2025年11月01日

宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名を読む会(6)

 雨は上がったものの、寒い1日でした。
 HONBAKO京都宇治の本棚は、みなさんが小まめに本の入れ替えをなさっているので、華やかさが増しました。

 相愛大学本『源氏物語 橋姫』(断簡)の勉強会は、順調に確認を進めています。

 まず、一昨日の京都新聞に掲載された記事の紹介から。
 大田垣蓮月が茶道具に仮名文字で自作の和歌を彫った茶器が、屋敷があった京大病院の敷地内で発掘されているニュースです。仮名文字が茶道具の表面を飾っていることに、今後とも注目していくための情報提供です。

 さて今日は、8丁表から9丁表までを、変体仮名に注視しながら古写本を見ていきました。
 問題となったのは、ナゾリとミセケチが混在する箇所を、データベース化するためにはどのように記述するか、ということでした。
 9丁表7行目の「个り」という語句の扱いです。

251031_春曙「橋姫」9oL7个り.jpg

 ここは、「【給】へ〈改行〉里」と書いた後、「へ」の上から「个り」となぞったものの、何か不満だったようで、なぞった「个り」と次行行頭の「里」の3文字をミセケチにした上で、「个り」の右横に「个り」と傍記している例です。
 ここを、次のようにして、データベース化したいと思います。

 乃【給】り里/へ&り、り$り、里$

 また、一般的には「介」とする文字を「个」と表記していることも、特記すべきことだと思います。この「个」はめったに見られない文字だからです。

 なお、その前の行の「【御】とふらひ・【】能」の変体仮名「野(の)」についても、少し説明をしておきます。

251101_相愛「橋姫」9oL6野山.jpg

 ここで、変体仮名の「野」を助詞として用いているのは、書写者が「【野山】」という語句が意識下にあって書いたものだと思われます。もちろん、関戸本や元永本古今集にわずかに変体仮名の「野」の例があるとはいえ、鎌倉時代の物語の古写本にはあまりにも唐突に出て来るからです。
 参考までに、『かな字解』(関口研二、芸術新聞社、2014年12月)に次の説明があるので、こうした考えの補足として引用しておきます。

「野」は真仮名の時代には用例が多いが、かな古筆の中では僅少で、限定的である。関戸古今は草、元永本は行書。(116頁)

 なお、8丁裏と9丁表の間には、『源氏物語別本集成』の文節番号をもとにして換算すると、約1,000文節もの文章が脱落しています。これは、一括りの丁が5紙で綴じられていて、半丁(1頁)毎に約40文節が書写されているので、20頁分が欠脱していることになります。つまり、ちょうど一括り分がなくなっているのです。
 相愛大学本『源氏物語』が丁の脱落による断簡の姿で残っている現在、その元の写本の姿を想定する時に、この目安は今後の参考になるはずです。

 以下、本日の「変体仮名翻字版」で確認した本文をあげます。


■春曙文庫本『源氏物語 橋姫』第八丁表〜第九丁表[変体仮名翻字]

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可多より・可く【人】・を者須登・徒け・き
こゆる・【人】や・あらん・春多れ・越ろして・
み奈・いりぬ・をとろき可越尓八・あら寸・
の登や可尓・毛て奈して・や越ら・可く
礼ぬる・介者ひ登母乃・きぬの・越登
毛・世須・いと・奈よや可尓/可〈判読〉・古ゝろく累し
うて/(古古ろく累しうて)・い三しう・あて尓・三やひや可奈
累越・あ者れと・【思】・【給】ふ・やをら・堂ち
いてゝ/(堂ちいてて)・【京】尓・【御】く累ま・いて・まいるへく・【人】/\尓/(【人人】尓)・
しら世・つ可八して・あ里川累・さふらひ尓/(8オ)
--------------------------------------
越里あしう・まいり・【侍】尓介れ登・な可/\/(な可な可)・
宇れしう・【思】・【事】・春古し・なくさ免て
なん・可く・【候】・よし・きこゑよ・い堂く・
ぬれに堂る・可とも・きこ衛さ世ん可し
登・の多まへ葉・まいり弖・きこ遊・
可く・三ゑや・しぬらんと・於ほし
毛・よらて・うち登介堂り川累・【事】
とも越・きゝや/(ききや)・し・【給】ぬら無と・ナシ・い身志
う・八川可し・あやしう・可う者しう・
尓本ふ・可勢能・ふき川累越・【思】可けぬ/以下落丁、(8ウ)
〔←452108〕--------------------------------------[→453104]
毛てなひ・【給】八ん毛・【中】/\/(【中中】)・う多て・あらむ・
れいの・王可【人】尓・ゝぬ(尓ぬ)・古ゝろ者へなんめる
を/(古古ろ者へなんめるを)・な可ら無・能ち毛奈と・ひと【事】・うち
本の免可してし可葉・さやう尓弖・【心】そ・
と免堂らんなと・の多まひ遣る・【御】三つ
可らも・佐ま/\乃・【御】とふらひ野・【山】能・
い者や尓・あま里し・【事】なと・乃【給】个り
里/へ&个り、个り$个り、里$・まうてんと・【思】弖於毛ひ弖/【思】弖$・【三宮】乃・
可やう尓・をくまり多らん・あ堂り能・三
まさり・世んこそ・越可し可り遣れ登・あらまし【事】尓/ら〈次頁〉、(9オ)
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 終わってから、1階のラウンジでアロマセラピストの方が香りとマッサージの実演をなさっていました。妻も、プロの方にアロマセラピーをやってもらったことがないとのことで、しばし癒やしの時間に身を置いていました。なかなか得難い体験ができたようです。
 このシェア型書店HONBAKO京都宇治では、今日はアロマセラピーを、先月は占いをするなど、地域や来店者などとの交流を促進するコミュニティサロンとして機能することも、大いに意識して運営されています。もし宇治にお越しの際には、JR宇治駅前のこの書店に立ち寄って見てください。オープンして半年が過ぎました。ブラリといらっしゃる方が増えてきているようです。
 毎月第1土曜日の14時から16時までは、私が2階で『源氏物語』の古写本に書かれた変体仮名を読んでいますので、こちらにもご参加ください。突然の参加も大歓迎です。

 帰りに宇治橋通りで、揚げたての抹茶コロッケを店内でいただきました。狭い店内の長イスに座って、アツアツのコロッケをフーフー言いながら口に入れます。至福の時でした。




posted by genjiito at 21:50| Comment(0) | ■講座学習
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