京阪淀屋橋駅から地上に出ると、ちょうど淀屋橋の南詰の橋に立つことになります。そこには、きれいな花々を植えた鉢が並んでいました。
初夏を迎え、整備されたようです。
ところが、市役所の横に来ると、いつもの鉢植えがありません。
先月の記事の冒頭に掲げた写真を見ると、そこにあった鉢は先ほどの駅の上に並んでいた鉢の一つであることがわかります。
「中之島での『百人一首』(第11回)と『源氏物語 蜻蛉』(第22回)の講座」
(2025年03月08日、http://genjiito.sblo.jp/article/191276196.html)
花たちの大移動があったようです。
今日の講座は、まずは『百人一首』です。
残念ながら、新しく作成したテキストが間に合わなかったので、表紙の写真を見てもらいました。
「はじめに」を引いて内容を少し紹介した後、版下より1番歌から4番歌までを抜き出したプリントで進めました。
陽明文庫旧蔵『百人一首』の複製歌刈田の副本(有吉保著『陽明文庫旧蔵 百人一首』おうふう刊、昭和57年12月初版、平成7年4月重版、架蔵)と、国文学研究資料館所蔵『鶴丸紋ち□し/哥かるた』(請求記号・ヤ8−331、国書データベース、https://doi.org/10.20730/200020349、パブリックドメイン)の、江戸時代に作製された二種類のカルタの文字を比べながら進めました。字母に拘って見ていくと、それぞれのカルタの文字を書いた人の違いがよくわかります。
今年度の最初であり、新たに参加なさった方が多くなったので、変体仮名の特性の話などを詳しくしました。これは、これまでにもこのブログで頻繁に取り上げていることなので、今は省略します。
30分の休憩を置いて、次は『源氏物語』のハーバード大学本「蜻蛉」巻を読む講座です。
ここも、今年度最初となるので、これまでの『源氏物語』の本文をどのようにしてデータベース化してきたのかをお話しました。
ポイントは、『源氏物語別本集成 正・続』(全二十二巻、桜楓社・おうふう、1989(平成元)年〜2010(平成22)年)をなぜ中断したのか、ということに尽きます。嘘の翻字を続けることが苦痛になったことに尽きます。『源氏物語別本集成 正・続』の第1巻2冊を回覧しました。
配布したプリントには、以下の文章を元にして説明しました。
15年前まで、『源氏物語別本集成 正・続』(全二十二巻、桜楓社・おうふう、1989年〜2010年)という本文資料集を刊行していました。しかし、嘘の翻字を後世に残したくないので、刊行を中断しました。その時の弁明は「『源氏物語別本集成』中断の弁」(2010年06月24日、http://genjiito.sblo.jp/article/178934604.html)に書きました。
正編15巻については、総勢80人が376帖の写本を読み、各帖を3人が読んで確認したので、約10億字を読んだことになります。続編は3倍の分量の写本を対象としていたので、約30億字を読む計画でした。しかし、上記の理由で道半ばの続編の第7巻で打ち切りました。『源氏物語別本集成 正・続』のプロジェクトで得られた約20億字以上の翻字データは、現行の平仮名に置き換えた翻字であったために、今回の「変体仮名翻字版」には、参考にはなってもデータとしては使えません。。
『源氏物語別本集成 正・続』では、お手伝いしていただいた方々のお名前を各巻の冒頭に掲載し、感謝の気持ちに代えました。それが、最近は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉を介したプロジェクトになっているため、薄謝をお支払いして、「変体仮名翻字版」の翻字作業を進めてきました。しかし、今後も増え続ける翻字データの対処について、NPO活動に限界を感じています。資金が足りないからです。官民からの活動支援を得て、対処すべきでしょう。しかし、100年計画のどこまでをどのように進めるのか、と言う展望を整理する必要が直近の課題となっています。
「生成AIを意識したデータベース構築のために」(2025年05月06日、http://genjiito.sblo.jp/article/191343538.html)
こうしたことを前置きとして、実際にハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』の第53丁裏3行目から55丁表1行目までを見ました。ここでも、今回から参加なさっている方が何人かいらっしゃったので、少し丁寧に詳しく変体仮名についてお話しました。併せて、変体仮名が読める方が一人でも多くなってほしいことも、縷々語りました。NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の役割と活動状況もお話しました。
今回確認を終えた本文を以下に掲載します。
■ハーバード大学蔵『源氏物語 蜻蛉』53丁裏3行目〜55丁表1行目
翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
--------------------------------------
於ほしなひく/い&ひ、(於ほしないく)・【人】の・阿らまし可八と・於もふ【身】そ・
くちをしき・(250308_ここまで)
