2021年04月29日

弱視児童の支援から生まれた本の紹介

 『アイリス《弱視通級指導教室》〜アイリス児の実態と指導内容 そして望まれる支援〜』(弘報印刷(株)出版センター、令和3年4月3日)という報告書を、著者である上川恒雄先生(新道小(東山区、閉校)元校長)より送っていただきました。貴重な情報と資料が詰まった報告書なので、ここに紹介します。

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 本書は、京都新聞(2021年4月19日、夕刊)に紹介されました。すぐに連絡をとり、送っていただいたのです。希望者には無料で配布なさっています。問い合わせ先は、元新道小学校となっています。
 私は、弱視児童への「通級指導」というものを、まったく知りませんでした。弱視児童の割合は1万人に3人ということです。意外に少ないと思いました。しかし、それだけに指導の手が届きにくいのです。弱視通級指導は、まだ30年弱の歴史しかありません。そのために、さまざまな課題があるのです。
 京都新聞の記事に添えられた補注を引きます。

弱視児童への通級指導

 弱視児童が普通学級で授業を受けながら個々の障害に応じた指導を受ける制度。1993年度から全国で始まった。京都市では両眼の矯正視力が0.04以上 0.3未満または視野狭窄(さく)などの障害があり、普通学級での学習が可能な児童を対象に学校を巡回して指導する方式をとる。通称「アイリス教室」。新道小閉校後、拠点を総合支援学校に移し、支援学校の教員が指導にあたっている。


 著者である上川先生と弱視通級指導の背景がよくわかるように、上川先生からいただいたお手紙の後半を引きます。

 閉校まで弱視通級指導教室(通称:アイリス教室)として、京都市唯一の視覚障害教育の設置校として新道小学校が存在していたことから、閉校後も私は新道校の管理をしながら、引き続きアイリス教室の指導に陰ながら関わらせていただいておりました。
 消えゆく新道小学校の校舎とともに、私も施設管理やアイリス教室へも一区切りつけることにいたしました。そこで後進の方々へアイリス教育を委ねるために稚拙な物ですがアイリス教育について書き留めました。

 これまでアイリス教育に携わっていただき、お教えをいただいた先生方、現在アイリス教室をご指導いただいている先生方、在籍校でアイリス児に支援をいただいた先生方、ご協力いただいた関係機関等へのお礼の意味と、今後アイリス教育に携わられる新しい先生方、そして養護教諭の先生方、また現職の学校や児童施設で子どもたちを見ていただいている先生方に読んでいただき、弱視児童の発見に少しでも役立てていただければとの思いで、本小誌を送らせていただいた次第です。(なお、京都市内でお心当たりの事例がありましたら、京都市教育委員会総合育成支援課へお知らせいただき、ご相談いただきますようお願いいたします。)

 本小誌は私の私見も多々ありますので、ご批判等遠慮なくお知らせいただければ幸いです。
 皆様方のますますのご活躍とご健康をお祈りいたします。
2021年4月
上川恒雄


 さらに、本書の冒頭部分を引き、問題とされていることの背景の確認をしておきましょう。

1.アイリス児の実態


(1) アイリスの児童

 京都市の弱視通級指導教室(通称:アイリス教室)の子どもたち(アイリス児)は、京都市内の小学生で両眼の矯正視力が0.04以上0.3未満であること、または視野狭窄や視野欠損など何らかの視機能障害があり、見えに困りを感じている子どもたちである。
 さらに将来、点字による教育が必要ではなく、発達にも遅れがなく普通学級での教科学習が可能なこともアイリス教室入級の条件となっている。
 アイリス児の実態は様々である。筆者が見てきた平成19年度以降令和2年度までの14年間の対象児35名のうち、眼疾患の病名が確認できた31名の病種は以下のとおりである。( )は人数

(以下、囲みの中に列記されている病種を、私にスラッシュで区切った)

