■「ペルシアの測天儀」
お土産として買った一個のメダルが、偶然の積み重ねの中で犯人を炙り出します。些細なことが、事件を解決する決定的な証拠になるのです。
すべてを書き尽くすのではなく、読者に推理を委ねながら展開する物語は、構想と語り口で見事な推理ものになりました。作者の、面目躍如というべき作品になっています。【4】
初出誌:『小説新潮』1967年8月
※参考資料:『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)には、次のようにあります。
「ペルシアの測天儀がひょんなことから犯人を割り出すというユーモア推理の快作。」(159頁)
■「不法建築」
違反建築物の問題は、とにかく時間がかかることがわかります。あの手この手で逃げ回るからです。
話は一転して、バラバラ殺人と拉致監禁未遂事件となります。その2つを結びつけるための思索が語られます。
しかし、この物語には、無理があります。想像力が勝り、現実味がありません。作者の手元で寝かせていたネタが、無理矢理つなぎ合わせる実験をしたもの、と思われます。【1】
初出誌:『小説新潮』1967年9月
■「入江の記憶」
語り手の記憶にある地名は、地図にはありません。しかし、そこはその男の出生地でした。6歳までいたところです。故郷のない男は、妻の妹が見たいというので、一緒に来たのです。
清張の心の中にある、自分には故郷がないことが背景にあって述べられているように思えました。清張の出生については、いろいろと問題があるからです。
この小話に語られている父と母は、清張の幼い頃の家庭環境を知る貴重な手掛かりになると思います。記憶が曖昧だとして語られることながら、そこには確たる理由があると思われるからです。
また、物語が意味深な内容で展開するのも、個人的な潜在意識からの発話のような気がします。清張にしては珍しい、思わせぶりな内容であり、詩的な世界にまとめた作品となっています。【4】
初出誌:『小説新潮』1967年10月
※参考資料:『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)には、次のようにあります。
「幼児の記憶を現在に結びつける短編推理の秀作。」(18頁)
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