キャンパスプラザ京都での『源氏物語』を読む会も、通算で20回を超えて21回目となりました。
先月から始めた尾州家河内本「桐壺」で数えると、今日は2回目となります。
キャンパスプラザ京都(京都市大学のまち交流センター)の入口にある掲示板では、「池田本源氏物語」となっています。過日、3ヶ月前に予約した名称なので、「池田本」を「尾州家河内本」に書き換えてもらうように手続きをしました。しかし、変更が間に合わなかったようです。
変体仮名の文字を読み解くだけの集まりなのに、毎回みなさんと活発に意見交換をしながら進めています。特に先月からは、池田本「桐壺」(重要文化財)が終わったのを受けて、写本を尾州家河内本「桐壺」(重要文化財)に変えて読み出しました。しかも、基礎資料の作成を参会者の佐藤さんが引き受けてくださり、それを私が勉強会用に加工してプリントを作る、という工程となりました。私からの一方的な資料の提示ではなく、みんなで写本の文字を読み解こう、という流れになっています。
しかも、今日から参加者が増えました。京都新聞に掲載された案内を見た、という方がお出でになりました。1回目にして、早々と変体仮名が少し読めるようになった、との感想をお持ちになったようです。やはり、変体仮名の字母に立ち戻って確認していくという方式が、効率的な学習につながっているのでしょう。[変体仮名翻字版-2023]による読解が、実証されているとも言えるでしょう。終わってからは、京都駅までいろいろなお話をしながら帰りました。
本日配布した資料8枚の内、2枚を画像でアップします。
今日は、私へのインタビューと架蔵の『源氏物語』の翻訳本多数が来週放映されることの紹介から始めました。
日時は、来週8月27日(火)17時30分ごろ
NHK総合「午後LIVEニュースーン」
特集コーナー「トクシューン・世界で読み継がれる源氏物語」
『源氏物語』の世界への広がりがテーマの企画に協力し、東京と京都で取材を受けたものです。
短時間のコーナーの一部とはいえ、どこが切り取られ、どのような編集がなされるのか、今から楽しみです。
続いて、ハングルで翻訳された『源氏物語』を回覧しました。
この本に関しては、不愉快な逸話があります。無断引用と無許可の画像切り抜き、しかも左右反転して本の表紙に使い今に至っている案件です。配布した資料に記した通り、このことはオーストリアのウイーンで開催された国際研究集会のEAJS(2005年)で、私から問題提起したことでもあります。
この件に関しては、韓国日語日文学会主催の国際学術シンポジウム・春季国際学術大会で、「日本文学研究の情報・資料をウエブで共有する」と題して私が研究発表をした際、帰国する時にソウルの書店で盗用の事実を見つけました。その時にすぐ電話で抗議をし、後にソウル特別市にある国際交流基金ソウル日本文化センターでの面談を組みました。しかし、当日、結局出版社は来ませんでした。帰国後、メールでやり取りをしました。私と国文学研究資料館に献本をする、という提案があったものの具体化する前に、音信不通で立ち消えになったままです。ベルヌ条約など無視という、何とも人権と著作物に関する権利意識の薄い出版社です。配布した資料の2枚目に掲載した、「表紙と源氏絵について」というウイーンの国際集会で配布した拙文を参照いただければと思います。気持ちよくお互いの文化を共有できるよう、常に心がけていきたいものです。
さて、本題の尾州家河内本「桐壺」の[変体仮名翻字版-2023]の翻字の確認です。
この翻字については、すでに書いたように、参会者の佐藤さんが基礎データを作ってくださいました。その折のメモを、以下に引きます。
■翻字に関する佐藤さんからのメモ
〈朱点〉を使って、原文をいかに正確に読み取るかという工夫が随所に見受けられます。
その工夫ごとに分けています。
(1)句読点代わりに用いていると思われる
@文節の区切り・・・文節の最後につくので指示通り「±〈朱点〉」にしました。
文節の途中にある場合は「と±〈朱点〉」のようにしました。
A文の区切り・・・・文節の最後につくので「±〈朱点右〉」「±〈朱点左〉」とし、
右下、左下のように「下」はつけなかった。ちなみに左はなし。
B不明・・・・・・・「..」が左下にあるのがほとんどで「飛±〈2朱点左〉」、
3個あるものがあるが、これはこれと次の傍点とが合わさったものと解釈。
(2)傍点を用いて後の解釈に利用
@強調・・・文字の左側につくので傍書にならい、「いとと=〈朱傍点〉」
