2025年08月23日

キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第33回)

 キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)の1階正面入口にある掲示板には、いつものように案内が出ています。

250823_掲示板.jpg

 今日はまず、中国から来日中の庄婕淳(恵州学院大学)さんに参加してもらえたので、自己紹介から始まりました。
 庄さんは、NPO法人を設立してまもなく、同窓生のKさんの紹介でワックジャパンでの源氏講座に早速参加していただいた方です。当時は立命館大学大学院生で、学位(博士・文学)を取得してからは中国で大学の教員をしておられます。2019年12月20〜22日に中国広東省にある広東外語外貿大学でのシンポジウムでは、私が所属していた大阪大学との共催で国際研究集会が開催されました。そこに参加した折には、日本側の代表者である私と共同研究者の仲間たちを、庄さんは丁重にもてなしてくれました。その時の報告書が『海外平安文学研究ジャーナル《中国編2019》』(伊藤編、大阪大学国際教育交流センター、2021年2月)です。その広東から帰国直後には、日本をはじめとして世界中でコロナウイルスが蔓延したことは、記憶に新しいことです。
 大阪観光大学と恵州学院大学との学術交流協定の締結では、庄婕淳さんがネット会議を取り仕切り親睦を深めたりました。コロナ以後は直接の交流ができなかったこともあり、6年ぶりの今日は久しぶりに話ができました。

 さて、本文の確認を進めている尾州家河内本「桐壺」は、今日が最終となります。
 その前に、「変体仮名翻字版」の意義をあらためて確認しました。鎌倉時代の『源氏物語』の原本の本文を、変体仮名のレベルでデータベース化することにより、本文研究を深めて行くための基礎資料の作成に取り組んでいることです。特に、生成AIによる新しい研究に対応するために作成したデータは、他に例を見ないデータ群であり、気長に取り組む意義のあるものであることを、みんなで確認しました。