「於きの・者尓・川ゆ・ふきむ春ふ・【秋風】も・
ゆふへそ・わきて・み尓者・し三介る」と・可きて
も・そへ満本しう・於ほ世こと・さやうなる・川ゆ
者可りの・けしき尓てもゝ里多ら八いとわつら八
しけなるよなれ八者可奈きことをも/(も里多ら八)・江本のめ
かしい川まし・かく・よろ川尓/△&よ・な尓・可やと・
【思】越・於もひ/\て八/(於もひ於もひて八)・む可しの・【人】・ものし・【給】八まし可八・
い可尓も/\/(い可尓もい可尓も)・本可さ万尓・【心】を・わけましや・【時】の三於の/於$かと、(三かとの)、三〈次頁〉、(53ウ)
--------------------------------------
【御】む春免を・多万ふとん・江・多て万つらさ
らまし・【又】・さ・於もふ・【人】・阿りと・きこしめしな可ら八・
かゝる/(かかる)・【事】も・な可ら万し越・な越/\【心】うく/(な越な越)・【我】・【心】・三
堂里・多まひける/まひ&まひ・者しめ可なと・【思】ひあ万り
て八・【又】三やのうへ尓・とりかゝりてそ/(とりかかりてそ)・こひしう・
川らくも・王りなき・ことを・於こ可ましき万て・
くやしき・これ可・さしつきにそ・あさましく
て・うせにし・【人】の・いと・【心】をさなう・とゝこ本る/(ととこ本る)・
【所】・な可り介る・可ろ/\しさ越八/(可ろ可ろしさ越八)・於もひな可ら・さ春
か尓・いみしと・ものを・於もひいり介ん・本と【我】・介しき・/八&介、し〈次頁〉、(54オ)
--------------------------------------
れいならすと・な介きし三て・ゐ多りけん・
阿りさ万越・きゝ/(きき)・【給】しも・於もひいてられ川ゝ/(於もひいてられ川川)・
於もり可なる・可多なくて・多ゝ/(多多)・【心】や春く・らう
多き・可多らひ【人】尓て・阿らんと・【思】日し二・いと・らう
多かりし/多&多・もの越・【思】ひ・もてゆけ八・三やをも・【思】ひ・
きこえし・【女】をも・うしと・於も者し・多ゝ/(多多)・王可・阿
里さ万能・よ川可ぬ・於こ多りそなと・な可めい・多
万ふ・とき/\/(ときとき)・於ほかり・[28]【心】能と可尓・さ万・よく・於八
する・【人】多尓・かゝる/(かかる)・すち尓八・【身】も・くるしき・ことを
の川可ら・万しる越・三や八・万して・なくさめか年【給】川ゝ/(【給】川川)【給】〈次頁〉、(54ウ)
--------------------------------------
かの可多み尓/【身】〈ママ〉・
なお、最後が中途半端な箇所で終わったのは、「かの形見に」(亡き浮舟を思い出すよすがとなるもの)『国文学解釈と鑑賞別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.28 蜻蛉』(伊藤編著、至文堂、184頁、2003年)となる本文に自分なりの拘りがあり、そのことを詳しく取り上げたからです。
ここを「片身」とするかか「形見」とするかで、写本に書き写されている「身」を漢字とするか変体仮名とするかの違いが出るからです。
小学館 精選版『日本国語大辞典』から説明を引いて、個人的には漢字の「身」が捨て切れないことをお話しました。翻字ではこの心残りを「かの可多み尓/【身】〈ママ〉」とすることで、今後の課題として残しておくことにしました。
今日も、みなさん熱心に聴き入ってくださいました。ありがたいことです。文部科学省が学校教育の中でとりあげないことにしている変体仮名が、こうした機会に多くの方が読めるようになっていただけるように、さらに根気強く講座の形式で語り続けて行きたいと思います。
【■講座学習の最新記事】
- 宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名..
- 日比谷で「須磨」(32)と『百人一首』(..
- 中之島での『百人一首』(第20回)と『源..
- キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物..
- 日比谷で「須磨」(31)と『百人一首』(..
- 中之島での『百人一首』(第19回)と『源..
- 宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名..
- 中之島図書館での歌舞伎と『源氏物語』の講..
- 日比谷で「須磨」(30)と『百人一首』(..
- キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物..
- 中之島での『百人一首』(第18回)と『源..
- 宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名..
- キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物..
- 日比谷で「須磨」(29)と『百人一首』(..
- 相愛大学本『源氏物語』(断簡)の勉強会の..
- 中之島での『百人一首』(第17回)と『源..
- 宇治で相愛本『源氏物語 橋姫』の変体仮名..
- キャンパスプラザ京都で相愛大学本『源氏物..
- 日比谷で「須磨」(28)と『百人一首』(..
- 中之島での『百人一首』(第16回)と『源..