A不明・・・右につく場合で「と=〈朱傍点右〉」としたがミセケチの可能性も
(3)ヨゴレやミスと判断されるものもありましたが、後で削除できるので同様にしました。
この問題点の整理を踏まえて、前回の1回目の翻字の再確認から始めました。
なお、朱点に関しては、私の方で以下のような凡例をまとめました。
※本行の文字間に打たれた朱点は補入記号のない補入として、(/■±〈朱点〉)を原則とする。
ただし、朱点が削除されいてる場合は(■±〈朱点削〉)又は(■±〈朱点削?〉)とする。
朱点が文字の左右に打たれている場合は(/■±〈朱点右〉)又は(/■±〈朱点左〉)などとする。
ミセケチなどで朱点が2個あれば(■$〈朱2〉)とする。
ミセケチは、おおむね左上に打たれる傾向がある。
そして、本日の翻字確認をしている中で、朱点が右外に打たれている箇所は、文が閉じる句点の意味を持たせている、という指摘が辻さんから出ました。確かにそうです。自力で辿り着いた、今日の大きな成果の一つとなりました。こうして、素人集団ながら、専門家とは違った視線で、独自の調査や検討を通して、よくわからなかったことが1つ1つわかってきたのです。すでに専門家による指摘があるかもしれません。しかし、意見交換の中でこうした結論が導き出せたことに、この勉強会の意義があると言えるでしょう。
また、1丁裏1行目の「堂ま八寸/寸±〈朱点〉」について、仮名にするか字母の漢字にするかで、新たな方針が決まりました。「寸」は最後の線が交点を作る字形の場合には「す」とし、交点がないままに終わる場合は「寸」にすることとなりました。ここでの例は、「寸」となります。
また、次の「(おほむ)可本可多ち那り」に関しては、朱点が意味することに関して意見が割れました。
ここは、公開する予定のデータベース化に伴う表記では、私案としては「可本$〈朱〉、後可$〈朱2〉、多$〈朱〉、り±〈朱点右〉」となります。しかし、朱点によるミセケチを採用して本文を読み取ると、「おほむち那り」となり、意味をなさない文となります。朱点が2つ打たれている意味に関しても、今日は結論が出ませんでした。これらは今後の課題として、読み進めながら朱点が意味する所を考えて行きます。
■尾州家河内本「桐壺」(前回:第1丁表〜第2丁表まで、今回:第2丁裏)
[変体仮名翻字版-2023]
※翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(±)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
※本行の文字間に打たれた朱点は補入記号のない補入として、(/■±〈朱点〉)を原則とする。
ただし、朱点が削除されいてる場合は(■±〈朱点削〉)又は(■±〈朱点削?〉)とする。朱点が文字の左右
に打たれている場合は(/■±〈朱点右〉)又は(/■±〈朱点左〉)などとする。ミセケチなどで朱点が2個
あれば(■$〈朱2〉)とする。ミセケチは、おおむね左上に打たれる傾向がある。
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いつ礼乃・【御時】尓可/可±〈朱点〉・【女御】/【御】±〈朱点〉・【更衣】/【衣】±〈朱点〉・あまた・さ布
らひ・堂まふ・な可尓/尓±〈朱点〉・いと・やむこと那き・ゝ八尓
八/(き八尓八)・あらぬ可/可±〈朱点〉・寿く礼弖・ときめき・【給】・あり遣り/り±〈朱点右〉・
はしめより/り±〈朱点〉・王れ八と・於もひあ可里・堂まへる・
【御】可多/\//\±〈朱点〉、(【御】可多可多)・めさましき・【物】尓・ナシ・於としめ・そね三・
たまふ於那し本と/ふ±〈朱点削〉、ふ±〈朱点右〉、と±〈朱点〉・そ礼より/り±〈朱点〉・遣らう能/=下臈・【更衣】
堂ち八ま新弖やす可ら春/八±〈朱点〉、弖±〈朱点〉、春±〈朱点〉・あさゆふ乃・三や
徒可へ尓/尓±〈朱点〉・つ遣弖毛/毛±〈朱点〉・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・【人】乃・【心】をの三/三±〈朱点〉・うこ可し/し±〈朱点〉・
うらみを・於ふ/ふ±〈朱点〉・つもり尓やあ里遣む/や±〈朱点〉、む±〈朱点〉・いと・あつしう・
なりゆき/き±〈朱点〉・毛乃【心】本そけ尓/尓±〈朱点〉・ナシ・さと可ち那るを/を±〈朱点〉・いよ/\/(いよいよ)・
あ可春/春±〈朱点〉・阿八礼なる・毛乃尓・於も本して/て±〈朱点〉・【人】乃/(1オ)