 今日の活動内容としては、第25丁表から第26丁裏までを確認し終えました。
 以下の通りです。

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わ可く・於可しきを・【右】乃於とゝの/±〈朱点〉(【右】乃於ととの)・【御】な可八・よ可ら
ねと・江【見】すくし/△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉、±〈朱点〉・多ま八て・いと/±〈朱点〉・可なしく/±〈朱点〉・志・【給】・
【四】乃【君】尓/±〈朱点〉・あ八せ/±〈朱点〉・多てまつり・【給】て・於とら春/±〈朱点〉・もて
かしつき/±〈朱点〉・堂まへ八・あらま本しき/±〈朱点〉・【御】あ者ひ尓
なん/±〈朱点〉・【源氏】のき三は/±〈朱点右〉・うへの/へ&へ、±〈朱点〉・徒ね尓・於ほつ
可な可り/±〈朱点〉・めしま川八勢八/±〈朱点〉・【心】やすく/±〈朱点〉・さとす三
も/±〈朱点〉・江/±〈朱点〉・し・堂ま八春・【心】の/±〈朱点右〉・うち尓八・堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・ふち川
本乃/±〈朱点〉・【御】可多ち・あ里さまを・多くひなしと/±〈朱点〉・
【思】・起こ江・【給】て・さやう那らん/±〈朱点〉・【人】をこそ・みめ
古ゝら/古±〈朱点〉、(古古ら)・ナシ・【見】る・よ尓・阿り可たく/可&り、±〈朱点〉・於八し遣類可な/ま&遣、、±〈朱点〉、(於八しま類可な)・ナシ・ナシ・於ほ
いとのゝ飛めきみ/△〈削〉み、±〈朱点右〉、(於ほいとのの飛めきみ)・いと/±〈朱点〉・於可し遣尓/り$〈削〉尓、±〈朱点〉、(於可し遣り)・かしつ可礼堂流/堂〈次頁〉、±〈朱点〉、(25オ)
--------------------------------------
ナシ・【人】と・【見】ゆ礼と/△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・い可なる尓可/±〈朱点〉・【心】尓も/±〈朱点〉・つ可春・於
本江・堂まひ弖・於さ那き/±〈朱点〉・本との・こゝろ日とつ尓/(こころ日とつ尓)・
をきところ/±〈朱点〉・那く・ゝるしきまて/±〈朱点〉、(くるしきまて)・【思】ありき【給】/±〈朱点〉・
於と那耳なり/±〈朱点右〉・【給】て・能ち八・ありし/±〈朱点〉・やう尓も・み
すの/±〈朱点〉・うち尓も・い礼・多ま八春・【御】あそひなとの/±〈朱点〉・
於里/\尓//\=〈朱傍点〉、尓$〈墨朱〉、(於里於里尓、於里於里)・こと・ふ江の・ね尓・起ゝかよひ、(起起かよひ)・本乃可
なる/±〈朱点〉・ナシ・【御】遣八ひ八可里を・ナシ・那くさめ尓て・【内】す三
乃三/±〈朱点〉・古乃ましう/古+ん〈ママ〉・於本江・【給】へ八・【五六日】/±〈朱点〉・さふらひ/±〈朱点〉・
【給】て八・於本いとの尓/±〈朱点〉・【二三日】なと・多江/\尓/(多江多江尓)、±〈朱点〉・ま可て・
【給】へと・多ゝいま八/±〈朱点〉、(多多いま八)・於さ那き/±〈朱点〉・【御】本と尓・よろ川/±〈朱点〉・
つ三・那く・於ほしなして・ナシ・いと那三/±〈朱点〉・かしつき・多て万川り/万〈次頁〉、(25ウ)
--------------------------------------
【給】【御】可多の/【御】±〈朱点右〉・【人】/\、(【人人】)・ナシ・ナシ・ナシ・よに/±〈朱点〉・をしなへ多らぬ
を・江里とゝのへ/(江里ととのへ)・すくりて・さふら八せ/±〈朱点〉・【給】・【御心】尓/±〈朱点右〉・
徒くへき・あそひを・し・於本那/\/±〈朱点〉、(於本那於本那)・於本しい
堂川く/±〈朱点〉・さま・をろ可なら須/±〈朱点〉・【内】尓八/±〈朱点右〉・もとの/±〈朱点〉・し
遣いさを/=【淑景舎】、±〈朱点〉・【御】さうし尓て/±〈朱点〉・こみやすむところ能/±〈朱点〉・
【御方】乃・【人】〻/(【人人】)・ま可てちら春/±〈朱点〉・さふら八せ/±〈朱点〉・【給】・さとの/±〈朱点右〉・
と乃八もく/も±〈朱点〉、も=【木工】・すり/=【修理】、±〈朱点〉・堂く三つ可さなと尓/【見】$〈削〉三、三=三〈削〉、±〈朱点〉・せんし/±〈朱点〉・く多
里て・尓那く/±〈朱点〉・あら多め/±〈朱点〉・川くら勢・【給】・もとの/±〈朱点右〉・こたち・
【山】乃/±〈朱点〉・堂ゝすま井/(堂堂すま井)・於もしろき/±〈朱点〉・ところなり遣る
を・ナシ・いとゝ/±〈朱点〉、(いとと)・い遣乃【心】/±〈朱点〉・日ろう/±〈朱点〉・しなし・めて多う/±〈朱点〉・つくり
のゝしる/(つくりののしる)・かゝ流/±〈朱点右〉、(かか流)・ところ尓・於もふ/±〈朱点〉・やうならん・【人】を/±〈朱点〉、(26オ)
--------------------------------------
すゑて・すま者やとな遣可しう/±〈朱点〉、な±〈朱点〉・於ほしわ多る・
飛可るきみといふな八/±〈朱点右〉・こまうと能/±〈朱点〉・めて起こ江
て・徒遣/±〈朱点〉・堂て万つりけるとそ・いひ徒多へ多
流となん/±〈朱点〉、(26ウ)
--------------------------------------

 次に、文字の使い分けに関する見通しを考える上で、一例となるものを私から提示しました。それは、「乃」「能」「の」の直前に書かれている語句の漢字の表記です。あくまでも叩き台です。
 [ ]は何例あるかを示します。


