京都文化博物館の北斜め前にある京町家書道アートギャラリー「宏寛堂」で、第1回となる速記茶話会が開催されました。
次の写真の右側の狭い入口から入ります。今回も、会場は2階でした。
私は速記の分野の専門家ではないものの、文字のデータベースの構築に取り組んでいることから、西部速記(株)代表の上野佳之さんからお招きを受けたので、来賓として妻共々出席しました。
いただいた案内は、以下の内容のものでした。
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速記茶話会開催のご案内 2024.10.26
日本に速記が生まれて140年余、このたび速記の諸相について考える会合を開催することになりました。西欧文明で生まれた手書き速記は地域、言語において発達し、また機械速記も西欧から世界へ広がるとともに、前世紀に電子化が始まり自動化が進んでいます。科学技術の進歩に伴い、速記は人間が処理する技術から機械が処理するSpeech to text technology (STT)へ進化しつつあります。まさに今日、速記は事後反訳型の言語固定からリアルタイム反訳、あわせて同時翻訳、完全無人処理などへと進みつつあり、さまざまな視点、立場から研究成果が報告され、新たな速記技術を生み出し、言語文化の発展に貢献しつつあると見ています。
◇開催日:2024年11月24日(日)午後1時〜5時 (会場開場は正午ごろ)
◇会 場:書道ギャラリー“宏寛堂” 京都市中京区木の下町286(姉小路高倉東入。京都文化博物館 北・東側角、京町家「足と靴のお悩み相談室」の2階)地下鉄烏丸線・烏丸御池駅下車、京都文化博物館方向歩5分
◇参加者:申込者 14名
◇プログラム(報告者順)
『日教組中執速記原本の第三者解読〜こう読んだ』(仮題) 解読者 平野明人(速記士)
『AI時代の英語教育〜文体への意識』京都府立大学文学部教授、副学長 山口美知代
『アメリカ法廷速記事情』(仮題) スタンフォード大学人類学部 准教授 井上美弥子
『INTERSTENO 2024における音声テキスト化技術の議論』京都大学情報学研究科教授 河原達也
なお、
@情報保障:会場内で全報告についてUDトークの音声認識による同時字幕を付与します。
A後日YouTubeによる各報告の配信を予定しています。(報告者のご承諾を必要とします)
B(公社)日本速記協会機関誌「日本の速記」で報告する予定です。
【講師情報】
☆平野明人氏:1976年早稲田速記通信教育を受講、以後中根式、モリタ式、石村式、田鎖76年式、V式、Gregg式、Pitman式、Teeline式等を独習。中、早、モ、石の各式と、創案した示唆式の5方式で速記協会の一級試験に合格。日教組の速記原本解読を牽引した。
☆井上美弥子氏:筑波大学大学院卒、言語人類学の研究者。近代日本社会の現象、19世紀後半以降の国会議事録で日本の速記法の歴史的発展、裁判記録に導入の速記タイプライターの歴史的発展などを日本語領域も研究。
☆山口美知代氏:近代後期の英語の多様性について、世界の映画を素材に多様化する英語を研究。アイザック・ピットマンの英語綴り字改革などを研究してきた。
☆河原達也氏:音声情報処理、特に音声認識及び対話システムに関する研究が専門。INTERSTENO(明治20年第1回国際速記会議として発足)科学委員会メンバー。2024年夏の会議に参加した報告を行う。
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なお、ご参会の岡島昭浩先生(大阪大学)とは、コンピュータの草創期にパソコン通信で情報交換をしました。久しぶりに懐かしいお名前を拝見し、休憩時間に少し挨拶をしました。ますますのご活躍です。
さて、本日は60分の発表が4本ありました。
(1)平野明人先生(速記士)は、熱のこもったお話でした。速記の解読でご苦労なさった中でも、助詞の判断に迷ったということは、変体仮名の場合でもあったことを思い出しました。
(2)山口美知代先生(京都府立大学)の資料には、チャットGPT を使うにあたって、【漢語多用】【漢語、外来語をできるだけ使わない】【外来語多用】の指示をして回答を求めた例がありました。AI時代の英語教育において、微妙な文体の違いが見られて、おもしろいと思いました。
