京都駅舎の上にある美術館「えき」KYOTO で、青山悟氏の作品展「刺繍少年フォーエバー」を観て来ました。刺繍でこのようなことができるのか、という驚きと、その発想の豊かさに啓発を受ける展覧会でした。
工業用ミシンを駆使して作製された刺繍作品は、何度も近寄って目を凝らして観るものでした。その背景に、ジェンダーの問題や労働や資本主義の構造への問題意識があり、批評とユーモアが綯い交ぜになった世界は、初めての私にはなかなか付いていけません。しかし、いろいろなことを考えさせられました。
青山氏がウイリアム・モリスの労働に関する思想の影響を受けていることに関しては、モリスの絵が大好きな妻が詳しく説明してくれました。岩波文庫から刊行されたモリスの本の表紙も、刺繍で作品化されていました。
もちろん、ムンクやルノワールの絵も見事に刺繍で再現されています。
楽譜を刺繍で見せる所では、その製作の過程がビデオで流れていました。五線譜や音符はもとより、その背景の白い紙の表現にまで神経が行き届いていることを知り、唖然とするばかりです。
極め付けは、スーパーのレシートを刺繍で再現したものでしょうか。
子どもたちへの暖かいまなざしや、高市総理が就任時に「働いて 働いて」を強調したことを揶揄するかのような作品もありました。
帰りには、久しぶりに大階段を降りました。少しだけ雨がチラついていたので、いつもは使わない上から見て左側の階段を降りたのです。すると、またもやこの駅ビルの設計が、高齢者や身体にハンディキャップを持つ人をせせら笑うかのような構造であることを痛感しました。弱者を愚弄する視点が露骨です。この急階段に、中央階段と同じように手すりがまったくないのです。階段を降りながら、右足に不安を抱く私は、怖いと感じたというのが率直な感想です。恐ろしい階段です。
その横にエスカレーターがあるので、それで十分だろうということなのでしょう。文句があれば歩くな、ということのようです。
京都駅ビルは、1991年に国際指名コンペとして公開審査がなされて完成したものです。しかし、高齢者・子ども・身体の不自由な方への配慮などは一顧だにされず、問題にもならなかった時代の審査だったようです。
その京都駅ビルの設計が非人間的であることを、私は手すりを通して問題提起をしました。そこでは、京都駅ビルの設計に関する要望書も提示しました。以下に、その要望書をひいて、再度問題提起をします。
「京洛逍遥(949)母の祥月命日に東寺へ行った後、京都駅舎への要望書を考える」(2025年10月05日)"http://genjiito.sblo.jp/article/191508554.html"
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【京都駅ビル 大階段および外部階段の安全性向上に関する要望書(案)】
提出先
京都駅ビル開発株式会社
または JR西日本 京都支社 ご担当者様
件名
高齢者・子ども・身体の不自由な方への安全配慮に関する手すり改善のお願い
1.要望の趣旨
京都駅ビルの各階段(特に大階段および西側郵便局方面への外部階段)において、手すりの位置・太さ・配置が一部の利用者にとって使いづらく、高齢者や子どもが安全に通行できない箇所が見受けられます。
美観を重視された意匠であることは理解しておりますが、来訪者数・観光客の増加に伴い、より幅広い層に配慮した安全対策をお願い申し上げます。
2.具体的な指摘事項
・手すりの太さ
西側郵便局へ通じる外部階段の中央手すりが非常に太く、成人でも握りづらい形状となっています。
→ 握り径 φ32〜40mm 程度の把持用手すりを併設していただきたいです。
・手すりの連続性
手すりが短く分断されており、上り下りの途中で途切れています。
→ 途切れのない連続手すりへの改修をご検討ください。
・両側の手すりの欠如
多くの階段で中央に1本しか手すりがなく、両側に手すりが設置されていません。
→ 高齢者・子ども・ベビーカー利用者などの安全確保のため、両側壁面への補助手すり設置をお願いいたします。
・高さの改善
一部の手すりが高く設定されており、握る際に肩が上がってしまう姿勢となります。
→ 人間工学的な握り高さ(約80〜90cm)への調整を望みます。
3.背景と利用実態
京都駅ビルは国内外の観光客が多く訪れる公共的空間であり、大階段や屋外階段は京都の象徴的な景観の一部でもあります。
しかし現在、特に高齢者・子ども連れの方から
「手すりが高くて持てない」「太すぎて滑る」「両側にないので怖い」
といった声が聞かれます。
事故が起きてからの対応ではなく、先んじた安全対策をお願い申し上げます。
4.提案
現在の意匠を尊重しつつ、
@細径サブ手すりの併設、
A両側補助手すりの設置、
B視認性の高い段鼻ラインの整備、
のいずれか、または段階的な改修をご検討ください。
5.結び
京都駅は京都市の玄関口であり、「安全で美しい階段」は市民と観光客双方の安心を支える重要な要素です。
今後の改修・維持管理の中で、本要望をご参考にしていただければ幸いです。
提出者(例)
京都市在住 ○○○○
連絡先(任意)
提出日 2025年○月○日
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さらには、大阪公立大学の教授による、デザインありきの時代錯誤としか思えない提灯記事が京都新聞に掲載されました。次の記事が、そのことを取り上げたものです。
「[その 3/3]京都駅舎の設計に関する新聞記事への違和感」(2025年10月12日)"http://genjiito.sblo.jp/article/191514994.html"
現在、京都駅前周辺の再開発が議論されています。どのような方々が検討なさっているのかは知りません。しかし、どうか1991年に行なわれた国際指名コンペの再現のような、愚かな決定をなされないことを願っています。少なくとも、高齢者や身体が不自由な方々のことを排斥した議論に終始しないでください。これからの日本における高齢化社会の実態を踏まえた、健常者や見常者だけのための駅ビルを造らないことを、強く意識しての決定を示してほしいものです。京都人が、愚かなことを二度も繰り返さないためにも……
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