2026年06月06日

宇治で相愛本『橋姫』の変体仮名を読む会(12)と凡例追補のこと

 シェア型書店HONBAKO京都宇治で『源氏物語』の変体仮名を読む会も、今日で12回目となりました。断簡ということもあり、あと2回で「橋姫」は終わりです。次は、「手習」(断簡)を読む予定です。

 今日はまず、[街中の変体仮名]の確認からです。

260606_なか田&祢保希.jpg


 掲示されていた店名が、「奈可田」「な可田」「なか田」と3つの仮名文字が異なります。また、「田」は漢字なのか変体仮名なのか、お店に確認が必要です。
 「祢保希」と「うな希・希々花」の「希」は、変体仮名であれば「け」と読みます。さまざまな使われ方をしていることがわかる例として紹介しました。

 続いて、「橋姫」の[変体仮名翻字版]の確認です。
 仮名文字の確認をする中で、字母をどこまで書かれている字体に忠実に再現表記するか、ということで時間をかけて検討を重ねました。
 「キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物語 藤裏葉(断簡)』を読む(第4回)」(2026年05月23日)"http://genjiito.sblo.jp/article/191707795.html"の報告で取り上げたように、「字母(漢字)に近い字体が複数ある時には、付加情報〈*〉を付す場合がある。」としたことです。あの時は、「多/多〈*〉」や「奈れ/奈〈*〉」の例にあげて、判断に迷う時には付加情報として「■/■〈*〉」を追記することを提案しました。

 今日はさらに厳密さと許容を視野に入れて、次の文字に関しても「■/■〈*〉」を付記することになりました。[変体仮名翻字版]の表記基準をより正確にして、再現性の高い翻字になるようにしたものです。

 こうした対処の前提として、すでに国際基準のユニコード(UTF8)に変体仮名が採択されているのに、それが現在作成中の本文データベースに活かされていない、という反省があります。文部科学省は、教育現場が混乱するという理由で、変体仮名は学校教育の中では認めていません。しかし、1900年(明治33年)に1字1音に制限された文字政策が、このままずっと日本だけが死守され続けるとは思われません。世界的な視野に立つと、ユニコードが日本の仮名文字表記の世界に取り込まれる時代が、いづれ来ても不思議ではありません。そうした時代が来た時のことを想定して、現在コンピュータで作成している『源氏物語』の本文データベースにおいて、禁欲的に五十音図に固執することなく、近い将来を見越したデータベースを作ることにしました。

 その意味からも、ユニコードに採択されている変体仮名の字体は、今のうちから、いつでもユニコードを取り込んだより正確な翻字に移行できるようなテキストデータを、極力意識して作成しておくことにしたのです。
 具体例として、「所」「そ」「多」「尓」を例として提示します。

260606_変体仮名分別そたに.jpg


 より崩れた字形を尊重し、それよりも字母である漢字に近いものに対しては、「■/■〈*〉」の形式で草体化する前の字形を付加情報を付けておくのです。そうしておけば、ユニコードを取り入れた本文データベースに転換する際に、比較的容易に文字データの移行が行なえます。今しばらくの、移行期間における暫定的な措置ということです。

 この新しい方針で、今日確認した[変体仮名翻字版]の翻字データをあげます。
 赤字にしている箇所が、その対処がなされている部分です。

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(2)相愛本『源氏物語 橋姫』(断簡)第一四丁裏八行目〜第一六丁表4行目
 [変体仮名翻字]翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
  傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
  補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
  底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
  [追補]字母表記保留(/■〈*〉)
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堂まえと・【思】よらさりし・【一人】こと越・支
き・【給】介ん堂尓・ある毛能を・い登・可
堂葉奈ら無・ナシ・ひきいり川ゝ/(ひきいり川川)・三那きい・
【給】八春・堂ひ/\/(堂ひ堂ひ)・そゝの可し/(そその可し)・きこゑ・
堂まえと・ゝ可く/(と可く)・きこゑ春さひ弖・ナシ・
や三【給】ぬ礼葉・ナシ・い登・くち越しう・於ほ
ゆ・その・川い弖尓も・い/$、(いと)・あやしう/と$あ・よ川
可ぬ・於毛ひやり尓弖/尓〈*〉・春こ春・あ里さま
とも尓・於もひの・本可なる・【事】なと・八川
可しう・於ほい堂り・ひと尓多尓・い可て可/可〈判読〉、(14ウ)
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しら礼し登・者くゝ身すく世と/(者くく身すく世と)・介ふ・あ
春とん・しらぬ・【身】能・のこり・なさ尓・さ
す可尓/尓〈*〉・ゆく春へ・と越幾・【人】八・於ちあふ
礼弖・佐春らへん/△&佐・【事】・これの三こそ・遣
/尓〈*〉・よ越・八那れん・き王能・本多しなり
介れ登・うち可多らひ・堂まえ葉・【心】
く累しう・身・多てま川里・【給】・王さ
登の・【御】うしろ三堂ち・八か/\し
幾/(八か八かし幾)・すち尓葉・【侍】ら春とん・うと/\し
可ら須/(うとうとし可ら須)・於ほしきこゑさ世んとなん/(15オ)
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【思】・【給】ふる・し八し毛・な可らへ・【侍】らん・いのち
能・【程】は・ひと【事】毛・可く・うちいて・きこゑ
さ世てん・さま越・堂可く・【侍】まし
くなん奈むと/と申〈判読〉&奈む・申・【給】へ八・い登・う礼志
幾・【事】と・於ほし・乃多まふ・佐弖・
あ可【月】可多尓・【宮】能・【御】をこなひ・し・【給】□/□〈空白〉・
本と尓・可乃・をい【人】・めしい弖ゝ/(めしい弖弖)・あい・【給】へ
里・ひめ【君】乃・【御】うしろ三尓弖/尓〈*〉・さふら
者世・【給】ふ・【弁】の【宮】とそ/そ〈*〉・いひける・とし八・
六十尓・春こし・たらぬ・本と奈れ登・三やひ可尓/ひ〈次頁〉、(15ウ)
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遊へある・け者ひ・して・毛の奈と/な〈ママ〉・
きこゆ/こえ〈判読〉&こゆ、(きこえ)・【古権大納言宮】/【古】〈ママ〉・よと・ゝも尓(とも尓)・毛能ふ/ふ〈ママ、諸本を〉・【思】
つゝ/(【思】つつ)・やまひつき・八可奈く/△&可・なり・【給】尓し・あ里さ
ま越・きこゑい弖ゝ/(きこゑい弖弖)・なく・【事】・可きり奈し[260606_ココマデ]・(下略)
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 帰りに宇治橋へ行くと、昨日来の大雨とダムの放流の影響もあってか、中の島に架かる橘橋と朝霧橋が通行禁止となっていました。

260606_宇治川の急流.jpg

 この宇治川の急流を見ると、浮舟が入水して亡くなったという話が、いかにも事実であるかのように体感できます。実際に近年、流されて死にかけた方が何人もおられるそうです。
 今日の宇治川の勢いを宇治橋の上から見て、そうしたことが納得できました。




posted by genjiito at 23:44| Comment(0) | ■講座学習
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