いつものように、午前10時過ぎに新幹線で東京駅に着きました。そして山手線で1駅戻った有楽町駅で降りて、銀座で早い昼食をいただきます。
今日は、有楽町駅の改札を出たところに、「駅のスタンプ」があることに気付きました。各駅にあるそうです。スタンプラリーが大好きな私は、さっそく有楽町駅の印影を手に入れました。
かつては、有楽町駅の皇居側にあるヨドバシカメラの上にある回転寿司のスシローに行っていました。しかし、今は反対側の銀座のマロニエゲート銀座の上にある回転寿司のくら寿司に行っています。清潔感とデザートが違うからです。
数寄屋橋交差点のすぐそばに、北村西望が昭和6年に「燈臺」と銘打った銅造彫刻を造り、昭和8年に関東大震災10周年記念塔に相応しいとして設置されました。数寄屋橋交番の真裏です。その台座には、「不意の地震に不断の用意」という標語が鋳造銘板に刻まれています。その銘板は、次のように「地震に」の箇所が「地震尓」となっており、変体仮名の「尓」が用いられています。
東京の街中では、京都とは真逆で、ほとんど変体仮名を見かけません。飲み屋さん街へ行ってもそうです。銀座に近い門前仲町に住んでいた頃にも、少しだけしか見つけられませんでした。それだけに、こうして銀座に近い有楽町駅の側で変体仮名の「尓」を見かけると、1文字だけであっても嬉しくなります。
日比谷図書文化館の入口には、いつものように案内が掲示されています。
今日も最初は、「相愛大学本『源氏物語 宿木』の変体仮名を読む」。
これは、今日から読み始める相愛大学本『源氏物語 宿木』(断簡)の第1回となります。
内容は、次の4項目でした。
(1)今年の葵祭の斎王代のこと
(2)本講座の内容
(3)春曙文庫の『源氏物語』に関する説明
(4)相愛大学本「宿木(断簡)」(今回:第1丁表6行目まで)
第3丁表までの資料を用意していました。しかし、今日からこの講座に参加なさる方が数人いらっしゃったことに加えて、相愛大学本『源氏物語』(断簡)は今日が最初ということなので、少し丁寧に説明をしました。
(1)今年の葵祭の斎王代については、京都新聞の記事を見てもらいました。
(2)本講座の内容については、次の文章を配布しました。
鎌倉時代の古写本『源氏物語』の第49帖「宿木」(断簡)に書き写された仮名文字を読みます。
テキストとする古写本は、鎌倉時代中期に書写されたと思われる古写本の一つであり、美麗な美術品です。具体的には、相愛大学の春曙文庫が現蔵する断簡五冊の内、「宿木」巻に書写されている文字を変体仮名に注目して確認していきます。今回使用する資料は、国文学研究資料館から公開されているパブリックドメインの画像です。
かつてこれは、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』(「須磨」「蜻蛉」)と、国立歴史民俗博物館蔵「鈴虫」(重要文化財)と一緒に伝えられていた古写本だったと思われます。春曙文庫に伝わる他の四冊は、第二帖「帚木」・第三三帖「藤裏葉」・第四五帖「橋姫」・第五三帖「手習」で、すべて現在は断簡としての本文しか残っていません。
この古写本に書かれている文字が、とにかく読めるようになることを、当面は第一の目的とします。一人でも多くの方が、日本の文化資産である変体仮名が読めるようになることを願って開催する講座です。そして、これはデータベースの構築へと展開し、今後は生成AIで分析していきます。
[参考資料]
『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編著、新典社、2013年)
『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(伊藤編著、新典社、2014年)
『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』(伊藤・阿部・淺川 共編、新典社、2015年)
『現代の図書館』(vol.62 no.3、通巻251号、日本図書館協会現代の図書館編集委員会編、2024年)
相愛大学図書館「春曙文庫」の蔵書とその最新研究/阿尾あすか
春曙庵主田中重太郎−その人となりと蔵書形成/山本和明
天理図書館と「源氏物語」古典籍資料−蒐集の経緯・名品の紹介/岡嶌偉久子
日本古典文学作品とAI・機械翻訳について/淺川槙子
(3)春曙文庫の『源氏物語』に関する説明では、田中先生の異文に対する驚きを伝えました。
■源氏物語本文について(田中重太郎)
