の襖を見ます。

190525_ise-yakamoti-akahito.jpg

 歌仙絵に添えられた和歌は、「変体仮名翻字版」で表記すると次のようになります。散らし書きで和歌が書かれているので、気をつけて仮名文字を追いかけてください。

◎《左上》
   右 伊勢
  見わの山
     い可尓 待三む
       年婦とも
  阿羅し     多つね類人
    登         も
    おもへ者

■三輪の山 いかに待ち見む 年ふとも 尋ぬる人も あらじと思へば
                   (古今和歌集 巻15 恋歌5)


◎《左中》
   左 中納言家持
  春能野尓あさる
   きゝ須の妻恋
         尓
  人 をの可有
   耳    可を
  志れ    
    筒

■春の野に あさる雉の 妻恋ひに 己がありかを 人に知れつつ
                   (万葉集 巻8 1446)


◎《中下》
   右 山部赤人
  和歌能うら尓塩
   三ちくれ八か多お
   多つ鳴    な三
     わ多 あしへ
       流   を
         佐し
           帝

■和歌の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 芦辺をさして 鶴鳴き渡る
                    (万葉集 巻6 919)


 柿本人丸と凡河内躬恒は、その右側の襖と組になる形で貼られているので、次回に詳しくみることにします。

 歌仙絵については、私にはよくわかりません。ただし、持参した架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』のコピー版を見てもらい、この絵が狩野派の絵と構図がよく似ていることを確認しました。このことは、上記の「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)で、具体例をあげて提示したとおりです。

 今日は最初ということもあり、庵内の案内や三十六歌仙の襖絵の確認で、2時間の内のほとんどの時間を費やしました。

 最後の20分は、歌仙絵の部屋から居間に移り、テーブルを囲んでハーバード本「須磨」巻の11丁裏の1行目から本文を字母に注目しながら確認しました。ここで、用意していたお茶とお菓子をいただきました。
 三十六歌仙の和歌に書かれた仮名文字は江戸時代以降のものであり、ハーバード本は鎌倉時代中期に書写されたものです。その文字が持つ雰囲気の違いは明らかです。こんなことを話している内に予定の時間となったので、11丁裏7行目の「心くるし支・こと能・」までで終わりとしました。

 次回は、6月29日(土)の午後2時から、この「紫風庵」で行ないます。
 今日は6人での勉強会でした。
 興味と関心をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 この勉強会が午後4時に終わると、私は大急ぎで東京に行く新幹線に乗るために、早めに退出しました。
 玄関からは、8月に大文字の送り火が焚かれる如意ヶ岳の「大」の字が見えます。

190525_daimonji.jpg

 参会者のみなさま、毎度のことながら慌ただしいことで大変失礼しました。
 
 
 
posted by genjiito at 23:55| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年05月22日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」からのお知らせ

 本日22日(水)の京都新聞「まちかど」欄で、次の紹介記事を掲載していただきました。

190522_sifuan.jpg

 これは、これまで「be京都」で開催してきた「ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」巻を読む会」を継承したものです。
 新たな会場は、平安京の北の基点となった船岡山のすぐ南にある、登録有形文化財に指定されている「紫風庵」に移ります。その「紫風庵」で、引き続きハーバード本「須磨」巻を読むと共に、「紫風庵」所蔵で江戸時代に描かれた三十六歌仙の絵と和歌を読みます。これまで通り、平仮名は変体仮名を再確認しながら、書かれた文字を忠実に読んでいきます。
 江戸時代に描かれた三十六歌仙については、その絵が貼られた襖がある部屋で、しかも間近に見ながら、一文字ずつを解読していきます。「紫風庵」に所蔵されている「三十六歌仙」の詳しいことは、「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)をご覧ください。
 今回は、左端にある次の襖絵を読みます。

190522_hidari1.jpg

 1年かけて、この三十六歌仙に取り組む予定です。ぜひこの機会に、生きた古典と接する得難い体験の場としてください。初心者を意識して、丁寧に変体仮名を読むコツなどを説明します。
 参加を希望される方は、このブログのコメント欄をご利用ください。折り返し、説明の返信を差し上げます。
 なお、この学習会は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催する企画であることは、これまでと同じです。小規模ながら、地道に気長に活動を続けています。
 『源氏物語』ともども、「三十六歌仙」という古典文学作品を生で鑑賞し、そこに書かれた文字を忠実に翻字していくことに興味をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 会場である「紫風庵」への道順などは、上記ブログに詳しく掲載していますので、参考になさってください。
 
 
 
posted by genjiito at 23:53| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年04月27日

[町家 de 源氏](第19・最終回)(字母は「个」か「介」、付:過去の研究会記事一覧)

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催者となって「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で実施してきた[町家 de 源氏物語の写本を読む]は、今回が最終回となります。

190427_be-g.jpg

 来月からは会場を「紫風庵」に移して新たに始まります。
 「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)

 今日は、ハーバード本「須磨」に書写されている変体仮名の内、「个」と「介」の判別をしました。
 その際、対象となる「須磨」における全111例に関して、次の3つの方針で判断しました。
(1)最後の筆が真っ直ぐ下に引かれている場合は「个」
(2)最後の筆が右下方向に滑らかに引かれ、全体的に曲線で構成されている場合は「个」
(3)最後の筆が右側に真横に引かれ、筆が折り返して下に続いている場合は「介」


 例えば、最初に出てくる第1丁表5行目行末の「あ里个れ」と翻字した次の例は、「変体仮名翻字版」で翻字をする場合には「个」ではなくて上記(3)を適用して「介」とすべきであると判断しました。

190427_ke1o5.jpg

 つまり、これは「あ里介れ」とすべきである、というように、111例すべてを「个」か「介」かを1文字ずつ確認していきました。
 続く「个れと」(第3丁表6行目)と翻字した例は、最後の線が右下方向に引かれているものであり上記(2)の場合に該当するとして、多少は迷いながらも一応このまま「个」としました。

190427_ke3o6.jpg

 こうした判断を一例ずつ下していき、結局は上の一例を含んで次の例を加えた合計5例が「个」とすべきではないか、となりました。ただし、これらは最後は筆が折り返しているのでいろいろと迷いながらも、真っ直ぐ下に引こうとしていると判断しました。もっとも、依然として疑問は残りながらも、ですが。

〈第30丁表6行目〉
190427_ke30o6.jpg

〈第36丁表4行目〉
190427_ke36o4.jpg

〈第49丁裏1行目〉
190427_ke49u1.jpg

〈第58丁表2行目〉
190427_ke58o2.jpg

 こうして、「个」とすべき5例をもう一度確認の意味で見直しました。すると、やはりこれは真横に線が引かれていないものの、最後に筆が折り返しているので、上記基準の(3)になるのではないか、ということに意見が集約されてきました。そして、この5例も最終的には「介」とすることになりました
 つまり、ハーバード本「須磨」には「个」は一例もない、ということを今日の結論としました。
 そして、上記基準の「(2)最後の筆が右下方向に滑らかに引かれ、全体的に曲線で構成されている場合は「个」」は考慮しないことになりました。つまり、今後は次の2つの基準で「个」か「介」かを判断しようということです。

(A)最後の筆が真っ直ぐ下に引かれている場合は「个」
(B)最後の筆が右横方向に引かれ、筆が折り返して下に続いている場合は「介」


 今後は、鎌倉期に書写された写本で(A)に該当する用例を探すことになりました。
 この例をご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけると幸いです。

 写本に書かれた変体仮名の確認は、11丁表最終行の「可ゝる人/\も・えしも・」までを見ました。

 以下に、これまで京都の「ワックジャパン(WAK JAPAN)」と「be京都」で開催してきた勉強会の記事を一覧にします。2013年4月6日から今まで、どのような学習会をし、どのような問題点を検討してきたのかを確認するのに便利なリストかと思います。折々に確認の意味でご覧いただければと思います。

--------------------------------------

【会場:「be京都」編】


『源氏物語「須磨」』の変体仮名を読む研究会



「[町家 de 源氏](第18回)(「か」と「ま」の字形)」(2019年03月23日)

「[町家 de 源氏](第17回)(変体仮名「寿・春・須」の使い分け)」(2019年02月23日)

「[町家 de 源氏](第16回)(現行平仮名が1文字に選定された経緯は?)」(2019年01月20日)

「[町家 de 源氏](第15回)(書写者が途中で変わること)」(2018年12月22日)

「[町家 de 源氏](第14回)(補入となぞりの確認)」(2018年11月25日)

「[町家 de 源氏](第13回)(変体仮名「う」と「こ」の字形)」(2018年10月14日)

「[町家 de 源氏](第12回)(変体仮名「可・尓・多」が圧倒的に多い)」(2018年09月22日)

「[町家 de 源氏](第11回)(石田版新糸罫と中国版糸罫)」(2018年07月28日)

「地震の後に第10回[町家 de 源氏物語の写本を読む]」(2018年06月19日)

「[町家 de 源氏](第9回)(【画像変更】糸罫が動いた結果)」(2018年05月26日)

「[町家 de 源氏物語の写本を読む](第8回)(糸罫の試作品完成)」(2018年04月21日)

「[町家 de 源氏物語の写本を読む](第7回)の報告(体験参加者と共に)」(2018年03月31日)

「[町家 de 源氏物語の写本を読む](第6回)の報告(重ね書きの問題点)」(2018年02月24日)

「[町家 de 源氏物語の写本を読む](第5回)の報告(ナゾリの問題点)」(2018年01月28日)

「[町家 de 源氏物語の写本を読む](第4回)の報告(虫損と誤読)」(2017年12月16日)

「[町家 de 源氏物語の写本を読む](第3回)の報告」(2017年11月25日)

「[町家 de 源氏の写本を読む](第2回)の報告」(2017年10月28日)

「[町家 de 源氏の写本を読む](第1回)の報告」(2017年08月26日)

「[町家 de 源氏の写本を読む](第0回)の報告」(2017年07月29日)

「[町家 de 源氏の写本を読む]を再開します」(2017年06月22日)

--------------------------------------

【会場:ワックジャパン(WAK JAPAN)編】


(1)『十帖源氏』の現代語訳をする研究会



「京都でハーバード本「蜻蛉」と『十帖源氏』を読む(第20回)」(2015年06月21日)
※ここまでで『十帖源氏』「明石」巻の現代語訳は終了

「京町家ワックジャパンで『十帖源氏 明石』を読む」(2015年05月18日)

「京洛逍遥(350)京都で『源氏物語』を読んだ後に御所の一般公開へ」(2015年04月04日)

「京洛逍遥(346)京都のワックジャパンで『源氏物語』を読む」(2015年03月14日)

「京都で『十帖源氏』を読む「明石_その6」」(2014年09月08日)

「京都で『十帖源氏』を読む「明石_その5」」(2014年07月22日)

「京都で『十帖源氏』を読む「明石_その4」」(2014年06月22日)

「京都で『十帖源氏』を読む「明石_その3」」(2014年05月21日)

「京都で『十帖源氏』を読む「明石_その2」」(2014年04月13日)

「京都で『十帖源氏』を読む「須磨_その11・明石_その1」」(2014年03月02日)

「京都で『十帖源氏』を読む「須磨_その10」」(2014年01月21日)

「京都で『十帖源氏』を読む「須磨_その9」」(2013年12月16日)

「京都で『十帖源氏』を読む「須磨_その8」」(2013年11月10日)

「京都で『十帖源氏』を読む「須磨_その7」」(2013年10月06日)

「京都で『十帖源氏』を読む「須磨_その6」」(2013年09月22日)

「京都で『十帖源氏』を読む(第5回)」(2013年08月11日)

「京都で『十帖源氏』を読む(第4回)」(2013年07月14日)

「京都で『十帖源氏』を読む(第3回)」(2013年06月16日)

「京都で『十帖源氏』を読む(第2回)」(2013年05月11日)

「京都で『十帖源氏』を読む会がスタートしました」(2013年04月06日)

--------------------------------------

(2)京都で『源氏物語「蜻蛉」』の変体仮名を読む研究会



「京都で「蜻蛉」(第22回)/傍記混入の確証」(2015年09月12日)

「京都でハーバード本「蜻蛉」を読む(第21回)」(2015年07月12日)

「京都でハーバード本「蜻蛉」と『十帖源氏』を読む(第20回)」(2015年06月21日)

「京町家ワックジャパンで『源氏物語』を読む(第19回)」(2015年05月17日)

※(第18回)は「『十帖源氏』の現代語訳をする研究会」のみで写本の研究会は延期

「京洛逍遥(346)京都のワックジャパンで『源氏物語』を読む」(2015年03月14日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第16回)」(2015年02月28日)

「「変体仮名混合版」を後押しする手厳しくもありがたい批判(第15回)」(2015年01月17日)

「京都で「蜻蛉」を読んだ(第14回)後に流通前の古典籍を見る」(2014年10月04日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第13回)」(2014年09月06日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第12回)」(2014年07月19日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第11回)」(2014年06月21日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第10回)+追記」(2014年05月17日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第9回)」(2014年04月12日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第8回)」(2014年03月01日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第7回)」(2014年01月18日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第6回)」(2013年12月14日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第5回)」(2013年11月09日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第4回)」(2013年10月05日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第3回)」(2013年09月21日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第2回)」(2013年08月10日)

「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(初回)」(2013年07月13日)

 
 
 
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年04月23日

第19回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 今週末、4月27日(土)の午後2時から4時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で19回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。これは、特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉が主催して取り組んでいるものです。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 本日23日(火)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、この勉強会を呼びかける記事が掲載されましたので、あらためて本ブログでも紹介します。

190423_be-G.jpg

 今回は、上記テキストの10丁裏7行目の「佐らぬ・人八・とふらひ尓」から読みます。

 前回の内容については、「[町家 de 源氏](第18回)(「か」と「ま」の字形)」(2019年03月23日)をご覧ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内を差し上げます。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円で、2回目以降は二千円(学生は千円)です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の正会員には割り引き特典があります。

 次回の第20回は、5月25日(土)の午後2時から、場所をあらためて「紫風庵」で行なうことを決めています。
 「紫風庵」については、「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)で詳細に紹介しています。
 その第1回では、会場である「紫風庵」の襖絵に変体仮名で書かれた和歌を読むことを中心とします。
 そして、後半で、上記ハーバード本「須磨」を読みます。

 興味と関心をお持ちの方は、資料の用意がありますので、本ブログのコメント欄を通して、参加希望の連絡をお願いします。
 近在のみならず遠方からの方や、旅の途中で立ち寄っていただいても構いません。

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉としては、来月からは新しい活動の拠点で心機一転のスターとなります。
 今後の活動を楽しみにしていただけると幸いです。
 
 
 
posted by genjiito at 20:52| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年04月06日

