1階正面入口にある掲示板には、いつものように案内が出ています。
ただし、タイトルが「河内本源氏物語を変体仮名で読む」とあるのは間違いです。正しくは、「相愛大学蔵源氏物語「帚木(断簡)」を変体仮名で読む会」です。3ヶ月前に予約を取った時の、申請書類に書いたままで掲示されました。訂正を忘れていました。次回からは気をつけます。
今日はまず、扱う資料が新しくなったために、これからの内容について確認しました。配布資料には、次のように2つの項目に分けて説明文を記しました。
最初に、扱う資料の概要についての説明です。
(1)勉強会の内容
ここでは、『源氏物語』の第2帖「帚木」に書かれた、鎌倉時代の古写本の断簡の仮名文字を読みます。
テキストとする古写本は、鎌倉時代中期に書写された現存最古の古写本の一つであり、美麗な美術品です。具体的には、相愛大学の春曙文庫が現蔵する断簡五冊の内、「帚木」巻に書写されている文字を変体仮名に注目して確認していきます。
今回使用する資料は、国文学研究資料館から公開されているパブリックドメインの画像です。
かつてこれは、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』(「須磨」「蜻蛉」)と、国立歴史民俗博物館蔵「鈴虫」(重要文化財)と一緒に伝えられていた古写本でした。春曙文庫に伝わる他の四冊は、第三三帖「藤裏葉」・第四五帖「橋姫」・第四九帖「宿木」・第五三帖「手習」で、すべて現在は断簡としての本文しか残っていません。
この古写本に書かれている文字が、とにかく読めるようになることを、当面は第一の目的とします。一人でも多くの方が、日本の文化資産である変体仮名が読めるようになることを願って開催する勉強会です。そして、これはデータベースの構築へと展開し、生成AIで分析していきます。
[参考資料]
『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編著、新典社、2013年)
『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(伊藤編著、新典社、2014年)
『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』(伊藤・阿部・淺川 共編、新典社、2015年)
『現代の図書館』(vol.62 no.3、通巻251号、日本図書館協会現代の図書館編集委員会編、2024年)
相愛大学図書館「春曙文庫」の蔵書とその最新研究/阿尾あすか
春曙庵主田中重太郎−その人となりと蔵書形成/山本和明
天理図書館と「源氏物語」古典籍資料−蒐集の経緯・名品の紹介/岡嶌偉久子
日本古典文学作品とAI・機械翻訳について/淺川槙子
次に、相愛大学本の本文についての説明です。
ここで、田中重太郎先生が「いま行われている源氏物語の本文と読みあわせると、そらおそろしい気がして来る。」とおっしゃっていることに関連して、この相愛大学の本文が通行の流布本である大島本といかに違うものであるかを、私見をもとに補足説明をしました。鎌倉時代に読まれていた『源氏物語』の本文の内容が、今とは違うものがあることを体感しましょう、という主旨での話をしたのです。大島本は、あくまでも室町時代の写本に江戸時代の書き込みがなされたものを取り込んだ本文です。私は、鎌倉時代の本文が読める環境作りを心がけて、まずは正確な鎌倉時代の『源氏物語』の本文の実態を書かれている文字に忠実な表記で確認しているところです。
(2)春曙文庫の『源氏物語』に関する説明
リーフレット「春曙庵主田中重太郎その人とことのは」(2024.03_ver.01)
国文研共同研究「相愛大学「春曙文庫」に関する研究−書物と人」の成果として製作
■源氏物語本文について(田中重太郎)
ところで、源氏物語の本文でも定家の証本がいま定本視されているが、いわゆる別本系の本文と読みくらべると、いまの源氏物語の本文は、なんだかばかに整頓され、みがかれ過ぎた感じがする。架蔵の鎌倉初期書写の源氏物語断簡(昭和三十九年十月刊)を読みかえしていると、こんな本文の源氏物語がすくなくとも平安末期にはあって、読まれていたのだと思い、いま行われている源氏物語の本文と読みあわせると、そらおそろしい気がして来る。(下略) (清少納言と「ほのかなり」と『平安文学研究』第四十二輯、昭和四十四年六月号、『枕草子三十五年』再掲)
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リーフレット『春曙文庫の名品2 知られざる名品 古筆切・断簡・清少納言の肖像』(2023.03_ver.01)
