当時は、共に大阪明浄女子短期大学の若手の教員でした。そして、研究について、篤く語り合いました。私が奈良に、千森さんが京都だったので、帰り道の天王寺駅までは話し詰めだったように思います。もちろん、大学のもめ事が話題の時も多かったのですが。
1999年に私が東京に行ってからは、まったく連絡はとっていませんでした。
それが、科研の関係で昨秋からお互いの近況を知るようになり、今年度は千森さんの科研が採択されたことに関連して、旧交を温めることとなりました。
手元に千森さんの2冊の著書があります。『表象のアリス』と『ガリヴァーとオリエント』です。
今春まで私が科研で「海外における平安文学及び多言語翻訳に関する研究」(17H00912)に取り組んでいたこともあり、時代も国も違うとはいえ、アリスとガリヴァーの翻訳事情には興味があります。
また、千森さんの留学先であるケンブリッジ大学には、私も十年以上にわたって通い、共に小山騰さんに多くのことを学んだという、共通する背景もあります。
今、この2冊の本に掲載されている挿絵などを、それこそパラパラと見ています。おもしろいのです。いろいろと刺激をいただけます。
以下、あくまでも自分のための備忘録として、この2冊の書誌情報と目次を、法政大学出版局のホームページから引いておきます。
表象のアリス テキストと図像に見る日本とイギリス
A5判/462ページ/上製
ISBN978-4-588-49509-0 C1090
価格 6,380円 (消費税 580円)
発行年月2015年04月
内容紹介
ルイス・キャロルが創造した少女アリスは、その誕生から今日まで、挿絵画家や翻訳者たちによってどのように描かれてきたか。原作のノンセンス世界を見事に解釈・構築したテニエルの挿画や、明治以降の日本の翻訳・翻案作品に現れた多様な少女像を、アリス図像研究の第一人者が初めて詳細に比較分析した労作。『不思議の国のアリス』150周年を記念して刊行、図版多数!
目次
プロローグ
多様なアリス/本書の概要/先行研究/本書の特徴と独創性/アリス図像/アリス邦訳/イギリスのアリスから日本のアリスへ──受容と融合
第一部 キャロルの内と外なるアリス
第一章 キャロルと二つの『アリス』物語
一・一 作家ルイス・キャロル
キャロルの感情生活/キャロルの女性観/キャロルと子ども/キャロルとアリス姉妹/アリスたちとの別離/キャロルの転機/晩年のキャロル
一・二 アリス
アリスとは/キャロルの内なるアリス(アリスの変化とメタモルフォーシス)/キャロルの外なるアリス/女性の登場人物
一・三 ヴィクトリア時代のアリスたちへ
読者への問いかけ/アリスの未来/ヴィクトリア時代の子どもたちへのメッセージ
第二章 挿絵画家キャロルとテニエル──『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』
二・一 挿絵画家ルイス・キャロル
キャロルと挿絵/『アリス』以前に描かれたキャロルの挿絵/『アリスの地下の冒険』
二・二 挿絵画家キャロルとテニエル
キャロルの影響
二・三 ジョン・テニエルの『アリス』
ヴィクトリア時代のイラストレーター/テニエル、キャロルそして『アリス』/テニエルのヴィクトリア解釈
第二部 オリエントと『アリス』
第三章 オリエントと『アリス』
三・一 背景研究──言語学的文化的観点から見た日英比較
ジャンルと言語/日本の翻訳者がであう困難/言語と世界観/ノンセンス
三・二 受容の文脈─読者層
明治から大正にいたる文化的社会的背景/明治から大正期にいたる教育制度の変遷/変容する児童イメージと児童観/子どものイメージとその時代的変遷/児童文学における少女イメージ・少女観の誕生/明治時代から大正時代にいたる児童文学
三・三 西洋と日本の融合─幻に終わった初山滋画『不思議國のアリス』
出版されずに終わった初山滋の『不思議國のアリス』図像発掘/ジョン・テニエルの「アリスと子豚」/アーサー・ラッカムのアリス─思春期の少女の系譜/チャールズ・ロビンソンとメイベル・ルーシー・アトウェル─かわいさの系譜/初山滋の『アリス』図像/初山滋の世界──日本と西洋の融合
第四章 初期『アリス』翻案と翻訳(一八九九─一九一二)
四・一 日本最初の『アリス』翻訳──長谷川天溪の『鏡世界』