体験講座でお話をした後はゴジラに挨拶

 肌寒かった昨日が一転して快晴の今日となり、もうコートはいりません。朝早くから、日比谷図書文化館での『源氏物語』の講座に急ぎます。
 新幹線の車中では、京都駅の構内で手に入れた、柿の葉寿司ならぬ桜の葉で包んだ「吉野 桜寿司」をいただきました。

190406_susi.jpg

 まさに旬の春を口にして香を楽しみながら、本を読み出しました。今、『万葉仮名と平仮名 その連続・不連続』(内田賢徳・乾善彦、三省堂、2019年3月30日)を読み進めています。しかし、やはり新幹線の揺れは酷いので、すぐに目が痛くなります。
 富士山はあまりにも富士山だったので、今日は写真を省略します。

 少し早めに東京に着きました。
日比谷公園は、桜がほとんど見当たりません。鶴の噴水の周りで見つけました。

190406_turu.jpg

 日比谷図書文化館の地下にあるラウンジで、Aさんと1時間ほど科研に関する打ち合わせをしました。おおよそ、次の事を話し合いました。関係者向けの報告を兼ねて、要点をまとめておきます。

(1)報告書作成の計画

『海外平安文学研究ジャーナル』
 →「ミャンマー編」と「ルーマニア編」を作成。
 分量が少なくても、実績として発行する。
→2017年度と2018年度の分を合冊にして夏までに出す。
→2019年度を出す。
→海外の先生方や研究者に、原稿を募集、依頼する。

(2)報告書『平安文学翻訳本集成〈2018〉』の「翻訳史年表」の不備

・『平安文学翻訳本集成《2018》』
 155ページの1999年の『枕草子』は「1989年」が正しい。
 ホームページで公開している年表では、正しいものになっている。

 ※課題1:何かの手違いがあったようで、冊子版の「翻訳史年表」のデータは数世代古い3年前のものをベースにして作成されたことが判明。
 科研のホームページ「海外へいあんぶんがく情報」から公開しているネット上の情報は、最新の正確なもの。

 ※課題2:この他、公開している内容と『平安文学翻訳本集成〈2018〉』とで異なる所が多い。
 今後とも、きめ細かなチェックをすること。

 ※課題3:全訳か抄訳について。
 判明している場合は備考欄に入れること。
 『源氏物語』は入れている事が多い。

(3)ホームページ「海外へいあんぶんがく情報」の修補

・手直しが必要な箇所が多いので、早急に対処する


 今日の日比谷図書文化館での『源氏物語』の講座は体験講座です。

190406_keiji1.jpg



190406_keiji2.jpg

 どんな内容のものかを試しに参加して、受講するかどうかの判断材料にしていただくものです。
 以下のことをお話ししました。

・自己紹介
・NPO法人〈源氏物語電子資料館〉と本講座の関係
 (NPOリーフレット配布)
・講座の内容
・自由参加の課外講座があること
・鎌倉時代の『源氏物語』の本文と大島本との性格の違い
・言語統制された結果としての五十音図は明治33年から
・平仮名と片仮名の字母のこと
・変体仮名の説明
・ユニコード(UTF8)に採択された変体仮名
・『千年のかがやき』の説明
・国文研蔵「若紫」の解説
・第1丁表をカラー版で見る
・「変体仮名翻字版」のこと
・「変体がな一覧」を確認
・箸袋に書かれた「おて茂登」
・世界中で読まれている『源氏物語』のこと
・目が見えなくても写本は読める

■資料の回覧
・この講座で使用するテキスト
 (『国文学研究資料館蔵 橋本本『源氏物語』「若紫」』(伊藤鉄也・淺川槙子編、新典社、2016.10))
・『変体仮名触読字典』と『変体仮名触読例文集』
・古写本の触読用シート3種類
 /立体コピー(若紫・蜻蛉・『百人一首』)


 2時間の講座では、もっと盛りだくさんの話をしました。おおよそこんな内容でした、ということで。

 一通り終わってからは、いろいろな質問を受けました。6名ほどの方からだったかと思います。お答えするうちに、またお話をすることとなりました。興味を持っていただけたらいいので、お一人ずつの問いかけには、丁寧にお答えしました。

 終了後、昨年度は大学で勉強をし直すために講座をお休みだったSさんが、来月から復帰なさるということでお越しになりました。いろいろと報告をうかがった後、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の会員となり、写本の翻字もやってみたいとのことでした。この講座は、「翻字者育成講座」と銘打っているだけに、このお気持ちはありがたいことです。いろいろなお話をして、とにかく来月から、ということになりました。この講座の本旨が少しずつ理解していただけているようなので、嬉しく思います。
 私自身、忙しさにかまけて、翻字の依頼やら回収とその整理が疎かになっています。今年度は、この点もさらなる進展を図れるように、着実に前を見て進んでいこうと決意しています。
 来月からは、これまでに翻字をします、とおっしゃってくださっている方々に、次の資料をお渡しすることで、この90年をかけての一大事業を一歩ずつ展開していくことにします。

 帰る途中で、有楽町駅前のゴジラに「これからも気長によろしく」と声をかけました。

190406_gozira.jpg

 「Yahoo!知恵袋」のベストアンサーとなっている「ギャーンゴーン グワワァン」とは鳴いてくれませんでした。コントラバスの音で「???」と鳴いたような、いや、返事はなかったような……
 このゴジラの前に佇むと、しばらく時間を忘れます。
 
 
 
posted by genjiito at 22:49| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年04月05日

久し振りのワックジャパンで貴重なお話をうかがう

 京都でNPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催する『源氏物語』を読む会が始まったのは、今からちょうど6年前の2013年4月6日でした。「京都で『十帖源氏』を読む会がスタートしました」(2013年04月06日)に、その第1回の様子を詳しく書いています。会場は、ワックジャパン(WAK JAPAN)でした。そのワックジャパンへ、久し振りに行ってきました。

190406_wak.jpg

 代表の小川さんと、さまざまな話題でたっぷりとお話ができ、いつもながら多くの知的な刺激をいただきました。小川さんは、伝統的な京町家を舞台にして、質の高い文化体験のサービスを展開しておられます。単なる体験ではなく、そのレベルの高さは特筆すべきものがあります。

 御所南にある「京町家わくわく館」は、最近さらに後ろに延びて、事業の規模がますます大きくなっていることを実感できます。新しく造られた大部屋の「文陽庵」や、着物体験の「芙蓉の間」を案内していただきました。すばらしい日本文化の体験ゾーンとなっています。

 一方、東山には「京都和心館」があります。京都国立博物館と三十三間堂のすぐ近くなので、行きやすい場所です。

 そのワックジャパンのメニューの中に、「国際交流プログラム」があることを、今日はじめて知りました。
 1997年5月の設立当初よりあったとのことです。私は、海外の方々が異文化を体験される場としての視点でしか、ここを理解していなかったのです。日本の若い方々にも、この「国際交流プログラム」は、新しいものの見方をイキイキと体得させてくれることでしょう。詳しくは、「ワックジャパン教育プログラムパンフレット.pdf」をダウンロードして、その内容を確認してみてください。
 今日は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が実施している『源氏物語』を古写本で読む講座について、小川さんから貴重なアドバイスと情報をいただきました。これまで以上に、質の高い社会人講座として広く知られるように、さまざまな工夫をしていきたいと思います。今年度から、運営方針を見直し、新たな環境で取り組むつもりです。プランがまとまり次第、この場と「NPO法人のホームページ」でお知らせします。
 
 
 
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年03月30日

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の打ち合わせ会

 5月の初旬に予定しているNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の総会のために、事前の打ち合わせ会を持ちました。
 すっきりとしない天気もあり、いつも楽しみにしている富士山は雲間にかすかな姿を見せていました。

190330_fuji.jpg

 今日の参会者は、本法人の運営に関わっている者で都合のついた6人。場所は、いつものように東京駅にほど近い、京橋区民館です。

190330_kuminkan1.jpg

190330_kuminkan2.jpg

190330_kuminkan3.jpg

 あらかじめ用意していただいた資料を元にして、今年度の活動内容や会計の確認をしました。
 新しく、いくつかの活動についても確認しました。おおよそ、以下のことが話題となり、確認、了承、今後への保留を討議し、5月の総会に向けて準備を進めることとなりました。

■一日も早く京都市内にNPO法人の事務所を開設(物色中)
■文化庁の京都移転と連動したNPO活動(活動実績の蓄積)
■関西の運営関係者を補強し実働部隊を確保(理事等の増員)
■京都文学散策の今後の運営(参加費の事前振込に切り替え)
■日比谷図書文化館での翻字者育成講座の今後(講座の増設)
■視覚障害者の支援と奨学金制度の創設(日比谷図書文化館)
■海外の研究者を対象にした平安文学の電子ジャーナルを創刊
■平安文学に関する資料や翻訳本を持って全国巡回(共催等)
■ホームページの更新頻度を上げて幅広く活動内容を広報宣伝
■すべての活動の基盤となる収益事業の見直しと新たな対応策

 とにかく、夢と現実が錯綜する、いつもの打ち合わせ会でした。
 この両極端の意見がしのぎを削る場となっているうちは、この組織は安泰でしょう。
 創業者でもある私は、夢語りをするのが役割だと自認しています。
 これで前に進んでいくのですから、いい仲間たちが集っている証しだと言えます。
 会員のみなさまと共に、定款に定めた目標に向かい、さらなる活動を展開していきたいと思っています。
 変わらぬご支援のほどを、よろしくお願いします。
 
 
 
posted by genjiito at 20:08| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年03月23日

[町家 de 源氏](第18回)(「か」と「ま」の字形)

 「be京都」でのハーバード本『源氏物語 須磨』を変体仮名だけに着目して読む勉強会は、今日で18回目です。
 勉強している和室の広間はもう春の雰囲気です。

190323_be-kyoto.jpg

 まず、ルーマニアで入手した本を見てもらいました。『源氏物語』2冊、『落窪物語』、『枕草子』です。また、ビルマ語訳『源氏物語』の既刊分6冊を合本にした本も回覧しました。書物の修復などをなさっている方がお二方いらっしゃるので、それぞれの本の装訂や挿し絵などに興味を示しておられました。

 写本は、9丁裏3行目末尾の「思・給」から読みました。
 その前に、この「須磨」に出て来る変体仮名の「志・新・支」に関する出現箇所の資料を配りました。これは、今後の参考にするためであり、前回のようにここでは紹介しません。
 読み出してすぐに「か(加)」で留まりました。どうしても、今の「か」とは字形が異なるものだったからです。

190323_ka.jpg

 どう見ても、「カ」の右に「口」がある「加」を字母とする「か」だとは思えません。結論はでないものの、一応「か」としておくことにしました。今後とも、こうした現行の字体と異なる文字には注意しながら進んで行きたいと思います。

 また、「ま(末)」でも、その字形に疑問が出てきました。

190323_ma.jpg

 これは、どう見ても字母が「末」の「ま」だとは思えません。
その3行手前に、次のように「まして」の「ま」があります。今は、これと同じ文字としておきます。

190323_ma2.jpg

 仮名文字はいろいろな形で書かれる、という緩い判断をもって臨むことにしています。書写者が書こうとした字形とは、結果的には違った字形で書き進められることも想定して確認を進めています。
 いろいろとこだわって読みました。しかし、今日はそんなに揉める例はなかったこともあり、2頁半も進み、10丁裏7行目の「可遣もなし」まで確認を終えました。

次回は、第19回、4月27日(土)の14時〜16時までです。

 自由に参加していただける会です。
 この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げています。
 
 
 
posted by genjiito at 20:28| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年03月19日

第18回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 今週末、3月23日(土)の午後2時から4時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で18回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。これは、特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉が主催者として取り組んでいるものです。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 本日19日(火)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、この勉強会を呼びかける記事が掲載されましたので、あらためて本ブログでも紹介します。

190319_be-kyoto.jpg
 今回は、上記テキストの9丁裏3行目末尾の「思・給」から読みます。

 前回の内容については、「[町家 de 源氏](第17回)(変体仮名「寿・春・須」の使い分け)」(2019年02月23日)をご覧ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内を差し上げます。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円で、2回目以降は二千円(学生は千円)です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の正会員には割り引き特典があります。

 次回は、第19回、4月27日(土)の14時〜16時までです。

 自由に参加していただける会です。
 この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げています。
 
 
 
posted by genjiito at 21:00| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年03月16日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(その10、2つの提案を受けて)

 まず、先週出来たばかりの『平安文学翻訳本集成〈2018〉』を全員に配布し、内容を確認しました。さらに、先週行っていたルーマニアで入手した、2冊のルーマニア語訳『源氏物語』を回覧しました。また、ルーマニアで日本文学の研究がなされている具体例として、昨年刊行された研究書も回覧しました。世界中で『源氏物語』をはじめとする多くの作品が読まれていることを、実感してもらったのです。
この講座は、『源氏物語』の写本を読むことが中心です。しかし、こうして世界中で日本文学が読まれていることを知ることで、日本文化の普遍性に気付いていただければ、との思いでさまざまなアプローチをしています。

 さて、橋本本『源氏物語』は、38丁表の最終行「いと・く累しく・れい」から読みました。「尓も」や「越そろしく」で、文字の判別が難しいものがいくつかあるものの、比較的問題のない文章が続く丁だったので、どんどん進んでしまいました。みなさまからは、「こんなに進むのは初めてだ」と言われたほどです。
実際には、41丁表の最終まで読んだので、6頁も進んだことになります。確かに、私の講座では驚異的なスピードです。それだけ、説明する場所がなかったということでもあります。
 この範囲の内容は、藤壺が懐妊し、王命婦、光源氏、桐壺帝のそれぞれの思いを語るところです。非常におもしろい場面です。しかし、私の講座では「藤壺」の「ふ」の字も触れません。ひたすら書写されている墨字だけを追うのです。一風変わった講座だと言われるゆえんです。

 日比谷図書文化館での講座が終わってからは、有志で有楽町に出かけて自主講座をしています。しかし、今日は有楽町ではなくて新橋方面に出向き、レストランで食事をしながら、橋本本「若紫」の現代語訳に挑戦する課外講座となりました。全盲の尾崎さんも、久しぶりに参加です。実は、今日は私がドンドン読み進めたので、尾崎さんに渡していた立体コピーがないところまで行ってしまったのです。2頁分は、手元に資料がない状態で彼女は参加していたのです。申し訳ないことをしました。次回は、大量に資料を渡すつもりです。
 今日の集まりでは、大島本などで、若紫が「十ばかりやあらんとみえて」とある箇所における本文の異同に注目しました。現行の『源氏物語』でこの言葉が書かれている場所は、橋本本にはその言葉が書かれていないのです。橋本本では、その後に大島本などが「あまたみえつる子どもににるべうもあらず」とするところで、「十はかりにや〜」とあります。
 つまり、大島本などの写本に書かれている「あまたみえつる〜」という言葉が、橋本本にはないのです。文字数にして19文字です。写本で言えば、ちょうど1行分です。
 そこで、この1行分の文字列は、平安時代の写本にあったのかどうかで議論となりました。11名の参加者が、思い思いの考えを述べて、楽しい時間が過ぎて行きました。結論としては、平安時代の写本は、橋本本のようにこの1行分の文字列はなかったのではないか、ということになりました。大島本に代表される〈いわゆる青表紙本〉は、後に書き加えられたものである可能性が高い、ということです。その検討には、河内本と言われている本がこぞって橋本本と同じであることも、判断に影響しています。こうして、少しずつでも本文の違いを見ていくと、その積み重ねで『源氏物語』のさまざまな写本の実態がわかっていくのではないか、という夢語りにまで発展しました。
 まったくの素人集団の議論です。学問的にはともかく、こうして『源氏物語』の本文について意見を闘わせるひと時を、みなさんと持つことになりました。

