2024年10月14日

清張復読(73)「交通事故死亡1名」「偽狂人の犯罪」「家紋」(『死の枝』より)

 松本清張の短編には、読者を唸らせるものが数多くあります。『死の枝』に収録されている11編は、いずれも完成度の高い作品群です。読む者を飽きさせません。

■「交通事故死亡1名」
 避けられなかった事故死をめぐり、タクシー会社の事故担当係は調査に乗り出しました。
 そして、見せかけの偶然が、実は用意周到な人工的な殺人につながることに気付くのです。
 意外な展開から導く結論には、よくぞ、という爽やかさを残します。【5】

初出誌:『小説新潮』1967年2月
原題『十二の紐』、改め『死の枝』



■「偽狂人の犯罪」
 完全犯罪のために精神病者になる、と言う話が展開します。ドストウェスキーの『罪と罰』がその背景にあります。
 精神病に関する調査の結果が、要領よくまとめてあるので、解説書を読んでいる気になりました。
 読書と調査と研究により、精神病者を演じていることを見破られないように犯人は自分を訓練します。その努力には敬服します。
 犯罪心理学をわかりやすく語る小説で、大いに楽しみました。最後の猥本で犯人の演技を見破る展開は、清張らしい発想で唸りました。【5】

初出誌:『小説新潮』1967年3月

※参考資料:『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)には、次のようにあります。
「詐病者の殺人を倒叙形式で描いた犯罪小説で、その看破法の意外さで読ませる。」(132頁)



■「家紋」
 夫婦の殺人事件は迷宮入りとなりました。生き残った一人娘は女子大生に。そして、5歳の時の両親が殺された時のことを思い出します。やがて、犯人のイメージが立ち現れるのでした。
 あくまでも想像の域を出ません。しかし、読者には犯人が特定されていく道筋が見えてくるのです。連想から共感へと、清張が物語るままに読者は導かれていきます。巧みな物語の構成です。【5】

初出誌:『小説新潮』1967年4月

※参考資料:『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)には、次のようにあります。
「雪の北陸を舞台にした土俗色の強い本格物。」(36頁)




posted by genjiito at 20:18| Comment(0) | □清張復読
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