2023年06月10日

中之島での新古典塾の報告-第3回

 淀屋橋から東を向くと、土佐堀川の彼方に生駒山が見えます。手前には重要文化財の図書館や中央公会堂を取り囲むように、ビル街が実に微妙なバランスで建っています。
 掲載した写真や図版に関しては、画像をクリックすると精細表示になります。

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 淀屋橋の西の、御堂筋を挟んだ後ろ側には、日本銀行大阪支店がどっしりと自己主張をしています。歴史と文化が詰まった地域です。

 そんな中之島で、毎月第2土曜日と水曜日には、『源氏物語』の講座を続けています。
 今日は本年度の3回目です。

 午後の前半は、「変体仮名のいろは(三)」です。
 配布した資料の一部をあげます。

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 まず、「戸籍の読み仮名と片仮名のこと」では、戸籍の氏名に読み仮名を付けることに関して、片仮名という指定があることを確認しました。平仮名が一般的だと思っていた私にとって、片仮名が正式な表記として前面に出てきたことに意外な思いでいます。
 これに関連して、参考資料に、マイナンバー法成立までの経緯を整理したものを提示しました。
・国民総背番号制度(1968年、頓挫)
・納税者番号制度(1985年、廃案)
・住民基本台帳ネットワークシステム(2014年、普及せず消滅)
・マイナンバー制度(2013年、公布、2023年、混乱→片仮名の銀行口座名で本人照合→凍結見直し・京都新聞6/9)

 いろいろと波乱に満ちたマイナンバー法も、これ幸いと強引に突破しようとしたところ、いろいろと杜撰な制度であることが露呈し、昨日の京都新聞の社説欄には、凍結して見直しという意見が掲載されました。これもまた廃案か消滅とはならないまでも、迷走することは確かです。そのきっかけが、氏名の照合に片仮名と漢字の表記にズレがあったことだったのは、私にはいい教材をいただいたことになります。
 私は、マイナンバー法に関する連絡はすべて無視か破棄しているので、自分がどのような扱いになっているのか関心はありません。このままでは、私は来年から健康保険の対象ではなくなるようなので、基礎疾患をいくつか抱える身には個人的な出費や、嫌がらせの事務的な手続きが増大することは覚悟しています。無保険者の扱いになることに対しては、生きている内はそうならないことを願うしかありません。
 故佐藤栄作総理の「国民総背番号制」以来、とにかく国民の金融口座を担保に取りたいという信念は、うまく掠め取れそうな事態になった今になって、危ういところに来ました。ただし、関係者には願ってもないことに、子供の口座情報が転がり込んで来そうな機運なので、これは関係者はラッキーとほくそ笑んでおられることでしょう。マスコミは、ことマイナンバーに関しては切れ味が悪いようです。何か負い目があるのでしょうか。ひたすら表面化しないように隠し通されてきたことなので、さらに巧妙に国民の資産を管理する方向に進んでいきそうです。
 なお、片仮名の表記に関して、明治7年の『上下小学授業法細記』を提示して、ヤ行とワ行の表記が揺れていたことを確認しました。今も、この行は学校教育の現場では、逃げるようにして教えないことになっているようです。日本語の先生、頑張って筋を通してください。

 テキストにしている『実用変体がな』は、「け」から「す」までを確認しました。左頁の例示に、無理をして例を引いているものがいくつかあり、偏りが目立つように思えてきました。再検討が必要だと思います。

 変体仮名の一文字ずつの確認を踏まえての応用編として、長文を見て目慣らしをしています。今日は、池田本の翻字について、新たな翻字の方針が固まってきたこともあり、[変体仮名翻字版-2023]による池田本の1頁分を再度巻頭から確認しました。
 予定していた大島本の翻字の確認は、時間切れでできませんでした。次回にします。

