キャンパスプラザ京都のホールには、いつものように本日の源氏講座の案内が表示されていました。
まず、『NHK2024年大河ドラマ 光る君へ ART BOOK』(東京ニュース通信社、2024年11月29日)の本を回覧し、ドラマの舞台裏にまつわる写真と記事が、平安文学の研究に有益であることをお話しました。ただし、『源氏物語』の物語本文について「物語の進行に合わせて該当の話が正確に書かれている。」という説明文には大いに疑問が残ることを、日比谷図書文化館での説明と同じように、問題点として指摘しました。
本題となる尾州家河内本「桐壺」については、最初に凡例の確認をしました。尾州家河内本には、膨大な朱点があり、その読み取りに関して正式な翻字方針を確認しておくためです。
■翻字に関する佐藤さんからのメモの整理 (要・第1回と第5回の〈朱点〉の再点検)
〈朱点〉を使って、原文をいかに正確に読み取るかという工夫が、尾州家河内本などでは随所に見受けられる。
※本行の文字間に打たれた読点としての朱点は、補入記号のない補入として、[/±〈朱点〉)]を原則とする。
ただし、朱点が削除されいてる場合は[±〈朱点削〉]又は[±〈朱点削?〉]とする。
朱点が文字の左右に打たれている場合は[/■±〈朱点右〉]又は[/■±〈朱点左〉]とする。特に朱点が右上に打たれている場合は、文章の切れ目を示す句点の意味を持っている。
濁点やミセケチなどで朱点が2個あれば、[■$〈朱2〉]とする。なお、ミセケチはおおむね左上に打たれる傾向がある。
今日の[変体仮名翻字版]の確認をしていく中で、問題として時間をかけたことを3例あげます。
(A)「【御】可多身」か「【御】可多【身】」か
11丁表8行目に、次のような例があります。
この翻字をどうするか、ということで話し合いをしました。
私は、最初は「【御】可多身」として、「身」を変体仮名としました。しかし、いろいろと話をしていく内に、「身」は漢字の「【身】」とした方がいいのではないかと思い、「【御】可多【身】」と翻字することにしました。
辞書などを見ると、すべてが「形見」と表記するので、漢字の「身」の意味はないとしているようです。しかし、平安時代には「形身」の意味でも使われていたかも知れない、ということで、今は一応漢字の「身」として扱おう、ということになったのです。ここで漢字として扱っておいた方が、後で漢字として認定するよりもデータを管理する上では楽なのです。一括で【 】を外す方が、再確認して【 】を付ける作業よりも楽だからです。
(B)濁点を翻字する方法
12丁表6行目に、次のような「まくらこと尓」という例があります。
これを[変体仮名翻字版]で翻字すると、次の表記となります。
まくらこと尓/±〈朱点〉、まくらこと=〈朱点左〉、こ〈朱点左2〉
ここでは、凡例に定めた記号を用いて、本文と朱点の状況がわかるようになっています。
(1)「ま」の上に読点としての〈朱点〉がある。(/±〈朱点〉)
(2)続く「まくらこと」の左側に〈朱点〉がある。(=〈朱点左〉)
(3)「こ」の左側に〈朱点〉が2つある(こ〈朱点左2〉、ただし1つは(2)の〈朱点〉)。
(4)「尓」の下には読点の〈朱点〉がある。
この「こ」に2つの〈朱点〉があるのは、ここは「枕言(まくらごと)」という言葉なので、これを「ご」と読ませたいからのようです。ただし、「まくらことに」の文字の左側に〈朱点〉がある理由は、他の用例と共に今後とも確認していくものとなります。
(C)書き間違った文字を削除してなぞり書きによって訂正している箇所
12丁裏5行目では、まず「於ほしつゝ」と書写し、「つゝ」が間違いだったことに気付いたためにその2文字を削り、その上から「ゝ徒」とナゾリ書きしている例です。
この場合は、[変体仮名翻字版]では次のように表記します。
於ほしゝ徒むれと/±〈朱点〉、つゝ〈削〉ゝ徒=△△〈削〉、(於ほしつゝむれと、おほしし徒むれと)
今日は、いろいろと書写上の問題点の整理で時間をとったので、11丁表から12丁裏までの4ページ分しか進めませんでした。
以下に、本日確認した[変体仮名翻字版]での翻字を引きます。
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「すゝむし乃/(すすむし乃)・こゑ乃・可起里を・つくしても・
な可き・よ・阿可春・ふる・なみ多可な」・江毛/±〈朱点右〉・乃里
やら寸・
「いとゝしく/(いととしく)・むしの・ね・新遣き・あさちふ尓・
つ遊・をきそふる・くも乃うへ【人】」・可ことも/±〈朱点右〉・きこ
江つ遍くなんと・い者勢/±〈朱点〉・たまふ・於可しき/±〈朱点右〉・さま
那る・をくり【物】なと/±〈朱点〉・あるへき/±〈朱点〉・於り尓も・あらね八・
堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・か乃/±〈朱点〉・【御】可多【身】とて・ナシ・ナシ・可ゝ類/±〈朱点〉、(可可類)・ようもやと/±〈朱点〉・乃こ
しをき/±〈朱点〉・多まへり遣る【御】さうそくひとく多
里/【御】±〈朱点〉、ひ±〈朱点〉・【御】くしあ遣の/±〈朱点〉・てうとめく・【物】・そへ/±〈朱点〉・堂まふ・
王可き/±〈朱点右〉・【人】ゝ/(【人人】)・可なしき/±〈朱点〉・【事】八・さら尓も/±〈朱点〉・い者す・【内】わ多りを/±〈朱点〉、わ〈次頁〉、(11オ)
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あさゆふ尓/±〈朱点〉・ならひて・いと/±〈朱点〉・さう/\しう/±〈朱点〉、(さうさうしう)・
うへ乃/±〈朱点〉・【御】ありさま那と・於もひいて/±〈朱点〉・起こゆれ八・
とく/±〈朱点〉・まいり/±〈朱点〉・堂ま八ん・【事】を・そゝの可し/±〈朱点〉、(そその可し)・きこ
ゆ礼と・かく/±〈朱点〉・いま/\しき/±〈朱点〉、(いまいましき)・【身】乃/±〈朱点〉・そひ・多てまつらん
も・ナシ・【人】ゝきゝ/±〈朱点〉、前ゝ$〈墨朱〉・う可るへし・【又】/±〈朱点〉・【見】/△〈削〉【見】、【見】=【見】〈削〉・多てまつらて・志八し
毛/±〈朱点〉・あらん八・いと/±〈朱点〉・う志ろめたく・於もひきこ江/±〈朱点〉・【給】
て・す可/\とも/±〈朱点〉、(す可す可とも)・江/±〈朱点〉・まいら勢多てまつり・多ま八ぬな
り遣里/な±〈朱点〉・【命婦】八/±〈朱点右〉・まいりて/±〈朱点〉・また/±〈朱点〉・於本と乃ゝこも
ら寸/ゝ$〈墨朱?〉・まち/±〈朱点〉・於八しましけるを・いと/±〈朱点〉・あ八れ尓・【見】/±〈朱点〉、△〈削〉【見】・多
て万川る・於万へ乃/±〈朱点右〉・徒本世んさい乃・ナシ・於もしろき・
さ可りなるを/±〈朱点〉・【御覧】する/±〈朱点〉・やう尓弖・新のひや可耳/±〈朱点〉、や〈次頁〉、(11ウ)
--------------------------------------
【心】尓くき/±〈朱点〉・可き里能・【女房】・【四】/±〈朱点〉・【五人】・さぶら八世/±〈朱点〉・
【給】て・【御物】可多り/±〈朱点〉・せ佐世/±〈朱点〉・【給】なり遣り・古乃ころ/±〈朱点右〉・
あ遣く礼/±〈朱点〉・【御覧】する/±〈朱点〉・【長恨歌】能/±〈朱点〉・ゑ・【亭子院】能/±〈朱点〉・
かゝ世/(かか世)・【給】て・【伊勢】/±〈朱点〉・【貫之】尓/±〈朱点〉・よま勢・【給】へる・やまと/±〈朱点〉・
ことの八をも・ゝ路古しの/±〈朱点〉、(も路古しの)・う多をも・堂ゝ/±〈朱点〉、(堂堂)・そ能/±〈朱点〉・
すちをそ・まくらこと尓/±〈朱点〉、まくらこと=〈朱点左〉、こ〈朱点左2〉・せさ勢/±〈朱点〉・多まふ・いと/±〈朱点右〉・こ
まや可尓/±〈朱点〉・ありさま/±〈朱点〉・と八勢/±〈朱点〉・堂まへ八・あ八れなり
徒る/±〈朱点〉・【事】とも・新のひや可尓/±〈朱点〉・そう春/±〈朱点〉・【御】可へり/±〈朱点右〉・
【御覧】す礼八/±〈朱点〉・いとも/±〈朱点〉・かしこき八/±〈朱点〉・をきところも・
八へら春・可ゝる/±〈朱点右〉、(可可る)・於ほ世【事】尓・つ希ても・かきくら
す/±〈朱点〉・み多り【心地】尓なん/±〈朱点〉、(12オ)
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「あらき・【風】・ふ勢きし・可けの・可礼しより・
こ八き可・うへそ・志川【心】・なき」なと/な±〈朱点〉・やう耳・
み多り可八しきを/±〈朱点〉・【心】/±〈朱点〉・於さめさりける/±〈朱点〉・本とゝ/(本とと)・
【御覧】しゆる春/±〈朱点〉・いと/±〈朱点右〉・可うし毛/±〈朱点〉・【人】尓/±〈朱点〉・【見】江し
と・於ほしゝ徒むれと/±〈朱点〉、つゝ〈削〉ゝ徒=△△〈削〉、(於ほしつゝむれと、おほしし徒むれと)・さら尓/±〈朱点〉・江・しの飛あ江
さ勢・堂ま八寸・【御覧】し八しめし/±〈朱点右〉・とし【月】能/±〈朱点〉・
【事】さへ・可きあつめよろ川尓/±〈朱点〉、よ±〈朱点〉・お本しつゝ遣
ら礼弖/±〈朱点〉、弖=〈墨ヨゴレ〉、(お本しつつ遣ら礼弖)・【時】の/±〈朱点〉・まも・於ほつ可な可里しを・かく
ても/±〈朱点〉・【月日】八/±〈朱点〉・へ介りと/±〈朱点〉・あさましう/±〈朱点〉・於ほさる・
【故大納言】乃/±〈朱点右〉・ゆいこん・堂可へ春/±〈朱点〉・三や川可へ能/±〈朱点〉・
本い・ふ可く・【物】し多りし/±〈朱点〉・よろ古ひ尓八/±〈朱点〉・可ひ/±〈朱点〉・阿類/類〈次頁〉、(12ウ)
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