2019年06月29日

紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む(第2回)

 大徳寺に近い「紫風庵」で、「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」の第2回となる学習会を開催しました。主催はNPO法人〈源氏物語電子資料館〉で、参加者は10名でした。

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 今日は、襖に貼られた三十六歌仙の絵と和歌を見る前に、架蔵の粉本(模本)『探幽筆 三拾六哥仙』を見てもらいました。「紫風庵」の三十六歌仙の絵と図様が近いことを、実物を前にして確認するためです。

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 歌仙の姿は言うまでもなく、表情までもが「紫風庵」の歌仙絵とよく似ていることがわかります。架蔵本については、「架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の復元」に詳しく紹介しています。
 ということで、この「紫風庵」の絵は狩野派の絵に近いと考えていいかと思います。もちろん、すべての絵が一致するとは限りません。このことは、今後ともおいおい確認していきます。

 先月から始まった第1回の勉強会の成果は、「紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む」(2019年05月25日)にまとめて報告した通りです。ただし、そこでの翻字は漢字の表記を特定していないなど、正確な「変体仮名翻字版」ではありませんでした。ここにあらためて補訂したものを掲載します。

◎《1左上》
■伊勢
(三輪の山 いかに待ち見む 年ふとも 尋ぬる人も あらじと思へば)
                      (古今和歌集 恋歌5)
   右 伊勢
  見わの【山】
     い可尓 【待】三む
       【年】婦とも
  阿羅し     多つぬ類【人】
    登         も
    おもへ者
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◎《1左中》
■大伴家持
(春の野に あさる雉の 妻恋ひに 己がありかを 人に知れつつ)
                      (拾遺和歌集・21)
   左 中納言家持
  【春】能【野】尓あさる
     きゝ須の【妻恋】
  【人】       尓
    耳 をの可【有】
   志れ      可を
     筒
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◎《1中下》
■山辺赤人
(和歌の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 芦辺をさして 鶴鳴き渡る)
                        (万葉集・919)
   右 山部赤人
  【和歌】能うら尓【塩】
    三ちくれ八か多お
   多つ【鳴】  な三
      わ多 あしへ
        流  を
          佐し
            帝


 今日は、前回の復習を兼ねて、この3首の仮名文字の確認から始めました。

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 続いて、本日確認する、人丸・貫之・躬恒の和歌を字母に気をつけて読みました。

 ◎《1右上》
■柿本人麿
(ほのぼのと 明石の浦の 朝霧に 島がくれ行く 舟をしぞ思ふ)
                     (古今和歌集 羇旅)
  左  柿本人丸
 本の/\登【明石】の
 【浦】農【朝霧】尓志満
 かく連【行】【舟】越し所
 おも婦

 ◎《2左中》
■紀貫之
(桜ちる このした風は 寒からで 空にしられぬ 雪ぞふりける)
                      (拾遺和歌集・64)
  右 紀貫之
【桜】ちる【木】能し堂
 閑勢盤【寒】可ら帝
 【空】尓し羅れ怒
 【雪】所ふり介る

 ◎《1右下》
■凡河内躬恒
(いづくとも 春の光は 分かなくに まだみ吉野の 山は雪降る)
                      (後撰和歌集・19)
  左 凡河内躬恒
 い徒くとも【春】能ひ可り八
   王可なくにま多
遊起     三よしのゝ
 婦る       やま
           八


 歌仙絵と和歌が2つの襖に分かれている意味が、まだよくわかりません。さらには、公任の『三十六人撰』は人丸から中務までの配列になっており、今回見た「人丸・貫之・躬恒」、そして前回の「伊勢・家持・赤人」の6人は、公任の配列と同じです。つまり、縦の列は一致するのです。それが、右から左に並んでいるのはいいとして、その最初の歌人である人丸が襖の中途半端なところから貼られていることには、どのような意味があるのかが、今後の課題です。最初は画帖に貼られていたものが、屏風から襖に貼り直されたのではないか、と個人的には思っています。その際、貼る順番が混乱したために、最初の人丸がこのような所に置かれたのではないでしょうか。これは、これから1枚ずつ確認していく中で、いろいろとわかってくることでしょう。

 続いて、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」を読みました。今日は、11丁裏の8行目「をの徒可ら・」からです。今日は、初めてこの勉強会に参加なさる方が3人いらっしゃったので、ポイントと興味深い例をピックアップして、字母の説明をしながら進めました。そのせいもあってか、話が飛び飛びになり、いつもより早く進んでしまいました。12丁裏に入ってからも、「堂」「者」「王」に加えて「ミセケチ」や「ナゾリ」のことも説明したので、盛りだくさんになりました。すみません。わかりやすいようにと意識しすぎて、かえって混乱させてしまったようです。次回では復習しながら、再確認をしていきます。
 結局、12丁裏の3行目「【心】あ者多ゝ新き・あな・」まで進みました。「あな」の「な」という文字がひしゃげた形をしているのは、糸罫を使っているためであるという説明も、この次に詳しくとりあげます。
 次回は、7月20日(土)午後2時から、今日と同じ「紫風庵」で行ないます。
 あらかじめ連絡をいただければ、資料を用意してお待ちしています。旅行中の方が立ち寄ってくださっても構いません。お気軽にどうぞ。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎NPO活動
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