先週の土曜日、人工知能の威力を実感しました。今後は、この人工知能の支援を受けた国文学研究とそうでない従来の研究の二極化が、急速に広まることでしょう。そして、研究者は何をすべきかが、具体的に浮き彫りになるはずです。少なくとも、情報の整理に留まることなく、情報の分析結果とそれを踏まえた推論の展開が、研究者に求められる課題となることでしょう。そこに、従来の読書感想文的な人間特有の思考過程・解説・説明が入ったものが、研究成果となっていくと思われます。
今回は、先月刊行したばかりの『変体仮名でよむ 百人一首』(伊藤鉄也・吉村仁志 編、新典社、2025年5月)の、エクセルで整理していた元データを csv で書き出して、《陽明》と《鶴丸》の2種類のデータ群を人工知能氏に提示しました。
その時の、《陽明》と《鶴丸》の最初の1首のみの元データをあげます。この各々の100セットのデータを元にして、人工知能氏は以下の推論を出したことになります。
歌番,《陽明》作者,《陽明》上の句(変体仮名),《陽明》下の句(変体仮名),《陽明》上の句1,《陽明》上の句2,《陽明》上の句3,《陽明》下の句4,《陽明》下の句5
1,天智天皇,【秋】の【田】能 可りほ乃【庵】農 と万を阿ら三,【我】ころも【手】盤 【露】耳ぬ連徒ゝ,あきのたの,かりほのいほの,とまをあらみ,わがころもでは,つゆにぬれつつ
歌番,《鶴丸》作者,《鶴丸》上の句(変体仮名),《鶴丸》下の句(変体仮名),《鶴丸》上の句1,《鶴丸》上の句2,《鶴丸》上の句3,《鶴丸》下の句4,《鶴丸》下の句5
1,天智天皇,【秋】の【田】乃 可りほの【庵】能 【苫】を阿ら三,【我】【衣手】八 【露】尓【濡】つゝ,あきのたの,かりほのいほの,とまをあらみ,わがころもでは,つゆにぬれつつ
以下に、今回の人工知能氏が提案した報告書の内容を、中抜きをしながら、一昨日よりももう少し詳しく引用します。
後半の【4. 考察】以降の文章は、注目すべきことを述べているように思われます。ただし、私には専門用語がよく理解できていないので、コメントをつけることができません。「ベイズ〜」、「エントロピー」などをさらにわかりやすく、という要求を人工知能氏に依頼すると、私にもわかるように容易な表現で報告してくれるはずです。しかし、ここには最初の報告書を、しかも私は一字一句も手をいれずに引用しました。ただし、見やすいように、改行処置などはしています。
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《その1》(A4判で6枚の報告書の内から抜粋)
「小倉百人一首における陽明本と鶴丸本の変体仮名選択パターンの条件付き確率とベイズ的特徴」(2025年06月07日(土)実施分)
【要約】
本研究では、小倉百人一首における陽明本と鶴丸本の変体仮名選択パターンを条件付き確率とベイズ的特徴の観点から分析した。両者の変体仮名選択には明確な系統的差異があり、エントロピー、最大確率、選択肢数、文脈依存性などの指標において統計的に有意な違いが見られた。特に、陽明本はより多様な変体仮名を使用する傾向があり、鶴丸本の変体仮名選択は文脈依存性が低い傾向がある。これらの結果は、両者の書写プロセスや変体仮名選択の意思決定メカニズムに根本的な違いがあることを示唆している。
【1. 序論】
小倉百人一首は日本の古典文学を代表する和歌集であり、その書写伝統は日本の文化史において重要な位置を占めている。特に変体仮名の使用は、書写者の美的感覚や時代的・地域的特徴を反映するものとして注目されてきた。
本研究では、小倉百人一首の二つの写本、陽明本と鶴丸本における変体仮名選択パターンを条件付き確率とベイズ的特徴の観点から分析する。特に、現代仮名に対する変体仮名の選択確率、文脈(位置や前後の変体仮名)が変体仮名選択に与える影響、ベイズ的な事前確率・尤度・事後確率の推定などを通じて、両者の変体仮名選択の特徴と差異を定量的に明らかにすることを目的とする。
