一昨日(6月28日・土)のブログ「キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第31回)−変体仮名が扱えるスマホのこと−」(http://genjiito.sblo.jp/article/191402149.html)の後半で、「モトローラのスマートフォンに機種変更したところ、変体仮名が表示できるようになった」という仲間からの驚くべき情報を書きました。そのことについて長々と私見を述べ、最後に「この変体仮名が自由に扱えるスマホは、河原町四条の家電量販店で手に入るとのことなので、足を運んで実状などを調べてみます。」と、そこでは話を一旦終えました。
そして今日、その河原町四条の家電量販店「エディオン」へ行き、実機を触って来てわかったことを、以下に報告します。冗漫な文章となりました。よくわからなければ、読み流してください。私は社会の裏面で、確実に仮名文字のありようが変わってきていることを痛感したので、つい思いつくままの私見を書いています。
日本で暮らす人のほとんどが利用しているスマホで、変体仮名が自由に入力、送信できる環境が提供されていることを確認して来ました。ただし、日本製のスマホではなく、海外の商品で可能だったことを言い添えておきます。これが意味することも、今後の課題です。
また、かつてWindows用のワープロソフトの「一太郎」が、変体仮名を扱えるようになった、ということで話題になりました。しかし、その話はそれ以上に盛り上がらないままに収束していきました。何か外圧がかかったのでしょうか。
文部科学省は、教育現場が混乱するということを理由として、学校教育の中で変体仮名は教える必要はない、としています。しかし、日本製のスマホ以外という条件付きではあるものの、携帯電話を使う人は今や誰でも自由に変体仮名が扱える状況にあるのです。日本製以外、というのがキーポイントです。海外勢力が日本語の一部を占領している、とでも言えそうです。こうした事態になっていることに対して、文部科学省や国語関連の専門家はどう思っておられるのでしょうか。それなりの説明や解釈があると思われます。しかし、実態は、真面目に日本語を勉強してきた人が、一般に流通しようとしている変体仮名が表示出来ないし、目にすることがあっても読めないという事実は、これからさらに広く深く進行していきます。国語教育の根幹が揺れている、と言うとおおげさでしょうか。
1900年(明治33年)に当時の文部省が定めた、仮名文字は一音一字に規制するという方針が、いまやなし崩しに瓦解しだしたのです。文部省(現文部科学省)の言語政策の一環で五十音図から追い出された仮名文字たちは、変体仮名(異体文字)と呼ばれて日本語の埒外に置かれました。
その変体仮名が今、国のコントロールが利かない、経済産業省が管轄するコミュニケーションツールを足場にして、一般社会に普及し出しているのです。日本語の平仮名と片仮名が大混乱に陥る前に、どこかが整理してみんなが納得できる方針を出すべきです。
期せずして、今は戸籍謄本の名前に読みがなを片仮名で登録することになったばかりです。変体仮名を名前の中に持つ方は、この事態が理解できるようになると、おいそれと五十音図の仮名の中から取り出して読みがなを書くことに、戸惑いが生まれることでしょう。
以下、今日は家電量販店でいろいろなことがわかったので、一昨日仲間が見せてくれたスマホと同じものを買うのは一旦見送りました。とにかく、米国製、台湾製、中国製のスマホをテストすると、微妙に出てくる仮名文字が違うのです。一度選択した文字は、前の方に表示されるので、この画面下の文字の配列は変動します。
次の写真は、米国製のスマホに「あ」と打って変換させた時に表示される候補の文字一覧です。
台湾製のスマホでは、こんな文字の選択画面となりました。
私が開催している講座に参加しておられる方は、全員がこれらの変体仮名はスッと読めます。しかし、日本で暮らしている方の何パーセントの方が、この4種類の「あ」の変体仮名が読めるでしょうか。「愛」や「惡」はまったくお手上げで、何という文字なのか想像すらできないことでしょう。さらには、その仮名文字の元となっている漢字(字母)がわかる方は、もっと限定されます。
実際に、平安時代から鎌倉時代の仮名文字を確認し調査している私も、今のところは「愛」は一例だけ見つかり、「惡」は出会ったことがありません。
前掲の写真で、赤で囲った「あ」の仮名文字を、あなたはどう使い分けますか? その使い分けについては、学校を含めて教えてもらった人は一人もいらっしゃらないと思います。その文字が、このような形で選択肢の中に入っているのです。
この「愛」「安」「阿」「惡」の4種類の仮名文字は、私が社会人講座で誰もが読めるようなスキルを持つように、と取り組んでいる変体仮名です。現在、日本ではこうした仮名文字は学校で教えないことになっているので、読めないのが普通です。しかし、読めるようになると、街中の看板や暖簾や包み紙をはじめとして、過去の文献資料も読めるようになるので、日本の文化を理解する上ではいいことずくめです。文部科学省には、変体仮名を学校教育へ導入することに一歩踏み出してほしいところです。
なお、中国製のスマホでは、変体仮名の選択肢はでませんでした。もっとも、今日確認したのは各国3機種ずつだったので、さらに調査を拡げると多数のスマホが該当することでしょう。
なお、一昨日スマホで変体仮名が扱える機種に買い替えた仲間から、次のようなメールが届いています。
貴重な報告であり、現時点での興味深い資料なので、煩を厭わず以下に引用します。
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先日話題に上がったモトローラのスマートフォンで表示できる変体仮名について、文字とスクリーンショットをお送りします。必要であればブログ等でご自由にご活用ください。
尚、一文字ずつ入力していく中で気づいた点をいくつか共有しておきます。
・全部で277種類、このスマートフォンで入力できます。
・現行仮名の字母のくずし字で、無いものがあります(「己」「寸」「太」「止」「女」)。これらは元々Unicodeに入っていないようでした。
・入力の際、「安」を字母とする「あ」のくずし字に「安の変体仮名」と表記されます。他の文字も同様です。実際の見え方はスクリーンショットでご確認ください。
・「ゐ」「ゑ」のくずし字は入力できません。これは、普通のフォントで「ゐ」又は「ゑ」を入力する際にも「い」又は「え」と入力してから変換しているため、「ゐ」及び「ゑ」に対応するキーが無いことが原因かもしれません。
人文学オープンデータ共同利用センター(https://codh.rois.ac.jp/char-shape/hentaigana/)のサイトを見ると、Unicodeに登録されている文字数は286文字、そのうち「ゐ」と「ゑ」が計9文字あります。
このスマートフォンで入力できるのは277文字でしたので、それ以外は全て入力できるようになっているようです。
人文学オープンデータ共同利用センターのサイトからコピペをすると、「 」(先生からは見えていないかと思いますが、「衛」の変体仮名です)のように入力することはできます。
しかし、キーボードからの入力はできそうにありません。
以下、277種の文字をあいうえお順に並べたものをお送りします。
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以下、添付されていた画像もアップします。
日本語の中でも仮名文字の体系が、すでに崩れつつあることが実感として伝わってくる情報です。
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