未熟児網膜症(8)/斜視による視力障害(7)/先天性白内障(1)/乱視(7)/白内障(1)/網膜剥離(3)/先天性緑内障(1)/網膜色素変性症(3)/続発性緑内障(2)/網膜分離症(1)/無虹彩症(2)/不同視弱視(3)/無水晶体眼(2)/強度近視(屈折異常性弱視)(6)/黄班部低形成(3)/家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)(2)/虹彩発達不全症(1)/錐体ジストロフィーによる視野狭窄症(1)/視神經乳頭陷没1)/スティーブンスジョンソン症候群(中毒性表皮壊死症)(1)/眼球振とう症(6)/眼皮膚白皮症(先天性白皮症)(2)/透明中隔欠損による視神経乳頭低形成症(1)/硬膜下血腫脳挫傷による視力障害(1)/杆体一色型色覚(1)/高眼圧症(1)/小眼球症(1)/角膜混濁(1)/コロボーマ角膜混濁(1)/ピータース奇形(1)/マルファン症候群(1)


 さらに、この弱視通級指導教室(通称:アイリス教室)に興味を持たれた方のために、本書の目次も揚げます。指導と支援と課題が、この目次を通覧するだけでも、わかりやすくなると思われるからです。
 さて、これから私は、本書を熟読するモードに入ることにします。

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目次

1.アイリス児の実態
 (1) アイリスの児童
 (2) アイリス教室の歩み
 (3) アイリス教室巡回小学校一覧
 (4) 未熟児網膜症
 (5) 弱視児の出現率
 (6) 弱視児の視行動
 (7) 弱視児の理解
 【「見える」とは?】

2.アイリス教室の指導
 (1) 法的根拠と京都市の基準
 (2) アイリス教室の使命
 《アイリス教室「学びの地図」》
 (3) アイリス教室の指導
  @指導形態
  A指導目標
  B指導内容
 【「弱視」とは?】

3.自立活動
 (1) 自立活動
 (2) 自立活動の目指すもの
 (3) 自立活動の内容
 《自立活動の指導と教科指導の違い》
 《自立活動の内容》
 (4) 指導にあたって
  @実態把握
  A指導目標
  B「指導分野」と「年間指導計画」との系統性
  C「本時の展開」も自立活動の内容で説明できる
  Dあくまでも「自立活動の目標」であること
  E授業の振り返り
 (5) 自立活動の吟味を!
 (6) 指導時の留意点
  @〈2.心理的な安定〉
  ○2 -(2)「状況の理解と変化の対応に関すること」
  A〈4.環境の把握〉
  ○「単眼鏡」の活用
  B〈5.身体の動き〉
  C〈6.コミュニケーション〉
 (7) 自立活動を意識する
 (8) 特設の自立活動に準じた指導
 《自立活動のL字型の指導》
 (9)“教え込み”から“学び取り"へ(マン・ツー・エンバイロメント)

4.視覚発達支援
 (1) 視覚発達支援
  @視覚発達支援の場
  A視覚発達支援において大切にしたい点
 (2)視覚行動の見極め
  ○弱視児の視覚認知能力の段階
 (3)具体的な指導の場で
  @指示語は極力使わない
  A児童との関係
  B見え方の確認
  C教材の提示や学習環境
 【「視力」を伝えるには?】

5.在籍校の支援
 (1) アイリス児にとっての自立活動の場
 《自立活動の課題位置とアイリス教室の指導の方向性》
 (2) アイリス教室の授業研究には、在籍校職員の参加を!
 (3) アイリス教室の保護者観
 (4) 弱視児が普通学級(在籍学級)で学習する条件
 (5) 中学校進学に向けて…
 【「アイリス」とは?】

6.アイリス教室の諸課題
 (1) 弱視児童の少なさが招いている弱視教育の課題
 (2) 教具が高額であること
 (3) アイリス教室が「小学校」から
  「総合支援学校」に設置替えになったことについて
 (4) 在籍校への理解、京都市全体への理解
 (5) 通級指導教室の「設置校」
 (6) 就学指導システムの枠を感じるケース
 (7) 視覚障害教育に使用される用語
 (8) 個別の指導計画
 (9) 普通学級の指導以上の“やりがい”を感じてほしい
 【「晴眼者」?】

7.アイリス教室Q&A

8.添付資料について

あとがき

引用参考文献
 〈添付資料〉
  @「自立活動の区分項目に対する指導内容」記入用紙
  A「自立活動の区分項目に対する指導内容」記入例
  B「自立活動指導計画プレシート」記入用紙
  C「自立活動指導計画プレシート」記入例
  D「自立活動の『特設指導』と
   特設の自立活動に『準じた指導』との関係例」

 
 
 
posted by genjiito at 20:44| Comment(0) | ■視覚障害
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