明浄ホールに YouTube の中継スタッフが入り、オープニングからネットにライブ配信です。第一声を発したのは、実行委員長のニコラス君です。
彼は、1回生だった3年前に、私の科研で翻訳のアルバイトとして、手助けをしてくれていました。今、4回生となり、立派にこの一大イベントを差配しています。二回りも三回りも、大きく見えました。
私の役割は、彼に促されるままに、開催にあたっての挨拶をすることです。
このコロナ禍での開催の意義と、今日までの綿密な計画を推進してこられた関係者に敬意を表しながら、手短かに話しました。感染拡大を防ぐために、「大いに盛り上げていきましょう。」という言葉は禁句です。つい言ってしまったために、すぐに「大いに楽しみましょう。」と、表現をソフトに言い換え、言い直しました。社会情勢に、いろいろと気を遣います。
大学祭を対面式で行う大学は、あまりありません。この、ネットと会場参加を慎重に使い分けた、新しいスタイルの大学祭が無事に楽しく終わることを願うばかりです。
吹奏楽部の演奏が始まるや否や、私は次の会場に移動です。1号館から一番遠い5号館に急いで駆けつけ、弁論大会のお手伝いです。
「大阪観光大学 第11回留学生日本語弁論大会」は、7名の留学生が、日本語で各々のテーマを論じます。今回は、全員が1回生ということで、その話し振りを楽しみにしていました。最初に開会の挨拶をしました。そして審査員の紹介の後、ベトナムとバングラディシュからの留学生の弁論が始まります。
予想以上の語り口で、これからさらなる上達が期待できます。
ここで私には、採点という役割が振られていました。評価項目は3種類あります。「内容・構成(10点)」「運用力(10点)」「言語力(10点)」で30点満点。それぞれがさらに細分化されており、24種類の評価基準で採点をします。高得点者は順に「最優秀賞」と「優秀賞」を、それ以外の中から「特別賞」を選定します。
表彰式では、3名に賞状を渡しました。それ以外の学生には「参加賞」を渡しました。
最後に、参加者全員と記念撮影です。最優秀賞のチャン ティ ハオさん(ベトナム)は真ん中でトロフィーを持っています。その右のグエン スアン イェン チンさん(ベトナム)が優秀賞、後ろで賞状を持っているのが特別賞のビスワスショーミトロ君(バングラディシュ)です。
今回、「最優秀賞」を取ったチャン ティ ハオさんは、審査員3人が一致して最高得点でした。感動的な内容で、会場では目を潤ませている方がチラホラ。かくいう私も、思わず知らずジーンと来て、審査員という立場もあり困りました。
その時の原稿が、本人の了解が得られたので、以下に全文を引用します。表情豊かに、表現も巧みに、会場を魅了しながらの熱弁でした。それを、ここで文字で読むのは臨場感に欠け、無粋であることは承知です。しかし、ほんの少しでもその内容が伝われば、との思いで、あえて掲載します。
■弁論大会優勝者原稿■
皆さん、おはようございます。
今日は、私が来日したばかりのころに経験した「おもてなし」について皆さんにお話ししたいと思います。
私は留学を準備した時、日本の様々なことを調べました。「本音と建て前」や「おもてなしの心」などの日本の文化も学びました。世界中の人々、特に日本で暮らしている外国人は、日本の「おもてなし」という心の文化のことを、少なくとも、知らない人はいないと思います。例えば、日本の店に入ると、スタッフは丁寧に笑顔で「いらっしゃいませ」と挨拶してくれるし、席に座ると、すぐにお水とおしぼりがきます。また、帰る時もスタッフが出口まで見送ってくれます。このような日本の文化は、自分で体験することにより、一層深く感じられるのではないかと私は思います。
2019年1月から、私は留学生として群馬県の日本語学校に1年3か月通っていました。最初は、世界で有名な日本の接客はどんなものかしりたくて、アルバイトを探しました。有難いことに、学校の先輩から中華料理店のアルバイトを紹介してもらえました。研修期間に入って、店長と皆は優しく教えてくれました。しかし、接客は簡単ではないこと、ただメニューに書いてある料理の名前や基本的な挨拶を暗記さえすれば大丈夫だというのは間違いだったということが分かりました。お客さんから「日本語が上手だね」、「すごい、頑張っているね」など褒められたときは、本当に嬉しくて、普通より時間が早く過ぎていくように感じました。その一方で、お客さんから質問されて、答えられなかったり、クレームを受けたりしたこともありました。たくさんの思い出のある職場ですが、そこで出会ったあるお客さんの言葉は今でも覚えています。そのお客さんは今でも私がずっと「ありがとう」と言いたい人です。
