今日の宇治市は、京都市内よりも幾分凌ぎやすい風が吹いていました。
シェア型書店HONBAKO京都宇治での源氏講座は、最初に街中の変体仮名からです。
配布した資料に掲載した幾つかの写真の内、次の一枚について話題にしました。
これを見かけた子供が「わ」と書いてあるけど「は」の間違いではないの?、と学校の先生や家族などに尋ねた時、大人はどう答えるのでしょうか。日本に住みながら説明のできない文字を街中に掲示することは、教育環境を混乱させます。もちろん「ハ行点呼音」などという専門用語などが出てくる人は一握りです。時代とともに変わりつつある表記が放置されているものとして、例にあげました。
また、シェア型書店HONBAKO京都宇治が児童書など318冊を地元の学童保育の子供たちのために寄贈したことを報じた、一昨日の京都新聞の記事を取り上げました。勉強会に活用しているこの会場は、さまざまな社会貢献活動もしていることの確認です。衰退の一途を辿るといわれている本屋さんの、これからの生きる道の1つを示している出来事だと思います。書籍の制作や流通・販売のみならず、読んだ後の書籍のありようを考える、いい機会になります。そんな中でのシェア型書店HONBAKO京都宇治の存在意義が、こうして顕彰されていくことはいいことです。
さらには、先月27日の京都新聞に掲載された「第1回村田記念古典の日文化基金未来賞」を受賞した3分野のうち、文学・思想分野で受賞した赤澤真理さん(大妻女子大)の記事も紹介しました。
私が2008年に国文学研究資料館で源氏物語展の準備をしていた時に、学術振興会の研究生として国文学研究資料館で学んでいた赤澤さんには、いろいろと手助けをしてもらいました。赤澤さんは、建築学・美術史・文学の学際的な分野で幅広い研究をされていたので、図録である『源氏物語 千年のかがやき 立川移転記念 特別展示図録』(国文学研究資料館編、2008年10月、思文閣出版)に収録した『源氏物語団扇画帖』についても、特にその図様や建築などに関して多くのアドバイスをいただきました。その後も、さまざまな分野で活躍中であったことは知っていたので、今回の受賞は若き日の赤澤さんにお世話になった者として、嬉しく思っています。地道な研究がこうして評価されることは、すばらしい事です。おめでとうございます。
相愛本『橋姫』(断簡)の本文の確認は、第16丁表4行目から18丁表4行目までを扱いました。
今日は、私が提示した「変体仮名翻字版」に関して大きな変更を相談しながらできたので、手応えのある勉強会となりました。
まず、写本に書かれている7丁表の9行目の次の文字列を掲示します。
これを、私は「能多まひ/多ま〈判読〉」としました。しかし、「多ま」はどう見ても問題ありの字形です。「能」の次の「多」は「ゝ」では、とか、それに続く「ま」は「王」か「堂」ではないか、等々。『源氏物語別本集成』の「橋姫」(453798)では諸本10本ともに「のたまひ」なので、ひとまずはこのまま〈判読〉でということで先に進みました。
しかし、次の丁に出てきた文字の「堂」を確認して、また立ち戻りました。
「堂」の文字を整理しておきます。
真ん中に赤枠で囲った「堂」が、問題としている文字です。それと字形の似ているものを前後の丁から抜き出して比較すると、これは「堂」としていいと言えます。
ということで、先の文字列は「能堂ひ/堂〈ママ、諸本のたまひ〉」とすることにしました。
さらに、「変体仮名翻字版」の確認を進めて行くと、この写本に特有の特徴が見られることがわかりました。それは、脱字です。次の18丁表の1行目の「可」と3行目の「へ」の2例が、その傾向を見せています。
1行目は「本の免世/免世〈ママ、諸本めかせ〉」となり、諸本が「ほのめかせ」とする箇所で「か(可)」が脱字となっています。
3行目は「八り川る/八り〈ママ、諸本はへりつる〉」となり、諸本が「はへりつる」もしくは「はへるとて」という本文を伝えている箇所で、「へ」の脱字があると思われる箇所です。
翻って、今回問題にしている7丁表の9行目で「能多まひ/多ま〈判読〉」とした箇所は、この写本が脱字の傾向があることを勘案すると、やはりここは「能堂ひ/堂〈ママ、諸本のたまひ〉」とした、「ま」の脱字としたことの蓋然性が高いことを傍証したともいえます。
こうしたことを、参会者みんなで、ああでもない、こうでもない、と意見を出し合う中で確認しました。みんなで話をしながら論証したこととなり、写本の難解な箇所を読み解けた充実感を持つこととなりました。
今日「変体仮名翻字版」の確認をした範囲を、以下にあげます。
■相愛本『源氏物語 橋姫』(断簡)
第17丁表5行目〜第18丁表4行目
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者可奈く・可春奈らぬ・【身】能本と尓・【侍】と・
【夜】ひる・可乃・【御】可け尓・川き弖・ナシ・【候】し可八・
をのつ可ら・毛能ゝ/(毛能能)・遣し幾越・三・多てま
徒り・そ免し尓/そ〈*〉・【御心】より・あまりて・[260704_ココマデ]
[260801_ココカラ]於ほしける・とき/\/(ときとき)・堂ゝ/(堂堂)・【二人】の・【中】尓
なん・堂まさ可尓・【御】世うそこ乃/そ〈*〉・可よひ
毛・【侍】し・可た王らい堂遣れ葉・く八し
う・きこゑさせ春・いまはの・とち免尓・
なり・【給】弖・いさゝ可/(いささ可)・能堂ひ越く/堂〈ママ、諸本のたまひをく〉・【事】能・
【侍】し越・可ゝ累/(可可累)・【身】能・をきところなく/な〈次頁〉、(17オ)
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いふ世く・【思】・【給】へ・王たり・い可尓し
て可は・きこし免し川多ふへきと・
八可/\し可らぬ/(八可八可し可らぬ)・祢んす能・川いて尓も・
於もひ・堂へ徒るを・【仏】八・よ尓・越八し介り
となん□/□〈ママ、空白〉・【思】・【給】へ・し里ぬ累・【御】ら無世
佐春へき・毛能し・八んへり・いまは・な尓可八・
やき毛・春弖・【侍】なり・可く・あさゆふ乃・
きえ越・しらぬ・【身】能・うちすて・【侍】奈は・
をちゝ累/(をちち累)・やう毛こそ登/そ〈*〉・い登・うしろ
め多なく・【思】・【給】ふ礼とは/へ礼&ふ礼と〈判読〉、は$、(【給】へ礼は)・古乃・【宮】王多り尓も/り&り、も〈丁末左〉、(17ウ)
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とき/\/(ときとき)・本の免世/免世〈ママ、諸本めかせ〉・【給】ふ越・まちい弖・【給】志
堂てま川里し可八・春こし・多の毛しう・
可ゝ累/(可可累)・越里毛や登・祢んし・八り川る/八り〈ママ、諸本はへり〉・ち
可ら[260801_ココマデ]・
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帰りの電車から見えた西方に沈む夕陽は、今日の満ち足りた気持ちもあってか、印象的な残像を残してくれました。車中からの写真なのでブレながらも、記念写真としてアップします。
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