2022年10月22日

紫風庵で三十六歌仙の変体仮名を読む(第11回・最終回)

 京都・船岡山の〈紫風庵〉でNPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催する勉強会「源氏物語と三十六歌仙を変体仮名で読む会」の第11回が無事に開催できました。前回が6月25日だったので4ヶ月ぶりです。そして、今回が最終回となります。
 参加者は10名。今回初めてご参加で東京からお越しのSさんは、日比谷での「古文書塾てらこや」に初期から受講なさっています。葵祭の時にNPO法人〈源氏物語電子資料館〉が開催したイベントの際に我が家でのお茶会にも参加なさった方です。今春にも〈紫風庵〉の襖絵を見たいとのことで参加を希望しておられました。しかし、コロナ禍のために中止となったままでした。最終回にやっと間に合ったことを共に喜んでいます。もう一人は、今夏より九州から京都に移住なさった方で、夏に参加の旨のお電話をいただき、その後これもコロナ禍で中止が続き、今日の最終回となった次第です。お2人とも熱心に説明を聞き、襖絵を見ておられたので、ホッとしました。

 さて、本日は2領の襖に貼られた、8名の歌仙絵と和歌を確認したので、ここでの説明が長くなります。そこで、本日配布した資料8枚を画像にして順次掲げ、それに関する説明を簡潔に記します。

 まず、資料の1枚目です。画像をクリックすると、精細画像が表示れさます。
 これまで確認した歌人の一覧をあげ、本日の説明に入りました。
 源重之からです。和歌の下に提示した小さな人物画は、右側が〈紫風庵〉の襖に貼られたもの、左側が私の手元にある粉本(模本、下絵としての指示書)『探幽筆三十六歌仙』の人物画です。架蔵は年配の表情であり、〈紫風庵〉の絵は女性が見ることを意識した図様になっているように思います。この絵は、おそらくかつての持ち主のお嬢様のために描かれたのだろう、と思っています。

221022_print1.jpg

221022_print2.jpg

 次は源宗干です。
 和歌の中に「枩」とあるのは、今の「松」です。
 ここの絵姿も、架蔵の粉本よりも〈紫風庵〉の表情が若く穏やかに描かれています。

 次は、源信明です。「信明」は「さねあきら」と読みます。
 「花」の字の形がおもしろいと思います。
 復元図は、着物の色合いが違うものの、図様はよく似ています。

221022_print3.jpg

 次は最後の襖に貼られた絵と和歌を見ます。ここには、5人の歌人が取り上げられています。
 まずは、在原業平です。他の三十六歌仙関係の資料では、業平は僧正遍昭と並んでいます。しかし、この襖絵では、遍昭は部屋の対面にある藤原高光・源公忠が貼られた面に置かれています。業平と遍昭のセットが崩れているのはなぜなのか、今はよくわかりません。


221022_print4.jpg

 次は、素性法師です。
 和歌の一文字目の「見」を、私は変体仮名としていました。しかし、参加のみなさまから、やはり今の表記の「見わたせば」とすべきであり、「見」は漢字の表記でよいのではないか、とのことです。そのため、ここに資料を掲出するにあたり、【見】と漢字で用いられているものとして表記しています。
 「せ」については、「世」「遠」「遣」の崩しがよく似ていることを確認しました。

221022_print5.jpg

 次の壬生忠見については、参加者全員一致して名前の文字がおかしいとなりました。文字列が曲がっていることに加えて、和歌の手とこの人名表記があまりにも違うということです。後で誰かが書き足したのではないか、というのが、今日の結論だったとしておきます。
 次に、和歌の最初の文字について、私は「こ悲」と判断したことを説明し、「恋」ではないと思うとしました。参加者は漢字の「恋」をよしとする方が半数はいらっしゃったでしょうか。しかし、後に実際に襖に貼られた和歌の文字を見て、やはり漢字の「恋」ではなさそうだということで、今日は私が提示した「こ悲」ということになりました。この字形については、もっと他の例を探しましょう、ということになりました。
 また、この歌は天徳内裏歌合の時、次の平兼盛と競ったものであり、壬生忠見は兼盛に負けて亡くなったという逸話を、プリントの「補記」を確認してお話しました。また、映画の『ちはやふる』で、この忠見と兼盛の歌に関して語り合いアニメでその歌合の場面を再現していることをお話しました。もっとも、この襖では、次の兼盛はその有名な「しのぶれど〜」を採用していません。なぜなのか、その理由がよくわからないままです。みなさんで考えましょう、として保留にしました。

221022_print6.jpg

 次の平兼盛は、前述のように忠見との歌合で勝った「しのぶれど〜」ではありません。参考までに引いたこの末尾の「補記」の説明を参照願います。

221022_print7.jpg

 最後は、中務です。
 私が配布した資料で「萩」としたところは、指摘を受けてここでは「荻」に変更しています。大変失礼しました。
 中務の絵に関しては、架蔵の中務は扇で顔の半分を覆っているのに対して、〈紫風庵〉の中務は扇は頭の後ろに置き顔をすべて見せています。こうした所に、この絵が贈られるお嬢様を意識した図様となっていると、私は個人的に思っています。注文主を意識した絵だと思うからです。専門家のご教示をお待ちしています。

221022_print8.jpg

 無事、〈紫風庵〉の三十六歌仙の絵と和歌の確認が終わりました。
 ご参加のみなさま、お疲れさまでした。
 また、〈紫風庵〉の庵主のこれまでのご厚情に、あらためてお礼を申し上げます。
 何かイベントの折には、今後も〈紫風庵〉を利用してくださいとのお言葉もいただきました。NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が主催する文学散歩などの折に、コースの中に入れて拝見する機会を持ちたいと思います。

 今日は、市内は時代祭で賑わっていました。そんな時に、我々はこの〈紫風庵〉に籠もって三十六歌仙の勉強会をしていたのです。数年前の時代祭の折には、目が見えない方々と『百人一首』のカルタ取りのイベントをしました。
 さて、来年の時代祭にはどんなイベントを計画しているのか、いまから楽しみにしています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:59| Comment(0) | ◎NPO活動
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。