『都名所図会』では、冒頭の上御霊神社の次に相国寺が掲載されています。
御所から丸太町通り越しにまっすぐ北に進むと、方丈と承天閣美術館に突き当たります。
境内の東にある「大通院」の看板の文字は、どうしてもそのすべてが読めません。
右側の「本派専門道場」は読めます。しかし、左側の看板に書かれた文字は「碧巌録」までは読めても、その後の2文字がわかりません。帰ってから調べると、「碧巌録提唱」と書かれていたことがわかりました。禅問答をしているような文字の形です。
袴腰付鐘楼の横に、宗旦稲荷社がありました。
ここには、千利休の孫の宗旦に化けた狐が祀られています。
相国寺のホームページの解説(https://www.shokoku-ji.jp/guide/)からその逸話を引きます。
鐘楼の北に祀られている宗旦稲荷。ここには宗旦狐の故事が伝わっています。
江戸時代の初め頃、相国寺境内に一匹の白狐が住んでいました。その狐はしばしば茶人・千宗旦(1578−1658)に姿を変え、時には雲水にまじり坐禅をくみ、また時には寺の和尚と碁を打つなどして人々の前に姿を現していました。
宗旦になりすましたその狐は、近所の茶人の宅へ赴いては茶を飲み菓子を食い荒らすことがたびたびでしたが、ある時、宗旦狐は相国寺塔頭慈照院の茶室びらきで、点前を披露していました。驚いたことにその点前は実に見事なもので、遅れてきた宗旦はその事に感じ入ったといいます。これも、宗旦の人となりを伝えた逸話です。
その伝承のある「い神室(いしんしつ)」は現在でも慈照院に伝えられています。茶室の窓は、宗旦狐が慌てて突き破って逃げたあとを修理したので、普通のお茶室より大きくなってしまったとのことです。
宗旦狐は店先から油揚げを盗み、追いかけられ井戸に落ちて死んだとも、猟師に撃たれて命を落としたとも伝えられています。化けていたずらをするだけでなく、人々に禅を施し喜ばせていたという宗旦狐の死を悼み、雲水たちは祠をつくり供養しました。それが今でもこの宗旦稲荷として残っています。
この逸話は文献を調べてみると、儒学者として名高い尾張藩士の深田香実が1830年(天保元)に発刊した『喫茶余録』の中に出てき、これが初出だと思われます。
方丈に向かって歩いていると、私の名前を呼ぶ声が聞こえました。突然のことでキョロキョロしてよく見ると、我が家のすぐ近くの方でした。毎朝のように玄関先で挨拶をしています。しかし、お互いにどんな仕事をしているのかは、話したことがありません。定年後にお手伝いで相国寺さんに来ているのだそうです。博識の方なので、相国寺のお話をしていると、藤原定家と伊藤若冲と足利義政のお墓がある場所を教えてくださいました。
ちょうど、『都名所図会』の相国寺の頁で右上隅にある「定家公墓」が今はどこにあるのか、お寺の方に尋ねようと思っていたところでした。
このお墓については、寺内に案内の標識などはまったくないので、教えていただかないと探し当てることができません。
私は、奇遇に恵まれた人生を送っていることを、日々実感しています。特に、人との出会いには恵まれています。僥倖という表現もできます。漢語が大嫌いな私は、このブログでもこうした熟語は意識して意地になって使わないようにしています。しかし、「奇遇」とか「僥倖」という言葉は使いたくなることが多くて困っています。今日もそうです。
定家の墓について、『都名所図会』には次のように記しています。
塔頭普光院の竹林には黄門定家卿の墓あり。(墓前に石灯籠一基あり。銘に曰く、貞享三年臘月、右中将為経卿建之とあり)
参考までに角川文庫『都名所図会』(昭和44年3月再版)の脚注を見ると、「普光院」について次のように書かれています。
正しくは普広院。足利義教の塔所。当地はもと冷泉家の邸地であったが、建立にあたって邸内の定家墓と共に譲り受けたと伝える。(32頁)
確かに、すぐ南には同志社大学の敷地と同じくして定家の流れを伝える冷泉家が今も昔のままにあります。おそらく、このことについては詳しい報告があると思われます。後日報告できるように調べておきます。詳しい方からのご教示をいただけると助かります。
これまでに本ブログで相国寺について触れた記事は、以下のものがあります。
「読書雑記(30)水上勉『雁の寺』」(2011年01月07日)
「源氏千年(37)錦織の源氏絵巻に驚嘆」(2008年04月29日)
【◎京洛逍遥の最新記事】
- 京洛逍遥(983)祇園祭で見た平山郁夫と..
- 京洛逍遥(982)祇園祭の鉾建てを観る
- 京洛逍遥(981)今月も雨だった東寺のガ..
- 京洛逍遥(980)龍谷ミュージアムで「京..
- 京洛逍遥(979)雨の中での東寺ガラクタ..
- 京洛逍遥(978)京大病院の前のお漬物屋..
- 京洛逍遥(977)大手筋を散策中にドコモ..
- 京洛逍遥(976)病院から賀茂川を歩き集..
- 京洛逍遥(975)龍馬とお龍像と寺田屋の..
- 京洛逍遥(974)城南宮で源氏物語花の庭..
- 京洛逍遥(973)新緑の宇治川派流と伏見..
- 京洛逍遥(972)下鴨神社に欅を獻木し半..
- 京洛逍遥(971)宇治川の桜と陶器まつり..
- 京洛逍遥(970)近所の公園で見かけた春..
- 京洛逍遥(969)東寺のガラクタ市(20..
- 京洛逍遥(968)宇治川派流の桜並木と龍..
- 京洛逍遥(967)東寺のガラクタ市(20..
- 京洛逍遥(966)美術館えきの写真展と江..
- 京洛逍遥(965)東寺の初弘法と『百人一..
- 京洛逍遥(964)病院での予約変更、帰り..