 なお、その過程で、現在の講座に参加している方々は翻字がしたいと思っている、とおっしゃるのです。次回からは、受講者に課題として3頁くらいの翻字をしてもらったらどうだろう、という提案がありました。私は、その流れは遠慮していました。しかし、そのような求めがあるならば、一度やってみようかと思うようになりました。
 次回までの宿題をもらいました。これも、みなさんと親しく写本が読めるようになったからだと思います。

 さらには、写本だけを読む講座と、その物語の内容を異文と較べながら読む講座の、2つの講座を午前と午後にやってもらえないか、という提案も受けました。
この日比谷図書文化館の「古文書塾 てらこや」は、江戸時代の文書を読むのがメインの社会人講座です。そこに、平安時代の仮名文字を読むのはともかく、その内容を読み取る内容の講座の新設が認められるのかどうか。そうであるならば、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が山本氏から寄贈を受けた江戸時代初期の版本の『絵入源氏物語』の本文を配布し、橋本本と読み比べていく内容であれば、「てらこや」の趣旨にも合致することになります。
 とにかく、ご要望は貴重な意見として受け取り、いつかあらためて主催者にお尋ねしてみてもいいかな、と思うようになりました。本講座はもとより、課外の自主講座でもみなさまの熱意が毎回伝わってくるので、検討に値すると思います。私にとっては、1日で終わることなら、そんなに負担が重くなるものでもないので、前向きに対処を考えるつもりです。
 
 
 
posted by genjiito at 23:52| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年02月23日

[町家 de 源氏](第17回)(変体仮名「寿・春・須」の使い分け)

 「be京都」でのハーバード本『源氏物語 須磨』を変体仮名だけに着目して読む勉強会は、今日で17回目です。

190223_matiya.jpg

 勉強している和室の広間は、もう雛祭りの雰囲気です。

190223_toko.jpg

 9丁裏2行目末尾の「き古えさせま本しき」から読みました。しかし、ここに出てきた変体仮名の「寿・春・須」にこだわったために、結果的には次の行の「可寿/\」までの、1行しか本文の確認はできませんでした。
 以下、今日問題とした「寿・春・須」についての資料を提示して、これからの研究者のための情報提供とします。こうした資料をもとにして、さまざまな意見が交わされようになることを願っています。

 今日の参加者の間で話題にしたことは、以下のような点でした。いずれも、現在の五十音の「す(寸)」については検討していません。まずは変体仮名の傾向を見てから、と思っています。

 ・「寿」は写本の行頭に書写されているのに、「春」と「須」は行頭にはない。
 ・「寿」は語頭に来るのに、「春」と「須」は語頭には来ない。
 ・「須」は打ち消しの「ず」として使われる比率が高い。
 ・「須磨」の文字表記は、「寿満」3例、「春満」1例、「春ま」1例
 ・「娘」の文字表記は、「む須免」3例、「む寿免」1例

 これは、じっくり取り組むと、おもしろい仮名文字の使われ方が見えてきそうです。
 当面は、素人集団ながらもこうした変体仮名を読む勉強会で気付いたことを報告し、これからの若い方々が調査し研究対象としてもらえると幸いです。

 こうした視点から、鎌倉時代の写本における文字がどのような変体仮名の組み合わせで書写されているかがわかりそうです。ウインドウズ専用とはいえ、日本語ワープロの「一太郎 2019」では、変体仮名が扱えるようになりました。自由に変体仮名が文書作成に使えるのはいいとして、その仮名文字の使われ方の法則なりルールを確認しておかないと、せっかく国際的に認められたユニコードの変体仮名が無秩序に氾濫し、日本語の表記が節操なく拡散します。1日も早く、変体仮名の組み合わせのルールを確認したいものです。
 翻字が遅々として捗っていないので、少しでも多くの鎌倉時代の写本の文字資料を提供しなくてはいけません。NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の仕事は重要です。

 なお、こうした変体仮名の字母に関する問題について言及した実証的な論稿などをご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけると助かります。

■ 公開資料「寿・春・須」 ■


 次の資料は、鎌倉時代中期に書写されたハーバード本の1行分の翻字を列記したものです。その冒頭部分にある4桁の数字は、手元のデータファイルの行数です。これは公開していないので、ハーバード大学蔵本におけるおおよその行数を示すものとして、その位置を推測する参考としてください。『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』は、10行書きの写本です。
 なお、写本の画像は、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、185頁、2013(平成25)年)を、その正確な翻字である「変体仮名翻字版」は、『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』(伊藤鉄也・阿部江美子・淺川槙子 編著、新典社、2015年10月)の巻末資料を参照してください。

■ 「寿」の例 ■


『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』の「寿」

0009:と・いまは・いと・佐と者那れ・【心】寿こくて・あ
0019:るなへての・よ越も・いま八と・寿三八那れな
0024:ても・【又】・あひ三ん・【事】を・可那ら寿と・(1ウ)」
0039:徒まなるへきをなと・おも本し可へ寿
0092:ら寿・くら井を・可へし・堂てまつ里て・
0134:【侍】を・ゝさ那く・ものし・【給】可・かく・よ八ひ・寿(6ウ)」
0153:佐ま越・ひとしれ寿みし里【給】て・あ八れと・
0154:おも本寿・【人】/\・しつま里ぬる・【程】尓・とりわ
0160:やう/\さ可里・寿きて・わつ可なる・こ可个
0161:の・いと・しろき・尓わ尓・う寿く・ゝら可りて・
0193:古えさせま本しき・ことも/こ&こ・か寿/\・【思】・【給】
0229:免あ可し・【給】个れ者・寿のこなと尓・わ可
0231:いそき・をき佐者きて・との井寿可多とも・いと
0235:あ里八て寿や・ゆきちらんなと・さしも
0272:【月日】の・可个越も・み寿・【身】越・やすら
0296:「【身】八・可くて・さ寿らへぬとも・【君】可・あ多
0318:この・【御】可个尓・可くれて・寿くし・【給】へる
0330:のひや可尓・いり・【給】へ八・寿こし・井さりいてゝ・
0424:きこゑ・【給】八す・な里ぬ・[11]あ寿とての・くれ尓八・
0428:寿の・万へ尓・おまし・満いりて・【御身】つ可ら・き
0533:へら寿那ん・【御】万へ尓八・个いし・【侍】里ぬ・【心】
0568:寿てゝ・とふらひ・まひらせんも/ひ〈判読〉・な尓の・可ひ
0576:寿可多・い堂う・や徒し・堂まひて・【月】・
0580:えんと・寿らむ・【一二日】・堂満さ可尓・へ多
0582:するものをとて・み寿・まきあ个て・八
0615:まふても・うらやましくもと・うち寿
0623:「ふる佐と越・三ねの・可寿三八・へ堂つれと・
0650:い可て・とし【月】を・すくさむと・寿らむ登・
0662:寿満の・うら【人】・し本多るゝ・ころ・い徒登・(30ウ)」
0679:者寿・つき勢ぬ・まゝに・お本しこかるれ八・
0683:新・【給】遍り・【御】こと・ぬ支寿て・堂まへ累・
0691:【又】・もとの・【事】く堂ひら可尓・おほ寿・さ満
0699:そひ多らん・【心】ち・寿れと/八&と・可ひなし・いていり・
0708:八りな里/へり=こと〈丁末左〉・【中】/\・ひ多寿らよ尓・なくなり
0717:佐尓・寿こしの・な佐遣あるけしきをも・(33オ)」
0722:寿くし・すく/\しう・もてなし・【給】ひ
0733:しいてさらむ・【御返】も・寿こし・
0781:さ寿る尓も・徒三・ふ可き・【身】の三こそ・【又】き
0784:もし本・多るてふ・寿満の・うら尓て・よろつ・
0792:者可りを・まきつゝ个て・寿み徒きなと・三
0801:【給】て・きこしめ寿・王可や可尓・遣しきめる/き±者・
0814:い徒まて・寿満のうら尓・な可めん・きこゑ
0856:寿る可那なと・の堂満者勢て・【院】の・おほし・
0890:寿こし・可きならし【給】へる可・王れな可ら・
0923:いて・【給】て・堂ゝ寿み・堂満ふ・さ万の・
0947:「【心】可ら・とこよ越・寿てゝ・なく・可りを・【雲】
0969:本・いり・多満者寿
0978:ひぬ・まこと尓・【御】そは・【御身】・者那多寿・おい・
0988:【心】・と満る尓・【大将】・可くて・お者寿と・き
1140:寿免れと・ひ可免る・【心】は・さら尓も・【思】八て
1146:堂まふなれ・あこの・【御】寿く勢
1183:れと・え・おほし寿てしなと・いひ井堂
1240:しなし堂る・いと・を可し・【念】寿の・くと
1256:あ寿可【井】・すこし・う多ひて・【月】こ
1263:寿へくも・あらね八・【中】/\尓・可多八し
1264:も・え・まね者寿・よもす可ら・満とろまて・


■ 「春」の例 ■


『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』の「春」

0007:こともやと・おほしな里て・可の・ま八・
0238:尓し可八なん・れいの・おもはなる・佐
0429:こゑ・【給】ふ・【春宮】・【御事】を・い三しく・志ろ
0514:「いつ可・【又】・【春】の・【宮】この・【花】を・三ん・と
0521:けいれ八・志八し・三ぬ多尓・いとくるし
0537:「さきて・とく・ちる八/る=類・う个れと・ゆく・【春】
0589:よ尓・王可れな八・い可なる・うらに・さらへ・
0620:尓・こし・可多の・【山】者・可みはる可尓て・
0709:なん八・いふ可ひなくて・やう/\・王れくさ・
0710:おひや・ら無・きく・本とは・ち可遣れと・
0712:おほ尓・徒き勢すの三なん・[19]【入道】の【宮】
0713:尓も・【春宮】の・【御事】尓よ里・おほしな个く・
0727:可多尓は・ま可せ須・可つ者・免やくも・
0878:をしく・おほし堂る・【事】・おほ可里・[23]満尓八・
0938:八らひ・【給】へる・【御】てつきの・くろき・ゝ尓・
0989:く尓・あいなく・すい多る・む免とも八・ふね
1040:ま徒る・【入道宮】八・【春宮】の・【御】こと越・ゆゝし
1087:ま・うしろの・【山】尓・志はと・いふ・もの・
1088:ふふるなり个り・めつら可尓て・
1190:な尓の可とん・おほさし・本と尓・徒
1210:満免きて・【我】可・つくれる・【句】を・
1246:【御】らん・うらに・とし・ふらん・さ満なと・ゝ
1268:ゑひの・可那しみ・な三多・そゝく・【春】の・
1275:「ふるさと越・いつれの・【春】可・ゆきて・
1341:そらなり・う三の・おもて八・ふ満を・ひ
1350:【神】・な越・やま・なり三ちて・あ
1365:や三て/三&三・【君】も・いさゝ可・ね・【給】へれ八・



■ 「須」の例 ■


『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』の「須」

0005:き・ことの三・ま佐れ八・せ免て・志ら
0065:王佐となら・うちしのひ・【給】し尓も・
0084:ひさし支・【程】尓・王れぬこそ・あ八れなれ
0088:る・【程】・【何】と・八んへらともまい里きて・む可
0125:【君】も・え・【心】つよくも・ゝてなし・堂ま八
0129:い三しう・【思】・【給】へ・王るゝ・お里・那くの三・いま尓・
0140:てしも・可ゝる・つ三尓は・あ多ら・【侍】里け
0192:こゑ尓て・あけ尓あさ可ら/前あ$、△&け・【思】へ里・き
0194:へな可ら・む本をれ・【侍】・本とも・越し者可ら
0210:そへて・あはれ・徒きせ・いて・【給】ぬる・那こ
0240:者へる・【程】多尓・【御】免・可れせと・【思】を・可ゝ
0253:て・をと徒れも・きこゑ・堂満八・【御】とふ
0264:て・きこえ・【給】者・ま多・ゝのもし支・
0326:堂満者やと・うちくして・おも本し
0331:や可て【月】を・みつゝ・を八・【又】・こゝ尓て・【御物】
0354:【心】越・くら・ものな里遣れなとの(16ウ)」
0371:尓くし・【給】者・いと・可累ら可にあ
0413:れ八・こまか尓は・きこゑ・【給】八・【女】・い
0439:に・あ多里・者へるも・【思】・【給】へ・あ者ることの・ひと
0448:きせ・なま免き【給】へ里・【御山】尓・まいり・
0450:三尓・【物】も・え・きこゑ・【給】八・いみしく・多免
0469:三やしろを・かれと・み王多・本と・ふと
0519:を新満【御返】八/を+八、八し&新・い可ゝ・ものし・者へらむと・(24オ)」
0547:るは・多可き・三し可きとも・伊者・志里越よ
0561:しも・者多・いふ【可】尓も・あら・おもひ志
0644:志徒ま里・【給】・【心】・うつゝなら・くにの・可三も・
0648:堂満ひあ者へき・【人】し・まいらね八・
0659:かきも・や里・多満者・くらされ・堂満
0670:「こ里まの・うら能・三る免も・ゆ可志支
0727:可多尓は・ま可せ・可つ者・免や春くも・
0759:と・おも本・【又】・うち【返】し・なそや・かく・うき・
0765:こな井を・して・を者・【大殿】の・わ可き三
0794:とふし・うしと・【思】し・【心】あやま里尓・【又】・三や
0817:う尓・いつこ尓も・おほつ可な可ら・きこゑ・【給】・[21]【花】
0838:す【所】尓も・を者せ・おほやけさまの・【宮】つ
0861:なら・あちきなき・ものなり个れと・【思】し
0917:さ満尓・よ/=よろつイ・ものおもひ・王れつゝち可くなれつ可(42オ)」
0925:して/八&万・この【世】の・ものとも・みえ・【給】者・志ろ
0983:るい・ひろく・む免可ち尓て・【所】勢可り个れ・(45オ)」
1013:しも・え・多ちと満里【候】八・【宮】こ・者なれ
1045:八しまそ・多のもしけなき・【心】ち・志・
1129:よしきよは・可の・【入道】の・む免越・
1184:里/た&堂・[30]この・む免・すくれても・あらぬ可多ち
1224:しきにも・ひとつ・な三多ならそ・こ本
1277:佐ら尓・堂ちいてん・【心】ち・せ
1289:えし【給】八・【日】・やう/\・さしあ可りて・
1309:くなむとく/後く〈ママ〉・志めや可尓も・あら・可へり・【給】
1317:越/せ〈左濁点〉、む=【軟障也】、う&う・ひきめくらして・お者・その・く尓・可よ
1355:お者・ひ・くれぬれ八・【神】八・すこし・

