今日は、1時間ほど早めに日比谷図書文化館へ行き、図書館のサービス部門のマネージャーの方々と打ち合わせをしました。架蔵の『源氏物語』の翻訳本すべてを寄贈したい意向を伝えてあったので、今度はどのようにその話を進めるかという話し合いです。「古文書塾 てらこや」の責任者のお2人も同席してくださっての会合となりました。
43種類の言語で翻訳されている『源氏物語』を、日比谷図書文化館側でどう整理し、管理し、閲覧に供するかという諸問題の解決の道を、今はまだ探っているところです。すでに[海外へいあんふんかく情報](http://genjiito.org)で世界中の翻訳本の情報は公開しているので、これは今後とも増え続ける翻訳本のライブラリーの展開を見据えての課題に挑むことでもあります。日本文化と文学の新たな研究領域を切り拓くものであり、スケールの大きなプロジェクトでもあるので、慎重に検討を重ねていくことで前向きに検討していくこととなりました。
多言語による翻訳本を対象とした研究に興味と関心をお持ちの方は、一緒にプロジェクトを起ち上げませんか。本ブログのコメント欄を通して、問い合わせを含めての連絡をお待ちしています。
本日の講座については、日比谷図書文化館の正面入口にいつものように案内が掲出されていました。
13時からは、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」の[変体仮名翻字版-2023]のデータの確認をする講座となります。
最初に、『NHK2024年大河ドラマ 光る君へ ART BOOK』(東京ニュース通信社、2024年11月29日)の本を回覧し、ドラマの舞台裏にまつわる写真と記事が、平安文学の研究に有益であることをお話しました。特に、越前和紙、硯の横の小刀、平安巻筆、文鎮や文具に関しては、丁寧に解説しました。
なお、『源氏物語』の物語本文が執筆されている原稿に付けられた次の説明文には大いに疑問が残ることを問題点として指摘しました。
「源氏物語」は、物語の進行に合わせて該当の話が正確に書かれている。
ここで言う、「該当の話が正確に書かれている。」と言うのは、どういう意味なのでしょうか。「正確」の意味するところが、私にはまったく理解できません。写本の話であれば、「正確に書き写されている。」と言えます。しかし、ここでは物語作者が書いた原稿の話だと思われるので、「正確に」とは何を「正確に」書いたと言いたいのでしょうか。そもそも『源氏物語』の作者が紫式部であるというのは正確ではなく、物語の編集者だと考えている私には、なおさら意味不明の説明文となっています。
本題となる、ハーバード大学蔵『源氏物語 須磨』については、36丁表3行目から36丁裏までを丹念に[変体仮名翻字版]で表記を確認しました。
中でも、36丁裏7行目の「【人柄】を/を&【柄】、【柄】$、(【人】を)」とした部分には、多くの時間を割きました。
「を」と「【柄】」がどのような経緯で書写され、修正されているかということです。私は「を」を「【柄】」でなぞったとしました。しかし、「【柄】」を「を」でなぞっているのではないか、という意見が出て、それも再検討すべきことなので、ひとまず保留としました。
ハーバード大学美術館へ行き原本が確認できる機会が得られたら、その他の疑問箇所も含めてこうした点を慎重に点検して来たいと思います。
本日確認を終えた本文は、以下のとおりとなります。
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・ナシ・ナシ・ひとよりは・こと尓奈ま免可し
う・いうなる・ひと尓・みえ堂り・奈本・
う川ゝと八/(う川川と八)・【思】・【給】へられぬ・【御】多ひ井を・(2024年12月07日はココマデ確認)・う
け多満八る毛・あ介ぬ・よの・【心】万とひとの三なん・
