アルバイト仲間の、無口で大人しいクリスさんとの、意思疎通の話から始まります。コミュニケーションのことがテーマです。
そんな中で、店長が話す、「従業員(ひと)が会社のためにいる」という考え方と、「会社が従業員のためにある」ことへと話が展開します。社会には「余白」が必要だ、という考えも提示されます。
物語は、ゆっくりと進みます。自分の居場所があることの大切さが、少しずつ伝わってきます。
目が見えないことで「心配される」のではなくて、彼とは対等な心でいたい、というユキコは、しだいに逞しくなっていきます。対等でいたかったら敬語をやめろ、とユキコが言うのは、人間関係の微妙な絢を突いています。
大人を演じきれない、純粋な気持ちをぶつけ合うユキコと黒川は、愛情表現もぎこちないままです。前へ進む勇気をもらい合う2人のラブコメディーは、まだまだ続きます。
点字を読めない人が多いので、点字+拡大文字なら便利だという最後の話は、今後ともさらに具体的に物語として描いてほしいと思いました。
現在、点字が不自由なく読める人は、目が見えない人の1割にも満たない、という統計が以前から公表されています。9割の方は、点字が読めないのです。しかし、一般的には、目が見えない人は点字を読んで情報を得ている、と勘違いしている現実があります。
このギャップは、エレベータに乗ると、点字が貼り付けられている位置がいかに非道なことをしているかが、実際に触るとわかります。低い位置に貼られている点字を触読しようとすると、手首が痙攣するはずです。こんな肉体的な苦痛を強いながら、不自由な思いをしている人を支援しているという、大きな錯覚が横行しているのです。私が、まずはエレベータから、と言っている原点を、ぜひとも確認してみてください。そして、この問題を、この漫画でも今後は取り上げていただきたいと思っています。【4】
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