先週に引き続き、相愛大学での古写本の調査に行きました。
今回は、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」「蜻蛉」と、国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」の原本と寸分違わない臨模本を完成なさった宮川さんも東京から合流です。相愛大学本『源氏物語』は断簡ながら価値の高い本なので、この臨模本を作成し、鎌倉時代の『源氏物語』を体感できる写本を残そうという一大プロジェクトの一環となるものです。
今日は、一冊の写本を宮川・辻・伊藤の3人が一緒に見ていくことにしました。
一人で見ていくのとは違って、新しい発見がたくさんありました。興味と関心が違う者が、6つの目で見つめるのですから、メモを取りきれないほどの新しい事実に気づかされ、そして意外なことが見つかります。
まずは「帚木」からです。
現在一般に読まれている大島本の『源氏物語』とは異なる文章で語られているので、つい物語の内容に気持ちが動きます。しかし、今は書かれている本文を正確に書き起こしていくのが本務です。それだけに、ああでもない、こうでもないと、さまざまな可能性を考えながら翻字を進めました。
宮川さんは、書き写されているままの字形で模写するために、しっかりと字母を確認しながら、手元の草稿本に様態を記録しておられます。
次は、「橋姫」です。ここでも、多くの発見がありました。
続いて「藤裏葉」、そして「宿木」、最後に「手習」と、時間を惜しむようにして次々と写本の疑問箇所を確認しました。
もちろん、その間に食堂で昼食はいただきました。
森の中に建つきれいなキャンパスなので、環境は格別です。
今回は、3人でああでもない、こうでもないと、知恵を出しながら書かれている文字の確認をしました。そのため、一人で見ていてはわからないことが、次々と解明できました。「三人寄れば文殊の知恵」と言います。しかし、今回の場合は「岡目八目」の方が相応しいと言えます。
宮川さんを挟んで、両側から覗き込むようにして見る辻さんと私が、自由に意見を言うというスタイルです。宮川さんは、書写をする立場で疑問のある箇所の指摘をなさいます。それに対して、両側の2人がまったく違う立場から意見を言うのですから、おもしろい遣り取りになりました。
すべての確認ができたわけではありません。しかし、目の前にある写本の書写者が書き写した姿勢や書き癖は、ほぼわかりました。「う」「お」「そ」「と」「ひ」「ま」「よ」は独特の字形をしているので気をつける必要があります。そして、ハーバード大学本『源氏物語』などと比べると、同じグループを形成する写本だと思われます。ただし、この相愛大学本の断簡には、脱字や衍字を含めて、ケアレスミスの仮名文字が多いので、要注意の写本であることもわかりました。ハーバード本などよりも一段若い写本を写したものかも知れません。とすると、まったく姿が確認されていない平安時代の写本の面影を伝えている、と考えてもいいのかもしれません。今、書き写されている物語の内容については措いています。書き写されている文字だけに拘っての感想です。
微妙な字形の文字は、顕微鏡で写真を撮りました。
新しく得られた知見は、来春刊行予定の書籍に収載します。
調査結果の報告は、しばらくお待ちください。
今回も、図書館の日野さんにはお世話になりました。ありがとうございました。
8月下旬に再訪して、調査を補完する予定です。
たびたびのことで恐縮します。
ご高配の程を、よろしくお願いします。
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