 30分の休憩を置いて、次は「ハーバード本「蜻蛉」巻の仮名文字を読む(三)」です。
 配布した資料(13枚)のうち、主なものをあげます。

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 まず、ウクライナ語訳『源氏物語』と『枕草子』を回覧しました。
 そして、翻訳者であるイバン・ジューブさんが、2022年2月22日にお亡くなりになったことに関して、その22日はロシアによるウクライナ侵攻の2日前であったことをお話しました。
 以下、イバンさんに関して配布した資料を元にして、私がイバンさんと面談をする直前までの経緯を説明しました。これは、[たつみのいほり より](2022年03月24日)http://genjiito.sblo.jp/article/189420094.html
「続々・ウクライナ語訳『源氏物語』に関する情報(その3)」で公開したものですので、詳細はそちらにゆずります。
 とにかく、ウクライナでは、日本文学に関して理解が深いのです。しかも、古典文学においては、イバンさんによって意義深い文化交流ができるところまで来ていました。それが、イバンさんの急逝とロシアの侵攻により、途絶えました。この時に間に入ったもらった吉見さんが、2年間の在モスクワ日本大使館の勤務を終えて今春帰国し、今はさらに大学院で勉強をしようという情熱があります。吉見さんを介して、『源氏物語』を仲立ちとするウクライナとの文化交流をぜひとも再開したいと思っています。

 ウクライナ語訳『枕草子』については、次の情報を提示しました。

■ウクライナ語訳『枕草子』
"2015(平成27)" "СЕЙ-ШЬОНАГОН ЗАПИСКИ В УЗГОЛІВ'Ї(清少納言 枕草子)[枕草子]""Н.Д. Бортнік(翻訳)(N.D. ボルトニク), І.П. Бондаренко(序章および注釈)(I.P. ボンダレンコ)[1955-]/清少納言"『枕草子』(訳・松尾聡、永井和子)・日本古典文学全集・11・小学館・1974年"上村松園《春芳》を加工したもの。1940年, 絹本彩色・軸一幅, 71.5×86.8cm, 山種美術館蔵"序章 平安時代の散文作品の最高傑作の1つ(イバン・ボンダレンコによる)、『枕草子』ウクライナ語訳(ボルトニクによる)、注釈(イバン・ボンダレンコによる)/有/有/有(吉見さえ)"翻訳文内に石川豊信の浮世絵などカラーページで多数掲載されている。/Харків(ハリコフ)[ウクライナ]"


 その後は、ハーバード大学本「蜻蛉」の翻字を、[変体仮名翻字版-2023]で確認しました。前回は、第三丁裏表までを字母に注意して確認しました。しかし、今日はまた翻字の方針に変更があったので、巻頭からまた確認です。特に、「現行五十音図の平仮名が字母・漢字に近い字形の時は、その字母である漢字をそのまま起こす。」ということが先月とは異なるのと、2日前に新たに「世」も追加したので、最初からの再確認としました。
 その変更箇所がよくわかるのが、本日配布した資料の中では次のものです。ここで、赤字の漢字がそれです。「奈・毛・乃・礼・川・世」がそれです。

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 現行の平仮名で字母に近い漢字で書かれている文字については、今回の対処で格段に翻字データの正確さが増しました。また、今回の新しい[変体仮名翻字版-2023]では、写本を読む力が向上したように思う、という感想もいただいています。写本に書き写された文字と、テキストとして提示した文字が、ぐっと近付いたことが実感できるそうです。翻字作業を行なってくださる方には、煩雑な工程が加わり、負担が増えます。また、最初から写本を見直すという作業が生まれました。しかし、長い目で見て意義深い翻字データができるのであれば、今後の活用に移行したデータ作りに進みたいと思います。みなさまのご理解とご協力をいただきたいと願っているところです。

 以下に、本日提示した池田本「蜻蛉」の一丁表から五丁表までの全文をあげます。
 ご覧いただき、ご教示をいただけると幸いです。
 とにかく、写本に戻れない嘘の翻字をしない、写本が再現できるような、文字による翻字を心がけています。


■ハーバード大学本「蜻蛉」■


  [変体仮名翻字版-2023]

