たまたま古稀になったばかりだったこともあり、多くの方には人生の区切り目での決断だと思われたようです。また、体調が思わしくないのですか、とのお気遣いのことばもいただきました。ありがたく思いつつも、辞めるにあたっての本当の説明はほとんどしませんでした。そのため、新年度となった今、その辞職の理由をここに明示し、遅ればせながらもご理解をいただこうと思います。
この辞任の判断は、私の気持ちを見える形で明白にしたいとの思いから、あえて昨年12月末日にしました。ことばだけでは理解していただけない方には、態度で自分の意思を伝えるしかありません。
今は、自分が騙され、体よく利用されたことに対して、長く生きているとこんなこともあるのだ、との他人事のような思いでこの記事を書いています。
昨秋11月8日に辞表を提出した時、民事再生下にあった大学の管財人で理事長だったN弁護士から、教職員のみなさまには執行部が割れていることを明らかにしたくない、とのご意向を伺いました。それを尊重して、本ブログおよび教職員の方々には、私の辞任と退職に関する説明はしませんでした。しかし、昨日より新年度となり大学の組織は一新し、当初の予定通りに新しく再出発しました。永らく説明責任を果たしていなかったので、この機を逸しないためにも、昨年11月8日付けでN理事長に手渡した書面(実物は縦書き)の全文を以下に引き、遅ればせながらの辞任理由の表明とします。掲載にあたって、お名前だけはアルファベットに置き換えていることをご了承願います。
なお、以下の冒頭に記した「梯子を外され」たということに関しては、説明文の中に記した「法人本部長に七月二七日に談判した」際に、具体的な事例を列記したプリントを当事者との面談資料としましたので、明日のブログでその資料を提示します。
学校法人 明浄学院
理事長 N 先生
辞表提出にあたって
・古稀を迎えたこの時点で、自分の思いとはまったく異なる方向で大学運営がなされていることに対して、それに自分を無理に合わせる必要はない、との考えに至りました。昨年来の、長い道のりでした。
・二〇二〇年一二月下旬以降、神輿に担がれたまま梯子を外されてからは、後に、あの人は何もしなかったと言われないように、可能な限り学長としての仕事はしてきました。書類への押印、行事での挨拶、依頼原稿、会議は休まない、などです。
・大学の運営方針が国立発想で進み出した二〇二〇年一二月より、ここは私立大学であるとの信念から、折を見て異見を差し挟みました。しかし、多勢に無勢の状況では、国立大学の附属機関としての位置付けで前のめりになって突き進む状況においては、私のささやかな抵抗は無意味のままで今に至っています。
・日本一をめざすカリキュラムに「文学」がないことは、私が大阪観光大学から身を引く決意を決定的にしました。
現行のカリキュラムには、「文学基礎」「文学と文化」「Japanese Literature」「文学研究1・2」「日本の文学」「日本文学研究」「日本文学原典講読」「日本古典文学研究」「日本近代文学研究」「日本学基礎教養UB(文学)」があります。しかし、新構想の新カリキュラムには、文学関連のものは皆無です。提示された新しい観光学なるものに疑念を抱きました。「文学」は「歴史」と共に、観光とは親和性の高い基礎科目です。それを一顧だにしない観光学という新しい学問に対して、その未熟さと限界を痛感し失望しています。人間の生きざまと感情を扱う「文学」という科目がない四年制の学校は、大学ではなくて専門学校です。
大学協議会で、なぜ「文学」がないのかという質問をしたところ、先月一〇月になって「文化実践科目」の中の一・二年次開講の「文化鑑賞・創造実践」という科目の中に
「例:アニメ、文学、コンテンツ、茶道、華道、映画、文楽、歌舞伎、音楽、フェス、ヨガ、スポーツ、演劇、メーク、フード、日本酒、ワイン、フランス料理、チーズ、農業、田舎、健康、自然、戦争、災害、冒険、星空、トレイル、フェス……」(2021.10.13教職員集会配布資料)
というように選択の対象となるテーマが例示され、その中に「文学」という課題名が、いかにも取って付けたかのように入りました。
この項目については、その一週間前に配布された「大学協議会2021.9.29資料」の例示に、「文学」はありません。
一一月四日の大学経営会議では、右記「2021.10.13教職員集会配布資料」が承認されました。
なお、これに関連する「教員人事委員会2021.10.27配布資料」を見ると、「文化鑑賞・創造実践」の科目名には【全教員】という指示が追記されています。教員は、ここに例示されたテーマのいずれかを選択する、ということのようです。ただし、翌週の一一月四日に大学経営会議で承認された資料は【全教員】がない、一つ古いものです。この大学経営会議では、もう私は意見を述べませんでした。そして、辞職を決意しました。
・昨年末から、私には大学運営に関する十分な情報が与えられず、さらには結論に至る過程も知らされない中で、形だけの意見や判断が会議中に求められてきました。無責任な発言とならないようにとの思いから、意見を言わないことを公言してきました。そして、情報を教えていただけないなら経営会議準備会には出ない、と法人本部長に七月二七日に談判したこともあります。
学長とは名ばかりで責任だけが伴う本職に、これ以上留まる必要はないと判断します。心痛の日々は、本年一二月二八日までにしたいと思います。この二箇月弱の間に、私ができる可能な限りの職務を果たす所存です。
・以上の理由により辞表を提出します。
本書面は、N先生とO先生に加えて、長くお世話になっている三名、T先生・N先生・S課長に、辞職に至った事情を説明するために記したものです。辞職の理由を語ると、大学の再建で奔走しておられる方々への批判となります。それは本意ではないので、私の辞職はあくまでも今後とも「一身上の都合」で通します。もちろん、この件はY副学長とY顧問をはじめとして、まだどなたもご存知ないことです。副学長と顧問にも、「一身上の都合」で通すつもりです。
本年末一二月二八日には円満に退職となるように、ご理解とご高配の程をよろしくお願いいたします。
二〇二一年一一月八日
大阪観光大学 学長 伊藤鉄也
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