■尾州本の「の」「乃」「能」の直前に書かれている漢字
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なに【事】の
くるしき【事】の三
【人】の
なき【人】の
【時】の
【御時】の
【心】の
【物】の三
【物】ゝふあ多
【源氏】のき三[2]
【源氏】の【君】
【蔵人】の【少将】尓て
--------------------------------------
【人】乃[16]
【事】乃[2]
【世】乃[4]
【山】乃
【物】乃ねを
【大床子】乃
【心】乃と可尓
【草】乃
【身】乃
【風】乃
【月】乃
【女御】乃
【内侍】乃すけ乃
【内侍】乃す遣[2]
【一】乃三やの【女御】八
【一】乃三や能
【一】乃【宮】を
【宮】乃[2]
わ可【宮】乃
【故大納言】乃
【右近】乃
【右大弁】乃
【春宮】乃
【兵部卿】乃【宮】なとも
【源氏】乃
【大臣】乃
【右】乃於とゝ能[3]
【御方】乃
【四】乃【君】尓
--------------------------------------
い尓しへ【人】能
【右大臣】能
【御方】能
【人】能
【物】能[2]
【事】能八も
わ可【宮】能
【長恨歌】能
【亭子院】能
とし【月】能
との井【申】能
【事】能
【親王】能
【先帝】能
【四】能【宮】
【更衣】能
【三代】能
きさい乃【宮】能
【宮】能
【君】能[2]
【春】【東宮】能
【日】能
【春宮】能[2]
【所】能
【源氏】能【君】
--------------------------------------


 そして、参考までに、すでに変体仮名による本文の翻字を終えている池田本の例を提示しました。


■池田本の「の」「乃」「能」の直前に書かれている漢字
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【右近】の
【御方】の
【北】の【方】[2]
「【雲】の
【心】の[3]
【子】の
【五六日】の
【三代】の
【三位】の
【先帝】の
【亭子院】の
【春宮】の[2]
【春宮】の【女御】の
【時】の
【年】の[2]
【殿】の
【女御】の
【人】の[5]
【宮】の
【物】の
【楊貴妃】の
【世】の[2]
【一】乃【宮】の
【一】の【宮】を
【右】の於とゝ乃
於佐免【殿】の
【更衣】の
きさい乃【宮】の
くら【人所】の
【外尺】の
【源氏】のき三
【源氏】の【君】は
【心】のと可尓
【事】の【葉】も
【四】の【宮】能
【内侍】のす遣乃
【内侍】のすけ八
【右】の於とゝ乃
--------------------------------------
【秋】乃
【池】乃
【一】乃みこの【女御】は
【一】乃み古盤
【一】乃【宮】の
【右大臣】乃
【右大弁】乃
【宇多】乃み可と乃
【内】能【内】乃
【大臣】乃[2]
【御方】乃
【御元服】乃
【御時】乃
かゝやく【日】乃【宮】と
【風】乃
【北】乃【方】
【雲】乃
【源氏】乃きみ八
【故大納言】乃
【四】乃【君】尓
【先帝】乃
【長恨歌】乃
【月】乃
【帝王】乃
【春宮】乃
【年月】乃
と乃ゐ【申】乃
【内侍】乃す遣の
【女房】乃
八ゝみやす【所】乃
【人】乃[17]
【兵部卿】乃みこなと
【松】乃
【親王】乃
【道】乃
みやす【所】乃[3]
【宮】乃
【虫】乃
【物】乃
【物】乃ねを
【物】乃婦
【楊貴妃】乃
【山】乃
【世】乃[4]
【世中】乃
わ可【宮】乃[2]
--------------------------------------
【内】能【内】乃
【風】能
【草】能
【四】の【宮】能
【春宮】能
【人】能
【日】能
【身】能
【宮】能
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 まだ未整理のデータです。しかし、河内尾州家本と池田本の文字使いが違うことは明らかです。
 その際、「の」と「乃」は、使う者にとっては区別をせずに無意識に流れの中で書いた文字が、たまたま「の」となり「乃」ではないのか、という意見がでました。ここでの出現例を見ていると、そのような見方も可能であることを示しているようです。ただし、その「の」と「乃」とは異なる「能」は、明らかに使い方に違う意味合いがありそうです。今日は、その点は詰められませんでした。しかし、こうした例の検討を重ねることで、平安時代から鎌倉時代にかけての仮名文字の使い分けや、文字列の組み合わせのパターンを明らかにしていきたいと思います。
 次は、生成AIを活用した検討結果を提示できるようにしたいと思っています。

 今日から、昨日購入したプロジェクターを使用して映写しました。大きく、はっきりと映し出せたので、これからも大いに活用して行くことにします。

 終わってからは、すぐ近くのホテルの中にあるバイカルという洋菓子屋さんのカフェで、庄婕淳を交えて四方山話に花を咲かせました。




posted by genjiito at 23:14| Comment(0) | ■講座学習
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