 
 
 
posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年02月20日

第17回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 今週末、2月23日(土)の午後2時から4時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で17回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。これは、特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉が主催者として取り組んでいるものです。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 本日20日(水)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、この勉強会を呼びかける記事が掲載されましたので、あらためて本ブログでも紹介します。

190220_be-kyoto.jpg

 今回は、上記テキストの9丁裏2行目末尾からの「き古えさせま本しき」から読みます。

 前回の内容については、「[町家 de 源氏](第16回)(現行平仮名が1文字に選定された経緯は?)」(2019年01月20日)をご覧ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内を差し上げます。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円で、2回目以降は二千円(学生は千円)です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の正会員には割り引き特典があります。

 次回は、第18回、3月23日(土)の14時〜16時までです。

 自由に参加していただける会です。
 この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げています。
 
 
 
posted by genjiito at 20:53| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年02月16日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(その9、「障害」と書くか「障碍」と書くか)

 今日の講座での話題の一つとして、昨日の新聞に報じられた、宝塚市でこれまで「障害」と表記していた文字を4月から「障碍」にする、というニュースを取り上げました。
 このことについて、受講生として来ている全盲の尾崎さんに意見を求めました。
 尾崎さんの考えは、自分では読めない文字の話なので、結局はどちらでもいい、ということです。個人的には「障碍」がいいと思うけれども、ワープロなどで音読する時に、あまりたくさんの表記があったらややこしいので、一般的な「障害」でいいのでは、とのことでした。
 参考までに。『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(伊藤亜紗、光文社新書、2015年4月)には、次の意見が記されています。

 従来の考え方では、障害は個人に属していました。ところが、新しい考えでは、障害の原因は社会の側にあるとされた。見えないことが障害なのではなく、見えないから何かができなくなる、そのことが障害だと言うわけです。障害学の言葉でいえば、「個人モデル」から「社会モデル」の転換が起こったのです。
 「足が不自由である」ことが障害なのではなく、「足が不自由だからひとりで旅行にいけない」ことや「足が不自由なために望んだ職を得られず、経済的に余裕がない」ことが障害なのです。
 先に「しょうがいしゃ」の表記は、旧来どおりの「障害者」であるべきだ、と述べました。私がそう考える理由はもうお分かりでしょう。「障がい者」や「障碍者」と表記をずらすことは、問題の先送りにすぎません。そうした「配慮」の背後にあるのは、「個人モデル」でとらえられた障害であるように見えるからです。むしろ「障害」と表記してそのネガティブさを社会が自覚するほうが大切ではないか、というのが私の考えです。(211頁)


 この問題は、講座が終わってからの帰りの道々でも、話題になっていました。
 全盲の学生がいる中でこうした話題を考えることは、日常とは違う立場で課題が迫ってくる感覚の中に身を置くことになると思われます。受講生のみなさまにとっても、刺激的なテーマとして考えるきっかけとなったとしたら、これもこの講座ならではの勉強会だと言えるでしょう。

 さて、写本は、37丁裏4行目の「と・むせ可へり」から確認しました。
 問題としたのは、38丁表2行目の「つらく」の「らく」が「弖」(氐)のように見えることです。この「弖」については、8行目の「【給】て」で、「て」の下に削られた文字がある場所にも関係します。テキストとして使っている『国文学研究資料館蔵 橋本本『源氏物語』「若紫」』の印刷版では、この「て」の文字の下には「て」とあり、それが削除されているとしました。しかし、2年前の3月末に私が定年退職する直前の一日をかけて、不明としていた文字をもう一度見直したのです。その結果、この下に書かれていた文字は「て」ではなくて「弖」とすべきであることを確認しました。顕微鏡を使った写真を撮影したので、また機会があれば提示します。
 つまり、書写者はここで、最初は変体仮名の「弖」を書いたのです。しかし、親本をよく見るとそうではなくて「て」だったことから、すぐに「弖」を横にあった小刀で削り取り、その上に「て」と書いたのです。この写本の書写者は、字母に忠実に書写していることがわかる例です。

 今日は、私が翻字したデータをどのように管理しているのかも、お話しました。
 私の手元では、『源氏物語』54巻の翻字データは、エクセルの表形式で運用しています。補訂する時には、当該写本の当該文節のデータを訂正しているのです。
 みなさまには翻字のお手伝いをしていただいているので、そのデータがどのように管理されているのかを見ていただき、今翻字しているものがどのようになっていくのかを実見してもらいました。今は、翻字していただくと、その方に入力もお願いしています。こうした最終形態のデータを見ることで、今後の翻字のやり方の意味が理解していただけると、よりよい翻字データができあがることでしょう。
 それにしても、エクセルの表を見ていると、いかに「変体仮名翻字版」のデータが少ないかがわかります。9割以上は、私が嘘の翻字だったと言っている、旧来の50音図の平仮名による翻字なのです。「変体仮名翻字版」を急がなくてはいけません。
 今春4月からは、気分を一新してこの翻字文庫のデータ群の進展に注力するつもりです。翻字のお手伝いをしていただいている方々と、さらに連携して翻字データベースの構築に取り組みます。変わらぬご協力を、よろしくお願いします。

 日比谷図書文化館を受講生のみなさんと外に出てから、教えられるままに両国を目指しました。相撲取りだったモンゴルの方との面談があるからです。
(以下、つづく)
 
 
 
posted by genjiito at 23:59| Comment(0) | ◎NPO活動

2019年01月20日

[町家 de 源氏](第16回)(現行平仮名が1文字に選定された経緯は?)

 「be京都」でのハーバード本『源氏物語 須磨』を変体仮名だけに着目して読む勉強会は、今日で16回目となりました。

190120_be-k.jpg

 いつもと違う日曜日の10時からということで、参加してくださる方々には曜日と時間に気をつけてください、というメールを事前に回しました。また、本ブログでも、そのことを告知していました。それなのに、当の私が勘違いをしていて、いつもの午後2時からではなくて10時からであることをすっかり忘れていたのです。
 いつまで待っても私が「be京都」に姿を見せないことから、京都で世話役をしていただいている石田さんから、メールと電話で「何かあったのでしょうか」という連絡をいただきました。先週は突然手術をするなど、特にこのところ何かとバタバタする日々にあったために、いろいろと気遣いをしてもらい恐縮しました。
 とにかく大急ぎで同志社大学の方に出かけ、1時間遅れで会場に着きました。今日は、初めて参加なさる方もいらっしゃったので、大変失礼なことをしてしまいました。お許しください。
 これまでに、こうした公開のイベントなどで、私は予定をドタキャンしたり、大きく遅れることはしてきませんでした。それだけに、まったくと言っていいほど経験してこなかったことなので、予定を忘れていたことに自分自身がショックを受けています。こまかな物忘れは、最近とみによくあります。しかし、対外的にも大事なことでは、行けなくて待っていただいたことは記憶にありません。自戒の意味も込めて、ここに記しておきます。そして、今後とも何かありましたら、メールか電話で「忘れていませんか?」と催促をしてください。昨日の本ブログにも書いた通り、「人に迷惑をかけない高齢・老齢社会にし、生き抜いて行きたいものです。」ということが、早速我が身に降り懸かって来ました。今日のことは、高齢・老齢化の兆候の一つだと思われます。何かと、よろしくお願いします。

 さて、今日は、いつものように前置きが長くならないようにと気をつけながら、今年いただいた年賀状から変体仮名の好例を紹介しました。

190120_nenga.jpg

 右側は「上希満/寿」(上げま/す)、もう一つの左側の方は「万春」(ます)と書いておられます。共に、おめでたい新年を寿ぐのにふさわしい字母となる変体仮名を選んでのものです。変体仮名が単なる仮名として一音を表記するだけではないものであることが、こうした使い方からわかります。この、仮名文字が伝えてきている文化を、これからも守り伝えて行きたいものです。

 ハーバード本「須磨」については、9丁裏1行目の「ましくおもふ多まへらるゝ【程】可那と」から読みました。初めて参加してくださった方がいらっしゃったので、まずは変体仮名の「多」のことからお話をしました。
 ハーバード本「須磨」では、仮名文字で表記するのに用いられている変体仮名(1792例)の中で、「ta」という音の「多」は3番目に多くて「142例」、続いて8番目に多い「堂」が「74例」となっています。明治33年に文部省によって言語統制された結果としての五十音図の平仮名「太(た)」は、ここで用いられている現行平仮名(1792例)の中では7例にすぎず、「ゐ」(5例)と共に最小使用例となっています。
 この傾向は、ハーバード本「須磨」とかつては共に揃い本として組まれていたハーバード本「蜻蛉」や歴博本「鈴虫」でも、ほぼ同じことが確認できます。明治33年に平仮名を1文字に決めるときに、どのような基準で選定されたのかが知りたくなります。鎌倉時代にはほとんど見かけない「太(た)」が選ばれ、それが日本では唯一の平仮名として公認されて今に至っている根拠を、何とかして知りたいと思っているところです。
 また、2行目の「あけ尓あさ可ら須」とある所で、「あけ」について書写されている状態を確認しました。
 まず、「あ」にはミセケチの記号「˵」が2ヶ所に打たれています。この字はないことにしよう、ということです。
 次の「け」は、その下に「佐(さ)」が書かれています。ただし、その「佐」の旁の部分は、「左」と書き終わる前に、つまり「エ」の部分を書かずに「け」という文字で上からナゾって訂正しています。この「佐」が書き止した状態であることは、次の丁の5行目にある「佐」とまったく同じ字形であることから確認できます。
 つまりここでは、「尓」と書こうとしていたのに、それに続く「あ左可ら須」の「あ左」に目が飛んでしまい、「あ佐尓」と書いたと思われます。しかし、すぐに続く「あ左可ら須」と書こうとして「あ佐尓」が間違いだったことに気付き、「あ」をミセケチにし、書き止しだった「佐」を「け」に書き直したと思われます。
 こうして、写本を丹念に見ていると、書写した人が書いている状況が見えてきます。写本の書きざまから、書いている人の姿が見えてくる楽しさを、こうして読み取っているのです。これも、写本を読む楽しみの一つです。

 ということで、今日は2行だけを見たことになります。
 次の第17回2月23日(土)14時〜16時では、9丁裏2行目の「【思】へ里」から読みます。

 旅の途中に立ち寄っていただいても結構です。興味のある方の参加をお待ちしています。
 その際は、資料を用意する都合がありますので、本ブログのコメント欄を使って連絡をお願いします。
 
 
 
posted by genjiito at 23:55| Comment(1) | ◎NPO活動

2019年01月18日

第16回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 明後日、1月20日(日)午前10時から12時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で16回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。これは、特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉が主催者として取り組んでいるものです。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 昨日17日(木)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、この勉強会を呼びかける記事が掲載されましたので、あらためて本ブログでも紹介します。

190117_matiyaG.jpg

 今回は、上記テキストの9丁裏1行目「ましくおもふ多まへらるゝ【程】可那と」から読みます。

 前回の内容については、「[町家 de 源氏](第15回)(書写者が途中で変わること)」(2018年12月22日)をご覧ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内を差し上げます。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円です。2回目以降は二千円(学生は千円)です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の正会員には割り引き特典があります。

 次回以降は次の日時に開催します。

 第17回 2月23日(土)14時〜16時まで
 第18回 3月23日(土)14時〜16時まで

 自由に参加していただける会です。
 この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げています。
 
 
 
posted by genjiito at 18:41| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年12月22日

[町家 de 源氏](第15回)(書写者が途中で変わること)

 「be京都」でハーバード大学本『源氏物語 須磨』を読む勉強会は、今日で15回目となりました。

181222_garden.jpg

181222_toko.jpg

 今日は、9丁表6行目「あ可【月】の」からです。
 少し読み始めてから、「【思】日」の「日」の文字の形が不自然であることに気付きました。そう言えば、「い徒と・那く」の「と」も、「を」にしか見えません。その内に、このあたりは書写者がそれまでと違うのではないか、という話の流れとなりました。
 書き続ける中で、途中で書写者が交代することは、これまでにも確認しています。
 それからは、この「須磨」の前後の丁の文字の書き様を見ていきました。すると、ここもそれまでとは違う、ここからはまた違う、というように、いろいろと書き手の文字の書風や雰囲気が異なることが気になり出しました。
 18丁と19丁は、特にその違いが顕著です。
 この現象は、もっと調べてみようということで、その確認に終始しました。
 今日のところでは、結論らしきものは出ないものの、何人かの人がこの「須磨」を写しているのではないか、という疑念は確信に近いものとなりました。
 こんな問題意識をもって、次回から読み進めていくことにしました。
 ということで、今日は4行ほど、9丁表の最終行までを見たことになります。

 新年の次回以降は、以下の日程で開催します。

 第16回 1月20日(日)10時〜12時まで
 第17回 2月23日(土)14時〜16時まで
 第18回 3月23日(土)14時〜16時まで

 旅の途中に立ち寄っていただいても結構です。
 興味のある方の参加をお待ちしています。
 その際は、本ブログのコメント欄を使って連絡をお願いします。
 
 
 
posted by genjiito at 23:16| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年12月16日

第15回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 今週12月22日(土)午後2時から4時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で15回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 本日16日(日)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、この勉強会を呼びかける記事が掲載されましたので、あらためて本ブログでも紹介します。

181216_be-kyoto.jpg

 今回は、上記テキストの9丁表6行目「あ可【月】の」から読みます。

 前回の内容については、「[町家 de 源氏](第14回)(補入となぞりの確認)」(2018年11月25日)をご覧ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内を差し上げます。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円です。2回目以降は二千円(学生は千円)です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の正会員には割り引き特典があります。

 新年の第16回は、1月20日(日)10時〜12時です。

 自由に参加していただける会です。
 この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げています。
 
 
 
posted by genjiito at 18:58| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年12月15日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(2018年度-その7、傍記が混入した異文)

 曇り空の中を、新幹線で上京しました。いつも、富士山を見るのを楽しみにしています。しかし、今日は曇っていたため、頂上付近は見えませんでした。そんな写真はこれまでに掲載してこなかったので、これからは雲に覆われた富士山もアップすることにします。

