この船岡山は、建勲神社の南側に建つ〈紫風庵〉で三十六歌仙の襖絵とハーバード大学蔵『源氏物語』「須磨」を読んでいる関係で、勝手知ったる地域です。それだけに、その地をどう活かして作品に仕上げてあるのか楽しみにして読みました。書店と喫茶店と占星術がメインの話題です。穏やかな語り口で、スーっと読めました。もっと手応えがあってもよかったのに、との印象を持ちました。
前作である「読書雑記(321)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ16/前編』」(2021年11月01日)で、船岡山プロジェクトのことが話題となっていました。本作は、それを受けて構想し発展するものかと思っていました。しかし、まったく別の物語になっていたので安心しました。
■第一章 ナポリタンと第一ハウス
船岡山を舞台とする話です。かつての銭湯が、今は男湯が書店、女湯が喫茶店になっています。
話は、星占いが中心となって、明るく楽しい雰囲気で始まります。【3】
■第二章 太陽と月曜日のモーニング
大徳寺の三門に置かれた利休の木造に関連して、秀吉が切腹を命じたのはスイッチが入ったからだ、と語っています。このスイッチという喩えは言い得て妙だと思いました。読み進みながら、西洋占星術の知識が付きました【3】
■第三章 水曜日のアフタヌーンティー
起伏が乏しい物語の展開に、少し飽きてきました。
占いに関する情報があったので、私に関係する記述を引いておきます。
逆境に強くピンチをチャンスに覆す
底力を持つカリスマ
陰のボス(106頁)
やりがいを重視することで力を発揮(204頁)
「カリスマ」とか「陰のボス」はともかく、何となく当たっているようにも思えるのは、占いが持つマジックなのでしょうか。
先日、那智勝浦へ行った時、那智の瀧の下で久しぶりにお御籤を引きました。妻共々「中吉」でした。そこに記されていたお言葉のそれが、今の我々の置かれた環境と心境を鋭く突く言葉遣いで書かれており、よく当たっていたのです。占いはおもしろいな、と思っていたところだったので、本作での星占いも満更ではないように思えます。【2】
■第四章 大人のお子様ランチと京の灯台
親子関係に情が絡んだ話として展開します。ありきたりで、あまりいいところが見当たらない話でした。若い読者には、これでいいのかもしれません。【2】
■エピローグ
いろいろな種明かしが語られます。楽屋落ちの感じが伝わってくるので、これは本作の中に溶け込ませて展開してほしかった、と思いました。【2】
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