国文研共同研究「相愛大学「春曙文庫」に関する研究−書物と人」の成果として製作
『源氏物語』の断簡(完全な形ではなく、切れ切れとなって不完全な状態で残ったもの)。正方形に近い形の桝形本で、本文は十行書き、列帖装(れっちょうそう)であったと推測される。鎌倉時代中後期の書写と考えられ、筆者は不明だが、五人以上による寄り合い書きである。雁皮紙が使用され、花・鳥・紅葉・月などのぼかし絵が入っている部分がある。
断簡の本文は、広く読まれている青表紙本(藤原定家が書写や校合に関与した本)系統の『源氏物語』とは異なる部分が多く、別本に分類される陽明文庫本(鎌倉中期書写とされる写本)との一致が見られる。田中重太郎による解説と帚木巻の一部の翻刻を付けて、東風社からコロタイプ印刷による複製が刊行された(一九六四年)。藤裏葉巻と橋姫巻の前半は相愛国文 九・一〇に、柿谷雄三が翻刻を掲載している。
(以下略)(川渕紗佳・飯田実花)
なお、相愛大学本『源氏物語』(断簡)の全画像は、国文学研究資料館からパブリックドメイン(https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100386667/1?ln=ja)として公開されているので、全丁が自宅で自由に確認できます。
さて、本日は「帚木(断簡)」の第1丁表から第2丁表までの3ページ分の本文を[変体仮名翻字版]で確認しました。『新編日本古典文学全集(1)』(小学館)では98〜99頁にあたり、光源氏が空蝉の部屋に忍び入る場面です。
本日、問題にしたのは以下の事例です。8項目に整理して列記します。
本文異同の例示に当たっては、次の順に記します。
※丁数と表裏/行・源氏物語別本集成文節番号「相愛本」 「大島本」
なお、本文の表示は諸本のほとんどが「変体仮名翻字版」になっていない現状を鑑みて、ここに限っては現行の平仮名で対校しています。
(1)1オ/1・4119 「ねたる」 「ふしたる」
(2)1オ/1・4121 「いとこにそ」 「いつこにそ」
(3)1オ/2・4123 「とおかき」 「とをき」
(4)1オ/4・4132 「いとふなり」 「いらへすなり」
(5)1オ/9・4158 「からかつ」 「からひつ」
(6)1ウ/5・4179 「おんなは たゝ よひつる」 「もとめつる」
(7)2オ/1・4203 「そてのさはりておともきこえす」 「きぬのさはりてをとにもたてす」
(8)2オ/9・4234 「あさましうこゝにはさへき人もはへらすなととかへにこそ」
「こゝに人ともえのゝしらす心ちはたわひしくあるましきことゝ思へはあさましう人たかへにこそ」
(2)〜(5)は、単純な異同のように見えても、いろいろな事情や背景が見え隠れしているものです。
(1)(6)(7)は、用語や表現が異なるものです。(6)に関して、私は当初「ただよひつる」で「漂ひつる」の意味で異同を理解しようとしていました。しかし、本日の参会者から「ただ、呼びつる」の意味ではないか、との指摘を受け、自分の勘違いを知らされました。いつもながら、教えられることの多い集まりです。
(8)は、あまりにも異なる本文異同の行文なので、丁寧に読み解いて行かなくてはなりません。大島本の方が、長い文章になっているところです。(1)(6)(7)は、相愛大本の方が大島本よりもわかりやすい本文になっているのではないか、という指摘がありました。しかし、この(8)は大島本の方が長文なので、相愛大本の解釈しだいでは、大島本がわかりやすくなっているということになる可能性があります。いずれにしても、詳細な検討は後日に、とします。
また、「心見尓」(1オ7行目)は「【心見】尓」としたことを、特記しておきます。
本日確認した「変体仮名翻字版」は、以下のようになります。
■相愛大学本「帚木(断簡)」(今回:第1丁表〜第2丁表まで)
[変体仮名翻字版]
・翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
※〈朱点〉の有無から、複合語を認めていない場合を集めるとおもしろい。
[024119]--------------------------------------
て・ね堂るへき/〈ママ〉・【中将】のき三八・いとこに
そ/と〈ママ、諸本つ〉、そ&に、(いとこそそ)・【人】け・とお可き/可〈ママ〉・【心】ち・して・【物】むつ可し
きひと・いふなれ八・なけしの・し毛に・
【人】/\/(【人人】)・ふして・いとふ/と〈ママ、諸本ら〉・なり・志も尓なん・ゆき・
