2020年10月01日

読書雑記(298)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ 13 麗しの上海楼』

 『京都寺町三条のホームズ 13 麗しの上海楼』(望月麻衣、双葉文庫、2020年1月)を読みました。

201001_homse13.jpg

 快調に「Introduction」が始まります。「とらや」に関する話は、私も体験しました。

「『とらや』の美味しさとそのブランド力は、誰もが知るところなんですが、一部の者には、『京都を捨てていった店』という感情もあるんです。ですから外の人が『とらや』を持参すると、『京都を捨てていった店のものを持ってきて。分かってへんのやなあ』という感情が生まれてしまう場合があります。特に、お詫びに使う場合は避けた方が無難でしょう。京都ブランドの和菓子をおすすめしますね」(14頁)


 話は、京都木屋町から上海へと飛ぶことが予告されます。大富豪の娘のイーリンが、いい役所として描かれます。

■序章「まるたけえびすに、気を付けて」
 「車折神社」の振り仮名に「くるまおり」とあるのは、何かのミスでしょう。その直前に、次の会話があります。

『……くるまおり神社?』
小首を傾げる桜子に、紅子は首を振った。
『「くるまざき」と読むんだって』(39頁)


 なお、通り名から人名を推定する説明には苦しいものがあります。

■掌編 『小松は見た』
 小松探偵事務所の隣の隙間で、ホームズが葵に口付けをしているところを小松は見てしまいます。話に色付けをするための挿話です。

■本編 『麗しの上海楼』
[1]小松探偵事務所、上海へ
 上海上陸を果たしたホームズこと清貴一行は、豊かに発展した街を旅人として回ります。旅の報告です。【1】

[2]上海博物館
 楽屋裏での目利きの雑談を聞かされているような内容です。【1】

[3]上海楼
 お金持ちの招待で行った上海旅行に付き合わされるだけでした。後半でやっと盛り上がりかけます。展開がバラバラで、品にかける文章になっています。【1】

[4]とある画家の秘密
 鑑定を誤った話です。そして、次の話につなぐために、しだいに盛り上がっていきます。【3】

[5]回顧録
 円生の貧しかった過去が語られます。感傷的というよりも、悲哀の滲む語り口に、この作者らしくないと思いました。
 話は次の章に続きます。【2】

[6]作戦遂行
 きれいに事件は解決しました。気持ちのいい、すっきりとした話に仕上がっています。【3】

[7]出発の夜
 円生が、鑑定士ではなくて画家として新たな道を歩み出す応援歌となる章です。本作品中の綴じ目として、完成度を高めています。【5】
 
 
 
posted by genjiito at 23:11| Comment(0) | ■読書雑記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。