今日の「第4回 平安文学リレー講座」の会場は、大阪府立中之島図書館 別館 2階 多目的スペース3でした。いつもの重要文化財の多目的スペース2と違い、白を基調とした爽やかな開放的な部屋です。
この別館の向かいには、立葵ごしに大阪市中央公会堂が見えます。
講師である宮川保子さんは、かな書・料紙加工・表装・冊子制作家としてマルチな活躍をなさっています。今日の演題は、「『源氏物語』の複製本の制作過程 ―ハーバード本「須磨・蜻蛉」と歴博本「鈴虫」の臨模を終えて―」です。ハーバード本「須磨・蜻蛉」と歴博本「鈴虫」の臨模本を制作した経緯と体験を通して、その所感を自在に語っていただきました。常人の知らない世界に、わかりやすい話で連れて行っていただきました。
最初は私が、宮川さんが創作の写本ではなく、古写本の臨模に取り組まれた意義を通して、その活躍ぶりを紹介しました。次の配布資料の2枚目半ばまでを読み上げながらの説明です。
(画像をクリックすると精細表示となり、文字が読みやすくなります。)
宮川さんから初めて私のブログにコメントをいただいたのは、2015年4月末でした。日比谷図書文化館での私の源氏講座を受講なさっていたことからの相談でした。
それから、『源氏物語』の本文を書写することに関する私見をお話し、それが何と、国立歴史民俗博物館所蔵の「鈴虫」やハーバード大学所蔵の「須磨・蜻蛉」の原本の実地調査へと発展しました。
「鎌倉期に書写された『源氏物語』の《宮川版 臨模本》」(2020年01月28日)
お一人で臨模本の制作を完遂なさったことは、偉業と言っていいと思います。
先月は、東京銀座の鳩居堂で「作品展」を開催され、1,300人もの来場者を集める大盛況でした。
それを受けての今日は、実物や写真などを提示して、具体例を挙げながら話していただき、舞台裏の話などで来場者の興味をますます掻き立ててくださいました。
書写の道具などを会場の前に並べ、そのテーブルを囲むように集まってもらい、手に取りながら目の前での説明は、参加者にとって生き生きとした書写活動の現場の様子が伝わったようです。古写本を臨模することへの理解を得る上で、非常に有効なことだったと思われます。絶えない質問にも、懇切丁寧にお答えになっていました。
私は、次の2枚の写真の道具に惹かれました。一つは、料紙を木槌で叩いて打紙を作るもの、もう一つは、料紙作成の時に使う材料となる鬱金(左)と丁子(右)です。これで、写本の料紙が具体的にイメージできるようになりました。
資料の最後に、次の言葉があります。まさに実感なのでしょう。お話を通して、このことがよくわかりました。
ひとりで作る限界も感じた。吹き絵のブラッシングに、体力・時間を要する。打ち紙はひとりで打ったが、時間と体力が必要だ。書写作業も1日2ページの集中で体力と時間の勝負になる。(『紫式部日記』にあるように、冊子作りは大勢で行うものなのだろう)。3冊作るには1〜2年は必要である。
また、複製本作りには本物の実見の必要性を感じた。体力と時間と経済力が絡むことを実感した。
宮川保子さんには、はるばる東京よりお越しいただき、有意義な情報をたくさん与えてくださいました。
ありがとうございます。
会場を埋め尽くしていた参会者のみなさまも、新鮮な刺激を存分に受け取ったことで、これからは写本を見る目が違ってくることでしょう。
ますますのご活躍を祈念いたします。
次のリレー講座は、7月26日に視覚障害者との『百人一首』のかるた会を開催します。現在、企画を煮詰めているところです。楽しみにお待ちください。
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