[1]かしこ尓者ひ登/\/(ひ登ひ登)・をは勢ぬ越・もと免さ者
介と可ひ奈し・毛の可多里野/ひ&野・飛免き三乃/免&飛・【人】尓・
ぬ春ま礼堂ら無・あし多乃・やうなれ八・く八
しう毛・いひ川遣須/川+つ・きやうより・あ里し・
川可ひの・【返】す・なり尓し可葉・おほ川可奈しと
て・ま多・【人】・をこ世多里・ま多・とり能・奈く二
奈ん・い堂し多てさ世・【給】へ累登・つ可ひ乃・
いふ尓・い可尓・きこゑん・免のとより・八し
めて・あ八弖まとふ・【事】・可き里・那し・【思】ゆる・
可多・奈くて・堂ゝ(堂堂)・さはきあえ累を・可の・【心】・志れる/(1オ)
--------------------------------------
登ち那ん・い三しう・もの・【思】【給】へ里し/し&へ里・さまを・
【思】い川る尓・【身】越・奈介・【給】へ累可登・
お毛飛より遣累・なく/\/(なくなく)・古乃・【文】を・あ遣
堂礼は・い登・を本川可なさ尓なん・【思】つゝ(【思】つつ)・
まとろまれ・八へらぬ尓や・こよひ八・ゆ免尓堂
に/多尓&尓堂・うち登け弖毛・身えす・越そ八礼つゝ/(越そ八礼つつ)・
【心】ち毛・礼いなら須・う多て・【侍】を・な越・い登・をそ
ろし・ものへ・王多らせ・【給】八ん・【事】は・ち可ゝ
む奈礼登(ち可可む奈礼登)・その・【程】・古ゝ尓/(古古尓)・む可へ・堂てまつり
介ん/介=て・遣ふ・あ免・ふりぬへ介礼葉奈登・【有】/(1ウ)
--------------------------------------
よへの・かへりこと越も・あけて・みて・【右近】・い
みしう・奈く・され八よ・こゝろ本そき/(こころ本そき)・【事】八・き
古え・【給】ひ介り・王れ尓・奈と可・いさゝか/(いささか)・の多ま
ふ・ことの・なかり介ん・おさ那かりし・本とより・
川ゆ・こゝろ/(こころ)・越可れ・多てま川る・こと・那く・ちり八
かり・遍多弖・なくて・ならひ多る尓/る〈墨ヨゴレ〉・いま者・
可り乃/可±き・三ちにし毛・【我】を・ゝくらかし/(をくらかし)・介し
き越堂に・しらせ・【給】者さりける可・川ら支・
【事】と・おもふ尓・阿しすりと・いふ・こと越・して・
奈く・さ満・わ可き・こともの/の〈墨ヨゴレ〉・やうなり・い三しく/(2オ)
--------------------------------------
おほし多る・【御】介しき八・三・多てまつり王
多れ登/は&登・かけても・かく・なへてなら須・おとろ/\
志き/(おとろおとろ志き)・【事】・おほしよらむ・ものと八・みえ【給】
者さり川る・【人】の・【御心】さ万越・な越・い可尓・し
川る・ことに可と・おほ川可奈く・いみし・め能と八・
な可/\/(な可な可)・ものもおほえて・たゝ/(たた)・い可尓・世ん・/\との三
そ/(せんとの三そ)・い者れ介る・[2]三やにも・いとれいならぬ【御】介し
きなりし・【御返】・い可尓・おもふならん・王れを・佐
す可尓・あいをもひ多るさま奈可ら・あ多奈
る・【心】なりとのみ・ふ可く・う多かひ多れ八・本可へ/(2ウ)
--------------------------------------
いきかくれなんと尓や・阿らんと・おほしさ者き
て・【御】つ可ひ・阿り・ある・可きり・奈き万とふ・本と二
弖/二〈行末右〉・【御文】も・三・たて万つら須・い可なるそと・け
すをんな尓・とへ八・うへの・こよひ・尓八可尓・う世
させ・【給】ひ多れ八・ものも・おほえさせ・【給】八春・多の
もしき・【人】も・お者し満さぬ・おりなれ八・多ゝさふ
らひ/(多多さふらひ)・【給】・【人】尓八・もの尓・あ多りてなん・万とい・【給】
と・いふ・こゝろも/(こころも)・ふ可く・しらぬ・おのこ尓て・く者
しうも・と八て・ま可りぬ・かくなんと・【申】させ多る二/二〈行末右〉・