をりて・堂ゝいまなん/(堂堂いまなん)・まうのほらん
と者へり川と・いふ・三那・し川まりぬる・け
者ゐ奈れ八・ナシ・かけかねお・者那ちて・【心見】
尓・ひきみれ八・ナシ・あなたより八・さゝさり介
り/(さささり介り)・き【丁】越・さうしくち尓/う〈ママ〉・さして・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・から
可川堂つ/可〈ママ、諸本ひ〉・【物】・をきて・み多りか者しきお/お〈次頁〉、者&者、き〈丁末左〉、(1オ)
--------------------------------------
ナシ・わけいり・【給】て・け者ゐ・する・本とに・
より・【給】へれ八・ナシ・ナシ・いと・さゝや可尓て/(ささや可尓て)・ふし
堂りひ八本のくらきに・なまわ川
ら八し介れと・うへなる・きぬを・お
しやり【給】尓於んな八堂ゝ/(堂堂)・よひ川
る・【人】と・於もひ介り・いと・しのひて・【中将】・
免し川れ八・【人】志れぬ・於もひの・志るし・
ある・【心】ち・してと・いふ越・と可う毛・
於もひ・わ可れす・もの尓・おそ者るゝ/(おそ者るる)・
古ゝち/(古古ち)・して・やゝと/(ややと)・おひゆれ八と・可本尓/(1ウ)
--------------------------------------
そて能・さ者りて・於とも・きこ江寿・
うち川けに・布可ゝらぬ/(布可可らぬ)・【心】と・ナシ・ナシ・於ほさん
も・こと者りなれと/八&後と・としころ・於もひわ
多る・【心】の・うちも・きこ江志らせんとて・
かゝる/(かかる)・於りを・まちいて堂る毛・さらに・
あさう八・あらしと・於もひなし・【給】へ
と・いと・や者らか尓て・お尓か三も・あら
堂ゝすましき/(あら堂堂すましき)・け者ゐなれ八・者し
たなう・あさましうこゝに八さへき/八さへき〈ママ〉、(あさましうここに八さへき)・
【人】毛者へらすなと/△&毛・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・堂可へ尓こそ/(2オ)
[4246]--------------------------------------
終了後は、駅前を散策しました。
最近は抹茶が海外の方も含めて大人気で、なかなか手に入らなくなっているとのことなので、帰りに、京都駅前の伊藤久右衛門でお徳用の「宇治抹茶」をいただきました。これは、3ヶ月毎に買っている抹茶です。
品物を渡してくださった店員の方に、宇治のお店によく行くことと、私の父の名前は伊藤忠右衛門というんですよ、と言うと、ご縁があってうれしいです、とおっしゃってくださいました。そして、価格が高くなっていますね、と聞くと、最近は抹茶ブームのため、量も減り値段も上がり、私たちもびっくりしています、とのことでした。
そうなんです。今日の抹茶は「70g \3,121」でした。手元に4月6日に宇治駅前店で購入した時のレシートがあり、それを確認すると、同じ商品が「100g \1,836」とあります。7月のレシートが見つからないものの、同じ値段だったか少し高かったかも知れません。
つまり、4月初めにグラムあたり「18.4円」だった抹茶が、9月末には「44.6円」に高騰したのです。なんと「2.4倍」です。
おりおりに自宅では、食後にお気に入りの茶碗を出して、シャカシャカと茶筅を振っています。私は黒い楽、妻は金継ぎをした赤い楽。しかし、こんなに抹茶が高くなってのでは、気楽に飲むことがためらわれます。抹茶の製造過程を知っているだけに、急に増産というわけにもいかないでしょう。いやはや、困ったことです。
京都駅の中央口改札前に、新たなモニュメントができました。一昨日、除幕式があったものなので、早速行って来ました。京都ロータリークラブが創立100周年記念として造られたものです。私は、造形物よりも先月102歳でお亡くなりになった裏千家の前家元の千玄室さんが揮毫した「未来 今から一歩」という言葉を見たかったのです。モニュメントのデザインは、現代彫刻家の吉田和央さんだそうです。
この新設された場所は、希望の広場と名付けられ、待ち合わせの場所となって行くことが期待されています。しかし、すぐ前がバス停のターミナルなので、ここに人々が集まると、改札前からバス停への、人の行き来に差し障りが起きそうです。待ち合わせの場所と言わずに、モニュメントと書を見て楽しむ、ということでいいと思っています。
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