2019年05月25日

紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む

 大徳寺に近い船岡山の南にある「紫風庵」で、装いも新たに「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」と題して第1回学習会を開催しました。主催は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉です。

 この「紫風庵」と三十六歌仙については、「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)に詳しく書いています。『源氏物語』については、これまで通りハーバード本「須磨」巻を読み進めます。

 今日は最初ということもあり、「紫風庵」を運営なさっている宮本さまに、建物の説明をしていただきました。昭和8年に、当時の所有者がお嬢さまのために建てた家だとのことです。随所に丸みを帯びた造作がなされており、優しさが溢れる和洋折衷の建物です。

 その一階の応接間の三面の襖に、三十六歌仙の絵と和歌を書いた色紙が貼り廻らされています。

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 先ずは、歌仙絵に囲まれたこの部屋の使い方について、私の方から提案しました。すべて、襖絵および書を守るためのものです。

(1)カバンなどの荷物はこの部屋には持ち込まず、南の廊下側に出す。
(2)襖の絵と書を見るときは、持参か備え付けのマスクを着ける。
(3)記録のための筆記具は、鉛筆(シャープペンは可)のみとする。
(4)歌仙絵の部屋での飲食は厳禁とし、隣の居間では可能とする。
(5)一木の座卓での筆記などは、表面が傷付かないような配慮をする。
(6)写真は、記録程度なら自由。ただし、Web 公開は広報目的以外は原則不可。
(7)撮影にはフラッシュを使わず、接写には十分な距離を保ちズームで。
(8)襖に貼られた歌仙絵および和歌色紙には、絶対に触らない。
(9)歌仙絵の部屋では、手に何も持たず、小走りにならないようゆっくりと歩く。
(10)懐中電灯による、色彩や輪郭線の確認のための照射は、許可を得てから。


 以上の確認をしてから、早速、襖に貼られた和歌を確認しました。今日は、左端の襖を見ます。

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 歌仙絵に添えられた和歌は、「変体仮名翻字版」で表記すると次のようになります。散らし書きで和歌が書かれているので、気をつけて仮名文字を追いかけてください。

◎《左上》
   右 伊勢
  見わの山
     い可尓 待三む
       年婦とも
  阿羅し     多つね類人
    登         も
    おもへ者

■三輪の山 いかに待ち見む 年ふとも 尋ぬる人も あらじと思へば
                   (古今和歌集 巻15 恋歌5)


◎《左中》
   左 中納言家持
  春能野尓あさる
   きゝ須の妻恋
         尓
  人 をの可有
   耳    可を
  志れ    
    筒

■春の野に あさる雉の 妻恋ひに 己がありかを 人に知れつつ
                   (万葉集 巻8 1446)


◎《中下》
   右 山部赤人
  和歌能うら尓塩
   三ちくれ八か多お
   多つ鳴    な三
     わ多 あしへ
       流   を
         佐し
           帝

■和歌の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 芦辺をさして 鶴鳴き渡る
                    (万葉集 巻6 919)


 柿本人丸と凡河内躬恒は、その右側の襖と組になる形で貼られているので、次回に詳しくみることにします。

 歌仙絵については、私にはよくわかりません。ただし、持参した架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』のコピー版を見てもらい、この絵が狩野派の絵と構図がよく似ていることを確認しました。このことは、上記の「京洛逍遥(538)登録有形文化財「紫風庵」の三十六歌仙絵」(2019年04月13日)で、具体例をあげて提示したとおりです。

 今日は最初ということもあり、庵内の案内や三十六歌仙の襖絵の確認で、2時間の内のほとんどの時間を費やしました。

 最後の20分は、歌仙絵の部屋から居間に移り、テーブルを囲んでハーバード本「須磨」巻の11丁裏の1行目から本文を字母に注目しながら確認しました。ここで、用意していたお茶とお菓子をいただきました。
 三十六歌仙の和歌に書かれた仮名文字は江戸時代以降のものであり、ハーバード本は鎌倉時代中期に書写されたものです。その文字が持つ雰囲気の違いは明らかです。こんなことを話している内に予定の時間となったので、11丁裏7行目の「心くるし支・こと能・」までで終わりとしました。

 次回は、6月29日(土)の午後2時から、この「紫風庵」で行ないます。
 今日は6人での勉強会でした。
 興味と関心をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 この勉強会が午後4時に終わると、私は大急ぎで東京に行く新幹線に乗るために、早めに退出しました。
 玄関からは、8月に大文字の送り火が焚かれる如意ヶ岳の「大」の字が見えます。

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 参会者のみなさま、毎度のことながら慌ただしいことで大変失礼しました。
 
 
 
posted by genjiito at 23:55| Comment(0) | ◎NPO活動
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