2025年08月06日

【追記あり】全盲の文化人類学者広瀬浩二郎氏の言葉から

 国立民族学博物館教授の広瀬浩二郎氏が、昨日(8月5日)の京都新聞「現代のことば」に、「共鳴する二つの歴史」と題するコラムを執筆しておられます。

 広瀬氏には、総合研究大学院大学の教授会で毎年京都と東京で同席したり、科学研究費補助金の「挑戦的萌芽研究」(平成27年〜28年)で私が研究代表者となっていた「視覚障害者と共に古写本の仮名文字を読み日本古典文化を共有するための挑戦的調査研究」において連携研究者をお願いしたりと、いろいろとお世話になって来ました。

 その広瀬氏が、点字の記念年でもある今年の現況などを話題として、コラムの中で私見を述べておられます。以下、発言を摘記して、現在の状況を整理しておきたいと思います。
 私の関心に引き付けて言えば、1900年に300字近くあった変体仮名が現行の五十音図のように整理された、その10年前に日本語点字が制定されたということが、文字の歴史の上で社会環境を背景としてリンクしているよう思われます。このことは、現在も興味と関心をもって、鋭意追跡調査をしいてるところです。

 さて、広瀬氏のコラムからの引用です。


 今年はルイ・ブライユによる点字考案から200周年に当たる。中1の終わりに失明した僕が点字を使うようになって、40年以上が経過する。視覚障害者のための文字という位置づけにとどまらず、点字の魅力・意義を万人に伝える活動ができないものか。
(中略)
ブライユ点字はヨーロッパから米国に普及し、明治維新直後の日本にも導入される。ブライユの理念を継承して、日本語点字が制定されるのは1890年である。投票・郵便・受験など、点字は視覚障害者の人権と密接に関わってきた。
(中略)
今日、情報通信技術の進展に伴い、視覚障害者がパソコン、スマホを介して通常の文字を読み書きすることが当たり前となった。障害者と健常者が「ともに生きる」という点において、この200年間で著しい変化があったのは間違いない。一方、ブライユが確立した「点字国」の存在は、当事者間でも忘れられつつある。
 人権保障のツールとしての点字は、一定の役割を終えた。今後は、視覚障害者が育んだ触覚文化を健常者に広げていきたい。
(京都新聞、2025年8月5日「現代のことば」より)


 ここで、点字が「一定の役割を終えた」と言っておられることに、私は注目しています。確かに、現在は視覚障害者で点字が読める方は1割にも満たない、という現状があるようです。そうした実状の中で、公共施設や駅などには点字シールが所構わず貼られています。こうしたことも含めて、「一定の役割を終えた」と言われる意味について、さらに具体的な意見を伺いたいと思っています。

 昨夏、中之島図書館で開催された「平安文学リレー講座」では「ユニバーサル〈カルタ〉で百人一首」と題して、目が見えない方々と一緒に点字百人一首を体験する講座を開催しました。以来、私の身辺では特に目立った動きはなく、参加や紹介する情報もなく過ぎました。東京の点字付き百人一首の活動も、しばらくお休みのようです。
 昨日の広瀬氏の記事に触発されて、あらためてこのテーマにも積極的に関わりたいと思うようになりました。

 以下、これまでに本ブログで取り上げた広瀬氏を中心とした記事を整理してみました。
 確認しておきたい情報を、記事一覧として掲載します。

 [追記](2025年08月07日)
 視覚障害者に関する記事を、淺川槙子さん(名古屋大学)が整理してくださいました。
 幅広い視点から障害者問題を考える上で参考情報となるものなので、ここに追記します。

 ■ 視覚障害者に関する研究代表者のノート ■

【視覚障害者・盲教育・触常者・触読・点字に関する記事一覧】



--------------------------------------

■広瀬氏に関連する本ブログでの記事一覧■

・「読書雑記(348)広瀬浩二郎・相良啓子『「よく見る人」と「よく聞く人」』」

・「民博の特別展でアートに触り体感する」

・「コロナ禍で始まった“触”の大博覧会を応援中」

・「パラリンピックと障害がセットになっていることに違和感がある」

・「民博の特別展「ユニバーサル・ミュージアム」の HP 公開」

・「「東京オリ・パラ」の「・」の意味について」

・「触察の名手広瀬さんの手触りに関する〈とはずがたり〉」

・「「障害」と書くことに対する広瀬さんの意見」

・「京洛逍遥(676)若冲の錦市場で「莫大海」を入手」

・「来春3月に富山でユニバーサルツーリズムのシンポジウム」

・「[学長ブログ]神戸大学でオンライン留学の実情を聞く」

・「読書雑記(303)広瀬浩二郎『それでも僕たちは「濃厚接触」を続ける』」

・「広瀬さんの新著『それでも僕たちは「濃厚接触」を続ける!』」

・「全盲の広瀬さんから「優しさ・安全」が強調される社会への異議申し立て」

・「盲学校の授業にフォーカスするETV特集」

・「新しいコラムの連載を通して〈濃厚接触の意義〉を考える」

・「「イグ・ノーベル賞の世界展」に行って」

・「ユニバーサル・ツーリズムに関する思いつき」

・「奈良で始まった「さわって楽しむ体感展示」」

・「奈良で開催される「さわって楽しむ体感展示」のお知らせ」

・「民博で古写本『源氏物語』の触読研究会」

・「駅のホームドア設置と「ホーム縁端警告ブロック」」

・「刺激的だった「第3回 古写本『源氏物語』の触読研究会」」

・「第3回「古写本『源氏物語』の触読研究会」のご案内」

・「インドの盲学校で手書き文字についてミッタル先生と議論する」

・「宇治の街歩きと〈運読〉のワークショップ開催」

・「〈運読〉で楽しむ『源氏物語』のご案内」

・「点訳された古文の教科書と読み上げソフトを使った確認の必要性」

・「江戸漫歩(111)赤坂で打ち合わせと会議」

・「立川市中央図書館で点字プリンタを使う」

・「視覚障害に関する本ブログの関連記事一覧」

・「視覚障害者と写本文化を共有するための47本の記事一覧」




posted by genjiito at 22:55| Comment(0) | ■視覚障害
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。