2020年01月31日

第1回-出張触読講座は〈指で漢字を読む1〉

 昨秋より「紫風庵」での変体仮名を読む学習会に参加なさっている全盲のHさんは、難題である漢字が読めそうです。そこで、善は急げとばかりにご自宅にまで押しかけ、じっくりと触読の特訓を試みることになりました。アシスタントは、「紫風庵」でもお世話掛を担当している吉村君です。学年末試験がお昼過ぎに終わると、すぐに駆けつけてくれました。全盲のHさんが漢字を読む手助けをするのが、今日のミッションです。
 アルファベットについても用意していました。しかし、Hさんはアメリカの著名な大学で教育学修士の学位を取得なさっているので、英語も堪能です。そこで今日は、変体仮名の確認と漢字の触読に専念です。付き切りで2時間半の長丁場となりました。

200131_kaze.jpg

 私が一番感じた今後の課題は、生まれながらにして目が見えなかったのですから、ご存知の漢字が限られており、また忘れていらっしゃるので、新しく漢字を覚えることの負担が大きいことがあげられます。子供になって漢字の勉強をします、とおっしゃっていました。まさに、その若かりし頃を思い出しながら、猛勉強がスタートすることになったのです。向学心の旺盛な方なので、これからが大いに楽しみです。
 以下、吉村君の報告を引きます。

文字の大きさについて

 まず読みやすい字の大きさを知るために、様々な大きさの活字の「あ」と「お」を触ってもらいました。その結果、わかりやすいと言われたのは、80ポイントのもの、72ポイントのもの、48ポイントのものでした。また線は細く鋭いほうがわかりやすいとの事でした。

仮名について

 次に同じ字母の仮名でくずし方が違うものを触ってもらいました。やはり変体仮名が難しいようでした。
 今の平仮名の「よ」や「は」は、活字に近いものであっても難しいようでした。平仮名でも「し」や「つ」のようにわかりやすいものと、「よ」や「は」のように形と字が結びつきにくいものもあるようです。「よ」と「は」に共通するくるっと回る部分は筆が折り返しています。この特徴を覚えることで、今後は読みやすくなるのではないかと思いました。
 また、「は」については左側の縦線も特徴的です。そのため、初めは「け」と勘違いされました。左側に縦線があるのは今の仮名では「け」「に」「は」「ほ」、変体仮名では「佐」「須」「津」「徒」「満」「流」などがあります。左側の縦線から候補を絞るという事もできるかもしれない、と思いました。

漢字について

 須磨の巻の初めの方に出てくる漢字を触ってもらいました。そもそも、知らない漢字や忘れてしまっていた漢字もいくつかありました。一つずつ根気よく覚えていく必要があるかと思います。
 「月」はご自分で読むことができていました。一画目と二画目の輪郭が特徴的だったようです。その後、三画目四画目の部分が横線二本ではなく縦線一本になっていることについて疑問を持たれていました。漢字はこのように省略されている事もあるため、おおよその形で判断していく必要があると思われた例でした。
 「日」は、中が潰れてしまい読みづらかったようです。しかし、「月」のように輪郭で推測することはできるようになるかもしれません。同様に、「風」も輪郭が特徴的なので推測しやすいかと思います。
 漢数字は、「一」「二」「三」がどこで区切るかが難しかったようです。「一二日」と連続しているものについて、初めは「三」と勘違いされました。「七」は形をなぞる事はできていました。しかし、そこから漢数字の「七」に結びつけることが難しかったようです。二回目に触った時には、ご自分で読むことができていました。「八」は、初めからご自分で読むことができていました。
 その他、江戸時代のかるたで「小墅小町」の字を触ってもらいました。一つ目の「小」はそれぞれの画が繋がっておらず、読みやすい形でした。初めは形と漢字が結びつかなかったようです。しかし、「小」であることがわかると、確かに「小」である事を納得されていました。
 二つ目の「小」は、前後の字と繋がっていたため、難しいようでした。どこからどこまでが一字なのか、どのように筆が運ばれているのかを知ることに苦労されていました。

その他

 Hさんは両手で触って読まれていました。現在、触読で写本を読む事に慣れていらっしゃる方は、基本的に片手で読むことが多いそうです。すらすら読むには、片手の方が速くて良いかもしれません。しかし、比較的大きく書かれる漢字の輪郭を読み取るには、両手の方が読みやすいのかもしれないと思いました。

 
 
 
posted by genjiito at 23:04| Comment(0) | ■講座学習
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。