2021年03月18日

[学長ブログ]卒業式と日本語別科修了式の式辞2題

 本日、午前中にスターゲイトホテル関西エアポートで令和2年度の大阪観光大学卒業式、午後は大学内の明浄ホールで日本語別科修了式がありました。

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 共に、私には式辞を述べるという大役が課せられていたものです。そこで、以下の2種類の文章は列席する学生たちが手元で確認できるように、受け付けの際に手渡してもらっていました。留学生が多い大学なので、こうした配慮は必要だと判断してのことです。
 ただし、昨日のブログに書いたように、私は原稿を読むのではなく、この内容を語りかける手法をとったので、ほとんどの学生たちは顔を私の方に向けて聞いてくれていました。

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 実際には、おおよそこの通りの内容ながら、さらに詳しく具体例を各所に入れて、わかりやすく話すことを心がけました。この内容では、学長の式辞としては軽すぎる、という誹りを受けかねません。しかしそれを承知で、私には具体的な十数人、科研の仕事を手伝ってくれていた学生に語りかける、という気持ちがありました。終わってから、先生方からは学生によく届くメッセージだった、との好意的な感想が聞けました。保護者や来賓が皆無という、大学関係者だけでの式典です。そうした事情もあり、目的とする学生の胸に響き届くメッセージとなったことは、私の意図が通じたと思っています。
 本日の式典の写真は最小限にして、私の式辞2つを掲載します。

■(午前)卒業式の祝辞■



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◆お祝いのことば「心身ともに健康が第一」◆

 みなさん、卒業おめでとうございます。
 学長の伊藤鉄也です。ひと言、お祝いのことばを述べます。
 本日、私が着物姿でこの場にいるのは、日本文化の一つを記憶に残してほしいためです。着物や和装というと、海外の方々は女性だけが着る民族衣装だと思っておられます。実際に、男性の着物姿を見る機会はほとんどないと思います。そこで、本日はそのことを意識して、こうして着物姿でみなさんの前に立つことにしました。
 注目してほしいことが一つあります。それは、襟元が小文字の「y」に見えることです。「右前」と言います。和服は洋服と違って、男性と女性は同じ「右前」です。右手が懐に入ります。これは、今から1300年前の奈良時代、和暦で養老3年、西暦で719年に決まったことです。着物の合わせ目は、男女同じだ、ということを覚えておいてください。
 さらに、着物は糸を取り去ると反物という平らな布の巻き物になります。それに対して洋服は、糸を抜くと曲線で裁断された布の部品となります。着物は、直線でできた布を、着る人に合わせて形を決めながら着付けます。対する洋服は、できあがった形の中に身体を嵌め込みます。この違いが、文化の違いにつながっていきます。

 また、壇上に並ぶ国と地域の旗を見てください。これまでに、この大学を卒業した学生たちの国や地域の旗です。左からアルファベット順に【中国、日本、マレーシア、ミャンマー、ネパール、韓国、タイ、ベトナム、台湾】です。
 そこで、私が研究している分野に引き付けて、『源氏物語』のことからお話します。
 私は、『源氏物語』の海外における翻訳を研究テーマの一つにしています。『源氏物語』は、現在41種類の多言語で翻訳されています。41カ国ではありません。翻訳されている言語の数が、41種類もあるということです。それぞれが、さまざまな国の文化に合わせて訳されています。そこで私は、日本の文化の一つである『源氏物語』が翻訳されることによって、世界各国にどのように形を変えたことばで伝えられているのかを研究しています。これは、終わりのない、次の世代に引き継いでいくテーマでもあります。その意味からも、この大阪観光大学が文化の交流とその変化を体験できる場となることを願っています。

 さて、今日は、自分のことを振り返りながら、みなさんへの励ましとなる言葉を贈ろうと思います。一言で言えば、「心身ともに健康が第一」ということです。お手元の式次第に、私の祝辞の要点を書いています。後で参照してください。

 今からちょうど4年前の、3月31日のことから話を始めます。
 その日私は、東京にある国文学研究資料館の館長から、定年退官の辞令をいただきました。そしてすぐに、新幹線で京都の自宅に帰りました。
 明くる4月1日。泉佐野市立文化会館で、明浄学院の理事長から大阪観光大学に採用となる辞令をいただき、そのまま入学式に出席しました。それが、みなさんと最初に出会った日です。つまり、私はみなさんと一緒に、ちょうど4年前に、この大阪観光大学での生活をスタートさせたのです。
 2年間、この学校にいた後、次に大阪大学へ移りました。
 ところが運命のいたずらか、みなさんが4回生の夏、つまり去年の7月に、私は学長としてこの大阪観光大学に帰ってくることになりました。そして、1年9ヶ月前に別れたみんさんと、再会することになったのです。
 元気に前を向いて生きていると、いろいろなことがあります。
 そこで、今日はみなさんに、健康の大切さをお話します。

 私は、身体の中の臓器が何個かありません。消化器官はほとんどないのです。主治医は、私がなぜ元気で生きていられるのか説明しにくい、とおっしゃいます。
 私は18歳の時、新聞配達をしながら学校に通っていました。そして、配達を終えてお店に帰ってすぐに、十二指腸が突然破れて意識を失いました。無事に命をとりとめ、胃の3分の2と十二指腸などの臓器がないままに、毎日を過ごしてきました。それからずっと今まで、私の身体には消耗期限があるため、「明日が来る保障はない」と自分に言い聞かせて仕事をし、生きてきました。
 寿命とされた45歳は、無事に通過しました。59歳でガンが発症し、また臓器を減らしました。今、69歳です。ご覧の通り、痩せてはいるものの普通の身体に見えると思います。しかし、昨年、この大阪観光大学に来る直前に、2回も入院して手術を受けました。つい先日のこと、今から2週間前にも、突然死に関する病気の治療で入院していました。身体がひ弱だからと言って、仕事の手は抜かず、私の身体のことで先生方や事務職員の方に迷惑はかけてはいません。
 自分の身体を守るために、私は何か体調に変化があると、すぐに「かかりつけ医」の所に駆け込みます。いつも、早期発見で命拾いをしているのです。また、腕にはウェアラブルコンピュータであるスマートウォッチを着けています。常に、「心拍数」「血中酸素濃度」「心電図」、さらには体温と体重を記録。今年の秋からは、この時計が血糖値も測ってくれるようです。糖尿病を患っている私は、血液検査をしなくても、常時この時計で血糖値がわかるようになるのです。生き続けていくために、こうした努力を続けています。

