2019年05月28日

読書雑記(256)高梨耕一郎『京都半木の道 桜雲の殺意』を再読して

 『京都半木の道 桜雲の殺意』(高梨耕一郎、2006年4月15日、講談社文庫)を再読しました。

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 この本については、「読書雑記(4)高梨耕一郎『京都半木の道 桜雲の殺意』」(2007年10月02日)で取り上げました。あまりいい評価はしていません。そのことが、半木の道を散策するたびに思い出されるので、もう一度読んでみたのです。
 植物園の西側にある、北大路橋と北山大橋の中間地点にある飛び石のことは、128頁に出ています。気になっていた割には、さらりと触れているだけなので拍子抜けです。
 予想外に、物語の内容には肉付けがされていることが実感できました。前回は、推理を追うことに一生懸命になって読んだからでしょう。そうであっても、登場人物が多すぎて、しかも人間関係が希薄です。おもしろい物語なのに、人物が立ち上がってこないのです。作者の立ち位置が曖昧で、物語を引っ張る人が存在感を示さないからだと思います。キャラクターの整理が必要だと思いました。
 さらには、舞台である京都らしさが伝わってきません。もっと風物に関わるエピソードを盛り込むなどして、工夫すべきだと思いました。せっかくの上質なネタが、これではもったいないのです。お寿司屋さんで、いいネタを仕入れながら、シャリがパサパサだったりベタベタだったら、変なものを口にしたという印象しか残りません。
 前回はほとんど気にしていなかった目の見えない花純さんの存在が、今回はその後に問題意識を持つようになったこともあり、非常に気になりました。中学2年生の時に失明した花純さんは、18歳の時にひき逃げされて亡くなったのです。そのことは、226頁以降で語られます。最終局面での推理に関係するのでここでは触れません。この花純さんの扱われ方に、私は非常に違和感を覚えました。これは、機会があればあらためて批判的に書きたいと思っています。
 それはさておき、この作品は、書き換えるともっとおもしろいものに化けそうです。私なら、飛び石をもっと活用します。半木の道に接する植物園も巻き込みましょう。その隣にある府立大学も出番です。この作品が発表された当時は総合資料館があったし、今は京都府立京都学・歴彩館に姿を変えて資料の宝庫となっています。推理モノにふさわしい舞台も資料も人物も、ふんだんに揃っている場所なのです。
 さらには、北大路通りを西に進むと、日本最初の盲学校やライトハウスがあります。千本閻魔堂の紹介をしながら、紫式部のことには言及がありません。物語をおもしろくするネタは満載の素地が眠っている作品です。
 作者の再挑戦を期待しています。【2】

※本作は、文庫本での書き下ろしです。
 
 
 
posted by genjiito at 20:21| Comment(0) | ■読書雑記
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