2025年09月20日

日比谷で「須磨」(28)と『百人一首』(5)を読む

 日比谷図書文化館での講座は、次の2つです。
@「ハーバード大学本『源氏物語 須磨』の変体仮名を読む」 13:00〜14:30
A「『百人一首』を2種類の変体仮名で読む」  15:30〜17:00

 いつも朝早く宇治を発ち、最寄り駅の有楽町にはお昼前に着くようにしています。
 今日はいつもより早く着いたので、駅前のビックカメラの中のスシローで早めの食事をし、近くの馬場先門前にある静嘉堂文庫美術館へ立ち寄りました。玄関のガラス戸の向こうが皇居です。

250920_静嘉堂.jpg

 今回のテーマは「絵画よくわかる神仏と人物のフシギ」でした。
 重要文化財である明治生命館の1階は、格調の高さと清潔感に満ちた会場でした。初めて入った美術館なので、少し圧倒される雰囲気を感じます。展示には、イラストを配したかわいいフリップが効果を発揮していて、観覧者に語りかける口調で問いかけて来ます。よく考えられた配慮です。レベルの高い美術館でした。
 なお、期待した国宝の曜変天目茶碗は出品されていませんでした。

 日比谷公園の芝生を、一人黙々と芝刈りをするロボットと出会いました。暑い中を、と言おうとして、今日の東京は肌寒い程に涼しいことに気づきました。

250920_芝刈り機.jpg


 日比谷図書文化館の入口には、いつものように本日のイベントが掲示されています。

250920_掲示板.jpg


 まず、ハーバード本「須磨」です。
 今日は、51丁裏から53丁裏2行目までを確認しました。

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あはれ尓て・
「ともちと里・もろこゑ尓・奈く・あ可【月】八・
ひと里・祢さ免乃・とこ毛・多の毛し」・【又】・越き
堂る・【人】毛・奈介れ八・【返】〻/(【返返】)・ひとりこち
弖・ふし・【給】へ里・【夜】・ふ可く・【御】てう川・まい
り弖・【念】すなと・し・堂満ふ毛・めつ
らしき・ことの・やう尓よろ川のこと・
めて多くの三・みえ・多満へ八・え・み・多てま川
里・すてゝ/(すてて)・【人】や里那らす・【亰(京)】へ・あ可ら佐万
尓毛・えいてさり介り・[29]あ可し乃うら八/(51ウ)
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堂ゝ/(堂堂)・者ひ王多る・本と奈り遣れ八・
よしきよは・可乃・【入道】乃・む須免越・
於もひいてゝ/(於もひいてて)・ふ三なと・や里けれと・【返
事】毛・勢す・ちゝの【入道】そ/(ちちの【入道】そ)・きこゆへき・
こと那ん・ある・あ可ら佐ま尓・多いめんも
可那と・いひ堂り介れと・うけひ可さら
む尓・と可くゆき可ゝ里て/い&ゆ、(いき可可里て、ゆき可可里て)・む奈しく・可へ
らん・うしろ毛・をこなるへしと・くし
い多くて・於もひ川ゝむ/(於もひ川川む)・よ尓・しらす・【心】
堂可く・於もへる尓・くに乃・うちは・可三乃/(52オ)
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ゆ可りの三こそは・可しこき・もの尓八・
寿免れと・ひ可免る・【心】は・さら尓毛・【思】八て
とし【月】を・へ介る尓・こ乃・【君】・かく弖・
をはすと・きゝて/(ききて)・者ゝのき三に/(者者のき三に)・可多らふ・
やう・き里徒本乃可うい乃・【御】者ら
乃・【源氏】・ひ可るきみこそ・於ほやけ二・
可しこまりて・す満乃うらに・毛のし・
堂まふ奈れ・あこ乃・【御】寿く勢
尓て・於ほえぬ・ことの・あるなり・い可て・可
かる・川いて尓・こ乃・【君】尓・多てま川里てむと/む〈次頁〉、(52ウ)
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いふ・者ゝ【君】/(者者【君】)・いて・あ奈・可多王や・【宮】こ
乃・【人】こと尓・可多る越・き介は・やむこと奈
き・【御】めを/=ミ、(みめを)・いと・於ほく・毛・多満ひての・あま
里尓・み可との・【御】めをさへ・志のひ/\尓/(志のひ志のひ尓)・あや
まち・【給】て・可く毛・さは可れ・【給】なる・【人】八・ま
さ尓・可ゝる/(可可る)・【山】可川を・【心】・とゝ免/(とと免)・【給】てんや
と・いふ・者ら多ちて・いて・え・し里・堂満者
し・於もふ・【心】・こと那里・さる・【心】を・し・【給】へ・
古ゝ尓/(古古尓)・於者しませむと/ま±さ、(於者しまさせむと)・王可・【心】を・やり
て・いふ毛・可多く奈者しく・三ゆ・け尓・あ里さま八/さ〈次頁〉、(53オ)
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ま者ゆき満弖・志川らひ・可し
徒介り・          (53ウ)