佐里とん・とし【月】八・へ・【給】者しと・【思】や里・きこゑ
さ寿る尓毛・徒三・ふ可き・【身】の三こそ・【又】き
こゑさせん・こと毛・八る可なるへ介れ・
「うき免・可る・い世乃/〈ママ〉・あま越・於もひやれ・
毛し本・多るてふ・寿満乃・うら尓て」・よろつ・
【思】・【給】へ・三多るゝ/(三多るる)・【世】乃・あ里佐まを・なをい可尓か奈と/か〈次頁〉、(36オ)
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ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・於ほ可里・
「【伊勢】志まや・し本ひ乃・可多尓・あさりて
毛・いふ可ひ奈き八・わ可・【身】なり介り」・毛乃
を・あ者れと・於ほし介る・満ゝ尓/(満満尓)・うちをき/\/(うちをきうちをき)・
かい・多まへる・しろき・可ら乃・可三・【四五枚】
者可りを・まき川ゝ介て/(まき川川介て)・寿み徒き奈と・三
【所】・あ里・あ者れと・於もひ・きこゑ新・【人柄】を/を&【柄】、【柄】$、(【人】を)・ひ
とふし・うしと・【思】し・【心】あやま里尓・【又】・三や須
【所】毛・【思】日うむして・王可れ・【給】尓しと・於ほ世八・
いま八・いとをしく・か多し介那き・すち尓も/も〈丁末左〉、(36ウ)
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1時間の休憩を挟み、3時半からは『百人一首』の時間です。
今日は、陽明文庫旧蔵の『百人一首』は七二番歌から七五番歌までの4首に留め、昨秋より教材の一つとして取り上げた尾形光琳の『百人一首』の確認を急ぎました。光琳の『百人一首』については、今日は以下の二八番歌から六三番歌までの確認をしました。陽明文庫旧蔵カルタの確認と、光琳カルタの確認を、同時並行で進めたいために急いで追いつこうとしているのです。
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■光琳かるた[変体仮名翻字版-2023] 二八番歌〜六三番歌
(『別冊太陽愛蔵版「百人一首」』、平凡社、一九七四年十一月九日発行 より)
二八 源宗于朝臣
【山里】は 【冬】そ【寂】しさ 満さ里ける
【人】めも【草】毛 か連ぬと【思】へ者
二九 凡河内躬恒
【心】あ弖尓 おら者や【折】ん 【初】しもの
【置】まと者世類 志ら【菊】の【花】
三〇 壬生忠岑
【有明】の つ連なくみえし わ可連よ里
あ可つき者可り う起もの盤なし
三一 坂上是則
【朝】本らけ 【有明】の【月】と 三る万弖に
よしのゝ【里】耳 ふ連類【白雪】
三二 春道列樹
【山川】尓 可せの可け多る 志可らみ盤
な可れもあへぬ 毛三ちな里けり
三三 紀友則
【久方】の 日可り能とけき はる乃【日】耳
志徒【心】なく 者那のちるらむ
三四 藤原興風
【誰】を可も 志る【人】にせん 【高砂】の
満川もむ可しの 【友】ならな具尓
三五 紀貫之
【人】盤いさ 【心】も志らす 布る【郷】盤
【花】楚む可しの 【香】尓ゝほ日ける
三六 清原深養父
【夏】のよ盤 万多【宵】な可ら あけぬるを
くものい徒こ尓 【月】や登るらん
三七 文屋朝康
志ら徒ゆ耳 可せの【吹】し具 【秋】能ゝは
つらぬ起とめ怒 【玉】楚ち里ける
三八 右近
わすら留ゝ 【身】を盤おも者寸 ち可日てし
【人】乃いのち濃 おしくも【有】可那
三九 参議等
あさちふの を能ゝし濃【原】 志のふ連と
阿万里てなと可 【人】の【恋】しき
四〇 平兼盛
志のふ礼と 【色】尓【出】にけり わ可こひ八
ものやお毛婦と 【人】乃登ふ万弖
四一 壬生忠見
【恋】すて婦 わ可【名】盤万多き 【立】尓けり
日とし連すこ楚 於毛ひ所めし閑
四二 清原元輔
ちき里支な 可多み尓そてを し本里徒ゝ
