今日は、JR奈良駅前にある奈良100年会館の中ホールで開催された、茶道文化講演会に行って来ました。第58回目となるこの講演会は、茶道裏千家淡交会奈良支部が主催するものです。私のお茶の先生が、この淡交会奈良支部の副幹事長をなさっていることもあり、毎回出席しています。今回は、『源氏物語』と縁の深い石山寺の座主のお話ということもあり、妻共々楽しみにして行きました。
400名以上を収容できる会場は、ぎっしりと満員です。圧巻でした。
まず、ビデオで「水屋のしごと」が30分間上映されました。
本日の講演の講師は、石山寺の鷲尾龍華座主で、演題は「女流文学ゆかりの石山寺より」でした。4年前の就任当初から、石山寺では初めての女性の座主ということと、大河ドラマで『源氏物語』が取り上げられたこともあり、さまざまな話題を提供してくださっている座主です。
初めて知ったこととして、石山寺と東大寺の縁の深さがあります。大仏建立にあたり、金の入手に石山寺が深く関係していたのです。奈良の地で石山寺のお話を、あらためて新鮮な思いで聞くことになりました。
お話が『源氏物語』をはじめとする平安文学のことに移ると、石山寺参籠のことが『石山寺縁起絵巻』(重要文化財)をスクリーンに映写しながら説明されました。『蜻蛉日記』の藤原道綱母、清少納言の『枕草子』、菅原孝標女の『更級日記』などを引きながら、分かり易く解説してくださいました。
京都から石山寺までは、早朝に徒歩で出掛け、逢坂の関を越えて打出の浜から船に乗り、瀬田川を下って夕方には石山寺に着いたそうです。
4年前から石山寺の座主をなさっている体験を踏まえ、日常のことも含めて笑いを誘いながら、楽しく語ってくださいました。
なお、奈良東大門の門前にあった石山寺の塔頭の一つの密蔵院は、参拝者にお茶の接待をする「茶丈」でした。それが昭和44年(1969)に、石山寺の現在の場所に移築されたそうです。それに関連する話として、非常に興味深いことが語られました。
それは、島崎藤村が明治26年(1893)に教え子との恋愛に悩んで関西を旅した際に石山寺を訪れ、その時に「ハムレット」1冊を奉納したのだそうです。その後、約2か月も密蔵院に寄宿し、この時のことは「茶丈記』(『文学界』第7号)、童話『眼鏡』、『力餅』などに描かれていて、境内には「石山寺にハムレットを納むるの辞」の一節が、文学碑として設けられています。それなのに、その奉納されたという「ハムレット」が、いまだに見つかっていないそうなのです。いつかどこかから出て来るのを楽しみにしている、とのことでした。これには行方不明の写本を探す趣味を持つ私も、大いに興味を持ちました。
石山寺には、『源氏物語』の関連ではもちろんのこと、西国三十三所の観音霊場の巡拝でも何度も来ています。さらには、私の編著である『国文学解釈と鑑賞別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.28 蜻蛉』(至文堂、2003年)には「石山寺散策−源氏のゆかりの地を訪ねて−」と題する拙文を掲載しています。そこには、宇治から石山までの行程図を掲載しました。参考までに引用します。
これからもご縁のある石山寺です。今日は、座主の講演を楽しんできました。
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