四・二 明治の初期『不思議の国のアリス』翻訳
初期の『不思議の国のアリス』翻訳/翻訳者の『不思議の国のアリス』解釈/翻訳? それとも翻案?/日本の『不思議の国のアリス』翻訳に見る因習と道徳/日本化/誤訳/言葉遊びと造語/日本の少女アリス
四・三 明治期の『不思議の国のアリス』挿絵(一九〇八─一九一二)
『アリス物語』の川端昇太郎の挿絵/芳村椿花画『子供の夢』と椿花山人画『お正月お伽噺』/『愛ちやんの夢物語』
第五章 大正児童雑誌における『アリス』邦訳
五・一 昭和初期の絵雑誌における『アリス』邦訳
初期絵雑誌と『アリス』邦訳/『幼年の友』掲載の『フシギナ クニ』/『日本幼年』に掲載された『アリス物語』
五・二 児童雑誌『赤い鳥』におけるアリス翻訳『地中の世界』
雑誌『赤い鳥』/『赤い鳥』の絵画/鈴木三重吉の『地中の世界』/『地中の世界』のイラスト/清水良雄と『地中の世界』/清水良雄の世界/おわりに
五・三 『鏡國めぐり』
『鏡國めぐり』翻訳/岡本帰一の『鏡國めぐり』挿絵/むすび
第六章 一九二〇年から一九三三年の『アリス』翻訳
六・一 大正末から昭和初期にかけての『アリス』翻訳
六・二 『ふしぎなお庭 まりちやんの夢の國旅行』
鷲尾知治編『まりちやんの夢の國旅行』/斎田喬の挿絵/むすび
六・三 『アリス物語』(海野精光口絵、平澤文吉表紙/菊池寛・芥川龍之介共訳)
プロローグ/『アリス物語』のイラスト/菊池寛・芥川龍之介共訳『アリス物語』
六・四 『アリス』とジェンダー──棟方志功の『アリス』図像
棟方志功/棟方とテニエル/棟方芸術/棟方のアリスと日本美術/棟方のアリス図像の独自性/棟方志功と初山滋/おわりに
エピローグ──現在のアリス
子ども期と思春期/フロイト解釈/キャロルにとっての思春期/第二次世界大戦以降の多様な解釈/女性の時代/「かわいい」アリス/戦後の翻訳──センスの崩壊の時代/二一世紀のアリス研究──視覚表象研究の未来
あとがき
注
初出一覧
図版リスト
参考文献
索引
ガリヴァーとオリエント 日英図像と作品にみる東方幻想
A5判/424ページ/上製
ISBN978-4-588-49512-0 C1090
価格 5,720円 (消費税 520円)
発行年月2018年03月
内容紹介
『ガリヴァー旅行記』英語版テキストを飾る挿絵には、ヨーロッパ植民地帝国の拡大につれて、日本・中国・イスラムを中心としたオリエンタリズムの表象が前面に現れる。英仏の挿絵画家たちのジャポニズムや植民地幻想に初めて詳細に光をあてるとともに、原作を独自に翻訳・翻案した明治以降の日本の児童文学作家・挿画家による模倣/創造の軌跡をも丹念に跡づける独創的研究。図版多数!
目次
プロローグ
『ガリヴァー旅行記』とオリエンタリズム/本書の概要/本書の独創性/文学テキストと図像研究/先行研究
第一部 英版『ガリヴァー旅行記』とオリエント
第一章 『ガリヴァー旅行記』の位相
一・一 風刺文学・児童文学としての『ガリヴァー旅行記』の位相
『ガリヴァー旅行記』の多領域性・多義性/子どものための『ガリヴァー旅行記』/児童文学としての『ガリヴァー旅行記』の魅力
一・二 英国におけるオリエント観とオリエント受容
ヨーロッパにおけるオリエントへの関心/日本への関心/イギリスの植民地政策と万国博覧会/ジャポニズム
一・三 英版図像におけるオリエント表象──先行研究と本書
第二章 『ガリヴァー旅行記』のオリエント描写と風刺
二・一 テキストにおけるオリエント描写
二・二 『ガリヴァー旅行記』と近代科学
はじめに/近代科学/『ガリヴァー旅行記』と科学風刺/スウィフトの人間観・理性観/スウィフトの科学風刺に含まれる警告/まとめ
二・三 『ガリヴァー旅行記』と医学
はじめに/スウィフトとストラルドブラグ/ストラルドブラグのソースと先行研究/ストラルドブラグとは/ストラルドブラグ風刺の矛先/ストラルドブラグにこめた警告/風刺の意味/むすび
第三章 英版『ガリヴァー旅行記』図像とオリエント表象
三・一 『ガリヴァー旅行記』図像史とオリエント表象
三・二 『ガリヴァー旅行記』図像における中東描写
三・三 『ガリヴァー旅行記』図像における中国表象
三・四 『ガリヴァー旅行記』図像における日本表象
第四章 英版『アラジン』図像にみるオリエント