181215_fuji.jpg

 日比谷図書文化館に近い新橋駅前には、機関車にサンタクロースが乗っていました。クリスマスシーズンが到来していることを実感します。

181215_train.jpg

 日比谷公園も師走に入ると、冷たい風が吹き抜けています。それでも、多くの人が集っておられます。園内の噴水広場では、「東京 クリスマスマーケット 2018 in 日比谷公園」が賑やかに開催されていたからです。ドイツさながらの雰囲気が再現されており、ビールや木工芸品、そしてスイーツのお店が36店舗も出ていました。手作り体験もでき、活気に満ちています。

181215_market.jpg

181215_hibiya.jpg

 日比谷図書文化館で『源氏物語』を読む会が始まる前に、地下のラウンジで研究協力者の淺川さんと今後の打ち合わせをしました。
 科研のことや視覚障害者のみなさまのお手伝い、そしてNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の活動のことなど、整理しなければいけない話は山ほどあります。
 特に、科研のホームページについては、さまざまな研究妨害を掻い潜り、やっと再構築に着手するメドが立つところまで来ました。昨年4月に科研が採択されて以来、研究情報の公開という一時だけに1年9ヶ月もかかったことになります。科研研究への無理解や非協力的な姿勢と露骨な妨害に加えて、先週からはまたもや無知からくる信じられない研究妨害と契約への遅延行為などと闘っていました。この期に及んでまだそこまでやるか、という思いを胸に押し留めて耐えました。精も根も尽きそうになっていた今週半ばに、それも何とか光明が見いだせるようになったので、また前を見て歩み出そうとしています。研究の遂行よりも、こうしたこととの戦いに精力を割かざるを得ない現実との闘争に疲れ果てます。研究の意味が理解されない環境に身を置くとは、思いもしなかったことであり、なかなかつらいものがあります。もっとも、今はそんな弱音を吐いている場合ではありません。時間がないのです。
 2年目の年度末になり、遅れに遅れている膨大な研究成果の公開に向けて、これから3ヶ月が追い込みです。プロジェクト研究員、研究協力者の学生たちと共に、ここを乗り切ろうという思いを強くしています。変わらぬご支援のほどを、よろしくお願いします。

 今日の講座では、最初にいつものように『源氏物語』をめぐる関連情報を提示しました。
 メリッサ・マコーミック先生が刊行された『源氏物語画帖』を回覧し、この講座を受講なさっている方が翻字の協力をしてくださったことなどを伝えました。
 受講者の中には、今夏ご一緒にハーバード大学でこの『源氏物語画帖』を見た方もおられるので、身近な話題として説明できました。古典という時間的な隔たりのみならず、ボストンという地理的な遠さが一気に縮まる機会となったことは、得難いことだったと思います。
 その他、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉に『御物 各筆源氏』の複製本の寄贈を受けたこと、新年に京都ライトハウスで開催される『百人一首』のかるた会の案内、国宝の『源氏物語絵巻』が額面装から巻物装に戻されたこと、さらには、精力的に『源氏物語』を女房語りで読み続けておられる山下智子さんの案内チラシを配布して説明をしました。この山下さんの語りの会には、講座を受講なさっている何人かが参加しておられます。

 さて、今日は時間を有効に使い、35丁表の8行目「さ満も・可ゝ羅ぬ」から、37丁表の4行目「うちと遣ぬ」までの、約4頁分を確認しました。異例のスピードです。
 今日、一番時間をかけたのは、現在読んでいる橋本本のグループ(河内本を中心とするもの)と、現在一般に読まれている大島本のグループに、大幅に語句が入れ替わるという現象を見せる箇所があったことです。校訂本文で比べると、「くはしく」「おほかたの御ありさまなと」などの言葉が、両グループでその置かれている場所が大きく異なるのです(私が提案している文節番号では「052818」以降)。こうした本文異同の形成過程には、私案である「傍記本文が本行に混入する時に、当該語句の前に混入するか、あるいは後に混入するかによって生まれる本文異同」という考え方を導入しなければ説明できないところです。日比谷図書文化館での講座は、こうしたことを詳細に語る場所ではないので、現在読み進めている橋本本と、現在一般に読まれている大島本の文章の成り立ちがこんなに違うものですよ、ということの確認に留めました。

 また、「ひ(比)」(35丁裏3行目)

181216_hi.gif

と「え(江)」(36丁表9行目)

181216_e.gif
がよく似た形で書かれています。
 このことは、書家の宮川さんが参加しておられるので、専門家の立場でその仮名文字の成り立ちについて板書して説明していただきました。

 講座が終了してからは、有志の方々と有楽町のビアハウスで、いつものように勉強会となりました。今日は、お世話役の土屋さんが、渋谷栄一氏の校訂本文と現代語訳を橋本本と対照できるような資料を作成して来てくださっていました。そこで、それをもとにして、これからどのようにして橋本本の現代語訳を作成していくかを相談しました。次回には、土屋私案としての現代語訳を追記した資料を提示してくださることになりました。
 この課外の集まりも、呑むことだけでなく、こうして着実に勉強の成果が確認できるように進んでいます。現在は10人ほどで取り組んでいます。この集まりだけに参加なさりたい方がいらっしゃいましたら、遠慮なくお知らせください。折り返し、ご案内を差し上げます。時間は、午後5時半から7時過ぎまでです。私が午後8時前の新幹線で京都に帰りますので、それまでの時間を有効に活用しての勉強会です。

 新幹線はガラガラでした。
 京都駅前に聳えるタワーは、今日はクリスマスモードです。

181215_tower.jpg 
 
 
posted by genjiito at 23:55| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年11月27日

NPO-GEMに寄贈していただいた『御物 各筆源氏』(復刻版)

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が「be京都」で開催している「町家 de 源氏物語の写本を読む」に参加なさっているTさんから、東山御文庫蔵『源氏物語』(通称『御物 各筆源氏』)の復刻版(影印本)を頂戴しました。

181127_kakuhitu-G.jpg

 これは、静岡県のT氏が所有なさっていたものを、Tさんが間に入ってNPO法人〈源氏物語電子資料館〉に届けてくださったものです。
 この寄贈のお話は、先週土曜日の源氏の会で伺い、それが早速、2個口の荷物として本日届いたのです。
 T氏とTさんに、ここに拝受のことを記して広く報告し、お礼にかえさせていただきます。ありがとうございました。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉で、大切に管理します。
 『源氏物語』の「変体仮名翻字版」による本文データベースを構築する時の翻字用資料として役立てます。また、多くの方々に、『源氏物語』の古写本の姿を実見していただく上での、大切な資料として、会員を通して永く伝えて行きたいと思います。

 この『源氏物語』について、特に収納箱と写本の書誌に関しては、別冊の『東山御文庫蔵 源氏物語(各筆源氏)解題』(阿部秋生、秋山虔、池田利夫編、日本古典文学会・貴重本刊行会、昭和61年11月)の巻頭にある「書誌」(池田利夫担当)より引用して、参考情報とします。

   (1)収納箱

 本体を収納する金蒔絵の塗箱と、これを覆う黒塗の外箱とよりなる。外箱は盒に作り、蓋をした状態で縦四一センチ、横二五・二センチ、高さ二八センチである。身の部分は低く、台座風に作られたその下に緑色の平紐が通してあり、蓋の上で結ぶ。蓋の表には、上述の二枚の白い紙片が貼られ、中央の一枚は縦三一・六センチ・横八・七センチで「宸筆源氏物語」と墨書されており、この右に頭を揃えて貼られている縦一四・二センチ、横六・五センチの一枚には「源氏物語(傍記:宸筆以下)」と記されている。現在は、二枚の紙片を覆うように鈎形に切った半透明の薄様斐紙で外縁を糊付けしてあるので、以上の文字が透けて見えるのである。
 内箱は四つの抽出しを収納している。全体が黒漆地で、表全面は菊花葉文の金蒔絵が施され、花芯には螺鈿があしらわれている上、頭部四周は金箔卍繋ぎの文様に縁取ってある。側面の一枚蓋を外すと、中は上下二段に分かれ、各二つの抽出しが仕切りなしに接して収められている。抽出しの箱も黒漆塗地であるのは本体と同じであるが、前後が刳貫きになっていて、外側は撫子が群生する金蒔絵仕上げになっている。そして上縁を刳貫き部分を含めて天金とし、内側は金箔で裾縞様に装飾される等、総じて贅を尽した作りなのである。
 四つの抽出しに『源氏物語』五四帖を分納するのはもちろんであるが、それぞれに斐紙で包んだ小形の色紙が配され、収納されている抽出しごとの巻名が記されている。「付属文書」の項で述べるが、古筆了和の鑑定によると、烏丸光広の筆になるという。ただ箱の文様を始め、鍵の銀金具などにも旧蔵者を想定させるような紋章はないが、古筆了仲の副状の一節に「一家之重宝のみならす本朝之隹■」とあるのから察すると、この鑑定以後、皇室に献上されたかと思われる。

   (2)本体書誌

 すべて一巻一帖仕立ての写本五四帖、列帖装の六半本である。取合せ本に、ある時期ほぼ同じ表紙を付けたとおぼしく、各巻の大きさに若干の相違がある。巻ごとの寸法は他の書誌とともに次項に一覧させたが、縦は一六・○〜一五・五センチ、横は一五・六〜一四・八センチと、相互の差は最大でも一センチに満たない。
 枡形の表紙が白茶地の厚手鳥の子紙であるのは共通しているが、文様に二種がある。一つは淡墨の霞文を引いた上を丁字で彩り、さらに草花や山水などを素描して、往々に葦手書きが見られる。ただ、澪標のみは「みをつくし」と読めて巻名と知られるが、帚木は「おり/\に」、若紫は「みや」、末摘花は「なつ」とあって意味が定かでなく、他の葦手は、その一部もしくは大部分が、左上に貼られた題簽の下になって読めない。桐壺など葦手のない巻もあるが、以上のような体裁の表紙は一〇冊に及び、これをA群と称すると、A群はすべて第一五巻の蓬生までに集中している。一方、他の四四帖は、ごく簡略に丁字の横線や螺旋を引くのみの表紙で、葦手もなく、これをB群と呼んで区別することはできるが、AB両群間に、本文の筆跡や書写年代、あるいは本文系統などとの関連は見いだせない。
 題簽は各巻共通で、赤褐色無地の縦七・九センチ、横二・八センチ(桐壺)ほどである。ここに書かれた外題は、了仲の極めに依ると、飛鳥井雅康(宋世)という。いずれにしても、葦手が題簽の下に隠れている巻があるのからすれば、後補のものであろう。そして、今は扉紙になっている各帖の第一丁表の左上には、やや小さ目の白色題簽を剥がした跡をとどめているので、現在の装丁に至るまでには変遷があったと思われる。
 見返しは金箔に空押しで、梅・撫子・繋輪・菊・薄・唐草・小松・千鳥・萩のいずれかの模様が浮き立たせてある。列帖の折数は、少くて二折、多くて七折、前付遊紙は前述の扉紙が各巻すべて一枚、後付遊紙はない巻もあり、多いのは一五枚にも達する。本文丁数は多い巻で若菜下(一五七枚)・若菜上(一三四枚)・手習(一一五枚)などであり、少いのは篝火(五枚)・花散里・関屋(各七枚)などである。そしてこれらも書誌一覧に示した。
 本文料紙は、斐紙、楮斐交漉と幾通りかあり、厚さもさまざまであるが、いずれも鳥の子紙と称して良いであろう。本文書写の毎半葉ごとの行数や、和歌の書写形式も一覧に見るとおりに相違があり、特に一帖の中で行数や形式の定まらない巻が多いのにも注意される。本文は墨付第一丁表より書写されるのが通常であるが、竹河のみは裏より写し始める。また、花散里・須磨・関屋・蛍・夢浮橋の五帖を除くと、本文に朱の句読点が施され、加えて朝顔・常夏・野分・行幸・真木柱の五帖には合点が見られる。なお、花宴の第五丁裏と第六丁表、須磨の第二七丁裏と第二八丁表とが空白になっているのは、書写に際して一枚めくり過ぎたのであろう。他に、欠丁、脱文、錯簡なども見られるが、それらについては後述する。
 印記は、いずれの巻にもない。(7〜9頁)

 
 
 
posted by genjiito at 23:55| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年11月25日

[町家 de 源氏](第14回)(補入となぞりの確認)

 「be京都」での『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』を読む会は、昨日からストーブをつけています。急に冷え込むようになりました。

181124_be-kyoto.jpg

 今回は、まず巻子本(巻物)を実際に見てもらいました。一巻になっている巻物をすべて解くと、京間の壁際2辺(7m)を占めます。巻かれている状態からしだいに伸びだすと、あれよあれよという間に壁を伝い、意外と長いことに驚かされます。
 その巻子本から冊子本になることや、和歌などを切り継ぐのに便利なことも話題にしました。
 日本の古典籍は、それが伝えられてきた形を知ると、意外と親近感が湧くものです。活字本に慣れ親しんだ現代の読書文化の中で、かつての本の実態を知ることは大事なことなのです。

 この日は、9丁表の4行目「とりへ【山】・もゑし・个ふも/ふ+里」からです。
 ここで、「ふも」の間に補入記号の「◦」を付けて、その右横に「里」が書き添えられています。

181125_ri.jpg

 写本で使われている記号の話から、「まる」「ぜろ」「オー」を筆でどう書いたのかを、みんなで考えました。この補入記号の「◦」が、ミセケチ記号の「˵」や「ヒ」と紛らわしいことも、ここで確認しました。

 「那く」のところでは、「く」がなぞられています。

181125_ku.jpg

 その下にどんな文字がかいてあったのかを、はみ出した微かな線を頼りに、みんなでじっくりと考えました。可能性としては「う」「と」「ら」「し」などなど、いろいろと考えられます。なぜ、この語尾の所でなぞった上に墨継ぎをしているのかも、説明し難い状況です。

 先の補入記号のことに始まり、このなぞりの状態をどうみるのか、ということなどで、みんなであれこれとその可能性を語っているうちに、あっという間に時間が経ちました。
 そんなこんなで、3行分しか読めませんでした。
 次回は、9丁表の6行目「あ可【月】の」から読みます。

 来月の第15回は、12月22日(土)14時〜16時まで。
 新年の第16回は、1月20日(日)10時〜12時までです。

 ご自由に参加していただける会です。この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げています。
 
 
 
posted by genjiito at 19:06| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年11月19日

第14回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 今週11月24日(日)午後4時から6時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で14回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 昨日18日(日)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、この勉強会を呼びかける記事が掲載されましたので、あらためて本ブログでも紹介します。