文体の指示によって英語はこんなに違ってくるということを、チャットGPTを使った例をあげながら詳しく語ってくださいました。
発表後後に、私は2つの質問をしました。それは、山口先生が、現在急速に成長している生成AIの開発に関わっておられるのかということと、こうした研究をどのように生成AIの開発者側に伝えておられるのか、ということです。いずれも関わりはなく、個人的に情報共有もしていない、とのお答えをいただきました。また、本日の発表もまだ公表していないとのことでした。
これからのますますのご活躍を楽しみにしたいと思います。
(3)井上美弥子先生(スタンフォード大学)は、体調を崩されて欠席ということで、兼子次生先生(元日本速記協会理事長)が代わりに速記の歴史について語ってくださいました。
今や消えつつある文化としての速記は、無形文化財として申請すると認定されないだろうか、という話も出ました。
(4)河原達也先生(京都大学)は、音声認識がご専門です。INTERSTENO(明治20年第1回国際速記会議として発足)科学委員会メンバーであり、2024年夏の会議に参加なさった報告を伺いました。また、海外におけるオープンAIのwhisperによる音声認識についての状況や、読み書きが困難な障害者や外国人を対象にした、わかりやすい字幕の検討がなされていることの話もありました。
今回は、会場のスクリーンに発表者の言葉がライブで字幕で表示されていました。これは、参加している者にとっては便利です。仮名漢字交じりの文章として目の前に表示されると、耳で聞いたのではわからなかった言葉や表現が、リアルタイムに目で確認できるのです。海外の学会などで、同時通訳をイヤホンやヘッドホンで聴いた時以上に、新しい刺激を受けました。これは、「UD トーク」というアプリを活用して実現したものでした。誤字や脱字などもありました。しかし、それは参加者が充分に補訂できるものでした。これからは、この技術がますます精度を上げ、便利なツールとなることでしょう。
最後に、『日本の速記』(2024.11、No.1012、令和6年11月発行、日本速記協会)をいただきました。これには、今夏7月15日に今回と同じ「宏寛堂」で開催されたオープニングセレモニーで私がお話した内容が、兼子次生先生の記事の中で以下のように紹介されていました。
NPO源氏物語電子資料館の代表をつとめる伊藤鉄也博士は洛中洛外の変体仮名研究の一部として京都で見つけた言葉を紹介しながら「一九〇〇年に変体仮名が使えなくなった。変体仮名こそ日本の文化を伝える文字だから、ぜひ使えるように改めてほしい」とみずからの文化を大切にするよう訴えた。(25頁)
この日のことは、「京都文化博物館の北側正面に京町家ギャラリー&カフェ「宏寛堂」が開店」(http://genjiito.sblo.jp/article/190980790.html)で報告していますので、ご笑覧を。
今日は、日頃まったく考えることのない分野での発表や意見を4件も伺い、実に新鮮な気持ちになりました。いい機会をいただきました。上野佳之さん、ありがとうございました。
なお、私の介助役として同席した妻は、高校生の時に速記の通信教育の教材を入手し、速記を習得しようとしていたことがあったと、今日初めて話してくれました。その後、進展はなかったようですが。しかし、意外なことを知り、驚きと共に嬉しい話に速記を見る目が変わりました。
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7月に続き、昨日も宏寛堂に御足を運んでくださり、誠にありがとうございました。
変体仮名と速記文字、成り立ちや古さは違いますが、古い文字の解読に苦労されていることや、線形の美しさがどちらにもあり魅力を感じています。
両分野で何十年と第一線で御活躍されている先生方が一同に集まる、人間交差点のような光景に圧倒されました。
次回もまたありそうなので、ぜひまた奥様と御一緒にお越しいただけますと幸いです。
しかし、奥様と速記にそんな過去があったとは驚きました。
不思議な御縁を感じます。
教えていただきありがとうございました。
昨日は楽しく勉強をさせていただきました。
ありがとうございました。
お食事会と懇親会は欠席で失礼しました。
上野さんの益々のご活躍をお祈りしています。