歴史的な背景と人物描写がしっかりしているので、安心して読み進められます。最初は歴史をなぞった物語です。よく知られた逸話などをもとに、物語は進展します。
その流れが、藤式部の出産にひき続いて彰子の出産の場面で、俄然語りが急変します。敦成親王と賢子をめぐる話は、本書の読みどころです。ドラマが一大転換するのを、読者は固唾を飲んで見守ることになるのです。そして、背後に「人の親の心は闇にあらねども 子を思う道に惑いぬるかな」という兼輔の歌が響きます。
『源氏物語』が書き継がれる経緯を、政治的に物語を利用しようとする道長や、熱心な読者である彰子の姿を織り交ぜて語ります。『源氏物語』の背景をなす平安時代を生きた人々や、『伊勢物語』などの平安文学のいくつかの作品を、あらためて読み直したくなります。【4】
※作者は、本作で第11回日経小説大賞を受賞し、作家としてデビューしました。
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