四・一 オリエントイメージの混在と融合──日本表象を中心として
はじめに/『アラビアンナイト』と『アラジンと魔法のランプ』/アラビアンナイト『アラジン』画像におけるオリエント表象の系譜/日本イメージ──女性、男性、装飾品そして日本の美術技法
四・二 『ガリヴァー旅行記』と『アラジン』におけるオリエント表象
『ガリヴァー』と『アラジン』における日本表象/むすび
第二部 『ガリヴァー旅行記』邦訳と日英図像
第五章 明治期の邦訳と図像
五・一 はじめに
日本の『ガリヴァー旅行記』
五・二 明治期の翻訳(大人用の翻訳)
『ガリヴァー旅行記』翻訳史
五・二・一 初訳 片山平三郎譯『繪本 鵞瓈皤児回島記』(一八八七年)
五・二・二 大久保常吉編譯・服部誠一校閲『南洋漂流 大人國旅行』(一八八七年)
五・二・三 松原至文・小林梧桐共譯『ガリヴァー旅行記』(一九〇九年)
日本最初の平易な完全翻訳/風刺作品/まとめ
五・三 明治の翻訳図像
『鵞瓈皤児回島記』挿絵/大久保常吉編譯『南洋漂流 大人國旅行』挿絵/島尾岩太郎譯『政治小説 小人國発見録』挿絵/松浦政恭譯『小人島大人島抱腹珍譚』挿絵/松原至文・小林梧桐共譯『ガリヴァー旅行記』挿絵/吉岡向陽編『大艦隊の捕獲』鰭崎英朋画/近藤敏三郎譯『ガリヴァー旅行記 小人國大人國』挿絵/風浪生譯『ガリヴァー小人島大人國漂流記』挿絵/まとめ
五・四 明治の児童文学翻案──巌谷小波『小人島』『大人國』(一八九九年)
はじめに/少年教育とポストコロニアリズム──帝国主義教育と立身出世主義/巌谷小波と帝国主義教育と立身出世主義/『世界お伽噺』/『ガリヴァー旅行記』翻訳史における巌谷翻案の位置づけ/巌谷小波の『小人島(ガリバア島廻上編)』と『大人國(ガリバア島廻下編)』
五・五 『小人島』と『大人國』の挿絵
海外のイラストの影響/筒井年峰挿絵のオリジナリティー/まとめ
第六章 大正期の邦訳と図像
六・一 はじめに
六・二 大正雑誌『少年少女譚海』の鹿島鳴秋文、初山滋挿絵「ガリバー譚」(一九二〇年)
鹿島鳴秋「ガリバー譚」の画家初山滋/初山滋の「ガリバー譚」図像
六・三 大正雑誌『赤い鳥』の野上豊一郎文、清水良雄・深澤省三絵「馬の國」(一九二〇年)
『赤い鳥』と『ガリヴァー旅行記』/野上豊一郎の「馬の國」/「馬の國」と清水良雄の絵画/清水の白黒挿絵/深澤省三の挿絵/まとめ
六・四 平田禿木譯・岡本帰一画『ガリバア旅行記』(一九二一年)
平田禿木譯『ガリバア旅行記』/平田禿木の邦訳/『ガリバア旅行記』の挿絵画家岡本帰一/岡本帰一の『ガリバア旅行記』図像
六・五 濱野重郎著『ガリバー旅行記』(一九二五年)
濱野重郎著『ガリバー旅行記』/濱野重郎著『ガリバー旅行記』の挿絵──挿絵の西洋版ソースの発掘/ゴードン・ブラウンの挿絵/濱野版におけるブラウンの図像/むすび
第七章 昭和初期から戦前までの邦訳と図像
七・一 昭和初期の絵雑誌『幼年俱楽部』における『ガリヴァー旅行記』邦訳二種
──巌谷小波文・本田庄太郎絵「小人島」「大人國」と村岡花子文・井上たけし絵「小人トガリバー」
『幼年俱楽部』における『ガリヴァー』邦訳/先行研究/『幼年俱楽部』/巌谷小波の「小人島」と「大人國」/挿絵画家本田庄太郎/本田庄太郎の『ガリヴァー』挿絵/本田庄太郎の『ガリヴァー』挿絵の独自性/村岡花子文・井上たけし絵「小人トガリバー」/「小人トガリバー」の挿絵画家井上たけし/まとめ
七・二 初山滋のもう一冊の『ガリヴァー』挿絵(一九二九年)──初山滋とラッカム
七・三 大正末から昭和初期にかけての『ガリヴァー』表紙と外函
中村祥一譯『ガリヴァ旅行記』(一九一九年)/池田永治装幀『ガリバー旅行記』(一九二五年)/小西重直・石井蓉年撰『ガリバー旅行記』(一九三四年)
七・四 西条八十文・吉邨二郎絵『ガリバア旅行記 小人島物語』(一九三八年)
講談社の『世界お伽噺』/吉邨二郎絵『ガリバア旅行記 小人島物語』挿絵
七・五 まとめ
エピローグ
オリエンタリズムと「ガリヴァー」/第二次世界大戦終結までの『ガリヴァー』邦訳/邦訳図像/将来の展望
あとがき
注
初出一覧
図版リスト
参考文献
索 引
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