2024年06月20日

読書雑記(350)永井みみ『ミシンと金魚』

 帯に記されていた「老人文学」とか「認知症を患う“あたし”が語り始める」というキャッチコピーに惹かれて、『ミシンと金魚』(永井みみ、集英社文庫、2024年5月30日)を読みました。読むのに手こずり、意外と時間がかかりました。

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 不思議な文体で、とりとめもない話が展開します。というよりも、聞かされます。また、句点の打ち方が微妙に不可解です。読み進むペースを乱されました。
 これは、認知症を患うおばあちゃんの語りを体感できるようにした、作者の創意のようです。そうであることはわかっても、とにかく、話題の展開についていくのが大変でした。
 トイレで嫁に浣腸をしてもらう時のやりとりは、おかしくて抱腹絶倒と言うべき描写で秀逸です(41頁)。
 下ネタも多く、複雑な雰囲気が漂います。しかし、透明な空気感で語り通しています。
 最後に、死にゆく場面で、お迎えが来ると言うのでかぐや姫のお迎えを想像していたら、何とリヤカだった、というのは意表を突く例えです。最後までウィットに富んだ語り口でした。
 結局、なかなか馴染めないままに読み終えました。しかし、記憶に残る作品です。この歳になって、貴重な読書体験をしたと思っています。微妙な読後感なので、ここに言葉でうまくまとめることができません。【3】


初出誌:『すばる』2021年11月号
単行本:2022年2月、集英社より刊行




posted by genjiito at 21:33| Comment(0) | ■読書雑記
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