2020年04月16日

読書雑記(282)望月 麻衣『京都寺町三条のホームズ 11』

 『京都寺町三条のホームズ 11 〜あの頃の想いと優しい夏休み〜』(望月 麻衣、双葉文庫、2019年01月)を読みました。

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 冒頭に、次のお断りがあります。まだ続くという意味の意思表示です。

 いつも、ご愛読ありがとうございます。
 前回の十巻で、一段落を迎えた本シリーズ。
 これまで駆け抜けるようにして書いてきたこともあり、書きそびれたエピソードや掘り下げられなかった部分も多々ありまして、今回の十一巻は前回からの続きのお話と、これまで語られていなかったエピソードをお届けいたします。
 今回は事件性よりも、古美術と京都の町、そして登場人物の『あの頃のお話』と後日譚にスポットを当てた、サブタイトル通りの穏やかな、『あの頃の想いと優しい夏休み』です。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。


 実は、前作を取り上げた記事、「読書雑記(242)望月 麻衣『京都寺町三条のホームズ 10』」(2018年10月16日)で、このシリーズはこれで終わりかと思いました。しかし、その「あとがき」で作者が「京都ホームズは、まだ最終回ではありません。もう少し続きます。」(292頁)と言うことなので、「もうしばらく、この物語にお付き合いしてみようかな、と思っています。」と書きました。しかし、このシリーズには魅力が失せていたこともあり、続巻が刊行されたことに1年も気付きませんでした。続くのであれば、これまでこの作品にお付き合いしたことでもあり、また読み出そうと思います。現在、第14巻『京都寺町三条のホームズ14 〜摩天楼の誘惑〜』まで出ているようです。ただし、以下に記すように、本巻第11巻はがっかりする内容だったので、どこかで打ち切るかも知れません。

 前作を引き受けて始まります。登場人物の輪郭がはっきりと描かれています。過去を振り返りながら一人一人を紹介していくので、寄り掛かるものがあるためにスッキリと語り続けられるのでしょう。読みやすい文章になったように思います。これまではどうだったのか、思い出せません。
 開巻早々、柿右衛門とマイセンの違いなど、陶芸品の蘊蓄が披露されます。軽いノリの何々ノベルとは違うことを見せておこう、という心算が伝わってきます。
 相思相愛のホームズと葵の仲も、柔らかく包み込むような文章で語られていきます。作者の優しい目と、温かい眼差しが行間から伝わってきます。

 第一章「『天の川と青い星々』では、『伊勢物語』や小野小町の歌、果ては藤原関雄の古今歌まで。しかも、『文徳天皇実録』まで引いて説明がなされます。古典文学としての和歌の世界が持ち込まれていて、なかなか教養小説の香をさせています。
 そして、ホームズが高校時代に先輩だった日野さんと訪問する永観堂への案内は、このネタのツマミです。
 いろいろと工夫があります。ただし、古典の知識が前に出たので、少し興醒めな話となりました。【2】

 第二章の「月夜の宴」は、まったく中身のない話なので、読み飛ばしましょう。【1】

 第三章「似て非なるもの」
 骨董品店『蔵』の店長は小説書きです。今、『源氏物語』を書いていることろです。新たに雑誌に連載するのは、『紫の恋文』という、紫の上を主人公にするものでした。ただし、その内容たるやまったく陳腐としか言いようのないものです。息子のホームズは、これは間違いなく傑作になる、と言います。『源氏物語』を取り上げればいい、というのは大きな勘違いです。【1】

 「掌編『家頭誠司の憂鬱』」
 この作者は、時間を過去に戻して語るのが苦手なようです。一本調子の、平板な話にしかなりません。今後の課題だと思っています。【1】

 第四章「円生の独白」
 過去と現在を行き来する時に、2次元の空間移動で設定されます。ここを、もっと立体的に、そして膨らみのある描写にしたらもっと良くなります。心の会話でつなぐことに拘らないで、もっと自由におもしろい話にすべきです。人間を取り囲む自然や物や社会を巻き込んだ話にしたら、退屈さは減らすことができるでしょう。
 粗筋を読まされた読後感が残りました。人間の心と行動を言葉で描こうとしながら、うまくいかなかったようです。くどい文章になっているので、読む方も疲れました。恋愛心理を描ききれなかったのです。【1】

 第五章「あの頃の想い」
 この作者には、恋愛話は無理かな、と思わせる内容です。人の心が読めないために、内容が浅くなっています。恋愛の設定も、経験値の問題か、ワンパターンです。この辺りが、ライトノベル作家から抜けきれない原因だと思われます。【1】

 掌編「北山デート」
 作者が「おまけ」だと言う小話です。なぜここにこの話を付けたのか、意味不明です。全体の構成などは関係なく、とにかく作品を並べる、という方針なのでしょうか。【1】
 
 
 
posted by genjiito at 20:47| Comment(0) | ■読書雑記
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