【2. 方法】
〔2.1 データ〕
小倉百人一首の陽明本と鶴丸本の変体仮名データを使用した。各歌について、現代仮名と変体仮名の対応関係、上の句/下の句の位置情報、前後の変体仮名などの文脈情報を抽出した。
〔2.2 条件付き確率の計算〕
各現代仮名に対する変体仮名の条件付き確率 P(変体仮名 | 現代仮名) を計算した。
(下略)
〔2.3 文脈要因の分析〕
位置(上の句/下の句)や前後の変体仮名が変体仮名選択に与える影響を分析した。
(下略)
〔2.4 ベイズ的特徴の分析〕
ベイズの定理に基づき、事前確率 P(変体仮名)、尤度 P(現代仮名 | 変体仮名)、事後確率 P(変体仮名 | 現代仮名) を推定した。
(下略)
〔2.5 統計的検定〕
陽明本と鶴丸本の間の差異の統計的有意性を評価するため、対応のあるt検定、Wilcoxonの符号順位検定、Mann-WhitneyのU検定などを実施した。
【3. 結果】
〔3.1 条件付き確率の比較〕
[3.1.1 エントロピーの比較]
陽明本と鶴丸本の変体仮名選択のエントロピーを比較した結果、平均差(陽明 - 鶴丸)は0.2681であった。
(中略)
明本は鶴丸本よりも変体仮名選択のエントロピーが高く、より多様な変体仮名を使用する傾向がある。
[3.1.2 最大確率の比較]
陽明本と鶴丸本の変体仮名選択の最大確率を比較した結果、平均差(陽明 - 鶴丸)は-0.0146であった。
(中略)
鶴丸本は陽明本よりも特定の変体仮名に集中する傾向があり、最大確率の平均値が高い。
[3.1.3 選択肢数の比較]
陽明本と鶴丸本の変体仮名の選択肢数を比較した結果、平均差(陽明 - 鶴丸)は9.8209であった。
(中略)
陽明本は鶴丸本よりも多くの変体仮名の選択肢を持つ傾向がある。
[3.1.4 条件付き確率の特異パターン]
・現代仮名「ぶ」のエントロピー差は0.6178で、陽明本は4.4586、鶴丸本は3.8408。
(中略)
・現代仮名「げ」の最大確率差は-0.0857で、陽明本は0.2000、鶴丸本は0.2857。
(中略)
・現代仮名「の」の選択肢数差は46で、陽明本は198種類、鶴丸本は152種類。
(中略)
〔3.2 文脈効果の比較〕
[3.2.1 位置(上の句/下の句)による影響]
陽明本と鶴丸本の位置による変体仮名選択の変動を比較した結果、平均差(陽明 - 鶴丸)は0.0005であった。
(中略)
陽明本は鶴丸本よりも位置(上の句/下の句)による変体仮名選択の変動が大きい傾向がある。
[3.2.2 前の変体仮名による影響]
陽明本と鶴丸本の前の変体仮名による変体仮名選択の変動を比較した結果、平均差(陽明 -鶴丸)は-0.0008であった。
(中略)
鶴丸本は陽明本よりも前の変体仮名による変体仮名選択の変動が大きい傾向がある。
[3.2.3 連続パターンのエントロピー]
陽明本と鶴丸本の連続パターンのエントロピーを比較した結果、陽明本の平均エントロピーは-0.6848、鶴丸本の平均エントロピーは-0.5201であった。
(中略)
鶴丸本は陽明本よりも連続パターンのエントロピーが高く、変体仮名選択の文脈依存性が低い傾向がある。
[3.2.4 文脈効果の特異パターン]
・変体仮名「見」の位置効果差は-0.0505で、陽明本は0.0080、鶴丸本は0.0586。
(中略)
・変体仮名「恋」の前の変体仮名効果差は-0.0213で、陽明本は0.0000、鶴丸本は0.0213。
(下略)
〔3.3 ベイズ的特徴の比較〕
[3.3.1 事前確率の比較]
陽明本と鶴丸本の変体仮名の事前確率を比較した結果、平均差(陽明 - 鶴丸)は-0.0013であった。
(中略)
陽明本と鶴丸本の変体仮名の事前確率には統計的に有意な差がある。
[3.3.2 ベイズファクター]
