(1)『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤鉄也編、新典社、2013年)
(2)『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(伊藤鉄也編、新典社、2014年)
(3)『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』(伊藤鉄也・阿部江美子・淺川槙子編、2015年)
その写本をそっくりそのままに写し取った臨模本の作成に、書家の宮川保子さんが挑戦して来られました。
国立歴史民俗博物館に収蔵されている「鈴虫」については、私が同じ機構に所属していたことと源氏千年紀に何度か調査に伺い、また学芸員の資格を持っていたこともあって、ご高配をたまわって宮川さんをお連れして原本の調査を行ないました。このことは、「【追補版】国立歴史民俗博物館で重文の源氏写本の調査」(2018年08月03日)に記した通りです。
そして、同じ月の8月29日には、日比谷図書文化館での源氏講座を受講なさっていた宮川さんと一緒にアメリカのハーバード大学美術館へ行き、ご所蔵の『源氏物語』「須磨」「蜻蛉」の2巻を実見してきました。メリッサ・マコーミック先生には、写本の実見と調査の上でさまざまなご協力をたまわりました。
こうして、紙の用意から始まり、装飾の手法で美麗な本文を書写する用紙が整い、完成した臨模本が公開されたのは昨年、2019年5月13日の中古文学会の折でした。共立女子大学で開催された「共立女子大学図書館所蔵貴重和書展示 本の見た目を楽しむ」で、ハーバード本の臨模・複製本を展示なさったのです。その様子は、「日比谷で源氏の橋本本(11)を読んだ後は共立女子大学へ」(2019年05月11日)に詳しく書いています。
その3冊の内、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語 須磨』と『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語 鈴虫』の臨模本2冊が、宮川さんのご理解をいただいたことから、今、私の手元にあります。
送り届けていただいた2冊の臨模本には、「拙い作品ですが資料としてお役にたてればうれしいです」という添え書きがあります。ありがたいことです。
実際には、昨年の師走に京都で受け取ることになっていました。しかし、お互いに所用が重なり延期となり、心待ちにしていたすばらしい写本が新年に届いたのです。これは、私がお預かりするというのではなく、特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉でお受けし、末長く『源氏物語』の本文のことを考えるための資料として、会員のみなさまと共に大切に守り伝えていきたいと思います。宮川さんは、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の会員でもあります。2015年5月8日に、西荻窪駅前の喫茶店で写本を書写されている件でご相談を受けて以来の、そのありがたいご縁に感謝しています。
この臨模本の価値を一人でも多くの方々に知っていただくためにも、機会を得ては直接手に取って見ていただこうと思っています。まずは、今週、目が見えないHさんに触っていただき、生まれながらにして見えなかった中での初めての感触をお聞きしようと思っています。その役目を果たしていただくのに、感覚が研ぎ澄まされた方ということもあり最適な方だと思います。
今後は、さまざまなイベントに持参して、宮川さんの手を通して伝わる鎌倉時代の文化を体感してもらうつもりです。必要であれば、小学・中学・高校や大学の行事や授業などにも参加して見ていただき、手と目の感覚で実体験をしてもらう予定です。このブログのコメント欄を活用して連絡をいただければ、可能な限りご相談に応じます。
以下、宮川さんの臨模本の姿がわかる写真を掲載します。
まずは、箱書きから。
「須磨」の装飾料紙がすばらしいので、この雰囲気を感じ取ってください。
この見開き丁のハーバード本原本の画像を、参考までに引きます。雲の模様と文字の配置の絶妙なコラボが堪能できます。
「須磨」の第1丁表の前から3行目の下には、1行に書き切れなかった「支(ki)」が「那(na)」の左横に書き添えられています。
ここに関しても、原本の画像をあげて比べてみましょう。
長文の注記が行間に書き込まれている箇所も、忠実に再現されています。
これも、次の原本をご覧ください。
書き様も再現されています。
この「す満尓八(sumaniha)」の原本は、次のようになっています。
この臨模本のことは書き切れません。
直接お話をする機会を得て、思う存分に語らせていただくつもりです。
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