2021年12月02日

読書雑記(324)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ 15 劇中劇の悲劇』

 『京都寺町三条のホームズ 15 劇中劇の悲劇』(望月麻衣、双葉文庫、2020年8月)を読みました。

211017_Holmes15.jpg

■プロローグ
 登場人物の性格と特徴がうまく描き分けられていて、快調にスタートします。

■第一章 それぞれの歩みと心の裏側
 世間話がダラダラと続きます。そんな中で、鴨川でトンビに食べ物を取られた話は、私も経験しているだけにそうそうと頷きました。それ以外は、サッと話が流されていきます。【2】

■第二章 劇中劇の悲劇―京都探偵事件譚 華麗なる一族の悲劇 相笠くりす
 劇中劇で、「幼い頃に大病を患い、目が見えず、耳が聞こえず、話すこともできなくなってしまっていた。」という女の子がすでに成人していることが紹介されています。この子がどうなるのか、興味深く追いました。しかし、全巻を通して同情の域を出なかったのが残念です。視覚及び聴覚障害者に対する作者なりの考えを明確に示してほしかったのは、求めすぎだったのでしょうか。
 その女の子のことは、次のように紹介されます。

彼らの上に異父姉の百合子。彼女は三十六歳で、目が見えず、耳も聞こえず、そして話すこともできない、不幸な女性だ」
 その言葉を受けて、清貴は、そっと眉を顰める。
「目と耳が不自由なのですから、不便は多いかもしれませんが、それを『不幸』と決めつけるのはどうなんでしょう?」
 そう突っ込まれて、冬樹は一瞬、何を言っているのか分からない、という顔をしたが、そんなことを議論している時間がもったいないと思ったのか、それは失礼、と会釈をして話を続けた。(131頁)
(中略)
「百合子さんは、目も耳も不自由なわけだから、この状況を説明しようがないよな」
 秋人が気の毒げにつぶやくと、メイドは「いいえ」と首を振る。
「百合子お嬢様は、生まれた時は健康で、六歳の時に大病を患い、目と耳が不自由になってしまったそうです。百合子お嬢様はとても聡明で、六歳で読み書きは完璧だったとか。ですので、いつもこれで会話を」
 そう言ってメイドは、ひらがなが浮き彫りになったボードを取り出した。それは、積み木のように並べられ同じ文字が並んでも問題ないよう、複数用意されている。(163頁)


 入れ子式の作中物語の作者は、相笠くりすとなっています。この相笠作とする物語は、望月さんの本作以上におもしろく読みました。視点が異なっていることで、別の味が出ていたように思います。作者にとっても、気分転換になり、楽しみながら書いたように思えます。もっとも、謎解きに一役買う殺人事件の概要を記した創作ノートは、私にはアイデア倒れだように思います。【4】

■終章
 本作が、エラリー・クイーンの『Yの悲劇』を基にしており、トリックはそれによると言っています。また話題が、今後の続編の期待へと及びます。あとがきに書かれていることなので、共にいらない駄弁だと思います。【2】

■エピローグ
 さらりと、葵と円生の後日譚が語られます。【3】

■掌編『鏡の法則』
 恋愛心理を、独白というスタイルながら、具体的に語っています。時間が余ったので書いておきました、という印象の内容です。おもしろいことなので、別の作品の中で活かしてほしいものです。【4】
 
 
 
posted by genjiito at 18:53| Comment(0) | ■読書雑記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。