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 今日も、翻字の不備を指摘していただきました。凡例が詳細になってきて、当の私が時々新しい方針を失念するために、ポツリポツリとミスが出ます。大変失礼しました。

 また、「京」(51丁裏9行目)という漢字について、京都駅の南北通路に出る改札口の前に掲示されている「亰」を例にして、ここの「京」は「亰」と翻字した方がいいのではないか、という話題になりました。さらには、東京が「京」なので京都は「亰都」にしては、ということも提示しました。これには、興味をもっていただけたようです。

 終わってから、いくつかの質問を受けてから、地下のラウンジへ移動して、現在5巻の相愛大学蔵春曙文庫本の臨模本を作成中の宮川保子さんと、作業手順を含めた今後の方針などを打ち合わせました。装飾料紙の作成や、判読しにくい文字などについての、意見交換が中心です。
 私からは、最近かかりきりの「橋姫」巻の本文を確認する中で気付いたことを、何点かお伝えしました。今回の相愛大学本は、ハーバード本よりも判読に時間がかかる変体仮名が多いのです。写し手が、平安時代の仮名文字の多様な字形を、よく理解していないままに書き写しているのではないか、と思える箇所が散見します。ハーバード本「須磨」「蜻蛉」や、歴博本「鈴虫」を書写した人たちとは違う写し手集団が関わったのではないか、と今は勝手に思っています。いずれ、こうした違和感の原因を整理します。

 今日は、「手習」の下書きと清書をお預かりしたので、これまでの「帚木」「藤裏葉」「宿木」と共に、文字から受ける印象の違いを含めて、複眼的に写本の様態と本文の実相を考えて行きたいと思います。
 少しでもいい臨模本ができるように、宮川さんの書写活動のお手伝いをしているところです。

 時間になったので、大急ぎで4階のセミナールームに戻りました。

 次は、『百人一首』です。
 まず、変体仮名の「愛(あ)」について、江戸時代以前の用例を私はまだ見かけていないことをお話しました。
 また、雲林院にある僧正遍昭の歌碑と、宮道神社にある藤原定方の歌碑について取り上げました。

 歌は、21番歌の素性法師から、27番歌の中納言兼輔までを確認しました。

 終わってから、前の『源氏物語』の時に話題にした「京」と「亰」について、さらに詳しい情報を受講者の方からいただきました。「亰」という文字は、中国でも多くの用例があるようです。明治時代には、東京で「東亰」としていた時があったとか。しかし、次第に立ち消えになったようです。このことは、さらに詳しく調べると、いろいろとおもしろいことが見つかりそうです。

 今日は息子が出張中のため、私は妻と共に蔵前に泊まることにしました。かつて、モンゴルのことから白鵬さんの関係者に会うために、息子に連れられて蔵前に来たことがあります。しかし、泊まったことはありません。明日はどこを散策しようかと、地図を見ながら計画を練っています。




posted by genjiito at 23:34| Comment(0) | ■講座学習
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