ところで、源氏物語の本文でも定家の証本がいま定本視されているが、いわゆる別本系の本文と読みくらべると、いまの源氏物語の本文は、なんだかばかに整頓され、みがかれ過ぎた感じがする。架蔵の鎌倉初期書写の源氏物語断簡(昭和三十九年十月刊)を読みかえしていると、こんな本文の源氏物語がすくなくとも平安末期にはあって、読まれていたのだと思い、いま行われている源氏物語の本文と読みあわせると、そらおそろしい気がして来る。(下略)(リーフレット「春曙庵主田中重太郎その人とことのは」(2024.03_ver.01)
国文研共同研究「相愛大学「春曙文庫」に関する研究−書物と人」の成果として製作)、(清少納言と「ほのかなり」と『平安文学研究』第四十二輯、昭和四十四年六月号、『枕草子三十五年』再掲)
写本の影印資料を見ながら、ゆっくりと進めました。とにかく、今日が1回目ですから。
第1丁表の6行目までで時間が来ました。
こんな調子でのんびりと進めて行きます。
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(4)相愛大学本「宿木(断簡)」(今回:第1丁表〜第3丁表まで)
[変体仮名翻字版](翻字:辻 義孝)
・翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
《メモ》「於」ではなく「お」、「奈」がない、〈行末左〉が多い、「も」「せ」が読み取り難い、「思」と「越」の字形が他の相愛大学本の巻と違う。付加情報に〈行末下〉を追補しない。
--------------------------------------[GBS_497682]
三ち越・ふ三わ遣ける・あとも・みえぬを・三
い堂して・と三尓も・え・いて・【給】八す・いと・け志
幾・ある・み【山木】尓・やとり多る・川多乃・
いろそ・満堂・の古り多る・こ多尓なと・ひ
きとら勢・【給】て・【宮】へと・おほして・も多せ・
【給】・(2026/04/18ココマデ)
--------------------------------------
終わってから、鎌倉時代の『源氏物語』の本文は今読んでいる大島本の校訂本文とどう違うのか、という質問がありました。
相愛大学の田中重太郎先生が「こんな本文の源氏物語がすくなくとも平安末期にはあって、読まれていたのだと思い、いま行われている源氏物語の本文と読みあわせると、そらおそろしい気がして来る。」とおっしゃっていたことを例にして、その具体的な本文の違いを、これから読み解いていきたいという、現状では明確に言えない問題であることをお話しました。そのためにも、鎌倉時代の古語の意味を確定する必要があることも言い添えました。
いずれにしても、大島本以外の本文で『源氏物語』を読むことは、これからの『源氏物語』の受容において大切であり、私が運営しているNPO法人〈源氏物語電子資料館〉では、池田本が大島本に取って代わる時代が近い将来来るのではないか、という見通しは示しました。
1時間の休憩時間に、お2人の方に翻字の説明をしたので、今日は軽食タイムは見送りました。
次は、「『百人一首』を2種類の変体仮名で読む」です。
(1)上賀茂神社にある藤原家隆の歌碑の変体仮名を確認しました。
藤原家隆
【風】そ よ ぐ
ならの【小川】能
【夕暮】八
三所ぎぞ【夏】の
しる志な
りける
(2)デパートなどにある小倉山荘の『百人一首』の[変体仮名翻字版]を提示しました。
今回は「その1」です。ただし、今回から参加なさっている方が数人いらっしゃったので、テキストのことなどを丁寧に説明したので、紀貫之の1首だけを確認することに留まりました。
(3)テキストである『変体仮名でよむ 百人一首』については、86番歌の西行法師から88番歌の皇嘉門院別当の歌までを確認しました。
これも、初参加の方を意識して説明したので、3首しかできませんでした。
興味と関心を逸らさないように注意しながら、のんびりと進めて行きます。
本日配布した資料は、ほとんどを使わないままに終わりました。
次回、今日の続きとしてお話をすることにします。
終わってから、これから[変体仮名翻字版]の作業を手伝ってくださる方と話をしながら、妻が待つ3階の閲覧室に向かいました。この日比谷図書文化館で妻は、窓際のイスにゆったりと座り日比谷公園の大好きな植栽を眺めながら、またその向こうには皇居がある落ち着いた環境に身を置きながら、大好きな本を読むことを楽しみにしています。公園を散策したり本を読みながら、私の講座が終わるまでの4時間を、自由気ままに楽しんでいるようです。
今日は息子が横浜へ仕事で出掛けているため、我々は赤羽駅の前に宿を取っています。初めて訪れる街です。若者たちで賑わう、活気のある街です。
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