181118_matiya.jpg

 今回は、「9丁表4行目」の光源氏の歌「とりへ山〜」から読みます。
 前回の内容については、「[町家 de 源氏](第13回)(変体仮名「う」と「こ」の字形)」(2018年10月14日)をご覧ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内を差し上げます。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円です。2回目以降は二千円です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の会員は割り引き特典があります。

 なお次の第15回は、12月22日(土)14時から16時まで行ないます。
 会場は、いつもの「be京都」です。
 しばし、京都で、千年前の異文化体験を一緒にお楽しみください。
 
 
 
posted by genjiito at 09:00| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年10月14日

[町家 de 源氏](第13回)(変体仮名「う」と「こ」の字形)

 今日の[町家 de 源氏物語の写本を読む]は、午後4時から6時まで行ないました。

181014_entrance.jpg

 「be京都」で和室の襖やガラス戸を開けていると、肌寒い風が欄間を通して心地よく吹いています。座敷机の前に座っているだけで、秋の到来を実感する季節になったのです。来月は暖房をつけての読書会となりそうです。

181014_toko.jpg

181014_niwa.jpg

 今日は、ペルーで手に入れたカカオのお茶を飲みながら、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」の変体仮名を読み進めました。

 今日のポイントを、次の表で確認しておきます。

181014_u_ko.jpg

 ここで、歴博本「鈴虫」に見られる「う」(右から2番目の2文字目の例)は、諸本との異同や意味を考えると「こ」となるはずの文字です。そうであっても、ここでは「う」としか読めない例といえます。
 そこで、かつては一緒の揃い本だった「須磨」「蜻蛉」の例を照合しながら確認しましょう。
 「須磨」で見られる「う」(左端の1文字目の各例)と、「蜻蛉」の「う」(右端の1文字目)は、「鈴虫」と同じ字形です。
 参考までにあげた「須磨」の「きこゑ」(左から2番目の2文字目の例)は、見方によっては「う」と紛らわしい文字だと言えます。
 ということで、「鈴虫」の例は、「きうえ」と翻字していいことが、この「須磨」と「蜻蛉」の例から言えると思います。

 今日は、8丁裏に見られる「支・す・ま」が紛らわしい字形であることも確認しました。
 こうして、ハーバード大学蔵『源氏物語』の「須磨」と「蜻蛉」、そして歴博本「鈴虫」の写本に写し取られた文字の特徴が、少しずつ整理できていきます。とにかく、根気強くこうした読みを続けて行けば、何年かかるかわからないにしても、いつかはそれぞれの写本の位置づけが可能になるはずです。

 今日は、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』の写本の、8丁裏の3行目「の多まへ八」から9丁表の3行目「給て」までを読んで、書かれている仮名文字を字母レベルで確認しました。
 脱線して雑談で終わらないように気をつけながら、文字にこだわるネタをとにかく意識しました。しかし、やはり平仮名、簡体字、繁体字、ハングルの話から逸れて行きました。さらには、漢語と和語の違いから「入管難民法」と「移民」にまで及び、今後の日本語のあり方にまで。
 それでも11行も読み進んでのですから、よく読んだ方だと言えるでしょう。

 次の第14回は11月24日(土)14時〜16時まで。
 また、第15回は12月22日(土)14時〜16時まで。
 新年、第16回は1月20日(日)10時〜12時までです。

 ご自由に参加していただける会です。この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年10月12日

第13回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 今週末の10月14日(日)午後4時から6時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で13回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 本日12日(金)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、この勉強会を呼びかける記事が掲載されましたので、あらためて本ブログでも紹介します。

181012_matiya.jpg

 今回は、「8丁裏3行目」の「の多まへ八」から読みます。
 前回の内容については、「[町家 de 源氏](第12回)(変体仮名「可・尓・多」が圧倒的に多い)」(2018年09月22日)をご覧ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内をお送りします。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円です。2回目以降は二千円です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の会員は割り引き特典があります。

 なお次の第14回は、11月24日(土)14時から16時まで行ないます。
 会場は、いつもの「be京都」です。
 
 
 
posted by genjiito at 08:20| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年10月06日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(2018年度-体験講座)

 週末ごとに颱風が日本に襲いかかって来ます。招かれざる客の情報を気にしながら、早朝から上京しました。今回の颱風は日本海側を通過中ということもあり、新幹線はいつも通り普通に走っています。もっとも、乗客は長旅を自粛してか、車内は空いていました。

 そんな中で、隣に座っておられたご夫人が、名古屋を過ぎたあたりから、突然バッグから香水らしきものを取り出されたのです。ビンの口を嗅ぎながら、何かなさっています。その匂いの臭いこと。とても、香りという世界とは程遠い、まさに異臭が襲いかかって来ます。

 学生時代のこと。
 学芸員のための講座の中に、博学で知られる樋口清之先生の授業がありました。あのベストセラーになった『梅干と日本刀』をお書きになった先生です。
 その樋口先生が、多くの欧米の方々は体臭を消すために香水をつけるのであり、日本人は食事のこともあり無臭の人が多いので、香水の用途は限られている、とおっしゃっていました。そのかわりに汗臭さをごまかすために、着物にお香を焚き染める程度だとも。
 薫と匂宮はどうだったのかはともかく、隣の席で化学薬品をブレンドした時の悪臭プンプンの方は新横浜で降りられたので、やっと苦痛から解放されました。
 私が座っていたのは自由席なので、いつでも別の車両に移れます。しかし、今日は通路側のその方が大きなスーツケースを抱えておられたので、窓側にいた私は出ようにも出られなかったのです。カメムシのような匂いの攻撃には、打つ手がありません。

 有楽町駅からブラブラと日比谷公園に向かいます。途中で、いつもそばを通るのを楽しみにしているゴジラを見上げます。

181006_gojira1.jpg

181006_gojira2.jpg

 日比谷公園の中では、鉄道マニアが大挙して集まっての一大イベント「鉄道フェスティバル」が繰り広げられていました。

181006_train.jpg

 今の私に馴染みである、京阪電車と阪急電車のブースだけは立ち寄りました。とにかく、ものすごい人の列です。

181006_keihan.jpg

181006_hankyu.jpg

 日比谷図書文化館の地下にあるラウンジで、昼食をいただきました。そして、この時間を利用して、科研の運用とホームページに関する打ち合わせを、待ち合わせをしていた仲間4人で、2時間ほど話し合いました。新しい展望が見えてきました。昨年来K社のお陰で完全に頓挫したままになっている科研のホームページについては、また後日、明るい展望のもとに詳しい報告をします。とにかく何もしてもらえないままに振り回され、一年半もの長きにわたり研究妨害を受け続けて来たのです。ほとほと疲れた、と言うのが本音です。この状況も、間もなく道が拓けます。今少しの時間をください。

 今日の古文書塾「てらこや」の講座は、5回ごとに切り替わるごとに設定された「体験講座」です。14名の方が、様子見の参加をなさいました。
 とはいえ、私の方はいつも通りのマイペースで、写本は2行ほどを読んだだけです。お話ししたことは、『源氏物語』の本文が大島本だけで読まれている現状や、鎌倉時代に書き写された写本の大切さを訴えました。
 また、変体仮名が昨年からユニコードの中に認証されたことや、現行の平仮名は明治33年以降に各音に1文字ずつを割り振られ、絞り込まれて広まったものであることも確認しました。
 もちろん、目が見えなくても写本が読める方が講座に参加しておられることも。立体コピーの実物を回覧しました。

 この講座が、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の背景を持つものであることも、NPO活動の説明とともにしました。

 いつものように、予定を大幅にオーバーして終わりました。終わってから、国文学研究資料館が品川の戸越にあった頃に、歴史の史料館にアルバイトで行っていたという方が声をかけてくださいました。いろいろな出会いがあるものです。
 事務の方の話によると、今日お越しの半分くらいの方が、来月からの講座に参加されるそうです。継続の方を含めると、これまでよりも多くの方々が参加なさるようです。ありがたいことです。

 すでに源氏の講座に参加なさっている方もお出ででした。あらかじめ伺っていたこともあり、池田本の「早蕨」と「宿木」の資料をお渡ししました。これを例として、NPO活動として取り組んでいる変体仮名を取り込んだ翻字作業の実態も、詳しく説明しました。

 この翻字作業については、多くの方にお願いしながら、まだ作業用のデータを渡しきれていません。
 大学も始まり、少しずつ落ち着いてきましたので、来週から作業用のデータをお届けしようと思います。
 これまでは、私が手元で管理しているエクセルのデータから抜き出した本文データを、一旦ワードの文書にして渡していました。しかし、それは私が変換作業に手間取り、お渡しするのが遅くなるばかりです。そこで最近は、エクセルのデータを切り出してお渡しし、それに直接補訂の手を入れる作業をしていただくことにしています。
 翻字のお手伝いをしてくださっている方には、こうした方針の変更についてのご理解をよろしくお願いします。

 また、今日は、築地市場の最終日でした。越中島に住んでいた昨春までは、築地に近かったこともあり、自転車でよく銀座へ散策に行く時に立ち寄りました。今日が最終日なら、帰りに築地に寄ろうか、と思いました。しかし、明日もいろいろと予定が入っていることもあり、残念ながら帰洛の途に着くことにしました。
 台風情報が行き渡っていたせいもあってか、新幹線はガラガラでした。
 
 
 
posted by genjiito at 22:06| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年09月22日

[町家 de 源氏](第12回)(変体仮名「可・尓・多」が圧倒的に多い)

 肌寒かった昨日から、一転して暑くなりました。
 「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)では、晩夏のお花が迎えてくれます。

180922_be-kyoto.jpg

 今日は、先月アメリカのハーバード大学で調査をしてきた原本の話から始めました。
 今読み進めているテキストの原本なので、話にも熱が入ります。
 今回の原本調査で翻字に大きな訂正はなかったので、テキストにしている『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)のデータを「変体仮名翻字版」にしたものを使った資料を配布しました。これは、2016年に翻字データを整理したものです。このことに興味と関心をお持ちの方のために、以下に資料を画像にして引用します。(画像をクリックしていただくと精細画像が表示されます)

(1)ハーバード本「須磨」の字母資料(全文字)
 これは、ハーバード本「須磨」に書写されている文字のすべてを抜き出して整理したものです。「漢字」「平仮名」「変体仮名」に分けて一覧できるようにしました。

180922_jibo1.jpg

(2)ハーバード本「須磨」「蜻蛉」、歴博本「鈴虫」の3巻で、出現数の多い漢字と仮名文字の対比資料

180922_jibo2.jpg
180922_jibo3.jpg

 この資料をもとにして、今日はほとんどの時間を費やして意見交換をしました。
 特に、(2)の資料にあげた変体仮名で、出現例の多い「可」「尓」「多」については、明治33年に決まった現行の「か(加)」「に(仁)」「た(太)」の意味することを、自由に話し合いました。私は、この現行平仮名は、共に筆先が筆記紙面をポンポンと跳躍する文字であり、きれいに早く書くための旋回文字としての仮名文字としては相応しくないものが選定された背景を考えましょう、と提案しました。今、これについて私案をもっているわけではありません。これは、これまでにもずっと問題提起してきたものです。
 これについて、ご教示いただけると幸いです。

 『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』の写本は、8丁裏の1行目から3行目までと、少しだけ字母を確認しながら読みました。
 「可」が普通に出てくることと、「か」の字形が今と少し異なることを確認しました。

 次の第13回は、10月21日(土)の予定でした。しかし、参加者の都合で、
10月14日(日)16時〜18時
に変更となりました。
 また、第14回は恒例の毎月第4土曜日にもどり、
11月24日(土)14時〜16時
となっています。

 ご自由に参加していただける会です。この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げます。
 
 
 
posted by genjiito at 21:50| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年09月20日

第12回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 今週末の9月22日(土)午後2時から4時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で12回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 本日20日(木)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、勉強会を呼びかける記事が掲載されましたので、あらためてこのブログでも紹介します。

180920_NPO-G.jpg

 今回は、「8丁裏1行目行頭」の「いと可多个れ」から読みます。
 前回の内容については、「[町家 de 源氏](第11回)(石田版新糸罫と中国版糸罫)」(2018年07月28日)をご覧ください。
 先月末には、アメリカのボストンにあるハーバード大学で、この勉強会で読んでいる原本である、フォグミュージアムご所蔵の「須磨」と「蜻蛉」を直接確認してきました。「ハーバードのフォグミュージアムで古写本『源氏物語』の調査」(2018年08月29日)
 その時の報告も、今回いたします。
 とにかく、のんびりと進めていますので、お気軽にご参加ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内をお送りします。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円です。2回目以降は二千円です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の会員は割り引き特典があります。

 なお今後の勉強会は、「第13回 10月21日(日)14時から16時」となっています。
 
 
 
posted by genjiito at 18:30| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年09月01日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(2018年度-その5、誤植発見)

 昨夜は、神宮外苑の近くで、久しぶりにぐっすりと眠りました。ハーバードでの夜中は、大学の前期試験の成績処理や学生からの問い合わせの回答、インドから急に届いた校正依頼に加えて、今秋から新たに始まる社会人講座の対応などに追われていました。なかなか寝る時間の確保ができませんでした。ネットワークにつながっていることは、世界のどこにいても仕事が付いて回ります。これは、便利さと忙しさのもろ刃の剣であり、長短があるのは仕方のないことだと諦めています。

 そんなこともあり、自宅ではなくても、日本にいるという安心感と距離感は、何物にも変えがたいものがあります。

 今朝は、地下鉄銀座線の赤坂見附駅で丸ノ内線に乗り換えて霞ヶ関駅に行こうとしました。赤坂見附駅のホームに降り立って見回しても、丸ノ内線のホームへの指示がよくわかりません。目の前を通り過ぎる電車を見て、何と丸ノ内線のホームが到着した銀座線のホームの真向かいだったことを知りました。ボストンで乗り換えに苦労したばかりの身には、この心憎い仕掛けは驚くばかりです。

 今日の講座は、ハーバード大学が所蔵する鎌倉時代に書写された『源氏物語』を調査して来た話から始めました。写真をスライドで映写しました。もちろん、ハーバード大学蔵本「須磨」と「蜻蛉」の実情も、スライドで見てもらいました。
 配布した資料は、京都で印刷したものなので、ボストン経由で日比谷に持ち込んだものです。昨日までいたハーバードの香りを伝えるものとなりました。

