そうであっても、女性の帰属先をめぐるこの話は、今の若者には理解不能だと思われます。あくまでも、谷崎の女性観から描かれた世界として読む作品であり、谷崎を理解するためにはいい作品です。
ここに語られる男の身勝手としか言いようのない論理は、その時代背景と谷崎の個性抜きには語れません。その意味では、本作は作品というよりも資料として価値を持つものだと思います。
第三幕は、大いに盛り上がります。ただし、時間がなかったのか、少し荒っぽい結末です。【2】
初出誌︰『改造』大正12年1月号
今回読んだ『谷崎潤一郎全集 第八巻』の解説で、伊藤整は次のように言っています。
人生において真の愛の失はれることがあり得るだらうか、といふ疑を持ちながら書いたやうに見えるのが「愛なき人々」である。そして、この作品においては、作者は、金のために友人の棄てた妻を手に入れる小倉なる人物を設定することによつて、その豫想を實現し得たかのやうに見える。しかしこの作品は、前作ほど十分に書き込まれてゐるとは言はれないところがあり、一應形としてはまとめてゐながら、なほ作者自身が滿足しないところがあるやうに思はれる。(258頁下段)
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