2024年03月13日

大阪中之島で池田本「澪標」を読む(その11)

 大阪市役所の玄関前で寝そべり、愛想を振りまいていたマスコットのモニュメントが、突然の災難に見舞われました。2025年大阪・関西万博の公式キャラクターである「ミャクミャク」が、顔を3箇所傷つけられたのです。今朝の出来事のようです。私が通りかかった時には、すでに応急手当てが施され、その前ではマスコミの取材がおこなわれていました。残念なことです。

240313_ミャクミャク.jpg

 その市役所の東隣の大阪府立中之島図書館での「新古典塾 源氏物語池田本「澪標」巻を読む」は、今日の水曜日が最終回となります。4月からは、第2土曜日のみに統合するからです。

 本日の内容は、以下の通りです。
(1)街中の変体仮名 鉄道唱歌の碑
(2)ローマ字表記 ルール改定へ 実態そぐわず 約70年ぶり−共同通信
(3)回覧:スロベニア語訳『源氏物語』(1968年)
(4)本日の池田本「澪標」は、第二一丁裏から、二二丁表まで

(1)から(3)までは、先週土曜日の源氏講座で扱った内容です。
(4)の池田本「澪標」の確認は、第21丁裏から22丁表までの2頁分です。読み進む範囲が少ないのは、これまでに池田本「澪標」で確認した翻字の語句索引を作成して配布したので、それを参照しながら本文の確認をしたからです。
 索引があると、いろいろなことがわかります。後掲の資料を参考にして読んでいただくと、その有効性があきらかです。

(4)池田本「澪標」第二一丁裏から、二二丁表までを、字母に注目して確認。
  [変体仮名翻字版-2023]
※翻字データの中にある付加情報(/)の記号について
傍書(=)、 ミセケチ($)、 ナゾリ(&)、
補入記号有(+)、補入記号無(±)、 和歌の始発部( 「 )・末尾( 」 )、
底本陽明文庫本の語句が当該本にない場合(ナシ) 、 翻字不可・不明(△)
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本と能・けす堂に・【心】ちよ遣尓・うち
王ら婦・遣に・あさ満しう・【月日】毛こそ・あれ・
【中】/\/(【中中】)・古の・あ里さま越・者る可に・みる毛・み
の・本と・くち於しう・於ほゆ・さす可尓・閑遣
八奈れ・堂て満つらぬ・すく世な可ら・閑く・ゝち
於しき/(くち於しき)・ゝ王能/(き王能)・もの/の+多に・も能於もひ奈け尓て・つ可
う満徒る越・いろ布し尓・【思】堂るに・な尓能・
徒三・布可き・【身】尓て・【心】尓・可けて・於ほつ可なう・
【思】・き古え徒ゝ/(き古え徒徒)・可ゝ里け留/(可可里け留)・【御】日ゝきを毛/(【御】日日きを毛)・
しらて・堂ちいて川らむなと・【思】徒ゝくる
尓/(【思】徒徒くる尓)・い登・可なしうて・【人】し連須・志本堂れ遣里/里〈次頁〉、(21ウ)
--------------------------------------
満徒八らの・布可みとりなるに・者奈・も三
ちを・古きちらし多累と・みゆる・うゑの・き
ぬ能・古き・う春き・かす・しら須・【六位】の・な可尓
毛・くら【人】盤・あ越いろ・しるく・みえて・可
乃・加もの・み徒可き・うらみし・う古んの世う・
ゆ遣い尓・な里弖・こと/\し遣なる/(ことことし遣なる)・すいしん・
くし堂留・くら【人】な里・よしきよ毛・於な
し・す遣尓て・【人】よ里・ことに・もの於もひ奈
き・けしき尓て・於とろ/\しき/(於とろ於とろしき)・あ可きぬ
す可多・いと・きよ遣な里・すへて・みし・【人】/\/(【人人】)・
ひき可へ・者奈や可尓・なにこと・【思】らんと・みえて・宇ちゝ里堂るに/(宇ちち里堂るに)、ち〈次頁〉、(22オ)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 配布した池田本「澪標」の[変体仮名翻字版-2023]による語句索引は、A4判で7頁あります。これは、先月確認し終えたところまでの索引です。その1枚目をあげます。画像をクリックすると精細画像になります。

240312_14澪標-7段組2_1.jpg

 例えば、「古の(この)」という言葉が今日の資料に出てきます。そこで、これまでに「澪標」では、「古の」ということばがどのような文字列で書かれていたのかを見ると、次のことがわかります。

古乃(7例)
古能(2例)
古の(6例)
古の満しけ尓弖

 「この」は3種類の書き方があり、語頭の文字はいずれも「古」という変体仮名です。
 「ほと(程)」を見ると、次の文字の使い分けの傾向がありました。

【程】(2例)
本と(4例)
本と/\尓/(本と本と尓)
本と/△&と
本とこ曽
本と
本と
本と
本と毛(2例)
本とより

 ここでも、「本と」の部分は同じ文字の組み合わせです。
 「きこえ」はどうでしょうか。

きこえ
き古え(18)
き古えあ徒免堂る越
き古え加よひて/(19オ)
き古え遣里
き古えける
き古え遣る(2)
き古えしら世
きこえ多里
き古え堂里
き古え徒ゝ遣て/(き古え徒徒遣て)
き古えて(3)
き古え奈可ら
き古えなくさ免
古え
き古え越の三
古えんと
き古し免志徒遣堂る越
き古
き古遊(2)

 「き古え」という文字列になっていることも、似た傾向だといえます。
 「者奈〜」というのも、文字の組み合わせに例外はありません。

者奈ち累佐となとやうの
者奈ちるさと越
者奈や可尓
者奈屋き
者奈れいてゝ/(者奈れいてて)

 いくつかの語句を索引でザッと調べてみたところ、同じ字母で語句が表記されている傾向があることがわかりました。
 「澪標」の後半にさしかかった所までの途中段階の傾向ながら、いろいろと考えさせられることがいくつも見られました。字母レベルにまで視野を広げると、今後とも、おもしろい文字遣いの傾向がわかりそうです。
 この字母の並び方を見ていると、書写した親本の筆写者やその前の写本などが、頭の中でどのような変体仮名の字種を選んで言葉を表記していたかがわかり、その書写者や周辺の仲間の仮名文字に対する表記の意識に共有するものが見えてきそうです。
 私は文字の専門ではないので、すでにこの問題に関する研究の成果が出ているのでしょうか。私には、これ以上は分析できません。これは、多分野の人が集まって討議する、共同研究に向いていそうです。一日も早く、この「澪標」の[変体仮名翻字版-2023]を完成させ、こうしたデータを公開して研究を共有したいと思っています。




posted by genjiito at 22:39| Comment(0) | ■講座学習
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