 そこで、みなさんに今日言いたいことは、とにかく貪欲に生き続けてほしい、ということです。生きていれば、思いがけないことに出会います。いいことも、悪いこともあるでしょう。しかし、それを泳ぎ切るのが、自分に課せられた宿命だと思ってください。
 私は、「明日は来ない」ということを心に刻み込んで生きて来ました。すると、怖いものはなくなります。15年間にわたるインドとの文化交流で学んだ「何でもあり」という精神が、私の迷いを断ち切ります。全力で物事に打ち込めます。その結果をどう評価するのかはともかく、今の自分の判断を信じるしかありません。

 新型コロナウイルスや、その変異種により、昨年春から、突然病に侵されることのある時代になりました。みなさんも、十分すぎるほどに自分の身体をいたわり、健康で生き抜いてください。何か身体に変調があれば、すぐにお医者さんに診てもらうことが、自分を守り、周りの仲間を守る一番の対策です。
 みなさんはこれから、それぞれの新しい生活が始まります。自分の身体を大事にして、明日からではなく、今この時に精神を集中した生活を送ることを、心がけてください。
 みなさんのますますの健康と活躍を楽しみにしています。以上、卒業をお祝いする私からのことばとします。元気で、稔り多い日々を送ってください。

2021年3月18日
大阪観光大学
学長 伊藤鉄也


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■(午後)日本語別科修了式■



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◆学長式辞◆

 日本語別科を修了されたみなさん、おめでとうございます。
 学長の伊藤鉄也です。ひと言、お祝いとはなむけのことばを贈ります。
 私は、海外における『源氏物語』の翻訳を研究テーマとしています。『源氏物語』は、現在41種類の多言語で翻訳されています。41カ国ではありません。翻訳されている言語の数が、41種類もあるということです。それぞれが、さまざまな国の文化に合わせて訳されています。そこで私は、日本の文化の一つである『源氏物語』が、翻訳されることによって世界各国でどのように形を変えたことばで伝えられているのかを研究しています。これは、終わりのない、次の世代に引き継いでいくテーマでもあります。その意味からも、この大阪観光大学が文化の交流とその変化を体験できる場となることを願っています。
 みなさんは、ことばを通して、いろいろな文化に接してきたと思います。その中で、違和感や疑問が多かったことでしょう。その意味を考えることが、多言語文化を理解することにつながります。今、みなさんはそのスタート地点に立ったことになります。
 さて、『源氏物語』は実に多くの言語で翻訳されていると言いました。
 例えば、昨年の夏には、『源氏物語』は39種類の言語で翻訳中(200814版)でした。その後、さらに、ウズベク語訳『源氏物語』(「桐壺」巻のみ)と、ジョージア語訳『源氏物語』(第15巻「蓬生」まで)の存在を確認できました。
 これで今日現在、『源氏物語』は《41種類の言語》で翻訳されていることになります。
 世界各国で翻訳されている『源氏物語』は、着実に増えており、今後ともさらにその数は増えていきます。私からのサプライズである手元の『海外平安文学研究ジャーナル《中国編 2019》』の117ページ以降を見てください。『源氏物語』は81種類も出版されています。どれを読んだらいいのか迷うほどです。(※注記︰この修了式に参加したのは、全員中国からの留学生77名でした。)
 千年前に書かれた日本の物語が、このような形で翻訳されているのです。自分の国の言語に移し替えて表現された翻訳本を手にしたら、ぜひとも日本の文化がどのように形を変えて伝えられているのかに注目してください。
 自分の立ち位置は、あくまでも生まれ育った環境で身につけた母国語にあります。そこから、異文化を見て、理解するようになってほしいと思います。
 見て、聞いて、理解して、そして自分の言葉で考えてください。
 みなさんが今後ともますます活躍されることを、楽しみにしています。
 これからも、稔り多い日々を送ってください。
 日本語別科の課程を終了されたことをお祝いします。

2021年3月18日
大阪観光大学
学長 伊藤鉄也


【『源氏物語』が翻訳されている41種類の言語一覧】

アッサム語(インド)・アラビア語・イタリア語・ウクライナ語・ウズベク語・ウルドゥー語(インド)・英語・エスペラント・オランダ語・オディアー語(インド)・カタルーニャ語・クロアチア語・ジョージア語・スウェーデン語・スペイン語・スロベニア語・セルビア語・タミル語(インド)・チェコ語・中国語(簡体字)・中国語(繁体字)・テルグ語(インド)・ドイツ語・トルコ語・(現代)日本語・日本点字・ハンガリー語・ハングル・パンジャービー語(インド)・ビルマ語・ヒンディー語(インド)・フィンランド語・フランス語・ベトナム語・ペルシャ語・ポルトガル語・マラヤーラム語(インド)・モンゴル語・リトアニア語・ルーマニア語・ロシア語

 
 
 
posted by genjiito at 23:46| Comment(0) | ■大学新生
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