2024年02月17日

読書雑記(347)コナン・ドイル『緋色の習作』

『緋色の習作』(アーサー・コナン・ドイル、小林司/東山かあかね=訳、河出文庫、シャーロック・ホームズ全集@、2014年3月)を読みました。一般的には『緋色の研究』と言われている作品です。

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 まず、書名に関して『緋色の研究』ではなくて『緋色の習作』とすることと、作中で話題となるモルモン教に関して、「はじめに」の説明を引きいて確認しておきます。

 本巻収録作の書名は、これまで「緋色の研究」と訳されてきたが、土屋朋之さんの指摘どおり、これは誤訳であると思われるので「緋色の習作」に改めた。「緋色で描いた習作の絵」というほどの意味である。原著出版当時、英国の美術界で「青色で描いた習作(エテュード)」などという題名が流行していたから、ドイルもそれを採り入れたのであろう。誤訳であることについては、田中喜芳さんの広範な国際的アンケート調査があるが、私どももロンドンのシャーロッキアン多数に尋ねて、確実を期した。
 なお、モルモン教については、なにしろ百年以上昔に書かれた文学作品でもあり、記述を曲げて翻訳するわけにもいかないので、ドイルの記載通りに訳出した。私どももソルトレーク・シティまで足を運んで確かめたのであるが、現在では無論ここに描かれているような状況は存在していないし、一夫多妻制度もずっと前に廃止されている。読者が、本書によってモルモン教に対する偏見を抱かれないようにお願いしたい。(8頁)

 本作を、本や朗読で何度か読んできました。しかし、今回の精確な翻訳で読むことで、新しい発見が多かったのは収穫でした。
 前半のモルモン教を背景に持つ物語が、実はこの作品の中核をなすことを、あらためて知りました。

 さらに、「いつ書かれたか?」という解説を引きます。

《緋色の習作》は、アーサー・コナン・ドイルの最初に出版された小説で、一八八七年の『ビートンのクリスマス年刊』誌に掲載された。この後、『ビートンのクリスマス年刊』誌の出版元のワード・ロック社から、一八八八年七月に単行本として出版された。しかし、コナン・ドイルがこの物語を書き上げたのは、少なくともこれより十八ヶ月以前のはずである。というのは、ワード・ロック社に採用される以前に、コナン・ドイルは《緋色の習作》の原稿を、当時『コーンヒル・マガジン』誌の編集長であった、ジェームズ・ペイン(一八三〇~九八)に送っているからである。そしてペインは、《緋色の習作》の採用を断ったのだが、その断りの手紙の日付は、一八八六年五月七日付であり、また文面には「貴下の玉稿を不当に長い間、御預かりして居りました」とあるからである。
 即ち、あらゆる時代を通じて最も有名な、文学上の登場人物であるシャーロック・ホームズとワトスン医師の二人は、作者が弱冠二十五歳の時に登場したのである。(256頁)

 さらに、ホームズの推理に関する見解が述べられている箇所を引いておきます。これは、「さかのぼり推理」といわれるものです。

大抵の人は、事件の流れを説明されれば、結末を推理できるんだ。頭の中で、一つ一つの出来事を関連させ、そこから次に何が起きるかを予測するというわけだ。けれども、結果を聞いて、その結果がどういう経過を経て起こったかを論理的に推理できる人は、まず、ほとんどいない。この能力が、さっき話したさかのぼり推理、あるいは分析的推理というものなのだよ。(227頁)

 前半が特におもしろくて、それを背景にして後半がさらにおもしろくなる構成です。
 今回、図書館でいくつかの出版社の翻訳を較べてみました。そして今後は、今回読んだ河出文庫の『シャーロック・ホームズ全集』で全9巻を読破することにしました。どの出版社のどの本で読むべきかがわかったので、安心して読むことができるようになりました。まずは、スタートを切ったところです。

 なお、注・解説・年譜も、河出文庫の本シリーズがもっとも充実しています。【5】





posted by genjiito at 22:02| Comment(0) | ■読書雑記
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