野鳥の鳴き声を録音するために、4人の俳句仲間の男たちが軽井沢の空き別荘に行きます。真夜中の空き時間には、連句会もして楽しみます。なかなか本格的な趣向が盛られた、厚みのある物語となっています。この連句の役割をもっと物語にかかわらせたら、さらに仕上がりがよくなったのに、と思いました。
集音器で拾った野鳥の声に混じって、人の話し声が聞こえます。そのまま録音をして、後で音声を確認したところ、期待に反しておもしろくありません。しかし、これが後に大問題となるのです。
4人が行きつけのバアの女が、野鳥の声を聞いていた日に行方不明になっていたのです。そして、あの録音の中に紛れ込んでいた男女の囁きが、その女と結びついていくのです。人殺しの現場を、偶然とはいえ録音していたのです。さらには、4人のうち3人は、その女と関係があったのです。
なお、テープレコーダのトリック、集音器の役割、録音されていた男の声の正体、死体の運搬などに、やや無理があるように思いました。
この展開は、清張ならではのツカミです。ある程度、これは読んでいて物語の展開は予想できました。しかし、話が拡がりすぎて、作者に振り回されます。結局は、予想外の結末を見ます。一気に読むだけの物語です。ただし、長々と付き合わされて疲れました。【3】
初出誌:『週刊朝日』1967年7月〜10月
※参考資料:『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)では、本作について次のように言っています。
「録音テープをトリックに利用したアリバイ崩しの秀作で、連句と野鳥の趣味が物語に興趣を添えている。」(156頁)
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