ゆめと・おほえて・いと・あやしう・い多う・わつらふとも/と〈次頁〉、(3オ)
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以降、2023年06月10日(土)に確認する部分
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き可春・ひころ・なやましとの三・阿りし
かと・きのふの・かへりことは・さりけもなくて・
つねよりも・お可しけ尓かき多りしもの越と・
おほしやる・可多・な介れ八・とき可多・いきて・介し
きみよ/よ〈ママ〉・多し可なる・こと・とひき介と・の多ま
へ八・かの・【大将殿】・い可なる・こと可・きゝ/(きき)・【給】・こと・八へ
里介ん・とのい・する・もの・おろ可なりなんと・い
ましめ・おほせらるとて・【下人】の・万かり【入】を・
みと可免とひ・【侍】なれ八・川くる/±こと・こと・なくて・
ときか多・まかり多らん越ものゝきこえ【侍】ら八/ら=八〈丁末左〉、(もののきこえ)、(3ウ)
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おほしあ者春る・ことなとや・八へらん・とこ/〈ママ〉・ろなう・
さ者可しく【人】・し介うなと・者んへらんもの越と・支
こゆ・さりとて・いとおほつ可奈うてや/ま&て・阿らん・な
を・と可く・さるへき・さま尓・かまへて・れいの・
【心】・しれる・しゝうなと尓阿ひて/(ししうなと尓)・い可なる・
ことを・かく・いふそと・あんないせよ・けす八・ひ可
【事】も・いふなりと・の多まへ八・いとをしき・
【御】介しきも・か多しけなくて・ゆふ可多・ゆく・[3]可や
すき・【人】八・とく・ゆきつきぬ・あめすこし・ふりやみ多
れと/と&と・王りなき・みち尓・やつれて・けすの・さ万尓て/て〈次頁〉、(4オ)
--------------------------------------
き多れ八・【人】・おほく・川とひて・こよひ・や
かて・おさめ・多てまつるなと・いふ越きゝ/(きき)・【心】も・
あさ満しう・おほゆ・【右近】尓・せうそこ・した
れと・え・あ者春・たゝいま/(たたいま)・もの・おほえ春・を
きあ可らん・【心】ちも・せてなん・さる八・こよひ者
かりこそ・かくも・多ちより・【給】八め・え・きこえぬ・こ
とゝ/(ことと)・い者世たり/△&者・かく・おほつ可なくて八・い可ゝ/(い可可)・かへ
りまいり・【侍】らん・いま・飛と【所】た尓と・せち尓・
い者せたれ八・しゝうそ/(ししうそ)・あひ多る・いと・あさま
しう・おほしも・あへぬ・さ万尓て・うせ・【給】尓たれ八/れ〈次頁〉、(4ウ)
--------------------------------------
い三しと・いふ尓も・阿可春・ゆめの・やう尓て
たれも/\/尓=て〈行末左〉、(たれもたれも)・万とい・者んへる・よし越・きこえさせ・
【給】へ・すこしも・【心地】・のとめ者んへりてなん・
飛ころも/飛〈判読〉&飛・ゝのおほしたり川る/(ものおほしたり川る)・さま・ひとよ八/よ=八〈行末左〉・
いと・【心】くるしと・おもひ・きこえさせ・【給】へりし・
阿りさ万なとも・きこえさせ【侍】へき・この・け
からひなと・【人】の・い三・【侍】・本と・すくして・いま・【一】たひ・
多ちより・【給】へと・い飛て・なく・こと・いとい三し・[4]う
ち尓も・なく・こゑ/\能三/(こゑこゑ能三)・して・めのとなるへし・
あ可きみや・い川可多尓可・お八し万志ぬる/す&志・かへり・【給】へ/へ〈次頁〉、(5オ) (230610_)

 
 
 
posted by genjiito at 23:52| Comment(0) | ■講座学習
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