 今日は、33丁裏6行目「あてに〜」から34丁表5行目「〜か者可り」までの半丁分を、いつものように字母を確認しながら進みました。
 「【事】八里那里」と「【人】そう尓」について、「事(こと)」や「人(ひと)」という漢字が使われていることに対する質問がありました。今の時代の表記では、「【事】八里」は「理り」と表記し、「【人】そう」は「一族」と表記するところです。これは宛漢字とでも言うのでしょうか。現代においては、馴染みのない表記です。しかし、漢字表記の一つ一つには統一された意味が込められているはずであり、統一された表記以外に違和感をもつという理解は、近現代の答えありきという風潮に起因するものだと思います。漢字優先の教育方針の元で、画一的な答えを求める現代の国語科の先生方の教育の弊害だと思っています、と答えました。
 多様な表記や表現をしていたかつての日本語の状態が、今は画一的な、採点して評価しやすいものを正解とする風潮になっているように思います。そのように教育されてきたので、それに躍らされないようにしましょう、という変な話になっていき、慌てて押し留めて自重しました。
 なお、34丁表4行目「・思・【給】ふる・」の「思」は、これが漢字表記であることを明示して「【思】」としなくてはいけません。校正時の見落としなので、ここにその不正確な印刷になっていることを明記してお詫びします。

 今日は、日比谷図書文化館での講座を終えた後は、有楽町駅前で課外講座の一環で打ち合わせをし、ゆったりと新幹線で京都に向かっているところです。
 明日は、久しぶりに自宅で手足を伸ばして身体を休めます。





posted by genjiito at 21:53| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年07月28日

[町家 de 源氏](第11回)(石田版新糸罫と中国版糸罫)

 昨日まで、京都では35度以上の猛暑日が14日も続いていました。
 賀茂川畔の植物は、その暑さにやられて焼けて黄色に変色しています。
 一日も早い雨が待たれます。

180728_kamo1.jpg

180728_kamo2.jpg

 今夜から、台風が意外なコースで関西に向かって来ます。そんな中を、天候が激変しないお昼に、いつも通り「be京都」で『源氏物語』を読み進めました。
 今日は34度。連日の38度に身体が慣れたこともあってか、御所周辺では少し涼しさを感じさせる風が通っています。

180728_tokonoma.jpg

 今月も中国から庄婕淳さんが参加です。アメリカのシカゴで勉強している知り合いの学生さんと一緒に来てくれました。楽しいメンバー7人で、さまざまな話題に盛り上がりました。
 前回、庄さんにお願いした、中国版の糸罫らしいものを入手して来てもらいました。これは、プラスチック製ながらも、日本の糸罫とまったく同じ機能を持った書写の道具になるものです。
 長方形で中が刳り貫かれた枠が、特大級のものから小型のものまで、全部で5種類がワンセットとなっています。周囲のギザギザにポリエステルの紐をかけて直線を張り、その隙間の間に文字などを描くのです。扱い易く、多用途に使える優れものです。

180728_itokei1.jpg

180728_itokei4.jpg

 また今日は、石田さんの新作の糸罫も持参してくださいました。
 前作が右、今回の改良版が左です。糸も魚釣りのテグスに変わりました。

180728_itokei2.jpg

 裏面を見ると、大きな違いがわかります。糸が紙面に接するかどうかと、その糸の木枠への留め方に注目してください。

180728_itokei3.jpg

 これについてのご意見を、書家の方などからいただけると幸いです。

 『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』の写本は、8丁表の6行目から、字母を確認しながら読みました。
 「あ者れ尓」の「者」「尓」や、「堂ち」の「堂」、「徒まと」の「徒」について、庄さんから中国語での発音などを教えてもらいながら、いろいろな角度で意見交換をしました。
 その中で、「経済」や「政治」などは日本で明治時代頃に作られた単語であり、それが今は中国語に取り込まれているという話になりました。これは意外でした。日中の文化をもっと知りたいと思います。

 次の第12回は9月22日(土)14時から16時までです。
 また、第13回は10月21日(日)14時から16時となっています。
 ご自由に参加していただけますので、この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げます。
 
 
 
posted by genjiito at 23:13| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年07月25日

第11回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 今週末の7月28日(土)午後2時から4時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で11回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 本日25日(水)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、呼びかけの記事が掲載されましたので、あらためてこのブログでも紹介します。

180726_matiya.jpg

 今回は、「8丁表6行目行頭」の「の【夜】能」から読みます。
 前回は、地震があったために内容については進みませんでした。「地震の後に第10回[町家 de 源氏物語の写本を読む]」(2018年06月19日)をご覧ください。
 とにかく、のんびりと進めていますので、お気軽にご参加ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内をお送りします。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円です。2回目以降は二千円です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の会員は割り引き特典があります。

 なお、今後の勉強会の日程は、以下のようになります。

●8月の勉強会はお休みで、当初はイベントを予定していました。
 しかし、私が海外出張が2つも入ったために、秋に延期します。

第12回 9月22日(土)14時から16時 「be京都」
第13回 10月21日(日)14時から16時 「be京都」

 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年07月07日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(2018年度-その3、付箋跡の確認)

 毎月最初の土曜日は、日比谷図書文化館で「若紫」を読む日です。

 大雨の警報が出ている中を、早朝より東京に向かって出かけました。雨が小降りで、新幹線は山陽が午後まで運休、東海道は動いていたからです。
 賀茂川は、昨日よりも水嵩が少し低くなっていました。ただし、水量が減ったからといって、安心してはいけません。護岸や土手が崩れて、水が染み出している可能性があるからです。地盤が崩れつつあるため、明日までは十分に注意を、とのことでした。それにしても、と言うべきか、地元の方は洪水が心配で、つい川を見にこられるようです。

180707_kamogawa.jpg

 雨を気にしながら、薄氷を踏む思いで、新幹線を使った上京です。
 京都駅では、みどりの窓口が長蛇の列でした。新大阪から西へは行けないので、みなさん予定を変更なさるのでしょう。
 2時間半待ちだという行列も、自動券売機ではすぐに切符が手に入ります。ところが、発券された「のぞみ」が時間になっても来ません。かといって、遅れているわけではなさそうです。掲示がありません。駅員さんに聞くと、券面に印字された私が乗ることになっている列車は運休とのことです。後続の「のぞみ号」の自由席に乗って、車内で指定席に変更を、とのことでした。それなら発券しなければいいのに、と言ってもしょうがありません。このあたりに、コンピュータをまだ駆使できていないことが露呈しています。

 早めに出かけたので、日比谷で待ち合わせの面談には十分に間に合います。それでも、自由席は一杯だったために、2本見送ってなんとか座って行けました。
 東京は曇り空。雨はまったく心配ありません。

 思ったよりも早く着いたので、出光美術館で開催中の「歌仙と古筆」を観ました。

180707_idemitsu.jpg

 国宝の古筆手鑑『見努世友』をはじめとして、重要文化財の『佐竹本三十六歌仙絵』、平安時代の書写になる伝西行筆『中務集』、『継色紙』『高野切』『石山切』などなど、贅沢なものを満腹するほど見ることができました。

 日比谷見附から入ると、いつものお江戸の鷺がいました。喧騒の一角もいいけど、自然の中もいいよ、と言って賀茂川に連れて行きたくなります。

180707_sagi.jpg

 日比谷図書文化館の地下で、お二人の方と面談をしました。サイデンステッカーの英訳『蜻蛉日記』に関する架蔵の資料を渡したので、これを活用してどのような成果が生まれるのか、今からワクワクします。若い方の感性で、この資料を料理してもらえることは、有り難くもあり楽しみでもあります。

 講座では、先ほど見たばかりの出光美術館の展覧会のことをお話しました。この日比谷公園のすぐ近くなので、何人もの方がすでにご覧になったようです。そこで、受講者の机に常置している『源氏物語 千年のかがやき 立川移転記念 特別展示図録』(国文学研究資料館編、2008年10月、思文閣出版)を基にして、出光美術館蔵伝土佐光元筆『源氏物語画帖』と国文学研究資料館蔵『源氏物語団扇画帖』の図様がよく似ていることを説明しました。

 その後、ビルマ語訳『源氏物語』(第6巻、ケィン・キン・インジィン)とハンガリー語訳『更級日記』(フィットレル・アーロン)を回覧しました。共に、日本ではまだ出回っていない貴重な本です。日本の古典文化が海外に広がっていく現状を確認して、我々がこうした日本の文化を語れるようになることの意義を強調しました。これが、国際的なおもてなしにそのまま結びつくのです。英語を喋ることよりも、こうした日本文化の理解を、と言うことはこの講座では蛇足です。

 テキストは、33丁オモテの8行目、「うちなけきて」までを確認しました。話が広がったために、1頁分しか見られませんでした。
 ここで得られた新しいことは、行頭に付箋跡がある理由です。その行には、橋本本だけが伝える独自な異文がある目印である、ということに関係するものなのです。

 今日は、全盲の尾崎さんにとっては退屈だったかもしれません。目で見て確認する、ということが中心だったからです。それでも、いつも優しく横で囁いてくださる土屋さんが、うまくサボートしてくださっていたので安心して進められました。土屋さん、いつもありがとうございます。
 次回は、8月4日(土)です。

 終了後は、来月初旬に国立歴史民俗博物館に「鈴虫」を熟覧しにいくことで打ち合わせをしました。
 また、来訪者と書類のやりとりに加えて、国文学研究資料館で論文目録データベースの仕事を一緒にやっていた仲間と、場所を帝国ホテルに移して、今後の相談などをしました。
 講座の前後に5人の方々と、さまざまな打ち合わせということで、慌ただしい上京となりました。
 東京駅へ向かう有楽町駅前で、ビルの間に佇む神社を見つけました。有楽稲荷神社です。

180707_yuurakuinari.jpg

 京都では、祇園町に有楽稲荷大明神(別名、織田稲荷とも)があります。利休十哲の一人とされる織田有楽斎ゆかりの地。東京の有楽町という地とは、何かと縁があるのでしょう。また、調べてみます。
 銀座の路地裏にいくつも小さな神社があったように、このあたりにはこうした場所が残っているようです。また、おりおりに探索してみたいと思います。

 帰洛の道中は雨の心配はありません。京都駅に降り立つと、雨が止んだ後のようです。家に着く頃には、また降り出しました。
 私が名古屋を通過する頃に、千葉では地震があったようです。追い立てられるような気持ちになります。

 明日は奈良の「春日野国際フォーラム 甍〜I・RA・KA〜」で開催される、茶道文化講演会に参加します。
 そして、ご講演後の筒井紘一先生と面談をする約束となっています。
 昨年は、帰りに大雨に見舞われました。明日はどうでしょうか。
 
 
 
posted by genjiito at 23:54| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年06月29日

京都市役所とその周辺で NPO の手続きに奔走

 霧雨の中、京都市役所へ諸々の手続きをしに行きました。
 市役所は現在工事中のため、いつもの入口は見つけにくい状況にあります。

180629_NPO.jpg

 まずは、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の事業報告書の提出です。特定非営利活動促進法第29条の規定により、事業報告書を提出します。提出窓口は、京都市役所の中にある「京都市文化市民局地域自治推進室市民活動支援課」です。

 特定非営利活動法人は、事業報告書等の書類を毎事業年度始めに、所轄庁へ提出することが義務づけられています。特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉では、3月31日を事業年度の終了(3月決算)としており、事業報告書の提出は今月末までとなっているのです。ただし、今年は6月の月末が土曜日のため、7月2日(月)が提出締め切りです。

 書類の作成が大の苦手な私は、いつも提出するたびに訂正の指示を受けます。そのため、まずは見てもらって手を入れながら仕上げることが通例となっているのです。特に、市民活動支援担当の小松原さんには、毎回お世話になりっぱなしです。

 今日は、徹夜で仕上げた次の書類を窓口に提出しました。
 これに、「事業報告書等提出書」という表紙を付けています。

1 前事業年度の事業報告書
2 前事業年度の活動計算書
3 前事業年度の貸借対照表
4 前事業年度の財産目録
5 前事業年度の年間役員名簿
6 前事業年度の末日における社員のうち10人以上の者の氏名


 カウンター越しに男性の方が受け取って、すぐに点検をしてくださることになりました。小松原さんは電話の応対でお忙しそうだったので、声をかけるのは遠慮しました。目だけで、いつもありがとうございます、とお伝えしました。伝えたつもりです。
 書類の確認に少し時間がかかるとのことだったので、その間に別の証明書の手配をすることにしました。ただし、庁舎が工事中のため、私が好きなインド風の庁内を歩いて移動することができません。入って来た河原町通り側の出入り口を一旦外に出て、一本北側の通りの東端まで行きました。

 証明書発行窓口では、丁寧な対応でした。証明書はすぐにもらえました。

 次は、すぐ近くにある二条寺町の郵便局で、電子取引の手続きをしました。ここは、梶井基次郎の『檸檬』の舞台として知られている、今はもうない果物屋さんの横です。
 あらかじめ提出する書類は、すでに記入して持参していました。通帳やパスポートや印鑑を取り出して、言われるがままに手続きを進めます。すべてが終わったと思った時でした。「しばらくお待ちください。」と係りの方がおっしゃったので、カウンターの前に座って待っていました。
 5分以上経った頃だったかと思います。受け付けてくださった方が、「郵便物が自宅に届くまで、しばらくお待ちください。」と言ったつもりでしたが、とのことです。あれあれ。この局内で待つのではなかったのです。「しばらくお待ちください。」という表現は、「どこで、何を待つのか」が相手に伝わらないと、勘違いや誤解を招きやすい物言になることを痛感しました。

 郵便局から河原町通りを南下して、また市役所の中の市民課の窓口に戻りました。
 古く由緒のある扉を開けて入ると、先ほどの担当の男性がすぐに出てこられました。そして、私が提出した書類は特に問題はないので、このまま受理します、とのことでした。
 これまで、私が提出する書類は、ことごとく問題箇所を指摘されて戻って来ました。書き直しを何度かして、ようやく受け取ってもらえるのが常です。NPO活動で支援してもらっている運営メンバーの協力を得ながら、みなさまに助けられてここまで活動を展開して来ています。毎回、仲間にはご迷惑をおかけしながら、継続の手続きをしているのです。それが、なんと一発で通ったのです。思いもしなかった、ありえないことなので、半信半疑です。こんなこともあるものだ、と思いながらも、後日また電話があることを覚悟して、素直な気持ちになれないままに市役所を後にしました。とにかく、書類は通ったので気持ちは軽くなりました。

 午後からは、天王寺にある明浄高校で授業です。
 今日は変則的な時間割りのため、午後2時25分から4時15分までです。いつものように作文を書いたり、看護・医療関係のニュースを元にした学習にしました。さまざまな角度から物事を見る訓練をしているので、生徒が書く文章も少しずつ変化してきていることがわかります。一学期の授業はあと1回を残すのみとなりました。早いものです。

 帰ろうとした時、突然の大雨です。不安定な天気が続いています。
 明日は、早朝より岡山経由で鳥取県日野郡日南町へ行き、池田亀鑑賞の授賞式に参加してきます。
 その準備のため、今夜もまた慌ただしく立ち働いています。
 
 
 
posted by genjiito at 22:47| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年06月19日

地震の後に第10回[町家 de 源氏物語の写本を読む]