--------------------------------------
そし里をも/も±〈朱点〉、・八ゝ可ら勢/(八八可ら勢)・堂ま八寸/寸±〈朱点〉・よの・多めし
尓も・なりぬへき・【御】もてなしなり/り±〈朱点右〉・可む多ち
め/め±〈朱点〉・うへ【人】なと毛/毛±〈朱点〉・あいなう/う±〈朱点〉・めを・そ八めつゝ/ゝ±〈朱点〉、(そ八めつつ)・いと・
まはゆき・【人】乃・【御】於ほえなり/り±〈朱点〉・もろ古し
尓も/も±〈朱点〉・可ゝ類/(可可類)・【事】乃・於古り尓こそ/そ±〈朱点〉・【世】も・み多れ・
あし可り遣礼と/と±〈朱点〉・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・やう/\/(やうやう)・あめ乃し多尓毛/毛±〈朱点〉
あちきなう【人】乃/う±〈朱点〉・もてなや三くさ尓・なりて/て±〈朱点〉・
やうきひの/う=楊貴妃・堂めし毛/毛±〈朱点〉・日きいて川へく・なり
ゆく尓/尓±〈朱点〉・いと・八し多那き・【事】/【事】±〈朱点〉・於ほ可礼と/と±〈朱点〉・可た
しけなき/き±〈朱点〉・【御心】八へ乃・堂くひなきを・ナシ・堂
乃身尓て/て±〈朱点〉・ましらひ・多まふ/ふ±〈朱点右〉・ちゝ乃/(ちち乃)・【大納言】八/八±〈朱点〉、(1ウ)
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なくなりて/て±〈朱点〉・ナシ・者ゝ/(者者)・起多の可多なん/ん±〈朱点〉・い尓しへ【人】能・
よし・あ累尓て/て±〈朱点〉・ナシ・於や・うちくし/く=具、し±〈朱点〉・さ志あ多りて/て±〈朱点〉・
【世】乃・於ほえ/え±〈朱点〉・八那や可なる/る±〈朱点〉・【御】可多/\尓も/も±〈朱点〉、(【御】可多可多)・い多う/う±〈朱点〉・
於とら春/春±〈朱点〉・なに【事】の・きしきをも/=儀式、も±〈朱点〉・ゝて那し/(もて那し)・多ま
ひ遣礼と/と±〈朱点〉・ゝ里多てゝ/後ゝ±〈朱点〉、(と里多てて)・八可/\しき/き±〈朱点〉、(八可八可しき)・う新ろ三
し・な遣礼八/八±〈朱点〉・【事】と・ある・とき八/八±〈朱点〉・な本・よ里とこ
ろ・なく/く±〈朱点〉・【心】本そ遣那り/り±〈朱点右〉・佐き乃よ尓も/も±〈朱点〉・【御】ちき
里や/や±〈朱点〉・ふ可ゝ里けむ/む±〈朱点〉、(ふ可可里けむ)・よ尓・多くひなく/く±〈朱点〉・きよら
なる/な〈判読〉、る±〈朱点〉・堂まの・を乃こみこさへ/へ±〈朱点〉・むま礼・堂ま
飛ぬ/ぬ±〈朱点右〉・い徒し可と/と±〈朱点〉・【心】もと那可里/里±〈朱点〉・ナシ・いそき/き±〈朱点〉・まいら
勢て/て±〈朱点〉・【御覧】する尓/尓±〈朱点〉・めつら可なる/る±〈朱点〉・ちこ能・おほむ可本可多ち那り/前可〈次頁〉、可本$〈朱〉、後可$〈朱2〉、多$〈朱〉、り±〈朱点右〉(2オ)
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※前回(七月二十七日)はここまで、以下、本日の翻字箇所
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一乃みこ八/八±〈朱点〉・【右大臣】能・【女御】乃・【御】
八ら尓て/て±〈朱点〉・よ勢・ナシ・をもく/く±〈朱点〉・う堂可ひなき/き±〈朱点〉・まう
けの起三と/と±〈朱点〉・よ尓・もてかしつき・ゝこゆ礼と/と±〈朱点〉、(きこゆ礼と)・古乃・
【御】尓本ひ尓八/八±〈朱点〉・ならひ・多まふへくも/も±〈朱点〉・あらさり
け礼八/八±〈朱点〉・於本可多能・やむ【事】那き/き±〈朱点〉・於ほん於もひ
者可里尓て/て±〈朱点〉・こ乃・【君】を八・王多くし毛乃尓/尓±〈朱点削〉・お本
志可しつき・多まふ・【事】・可き里奈し/し±〈朱点右〉・八ゝ起三八/八±〈朱点〉、(八八起三八)・
八しめより/り±〈朱点〉・をしなへ弖能・うへ三やつ可へなと・
新・多まふへきゝ八尓八/(き八尓八)・あらさりき/き±〈朱点右〉・於ほ江/江±〈朱点〉・いと/と±〈朱点〉・
やむ【事】なく/く±〈朱点〉・上すめ可し遣礼と/と±〈朱点〉・王り那く・まと
八さ勢・たまふあまり尓/ふ±〈朱点〉、尓±〈朱点〉・さるへき/き±〈朱点〉・【御】あそひ能/(2ウ)
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