バスを降りて本堂の北から入ると、すぐ左の小町庭苑入口に開基の仁海僧正供養塔、その奥には小野小町の許に深草少将が百夜通ったことに因む榧の木があります。
大学の学部時代に、指導教授であった小林茂美先生が小野小町を民俗学的に研究なさっていたことから、ここには何度か現地調査のお伴で来ています。ただし、もう50年も前のことでもあり、お寺のことはほとんど覚えていません。先生のご研究の詳細は、『小野小町攷―王朝の文学と伝承構造U』(小林茂美、桜楓社、1981年)を参照願います。
さらに奥へと進むと、小町文塚が見えて来ます。
長屋門から入ると、小野小町の歌を刻んだ碑がありました。初めて見るものです。「変体仮名翻字版」で文字を起こしておきます。
小野小町
花のいろは
う徒り二
介りない多
つら二
わ可【身】よ二婦る
なが免せし
万二
ここ隨心院は、小野小町が晩年の余生を送った地とされています。令和11年(2029)には、後堀河天皇より門跡の宣旨を賜わって800年を迎えるそうです。
お寺の中は手入れが行き届いて明るい雰囲気が感じられ、爽やかな気分で堂内を拝見しました。グッズなどがカラフルだったので、若い女性の参拝を意識しておられるようです。池の鯉も元気です。
小町堂は、小町の会の会員となった方々が、終の棲家として永代納骨供養をしていただく所で、多彩な活動を展開なさっているお寺です。
外に出ると竹林の一画には、小野小町の化粧の井戸があります。
ホトトギスがきれいな声で、静かな境内のそこかしこで鳴き渡っていました。
ここは、京都文化博物館(旧平安博物館)において藤本孝一先生に『源氏物語 大島本』の調査でご指導をいただいていた頃、先生は隨心院の顧問として入洛中には隨心院に泊まっておられたことを思い出しました。
なお、『都名所図会』には隨心院の項目はあるものの絵図は掲載されていないので、ここではその説明文などは略します。
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