 昨18日の早朝、ドスンと1回だけ、家がワンバウンドするように強く大きく揺れました。
 携帯電話がけたたましく地震の警報を発しています。
 何も落ちてきません。何も倒れてきません。
 すぐに速報を見ました。震源地は大阪。京都は震度4とのことです。

 阪神淡路大震災の時は、大和平群にいました。あの時も早朝。石切や生駒山地の中の住宅地で、岩盤が固い山中だったこともあり、勉強部屋の壁掛け時計が一つ落ちただけでした。

 近所の様子をうかがっても、特にいつもと違うことはなさそうです。

 午後から、「be京都」で10回となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]が予定されています。
 土曜日は東京の日比谷図書文化館、日曜日は大阪観光大学と慌ただしい日々です。3日連続のイベントとなる、京都での『源氏物語』の写本を読む集まりは、初めての月曜日という設定になりました。
 近畿圏の交通機関が麻痺しています。参加を予定なさっていたみなさまは、足の確保がままならないこともあり、結局は参加者はありませんでした。

 そんな中、前日に大阪観光大学で開催した科研の研究会で、研究発表のために中国から参加の庄さんは、偶然にも京都に泊まっておられました。朝から立命館大学で調査をなさっていたこともあり、ありがたいことに一人だけの参加となりました。
 指導教授の研究室で、書棚から本が床に散乱している写真を見せてもらいました。相当揺れたようです。そうこうする内に、大阪大学の仲間からも、研究室の書架が倒れ、本が部屋中に散乱している写真が届きました。
 我が家は古い木造だったせいか、振動を適当に吸収してくれたのでしょう。何も被害がなかったのが不思議です。

 庄さんは永く日本に滞在時には、ワックジャパン(WAK JAPAN)を会場としている頃から、ずっとこの勉強会に参加です。しかし、昨秋、中国の恵州にある大学の教員として赴任されてからは、来られなくなり中断でした。それが、こうしてスポットとはいえ参加となったのです。これも縁というもの。楽しい出来事です。
 庄さんには、石田さんが作られた糸罫をまだ見てもらっていませんでした。現物を手にして説明していると、中国でも漢籍を書写する時にこうしたものを使っているとのことです。写真を送っていただくことになりました。
 その後は、中国で平安文学に関して国際集会を開催する計画を立案中だったので、そのことで打ち合わせなどをしました。いつもと違う、充実した時間を共にすることができました。

 この日は、写本は読みませんでした。したがって、次回は前回の続きなので、「8丁表6行目行頭」の「の【夜】能」から読みます。
 なお、今後の勉強会の日程は、以下のようになります。

第11回 7月28日(土)14時から16時 「be京都」
 ●8月の勉強会はお休みで、イベントを予定しています。
第12回 9月22日(土)14時から16時 「be京都」
第13回 10月21日(日)14時から16時 「be京都」


 帰り道、賀茂川の様子を見ました。中洲が大きくなっています。上流から大水などが出た時などの対策として、氾濫しないように川攫いを急いでほしいものです。

180618_nakasu.jpg

 また、ニュースによると、大阪でブロック塀が倒れてきたために、その下敷きになってお2人の方がお亡くなりになりました。痛ましいことです。その災害対策の解説で、塀の裏側に「控え壁」があるかどうかが問題となっています。塀を補強する役割を持つ、直角方向に突き出した補助的な壁のことです。
 建築基準法によると、ブロック塀では高さ1.2メートル以上の場合には、横幅3.4メートル以内ごとに「控え壁」を設けることが義務付けられているそうです。我が家には、玄関の横に3メートル半の塀があります。慌てて確認しました。そして、安心しました。しっかりと、3.4メートルの間をおいて、壁の左右端に「控え壁」が取り付けられていました。

180618_hikaekabe.jpg

 屋根も春先に修理しました。とりあえずは大丈夫のようです。

 昨日は、いろいろな方から、地震のお見舞いメールをいただきました。私が古い家を改修して住んでいることを御存知の方が、心配してくださってのことです。気にかけてくださっていることを知り、ありがたいことだと思っています。とにかく、ギシギシと音のする家で、まだ2階には、昨春に引っ越した時のままに、本が未整理の状態で放置されています。床がユサユサしています。それでも、今回の地震では何事もありませんでした。とは言うものの、これは早急に2階から本を下ろさなければなりません。この夏は、家の大掃除に専念することになりそうです。
 
 
 
posted by genjiito at 20:19| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年06月16日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(2018年度-その2、異文を確認)

 相変わらず、バタバタと上京です。今日は不安定な天気のため、富士山は雲に取り囲まれていて見えません。新幹線の車窓からこの富士山を見ることは、楽しみの一つとなっているのです。
 もっともそれよりも今日は、新幹線の中で乗客に切りつけられて死傷者を出した事件が頭を離れません。つい、同じ車輌に乗っておられる方を見回してしまいました。京都から名古屋までは、辺りに気を配りながら座っていたのです。
 無事に東京に着き、新橋で降りると、駅前では恒例の大駒での大盤将棋大会をやっていました。

180617_syougi.jpg

 平和だなと実感しつつ日比谷公園に入ると、アフリカを中心とした国々のイベントをやっていました。ウガンダの方々の乗りは楽しく拝見しました。

180617_uganda.jpg

 日比谷図書文化館の前では、多くの人がスマホを片手に、ポケモン探しに熱中しておられます。まだブームは続いていたのですね。私はすっかり醒めていたので、かえって異様な光景に見えました。

180617_pokemon.jpg

 日本は平和だなという思いを強くしました。世界の情勢を見聞きする中で、これでいいのかなという思いも胸を過ぎります。しかし、私などがどうのこうのと言える筋合いではないので、それ以上には考えないことにして館内のホールに入りました。
 地下のレストランで食事をしながら、科研やNPOでさまざまな形で支えてもらっているAさんと、今後の打ち合わせをしました。難問山積の折でもあり、話は尽きません。4階の事務室まで来てもらい、今日配布する資料のホッチキス止めの作業を手伝ってもらいながら、さらに話は延々と続きました。

 今日の講座では、いつものような長い前置きは控え、京都で作られている筆のことと、元号には漢籍だけではなくて和書から採用される可能性があることなどをお話しました。そうしたことは早々に切り上げ、2時間のほとんどは写本を読むことと、異文を確認することに専念しました。
 例えば、次のような例です。引用した17種類の写本の略号は、以下の通りです。

橋本本・・・・底本
 大島本[ 大 ]
 中山本[ 中 ]
 麦生本[ 麦 ]
 阿里莫[ 阿 ]
 陽明本[ 陽 ]
 池田本[ 池 ]
 御物本[ 御 ]
 国冬本[ 国 ]
 肖柏本[ 肖 ]
 日大三条西本[ 日 ]
 穂久邇本[ 穂 ]
 保坂本[ 保 ]
 伏見本[ 伏 ]
 高松宮本[ 高 ]
 天理河内本鉛筆なし[ 天 ]
 尾州河内本[ 尾 ]

ゆかす[橋=中]・・・・052539
 とけす/け$け〈朱〉[大]
 とけす/す〈改頁〉[尾]
 とけす[麦阿陽池御国肖日穂保伏高天]


 ここで確認できることは、橋本本と中山本は「ゆかす」となっていて、それ以外のすべては「とけす」となっていることです。「ゆかず」は「心が晴れない」、「とけず」は「打ち解けない」という意味です。まったく異なる語句なのです。

 次はもっと複雑に入り組んでいます。

ナシ[橋=中]・・・・052582
 まみ[大麦阿陽池御国肖日穂保伏高天]
 まみ/見$〈削〉み、み=み〈削〉[尾]
いと[橋=全]・・・・052583
はつかしけなりまみなと[橋]・・・・052584
 はつかしけなるまみなと[中]
 はつかしけに[大麦阿陽池御国肖日穂保伏高天尾]
けたかう[橋=大中阿池国穂保伏尾]・・・・052585
 けたか[麦]
 気たかふ[陽]
 気たかう[御肖日高天]
おかしき[橋]・・・・052586
 をかしき[中]
 うつくしけなる[大麦阿陽池国肖日穂保高天]
 ゝつくしけなる(うつくしけなる)[御伏尾]
ありさまなり[橋=中]・・・・052587
 御かたちなり[大陽池御国日穂伏高天尾]
 御かたち也[麦阿肖保]


 「まみ」に注目すると、傍記が本行の本文に混入したことが想定できます。ただし、証明の手続きがややこしいので、ここでは省略します。
 また、橋本本と中山本は「おかしき御ありさま」で、それ以外のすべては「うつくしげなる御かたち」です。ここでも、「愛らしい」と「美しい」という意味の違いがあります。
 こうした異文が伝わって来ている理由を、私なりの解釈で説明しました。
 一言でいうと、平安時代から元々2つの物語本文が伝わって来ていた、ということと、傍記されていた字句が本行の本文に混入した、ということに尽きます。
 丁寧に説明したつもりなので、受講生のみなさまには伝わったと思います。
 さらには、『源氏物語』の異文の諸相がわかるようにと思って、『源氏物語別本集成』と『源氏物語別本集成 続』を回覧し、さまざまな本文が伝わっていて、なおかつその翻字が非常に遅れていることもお話しました。

 講座が終わると、有志の方10名と一緒に有楽町駅前に移動して、テキストである橋本本を現代語訳する勉強会となりました。
 これまでは、「わらわやみ」をどう訳すかで止まっていました。今日はさらに進み、「あな、かしこや」は「ああ、畏れ多い」でいいのか、で議論百出。「うちゑみつつ」は「微笑みながら」よりも「にこやかに」の方がいいのではないか、などなど意見や話題が尽きません。果ては、「さるべきふんつくりて」は、「しかるべき護符の分を作って飲ませ」では意味がわからないので、何を作って飲ませたのかをもっと調べよう、ということになりました。
 結局は、また来月続きを、となって、散会となりました。
 毎月上京し、こうしてさまざまなことをお話しし、一緒に考えることは本当に楽しい時間となっています。時の経つのを忘れて、とはこうしたことを言うのでしょう。恵まれた環境で『源氏物語』を一緒に読む仲間がいることに、感謝しつつ最終の新幹線で帰洛の途につきました。

 明日は、大阪観光大学で私の科研(A)の研究会があります。『源氏物語』をビルマ語に訳された方や、『更級日記』をハンガリー語訳なさった方、中国からは『源氏物語』の中国語訳に関する発表をしに来てもらえます。これ以上にない充実した内容の研究会になることでしょう。
 みなさまに感謝しての日々となっています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年06月13日

第10回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 来週早々の6月18日(月)午後2時から4時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で10回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。この日は月曜日です。いつもと曜日が異なりますので、お気をつけください。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 本日13日(水)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、呼びかけの記事が掲載されましたので、あらためてこのブログでも紹介します。

180613_be-G.jpg

 今回は、8丁表6行目行頭の「の【夜】能」から読みます。
 前回の内容は、「[町家 de 源氏](第9回)(【画像変更】糸罫が動いた結果)」(2018年05月26日)をご覧ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内をお送りします。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円です。2回目以降は二千円です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の会員は割り引き特典があります。
 
 
 
posted by genjiito at 09:00| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年05月26日

[町家 de 源氏](第9回)(【画像変更】糸罫が動いた結果)

 勉強会場としてお借りしている「be京都」は、いつも気持ちがいい部屋となっています。

180526_jiku.jpg

 窓際には、認定証がありました。初めて見ます。

180526_syou.jpg

認定証

 名称 「be京都」
 所在地 京都市上京区

京都市民が残したいと思う
〞京都を彩る建物や庭園≠ニして
選定します

平成27年1月6日

京都市長 門川大作


 今日は参加者4人で、実に多くの問題を考えました。
 その内でももっとも時間をかけたのは、写本に書かれている文字が傾いたものについてです。
 ああでもない、こうでもないの末に、一応の決着を見ました。

180526_itokei.jpg

 まず、10行書きの枡形本で、5行目の行頭(赤矢印の箇所)が少し左に傾いていることに始まります。
 それに呼応するかのように、その行末は、もう1字書けそうなスペース(青○印)が空いています。
 これらの状況は、紙面に置かれた糸罫の右側が少し上に引き上げられたため、この行末が下限となっていたと考えられます。
 次に、6行目の行頭「里」が、右隣の「て」で始まる行との幅が開いていることについて。
 5行目で「てしも」と書き始め、墨継ぎのために筆を休め、「可ゝる」と書き出したところで糸罫の右側が上に引かれるように少しズレたと思われます。また、この「可」は、これまでの「可」とは違う筆の入り方をしています。私がよく比喩として使うように、トイレに行って帰ってきたことを想定してもいいでしょう。
 7行目の行頭「そは人」と書いていき、その行末の「八へり个」まで書く間に、書写者は糸罫がずれていることに気づいたようです。私は、「そは人の」の「の」が「人」の左下で不自然な位置にあるので、この文字あたりからではないかと見ています。
 8行目の行頭の「れ」が前行末尾の「个」と墨色が異なり、時間の経緯を示していることから、ここで糸罫を置き直してのではないかと推測したらどうでしょうか。
 糸罫を所定の位置にセットしてから、墨継ぎをして「といひいつる」と書いていくのです。ただし、まだ置き方が中途半端だったのか、その行末では「さること」に続く「も」を、十分に空間があるにもかかわらず、左行間に書いています。

 糸罫がずれたのは、まだ理由があります。
 4行目の中ほどで、「人もまこらへ」と書いた時、すぐに間違いに気づき、「こらへ」の上から「ことに」となぞっています。その横の傍記である「こと尓」は、本行の「ことに」がなぞったものであるために読みにくいことから、後の人が傍記の形で正しい読みを書き添えたものと思われます。

 ここには、さらに書写者のミスがあります。それは、「まことに」となぞったすぐ後に、「をし」と書いているところです。ここは、諸伝本ともに「を可し」となっているところです。「可」が小さかったために見過ごされ、結果的に脱字の状態で書いたことになったのです。
 とにかく、ここを書写していた人は、ここでなぞりと脱字を冒すほどに集中力を欠いていた時でもあり、つい糸罫を不用意に触って動かしたのだろう、と考えてみました。そのために、5行目から8行目の頭部が左に少し振られたように書かれているのです。

 以上はすべて、糸罫が動いて行が少しゆがんだ、ということを想定しての推測です。このように考えると、写本の紙面に書写された文字列のゆがみや、書写間違いや訂正を含む書写者の状況が説明できるのです。
 一案として提示しておきます。

 今日は、8丁表5行目行末の「秋」まで読みました。
 次回の[町家 de 源氏物語の写本を読む]の集まりは、6月18日(月)午後2時から「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で行ないます。この日は、月曜日です。曜日にお気をつけください。
 
 
 
posted by genjiito at 21:15| Comment(0) | ◎NPO活動