すゑの万川【山】 【波】こさしとは
四三 権中納言敦忠
あ日三弖の 【後】乃【心】尓 くらふ連は
む可し盤ものを 【思】者さ里けり
四四 中納言朝忠
【逢】【事】の 多えてしなく八 【中】/\に
【人】をも【身】乎毛 うらみさら満し
四五 謙徳公
あ者連とも 意婦へき【人】八 おも本えて
【身】のい多つらに な里ぬへ支可な
四六 曽祢好忠
ゆらの【戸】を わ多る【舟人】 可ち越多え
【行衛】も志らぬ 【恋】の【道】可な
四七 恵慶法師
【八重葎】 志希連るやとの さひし支尓
【人】こ楚みえね 【秋】盤き尓ける (陽明本は「遣礼」)
四八 源重之
【風】をい多み 【岩】うつ【波】の 【己】乃三
く多け弖ものを 【思】ふころ【哉】
四九 大中臣能宣朝臣
み可き【守】 【衛士】の堂く【火】能 よる盤もえて
日るは【消】徒ゝ 【物】をこ楚【思】へ
五〇 藤原義孝
きみ可【為】 おし可らさりし いのちさへ
な可くも可那と お毛日ける【哉】
五一 藤原実方朝臣
かくと多尓 衣や盤いふきの さしもくさ
佐しも志らしな 毛ゆる【思】日を
五二 藤原道信朝臣
【明】ぬ連盤 くるゝものと八 【知】な可ら
な越うら免しき 阿さほら希可な
五三 右大将道綱母
な希支川ゝ 【独】ぬるよの あく類【間】盤
い可耳【久】しき ものと可はし留
五四 儀同三司母
【忘】連しの ゆく【末】まて八 か多け連と (陽明本は「遣連者」)
気ふをか支里乃 い能ちとも可な
五五 大納言公任
【瀧】の【音】盤 堂え弖ひさしく 【成】ぬ連と
【名】こ楚な可れ帝 なを支こ盈希礼
五六 和泉式部
あらさ羅無 【此】よの【外】乃 【思出】耳
い満【一】堂飛の 阿ふことも可な
五七 紫式部
免く里阿ひ弖 三しやそ連とも 【分】ぬ万に
【雲】かくれ尓し よはの【月】か希 (陽明本は「【哉】」)
五八 大弐三位
【有馬山】 いな農さゝ【原】 【風】ふけ盤
い弖そよ【人】を わすれやは春る
五九 赤染衛門
やすらはて ねな万しものを さよ【更】帝
閑た布く満弖乃 【月】をみし可那
六〇 小式部内侍
【大江山】 いくのゝ【道】乃 登をけ連八
満多ふみも三寸 【天】能者し【立】
六一 伊勢大輔
い尓しへの なら能三【都】乃 【八重】さ九ら
けふこゝのへ耳 【匂】ひぬる【哉】
六二 清少納言
よ越こめ弖 【鳥】のそらね者 は可るとも
よ耳【逢坂】乃 せき盤ゆるさし
六三 左京大夫道雅
【今】は多ゝ おも飛堂え【南】 登者可りを
【人】徒弖ならて い婦よしも可な
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一気に光琳カルタに書かれている文字を36首も[変体仮名翻字版]で確認したので、受講生のみなさまはパニックだったかもしれません。しかし、終了後にいろいろと質問が出たので、結構楽しかったのではないか、と思った次第です。
来月からは、2種類の『百人一首』の進度が同期することになるので、また楽しい文字の読み比べができておもしろくなることでしょう。
今日は息子が出張で都内にいないので、急遽かつて私が学生時代に住んでいた大森の駅前に宿をとりました。今日と明日は、大学入学共通テストがあるため、都内のホテルは受験生などに確保されていて、どこも空きがありません。しかし、私は強運を背負っていることもあってか、うまくキャンセルに巡り合え、しかも私が学生時代に住んでいた大森という、懐かしい所に宿を確保できました。しかも、住んでいた場所の至近の所です。ここで十二指腸潰瘍穿孔性腹膜炎となり大手術をして命拾いをし、毎朝新聞を配り、火事に遇って焼け出され、成人式の日は近くの神社の会館で支給された毛布にくるまっていました。明日は、そんな55年前の思い出の地を再訪しようと思っています。
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