2020年04月18日

読書雑記(283)船戸与一『ゴルゴ13ノベルズ 落日の死影』

 『落日の死影 ゴルゴ13ノベルズT さいとう・たかを+さいとうプロ作品 ゴルゴ13シリーズより』(船戸与一、2017年5月、小学館文庫)を読みました。

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 三部作の内、3冊目に関してはすでに「読書雑記(268)船戸与一『おろしや間諜伝説』」(2019年09月15日)で取り上げました。
 本作は、第1作目になります。本書の背景がわかるように、まずは〔「BOOK」データベース〕から引きます。

米国大統領スタッフは頭を抱えていた。過去にCIAが関与して製造した「死霊の泉」なる猛毒物質の存在である。孤島に貯蔵されたその物質を、存在証拠もろとも消し去ること。これがGへの依頼だった。だが、もう一人、別の依頼者から「死霊の泉」消去を請け負った“プロ”がいた。プロ中のプロ同士が孤島で出遭ってしまった時…!?『ゴルゴ13』を、あの直木賞作家・船戸与一が小説化する。


 静かな始まりです。デューク東郷は、薬学者として登場します。
 ターゲットは「死霊の泉」で、それは次のように説明されます。

「十グラムで二千人から三千人を殺せる新薬剤。しかも解毒の方法はまったくない」
「もっと詳しく説明してくれ」
「特定の貝に生じる毒素とコブラの毒液を主たる原料として作られる新薬剤で、これをビルやフラットの貯水タンクに三十グラムばかり垂らせば、料理用に使っただけで夥しい量の死人が出る。その新薬剤が死霊の泉と呼ばれているらしい。それが何トンという単位で貯蔵されてる」(8頁)


 生物化学兵器の隠蔽画策を謀るプロの話が展開します。
 太平洋の荒波に洗われる孤島の髑髏島で、日本兵の白骨の死体の列が放置されていることを、何度も描きます。船戸の遺作となった『満州国演義』を思い出しました。本作は、この『満州国演義』に流れていく始発点と言えるかもしれません。そして堂々の終着点が、「読書雑記(198)船戸与一『残夢の骸 満州国演義9』」(2017年04月28日)だったのです。
 それはさておき、その髑髏島では、「死霊の泉」の生産工場と倉庫があり、それを破壊する命令を実行するのが、ゴルゴ13とハンス・ユルゲンスの2人のプロです。さらには、そこに3人目のプロとして、ジョルジュ・ベルモントが加わります。
 テンポが速く、一気に読めました。
 裏表紙の説明文には、本作の経緯が次のように記されています。

 直木賞作家・船戸与一が、作家デビュー前、脚本に携わった『ゴルゴ13』作品群から、珠玉の三作を自ら小説に書き上げた。鼓動が早まる第一弾。


 原案がさいとう・たかをだという、劇画ということもあるのでしょうか。読み手が映像として受け止め易い描写と構成とが配慮されています。読むというよりも、活字で劇画を読み取ったような感触が残る作品です。ライトノベル感覚で読み通せるハードボイルドです。こんなスタイルの物語もいいな、と思いました。もちろん、船戸与一に筆力があるからこそ、可能となったことです。本作を劇画と比べてはいけません。その意味でも、船戸の作家としての成長をたどる上での、貴重な作品だといえるでしょう。【3】
 
 
書誌:2011年2月に小学館より単行本として刊行。その文庫化。
 なお、巻末には、次のようにあります。ここで、「外浦吾郎」とあるのは船戸与一の別名です。
本編は一九七六年小学館「ビッグコミック」に発表された、ゴルゴ13シリーズ「落日の死影」(脚本協力/外浦吾郎)をもとに小説化したものです。(213頁)

 
 
 
posted by genjiito at 20:31| Comment(0) | ■読書雑記
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