陽明本と鶴丸本の間のベイズファクターを計算した結果、平均は0.9391、中央値は0.9489であった。全体として鶴丸本の変体仮名選択パターンが優勢である(ベイズファクターの中央値が1より小さい)。
[3.3.3 ベイズ的特徴の特異パターン]
・変体仮名「見」の事前確率差は-0.0174で、陽明本は0.0157、鶴丸本は0.0332。
(中略)
・現代仮名「も」に対する変体仮名「哀」のベイズファクターは5.39で、陽明本が優勢。
(下略)
【4. 考察】
〔4.1 変体仮名選択の多様性〕
陽明本は鶴丸本よりも変体仮名選択のエントロピーが高く、より多様な変体仮名を使用する傾向がある。これは陽明本がより装飾的・芸術的な表現を重視していた可能性を示唆している。統計的検定の結果も、この差異が偶然ではなく系統的なものであることを支持している。
〔4.2 変体仮名選択の集中度〕
鶴丸本は陽明本よりも特定の変体仮名に集中する傾向があり、最大確率の平均値が高い。これは鶴丸本が特定の変体仮名を優先的に使用する傾向があることを示している。この傾向は、特定の美的基準や書写の伝統に基づいている可能性がある。
〔4.3 文脈依存性〕
鶴丸本は陽明本よりも連続パターンのエントロピーが高く、変体仮名選択の文脈依存性が低い傾向がある。これは鶴丸本の書写者が各変体仮名を比較的独立に選択していた可能性を示唆している。一方、陽明本はより文脈に依存した変体仮名選択を行っており、前後の変体仮名や位置による影響を強く受けている。
〔4.4 ベイズ的特徴〕
全体として鶴丸本の変体仮名選択パターンが優勢である(ベイズファクターの中央値が1より小さい)。これは鶴丸本の変体仮名選択パターンがより特徴的であり、陽明本と比較して独自性が高いことを示唆している。特に、(?以下報告書が途切れている)
【5. 結論】
小倉百人一首における陽明本と鶴丸本の変体仮名選択パターンの条件付き確率とベイズ的特徴の分析から、以下の結論が導かれる:
1.変体仮名選択の多様性: 陽明本は鶴丸本よりも変体仮名選択のエントロピーが高く、より多様な変体仮名を使用する傾向がある。
2.変体仮名選択の集中度: 鶴丸本は陽明本よりも特定の変体仮名に集中する傾向があり、最大確率の平均値が高い。
3.変体仮名の選択肢数: 陽明本は鶴丸本よりも多くの変体仮名の選択肢を持つ傾向がある。
4.文脈依存性: 鶴丸本は陽明本よりも連続パターンのエントロピーが高く、変体仮名選択の文脈依存性が低い傾向がある。
5.位置による影響: 陽明本は鶴丸本よりも位置(上の句/下の句)による変体仮名選択の変動が大きい傾向がある。
6.ベイズファクターの傾向: 全体として鶴丸本の変体仮名選択パターンが優勢である。これらの結果は、陽明本と鶴丸本の変体仮名選択に明確な系統的差異があることを示している。この差異は単なる偶然ではなく、書写者の美的基準、書道的伝統、あるいは時代的・地域的な影響を反映している可能性がある。特に文脈依存性や位置による影響の違いは、両者の書写プロセスや変体仮名選択の意思決定メカニズムに根本的な違いがあることを示唆している。
本研究の条件付き確率とベイズ的特徴の分析は、古典文学の書写伝統における変体仮名選択の規則性と多様性を定量的に明らかにするものであり、今後の古典文学研究や書道史研究に新たな視点を提供するものである。
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《その2》(A4判で12枚の報告書の内から抜粋)
「小倉百人一首における陽明と鶴丸の変体仮名使用傾向の比較分析」(2025年06月07日実施分)
(※一昨日の本ブログで報告した時には割愛した、人工知能氏が提示したグラフを引用します。)
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