ある土曜日の夜7時ぐらい、店は少し混んでいて、注文待ちのお客さんがいました。私は疲れていましたが、笑顔をたやさず、1番のテーブルでオーダーをとりました。そのお客さんは瓶ビール2本を注文されました。普通瓶ビールは冷蔵庫から出して、お客さんに渡すのですが、私は隣にあるカゴの中から出して、常温瓶ビールをお客さんに渡してしまいました。私はその事に気づかず仕事を続けました。なぜその時冷蔵庫の中にある物ではなく常温のビールをとったか未だにわかりません。当然のことですがお客さんに「すみません」と呼びとめられ、不安な気持ちのままテーブルに行くと、お客さんは「これ、飲めないよ、このビール」と常温瓶ビールを指(さ)して少し怒っているようでした。すぐに自分の過ちに気付き、「申し訳ありません。すぐ交換させていただきます。」と私は謝りました。困惑している私の姿を見て、そのお客さんは微笑んで「もういいよ、早く持ってきて」と先より少し優しい声で言いました。その後は緊張してしまって、作り笑いしかできず、つらいまま仕事を続けました。一時間ぐらい後、私は、下げた物をキッチンの方に持って行っているとき、大きな声で「ハオさん」と自分の名前を呼ばれました。誰に呼ばれたかわかりませんでしたが、「はい」と答えました。「ごちそうさまでした、また来るよ。お前の笑顔は素敵だよ。」という声が聞こえ、レジのほうを見ると、さっきの1番テーブルのお客さんでした。他のお客さんは急にシーンとなり、私の方を見ました。ずっと落ち込んでいた私はそのお客さんに「ありがとうございました」と言って、すぐキッチンのほうに走りました。お客さんに言われた言葉で我慢していた感情があふれ、涙が出てきました。私はとても嬉しかったです。マネジャーは「それはハオが知りたかった’おもてなしの心’だよ」と私に言いました。その土曜日のあと、その方は店の常連客になってくれました。このことはとても貴重な経験になりました。形だけのサービスでお客様は満足できません。相手の気持ちを考えることが真(しん)の「おもてなし」であり、心からの行動こそが大切なのだと私は思いました。そして、この経験が大阪観光大学を選んだ理由の一つになりました。
これから、大阪観光大学で憧れていた日本の素晴らしい文化、「おもてなしの心」を一生懸命頑張って、勉強したいと思っています。
ご清聴、ありがとうございました。
午後は、「大阪観光大学 第2回英語弁論大会」が、同じ会場でありました。
8人の学生が、英語でスピーチをします。日本人2人、バングラディッシュ人3人、中国人3人が熱演を展開しました。
私は審査員ではなかったので気楽に聞いていました。しかし、賞状を渡す役を頼まれました。
最優秀賞は平林秀隆君(日本)、優秀賞は張 馬亜諾君(中国)、そして特別賞がウディン モヒン君(バングラデシュ)でした。それが終わると、突然ながら最後に挨拶を、とのことです。何とか責を塞ぐことはできたものの、予定になかったことがいろいろと入ると戸惑います。慣れなくてはいけません。
いくつか、気づいたことがあります。午前中の留学生による日本語でのスピーチは、身振り手振りはまったくない、パフォーマンスのない、まさに日本式の弁論が展開していました。しかし、午後の英語によるスピーチでは、両手が動きます。参考までに、平林君と、昨年度最優秀賞を受賞したゲストの増本結友さんの姿を紹介します。
こうした違いは、どこから来るものでしょうか。
最後に、参加者全員で記念撮影です。
この後、しばらく歓談が続いていました。
すばらしいスピーチコンテストでした。
みなさま、お疲れさまでした。
なお、本日と明日のライブストリーム(YouTube 版)は、[https://www.youtube.com/user/OsakaKankoDaigaku]でご覧いただけます。
ご自宅でお楽しみください。
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